JP4086118B2 - 電子写真感光体とその製造方法及び製造に用いる下引き層塗布液 - Google Patents

電子写真感光体とその製造方法及び製造に用いる下引き層塗布液 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等に用いられる電子写真方式の画像形成装置に装填される電子写真感光体とその製造方法及び製造に用いる下引き層塗布液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高速度化している電子写真複写機やプリンタに対応して、感光体も高感度であると共に電位安定性が良いことが望まれている。
【0003】
感光体として、有機化合物を用いた場合導電性支持体と電荷発生層との間に下引き層を設けることが、一般的に行われている。この下引き層を形成するための材料としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの樹脂を用いて下引き層を形成した場合、帯電性の低下や、塗布、画質欠陥を改善するために下引き層を厚くすると、感度の低下、繰り返し使用時の残留電位の増大などを引き起こす。一方、これらの特性を改善すべく、下引き層を薄くした場合には、帯電性が低下したり、塗布、画質欠陥を十分に抑制できなくなる。また、下引き層を厚くした場合の問題を回避するために、樹脂中に有機または無機の導電性粒子を分散させる方法も試みられているが、期待される性能は得られていない。
【0005】
これに対し、特公平3−66663号公報に示されるように、金属アルコキシドや金属キレート等の有機金属化合物を主成分とした下引き層を用いると、感度の低下、残留電位の増加を引き起こすことなく、良好な繰り返し電位特性が得られることが知られている。
【0006】
しかし、硬化塗膜の均一性が不安定であり、特に反転現像で使用した場合、これに起因する電位の欠落と思われる黒ポチ欠陥が発生する問題があった。このために材料を選択するなどの検討が行われているが、安定して画像欠陥のない画像を得ることは困難であった。感光体を高温高湿下に保持すると、このような画像欠陥は更に顕著になる傾向があり、感光体保存安定性に対し大きな問題であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電位安定性がよく、画像欠陥の出ない電子写真感光体とその製造方法及び其れに用いる下引き層塗布液を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成される。
【0009】
(1) 有機金属化合物とシランカップリング剤をプレポリマー化した後溶媒にて希釈して下引き層塗布液を作製し、支持体上に塗布・硬化して下引き層を形成し、その上に感光層を設けることを特徴とする電子写真感光体。
【0010】
(2) 前記プレポリマー化を予備混合により行うことを特徴とする(1)記載の電子写真感光体。
【0011】
(3) 前記下引き層塗布液を作製する時、プレポリマー化のための予備混合時に酸や水を添加することを特徴とする(1)又は(2)記載の電子写真感光体。
【0012】
(4) 前記下引き層塗布液を作製する時、プレポリマー化のための予備混合時に非反応性気体を通過させることを特徴とする(1)、(2)又は(3)記載の電子写真感光体。
【0013】
(5) 前記有機金属化合物が、下記式(1)で表わされる物質であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項記載の電子写真感光体。
【0014】
(RO)m−M−Xn (1)
(式中、Rはアルキル基、Mはジルコニウム、チタニウム又はアルミニウムを表し、キレート形成基Xはアセト酢酸エステルまたはβジケトン残基を表し、n、mは1以上の整数を表す。ただし、Mがジルコニウム又はチタニウムの場合、m+nは4であり、Mがアルミニウムの場合はm+nは3である。)
(6) 前記シランカップリング剤が、下記式(2)で表わされる物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の電子写真感光体。
【0015】
(Z)a−Si(Y)c−(A)b (2)
(式中、Zはアルコキシ基、ハロゲン原子またはアミノ基を表し、Aはアルキル基またはアリール基を表し、有機官能基Yは−BOOC(R′)C=CH2、−BNHR″または−BNH2を表す。R′はアルキル基を表し、R″はアルキル基またはアリール基を表し、Bはアルキレン基または−O−、−NH−、−CO−を含むアルキレン基を表す。aおよびcは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表し、a+b+cは4である。)
(7) 有機金属化合物とシランカップリング剤をプレポリマー化した後溶媒にて希釈して下引き層塗布液を作製し、支持体上に塗布・硬化して下引き層を形成し、その上に感光層を設けることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0016】
(8) 前記プレポリマー化を予備混合により行うことを特徴とする請求項7記載の電子写真感光体の製造方法。
【0017】
(9) 前記下引き層塗布液を作製する時、プレポリマー化のための予備混合時に酸や水を添加することを特徴とする(7)又は(8)記載の電子写真感光体の製造方法。
【0018】
(10) 前記下引き層塗布液を作製する時、プレポリマー化のための予備混合時に非反応性気体を通過させることを特徴とする(7)、(8)又は(9)記載の電子写真感光体の製造方法。
【0019】
(11) 前記有機金属化合物が、下記式(1)で表わされる物質であることを特徴とする(7)〜(10)のいずれか1項記載の電子写真感光体の製造方法。
【0020】
(RO)m−M−Xn (1)
(式中、Rはアルキル基、Mはジルコニウム・チタニウム又はアルミニウムを表し、キレート形成基Xはアセト酢酸エステルまたはβジケトン残基を表し、n、mは1以上の整数を表す。ただし、Mがジルコニウム又はチタニウムの場合、m+nは4であり、Mがアルミニウムの場合はm+nは3である。)
(12) 前記シランカップリング剤が、下記式(2)で表わされる物質であることを特徴とする(7)〜(10)のいずれか1項記載の電子写真感光体の製造方法。
【0021】
(Z)a−Si(Y)c−(A)b (2)
(式中、Zはアルコキシ基、ハロゲン原子またはアミノ基を表し、Aはアルキル基またはアリール基を表し、有機官能基Yは−BOOC(R′)C=CH2、−BNHR″または−BNH2を表す。R′はアルキル基を表し、R″はアルキル基またはアリール基を表し、Bはアルキレン基または−O−、−NH−、−CO−を含むアルキレン基を表す。aおよびcは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表し、a+b+cは4である。)
(13) 電子写真感光体の製造に用いる下引き層塗布液において、有機金属化合物とシランカップリング剤をプレポリマー化し後溶媒にて希釈して作製することを特徴とする電子写真感光体の製造に用いる下引き層塗布液。
【0022】
有機金属化合物錯体やシランカップリング剤の構造は、下記のごとく有機金属化合物やシラン原子に、大抵の場合アルコキシ基がつく構造を有している。
【0023】
有機金属化合物 シランカップリング剤
(RO)m−M−Xn (RO)a−Si(Y)c−(A)b
その反応形態としては、それぞれに持つアルコキシ基が、一旦加水分解してM−OHやSi−OHとなった後、更に縮合して進行して行くと考えられている。即ち、M−OHやSi−OHが縮合して架橋し、次第に塗膜が形成される。
【0024】
▲1▼ Si−OR + H20 ⇔ Si−OH + R−OH
▲2▼ M−OR′ + H20 ⇔ M−OH + R′−OH
▲3▼ Si−OH + M−OH ⇔ Si−O−M +H2
このような有機金属化合物とシランカップリング剤を含む下引き層塗布液(UCL塗布液)を用いて作製した感光体では、電位安定性(特に残留電位の安定性)が向上することが考えられる。
【0025】
通常、有機金属化合物とシランカップリング剤と溶媒を混合した液から塗膜を作製しすると、架橋がアトランダムに起ってしまう。シランカップリング剤、有機金属化合物共に、複数のアルコキシ基、即ち反応点を持つので、これらの反応点が全て結合に関与して3次元的に架橋している場合と、架橋膜中に未反応点として残る場合とがある。
【0026】
前記したごとき画像欠陥の発生を防ぐには、塗膜中の未反応点を減らし、結合状態の反応点を増やすことが有効と思われる。架橋の反応を促進するためには、縮合体と他の縮合体及びシランカップリング剤と有機金属化合物が接触する確率を上げることが重要であり、この思想で予備混合を行ったところ黒ポチは減少し、明らかに有効であった。これは、プレポリマー化によりある程度の架橋があらかじめ行なわれることにより、未反応の末端が少なくなったためであると思われるが、確かなことは明らかではない。更に、このプレポリマー化により得られた膜では保存安定性も向上していた。
【0027】
尚、本発明では、有機金属化合物とシランカップリング剤等を予備混合他の操作により一旦途中まで架橋を進行させることをプレポリマー化という。
【0028】
また、架橋した膜が形成される過程は全て可逆反応であるため、前記した▲1▼〜▲3▼の反応が出来るだけ右辺に進行するようにするためには、酸を加えてpHを調整して反応を活性化したり、非反応性気体を通過させて生成する揮発物を追い出したり、水を加えて左辺を過剰にすることが有効と考えられる。この考え方にたって、予備混合時のpH調整や非反応性気体を通過させて生成する揮発物を追い出したり、水の添加を行うと、更に黒ポチ低減効果は増大した。
【0029】
本発明の電子写真感光体の最も好ましい層構成は、導電性支持体上に、下引き層、電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)を有しているものである。
【0030】
本発明に用いられる有機金属化合物は、前記式(1)で表される金属アルコキシドの有機金属キレートが好ましい。
【0031】
式(1)中、Rはアルキル基を表し、Mはチタニウム又はジルコニウム又はアルミニウムを表し、Xはキレート形成基でアセト酢酸エステル又はβジケトン残基を表し、m、nは1以上の整数を表す。但し、Mがチタニウム又はジルコニウムの場合m+nは4であり、Mがアルミニウムの場合m+nは3である。
【0032】
又、シランカップリング剤は、式(2)で表わされるものが好ましい。
【0033】
式(2)中、Zは加水分解性基でアルコキシ基、ハロゲン原子又はアミノ基を表し、Aはアルキル基又はアリール基を表し、Yは末端にメタクリロキシ又はアミノ基を有する有機官能基、即ち−BOOC(R′)C=CH2、−BNHR″又は−BNH2を表す。R′はアルキル基を表し、R″はアルキル基又はアリール基を表し、Bはアルキレン基又は−O−、−NH−、−CO−を含むアルキレン基を表す。a及びcは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表しa+b+cは4である。
【0034】
本発明に係る下引き層は、前述の如く、有機金属化合物とシランカップリング剤の反応生成物からなるものが好ましいと考えられる。
【0035】
有機金属化合物はアルコキシ基と少なくとも一つのキレート基を有する化合物より成るのが好ましい。テトラアルコキシチタンなど、アルコキシ基のみからなる金属アルコキシドを用いて下引き層を形成した場合、画像欠陥を生じることが多く、従って少なくとも一つのキレート形成基を持つ素材の選択はより好ましい方向である。従来知られていたキレート基としては以下のものがある(特開平4−247461号参照)。
【0036】
(1)アセチルアセトン、2,4−ヘプタンジオンなどのβ−ジケトン
(2)アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル
(3)乳酸、サリチル酸、リンゴ酸などのヒドロキシカルボン酸
(4)乳酸メチル、乳酸エチル、サリチル酸エチル、リンゴ酸エチルなどのヒドロキシカルボン酸エステル
(5)オクタンジオール、ヘキサンジオールなどのグリコール
(6)4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトアルコール
(7)トリエタノールアミンなどのアミノアルコール
これらについて本発明者等が種々検討した結果、(3)〜(7)に比して(1)のβ−ジケトン、(2)のうちのアセト酢酸エステルが、電位特性、成膜性、接着性、画像特性、塗布液のポットライフ、など全ての特性においてより良好な特性を満たすことが分かった。
【0037】
また、有機金属化合物のキレート基の数についても、適正な選択が可能である。有機金属化合物がアルコキシ基を持たずキレート基しか持たない場合、残留電位が大きめになってしまうため、少なくともアルコキシ基を含むことが好ましく、出来れば化合物中のキレート基の数がアルコキシ基の数と同じか、それ以下であることが特に好ましい。そうすることにより、残留電位を特に小さく抑えることができる。
【0038】
次に、有機金属化合物の金属の種類については、ジルコニウム、チタニウムとアルミニウムが特に好ましい。
【0039】
また、上記のジルコニウム、チタニウム、アルミニウムのなかでも、チタニウム、アルミニウムは塗布液の安定性にも優れており、この点で特に好ましいものと言える。
【0040】
本発明で用いられる有機金属化合物で特に好ましい化合物のうち、
アセト酢酸エステルキレート基を持つチタンキレート化合物としては、
ジイソプロポキシチタニウムビス(メチルアセトアセテート)
ジイソプロポキシチタニウムビス(エチルアセトアセテート)
ジイソプロポキシチタニウムビス(プロピルアセトアセテート)
ジイソプロポキシチタニウムビス(ブチルアセトアセテート)
ジブトキシチタニウムビス(メチルアセトアセテート)
ジブトキシチタニウムビス(エチルアセトアセテート)
トリイソプロポキシチタニウム(メチルアセトアセテート)
トリイソプロポキシチタニウム(エチルアセトアセテート)
トリブトキシチタニウム(メチルアセトアセテート)
トリブトキシチタニウム(エチルアセトアセテート)
イソプロポキシチタニウムトリ(メチルアセトアセテート)
イソプロポキシチタニウムトリ(エチルアセトアセテート)
イソブトキシチタニウムトリ(メチルアセトアセテート)
イソブトキシチタニウムトリ(エチルアセトアセテート)
β−ジケトンキレート基を持つチタンキレート化合物としては、
ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)
ジイソプロポキシチタニウムビス(2,4−ヘプタンジオネート)
ジブトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)
ジブトキシチタニウムビス(2,4−ヘプタンジオネート)
トリイソプロポキシチタニウム(アセチルアセトネート)
トリイソプロポキシチタニウム(2,4−ヘプタンジオネート)
トリブトキシチタニウム(アセチルアセトネート)
トリブトキシチタニウム(2,4−ヘプタンジオネート)
イソプロポキシチタニウムトリ(アセチルアセトネート)
イソプロポキシチタニウムトリ(2,4−ヘプタンジオネート)
イソブトキシチタニウムトリ(アセチルアセトネート)
イソブトキシチタニウムトリ(2,4−ヘプタンジオネート)
アセト酢酸エステルキレート基を持つアルミニウムキレート化合物としては、
ジイソプロポキシアルミニウム(メチルアセトアセテート)
ジイソプロポキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)
ジイソプロポキシアルミニウム(プロピルアセトアセテート)
ジイソプロポキシアルミニウム(ブチルアセトアセテート)
ジブトキシアルミニウム(メチルアセトアセテート)
ジブトキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)
イソプロポキシアルミニウムビス(メチルアセトアセテート)
イソプロポキシアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)
イソブトキシアルミニウムビス(メチルアセトアセテート)
イソブトキシアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)
β−ジケトンキレート基を持つアルミニウムキレート化合物としては、
ジイソプロポキシアルミニウム(アセチルアセトネート)
ジイソプロポキシアルミニウム(2,4−ヘプタンジオネート)
ジブトキシアルミウム(アセチルアセトネート)
ジブトキシアルミウム(2,4−ヘプタンジオネート)
イソプロポキシアルミニウムビス(アセチルアセトネート)
イソプロポキシアルミニウムビス(2,4−ヘプタンジオネート)
イソブトキシアルミニウムビス(アセチルアセトネート)
イソブトキシアルミニウムビス(2,4−ヘプタンジオネート)
などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0041】
以下、チタニウム、アルミニウム系化合物に次いで好ましいジルコニウム系化合物としては、下記のものがある。
【0042】
まず、アセト酢酸エステルキレート基を持つジルコニウムキレート化合物としては、
ジイソプロポキシジルコニウムビス(メチルアセトアセテート)
ジイソプロポキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)
ジイソプロポキシジルコニウムビス(プロピルアセトアセテート)
ジイソプロポキシジルコニウムビス(ブチルアセトアセテート)
ジブトキシジルコニウムビス(メチルアセトアセテート)
ジブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)
トリイソプロポキシジルコニウム(メチルアセトアセテート)
トリイソプロポキシジルコニウム(エチルアセトアセテート)
トリブトキシジルコニウム(メチルアセトアセテート)
トリブトキシジルコニウム(エチルアセトアセテート)
イソプロポキシジルコニウムトリ(メチルアセトアセテート)
イソプロポキシジルコニウムトリ(エチルアセトアセテート)
イソブトキシジルコニウムトリ(メチルアセトアセテート)
イソブトキシジルコニウムトリ(エチルアセトアセテート)
β−ジケトンキレート基を持つジルコニウムキレート化合物としては、
ジイソプロポキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)
ジイソプロポキシジルコニウムビス(2,4−ヘプタンジオネート)
ジブトキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)
ジブトキシジルコニウムビス(2,4−ヘプタンジオネート)
トリイソプロポキシジルコニウム(アセチルアセトネート)
トリイソプロポキシジルコニウム(2,4−ヘプタンジオネート)
トリブトキシジルコニウム(アセチルアセトネート)
トリブトキシジルコニウム(2,4−ヘプタンジオネート)
イソプロポキシジルコニウムトリ(アセチルアセトネート)
イソプロポキシジルコニウムトリ(2,4−ヘプタンジオネート)
イソブトキシジルコニウムトリ(アセチルアセトネート)
イソブトキシチタニウムトリ(2,4−ヘプタンジオネート)
などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0043】
これらの化合物は、本発明の目的を特に高いレベルで達することができるものということで挙げたものであり、これ以外の化合物でも本発明の目的を達するものは多く存在する。
【0044】
下引き層を形成するもう一つの必須要素であるシランカップリング剤は式(2)に示すものである。
【0045】
公知文献、例えば特開平4−247461号では、Zとしてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、Aとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、或いはフェニル基などのアリール基が挙げられ、有機官能基Yの末端基として以下のものが挙げられている。
【0046】
【化1】
Figure 0004086118
【0047】
本発明者等の検討の結果、シランカップリング剤の有機官能基Yの末端基が、メタクリロキシ基又はアミノ基のものを選択することにより、成膜性、画像特性、電位特性とも稀に優れた性能が得られることが分かった。
【0048】
メタクリロキシ基とはCH2=C(R′)COO−で表されるものでありR′はアルキル基である。好ましくはC3以下のアルキル基である。これらメタクリロキシ基を有するシランカップリング剤として具体的には例えば以下のものがある。
【0049】
γ−メチルメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
γ−メチルメタクリロキシプロピルトリエトキシシラン
γ−エチルメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
γ−メチルメタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン
γ−メチルメタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン
などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0050】
この末端メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤で特筆すべきものは電位の安定性である。繰り返し使用時においても残留電位の上昇の少ない、非常に安定した性能の下引き層を得ることができる。
【0051】
上記シランカップリング剤について優れた性能を示すものは有機官能基Yの末端がメタアクリロキシ基を有する又はアミノ基、即ち−NH2又は−NHR″構造を持つものである。R″はアルキル基又はアリール基、好ましくはC6以下のアルキル基又はC8以下のアリール基を表す。
【0052】
このアミノ基を末端に持つシランカップリング剤は、この構造を末端に持たない他のシランカップリング剤に比べて反応性が高く、下引き層膜の形成時に金属化合物等との重合によるネットワーク構造化が進みやすく、フレポリマー化もしやすく、これによる安定化効果も上がる。
【0053】
この中で反応性という点からすると1級或いは2級のアミノ基の反応性は高く、特に1級のアミノ基−NH2は非常に高い反応性を示し、画像欠陥の抑制能に優れている。
【0054】
この−NH2を末端にもつ有機官能基としては、具体的に例えば、
γ−アミノプロピル基
β−アミノエチル基
γ−アミノブチル基
などが挙げられ、この有機官能基をもつシランカップリング剤としては、
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン
γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン
β−アミノエチルトリメトキシシラン
γ−アミノブチルトリメトキシシラン
などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
有機官能基の構造としては、末端部のアミノ基以外は特に限定されるものではない。上記に例示したようなアルキレン基−(CH2n−のみのものの他、−(CH2m−NH−(CH2n−,−(CH2n−NH−CO−などアミノ基、カルボニル基或いは酸素原子など別種の構造単位を含むものなどでもよい。m、nは10以下の整数が好ましい。
【0056】
このような有機官能基としては、具体的に例えば
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピル基
N−β(アミノプロピル)γ−アミノプロピル基
N−β(アミノエチル)γ−アミノブチル基
γ−ウレイドプロピル基
などが挙げられ、この有機官能基をもつシランカップリング剤としては、
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン
N−β(アミノプロピル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
N−β(アミノエチル)γ−アミノブチルトリメトキシシラン
γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン
γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン
などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
アミノ基に導入される脂肪族もしくは芳香族の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基など不飽和脂肪族炭化水素の残基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基、などが例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらが何れかの置換基で置換されたものでもよい。
【0058】
2級アミノ基を末端にもつ有機官能基としては、具体的に
例えば
N−メチル−γ−アミノプロピル基
N−エチル−γ−アミノプロピル基
N−ビニル−γ−アミノプロピル基
N−アリル−γ−アミノプロピル基
N−フェニル−γ−アミノプロピル基
N−トリル−γ−アミノプロピル基
などが挙げられ、この有機官能基をもつシランカップリング剤としては
N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
N−エチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
N−ビニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
N−アリル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
N−トリル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
これらの塗布のために用いられる溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール類、プロピレングリコール類等のグリコール類等が挙げられるが、これらに限られるわけではない。またこれらは単独、或いは混合して用いられる。
【0060】
本発明に用いられる導電性支持体の材料としては、主としてアルミニウム、銅、真鍮、スチール、ステンレス等の金属材料、その他プラスチック材料をベルト状またはドラム状に成型加工したものが用いられる。中でもコスト及び加工性等に優れたアルミニウムが好ましく用いられ、通常押出成型または引抜き成型された薄肉円筒状のアルミニウム素管が用いられる。
【0061】
本発明の電子写真感光体は下記のような電荷発生物質と電荷輸送性物質を用いた構成が好ましい。
【0062】
次に本発明に適する電荷発生物質(CGM)としては、一般には可視光を吸収してフリー電荷を発生するものであれば、無機顔料及び有機色素の何れをも用いることができる。無定形セレン、三方晶系セレン、セレン−砒素合金、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、硫セレン化カドミウム、硫化水銀、酸化鉛、硫化鉛等の無機顔料の外、次の代表例で示されるような有機顔料を用いてもよい。
【0063】
(1)モノアゾ顔料、ポリアゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料、ビラゾロンアゾ顔料、スチルベンアゾ及びチアゾールアゾ顔料等のアゾ系顔料。
【0064】
(2)ペリレン酸無水物及びペリレン酸イミド等のペリレン系顔料。
【0065】
(3)アントラキノン誘導体、アントアントロン誘導体、ジベンスピレンキノン誘導体、ピラントロン誘導体、ビオラントロン誘導体及びイソビオラントロン誘導体等のアントラキノン系又は多環キノン系顔料
(4)インジゴ誘導体及びチオインジゴ誘導体等のインジゴイド系顔料
(5)金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料
(6)ジフェニルメタン系顔料、トリフェニルメタン顔料、キサンテン顔料及びアクリジン顔料等のカルボニウム系顔料
(7)アジン顔料、オキサジン顔料及びチアジン顔料等のキノンイミン系顔料
(8)シアニン顔料及びアゾメチン顔料等のメチン系顔料
(9)キノリン系顔料
(10)ニトロ系顔料
(11)ニトロン系顔料
(12)ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料
(13)ナフタルイミド系顔料
(14)ビスベンズイミダゾール誘導体等のペリノン系顔料
中でも特に好ましいのは、イミダゾールペリレン化合物とオキシチタニルフタロシアニン(TioPc)であるので以下これらの説明を行う。
【0066】
イミダゾールペリレン化合物は次の二つの構造式の何れかの構造をとるものである。
【0067】
【化2】
Figure 0004086118
【0068】
またこのイミダゾールペリレン化合物としては、Cu−Kα線に対するX線回折スペクトルの6.3±0.2°、12.4±0.2°、25.3±0.2°、27.1±0.2°にピークを有する結晶型であって、12.4±0.2°のピーク強度が最大であると同時に同ピークの半値幅が0.65°以上であり、かつ11.5±0.2°に明瞭なピークを示さない状態で存在するものが、特に好ましい。
【0069】
CGMのキャリア発生能は、CGMの分子構造に依存するばかりではなく、それらの分子の集合形態、例えば結晶構造などに大きく依存する。上記X線回折スペクトルが得られるような結晶構造のものが、イミダゾールペリレン化合物のなかでもキャリア発生能が高く優れた性能を示すものとして見いだされている。
【0070】
イミダゾールペリレン化合物の結晶型のついては、a、γ、ε、ρ型などがあり、上記結晶型はρ型結晶に基づき、これを有機溶媒中に分散微粒化することにより得られる。この分散微粒化の方法としては、例えば、昇華精製したイミダゾール化合物を硫酸を用いてアシッドペースト処理(アモルファス化或いは低結晶化)し、これを親和性の高い有機溶媒中でポリマーバインダーを介在させながら穏やかに分散することによって結晶成長させる、といった方法が挙げられる。この方法においては均一な微粒化が達成され、また機械的衝撃が小さいために結晶欠陥の導入による特性低下が避けられる。
【0071】
電荷発生物質(CGM)として、オキシチタニルフタロシアニン(TiOPc)をもちいる場合、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θの27.2°±0.2°に最大ピークを有するオキシチタニルフタロシアニンを用いると感度、耐久性及び画質の点で著しく改善された効果を示す。
【0072】
TiOPcの基本構造は次の一般式で表されるものである。
【0073】
【化3】
Figure 0004086118
【0074】
式中、X1,X2,X3及びX4はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、n,m,l及びkはそれぞれ0〜4の整数を表す。
【0075】
この中、X1,X2,X3,X4何れも水素原子であるものが好ましい。
【0076】
尚、TiOPcの結晶型についてはA、B、Y型等があり、上記結晶型はY型TiOPcの範疇にはいるものである。このTiOPcの、Cu−Kα線に対するX線回折スペクトル(ブラッグ角2θ)は上記最大ピークの他に9.6°±0.2°、24.1°±0.2°にピークを有する。
【0077】
本発明に係わる電荷輸送物質(CTM)としては、特に制限はないが、例えばオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン誘導体、アミン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、ポリ−9−ビニルアントラセン等である。これらの中、スチリル化合物、特にスチリルトリフェニルアミン化合物が好ましい。電荷輸送物質としては、光照射時発生するホールの輸送能力が優れているほか、オキシチタニルフタロシアニンとの組み合わせに好適なものが好ましいからである。
【0078】
前記電荷発生物質及び電荷輸送物質は、多くはそれ自体では皮膜形成能が乏しいので各種のバインダを用いて感光層を形成してもよい。
【0079】
感光層の形成に用いられるバインダ樹脂には任意のものを用いることができるが、疎水性で、かつ誘電率が高く、電気絶縁性のフィルム形成性高分子重合体を用いるのが好ましい。このような高分子重合体としては、例えばポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル酸樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアセタール(例えばポリビニルブチラール)等が挙げられる。これらのバインダ樹脂は単独であるいは2種以上の混合物として用いることができる。
【0080】
感光層には、オゾン劣化防止の目的で酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
【0081】
これらの具体的化合物としては、特開昭63−14154号、同63−18355号、同63−44662号、同63−50848号、同63−50849号、同63−58455号、同63−71856号、同63−71857号及び同63−146046号に記載がある。
【0082】
酸化防止剤の添加量はCTM100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、特に好ましくは5〜25重量部である。
【0083】
電荷発生層及び電荷輸送層の形成に使用される溶媒あるいは分散媒としては、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,2−ジクロルエタン、1,2−ジクロルプロパン、1,1,2−トリクロルエタン、1,1,1−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラクロルエタン、ジクロルメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等が挙げられる。
【0084】
下引き層塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、ブレードコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0085】
塗布膜の乾燥条件は、乾燥温度としては10〜250℃、好ましくは90〜200℃がよく、湿度は20〜90%RHで乾燥時間としては5分〜5時間、好ましくは20分〜2時間の時間で、送風乾燥、或いは静止乾燥により行うことができる。
【0086】
次にこれに限定されるものではないが、図1にデジタル複写機の例をあげ、本発明に係わる画像形成のプロセスを説明する。
【0087】
既に述べてきたように本発明係わる画像形成プロセスはプリンタ、デジタル複写機等の反転現像を含む画像形成方法において、特にその効果を発揮する。
【0088】
図1の画像形成装置において、図中に記載はないが、原稿に光源からの光りを当てて、反射光を画像読み取り部にて電気信号に変え、この画像データを画像書き込み部1〜3に送っている(1はレーザー光源、2はポリゴンミラー、3がfθレンズである)。
【0089】
一方、像形成を担う感光体ドラム4は帯電ユニット5でコロナ放電により均一に帯電され、続いて画像書き込み部のレーザー光源1から像露光光が感光体ドラム4上に照射される。そして次の現像ユニット6で反転現像され、転写極7で記録紙(記録材)に転写される。記録紙8は分離極9により、感光体ドラムから分離され、定着器10で定着される。一方感光体ドラム4は、クリーニング装置11により清掃される。また、12は帯電前露光ランプであり、これは分離極9の後で、クリーニング装置11の前にあっても良い。
【0090】
トナー像を転写材に転写した後、感光体上に残留したトナーはクリーニングにより除去され、感光体は次のプロセスに繰り返し使用される。
【0091】
クリーニングする機構は、いわゆる弾性体ゴムブレードを用いたブレードクリーニング方式が望ましい。13は弾性体ゴムブレードを示す。
【0092】
弾性体ゴムブレード13を構成する材料としては、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどの弾性体を使用することができる。
【0093】
上記においては単色によるプロセスについて説明したが、場合によっては2色など複数色での像でもよい。画像読み取り時に色分解された各分解色ごとの信号を、帯電、レーザー光露光による画像書き込みとそれに対応するカラートナーが現像されるというプロセスを繰り返し、イエロー、マゼンタ、シアン、黒トナーの4色トナー像が、感光体上に形成され一括して記録紙に転写されるものでも良い。
【0094】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0095】
<下引き層>
実施例−1
(B1)シランカップリング剤(KBM−903)2重量部に(A2)チタンキレート化合物(TC−100 松本製薬株)1重量部を加え撹拌し、25℃、80%RHの環境下で3日間放置した後、トルエン20重量部にて希釈して下引き層塗布液を得た。
【0096】
実施例−2
(B2)シランカップリング剤(KBM−503 信越化学株)2重量部に純水1重量部及び酢酸1重量部を加えた後、(A1)チタンキレート化合物(TC−750 松本製薬株)を3.6重量部加えて攪拌し、25℃、50%RHの環境下で1日放置する。この後メタノール:エタノール混合溶媒25重量部で希釈し下引き層塗布液を得た。
【0097】
実施例−3
(B3)シランカップリング剤(KBM−403 信越化学株)2重量部に対し、純水0.4重量部を加えた後、(A1)チタンキレート化合物(TC−750 松本製薬株)を4重量部加えて攪拌し、25℃、50%RHの環境下で1日放置する。この後イソプロピルアルコール20重量部で希釈し下引き層塗布液を得た。
【0098】
実施例−4
(B2)シランカップリング剤(KBM−503 信越化学株)2重量部に対し、純水0.8重量部、(A1)チタンキレート化合物(TC−750 松本製薬株)を4重量部加えた後攪拌し、25℃50%の環境下で乾燥窒素気体を吹き込みながら24時間撹拌する。この後トルエン20重量部で希釈し下引き層塗布液を得た。
【0099】
比較例−1
(B1)トルエン20重量部にシランカップリング剤(KBM−903)2重量部及び(A2)チタンキレート化合物(TC−100 松本製薬株)1重量部を加えて攪拌し、下引き層塗布液を得た。
【0100】
比較例−2
メタノール:エタノール混合溶媒25重量部に、(B2)シランカップリング剤(KBM−503 信越化学株)2重量部及び(A1)チタンキレート化合物(TC−750 松本製薬株)を3.6重量部加えて攪拌し、下引き層塗布液を得た。
【0101】
比較例−3
イソプロピルアルコール20重量部に、(B3)シランカップリング剤(KBM−403 信越化学株)2重量部、(A1)チタンキレート化合物(TC−750 松本製薬株)を4重量部加えて攪拌し、下引き層塗布液を得た。
【0102】
比較例−4
トルエン20重量部に、(B2)シランカップリング剤(KBM−503 信越化学株)2重量部及び(A1)チタンキレート化合物(TC−750 松本製薬株)を4重量部加えて攪拌し、下引き層塗布液を得た。
【0103】
これを、20℃、30%RH環境下でアルミニウム基体上に塗布し、150℃30分間乾燥して厚さ1.0μmの下引き層を得た。
【0104】
【化4】
Figure 0004086118
【0105】
<電荷発生層>
(G−1)Y型チタニルフタロシアニン 4重量部
シリコーン樹脂(KR−5240 信越化学株) 45重量部
2−ブタノン 100重量部
を混合し、サンドミルにて10時間分散して電荷発生層塗布液を得た。この液を、前記下引き層の上に浸漬塗布して厚さ0.25μmの電荷発生層を得た。
【0106】
<電荷輸送層>
(T−1)電荷輸送物質 8重量部
ビスフェノールZ型ポリカーボネイト(Z−300 三菱瓦斯化学株)12重量部
1,2−ジクロロエタン 100重量部
を混合、溶解し電荷輸送層塗布液を得た。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布して100℃にて1時間の熱処理を行い乾燥後の厚さ25μmの電荷輸送層を形成した。
【0107】
【化5】
Figure 0004086118
【0108】
<特性の評価>
出来上がった感光体の電位及び画像評価は、複写機(Konica7050 コニカ(株))にて行った。
【0109】
30℃、80%RHの環境下で200kコピー(k:1000を表わす)の実写を繰り返し行い残留電位(複写後クリーニング及び除電後の感光体の電位)変動より電位安定性をみた。残留電位の変動(ΔVr)は、200kコピー後の残留電位から1コピー後の残留電位を差し引いたものの絶対値である。
【0110】
また、同上の環境下で、感光体作製直後と30℃、80%RH環境下で6ヶ月保存後のコピー画像の黒ポチを肉眼で評価した。
【0111】
【表1】
Figure 0004086118
【0112】
本発明内の実施例−1〜4はいずれも良い特性なのに対し、比較例−1〜4は、特に残留電位の変動(ΔVr)と保存後の黒ポチの特性が悪いことがわかる。
【0113】
【発明の効果】
本発明により、電位安定性がよく、画像欠陥の出ない電子写真感光体とその製造方法及び其れに用いる下引き層塗布液を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる画像形成のプロセスを説明する概要断面図。
【符号の説明】
1 レーザー光源
4 感光体ドラム
5 帯電ユニット
6 現像ユニット
7 転写極
11 クリーニング装置
13 弾性体ゴムブレード

Claims (13)

  1. 有機金属化合物とシランカップリング剤をプレポリマー化した後溶媒にて希釈して下引き層塗布液を作製し、支持体上に塗布・硬化して下引き層を形成し、その上に感光層を設けることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記プレポリマー化を予備混合により行うことを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 前記下引き層塗布液を作製する時、プレポリマー化のための予備混合時に酸や水を添加することを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真感光体。
  4. 前記下引き層塗布液を作製する時、プレポリマー化のための予備混合時に非反応性気体を通過させることを特徴とする請求項1、2又は3記載の電子写真感光体。
  5. 前記有機金属化合物が、下記式(1)で表わされる物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の電子写真感光体。
    (RO)m−M−Xn (1)
    (式中、Rはアルキル基、Mはジルコニウム、チタニウム又はアルミニウムを表し、キレート形成基Xはアセト酢酸エステルまたはβジケトン残基を表し、n、mは1以上の整数を表す。ただし、Mがジルコニウム又はチタニウムの場合、m+nは4であり、Mがアルミニウムの場合はm+nは3である。)
  6. 前記シランカップリング剤が、下記式(2)で表わされる物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の電子写真感光体。
    (Z)a−Si(Y)c−(A)b (2)
    (式中、Zはアルコキシ基、ハロゲン原子またはアミノ基を表し、Aはアルキル基またはアリール基を表し、有機官能基Yは−BOOC(R′)C=CH2、−BNHR″または−BNH2を表す。R′はアルキル基を表し、R″はアルキル基またはアリール基を表し、Bはアルキレン基または−O−、−NH−、−CO−を含むアルキレン基を表す。aおよびcは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表し、a+b+cは4である。)
  7. 有機金属化合物とシランカップリング剤をプレポリマー化した後溶媒にて希釈して下引き層塗布液を作製し、支持体上に塗布・硬化して下引き層を形成し、その上に感光層を設けることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  8. 前記プレポリマー化を予備混合により行うことを特徴とする請求項7記載の電子写真感光体の製造方法。
  9. 前記下引き層塗布液を作製する時、プレポリマー化のための予備混合時に酸や水を添加することを特徴とする請求項7又は8記載の電子写真感光体の製造方法。
  10. 前記下引き層塗布液を作製する時、プレポリマー化のための予備混合時に非反応性気体を通過させることを特徴とする請求項7、8又は9記載の電子写真感光体の製造方法。
  11. 前記有機金属化合物が、下記式(1)で表わされる物質であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項記載の電子写真感光体の製造方法。
    (RO)m−M−Xn (1)
    (式中、Rはアルキル基、Mはジルコニウム・チタニウム又はアルミニウムを表し、キレート形成基Xはアセト酢酸エステルまたはβジケトン残基を表し、n、mは1以上の整数を表す。ただし、Mがジルコニウム又はチタニウムの場合、m+nは4であり、Mがアルミニウムの場合はm+nは3である。)
  12. 前記シランカップリング剤が、下記式(2)で表わされる物質であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項記載の電子写真感光体の製造方法。
    (Z)a−Si(Y)c−(A)b (2)
    (式中、Zはアルコキシ基、ハロゲン原子またはアミノ基を表し、Aはアルキル基またはアリール基を表し、有機官能基Yは−BOOC(R′)C=CH2、−BNHR″または−BNH2を表す。R′はアルキル基を表し、R″はアルキル基またはアリール基を表し、Bはアルキレン基または−O−、−NH−、−CO−を含むアルキレン基を表す。aおよびcは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表し、a+b+cは4である。)
  13. 電子写真感光体の製造に用いる下引き層塗布液において、有機金属化合物とシランカップリング剤をプレポリマー化し後溶媒にて希釈して作製することを特徴とする電子写真感光体の製造に用いる下引き層塗布液。
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