JP4089992B2 - 電子写真用像担持体とそれを用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジ - Google Patents
電子写真用像担持体とそれを用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光体として用いる電子写真用像担持体と、それを用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタル信号処理されたデータを書き込むため、有機感光体上にドット光露光して静電潜像を形成し、反転現像方式により画像形成を行う電子写真画像形成方法が盛んに行われるようになった。
【0003】
このような方式に用いられる有機感光体には、長期の使用にわたって安定でかつ高い解像度での書き込みにも対応できることが要求されるため、感光体の耐久性向上が求められてきた。しかしながら、有機感光体の欠点は強度的に弱く、感光層の減耗や傷による欠陥が発生し易く耐久性の面で改良が求められてきた。
【0004】
この問題を解決するために種々の試みがなされてきた。例えば特開平9−319130号公報には、表面層に硬化性の有機ケイ素系高分子とコロイダルシリカの縮合物を含有させる技術などが報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の発明は、確かに有効な手段となり得る場合もあるが、この方法によっても必ずしも十分な問題解決にならないばかりか、別の問題を派生してしまうこともあることがわかり、その解決策を見つける必要があることがわかった。
【0006】
本発明者等の検討によれば、有機ケイ素系の架橋膜は未反応の加水分解性基やシラノール基が膜表面に残存し易く、高湿環境下において水分子の吸着の影響を受けやすい問題がある。未反応基が多いと、高湿環境下において水分子や帯電時に生成する放電生成物の吸着が起こりやすくなり、その結果表面抵抗が低下し、画像流れ等の問題が発生する。
【0007】
上記現象は特に像担持体ドラム停止時に帯電極近傍に位置した部位で顕著に見られ、例えば排風や像担持体ドラム近傍に設置した加熱装置では、帯電極下まで十分に画像流れ現象を抑制することは困難であった。これは例え装置の稼働を停止しても、稼働時に出来た活性酸素等の有害物は、各帯電極近傍に止まり回転を停止した像担持体の表面に塗設された感光体に作用するのであろうと考えられる。そして、従来のごとき排風の吹きつけや像担持体とは別体として近傍に設置した加熱装置では、像担持体の表面を均一に加温することが出来ず、高湿環境下における水分子の吸着等を防止するには不十分なのであろうと考えられる。
【0008】
本発明の目的は、感光体の帯電特性がよく高感度で耐摩耗性の高い、高湿環境下において表面抵抗が低下せず、従って画像流れ等の問題が発生しない電子写真用像担持体と、それを用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題を解決するため鋭意検討したところ、有機ケイ素化合物を架橋させてなる層を設けた感光体の表面を、直接加熱する加熱装置によりこの問題が解決できることを見いだし本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の目的は、下記構成の何れかを採ることにより達成される。
【0011】
〔1〕 電荷輸送性能を有する構造単位を有し、且つ架橋構造を有するシロキサン樹脂を含有する表面保護層を持つ感光体と、該感光体の加熱装置を有することを特徴とする電子写真用像担持体。
【0012】
〔2〕 前記架橋構造を有するシロキサン樹脂を含有する層が水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物とコロイダルシリカを反応させて得られる樹脂層であることを特徴とする〔1〕記載の電子写真用像担持体。
【0015】
〔3〕 前記シロキサン樹脂が水酸基あるいは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物と、水酸基と電荷輸送性能を有する構造単位を含む化合物とを反応させて得られるシロキサン樹脂であることを特徴とする〔1〕記載の電子写真用像担持体。
【0016】
〔4〕 前記シロキサン樹脂を含有する層が、酸化防止剤を含有することを特徴とする〔1〕〜〔3〕の何れか1項記載の電子写真用像担持体。
【0017】
〔5〕 前記シロキサン樹脂を含有する層が、酸化防止剤としてヒンダードフェノール又はヒンダードアミン化合物を含有することを特徴とする〔4〕記載の電子写真用像担持体。
【0019】
〔6〕 前記感光体の内面から加熱装置により感光体を加熱して画像形成を行うことを特徴とする〔5〕記載の電子写真用像担持体。
【0020】
〔7〕 〔1〕〜〔6〕の何れか1項記載の電子写真用像担持体を用い、且つ該像担持体を加熱して画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。
【0021】
〔8〕 前記感光体の内面から感光体を加熱して画像形成を行うことを特徴とする〔7〕記載の画像形成方法。
【0022】
〔9〕 〔1〕〜〔6〕の何れか1項記載の電子写真用像担持体を用い、帯電、像露光、現像、転写・分離、クリーニングの工程を経て画像形成することを特徴とする画像形成装置。
【0023】
〔10〕 〔1〕〜〔6〕の何れか1項記載の電子写真用像担持体を用い、帯電、像露光、現像、転写・分離、クリーニングの工程を経る画像形成に使用するプロセスカートリッジにおいて、電子写真用像担持体と帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、クリーニング器の少なくとも何れか1つとを組み合わせて造られていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0024】
本発明の感光体とは、通常用いられている意味とは少しことなり、感光性を示す層及びこれを補助又は保護する表面保護層や導電性層から感光層への悪影響を防止する中間層を含めた、電子写真感光体を構成する主要構成層を指している。
【0025】
これに対し本発明の像担持体とは、さらに導電性層や支持体をも含む、通常よく用いられる意味での像担持体を指している。尚、通常は導電性層や支持体をも含めてこれを感光体と呼ぶことも行われているが、本発明においては明確に区別している。それゆえ、本発明における加熱装置が装備される場合は、像担持体といった場合はその構成要素の一つに含まれるが、感光体と呼んだ場合にはそれを含まない。
【0026】
従って、本発明の実施態様として、例えば感光体の内面に面状ヒーターを組み込んだ図1のような形態等が挙げられ、これ全体を像担持体と呼んでいる。
【0027】
図1は本発明の一例を示す像担持体の構成を示す断面図である。本図において感光体ドラム10の構成は、アルミニウム製の支持体1の上に中間層、電荷発生層と電荷輸送層よりなる感光層5、その上に設けられた表面保護層6があり、一方支持体のさらに内面には面状加熱器をコイル状に巻き付けた加熱装置7がある。
【0028】
本発明に係わる加熱方法としては、感光体面又は感光体支持体ドラム内部へ強制的に熱風を吹き込む方法などでも良いが、更に好ましくは加熱装置を組み込んで感光体ドラム内部から直接加熱することで、ドラムのどの位置が帯電極直下で停止しても均一に加熱することが可能となる。この加熱することで像担持体(感光体ドラム)表面の相対湿度を低減させることが可能となるため、画像全面に渡って高湿環境でも良好な画像を得ることができる。従って像担持体自体が加熱体を備えた直接加熱が最も有効である。また、その上に外部のヒーターを併用することにより更に効果を高めることができる。
【0029】
加熱装置は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等を支持体としてニクロム線等の発熱体を挟み込んだ面状発熱体やセラミック発熱体などが用いられる。
【0030】
感光体の温度範囲は通常50%RH以上の環境では30℃〜65℃が好ましく、特に70%RH以上の環境では40℃〜50℃に感光体ドラム温度を維持することが望ましい。
【0031】
また、画像流れを解消する目的で電源投入時から画像形成までの間に上記温度範囲に感光体の温度を保ちながら感光体を回転させることが有効である。この操作を行うことでより低い温度で画像流れを抑制することができる。
【0032】
本発明における架橋構造を有するシロキサン樹脂を含有する層は、表面保護層であることが好ましく、好ましくは電荷輸送性能を有する構造単位を含み、且つ架橋構造を有するシロキサン樹脂を含有する層である。
【0033】
架橋構造を有するシロキサン樹脂としては、予め構造単位内にシロキサン結合を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーに触媒や架橋剤を加えて新たな化学結合を形成させ三次元網目構造を形成した、或いはシロキサン結合でモノマー、オリゴマー、ポリマーから三次元網目構造を形成したものである。ここで用いられる構造単位は、例えば一般的にはアルコキシシランの縮合反応やシラノールの縮合反応により三次元網目構造を形成することができるものであり、又、三次元網目構造にはコロイダルシリカのような粒子を含ませても良い。
【0034】
本発明において、水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物における加水分解性基とは、メトキシ基、エトキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。中でも好ましくは−ORで表される加水分解性基が良く、Rがアルコキシ基を形成する原子団であり、炭素数が1〜6であることが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、メトキシエチル基等が挙げられる。
【0035】
本発明におけるシロキサン結合を含有する硬化性樹脂の原料として用いられる有機ケイ素化合物は、一般にはケイ素原子に結合している加水分解性基の数nが1のとき、有機ケイ素化合物の高分子化反応は抑制される。nが2、3又は4のときは高分子化反応が起こりやすく、特に3或いは4では高度に架橋反応を進めることが可能である。従って、これらをコントロールすることにより得られる塗布層液の保存性や塗布層の硬度等を制御することが出来る。
【0036】
一方、水酸基と電荷輸送性能を有する構造単位を含む化合物とは、代表的には通常用いられる構造の電荷輸送物質に水酸基をも有している化合物である。
【0037】
即ち電荷輸送性能を有する構造単位を持ち、単独で電子或いは正孔のドリフト移動度を有する性質を示すものであり、又、本発明の電荷輸送性化合物の別の定義としては通常のTime−Of−Flight法などの電荷輸送性能を検知できる公知の方法により電荷輸送に起因する検出電流が得られる化合物として表現することもできる。
【0038】
例えば正孔輸送型としてはオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾリン、ビスイミダゾリジン、スチリル、ヒドラゾン、ベンジジン、ピラゾリン、スチルベン、アミン、オキサゾロン、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、キナゾリン、ベンゾフラン、アクリジン、フェナジン、アミノスチルベン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、ポリ−9−ビニルアントラセンなどの構造単位を有する化合物及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0039】
又、電子輸送型としては無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、テトラニトロベンゼン、ニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、キノンクロルイミド、クロラニル、ブロマニル、ベンゾキノン、ナフトキノン、ジフェノキノン、トロポキノン、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、4−ニトロベンゾフェノン、4,4′−ジニトロベンゾフェノン、4−ニトロベンザルマロンジニトリル、α−シアノ−β−(p−シアノフェニル)−2−(p−クロロフェニル)エチレン、2,7−ジニトロフルオレン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、9−フルオレニリデンジシアノメチレンマロノニトリル、ポリニトロ−9−フルオロニリデンジシアノメチレンマロノジニトリル、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、5−ニトロサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、フタル酸、メリット酸などの構造単位を有する化合物及びこれらの誘導体が挙げられるが、これらの構造に限定されるものではない。
【0040】
即ち、代表的には硬化性有機ケイ素化合物と結合して、樹脂層を形成することが出来る下記一般式で示される電荷輸送性化合物である。
【0041】
X−(R−OH)m m≧1
ここにおいて、
X:電荷輸送性能を有する構造単位、
R:単結合子、各々置換又は非置換のアルキレン、アリーレン基、
m:好ましくは1〜5である。
【0042】
その中でも代表的なものを挙げれば下記のごときものがある。例えばトリアリールアミン系化合物とは、トリフェニルアミン等のトリアリールアミン構造を含み、該基を構成する炭素原子を介して炭素原子と結合する水酸基を有する化合物である。
【0043】
1.トリアリールアミン系化合物
【0044】
【化1】
【0045】
2.ヒドラゾン系化合物
【0046】
【化2】
【0047】
3.スチルベン系化合物
【0048】
【化3】
【0049】
4.ベンジジン系化合物
【0050】
【化4】
【0051】
5.ブタジエン系化合物
【0052】
【化5】
【0053】
6.その他の化合物
【0054】
【化6】
【0055】
本発明のシロキサン樹脂を含有する層には、酸化防止剤、特にヒンダードフェノール化合物又はフィンダードアミン化合物を含有させることが望ましい。これらの化合物を含有させることにより、本発明の効果がより顕著になるからである。
【0056】
次に本発明の具体的な化合物例を示す。
【0057】
【化7】
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
【化10】
【0061】
【化11】
【0062】
【化12】
【0063】
【化13】
【0064】
【化14】
【0065】
【化15】
【0066】
【化16】
【0067】
【化17】
【0068】
【化18】
【0069】
【化19】
【0070】
【化20】
【0071】
【化21】
【0072】
【化22】
【0073】
【化23】
【0074】
【化24】
【0075】
本発明の感光体の層構成は、特に限定はないが、電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層等の感光層とその上に本発明の樹脂層を塗設した構成をとるのが好ましい。
【0076】
本発明の感光層に含有される電荷発生物質(CGM)は単独で又は適当なバインダー樹脂と共に層形成が行われる。電荷発生物質の代表的なものの例としては、ピリリウム系染料、チオピリリウム系染料、フタロシアニン系顔料、アントアントロン系顔料、ジベンズピレンキノン系顔料、ピラントロン系顔料、アゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、インジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、シアニン系顔料等がある。
【0077】
前記感光層に含有される電荷輸送物質(CTM)としては、例えばオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン誘導体、スチルベン化合物、アミン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、ポリ−9−ビニルアントラセン等が挙げられこれらの電荷輸送物質(CTM)は通常バインダーと共に層形成が行われる。
【0078】
単層構成の感光層、及び積層構成の場合の電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)に含有されるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0079】
本発明に於いて電荷発生層中の電荷発生物質とバインダー樹脂との割合は重量比で1:5〜5:1が好ましい。また電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.05〜2μmが好ましい。
【0080】
又、電荷輸送層は前記の電荷輸送物質とバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解し、その溶液を塗布乾燥することによって形成される。電荷輸送物質とバインダー樹脂との混合割合は重量比で3:1〜1:3が好ましい。
【0081】
電荷輸送層の膜厚は5〜50μm、特には10〜40μmが好ましい。また、電荷輸送層が複数設けられている場合は、電荷輸送層の上層の膜厚は10μm以下が好ましく、かつ、電荷輸送層の上層の下に設けられた電荷輸送層の全膜厚より小さいことが好ましい。
【0082】
本発明に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0083】
次に本発明の電子写真感光体の導電性支持体としては、
1)アルミニウム板、ステンレス板などの金属板、
2)紙或いはプラスチックフィルムなどの支持体上に、アルミニウム、パラジウム、金などの金属薄層をラミネート若しくは蒸着によって設けたもの、
3)紙或いはプラスチックフィルムなどの支持体上に、導電性ポリマー、酸化インジウム、酸化錫などの導電性化合物の層を塗布若しくは蒸着によって設けたもの等が挙げられる。
【0084】
次に本発明の電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお前記スプレー塗布については例えば特開平3−90250号及び特開平3−269238号公報に詳細に記載され、前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0085】
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0086】
中間層用の材料としては、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂ポリアミド類(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン、アルコキシメチル化ナイロン等)、ポリウレタン、ゼラチン及び酸化アルミニウムを用いた中間層、或いは特開平9−68870号公報の如く金属アルコキシド、有機金属キレート、シランカップリング剤による硬化型中間層等が挙げられる。中間層の膜厚は、0.1〜10μmが好ましく、特には0.1〜5μmが好ましい。
【0087】
又、支持体の形状はドラム状でもシート状でもベルト状でもよく、適用する電子写真装置に適した形状であればよい。
【0088】
本発明の電子写真感光体は、複写機、レーザープリンター、LEDプリンター、液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適用し得るものであるが、更には電子写真技術を応用したディスプレイ、記録、軽印刷、製版、ファクシミリ等の装置にも広く適用し得るものである。
【0089】
図2に本発明の電子写真感光体を搭載する画像形成装置の断面図を示す。
【0090】
図2において10は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に本発明の樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。12はスコロトロンの帯電器で、感光体ドラム10周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器12による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた露光部11による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0091】
感光体への一様帯電の後、像露光器13により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器13は図示しないレーザーダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー131、fθレンズ等を経て反射ミラー132により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0092】
その静電潜像は次いで現像器14で現像される。感光体ドラム10周縁にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒色(K)等のトナーとキャリアとから成る現像剤をそれぞれ内蔵した現像器14が設けられていて、先ず1色目の現像がマグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ141によって行われる。現像剤は、例えばフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、ポリエステルを主材料として色に応じた顔料と荷電制御剤、シリカ、酸化チタン等を加えたトナーとからなるもので、現像剤は図示していない層形成手段によって現像スリーブ141上に100〜600μmの層厚に規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム10と現像スリーブ141の間に直流及び/又は交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。
【0093】
カラー画像形成に於いては、1色目の顕像化が終った後2色目の画像形成行程にはいり、再びスコロトロン帯電器12による一様帯電が行われ、2色目の潜像が像露光器13によって形成される。3色目、4色目についても2色目と同様の画像形成行程が行われ、感光体ドラム10周面上には4色の顕像が形成される。
【0094】
一方モノクロの電子写真装置では現像器14は黒トナー1種で構成され、1回の現像で画像を形成することができる。
【0095】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラ17の回転作動により転写域へと給紙される。
【0096】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム10の周面に転写ローラ(転写器)18が圧接され、給紙された記録紙Pを挟着して多色像が一括して転写される。
【0097】
次いで記録紙Pは転写ローラとほぼ同時に圧接状態とされた分離ブラシ(分離器)19によって除電がなされ、感光体ドラム10の周面により分離して定着装置20に搬送され、熱ローラ201と圧着ローラ202の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラ21を介して装置外部に排出される。なお前記の転写ローラ18及び分離ブラシ19は記録紙Pの通過後感光体ドラム10の周面より退避離間して次なるトナー像の形成に備える。
【0098】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム10は、クリーニング器22のブレード221の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び露光部11による除電と帯電器12による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。なお感光体上にカラー画像を重ね合わせて形成する場合には、前記のブレード221は感光体面のクリーニング後直ちに移動して感光体ドラム10の周面より退避する。
【0099】
尚、30は感光体(像担持体)、帯電器、転写器・分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なカートリッジである。
【0100】
電子写真画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0101】
像露光は、画像形成装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を感光体に照射すること、或いはセンサーで原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、LEDアレイの駆動、又は液晶シャッターアレイの駆動を行い感光体に光を照射することなどにより行われる。
【0102】
尚、ファクシミリのプリンターとして使用する場合には、像露光器13は受信データをプリントするための露光を行うことになる。
【0103】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0104】
下記のごとくして感光体を作製した。
【0105】
実施例1
〈中間層〉
ポリアミド樹脂(アミランCM−8000:東レ社製) 60g
メタノール 1600ml
1−ブタノール 400ml
を混合し、溶解して中間層塗布液を調製した。この塗布液を円筒状アルミニウム支持体上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.3μmの中間層を形成した。
【0106】
〈電荷発生層〉
Y型チタニルフタロシアニン(C1) 60g
シリコーン樹脂溶液(KR5240、15%キシレン−ブタノール溶液
:信越化学社製) 700g
2−ブタノン 2000ml
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0107】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質(D1) 200g
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(ユーピロンZ200
:三菱ガス化学社製) 300g
1,2−ジクロロエタン 2000ml
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0108】
【化25】
【0127】
実施例7
実施例1の電荷輸送層の上にメチルシロキサン単位80モル%、メチル−フェニルシロキサン単位20モル%からなるポリシロキサンのメタノール溶液にモレキュラーシーブ4Aを添加し、15時間静置し脱水処理した。この溶液10重量部をトルエン10重量部に溶解し、これにメチルトリメトキシシラン1重量部、ジブチル錫アセテート0.2重量部を加え均一な溶液にした。
【0128】
これにジヒドロキシメチルトリフェニルアミン6重量部、ヒンダードアミン(例示化合物2−1)0.3重量部を加えて混合し、この溶液を乾燥膜厚1μmの表面保護層として塗布して120℃、1時間の加熱を行い、実施例7の感光体を作製した。この感光体ドラムの導電性基体の内側にニクロム線の発熱体を挟み込んだ面状発熱体を挿入し、内面から加熱可能な状態とした。
【0129】
実施例8
実施例7の表面保護層用溶液にコロイダルシリカ0.5重量部を加えた他は実施例7と同様にして感光体を作製した。
【0130】
実施例9
実施例1の電荷輸送層上に市販の有機ケイ素化合物からなるKP−85(信越化学工業社製)60重量部、2−プロパノール60重量部を加えて均一に溶解し、これにジヒドロキシメチルトリフェニルアミン6重量部を混合し、均一な溶液とした。この溶液を乾燥膜厚1μmの保護層となるように塗布し、120℃、1時間の乾燥を行い、感光体を作製した。この感光体ドラムの導電性基体の内側にニクロム線の発熱体を挟み込んだ面状発熱体を挿入し、内面から加熱可能な状態とした。
【0131】
実施例10
実施例1の電荷輸送層上に市販の有機ケイ素化合物からなるKP−854(信越化学工業社製)60重量部、2−プロパノール60重量部を加えて均一に溶解し、これにジヒドロキシメチルトリフェニルアミン6重量部を混合し、均一な溶液とした。この溶液を乾燥膜厚1μmの保護層となるように塗布し、120℃、1時間の乾燥を行い、感光体を作製した。この感光体ドラムの導電性基体の内側にニクロム線の発熱体を挟み込んだ面状発熱体を挿入し、内面から加熱可能な状態とした。
【0132】
実施例11
実施例1の電荷輸送層上に市販の有機ケイ素化合物からなるX−40−2239(信越化学工業社製)30重量部、2−プロパノール60重量部を加えて均一に溶解し、これにジヒドロキシメチルトリフェニルアミン6重量部を混合し、均一な溶液とした。この溶液を乾燥膜厚1μmの保護層となるように塗布し、100℃、1時間の乾燥を行い感光体を作製した。この感光体ドラムの導電性支持体の内側にニクロム線の発熱体を挟み込んだ面状発熱体を挿入し、内面から加熱可能な状態とした。
【0133】
実施例12
実施例1の電荷輸送層上に市販の有機ケイ素化合物からなるX−40−2269(信越化学工業社製)30重量部、2−プロパノール60重量部を加えて均一に溶解し、これにジヒドロキシメチルトリフェニルアミン6重量部を混合し、均一な溶液とした。この溶液を乾燥膜厚1μmの保護層となるように塗布し、100℃、1時間の乾燥を行い、感光体を作製した。この感光体ドラムの導電性基体の内側にニクロム線の発熱体を挟み込んだ面状発熱体を挿入し、内面から加熱可能な状態とした。
【0134】
実施例13
実施例7において表面保護層中のジヒドロキシメチルトリフェニルアミンを4−[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリフェニルアミンに代えた以外は全く同様にして感光体を作製した。
【0135】
実施例14
実施例8において表面保護層中のジヒドロキシメチルトリフェニルアミンを4−[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリフェニルアミンに代えた以外は全く同様にして感光体を作製した。
【0136】
実施例15
実施例7において表面保護層中のヒンダードアミン(例示化合物2−1)の代わりにヒンダードフェノール(例示化合物1−32)にした以外は全く同様にして感光体を作製した。
【0137】
実施例16
実施例8において表面保護層中のヒンダードアミンをのぞいた以外は全く同様にして感光体を作製した。
【0138】
比較例5
実施例7において表面保護層を用いない他は実施例7と同様にして感光体を作製した。
【0139】
特性評価
1.画像評価
評価は上記実施例7〜16、比較例5の感光体をコニカ社製デジタル複写機Konica7050を改造し、露光量を適正化した評価機に搭載し、初期帯電電位を−650Vに設定し、高温高湿環境(30℃、80%RH)において、感光体を40℃に保ちながら10,000コピーの実写評価を行った。画像は初期画像と10,000コピー後の画像を40℃の温度条件でサンプリングし評価した。
【0140】
◎:異常なし
○:わずかに解像力低下あるが実用化は可能
△:一部解像度の低下あり実用上好ましくない
×:画像流れ発生、実用化は出来ない
2.耐摩耗性評価
上記10,000コピー後の膜厚減耗量を評価した。
【0141】
結果を表2に示す。
【0142】
更に、下記の条件で評価を行って表2に示した。
【0143】
比較例6
実施例7において実写中感光体の加熱ない状態で同様の10,000コピーの実写を行った。
【0144】
比較例7
実施例8において実写中感光体の加熱ない状態で同様の10,000コピーの実写を行った。
【0145】
比較例8
比較例5において実写中感光体の加熱ない状態で同様の10,000コピーの実写を行った。
【0146】
比較例9
実施例13において実写中感光体の加熱ない状態で同様の10,000コピーの実写を行った。
【0147】
これらも実施例7と同様の評価を行った結果を表2に示した。
【0148】
【表2】
【0149】
上記の結果から、像担持体(感光体ドラム)温度を適当な温度範囲で制御することで本発明の表面保護層の耐摩耗性及び画像品質を向上させることができる。逆に本発明の表面保護層を用いない感光体では加熱装置の効果が認められていないことがわかる。
【0150】
【発明の効果】
本発明により、感光体の帯電特性がよく高感度で耐摩耗性の高い、高湿環境下において表面抵抗が低下せず、従って画像流れ等の問題が発生しない電子写真用像担持体と、それを用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる電子写真用像担持体の断面図である。
【図2】本発明に係わる画像形成装置の断面図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム製の支持体
5 感光層
6 表面保護層
7 加熱装置
10 像担持体である感光体ドラム
11 発光ダイオード等を用いた露光部
12 帯電器
13 像露光器
14 現像器
17 給紙ローラ
18 転写ローラ(転写器)
19 分離ブラシ(分離器)
20 定着装置
21 排紙ローラ
22 クリーニング器
30 感光体、帯電器、転写器・分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジ
Claims (10)
- 電荷輸送性能を有する構造単位を有し、且つ架橋構造を有するシロキサン樹脂を含有する表面保護層を持つ感光体と、該感光体の加熱装置を有することを特徴とする電子写真用像担持体。
- 前記架橋構造を有するシロキサン樹脂を含有する層が水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物とコロイダルシリカを反応させて得られる樹脂層であることを特徴とする請求項1記載の電子写真用像担持体。
- 前記シロキサン樹脂が水酸基あるいは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物と、水酸基と電荷輸送性能を有する構造単位を含む化合物とを反応させて得られるシロキサン樹脂であることを特徴とする請求項1記載の電子写真用像担持体。
- 前記シロキサン樹脂を含有する層が、酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の電子写真用像担持体。
- 前記シロキサン樹脂を含有する層が、酸化防止剤としてヒンダードフェノール又はヒンダードアミン化合物を含有することを特徴とする請求項4記載の電子写真用像担持体。
- 前記感光体の内面から加熱装置により感光体を加熱して画像形成を行うことを特徴とする請求項5記載の電子写真用像担持体。
- 請求項1〜6の何れか1項記載の電子写真用像担持体を用い、且つ該像担持体を加熱して画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。
- 前記感光体の内面から感光体を加熱して画像形成を行うことを特徴とする請求項7記載の画像形成方法。
- 請求項1〜6の何れか1項記載の電子写真用像担持体を用い、帯電、像露光、現像、転写・分離、クリーニングの工程を経て画像形成することを特徴とする画像形成装置。
- 請求項1〜6の何れか1項記載の電子写真用像担持体を用い、帯電、像露光、現像、転写・分離、クリーニングの工程を経る画像形成に使用するプロセスカートリッジにおいて、電子写真用像担持体と帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、クリーニング器の少なくとも何れか1つとを組み合わせて造られていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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