JP4356228B2 - 電子写真感光体と、該感光体を用いた電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置、及びプロセスカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体(以下、単に感光体とも云う)と、該感光体を用いた電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体は有機光導電性物質を含有する有機感光体が最も広く用いられている。有機感光体は可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料が開発し易いこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いこと等が他の感光体に対して有利な点であるが、唯一の欠点は機械的強度が弱く、多数枚の複写やプリント時に感光体表面の劣化や傷の発生がある事である。
【0003】
一般に、カールソン法の電子写真画像形成方法においては、感光体は一様に帯電された後、露光によって画像様に電荷が消去され静電潜像が形成される。次に前記感光体の静電潜像はトナーによって現像、可視化され、次いでそのトナーは紙等に転写された後、感光体はその上に残留するトナーをクリーニングブレード等により除去され、必要により残留電荷の消去露光を受けた後、次の画像形成に移る。
【0004】
このように、電子写真感光体の表面は、帯電器、現像器、転写手段、及びクリーニング器等により、電気的、機械的な外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求され、特に摺擦による感光体表面の摩耗や傷の発生、異物の混入や紙詰まり処理時の衝撃等による膜剥がれ等に対する機械的耐久性が要求される。なかでも衝撃による傷や膜剥がれに対する耐久性については、無機感光体並みの強度が強く求められている。
【0005】
前記のような要求される様々な特性を満たすため、これまで種々の事が検討されてきた。
【0006】
例えば、機械的耐久性に関しては、有機感光体の表面にビスフェノールZ型ポリカーボネートをバインダー(結着樹脂)として用いることにより、表面の摩耗特性、トナーフィルミング特性が改善される事が報告されている。又、特開平6−118681号公報では感光体の表面層として、硬化性シロキサン樹脂を用いることが報告されている。
【0007】
しかし、ビスフェノールZ型ポリカーボネートバインダーを用いた感光体では、なお耐摩耗特性が不足しており、十分な耐久性を有していない。一方、硬化性シロキサン樹脂の表面層では耐摩耗特性は改善されるが、シロキサン系樹脂は電荷輸送機能を持たないことから特に低湿環境下では十分な光感度が得られないと言った問題があった。更に有機電子写真感光体の感光層に用いられるバインダー樹脂との接着性に劣り、表面層として使用した場合には、長期の繰り返し使用によって受ける外力によるストレスにより感光層からの剥がれが発生するといった問題がある。特に感光体が紙との分離性を確保する目的で、分離爪を使用する環境下で使用される場合には、爪の当接位置に通常部より大きな外力がかかるため、特に膜剥がれが発生し易く、当接位置での黒スジ故障の原因となる。
【0008】
この問題に対して近年、シロキサン系樹脂の特性を改善するための試みがなされている。例えば特開平9−190004号公報、特開平10−251277号公報には電荷輸送機能を持つ有機ケイ素化合物を用いることが報告されている。しかしながら、これらの電荷輸送機能を持つ有機ケイ素化合物は本来のシロキサン系樹脂の持つ強度を低下させる問題があった。
【0009】
又、シロキサン系樹脂を表面層に有する電子写真感光体は高温高湿条件(以後HH条件とも云う)下において、カブリの発生や画像ボケが発生しやすい傾向にあり、特性の改善が求められている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を解決することの出来る表面硬度が高く、耐摩耗性、耐傷性が高く、繰り返し使用時の電子写真特性が高温高湿下でも安定な、従って、良好な画像が繰り返し得られる電子写真感光体を提供する事にあり、又、該感光体を用いた電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題解決のため鋭意努力した結果、架橋構造を有するシロキサン系樹脂層に特定の電荷輸送性化合物を反応させることにより、強度特性を損なうことなく電子写真特性や接着性を向上できることを見いだした。
【0012】
即ち、本発明の目的は以下の構成により達成される。
【0013】
1.導電性支持体上に少なくとも感光層、表面樹脂層を有する電子写真感光体において、該表面樹脂層が分子量が400以下の下記一般式(1)で表される電荷輸送性化合物、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物及び下記一般式(4)で表されるケイ素化合物を混合し加熱して得られた3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂を含有する電子写真感光体であって、該一般式(2)で表されるケイ素化合物は該一般式(4)で表されるケイ素化合物が加水分解して得られることを特徴とする電子写真感光体。
【0014】
一般式(1) X1−(Y1−A1)m
(式中、X1は電荷輸送性能を有する構造単位、Y1は単結合、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアリーレン基を表し、A1は水酸基を表す。mは2以上の整数、Bは加水分解性基を表す。)
一般式(2) RnSi(OH)4−n
(式中、Rは置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のフルオロアルキル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−アミノプロピル基を表す。nは0〜3の整数)
一般式(4) RnSi(X)4−n
(式中、Rは置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のフルオロアルキル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−アミノプロピル基、Xは加水分解性基を表す。nは0〜3の整数)
【0017】
2.前記一般式(1)の電荷輸送性化合物の少なくとも1つがm=3以上の電荷輸送性化合物であることを特徴とする前記1項に記載の電子写真感光体。
【0019】
3.前記一般式(2)に於いて、n=1のケイ素化合物を用いることを特徴とする前記1または2項に記載の電子写真感光体。
【0020】
4.前記一般式(2)に於いて、n=1のケイ素化合物1モルに対してn=2のケイ素化合物0.1〜5モルを併用することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0021】
5.前記表面樹脂層がコロイダルシリカを含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0022】
6.前記表面樹脂層が、更に酸化防止剤を含有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0023】
7.前記表面樹脂層が感光体の表面層であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0024】
8.電子写真感光体上に、少なくとも帯電、像露光、現像、クリーニングを行う工程を有する電子写真画像形成方法に於いて、該電子写真感光体に前記1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする電子写真画像形成方法。
【0025】
9.電子写真感光体と、少なくとも帯電、像露光、現像、クリーニングの手段を有する電子写真画像形成装置に於いて、該電子写真感光体に前記1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【0026】
10.少なくとも帯電、像露光、現像、クリーニングの手段を有する電子写真画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが前記1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と帯電器、像露光器、現像器、クリーニング器の少なくともいずれか1つとを一体に組み合わせて有しており、該電子写真画像形成装置に出し入れ自由に設計されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
なお、次の態様も本発明と同様に好ましい。
A.導電性支持体上に少なくとも感光層、樹脂層を有する電子写真感光体において、該樹脂層が下記一般式(3)で表される分子量400以下の電荷輸送性化合物と前記一般式(2)で表されるケイ素化合物若しくはその縮合体の少なくとも1つとを反応させて得られるシロキサン系樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
一般式(3) X2−Y2−A2
(式中、X2は電荷輸送性能を有する構造単位、Y2は単結合、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアリーレン基を表し、A2は水酸基、SiR′pB3−pを表す。pは1〜2の整数、R′は置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、Bは加水分解性基を表す。)
【0027】
以下本発明について、詳細に説明する。
【0028】
本発明は以下の3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂を含有する樹脂層を有する電子写真感光体である。
【0029】
《シロキサン系樹脂》
上記の3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂は前記一般式(2)の有機ケイ素化合物を原料としたシロキサン樹脂中に前記一般式(1)又は前記一般式(3)で表される低分子量の反応性基を有する電荷輸送性化合物を該有機ケイ素化合物、或いは該有機ケイ素化合物の縮合体との化学反応により、シロキサン樹脂構造の一部として取り込み、その結果電荷輸送性能を有する構造単位を有し、且つ3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂を作り出したものである。
上記の3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂とは、3官能以上の官能基数を有する化合物を含有させて、縮合反応によって得られた樹脂をいう。
一般に架橋の進んだものほど溶媒に対する溶解性が低くなる傾向を有するものであり、架橋構造を有することは溶媒に対する溶解性から予想されるものである。また、架橋構造を反映する3官能基が反応している/していないことは、反応後の得られたものをIR等により測定して反応前に有していた官能基の特性ピークの消失等からも確認できる。
【0030】
本発明では数ある公知の有機ケイ素化合物の中から前記一般式(2)の有機ケイ素化合物を用い、前記一般式(1)、及び前記一般式(3)で表される低分子量の反応性基を有する電荷輸送性化合物と前記有機ケイ素化合物、或いは該有機ケイ素化合物の縮合体とを反応させることにより3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂の中に電荷輸送性能を有する構造単位を十分に取り込め、良好な電荷輸送性能を有し、且つ強度の強いシロキサン系樹脂を作成することができる。
【0031】
まず、一般式(2)の有機ケイ素化合物について説明する。
【0032】
一般式(2) RnSi(OH)4-n
(式中、Rは置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のフルオロアルキル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−アミノプロピル基を表す。nは0〜3の整数)
上記一般式中のRで示される基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、γ−メクリロキシプロピル、γ−アミノプロピル基、1,1,1−トリフロオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含フッ素基等を挙げることができる。
【0033】
又、本発明の3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂を製造するに際し、前記一般式(2)で示される有機ケイ素化合物を2種以上用いる場合はそれぞれの有機ケイ素化合物のRは同一でも良く、異なっていてもよい。
【0034】
本発明における3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂の原料として用いられる前記有機ケイ素化合物は、一般にはケイ素原子に結合している水酸基の数nが3のとき、有機ケイ素化合物の高分子化反応は抑制される。nが0、1又は2のときは高分子化反応が起こりやすく、特に0或いは1では高度に架橋反応を進めることが可能である。従って、これらをコントロールすることにより得られる塗布層液の保存性や塗布膜の硬度等を制御することが出来る。
【0035】
本発明の前記3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂の原料としては前記一般式(2)の内、n=1の化合物を用いることが好ましい。更に、n=1の化合物1モルに対しn=2の化合物が0.1〜5モル含まれている方がより好ましい。このような条件で本発明の3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂層を形成すると膜強度が強く、高耐久のシロキサン系樹脂層が得られる。
【0036】
又、前記3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂の原料としては前記有機ケイ素化合物を酸性条件下又は塩基性条件下でオリゴマー化或いはポリマー化した縮合物を用いることもできる。この場合、本発明に於いては該縮合体のモル換算は縮合体を構成する原料モノマーのモル数に変換して換算する。
【0037】
前記一般式(2)のケイ素化合物は下記一般式(4)の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を加水分解する事により得られる。
【0038】
一般式(4) RnSi(X)4-n
(式中、Rは一般式(2)のRと同じ、Xは加水分解性基を表す。nは0〜3の整数)
一般式(4)の加水分解性基Xとしてはメトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。特に炭素数6以下のアルコキシ基が挙げられる。
【0039】
又、前記3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂は該樹脂中に水酸基或いは加水分解性基を有するコロイダルシリカを含ませて、架橋構造の一部にシリカ粒子を取り込んだ樹脂にする事により、更に本発明の樹脂層を強硬度で、弾力性のある樹脂層とすることができる。
【0040】
次に、本発明に用いられる低分子量の反応性基を有する電荷輸送性化合物について記載する。
【0041】
本発明の電荷輸送性化合物は以下のような特徴を有している。
【0042】
・反応性基を複数個含有する反応性電荷輸送性化合物
本発明の電荷輸送性化合物は、反応性基を複数個含有するものが用いられる。反応性基を複数個有する場合にはシロキサン樹脂の三次元架橋構造の中に組み込まれる場合においても電荷輸送性化合物自体が架橋剤として機能し、その結果シロキサン樹脂単独で形成される場合と同様な強度特性を発現できる高い架橋密度の膜を得ることができる。但し、複数の反応性基のうち少なくとも1つの反応性基は同一の原子上には存在しないことが好ましい。すべての反応性基が同一の原子上に存在する場合は電荷輸送単位が有効に架橋剤として機能することが困難になる。
【0043】
一方、電荷輸送性化合物は機能上の要求からπ電子共役系の広がった比較的大きく、平面的な構造を有しているものが多い。このため分子サイズが大きくなると分子自体が剛直となるばかりでなく、シロキサン樹脂が三次元網目構造を形成する場合に緻密な網目構造をとりにくくなるため、目的とする高い強度が得られにくくなる。
【0044】
この問題を解決するためには複数の反応性基を有するとともに、比較的分子サイズの小さな電荷輸送性化合物が有効である。具体的には分子量の比較的小さい電荷輸送性化合物を用いることが好ましい。更に元素の組成上の差がなくても分子サイズが小さい電荷輸送性化合物を用いた場合には接着性も向上することが判明した。これはシロキサン樹脂膜自体が大分子の電荷輸送性化合物を用いた場合に比べて可とう性が増し、下層との密着性が向上したためと考えられる。
【0045】
具体的には分子量が400以下の分子量の電荷輸送性化合物を用いることが必要である。
【0046】
以下に一般式(1)、一般式(3)の電荷輸送性化合物の化合物構造について説明する。
【0047】
一般式(1) X1−(Y1−A1)m
(式中、X1は電荷輸送性能を有する構造単位、Y1は単結合、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアリーレン基を表し、A1は水酸基、SiR′pB3-pを表す。mは2以上の整数、pは1〜2の整数、R′は置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基を表し、Bは加水分解性基を表す。)
一般式(3) X2−Y2−A2
(式中、X2は電荷輸送性能を有する構造単位、Y2は単結合、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアリーレン基を表し、A2は水酸基、SiR′pB3-pを表す。pは1〜2の整数、R′は置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基を表し、Bは加水分解性基を表す。)
前記一般式(1)、一般式(3)中のX1、X2は電荷輸送性能を有する構造単位を示す化合物基である。ここで電荷輸送性能を有する構造単位とは一般式(1)、一般式(3)中のX1、X2の化合物基が電荷輸送性能を有していることを意味する。又、前記X1、X2の化合物基が存在し得ない場合は前記X1、X2基に水素原子を付加した一般式(X1H、X2H)の化合物が電荷輸送性化合物であればよい。
【0048】
尚、前記の電荷輸送性化合物とは電子或いは正孔のドリフト移動度を有する性質を示す化合物であり、又別の定義としてはTime−Of−Flight法などの電荷輸送性能を検知できる公知の方法により電荷輸送に起因する検出電流が得られる化合物として定義できる。
【0049】
前記一般式(1)、一般式(3)中のY1、Y2としては、単結合、置換又は無置換の炭素数1〜6のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、2−メチルプロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、ブチレン等、或いは炭素数1〜20のアリーレン基、例えばo−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0050】
又、前記一般式(1)、一般式(3)中のA1、A2の加水分解性基としてはメトキシ基、エトキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0051】
一般式(1)、一般式(3)中のX1、X2は電荷輸送性能を有する構造単位を示す化合物基としては正孔輸送型と電子輸送型があるが、正孔輸送型はオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾリン、ビスイミダゾリジン、スチリル、ヒドラゾン、ベンジジン、ピラゾリン、トリアリールアミン、オキサゾロン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、キナゾリン、ベンゾフラン、アクリジン、フェナジン等の構造単位を含む基及びこれらの誘導体から派生する基が挙げられる。一方、電子輸送型としては無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、テトタシアノエチレン、テトタシアノキノジメタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、テトラニトロベンゼン、ニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、キノンクロルイミド、クロラニル、ブロマニル、ベンゾキノン、ナフトキノン、ジフェノキノン、トロポキノン、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、4−ニトロベンゾフェノン、4、4′−ジニトロベンゾフェノン、4−ニトロベンザルマロンジニトリル、α−シアノ−β−(p−シアノフェニル)−2−(p−クロロフェニル)エチレン、2,7−ジニトロフルオレノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、9−フルオロニリデンジシアノメチレンマロニトリル、ポリニトロ−9−フルオロニリデンジシアノメチレンマロニトリル、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、パーフルオロ安息香酸、5−ニトロサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、フタル酸、メリット酸等の化学構造単位を含む1価以上の基が挙げられるが、これらの構造に限定されるものではない。
【0052】
以下に一般式(1)、一般式(3)で表される代表的な化合物例(Mwは分子量)をあげる。
【0053】
一般式(1)の化合物例
【0054】
【化1】
【0055】
【化2】
【0056】
一般式(3)の化合物例
【0057】
【化3】
【0058】
【化4】
【0059】
本発明の3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂の形成に際し、原料:前記一般式(2)の有機ケイ素化合総量(A)に対し、前記一般式(1)、又は一般式(3)で表される電荷輸送性化合物の総量(B)は(A)+(B)成分の総重量100部に対し(B)を1〜500重量部を用いることが好ましい。(A)成分が前記の範囲内の場合はシロキサン系樹脂層は架橋密度が十分存在し、前記シロキサン系樹脂層の膜強度は強く、弾力性に富んでいる。
【0060】
一方、本発明の3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂層にコロイダルシリカを含有させる場合は、その添加量(C)は(A)+(B)+(C)成分の総重量100部に対し(C)を0.01〜50重量部を用いることが好ましい。
【0061】
(C)成分のコロイダルシリカ成分も前記の範囲内の場合はシロキサン系樹脂層の膜強度は強く、クリーニングブレードの摩擦による摩耗も少ない。一方、(B)成分が前記の範囲内の場合は前記シロキサン系樹脂層の電荷輸送能が十分に保持され、感度や残電特性が良好である。
【0062】
本発明にシロキサン系樹脂は予め原材料と共に触媒や架橋剤を加えて新たな化学結合を形成させ3次元網目構造を形成する事もできる。又原材料の加水分解反応やその後の脱水縮合によりシロキサン結合を促進させモノマー、オリゴマー、ポリマーから3次元網目構造を形成する事もできる。
【0063】
又、本発明の一般式(3)の有機ケイ素化合物とコロイダルシリカを有する組成物の縮合反応により3次元網目構造を形成することができる。
【0064】
また前記の3次元網目構造を形成させる触媒としては有機カルボン酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸及びチオシアン酸の各アルカリ金属塩、有機アミン塩(水酸化テトラメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムアセテート)、スズ有機酸塩(スタンナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマリエート等)、アルミニウム、亜鉛のオクテン酸、ナフテン酸塩、アセチルアセトン錯化合物等が挙げられる。
【0065】
また本発明中の樹脂層にはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
【0066】
ここでヒンダードフェノールとはフェノール化合物の水酸基に対しオルト位置に分岐アルキル基を有する化合物類及びその誘導体を云う(但し、水酸基がアルコキシに変成されていても良い)。
【0067】
又、ヒンダードアミンは、例えば下記構造式で示される有機基を有する化合物類が挙げられる。
【0068】
【化5】
【0069】
(式中のR51は水素原子又は1価の有機基、R52、R53、R54、R55はアルキル基、R56は水素原子、水酸基又は1価の有機基を示す。)
ヒンダードフェノール部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118137号(P7〜P14)記載の化合物が挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
ヒンダードアミン部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118138号(P7〜P9)記載の化合物も挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0071】
以下に代表的な酸化防止剤の化合物例を挙げる。
【0072】
【化6】
【0073】
【化7】
【0074】
【化8】
【0075】
【化9】
【0076】
【化10】
【0077】
又、製品化されている酸化防止剤としては以下のような化合物、例えば「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」以上ヒンダードフェノール系、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS2626」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」以上ヒンダードアミン系、「スミライザ−TPS」、「スミライザーTP−D」以上チオエーテル系、「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」以上ホスファイト系が挙げられる。これらの中で特にヒンダードフェノール、ヒンダードアミン系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の添加量としては樹脂層組成物の総重量100部に対し、0.1〜10重量部を用いることが好ましい。
【0078】
本発明の感光体の層構成はとくに限定は無いが、負帯電感光体においては導電性支持体上には下引層(UCL)、その上に機能分離した感光層の電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL層)を順に設けた上に本発明の樹脂層を塗設した構成をとるのが好ましい。正帯電感光体では前記負帯電感光体層構成の内、電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL層)の順を逆にした構成を取ることが好ましい。単層構造の感光体では導電性支持体上には下引層(UCL)の上に感光層(電荷発生+電荷輸送)の上に本発明の樹脂層を塗設した構成を採用しても良い。
【0079】
又、本発明の樹脂層は前記感光層を兼ねた構成を取ることも可能である。即ち、前記機能分離感光体の表面層が電荷輸送層或いは電荷発生層である場合、該電荷輸送層或いは電荷発生層を本発明の樹脂層とする事もできる。又、単層構造の感光体の感光層を本発明の樹脂層としても良い。
【0080】
本発明の樹脂層は該樹脂層の特徴を生かすため感光体の表面層として構成されるのが最も好ましいが、該感光体を電子写真画像形成装置に組み込んだ時の画像形成スタート時のスベリ特性等を改良する目的で該樹脂層の上に更に表面層を設けることもできる。
【0081】
本発明に於ける感光層に含有される電荷発生物質(CGM)としては、例えばフタロシアニン顔料、多環キノン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、アズレニウム顔料、スクワリリウム染料、シアニン染料、ピリリウム染料、チオピリリウム染料、キサンテン色素、トリフェニルメタン色素、スチリル色素等が挙げられ、これらの電荷発生物質(CGM)は単独で又は適当なバインダー樹脂と共に層形成が行われる。
【0082】
前記感光層に含有される電荷輸送物質(CTM)としては、例えばオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン誘導体、スチルベン化合物、アミン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、ポリ−9−ビニルアントラセン等が挙げられこれらの電荷輸送物質(CTM)は通常バインダーと共に層形成が行われる。
【0083】
単層構成の感光層及び積層構成の場合の電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)に含有されるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0084】
本発明に於いて電荷発生層中の電荷発生物質とバインダー樹脂との割合は重量比で1:10〜10:1が好ましい。また電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特に0.05〜2μmが好ましい。
【0085】
又、電荷輸送層は前記の電荷輸送物質とバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解し、その溶液を塗布乾燥することによって形成される。電荷輸送物質とバインダー樹脂との混合割合は重量比で10:1〜1:10が好ましい。
【0086】
電荷輸送層の膜厚は通常5〜50μm、特に10〜40μmが好ましい。また、電荷輸送層が複数設けられている場合は、電荷輸送層の上層の膜厚は10μm以下が好ましく、かつ、電荷輸送層の上層の下に設けられた電荷輸送層の全膜厚より小さいことが好ましい。
【0087】
本発明の3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂層は、樹脂層が電荷輸送層の場合は前記電荷輸送層を兼ねても良いが、好ましくは、電荷輸送層もしくは電荷発生層或いは単層型の電荷発生・輸送層等の感光層の上に、これらとは別層の樹脂層として設けるのがよい。この場合、前記感光層と本発明の樹脂層の間に接着層を設けても良い。
【0088】
次に本発明の電子写真感光体の導電性支持体としては、
1)アルミニウム板、ステンレス板などの金属板、
2)紙或いはプラスチックフィルムなどの支持体上に、アルミニウム、パラジウム、金などの金属薄層をラミネート若しくは蒸着によって設けたもの、
3)紙或いはプラスチックフィルムなどの支持体上に、導電性ポリマー、酸化インジウム、酸化錫などの導電性化合物の層を塗布若しくは蒸着によって設けたもの等が挙げられる。
【0089】
本発明で用いられる導電性支持体の材料としては、主としてアルミニウム、銅、真鍮、スチール、ステンレス等の金属材料、その他プラスチック材料をベルト状またはドラム状に成形加工したものが用いられる。中でもコスト及び加工性等に優れたアルミニウムが好ましく用いられ、通常押出成型または引抜成型された薄肉円筒状のアルミニウム素管が多く用いられる。
【0090】
本発明に用いられる導電性支持体の粗面化状態は、十点平均表面粗さRzで、0.3μmより大きく、2.5μmを超えないものが好ましい。更に好ましくは0.6μm以上2.0μm以下である。
【0091】
十点平均表面粗さRzが0.3μm以下の場合は、接着性が不十分であり、またレーザー光源を露光光源に用いた時、画像でモアレが発生し実用的でない。またRzが2.5μmより大きい場合は、加工のスジが画像に現れるという問題が発生する。
【0092】
導電性支持体の粗面化の方法としては、アルミニウム等の金属素管の場合は、金属表面を鏡面研磨した後、ダイヤモンドバイト等で細かく溝を付ける方法や、サンドブラストにより金属素管表面を粗面化する方法などが好ましいが本発明はこれらの方法に限定されるものではない。
【0093】
また、支持体の形状はドラム状でもシート状でもベルト状でもよく、適用する電子写真装置に最も適した形状であることが好ましい。
【0094】
本発明の感光体の製造に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0095】
次に本発明の電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の樹脂層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお前記スプレー塗布については例えば特開平3−90250号及び特開平3−269238号公報に詳細に記載され、前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0096】
本発明の感光体は前記樹脂層が塗布形成された後、50℃以上好ましくは、60〜200℃の温度で加熱乾燥する事が好ましい。この加熱乾燥により、残存塗布溶媒を少なくすると共に、硬化性樹脂層を十分に硬化させることができる。
【0097】
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることが好ましい。
【0098】
中間層用の材料としては、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂ポリアミド類(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン、アルコキシメチル化ナイロン等)、ポリウレタン、ゼラチン及び酸化アルミニウムを用いた中間層、或いは特開平9−68870号公報の如く金属アルコキシド、有機金属キレート、シランカップリング剤による硬化型中間層等が挙げられる。中間層の膜厚は、0.1〜10μmが好ましく、特には0.1〜5μmが好ましい。
【0099】
本発明においては、更に、支持体と中間層との間に支持体の表面欠陥を補うための被覆を施すことや、特に画像入力がレーザー光の場合には問題となる干渉縞の発生を防止することなどを目的とした導電層を設けることができる。この導電層は、カーボンブラック、金属粒子又は金属酸化物粒子等の導電性粉体を適当なバインダー樹脂中に分散した溶液を塗布乾燥して形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μmが好ましく、特には10〜30μmが好ましい。
【0100】
本発明の電子写真感光体は、複写機、レーザープリンター、LEDプリンター、液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適用し得るものであるが、更には電子写真技術を応用したディスプレイ、記録、軽印刷、製版、ファクシミリ等の装置にも広く適用し得るものである。
【0101】
図1は本発明の電子写真感光体を有する画像形成装置の1例を示す断面図である。
【0102】
図1に於いて10は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に本発明の樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。12はスコロトロンの帯電器で、感光体ドラム10周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器12による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた露光部11による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0103】
感光体への一様帯電ののち像露光器13により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器13は図示しないレーザーダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー131、fθレンズ等を経て反射ミラー132により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0104】
その静電潜像は次いで現像器14で現像される。感光体ドラム10周縁にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒色(K)等のトナーとキャリアとから成る現像剤をそれぞれ内蔵した現像器14が設けられていて、先ず1色目の現像がマグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ141によって行われる。現像剤は、例えばフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、ポリエステルを主材料として色に応じた顔料と荷電制御剤、シリカ、酸化チタン等を加えたトナーとからなるもので、現像剤は図示していない層形成手段によって現像スリーブ141上に100〜600μmの層厚に規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム10と現像スリーブ141の間に直流及び/又は交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。
【0105】
カラー画像形成に於いては、1色目の顕像化が終った後2色目の画像形成行程にはいり、再びスコロトロン帯電器12による一様帯電が行われ、2色目の潜像が像露光器13によって形成される。3色目、4色目についても2色目と同様の画像形成行程が行われ、感光体ドラム10周面上には4色の顕像が形成される。
【0106】
一方モノクロの電子写真装置では現像器14は黒トナー1種で構成され、1回の現像で画像を形成することができる。
【0107】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラ17の回転作動により転写域へと給紙される。
【0108】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム10の周面に転写ローラ(転写器)18が圧接され、給紙された記録紙Pを挟着して多色像が一括して転写される。
【0109】
次いで記録紙Pは転写ローラとほぼ同時に圧接状態とされた分離ブラシ(分離器)19によって除電がなされ、感光体ドラム10の周面により分離して定着装置20に搬送され、熱ローラ201と圧着ローラ202の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラ21を介して装置外部に排出される。なお前記の転写ローラ18及び分離ブラシ19は記録紙Pの通過後感光体ドラム10の周面より退避離間して次なるトナー像の形成に備える。
【0110】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム10は、クリーニング器22のブレード221の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び露光部11による除電と帯電器12による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。なお感光体上にカラー画像を重ね合わせて形成する場合には、前記のブレード221は感光体面のクリーニング後直ちに移動して感光体ドラム10の周面より退避する。
【0111】
尚、30は感光体、帯電器、転写器・分離器及びクリーニング器を一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0112】
電子写真画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0113】
像露光は、画像形成装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を感光体に照射すること、或いはセンサーで原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、LEDアレイの駆動、又は液晶シャッターアレイの駆動を行い感光体に光を照射することなどにより行われる。
【0114】
尚、ファクシミリのプリンターとして使用する場合には、像露光器13は受信データをプリントするための露光を行うことになる。
【0115】
本発明の電子写真感光体は、複写機、レーザープリンター、LEDプリンター、液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適用し得るものであるが、更には電子写真技術を応用したディスプレイ、記録、軽印刷、製版、ファクシミリ等の装置にも広く適用し得るものである。
【0116】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0117】
感光体1の作製
下記のごとくして感光体1を作製した。
【0118】
〈下引き層〉
チタンキレート化合物(TC−750:松本製薬製) 30g
シランカップリング剤(KBM−503:信越化学社製) 17g
2−プロパノール 150ml
この下引き層上に、下記感光層塗布液を分散調液し、膜厚0.5μmとなるよう塗布した。
【0119】
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記下引き層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0120】
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、表1記載の膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0121】
〈樹脂層〉
メチルトリメトキシシラン 182g
電荷輸送性化合物(例示化合物T−1) 40g
酸化防止剤(例示化合物2−1) 1g
2−プロパノール 225g
2%酢酸 106g
コロイダルシリカ(30%メタノール溶液) 106g
ジブチル錫アセテート 1g
を混合し、樹脂層用の塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層の上に円形量規制型塗布装置により厚さ2.5μmの樹脂層を形成し、110℃、1時間の加熱硬化を行い、3次元の架橋構造を有するシロキサン系樹脂層を形成し、感光体1を作製した。
【0122】
感光体2〜14の作製
感光体1の作製において樹脂層の電荷輸送性化合物(例示化合物T−1)を表1のように代えた他は感光体1の作製と同様にして感光体2〜14を作製した。
【0123】
下記に感光体11〜14に用いた電荷輸送性化合物の構造式(Mwは分子量)を示す。
【0124】
【化11】
【0125】
感光体15の作製
感光体1の作製において樹脂層のコロイダルシリカを除いた他は感光体1の作製と同様にして感光体15を作製した。
【0126】
感光体16の作製
感光体1の作製において樹脂層の酸化防止剤を除いた他は感光体1の作製と同様にして感光体16を作製した。
【0127】
感光体17の作製
感光体1の作製と同様にして電荷輸送層までを作製した。
【0128】
〈樹脂層〉
メチルトリメトキシシラン 150g
フェニルトリメトキシシラン 30g
電荷輸送性化合物(例示化合物T−3) 75g
シリコーンオイル(X−22−160AS:信越化学社製) 1g
酸化防止剤(例示化合物1−8) 1g
2−プロパノール 225g
2%酢酸 106g
コロイダルシリカ(30%メタノール溶液) 106g
ジブチル錫アアセテート 4g
を混合し、樹脂層用の塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層の上に円形量規制型塗布装置により厚さ2μmの樹脂層を形成し、110℃、1時間の加熱硬化を行い、3次元の架橋構造を有するシロキサン系樹脂層を形成し、感光体17を作製した。
【0129】
感光体18の作製
感光体1の作製と同様にして電荷輸送層までを作製した。
【0130】
〈樹脂層〉
メチルトリメトキシシラン 100g
ジメトキシジメチルシラン 53g
電荷輸送性化合物(例示化合物T−3) 45g
シリコーンオイル(X−22−160AS:信越化学社製) 1g
酸化防止剤(例示化合物2−1) 1g
エタノール 125g
t−ブタノール 100g
3%酢酸 30g
コロイダルシリカ(30%メタノール溶液) 80g
トリスアセチルアセトナトアルミニウム 3g
を混合し、樹脂層用の塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層の上に円形量規制型塗布装置により厚さ2μmの樹脂層を形成し、110℃、1時間の加熱硬化を行い、3次元の架橋構造を有するシロキサン系樹脂層を形成し、感光体18を作製した。
【0131】
感光体19の作製
感光体1の作製と同様にして電荷輸送層までを作製した。
【0132】
〈樹脂層〉
メチルトリメトキシシラン 100g
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 30g
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 20g
電荷輸送性化合物(例示化合物T−3) 65g
シリコーンオイル(X−22−160AS:信越化学社製) 1g
酸化防止剤(例示化合物2−1) 1.5g
メチルエチルケトン 225g
3%酢酸 30g
コロイダルシリカ(30%メタノール溶液) 80g
トリスアセチルアセトナトアルミニウム 3g
を混合し、樹脂層用の塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層の上に円形量規制型塗布装置により厚さ5μmの樹脂層を形成し、120℃、1時間の加熱硬化を行い、3次元の架橋構造を有するシロキサン系樹脂層を形成し、感光体19を作製した。
【0133】
感光体20〜22の作製
感光体17〜19の作製において樹脂層中の電荷輸送性化合物を例示化合物(T−3)58.5gと例示化合物(T−4)6.5gの混合物に代えた他は感光体17〜19の作製と同様にして感光体20〜22を作製した。
【0134】
〈評価〉
1.実写評価
評価は本感光体をコニカ社製デジタル複写機Konica7050(レーザ露光、反転現像、爪分離、ブレードクリーニングプロセスを有する)を改造し、露光量を適正化した評価機に搭載し、初期帯電電位を−750Vに設定し、高温高湿環境(HH:38℃、80%)で3万の連続コピー後、1時間休止し、続いて低温低湿環境(LL:10℃、20%)で3万の連続コピー実写評価を行った。
【0135】
画像評価は、画素率が7%の文字画像、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4での複写を行い、1000枚毎にハーフトーン、ベタ白画像、ベタ黒画像を評価した。画像濃度はベタ黒画像の濃度をマクベス社製RD−918を使用し絶対反射濃度で測定した。カブリについてはベタ白画像を使用し目視で確認した。又、画像ボケの有無も目視判定で評価を行った。
【0136】
膜剥がれ、傷の発生(コピー画像の黒筋、白筋の発生と感光体表面の傷観察と対応させて評価した)
◎:6万枚の1枚も膜剥がれ、傷に対応した黒筋、白筋発生無し
○:6万枚中1枚〜10枚の膜剥がれ、傷に対応した黒筋又は白筋発生
×:6万枚中11枚以上の膜剥がれ、傷に対応した黒筋又は白筋発生
2.減耗評価
評価は高温高湿環境(HH:38℃、80%)で3万の連続コピー後、1時間休止し、続いて低温低湿環境(LL:10℃、20%)で3万の連続コピー実写評価を行った後の膜厚の減少量を測定した。
【0137】
【表1】
【0138】
表1から明らかなように、本発明の3次元の架橋構造を有するシロキサン系樹脂を含有する樹脂層を有する電子写真感光体は膜剥がれ傷による画像欠陥もなく、連続コピー画像の画質も良好であるのに対し、本発明範囲外のもの(比較例)では膜剥がれや表面の傷による黒筋、白筋の画像欠陥が発生し、連続コピーによる画像ボケも発生しており、本発明の効果が顕著に示されている。
【0139】
【発明の効果】
実施例から明らかなように、本発明は高温高湿と低温低湿条件下のそれぞれに於いて、それぞれ3万コピーの耐久試験に於いても良好な耐摩耗性、耐傷性を示し、連続して画像欠陥のない良好な画像が得られている。一方本発明の条件から外れたシロキサン系樹脂層構成では耐摩耗性、耐傷性、画質評価に於いても、耐久性が十分でなく、長期の使用には耐えられない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有する画像形成装置の1例を示す断面図。
【符号の説明】
10 感光体ドラム(又は感光体)
11 発光ダイオード等を用いた露光部
12 帯電器
13 像露光器
14 現像器
17 給紙ローラ
18 転写ローラ(転写器)
19 分離ブラシ(分離器)
20 定着装置
21 排紙ローラ
22 クリーニング器
30 プロセスカートリッジ
Claims (10)
- 導電性支持体上に少なくとも感光層、表面樹脂層を有する電子写真感光体において、該表面樹脂層が分子量が400以下の下記一般式(1)で表される電荷輸送性化合物、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物及び下記一般式(4)で表されるケイ素化合物を混合し加熱して得られた3次元架橋構造を有するシロキサン系樹脂を含有する電子写真感光体であって、該一般式(2)で表されるケイ素化合物は該一般式(4)で表されるケイ素化合物が加水分解して得られることを特徴とする電子写真感光体。
一般式(1) X1−(Y1−A1)m
(式中、X1は電荷輸送性能を有する構造単位、Y1は単結合、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアリーレン基を表し、A1は水酸基を表す。mは2以上の整数、Bは加水分解性基を表す。)
一般式(2) RnSi(OH)4−n
(式中、Rは置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のフルオロアルキル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−アミノプロピル基を表す。nは0〜3の整数)
一般式(4) RnSi(X)4−n
(式中、Rは置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のフルオロアルキル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−アミノプロピル基、Xは加水分解性基を表す。nは0〜3の整数) - 前記一般式(1)の電荷輸送性化合物の少なくとも1つがm=3以上の電荷輸送性化合物であることを特徴とする請求項1項に記載の電子写真感光体。
- 前記一般式(2)に於いて、n=1のケイ素化合物を用いることを特徴とする請求項1または2項に記載の電子写真感光体。
- 前記一般式(2)に於いて、n=1のケイ素化合物1モルに対してn=2のケイ素化合物0.1〜5モルを併用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記表面樹脂層がコロイダルシリカを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記表面樹脂層が、更に酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記表面樹脂層が感光体の表面層であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 電子写真感光体上に、少なくとも帯電、像露光、現像、クリーニングを行う工程を有する電子写真画像形成方法に於いて、該電子写真感光体に請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする電子写真画像形成方法。
- 電子写真感光体と、少なくとも帯電、像露光、現像、クリーニングの手段を有する電子写真画像形成装置に於いて、該電子写真感光体に請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする電子写真画像形成装置。
- 少なくとも帯電、像露光、現像、クリーニングの手段を有する電子写真画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と帯電器、像露光器、現像器、クリーニング器の少なくともいずれか1つとを一体に組み合わせて有しており、該電子写真画像形成装置に出し入れ自由に設計されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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