JP3780909B2 - 電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体及び画像形成装置に関するものであり、詳しくは、電子写真方式による画像形成に用いられる電子写真感光体及び画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式の画像形成装置は、回転ドラム型などの電子写真用感光体の帯電、露光、現像といった作像プロセスによりトナー像を形成し、そのトナー像を被転写媒体に転写後定着して複写物を得るもので、例えば普通紙複写機(PPC)、レーザープリンター、発光ダイオード(LED)プリンター、液晶プリンターなどが挙げられる。
【0003】
従来、これらの画像形成装置に用いられる電子写真用感光体としてはセレニウム、ヒ素−セレニウム、硫化カドミウム、酸化亜鉛、a−Siなどの無機系電子写真用感光体が用いられてきたが、製造性及び廃棄性の点で優れ且つ安価な有機系電子写真用感光体の研究開発も活発化している。中でも、電荷発生層と電荷輸送層との積層により感光層が形成される機能分離型積層電子写真用感光体は、感度、帯電性及びその繰り返し安定性といった電子写真特性の点で無機系電子写真感光体よりも優れているため、電子写真感光体の高性能化を実現し、高速の複写機やプリンターにも使用されるようになっている。
【0004】
ところで、近年のコンピューターの普及に伴いデスクトップパブリッシングのニーズも高まっており、画像形成プロセスの更なる高速化や、画像形成装置自体の小型化及びそれに伴う電子写真用感光体の小径化が強く求められている。このような高速化・小型化を達成しつつ安定した画像を得るためには、露光された電子写真感光体の表面電荷が打ち消されるまでに要する時間(以下、「レスポンスタイム」という)が十分に短いことが必要である。このレスポンスタイムが十分に短くないと、電子写真感光体の表面電荷が残存したまま現像工程へと供されるので、画像のかすれや細線の細りなどを生じてしまい、特に厳しい色再現性が要求されるカラー画像形成装置において画像品質が不十分となる場合がある。
【0005】
そこで、上記の要望に応えるべく、レスポンスタイムが短く且つ安定した画像形成が可能な電子写真感光体の開発が進められている。例えば積層型電子写真感光体の場合、そのレスポンスタイムは電荷輸送層中の電荷移動度(μ)に依存するため、電荷輸送層を構成する材料の種類や組成の最適化により電荷移動度を向上させる試みがなされている。例えば、電荷輸送材料としてのトリアリールアミン、テトラアリールベンジジン、スチルベンなどの使用、あるいはこれらの電荷輸送材料を分散させる結着樹脂としてのポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンビニレン誘導体などの使用によって電荷移動度が高められることが知られている。
【0006】
また、装置の高速化と小型化とを同時に実現するためには、単位時間当たりの電子写真感光体の繰り返し使用数を増加させる必要があり、従って電子写真感光体にはより高い耐刷性が求められる。ところが上記した結着樹脂は既に実用化されているポリカーボネートやポリエステルに比べて電荷移動度の点では優れるものの、機械的強度に劣るという欠点を有している。また、電荷移動度を十分に高めるためにはこのような結着樹脂に上記の電荷輸送材料を比較的高濃度で分散する必要があるが、かかる電荷輸送材料の分散により結着樹脂が本来的に有する機械的強度が更に低下してしまう。そのため、これらの材料を用いる場合には、例えば特開2000−214602号公報に記載されているように、感光体表面に保護層を設ける場合が多い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の電子写真感光体では、レスポンスタイムを十分に短縮しつつ安定した画像形成を得ることは必ずしも容易ではない。また、特開2000−214602公報に開示された感光体のように保護層を設けた場合であっても比較的短期間で画質欠陥が生じる場合がある。特に、近年の画像形成装置では、オゾンの発生防止及び装置の小型化の観点から、従来使用されてきたコロトロンなどの非接触帯電型帯電器に代わって接触帯電方式の帯電器が適用されることが多いが、このような画像形成装置では画像欠陥の発生がより顕著となり、装置の高速化・小型化と長寿命化とを同時に達成することは非常に困難である。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、レスポンスタイムが十分に短く且つ機械的・電気的な耐性に優れた電子写真感光体、並びに高速化、小型化及び長寿命化の全てを達成可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、保護層などにより感光体表面の強度を向上させた場合であっても、画像形成装置内で発生した導電性の異物(カーボンファイバーやキャリア粉など)が感光体に接触又は貫入することによって、感光体基体と接触帯電器との導電路が形成されて局所的なピンホールリークとなり、画質欠陥の原因となることを見出した。そして、かかる知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、基体と感光層との間に特定の中間層、感光層の表面(基体から遠い側の面)に特定の保護層をそれぞれ設けた場合に、感光体の機械的・電気的な耐性が向上するだけでなく、レスポンスタイムをも十分に短縮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の電子写真感光体は、導電性基体及び該基体上に配置された感光層を備える電子写真感光体であって、基体と感光層との間に配置され、結着樹脂及び該結着樹脂中に分散された金属酸化物微粒子を含有する膜厚20〜40μmの中間層と、感光層の基体から遠い側の面上に配置され、電荷輸送材料及び3次元架橋構造を有するケイ素樹脂を含有する保護層とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の電子写真感光体では、基体と感光層との間に上記特定の中間層、感光層の基体から遠い側の面上に上記特定の保護層をそれぞれ設けることによって、導電性異物の接触又は貫入によるピンホールリークの発生と感光層表面における摩耗・傷の発生との双方が防止される。また、当該中間層は十分に低い電荷蓄積性と十分に高い電荷遮蔽性(ブロッキング性)とを兼備しているため、感光層全体の電荷移動度が高められると共に電気特性が安定化する。従って本発明により、レスポンスタイムが十分に短く且つ機械的・電気的な耐性に優れた電子写真感光体が実現される。
【0012】
本発明の電子写真感光体においては、金属酸化物微粒子が、酸化スズ、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの金属酸化物微粒子を用いると、中間層のリーク耐性を高めると共に電荷蓄積性を低めることができる。
【0013】
また、本発明の電子写真感光体においては、中間層が、イソシアネート系化合物を含有する樹脂前駆体を用いて得られる結着樹脂を含有することが好ましい。中間層がかかる結着樹脂を含有すると、金属酸化物微粒子の分散均一性を高めることができ、その結果、リーク耐性がより高められると共に電荷蓄積性がより低められる傾向にある。
【0014】
また、本発明電子写真感光体においては、中間層が、平均一次粒径1〜5μmのシリコーン微粒子をさらに含有することが好ましい。中間層がかかるシリコーン微粒子を含有すると、画像形成装置の露光手段としてレーザーROSを用いた場合に、干渉縞の発生を防止することができ、画像形成をより安定的に行うことができる。
【0015】
また、本発明の画像形成装置は、上記本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、トナーにより前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の画像形成装置では、本発明の電子写真感光体を用いることによって、帯電、露光後の電子写真感光体の表面電荷が十分に短時間で打ち消されるので、露光から現像までの時間を例えば100msec程度まで短縮することができる。また、本発明の電子写真感光体が機械的・電気的な耐性に優れている点については前述の通りであり、かかる感光体を用いることによって長期にわたって安定した画像品質を得ることができる。従って本発明により、高速化、小型化及び長寿命化の全てを達成可能な画像形成装置が実現される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は本発明の電子写真感光体にかかる第1実施形態を示す模式断面図である。図1に示した電子写真感光体1においては、アルミニウム製基体11上に、中間層12、電荷発生層13、電荷輸送層14、保護層15がこの順序で形成されて感光層16が構成されている。
【0019】
アルミニウム製基体11は感光層16を支持する導電性基体であり、その形状についての詳細は図示していないが円筒状(ドラム状)のものである。基体11としては、アルミニウム素管をそのまま用いてもよいが、必要に応じて、画質に影響のない範囲で各種の表面処理を行うことができる。かかる表面処理としては、具体的には、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレンス研削、サンドブラスト、ウェットホーニングなどが挙げられる。
【0020】
なお、基体11の材料としては、アルミニウム以外に、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケルなどの金属類;アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、インジウムなどの金属をシート、紙、プラスチック又はガラス上に蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ、ITOなどの導電性金属化合物をシート、紙、プラスチック又はガラス上に蒸着したもの;金属箔をシート、紙、プラスチック又はガラス上にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅などを所定の結着樹脂に分散、塗布することによって導電処理したもの、などを用いてもよい。さらに基体11の形状は円筒状に限定されず、シート状、プレート状などであってもよい。
【0021】
中間層12は、結着樹脂及び該結着樹脂中に分散された金属酸化物微粒子を含んで構成されるもので、その膜厚は20〜40μm(好ましくは20〜30μm)の範囲内に設定されている。なお、当該膜厚が20μm未満であると、画像形成プロセスにおいて導電性異物の貫入によるピンホールリークの発生を十分に防止することができない。また、当該膜厚が40μmを超えると、中間層を平滑に成膜することが困難となる。
【0022】
また、中間層12の膜抵抗は104〜1010Ω・cmの範囲内であることが好ましい。中間層12の膜抵抗が104Ω・cm未満の場合にはリーク耐性が不十分となる傾向にあり、他方、1010Ω・cmを超えると残留電位の上昇を引き起こす傾向にある。
【0023】
また、中間層12のビッカース強度は35以上であることが好ましい。ビッカース強度が35未満であると、画像形成プロセスにおいて導線性異物が貫入しやすくなり、ピンホールリークの発生が十分に防止されなくなる傾向にある。
【0024】
中間層12の膜抵抗及びビッカース強度は、結着樹脂及び金属酸化物微粒子の種類や配合割合の選定により所望の値に調整することができる。
【0025】
下引き層12に用いられる結着樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物などが挙げられる。また、中間層12にイソシアネート系化合物を含む樹脂前駆体を用いて得られる樹脂を配合すると、金属酸化物微粒子の分散均一性を高めることができ、その結果、リーク耐性がより高められると共に電荷蓄積性がより低められる傾向にある。
【0026】
また、金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなどが挙げられるが、これらの中でも粉体抵抗が104〜1010Ω・cmの範囲内のものが好ましく、酸化スズ、酸化チタン又は酸化亜鉛のうちの少なくとも1種を用いることがより好ましい。これにより、中間層12に優れたリーク耐性を付与することができる。
【0027】
中間層12は、金属酸化物微粒子を結着樹脂又は樹脂前駆体に分散させて中間層形成用塗布液を調製し、かかる塗布液を基体11の外周面に塗布して成膜することによって形成することができる。ここで、中間層形成用塗布液を調製する際には、予め結着樹脂又は樹脂前駆体に予備混合又は予備分散することが好ましく、このとき必要に応じて溶剤を添加してもよい。なお、使用する溶剤は結着樹脂又は樹脂前駆体を溶解可能であれば特に制限されない。
【0028】
また、当該塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法などが挙げられる。
【0029】
また、中間層形成用塗布液には、電気特性、環境安定性、画質などの特性の向上を目的として種々の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、クロラニルキノン、ブロモアニルキノン、アントラキノンなどのキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノンなどのフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノンなどのジフェノキノン化合物、などの電子輸送性物質が挙げられる。また、多環縮合系化合物、アゾ系化合物などの電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤などの公知の材料を用いてもよい。
【0030】
シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0031】
ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0032】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0033】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0034】
これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物又は重縮合物として用いてもよい。
【0035】
また、中間層形成用塗布液にチタン酸バリウム、アモルファスシリカ、シリコーン樹脂などの微粒子をさらに配合して中間層12を形成してもよい。これらの中でも平均一次粒径が1〜5μmのシリコーン樹脂微粒子を配合することは、露光手段としてレーザーROSを用いる場合に干渉縞の発生をより確実に防止できる点で好ましい。
【0036】
電荷発生層13は電荷発生材料を含むもので、中間層12上に電荷発生材料を真空蒸着するか、あるいは電荷発生材料を所定の結着樹脂に分散させることにより形成することができる。かかる電荷発生材料としては、具体的には、縮環芳香族系顔料、アゾ系顔料、キノン系顔料、ペリレン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ビスベンゾイミダゾール系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、キノリン系顔料、レーキ系顔料、アゾレーキ系顔料、アントラキノン系顔料、オキサジン系顔料、ジオキサジン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、アズレニウム系染料、スクウェアリウム系染料、ピリリウム系染料、トリアリルメタン系染料、キサンテン系染料、チアジン系染料、シアニン系染料などの種々の有機顔料及び染料;アモルファスシリコン、アモルファスセレン、テルル、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の無機材料などが挙げられる。これらの中でも、感度、電気的安定性、露光光に対する光化学的安定性の点から、縮環芳香族系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料が好ましい。これら電荷発生材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また、電荷発生材料を分散させるための結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂(例えば、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂等)、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル型ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルアントラセン樹脂、ポリビニルピレンなどが挙げられるが、中でも、ポリビニルアセタール系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、フェノキシ樹脂及び変性エーテル型ポリエステル樹脂が好ましい。これらの結着樹脂を用いると、電荷発生材料として顔料を用いる場合に当該顔料を十分に均一に分散させ、且つ顔料が凝集せず長期にわたり塗布液を安定にすることができ、また、その塗布液により形成される被膜が均一となるため、電気特性を向上させて画像欠陥を低減することができる。これらの結着樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
電荷発生層形成用塗布液は、電荷発生材料及び結着樹脂を所定の溶剤に混合し分散させることによって調製することができる。かかる溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して使用可能であるが、電荷発生材料及び結着樹脂の種類に応じて最適なものを選択して用いることが好ましい。また、電荷発生材料と前記結着樹脂との配合比は、体積比(電荷発生材料:結着樹脂)で、10:1〜1:3が好ましく、8:1〜1:2よりが好ましく、5:1〜1:1がさらに好ましい。
【0039】
電荷発生層形成用塗布液を中間層12上に塗布する方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の塗布法が挙げられる。また、このようにして得られる電荷発生層13の膜厚は、好ましくは0.01〜5μmであり、より好ましくは0.1〜2.0μmである。膜厚が0.01μm未満の電荷発生層を均一に形成することは非常に困難であり、また、膜厚が5μmを越えると電子写真特性が著しく低下する傾向にある。
【0040】
電荷輸送層14は電荷輸送材料を含んで構成されるものである。かかる電荷輸送材料としては、具体的には、トリアリールアミン構造(トリフェニルアミン構造、ベンジジン構造等)を有する化合物、ピレン系化合物、カルバゾール系化合物、ヒドラゾン系化合物、オキサゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、アリールアミン系化合物、アリールメタン系化合物、ベンジジン系化合物、チアゾール系化合物、スチルベン系化合物、ブタジエン系化合物などの電荷輸送性低分子化合物;ポリ−N−ビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアンスラセン、ポリビニルアクリジン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、電荷輸送性を有するポリカーボネート、電荷輸送性を有するポリエステル、電荷輸送性を有するポリシラン等の電荷輸送性高分子化合物、などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、レスポンスタイムを決定する電荷輸送性の点、すなわち電荷移動度が高い点から、トリアリールアミン構造を含む低分子化合物(例えば、アリールアミン系の電荷輸送性低分子化合物等)及びそれらを高分子化したポリカーボネート、ポリエステル又はポリシランが好ましく、トリアリールアミン構造を有する化合物の少なくとも1種を用いて形成されることがより好ましい。さらに、当該トリアリールアミン構造を有する化合物としては、電荷輸送性及び機械的強度の点でトリアリールアミン構造を繰り返し単位として有する高分子化合物が特に好ましい。
【0041】
電荷輸送層14の電荷移動度(μ)は電荷輸送性材料の種類及び配合量を適宜選択することにより制御できるが、当該電荷移動度は、電界強度30V/μmにおいて5×10-6cm2 /V・sec以上であることが好ましく、7×10-6cm2 /V・sec以上であることがより好ましく、1×10-5cm2 /V・sec以上がさらに好ましい。電荷輸送層14の電荷移動度が5×10-6cm2 /V・sec未満であると、レスポンスタイムが十分に短縮されない傾向にある。
【0042】
電荷輸送層14は、電荷輸送性材料並びに必要に応じて結着樹脂を所定の溶剤に溶解又は分散させた塗布液を、電荷発生層13上に塗布し成膜することによって形成することができる。かかる結着樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーラテックス、ポリウレタン等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、電荷移動度が高い点から、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンビニレン誘導体、電荷輸送性ポリカーボネート、電荷輸送性ポリエステルが好ましい。なお、電荷輸送材料として電荷輸送層に十分な機械的強度を付与できる高分子化合物を用いる場合には、結着樹脂を使用せずに電荷輸送層を形成してもよい。
【0043】
また、電荷輸送層形成用塗布液の溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、電荷輸送材料及び結着樹脂の種類に応じて最適なものを選択して用いることが好適である。また、電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の塗布方法が挙げられる。
【0044】
このようにして得られる電荷輸送層14の膜厚は、好ましくは10〜40μmであり、より好ましくは10〜30μmであり、さらに好ましくは10〜20μmである。電荷輸送層14の膜厚が40μmを超えるとレスポンスタイムが長くなって画像形成プロセスの高速化が困難となる傾向にある。他方、電荷輸送層14の膜厚の減少に伴いレスポンスタイムが短くなるが、10μm未満の場合には電気特性及び機械的強度が不十分となる傾向にある。
【0045】
保護層15は、電荷輸送性を有する有機基と、該有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合したケイ素原子と、該ケイ素原子に結合した酸素原子と、からなる骨格を有する架橋体を含んで構成されている。かかる架橋体は、下記一般式(1):
【0046】
【化1】
Figure 0003780909
[式(1)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換または無置換のアリール基を表し、Ar5は置換または無置換の2価のアリール基又はアリーレン基を表し、Dは2価の基を表し、Qは加水分解性基を表し、aは1〜3の整数を表し、kは0又は1を表し、m1、m2、m3、m4及びm5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ0又は1を表し、m1〜m5のうちの少なくとも1つは1であり、kが1のときm5は0である。]
で表される化合物を含む重合性単量体を用いて得ることができる。
【0047】
一般式(1)中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4で表される置換または無置換のアリール基としては、下記式(2)〜(8):
【0048】
【化2】
Figure 0003780909
【0049】
【化3】
Figure 0003780909
【0050】
【化4】
Figure 0003780909
【0051】
【化5】
Figure 0003780909
【0052】
【化6】
Figure 0003780909
【0053】
【化7】
Figure 0003780909
【0054】
【化8】
Figure 0003780909
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、炭素数7〜10のアルキルフェニル基、炭素数7〜10のアルコキシフェニル基または炭素数7〜10のアラルキル基を表し、R2およびR3はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、炭素数7〜10のアルコキシフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基またはハロゲン基を表し、Ar6は置換または無置換の2価の芳香族炭化水素基を表し、Zは2価の官能基を表し、sは1〜3の整数を表し、・は一般式(1)中の−D−SiR3-aaで表される基が結合する場合の結合位置を表す)
で表される構造のうちのいずれかを有するものが好ましい。さらに、上記式(8)中のAr6で表される置換または無置換の2価の芳香族炭化水素基としては、下記一般式(9)または(10):
【0055】
【化9】
Figure 0003780909
【0056】
【化10】
Figure 0003780909
(式中、R4およびR5はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、炭素数7〜10のアルコキシフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基またはハロゲン基を表し、tは1〜3の整数を表す)
で表される構造を有するものが好ましく;
上記式(8)中のZで表される2価の基としては、下記式(11)〜(18):
【0057】
【化11】
Figure 0003780909
【0058】
【化12】
Figure 0003780909
【0059】
【化13】
Figure 0003780909
【0060】
【化14】
Figure 0003780909
【0061】
【化15】
Figure 0003780909
【0062】
【化16】
Figure 0003780909
【0063】
【化17】
Figure 0003780909
【0064】
【化18】
Figure 0003780909
(式中、R6およびR7はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、炭素数7〜10のアルコキシフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基またはハロゲン基を表し、Z’は2価の基を表し、qおよびrはそれぞれ1〜10の整数を表し、tは1〜3の整数を表す)
で表される構造のうちのいずれかを有するものが好ましい。さらにまた、上記式(17)、(18)中のZ’で表される2価の基としては、下記式(19)〜(27):
【0065】
【化19】
Figure 0003780909
【0066】
【化20】
Figure 0003780909
【0067】
【化21】
Figure 0003780909
【0068】
【化22】
Figure 0003780909
【0069】
【化23】
Figure 0003780909
【0070】
【化24】
Figure 0003780909
【0071】
【化25】
Figure 0003780909
【0072】
【化26】
Figure 0003780909
【0073】
【化27】
Figure 0003780909
(式中、pは0〜3の整数を表す)
で表される構造のうちのいずれかを有するものが好ましい。
【0074】
また、一般式(1)中、Ar5は、kが0のときはAr1〜Ar4の説明で例示されたアリール基であり、kが1のときはかかるアリール基から所定の水素原子を除いたアリーレン基である。
【0075】
また、一般式 (1)中、Dで表される2価の基としては、好ましくは、−Cn2n−、−Cn2n-2−、−Cn2n-4−(nは1〜15の整数であり、好ましくは2〜10の整数である)、−CH2−C64−又は−C64−C64−で表される2価の炭化水素基、オキシカルボニル基(−COO−)、チオ基(−S−)、オキシ基(−O−)、イソシアノ基(−N=CH−)、或いはこれら2種以上の組み合わせによる2価の基である。なお、これらの2価の基は側鎖にアルキル基、フェニル基、アルコキシ基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。Dが上記の好ましい2価の基であると、多官能型光機能性フッ素含有有機シリケート骨格に適度な可とう性が付与されて層の強度が向上する傾向にある。
【0076】
一般式(1)中のRは、前述の通り、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)又は置換若しくは無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜15の置換若しくは無置換のアリール基)を表す。
【0077】
また、上記式(1)中、Qで表される加水分解性基とは、上記式(1)で表される化合物の硬化反応において、加水分解によりシロキサン結合(O−Si−O)を形成し得る官能基のことをいう。本発明にかかる加水分解性基の好ましい例としては、具体的には、水酸基、アルコキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、クロロ基が挙げられるが、これらの中でも、−OR”(R”は炭素数1〜15のアルキル基またはトリメチルシリル基)で表される基がより好ましい。
【0078】
上記式(1)中のAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、D−SiR3-aaで表される基および整数kの好ましい組み合わせを表1〜3に示す。なお、表中、XはAr1〜Ar5と結合したD−SiR3-aaを表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表す。
【0079】
【表1】
Figure 0003780909
【0080】
【表2】
Figure 0003780909
【0081】
【表3】
Figure 0003780909
保護層15に含まれる架橋体は、上記一般式(1)で表される化合物のみを用いて得られるものであってもよいが、一般式(1)で表される化合物と結合可能な基を有する他の重合性単量体をさらに用いてもよい。
【0082】
ここで、一般式(1)で表される化合物と結合可能な基とは、一般式(1)で表される化合物を加水分解した際に生じるシラノール基と結合可能な基を意味し、具体的には、−SiR3-aaで表される基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、ハロゲンなどを意味する。これらのうち、−SiR3-aaで表される基、エポキシ基、イソシアネート基を有する化合物がより強い機械強度を有するため好ましく、−SiR3-aaで表される基を有する化合物が特に好ましい。さらに、これらの基を分子内に2つ以上有する化合物を用いると、硬化膜の架橋構造が3次元的になり、より強い機械強度を得ることができる。このような重合性単量体の好ましい例を表4に示す。
【0083】
【表4】
Figure 0003780909
また、上記の重合性単量体に加えて、シランカップリング剤やハードコート剤を用いてもよい。シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等;ハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、およびAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)などの市販のハードコート剤、などを用いることができる。また、撥水性などの付与のために、(トリデカフルオロ −1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、などのフッ素含有化合物のうちの1種又は2種以上を用いることもできる。
【0084】
本発明にかかる架橋体は、上記の重合性単量体を加水分解することにより得ることができる。かかる加水分解における水の添加量は特に制限されないが、重合性単量体が有する全ての加水分解性基を加水分解するために必要な理論量の0.3〜5倍量であることが好ましく、0.5〜3倍量であることがより好ましい。水の添加量が理論量の0.3倍未満であると、未反応化合物の量が増大し、後述する電子写真感光体の製造工程において、架橋体を含む塗工液を用いて成膜する際に相分離を生じたり得られる膜の強度が不十分となる傾向にある。他方、水の添加量が理論量の5倍を超えると、原料化合物が析出したり反応生成物(架橋体)の保存安定性が低下する傾向にある。
【0085】
さらに、上記の重合性単量体の加水分解は、溶媒を用いずに行ってもよく、また、所定の溶媒(好ましくは沸点が100℃以下の溶媒)を用いて行ってもよい。本発明において、加水分解の際に好ましく用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、などが挙げられる。これらの溶媒の使用量は、式(1)で表される化合物1重量部に対して好ましくは0.5〜30重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることがより好ましい。溶媒の使用量が前記下限値未満であると式(1)で表される化合物が析出しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると薄膜のものしか得られなくなる傾向にある。
【0086】
また、上記の加水分解においては、原料化合物、反応生成物、溶媒及び水のいずれにも不溶である固体触媒を用いることが好ましい。このような固体触媒としては、アンバーライト15E、アンバーライト200C、アンバーリスト15(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)などの陽イオン交換樹脂;
アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)などの陰イオン交換樹脂;
Zr(O3 PCH2 CH2 SO3 H)2 ,Th(O3 PCH2 CH2 COOH)2 などのプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;
スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサンなどのプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;
コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸などのヘテロポリ酸;
ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸などのイソポリ酸;
シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgOなどの単元系金属酸化物;
シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類などの複合系金属酸化物;
酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物;
LiSO4 ,MgSO4 などの金属硫酸塩;
リン酸ジルコニア、リン酸ランタンなどの金属リン酸塩;
LiNO3 ,Mn(NO3 2 などの金属硝酸塩;
シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体などのアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;
アミノ変性シリコーン樹脂などのアミノ基を含有するポリオルガノシロキサン、などが挙げられる。これらの固体触媒の使用量は、加水分解性基を有する原料化合物100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましい。また、これらの固体触媒を用いて加水分解を行う際の反応温度及び反応時間は原料化合物や固体触媒の種類によって適宜選択されるが、反応温度は好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜70℃、さらに好ましくは15〜50℃であり、反応時間は好ましくは10分〜100時間である。なお、反応時間が100時間を超えると反応生成物がゲル化しやすくなる傾向にある。
【0087】
また、上記の固体触媒以外にも、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸などのプロトン酸;アンモニア、トリエチルアミンなどの塩基;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、オクタン酸第一錫などの有機錫化合物;テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなどの有機チタン化合物;アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリアセチルアセトナートなどの有機アルミニウム化合物;有機カルボン酸の鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩などの有機カルボン酸塩、などの硬化触媒を用いて加水分解を行うことができる。これらの硬化触媒の中でも、反応生成物の保存安定性の点で金属化合物が好ましく、金属のアセチルアセトナート又はアセチルアセテートが好ましい。これらの硬化触媒の使用量は、反応生成物の保存安定性や強度の点から、加水分解性基を有する原料化合物100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、0.3〜10重量部であることが好ましい。また、上記の硬化触媒を用いて加水分解を行う際の反応温度及び反応時間は用いる原料化合物や硬化触媒の種類に応じて適宜選択されるが、反応時間は好ましくは60℃以上、より好ましくは80〜170℃であり、反応時間は好ましくは10分〜5時間である。なお、反応温度が前記下限値未満であると得られる架橋体の機械的強度が不十分となる傾向にある。
【0088】
また、必要に応じて、得られた反応生成物について、ヘキサメチルジシラザンやトリメチルクロロシランなどを用いて疎水化処理を行うこともできる。
【0089】
保護層15には、帯電器で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては15重量%以下が望ましく、10重量%以下がさらに望ましい。
【0090】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、−2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などが挙げられる。
【0091】
このように第1実施形態では、基体11と電荷発生層12との間に中間層12、電荷輸送層14上に保護層15をそれぞれ設けることによって、導電性異物の接触又は貫入によるピンホールリークの発生と感光層16表面における摩耗・傷の発生との双方が防止される。また、中間層12は十分に低い電荷蓄積性と十分に高い電荷遮蔽性(ブロッキング性)とを兼備しているため、感光層16全体の電荷移動度が高められると共に電気特性が安定化する。従って、レスポンスタイムが十分に短く且つ機械的・電気的な耐性に優れた電子写真感光体が実現される。
【0092】
なお、本発明の電子写真感光体は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば図1に示した感光体では、基体11上に中間層12、電荷発生層13、電荷輸送層14、保護層15が順次積層されて感光層16が形成されているが、電荷発生層14と電荷輸送層15との積層の順序は逆であってもよい。
【0093】
また、本発明の電子写真感光体における感光層は、中間層及び保護層がそれぞれ上記所定の位置に形成されたものであれば、図1に示したような機能分離型のものであってもよく、電荷発生材料と電荷輸送層との双方を含んで構成される単層型感光層であってもよい。
【0094】
(画像形成装置)
図2は本発明の第2実施形態にかかる画像形成装置を示す概略構成図である。図2に示した装置においては、図1に示した構成を有する電子写真感光体1が支持手段9により支持されており、支持手段9を中心として矢印の方向に所定の回転速度で回転可能となっている。そして、電子写真感光体1の回転方向に沿って、帯電部材2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置7がこの順で配置されている。また、当該装置は像定着装置6を備えており、被転写媒体Pは転写装置5を経て像定着装置6へと搬送される。
【0095】
帯電装置2としては帯電ローラーなどの接触帯電方式のものであってもよく、コロトロン帯電器などの非接触帯電方式のものであってもよいが、オゾン発生防止の観点から接触帯電方式のものが好ましい。なお、従来の画像形成装置では、接触帯電方式を適用した場合に接触帯電部材との摩擦や微小空間での放電により電子写真感光体が劣化する現象が起こりやすかったが、図2に示した装置では、機械的・電気的な強度が十分に高い電子写真感光体1を用いることによって、従来では達成が非常に困難であった装置の高速化・小型化と長寿命化とを同時に達成することができる。
【0096】
また、露光装置3としては、電子写真感光体1表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッターなどの光源を所望の像様に露光できる光学系装置などを用いることができる。これらの中でも、非干渉光を露光可能な露光装置を用いると、電子写真感光体1の支持体(基体)と感光層との間での干渉縞を防止することができる。
【0097】
また、現像装置4としては、一成分現像剤、二成分現像剤のいずれを用いるものであってもよく、また、かかる現像剤は磁性、非磁性のいずれであってもよい。さらに、現像装置4は、白黒画像用、カラー画像用のいずれであってもよい。
【0098】
また、転写装置5としては、ベルト、ローラー、フィルム、ゴムブレードなどを用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器など、が挙げられる。
【0099】
また、クリーニング装置7は、転写工程後の電子写真感光体1の表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体1は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング装置7としては、クリーニングブレード、ブラシクリーニング、ロールクリーニングなどを用いることができるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコンゴムなどが挙げられる。
【0100】
このように第2実施形態では、図1に示した電子写真感光体1を用いることによって、帯電、露光後の電子写真感光体の表面電荷が十分に短時間で打ち消されるので、露光から現像までの時間を例えば100msec程度まで短縮することができ、その後の現像、転写により良好な画像品質を得ることができる。また、図1に示した電子写真感光体1が機械的・電気的な耐性に優れている点については前述の通りであり、高速化・小型化した場合、すなわち画像形成プロセス1回当たりの電子写真感光体1の繰り返し使用回数を増加させた場合であっても、長期にわたって安定した画像品質を得ることができる。
【0101】
なお、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、図2に示した画像形成装置は、電子写真感光体1と支持手段9とを備えるプロセスカートリッジを適用可能なものであってもよい。かかるプロセスカートリッジを用いることによって、メンテナンスをより簡便に行うことができる。また、かかるプロセスカートリッジは、電子写真感光体1及び支持手段9の他に、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、並びにクリーニング装置からなる群より選ばれる少なくとも1種とを備えるものであってもよい。
【0102】
また、図2に示した装置は電子写真感光体1表面に形成されたトナー像を被転写媒体Pに直接転写するものであるが、本発明の画像形成装置は中間転写体をさらに備えるものであってもよい。これにより、電子写真感光体1表面のトナー像を中間転写体に転写した後、中間転写体から被転写媒体Pに転写することができる。かかる中間転写体としては、導電性支持体上にゴム、エラストマー、樹脂などを含む弾性層と少なくとも1層の被覆層とが積層された構造を有するものを使用することができる。
また、本発明の画像形成装置はイレース光照射装置などの除電装置をさらに備えていてもよい。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画像品質をより高めることができる。なお、従来の画像形成装置においては、このように除電装置を用いると電子写真感光体の劣化(特に支持体及びこれに隣接する層の劣化)が顕著に認められたが、本発明の画像形成装置では、電子写真感光体の機械的・電気的強度が十分に高いので、除電装置を用いた場合であっても、このような劣化を長期にわたって防止することができる。
【0103】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
[実施例1]
(電子写真感光体の作製)
酸化亜鉛(Nano Tek ZnO、シーアイ化成社製、表面処理なし、平均一次粒径30nm)33重量部、ブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)6重量部及びメチルエチルケトン25重量部を30分間混合し、その後ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)5重量部、シリコーン微粒子(シリコーンボール トスパール120、東芝シリコーン社製)3重量部及びレベリング剤(シリコーンオイルSH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0.01重量部を添加して、サンドミルにて2時間分散して中間層形成用塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法によりドラム状アルミニウム基体(直径:30mm、長手方向の長さ:340mm、肉厚:0.7mm)の外周面に塗布し、150℃、30分の乾燥硬化を行い膜厚20μmの中間層を形成した。
【0105】
次に、電荷発生物質としてヒドロキシガリウムフタロシアニン15重量部、結着樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10重量部及びn−ブチルアルコール300重量部を混合し、サンドミルにて4時間の分散処理を行った。得られた分散液を電荷発生層用塗布液として中間層上に浸漬塗布し、乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0106】
さらに、下記式(28)で表される高分子化合物(粘度平均分子量:39,000)3重量部及び下記式(29)で表される化合物2重量部を、テトラヒドロフラン15重量部とクロロベンゼン5重量部との混合溶剤に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を上記の電荷発生層上に浸漬塗布法で塗布し、135℃で40分熱風乾燥して膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0107】
【化28】
Figure 0003780909
【0108】
【化29】
Figure 0003780909
さらに、下記式(30)で表される化合物2重量部及び下記式(31)で表される化合物2重量部を、イソプロピルアルコール5重量部、テトラヒドロフラン3重量部及び蒸留水0.3重量部の混合溶剤に溶解させ、これにイオン交換樹脂(アンバーリスト15E)0.05重量部を加えて室温で24時間撹拌して加水分解処理を行った。加水分解処理後の反応液からイオン交換樹脂を濾過分離して得られた液体2重量部に、アルミニウムトリスアセチルアセトナート0.04重量部を加えてコーティング液Aとした。このコーティング液Aを上記の電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で10分風乾した後、140℃で40分間加熱処理して硬化し、膜厚3μmの保護層を形成して目的の電子写真感光体を得た。
【0109】
【化30】
Figure 0003780909
【0110】
【化31】
Figure 0003780909
(画像形成装置の作製及び画質評価試験)
このようにして得られた電子写真感光体について、ユニバーサルスキャナーを用い、低温低湿(10℃、20%RH)条件下でレスポンスタイムを50、70、100、140msecに変化させたときのVLcycle2−10を測定した。すなわち、−650Vに帯電した感光体を回転させながら、所定の位置に配置された露光装置から780nm、1.9mJ/m2の光を露光し、露光位置から所定位置まで回転した感光体の帯電電位(VL)を表面電位計プローブにより測定した。この操作を10サイクルまで行い、10サイクル目のVLから2サイクル目のVLを差し引いた値をVLcycle2−10とした。また、高温高湿(28℃、85%RH)で同様の測定を行い、感光体の環境変動性を評価した。得られた結果を表5に示す。なお、表5中、VLcycle2−10及び環境変動の欄の数値が小さいほど高速適性に優れるものである。
また、上記の電子写真感光体を用いて、図2に示す構成を有する画像形成装置を作製した。なお、本実施例においては、接触方式の帯電手段である帯電ロール、レーザー露光光学系、トナー現像器、転写ロール、機械的なクリーニング手段としてのクリーニングブレード、定着ロールをそれぞれ用いた。
この画像形成装置を用いて連続2万枚のプリント試験を行い、2万枚目の複写物について画質評価を行った。得られた結果を表5に示す。
【0111】
[実施例2]
酸化チタン(TAF−J500、富士チタン工業社製、表面処理なし、平均一次粒径:50nm)25重量部とブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)10重量部とメチルエチルケトン:60重量部とを30分間混合し、その後ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)9重量部、シリコーン微粒子(シリコーンボール トスパール120、東芝シリコーン社製)3重量部、並びにレベリング剤(シリコーンオイルSH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0.01重量部を添加し、サンドミルにて2時間の分散を行い、中間層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて円筒状アルミニウム基体(直径:30mm、長手方向の長さ:340mm、肉厚:0.7mm)の外周面に塗布し、150℃、30分の乾燥硬化を行い膜厚22μmの中間層を形成した。この中間層上に、実施例1と同様にして電荷発生層、電荷輸送層を順次形成した。
【0112】
次に、上記式(30)で表される化合物の代わりに下記式(32)で表される化合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして保護層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0113】
【化32】
Figure 0003780909
得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして各レスポンスタイムにおける高速適性及び環境変動性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0114】
さらに、この電子写真感光体を用いたこと以外は実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、連続2万枚のプリント試験を行った。得られた結果を表5に示す。
【0115】
[実施例3]
酸化スズ(S1、三菱マテリアル株式会社製、表面処理なし、平均一次粒径:20nm)40重量部とブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)6重量部とメチルエチルケトン25重量部とを30分間混合し、その後ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)5重量部、シリコーン微粒子(シリコーンボール トスパール120、東芝シリコーン社製)3重量部、並びにレベリング剤(シリコーンオイルSH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0.01重量部を添加し、サンドミルにて2時間の分散を行い、中間層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて円筒状アルミニウム基体(直径:30mm、長手方向の長さ:340mm、肉厚:0.7mm)の外周面に塗布し、150℃、30分の乾燥硬化を行って膜厚25μmの中間層を形成した。この中間層上に、実施例1と同様にして電荷発生層、電荷輸送層を順次形成した。
【0116】
次に、上記式(30)で表される化合物の代わりに下記式(33)で表される化合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして保護層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0117】
【化33】
Figure 0003780909
得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして各レスポンスタイムにおける高速適性及び環境変動性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0118】
さらに、この電子写真感光体を用いたこと以外は実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、連続2万枚のプリント試験を行った。得られた結果を表5に示す。
【0119】
[実施例4]
酸化亜鉛(Nano Tek ZnO、シーアイ化成社製、表面処理なし、平均一次粒径:30nm)33重量部とメラミン樹脂(ユーバン20SE−60)6重量部とn−ブチルアルコール25重量部とを30分間混合し、その後ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)6重量部、シリコーン微粒子(シリコーンボール トスパール120、東芝シリコーン社製)3重量部、並びにレベリング剤(シリコーンオイルSH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0.01重量部を添加し、サンドミルにて2時間の分散を行い、中間層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて円筒状アルミニウム基体(直径:30mm、長手方向の長さ:340mm、肉厚:0.7mm)の外周面に塗布し、150℃、30分の乾燥硬化を行って膜厚20μmの中間層を得た。この痛感層状に、実施例1と同様にして電荷発生層を形成した。
【0120】
次に、上記式(28)で表される高分子化合物2重量部及び下記式(34)で表される化合物2重量部を、テトラヒドロフラン15重量部とクロロベンゼン5重量部との混合溶剤に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法により上記の電荷発生層上に塗布し、135℃で40分熱風乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。この電荷輸送層上に、実施例1と同様にして保護層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0121】
【化34】
Figure 0003780909
得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして各レスポンスタイムにおける高速適性及び環境変動性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0122】
さらに、この電子写真感光体を用いたこと以外は実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、連続2万枚のプリント試験を行った。得られた結果を表5に示す。
【0123】
[実施例5]
酸化亜鉛(Nano Tek ZnO、シーアイ化成社製、表面処理なし、平均一次粒径:30nm)33重量部とブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)9重量部とメタノール5重量部とメトキシプロパノール12重量部とを30分間混合し、その後フェノール樹脂(J325、大日本インキ社製)12重量部、シリコーン微粒子(シリコーンボール トスパール120(東芝シリコーン社製)3重量部、並びにレベリング剤(シリコーンオイルSH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0.01重量部を添加し、サンドミルにて2時間の分散を行い、中間層形成用塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法にて円筒状アルミニウム基体(直径:30mm、長手方向の長さ:340mm、肉厚:0.7mm)の外周面に塗布し、150℃、30分の乾燥硬化を行って膜厚20μmの中間層を形成した。この中間層上に、実施例4と同様にして電荷発生層、電荷輸送層、保護層を順次形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0124】
得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして各レスポンスタイムにおける高速適性及び環境変動性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0125】
さらに、この電子写真感光体を用いたこと以外は実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、連続2万枚のプリント試験を行った。得られた結果を表5に示す。
【0126】
[比較例1]
実施例1と同様の円筒状アルミニウム基体の外周面にホーニング処理を施し、このようにして粗面化された基体を用いて以下の工程を行った。
【0127】
先ず、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)4重量部を溶解したn−ブチルアルコール170重量部、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30重量部及び有機シラン化合物の混合物(γ-アミノプロピルトリエトキシシシラン)3重量部を混合、攪拌し、中間層形成用の塗布液を調製した。この塗布液をホーニング処理により粗面化された上記基体の外周面に塗布し、室温で5分間風乾を行った。その後、7分にわたって基体温度を50℃まで昇温し、さらに50℃、85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて10分間加湿硬化促進処理を行った。次いで、これを熱風乾燥機に入れて135℃で10分間乾燥を行い、膜厚1.2μmの中間層を形成した。この中間層上に、実施例1と同様にして電荷発生層、電荷輸送層、保護層を順次形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0128】
得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして各レスポンスタイムにおける高速適性及び環境変動性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0129】
さらに、この電子写真感光体を用いたこと以外は実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、連続2万枚のプリント試験を行った。得られた結果を表5に示す。
【0130】
[比較例2]
保護層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0131】
得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして各レスポンスタイムにおける高速適性及び環境変動性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0132】
さらに、この電子写真感光体を用いたこと以外は実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、連続2万枚のプリント試験を行った。得られた結果を表5に示す。
【0133】
[比較例3]
中間層の膜厚を15μmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0134】
得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして各レスポンスタイムにおける高速適性及び環境変動性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0135】
さらに、この電子写真感光体を用いたこと以外は実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、連続2万枚のプリント試験を行った。得られた結果を表5に示す。
【0136】
[比較例4]
中間層の膜厚を18μmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0137】
得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして各レスポンスタイムにおける高速適性及び環境変動性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0138】
さらに、この電子写真感光体を用いたこと以外は実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、連続2万枚のプリント試験を行った。得られた結果を表5に示す。
【0139】
【表5】
Figure 0003780909
表5に示したように、実施例1〜5では、得られた電子写真感光体がいずれも優れた高速適性を示し、その電子写真感光体を用いた画像形成装置において良好な画像品質を得ることができた。
【0140】
これに対して、比較例1では、得られた電子写真感光体の高速適性が不十分であり、これを用いた画像形成装置においてリークによる黒点の発生が認められた。また、比較例2〜4の場合、電子写真感光体の高速適性は比較的良好であったが、プリント試験においては、比較例2で表面(電荷輸送層)の摩耗によるカブリの発生、比較例3、4でリークによる黒点の発生が認められ、いずれも実用に供し得るものではなかった。
【0141】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の電子写真感光体では、基体と感光層との間に上記特定の中間層、感光層の基体から遠い側の面上に上記特定の保護層をそれぞれ設けることによって、導電性異物の接触又は貫入によるピンホールリークの発生と感光層表面における摩耗・傷の発生との双方が防止される。また、当該中間層は十分に低い電荷蓄積性と十分に高い電荷遮蔽性(ブロッキング性)とを兼備しているため、感光層全体の電荷移動度が高められると共に電気特性が安定化する。従って本発明により、レスポンスタイムが十分に短く且つ機械的・電気的な耐性に優れた電子写真感光体が実現される。
【0142】
また、本発明の画像形成装置によれば、このように優れた特性を有する本発明の電子写真感光体を用いることによって、高速化、小型化及び長寿命化の全てを達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1…電子写真感光体、11…導電性基体、12…中間層、13…電荷発生層、14…電荷輸送層、15…保護層、16…感光層、2…帯電装置、3…露光装置、4…現像装置、5…転写装置、6…像定着装置、7…クリーニング装置、9…支持体。

Claims (5)

  1. 導電性基体及び該基体上に配置された感光層を備える電子写真感光体であって、
    前記基体と前記感光層との間に配置され、結着樹脂及び該結着樹脂中に分散された金属酸化物微粒子を含有する膜厚20〜40μmの中間層と、
    前記感光層の前記基体から遠い側の面上に配置され、電荷輸送材料及び3次元架橋構造を有するケイ素樹脂を含有する保護層と
    を備えることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記金属酸化物微粒子が、酸化スズ、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記中間層が、イソシアネート系化合物を含有する樹脂前駆体を用いて得られる結着樹脂を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記中間層が、平均一次粒径1〜5μmのシリコーン微粒子をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  5. 請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、
    前記電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
    トナーにより前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
    前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
    を備えることを特徴とする画像形成装置。
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