JP4144860B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関し、詳しくは表面層に特定の表面処理を施した珪素含有粒子を含有する電子写真感光体、該電子写真感光体を具備するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体には、適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、更には光学的特性を備えていることが要求される。特に、繰り返し使用される電子写真感光体には、帯電、露光、トナー現像、転写及びクリーニング等の電気的・機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性も要求される。具体的には、帯電時の放電や、クリーニング部材による摺擦による機械的劣化及び電気的劣化等に対する耐久性が求められている。無機電子写真感光体と異なり比較的に柔らかい物質で構成される有機光導電物質を含有する有機電子写真感光体は、機械的劣化に対する耐久性が劣るため耐久特性を満足させるためにいろいろな試みがなされてきた。
【0003】
その中で特に効果的に機械的劣化を防止し、耐久性を向上させる方法として高強度のフィラーを電子写真感光体の表面層中に存在させる方法が挙げられる。
【0004】
しかしながら、一般に高耐久化を目的としてフィラーの添加を行う場合、フィラーを樹脂中に均一かつ安定に分散させることは難しかった。そのため、様々な表面処理や分散補助剤を併用することも提案されている。しかし、これらの添加や処理により、分散時に良好な分散性を示していても、その後の粒子の2次凝集体が不安定であった。これは、膜厚が1〜100μmと非常に薄い電子写真感光体の表面層においては特に大きな問題で、画像にポチやカブリが生じる要因となっていた。
【0005】
また、表面処理剤や分散補助剤がキャリヤをトラップし、耐久や環境の変化における電位変動の原因になることがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のフィラーをバインダー中に分散含有する表面層が有していた課題を解決し、容易に電子写真感光体作製後も均一な粒子分散表面層を形成することができ、これによって耐久性能に優れ、更に、電子写真特性に弊害が生じず、特に、高温高湿の環境下での電子写真特性の変化が少ない電子写真感光体を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、導電性支持体及び感光層を有する電子写真感光体において、
該電子写真感光体の表面層が、バインダー樹脂、並びに、下記式(14)で示される珪素化合物で表面処理された珪素含有粒子を含有し、
該珪素含有粒子が、シリカ粒子又はシロキサン樹脂粒子である
ことを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0009】
【化2】
【0010】
また、本発明に従って、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明に用いられる珪素含有粒子は、シリカ粒子又はシロキサン樹脂粒子である。シリカ粒子は、二酸化珪素を主成分とし、湿式法もしくは乾式法で製造される。シロキサン樹脂粒子とは、3次元架橋したシリコーン樹脂で、湿式法で製造される。これらの粒子の粒子径は、0.01〜10μmのものを用いることが好ましいが、0.05〜5μmのものが耐久性向上の面からは更に好ましい。
【0013】
次に、珪素含有粒子の表面処理を行う処理剤について説明する。本発明で、用いられる表面処理剤は、上記式(14)で示される珪素化合物である。
【0014】
これらの化合物を用いて、粒子表面に単分子膜を形成するために必要な量は、次式で求められる;
化合物量(g)=粒子量(g)×粒子の表面積(m3/g)/化合物の最小被覆面積(m3/g)
【0015】
実際の処理においては、数分子膜となるため、粒子に対し0.1〜10質量%の範囲から選ばれる。また、20質量%以上の添加量では、特性を悪化させる場合もある。
【0016】
これらの化合物を用いて粒子の処理を行う際、反応性を向上させるため、酸性又はアルカリ性の条件下で処理を行ってもよい。
【0017】
本発明の顕著な効果が得られる理由は明確ではないが、式(14)で示される珪素化合物のCH3C6H4−及びCH3 −が、バインダー樹脂への親和性を示し、珪素含有粒子の有機樹脂への分散を促進すると共に、珪素含有粒子の凝集を防ぐ働きをしていると考えられる。また、珪素含有粒子と結合する基が、化合物当たり1個であり、未反応残基として残り難いため、電子写真特性を悪化させることなく、更には、高温高湿のような環境においても電位が変動することなく安定した特性が得られるものと考えられる。
【0018】
以下、本発明に用いられる電子写真感光体の構成について説明する。本発明における電子写真感光体は、支持体上に感光層を有する。感光層は、電荷輸送材料と電荷発生材料を同一の層に含有する単層型であっても、電荷輸送層と電荷発生層に分離した積層型でもよいが、電子写真特性的には積層型が好ましい。
【0019】
使用する支持体は導電性を有するものであればよく、アルミニウム及びスチンレス等の金属、あるいは導電層を設けた金属、紙及びプラスチック等が挙げられ、形状はシート状及び円筒状等が挙げられる。
【0020】
LBP等の露光光がレーザー光の場合は、支持体と感光層の間に散乱による干渉縞防止、又は支持体の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。これは、カーボンブラックや金属粒子等の導電性粉体をバインダー樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μmが好ましく、特には10〜30μmが好ましい。なお、干渉縞防止はシリンダーの切削やアルマイト処理等でも行うことができる。
【0021】
支持体又は導電層の上に接着機能及びバリヤー機能を有する中間層を設けてもよい。中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン及びポリエーテルウレタン等が挙げられる。これらは、適当な溶剤に溶解して塗布される。中間層の膜厚は0.05〜5μmが好ましく、特には0.3〜1μmが好ましい。シリンダーに直接アルマイト処理したり、ゾルゲル法による導電成膜を付けている場合等は中間層を使用しなくても構わない。
【0022】
中間層の上には電荷発生層が形成される。本発明に用いられる電荷発生材料としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン及び非対称キノシアニン系の各顔料が挙げられる。
【0023】
機能分離型の場合、電荷発生層は前記電荷発生材料を0.3〜4倍量のバインダー樹脂及び溶剤と共に、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル又は液衝突型高速分散機等の方法で十分に分散し、分散液を塗布、乾燥させて形成される。ただし電荷発生材料の特性によってはバインダー樹脂を電荷発生材料の分散後投入したりバインダー樹脂を使用しないことも可能である。電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.1〜2μmが好ましい。電荷輸送層は主として、電荷輸送材料とバインダー樹脂、電荷輸送層が表面層である場合は、更に式(14)で示される化合物で表面処理された珪素含有粒子を分散することにより得られた塗工液を塗工乾燥して形成する。
【0024】
用いられる電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物及びチアゾール系化合物等が挙げられる。
【0025】
電荷輸送層に用いるバインダー樹脂の例としては、熱可塑性バインダー樹脂及び硬化性バインダー樹脂が挙げられ、具体的にはフェノキシ樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂あるいはこれらの樹脂の繰り返し単位のうち2つ以上を含む共重合体、例えば、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー及びスチレン−マレイン酸コポリマー等を挙げることができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン及びポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマーからも選択できる。
【0026】
これらのうち、ポリアリレート樹脂及びポリカーボネート樹脂は、式(14)で示される化合物で表面処理した珪素含有粒子の分散性が良く、良好な塗工液を作製することができるので好ましい。
【0027】
ポリカーボネート樹脂は、下記式(3)で示される構成単位を有する。
【0028】
【化3】
【0029】
式中、R6〜R9は同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を示し、X1は−CR10R11−又は単結合であり、R10及びR11は同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基又はR10及びR11が結合することによって置換もしくは無置換のアルキリデン基を形成するのに必要な基である。
【0030】
ポリアリレート樹脂は、下記式(4)で示される構成単位を有する。
【0031】
【化4】
【0032】
式中、R12〜R15は同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を示し、X2は−CR16R17−又は単結合を示し、R16及びR17は同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基又はR16及びR17が結合することによって置換もしくは無置換のアルキリデン基を形成するのに必要な基を示し、R18〜R21は同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を示す。
【0033】
式(3)及び(4)中、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基及びプロピル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基及びナフチル基等が挙げられ、アルキリデン基としてはシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
【0034】
これらの基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基及びフェニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0035】
以下に、ポリカーボネート樹脂が有する構成単位の好ましい例を示すが、これらに限られるものでは無い。
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
次に、ポリアリレート樹脂が有する構成単位の好ましい例を示すが、これらに限られるものでは無い。
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
電荷輸送層の膜厚は5〜50μmが好ましく、特には10〜30μmが好ましい。電荷輸送材料とバインダー樹脂との質量比は5:1〜1:5が好ましく、特には3:1〜1:3が好ましい。なお、塗布する方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、スピナー塗布、ブレード塗布及びロール塗布法等が挙げられる。
【0044】
珪素含有粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して0.5〜50質量部が好ましい。0.5質量部未満では効果が少なく、50質量部を超えると光の透過性が著しく減少し、電子写真特性に著しい悪影響を及ぼし易い。
【0045】
色素、顔料及び有機電荷輸送材料等は、一般に紫外線、オゾン、オイル等の汚れや金属等に弱いため、本発明においては必要に応じて保護層を設けてもよい。本発明で用いることができる保護層は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー及びスチレン−アクリル酸コポリマー等のバインダー樹脂、式(14)で示される化合物で表面処理された珪素含有粒子を含有する溶液を感光層の上に塗布、乾燥することにより形成する。また、バインダー樹脂として、縮合系モノマーや不飽和基をもつラジカル重合系モノマーを用いた場合は、塗布後、熱や紫外線等のエネルギー光を当てて硬化、形成してもよい。また、必要に応じて金属や導電性金属酸化物等の導電性粒子や電荷輸送材料を更に含有させてもよい。
【0046】
保護層の膜厚は、0.05〜20μmであることが好ましい。保護層は電荷輸送層より薄膜にすることが可能であるため、本発明の珪素含粒子の量を増加させることが可能である。具体的には、珪素含有粒子は、バインダー樹脂100質量部に対して100質量部まで好ましく用いられる。また、保護層を設ける場合、電荷輸送層には本発明の珪素含有粒子を含有させなくてもよい。
【0047】
本発明の珪素含有粒子の分散には、ホモジナイザー、ラインミキサー、ウルトラディスパーサー、ホモミキサー、液衝突型高速分散機及び超音波分散機等の各種乳化機や分散機、ミキサー等の混合装置が使用できる。
【0048】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成を示す。
【0049】
図1において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に対し、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0050】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5内の荷電粒子(トナー)で正規現像又は反転現像により可転写粒子像(トナー像)として顕画化され、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送された転写材7に、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が転写手段6により順次転写されていく。この時、転写手段にはバイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。
【0051】
トナー画像の転写を受けた転写材7は、電子写真感光体面から分離されて像定着手段8へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0052】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナー等の付着物の除去を受けて清浄面化される。近年、クリーナレスシステムも研究され、転写残りトナーを直接、現像器等で回収することもできる。更に、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0053】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも1つを電子写真感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール等の案内手段12を用いて装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0054】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動又は液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0055】
本発明の電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、FAX、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも幅広く適用し得るものである。
【0056】
【実施例】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明の実施の形態は、これらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0057】
(参考例1)
30φ×357mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、それに以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸漬法で塗布し、140℃で30分間熱硬化し、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0058】
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリゴーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール0.2/0.8 20部
【0059】
次に、この上にN−メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬法で塗布し、膜厚が0.5μmの中間層を形成した。
【0060】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の9.0°14.2°、23.9°及び27.1°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン4部とポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学製)2部及びシクロヘキサノン60部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。これを浸漬法で塗布し、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0061】
次に、電荷輸送層を形成するために、電荷輸送用の塗工液を調製した。まず、ポリアリレート樹脂として構成単位例(4−2)の樹脂10部(粘度平均分子量45000)をクロロベンゼン100部に溶解し、乾式法で製造されたもの(日本アエロジル製)に下記式(3)
【0062】
【化11】
【0063】
で示される珪素化合物で表面処理を行ったシリカ粒子(粒子径0.3μm)10部を添加して十分に振り混ぜた。この混合物を、液衝突型分散機を用い、1回分散することによって、シリカ粒子分散液を調製した。
【0064】
次に、最終質量比で構成単位例(4−2)のポリアリレート樹脂:10、下記式で示されるアミン化合物A:9、
【0065】
【化12】
【0066】
アミン化合物B:1、
【0067】
【化13】
【0068】
シリカ粒子:1、モノクロルベンゼン:ジクロロメタン=1:1になるように調製した溶剤:80になるように前記シリカ粒子分散液にこれらを添加して塗工液を調製した。この塗工液を浸漬塗布法で塗布し、130℃で1時間乾燥することによって、膜厚が30μmの電荷輸送層を形成した。
【0069】
次に、評価について説明する。装置は、キヤノン製品GP211複写機(毎分21枚機)の改造機を用いた。改造は、高圧電源基板に対して行い、電子写真感光体が回転している間に一次帯電が出力するようにした。また、クリーニングブレードを改造し、電子写真感光体に接する部分の圧力を通常の製品の30%増しとした。試験は、23℃/50%RHの環境下で、コピーした後一旦停止してからすぐコピーを開始するモードで30000枚まで行った。画像は、A4紙で印字率5%の文字パターンとした。試験後に、耐久により減少した膜厚を測定した。
【0070】
更に、初期と30000枚耐久後に表面電位を測定し、明部電位の差(△Vl)を調べた。なお、{(30000枚耐久後の明部電位の絶対値)−(初期の明部電位の絶対値)}の値をもって△Vlとした。また、光量は、初期明部電位が、−200Vになるように設定した。また、初期において、温度35℃/湿度90%RHの環境に、評価機及び電子写真感光体を48時間放置した後、明部電位を測定した。この値と、温度23℃/湿度50%RHでの値との差を△VlHH−NNとした。これらの結果を表1に示す。
【0071】
(参考例2〜5)
参考例1における電荷輸送層のバインダー樹脂として、構成単位例(4−1)(粘度平均分子量44000)のポリアリレート樹脂、構成単位例(3−4)(粘度平均分子量42000)のポリカーボネート樹脂、構成単位例(3−3)(粘度平均分子量40000)のポリカーボネート樹脂及び構成単位例(3−3)と構成単位例(3−16)の構造をモル比で1:1の割合で有する共重合ポリカーボネート(粘度平均分子量43000)を用いた以外は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0072】
(参考例6、実施例7及び参考例8〜9)
参考例1における電荷輸送層の珪素含有粒子の表面処理剤として、上記式(3)で示される珪素化合物の代わりにそれぞれ下記式(4)
【0073】
【化14】
【0074】
で示される珪素化合物、上記式(14)で示される珪素化合物、下記式(17)
【0075】
【化15】
【0076】
で示される珪素化合物及び下記式(26)
【0077】
【化16】
【0078】
で示される珪素化合物を用いた以外は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0079】
(参考例10〜11及び実施例12)
電荷輸送層の珪素含有粒子として、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール、東芝シリコーン製、粒子径0.5μm)を用いた以外は、参考例1、参考例3及び実施例7と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0080】
(参考例13)
参考例1と同様にして電荷発生層まで作製した後、以下のようにして電荷輸送層を作製した。すなわち、最終質量比で構成単位例(3−3)のポリカーボネート樹脂:10(粘度平均分子量40000)とアミン化合物B:8をクロロベンゼン/ジクロロメタン=1:1の溶液:80の混合溶媒に溶解した塗工液を浸漬塗布法で塗布し、130℃で1時間乾燥することによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0081】
更に、以下の手順で、保護層を作製した。
【0082】
まず、平均粒径0.02μmのアンチモン含有酸化錫微粒子(商品名:T−1、三菱マテリアル(株)製)100部、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン(信越化学製)30部及び95%エタノール水溶液300部を混合した溶液を、ミリング装置で1時間分散した溶液を濾過し、エタノールで洗浄後に乾燥し、120℃で1時間加熱処理することにより酸化錫微粒子表面を処理した。
【0083】
次に、下記式で示されるアクリルモノマー25部、2−メチルチオキサントン0.5部、前記の表面処理済み酸化錫粒子35部及びトルエン300部を混合してサンドミル装置で96時間分散した分散液に、参考例1で用いた化合物で表面処理したシリカ粒子10部を混合して再びサンドミル装置で8時間分散した。この分散液をスプレー塗布後、乾燥し高圧水銀灯にて800mW/cm2の光強度で15秒間紫外線を照射することによって、膜厚が4μmの保護層を形成した。得られた電子写真感光体を参考例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0084】
【化17】
【0085】
(参考例14)
参考例13と同様にして電荷輸送層を作製した後、以下のようにして保護層を作製した。
【0086】
まず、構成単位例(3−3)のポリカーボネート樹脂35部(粘度平均分子量89000)をクロロベンゼン100部に溶解し、参考例1で使用した化合物で表面処理したシリカ粒子5部を混合して十分振り混ぜた。この混合物を液衝突型分散機を用い、1回分散することによってシリカ粒子分散液を調製した。
【0087】
次いで、最終質量比で構成単位例(3−3)のポリカーボネート樹脂:2、アミン化合物B:2、シリカ粒子:1、モノクロロベンゼン:ジクロロメタン=1:0.4になるように調製した溶剤:100となるようにシリカ粒子分散液にこれらを添加し塗工液を調製した。この塗布液をスプレー法で塗布し、130℃で1時間乾燥することによって、膜厚が6μmの保護層を形成した。得られた電子写真感光体を参考例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0088】
(比較例1)
電荷輸送層の珪素含有粒子の表面処理剤として、下記式で示される化合物を用いた以外は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0089】
【化18】
【0090】
(比較例2)
電荷輸送層の珪素含有粒子に表面処理を行わないシリカ粒子を用いた以外は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。この時、分散状態向上のため5回まで分散を行ったが、十分な分散状態ではなかった。結果を表1に示す。
【0091】
(比較例3)
電荷輸送層に珪素含有粒子を含まない以外は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、耐久性能に優れ、電子写真特性に弊害が生じず、且つ高温高湿の環境下における電位の変動が極めて小さい電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
Claims (5)
- 導電性支持体及び感光層を有する電子写真感光体において、
該電子写真感光体の表面層が、バインダー樹脂、並びに、下記式(14)で示される珪素化合物で表面処理された珪素含有粒子を含有し、
該珪素含有粒子が、シリカ粒子又はシロキサン樹脂粒子である
ことを特徴とする電子写真感光体。
- 前記珪素含有粒子がシリカ粒子である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記珪素含有粒子がシロキサン樹脂粒子である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、該電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段及び転写工程後の該電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し露光を行い静電潜像を形成する露光手段、該電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段及び該電子写真感光体上に形成されたトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えることを特徴とする電子写真装置。
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