JP2721160B2 - 電子写真用感光体 - Google Patents

電子写真用感光体

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JP2721160B2 JP62241501A JP24150187A JP2721160B2 JP 2721160 B2 JP2721160 B2 JP 2721160B2 JP 62241501 A JP62241501 A JP 62241501A JP 24150187 A JP24150187 A JP 24150187A JP 2721160 B2 JP2721160 B2 JP 2721160B2
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    • G03G5/08Photoconductive layers; Charge-generation layers or charge-transporting layers; Additives therefor; Binders therefor characterised by the photoconductive material being inorganic
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は例えば電子写真装置に用いられる電子写真用
感光体に関する。尚、本明細書において、炭素原子をマ
トリックスの主体とする膜とは膜中の炭素原子濃度が65
原子%以上のものを意味し、標準条件とは大気中1気
圧、温度20℃湿度50%であることをいう。 〔従来の技術〕 従来、例えば電子写真用感光体の光導電層は、A−Se
(非晶質Se),CdS,ZnO,A−Si(非晶質シリコン)等の無
機光導電材料で構成したり、ポリ−N−ビニルカルバゾ
ール(PVK)とトリニトロフルオレノン(TNF)の電荷移
動鎖体、トリフエニルメタン誘導体とチアピリリウム塩
をポリカーボネート中に含む系、ジスアゾ顔料やフタロ
シアニン顔料などの有機顔料系の材料等を含む電荷発生
層とヒドラゾン誘導体やトリフエニルアミン誘導体など
の電子供与製分子を有機ポリマー中に含む電荷輸送層と
の積層構造としたりするのが一般的である。 〔発明が解決しようとする問題点〕 しかしながら、これらの電子写真用感光体においては
未だ種々の解決されるべき点がある。 例えばA−Seを光導電層形成材料とする電子写真用感
光体は、Se単独ではその分光感度領域が可視域の短波長
側に偏っているので応用範囲が限られてしまう。そこ
で、TeやAsを添加して分光感度領域を拡げることが試み
られている。しかしこの様なTeやAsを含むSe系の光導電
層を有する電子写真用感光体は、その分光感度領域は改
良されるものの、光疲労の増大、高温環境での帯電性低
下、あるいは低温環境での残留電位上昇などがあり、画
質の低下や繰り返し使用時の安定性が失なわれてしまう
等の問題点があった。しかもSe,As,Te,特にAsやTeや人
体に対し極めて有害な物質であるので製造時に於て人体
への接触がないような製造装置を使用する工夫が必要で
あった。また、光導電層の硬度が低くクリーニングの確
実性と装置の小型化に優れたブレードクリーニングを適
用すると光導電層表面が露出している場合には、光導電
層表面がじかに摺擦されることによって、その一部が削
り取られて現像剤中に混入したり、あるいは複写機内に
飛散したり、複写画像中に混入したりして人体に接触す
る原因を与える結果を生じる。また、Seは結晶化温度が
低いので、少しの加熱や光照射などで容易に結晶化を起
こし、これが原因で帯電性の低下を引き起こすことがあ
った。 一方、ZnO,CdS等を光導電層構成材料として使用する
電子写真用感光体は、一般的にはその光導電層がZnOやC
dS等の光導電材料粒子を適当な樹脂結着材中に均一に分
散して形成されている。 しかしながら、ZnOを使用する場合には可視光に感度
を持たせるために有機顔料を添加するなどの分光増感が
必要になる、あるいは繰り返し使用により感度が低下し
ていくという欠点があるため余り多数回の繰り返し使用
はできなかった。又、CdSはZnOと違って人体に影響があ
る為に、CdSを使用する場合には製造時及び使用時に於
いて人体に接触したり或いは周囲環境に飛散したりする
ことのないようにする必要があった。更に、バインダー
系光導電層は、光導電材料粒子が樹脂結着材中に均一に
分散されなければならないという特殊性の為に、光導電
層の電気的及び光導電的特性や物理的化学的特性を決定
するパラメータが多く、かかるパラメータを厳密に調整
しなければ所望の特性を有する光導電層を再現性良く形
成する事ができず、そのため歩留りの低下を招き量産性
に欠けるという欠点があった。加えてバインダー系光導
電層は分散系という特殊性故に層全体がポーラスになっ
ており、湿度依存性が著しく、多湿雰囲気中で使用する
と電気的特性の劣化を来たし高品質の複写画像を得られ
なくなる場合が少なくないなどの問題もあった。 又、これとは別にPVK/TNF電荷移動鎖体、有機顔料、
電子供与性分子あるいは有機ポリマー等の有機材料を用
いる電子写真用感光体は、耐コロナイオン性が低いため
使用中に特性が劣化する、トナーと同様に有機ポリマー
を使うためクリーニング性に問題が生じ易い、機械強度
が弱いため表面が傷つき易い等の問題があり、長期間に
わたって高画質を維持しながら使用するのが困難なこと
が多かった。また、比較的自由な分子設計が可能である
といっても、実際には例えば電荷輸送層の場合、電子供
与性分子とバインダーポリマーとの相溶性不良などのた
めに使用出来るバインダーポリマーにかなり制約が出る
などの問題があった。また、これら有機光導電材料の中
でも広く利用されている電子吸引性分子や電子供与性分
子などには人体に害を及ぼすものも多く、発癌性を有す
るものも多々あるので、これらの面からの制約も実際の
材料選択の際に大きさ障害となることが多かった。 一方、電子写真用感光体では、現像、転写の後に感光
体表面のクリーニングを通常行なうが、このクリーニン
グにはクリーニングブラシやウレタン樹脂製クリーニン
グブレードが用いられており、現在では小型化が可能で
ある、クリーニング性が良い等の利点のために、後者の
クリーニングブレードが主流となっている。しかしなが
らクリーニングブレードを用いる場合、クリーニングブ
レードと感光体ドラム間の摩擦が問題となる場合が多か
った。例えば動摩擦係数とクリーニング性との間の関係
は、その間にトナーがある等の複雑さがあるために明ら
かになっていない部分も多いが、動摩擦係数が大きい
と、クリーニングブレードと感光体間に大きな圧力を加
えることが困難になってクリーニング性が悪くなってし
まうことがあった。 本発明は、上記の事情に基づいて成されたものであっ
て、従来の問題点の総てを解決した電子写真用感光体を
提供することを主たる目的とする。 本発明の別の目的は、機械的強度及び熱的安定性に優
れた電子写真用感光体を提供することでもある。本発明
の更に別の目的は、高い帯電特性と高い光感度を有する
電子写真用感光体を提供することでもある。 本発明のもう1つの目的は、表面潤滑性に優れ、繰り
返し連続使用を行なってもコロナ放電生成物や紙粉等の
汚染物の付着の少ない電子写真用感光体を提供すること
でもある。 本発明の更にもう1つの目的は、熱的キヤリアの生成
及び捕獲準位の少ない感光層を有する電子写真用感光体
を提供することでもある。 本発明の更に別のもう1つの目的は、後に詳述される
製造条件に従えば原料ガスの流量制御のみで安定した再
現性のある成膜が可能である電子写真用感光体を提供す
ることである。 本発明の他の目的は高い帯電能をもち、少ない帯電電
流と少ない露光エネルギー量で画像形成可能な電子写真
用感光体を提供する事にある。 また、本発明の他の目的は、高速画像形成が可能な電
子写真用感光体を提供することにある。 本発明のさらに他の目的は濃度が高く、ハーフトーン
が鮮明に出て且つ解像度の高い、高品質な画像を得る事
が容易に出来る電子写真用感光体を提供する事にある。 本発明のさらに他の目的は湿度、湿度等の使用環境の
変動に対して安定な画像を維持する事が可能な電子写真
用感光体を提供する事にある。 本発明のさらに他の目的は繰り返し使用の際のコロナ
放電生成物や紙粉などの付着の影響が少なく、また表面
に傷がつかず長期間継続的に安定な画像を維持しながら
使用可能な電子写真用感光体を提供する事にある。 本発明のさらに他の目的は、感光層の化学変化や劣化
あるいは結晶化等の変質がおこらず、長期間の悪環境化
での保管に耐えて保管前と変わらない良好な画質を再現
する事が可能な電子写真用感光体を提供する事にある。 本発明のさらに他の目的は、製造工程の途中やオフィ
ス等での取扱いの際に人体に触れても全く害がなく、ま
た現像剤中に感光層の一部が削れて混入し、それがコピ
ー上のトナー画像に含まれて人体に接触したりしても全
く安全で、必要ならば使用終了後に一般ゴミと一緒に廃
棄する事も安全上全く問題なく、一般家庭で使用する際
にも特別の注意なしに安全に使用可能で、火災などの非
常時に他のものと一緒に燃えてしまっても有毒な気体を
を放出しない、従ってあらゆる点で全く安全な電子写真
用感光体を提供する事にある。 本発明のさらに他の目的は、製造時に有害な原料を使
用せず、又は従来に較べて必要な有害原料の使用量が極
端に少なくても製造可能で、このため製造設備に取り付
ける必要のある有害物除外装置やその他の製造上の安全
対策に要するコストを著しく削減出来る電子写真用感光
体を提供する事にある。 本発明のさらに他の目的は製造用の原料として入手し
易く、安価な原料を使用する事の出来る低コストな電子
写真用感光体を提供する事にある。 本発明のさらに他の目的は不均一材料の混合や分散あ
るいは粒度分布制御などといった複雑な工程を取る事な
く、また塗布液の調液や塗布中の粘度制御あるいは多層
構造の際に起きる層間汚染や溶剤排気の処理などを必要
としない簡略化された工程で製造でき、またメンテナン
スの容易な製造装置を用いて製造出来る電子写真用感光
体を提供する事にある。 本発明のさらに他の目的は製造時の微粉末形成や製造
容器内に付着した膜のはがれによる微粒子の発生がな
く、長時間安定して欠陥のない均一な感光層を得る事の
出来る電子写真用感光体を提供する事にある。 本発明の他の目的はクリーニング性を向上させた電子
写真用感光体を提供するものであり、さらには高速にお
けるクリーニング性をも可能にし、また長時間の使用後
にも使用前と同様なクリーニング性と画像を示す耐久性
を持たせることにある。 本発明のさらに他の目的は温度、湿度等の使用環境の
変動に対して安定なクリーニング性と画像を維持する事
が可能な電子写真用感光体を提供する事にある。 本発明のさらに別の目的は、高速クリーニング、高速
画像形成が可能な電子写真感光体を提供することにあ
る。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明の上記目的は、支持体上に電荷発生層と電荷輸
送層とを積層した機能分離型の光受容層を有する電子写
真用感光体であって、前記電荷輸送層がラマンスペクト
ルの1333cm-1を含む領域のストークス線で特徴づけられ
る構造を有するダイヤモンド相が体積比で50〜95%で、
ラマンスペクトルの1580cm-1を含む領域のストークス線
で特徴づけられる構造を有するグラファイト相が体積比
で20%以下の、炭素原子をマトリックスの主体とする膜
であって、周期律表第III族または第V族に属する原子
を5原子ppm以上5原子%以下、水素原子を0.01原子%
以上30原子%以下、炭素原子を65原子%以上含有するこ
とを特徴とする電子写真用感光体により達成される。 本発明における炭素原子をマトリックスの主体とする
膜(以後、殊に断わらぬ限り「炭素質膜」と呼ぶことに
する)とは、例えばポリエチレンの様な炭化水素系の高
絶縁性直鎖有機ポリマーや、炭素原子からなる黒鉛の真
空蒸着膜の様な低抵抗のグラファイト多結晶膜の如きも
のとは、その特性が大きく異なるものである。本発明の
目的は、この様な従来の膜では達成されない。その理由
は、水素原子を多量に含む上記ポリエチレンの様な有機
ポリマーを電荷輸送層に使用した場合には、帯電能を向
上することはできたとしても、可視域や近赤外域の光に
対する電子写真用感光体としての感度がほとんど得られ
ないためである。また、上記グラファイト多結晶のよう
なものでは、帯電能が低下して実用的な電子写真用感光
体が得られないためである。 本発明における炭素原子をマトリックスの主体とする
膜は多結晶相、非晶質相あるいはこれらの相の混合した
相、又は、これ等の構造に単結晶相が混合した相のいず
れの形態とをってもよい。加えて、好ましくは、少なく
ともその電気伝導度σDが10-11Ω-1cm-1以下であって、
しかも膜中に含まれる水素原子濃度が40原子%以下、さ
らにその光学的バンドギャップEgoptが1.5eV以上、より
好ましくは2.0eV以上のものであることが望ましい。 本発明は上記のような物性範囲の炭素質膜が、高絶縁
性でありながらその層中に電荷が注入されると注入され
た電荷が電場により輸送されるという現象を見い出した
ことに基づいており、かかる炭素質膜は、従来の製造条
件では製造できない。一般に、電子写真用感光体におけ
る電荷の伝導形態は成膜条件にかなり大きく依存し、き
れいなバンド伝導を起こせる成膜条件は必ずしも広くな
く、分散型の性格の強い過渡電流波形が得られる場合も
少なくない。このことは本発明においても同様である
が、本発明における炭素質膜は、このような状態にあっ
ても電子写真用感光体の電荷輸送層として充分に使用可
能なものである。ところで、過去においてA−SiやA−
Geを主体としてこれに炭素原子を加えた層を電子写真用
感光体の構成層の1つとして利用した例としては、特開
昭54−55439、特開昭55−4040、特開昭55−49304、特開
昭56−121041、特開昭60−26345、特開昭61−94048、特
開昭61−94049、特開昭61−105551などがある。しかし
これらはA−Si又はA−Geから得られる機能を維持させ
つつ、炭素原子の添加によりその膜特性を改良したもの
であり、炭素原子をマトリックスの主体とすることによ
って得られる炭素質膜の機能を利用したものではない。
すなわち、第1に本発明の炭素質膜には、上記SiやGeは
含まれないか、もしくは含ませたとしてもなるべく少な
くされたものである。さらに上記の諸提案で成膜に使わ
れている成膜条件はA−SiやA−Ge層の形成の際に適用
されているものであって、その様な条件では本発明の目
的を達成する膜は出来ない。 本発明における炭素質膜の更に好適な実施態様として
は、光学吸収係数が2.5eV以下のエネルギーの光に対し
て、104cm-1以下の物性値を有することが望ましい。 また、本発明における別の好適な実施態様において
は、炭素質膜中にフッ素原子を含有させるのが望まし
い。その際の温度は、10原子ppm以上15原子%以下であ
ることが望ましい。 本発明な上記のような諸物性値のいくつかを適宜有す
る炭素質膜が、高絶縁性でありながらその層中に電荷が
注入されると注入された電荷が電場により輸送されると
いう現象を見い出したことに基づいている。 本発明における炭素質膜は、光受容層の最表層として
設けられる場合には、クリーニング特性を更に向上させ
るために該炭素質膜同士の標準条件下におけう動摩擦係
数が0.5以下のものを選択して使用するのが望ましい。 ここで本発明における動摩擦係数の測定法について触
れておく。動摩擦係数の測定は非常に敏感であり、原因
は定かではないが温度、湿度によって値が2〜3倍、場
合によっては10倍程度変化してしまう。よって測定に
は、まず測定環境を規定しておく必要がある。動摩擦係
数は一般に次の式で決められる。 μ=F/P …(1) ここでμは動摩擦係数であり、Fが加える力、Pが垂
直加重である。(1)式によりμが接触面積によらない
のでドラムのような円柱状のものでも測定が容易であ
る。実際のクリーニングの際には、感光体とクリーニン
ブブレード間の動摩擦係数が問題となり、またその間に
はトナーがありクリーニングブレードの材質、トナー量
等の不安定要素があるので、はっきりした動摩擦係数が
決定できない。このことから本明細書では、感光体表面
同士の動摩擦係数を規定するが、後に記載するように、
この動摩擦係数とクリーニング特性の間には良い相関が
得られ、この規定が十分に意義のあるものであることが
わかった。 次に第6図(a)および(b)にて動摩擦係数の実際
の測定法について説明する。測定には2本の感光体ドラ
ム111を用い、第6図のように一方を固定し、他方をあ
る一定速度で回転させ、両方を力Fで押しつける。そう
するとトルクを受け回転しにくくなる。このトルクを測
定し、力Fの値が分っているので動摩擦係数が測定でき
る。 実際には、動摩擦係数が力Fや回転速度に依存する場
合が出てくるが、この場合本明細書における動摩擦係数
を次のように規定する。すなわち、力Fに動摩擦係数が
依存する場合、力Fを変え、力Fに対し動摩擦係数をプ
ロットし、力Fを0に外挿した値をこの材料の動摩擦係
数とする。又、動摩擦係数がドラムの回転速度に依存す
る場合、やはり回転速度に対し動摩擦係数の値をプロッ
トし、回転速度が0のところに外挿する。しかし双方と
も外挿する場合、極端に0に近いポイントは接触の不安
定さや、静摩擦係数の値を測る可能性があるので、そこ
のポイントを除いたものでグラフを描き外挿するものと
する。又、測定を同じドラムで何回も行なうと、最初と
最後に得られた動摩擦係数に変化が生じるが、この場合
は測定初期の値を動摩擦係数とする。このように動摩擦
係数の値に変動が生じる原因として、摩擦による熱の発
生、摩耗、またそれによる微粒子の発生等が挙げられ
る。つまり測定はそれらの原因が発生しない程度の条件
で行なうのが良いとされている。 次に前記の方法で、動摩擦係数をOPC、アモルファス
シリコン、Se、そして今回作成の炭素質膜の感光体にて
おのおの測定したところ、OPCとSeの感光体で0.6〜0.
7、アモルファスシリコンで0.7〜0.8の値を得た。作成
した炭素質膜の感光体に関しては、炭素原子の含有量65
%以上で基板温度が高めの条件のもとで成膜されたもの
で0.05〜0.2の値が得られた。このことから本発明にお
ける炭素質膜が低い動摩擦係数をもつことが分る。この
動摩擦係数は、膜中にフッ素原子を含有させることによ
ってより効果的に低下させることが出来る。 本発明における炭素質膜の更に別の好適な実施態様に
おいてはそのギャップステート密度が5×1017cm-3以下
のものであることが望ましい。 ここでギャップステート密度を測定する手段として、
容量法や電界効果法等が用いられる。アモルファスシリ
コンの場合、ギャップステートが多くなる原因としてダ
ングリングボンド等による構造欠陥や不純物準位等が挙
げられているが、炭素原子を主体とする膜の場合には現
在のところ定かではないが、やはり構造欠陥等が考えら
れる。 本発明における炭素質膜は、ダイヤモンド相が体積比
で50〜95%含有されており、残りは多結晶相、非晶質相
あるいはこれらの相の混合した相のいずれの形態をとっ
ても良い。 本発明における炭素質膜は、その膜中にグラファイト
相の量が体積比で20%以下、好ましくは10%以下であ
る。本発明で述べるダイヤモンド相及びグラファト相
は、夫々、全体としては単結晶、多結晶のいずれの形態
をとってもよいが、夫々ダイヤモンド及びグラファイト
の結晶性を有しているものであり、非晶質構造のものは
含めない。しかしながら、粒径の大きなダイヤモンド結
晶は、電子写真用感光体に必要な平坦性を害する傾向が
あるので、望ましくは、より微細な結晶のダイヤモンド
相が好ましい。このようなより微細な結晶のダイヤモン
ド相を含むことによって、Egの増加、電子伝導度の減少
等を計ることが出来る。 このような特定されたグラファイト相の量を有する本
発明における炭素原子をマトリックスの主体とする膜と
は、例えばポリエチレンの様な炭化水素系の高絶縁性直
鎖有機ポリマーや、炭素原子からなる黒鉛の真空蒸着膜
のような低抵抗のグラファイト多結晶膜の如きものと
は、その特性が大きく異なるものである。 グラファイト相の量が前記の値を越えると帯電能が低
下する傾向が生じ、強いては電子写真用感光体として不
適当となる場合がある。グラファイト構造の検知は幾つ
かの方法で可能であり、例えばラマンスペクトルの分析
によれば、完全なグラファイト構造を有するものは1580
cm-1付近に鋭いラマンピークを示す。グラファイト構造
からの乱れが大きくなるにつれてラマンスペクトルは13
60cm-1付近に新たなラマンバンドが現われ、1580cm-1
近のピークは高波長側へシフトし、1620cm-1付近にショ
ルダーが現われてくる。そしてラマンピーク幅も広くな
っていく。さらに2000cm-1より高波長側に倍音等による
ピークが現われるが、一般的には2000cm-1以下のピーク
のみで構造を分析することが可能である。 さらに、本発明においてはダイヤモンド相,グラファ
イト相の存在比の確認は、電子線回折及び電子顕微鏡観
察によって行なう。まず、本発明で得られた炭素質膜
を、イオンミリング,電界研磨等により非常に薄く薄片
化し、これを電子顕微鏡の試料として電子顕微鏡の試料
室へ入れる。まず、電子線回折により、ダイヤモンド相
又はグラファイト相の存在を確認し、次に明視野像に切
りかえ、この明視野像の撮影を行なう。結晶相と非結晶
相の比は、この明視野像の写真上の面積比を比較し、こ
れより体積比を見積もる。 本発明における炭素質膜は、例えば炭素化合物と水素
分子とを原料とする気相成膜法により、先に述べたよう
な特定の性状や特性を有する炭素質膜を形成できるよう
な条件、具体的には後述の実施例に記載されたような成
膜条件を設定して形成する事が出来る。この条件の設定
は、本発明者によって初めてなされたものである。成膜
のメカニズムについては必ずしも定かではないが、原料
ガスの放電や原料ガスの加熱などによって原料気体分子
にエネルギーを与えたり、成膜中の基板を加速電子でた
たいたり、成膜途中で生じるイオンを電場で加速した
り、プラズマ生成領域に磁場印加したりする事が本発明
に言うところの炭素質膜を得る上で有効である。 本発明におけるダイヤモンド相が体積比で50〜95%を
占める炭素質膜は、例えばメタン等の炭素化合物と水素
分子、更に必要な添加物ガス分子を含む混合気体を原料
とする気相成膜法により、先に述べたような特定の条件
を設定して形成する事が出来る。 ここでいう気相成膜法とは、原料ガスを直流又は交流
電場による放電で励起し、支持体表面にダイヤモンヂ相
を含む炭素質膜を形成するプラズマCVD法や、原料ガス
をイオン化室においてイオン化し、これを電場により引
き出し、ビーム状として支持体表面に照射することによ
り膜形成を行なうイオンビーム蒸着法、更には原料ガス
を熱エネルギーにより活性化あるいは分解することによ
り支持体表面に膜形成を行なう熱CVD法,また更には加
速されたイオンをグラファイトなどの炭素から成るター
ゲット材に照射することにより炭素原子又は炭素含有分
子粒子を発生せしめ、この粒子により支持体表面に膜を
形成せしめるスパッタ法、また更には電子線やイオン線
など荷電粒子により原料ガスを励起し支持体表面に膜形
成を行なう方法、また更には水素分子やハロゲン分子を
プラズマや熱エネルギーにより活性化し、これら水素ラ
ジカルやハロゲンラジカルにより原料ガスを分解、結合
反応させることにより支持体表面に膜形成せしめる方
法、更に原料に紫外線やレーザ光を作用させ、光化学反
応により支持体に膜を形成せしめる光CVD法を指す。 これら気相成膜法により、ダイヤモンド相を含む炭素
質膜が支持体表面に形成される機構は十分に解明されて
はいない。しかし、これら気相成膜法の各種条件を目的
に合わせ制御することにより、電子写真用感光体の電荷
輸送層として十分な機能を発揮するためのダイヤモンド
相を体積比で50〜95%含む炭素質膜を形成することが可
能となる。 第1図及び第2に本発明の電子写真用感光体の最も代
表的な構成例を示す。これら図において、符号13及び23
で示すものが本発明で言う炭素質膜で構成された電荷輸
送層である。12及び22は電荷発生層、14及び24は支持
体、11は表面相、21は電荷注入阻止層である。 電荷輸送層13及び23は、水素原子を多量に含むことは
好ましくなく、水素原子含有量としては30原子%以下で
あることが好ましい。多すぎる水素原子量は光感度低
下、残留電位上昇あるいは表面の傷のつき易さの原因に
なるからである。しかし水素原子の膜中への構造的含有
は、帯電性の向上や残留電位の低減に効果があるので、
好ましくは、その下限を0.01原子%とするのが望まし
い。 また、上記水素原子のみならず、電荷輸送層を構成す
る炭素質膜には、窒素原子も含有してよく、これらの原
子の場合も上記水素原子と同様の効果がある。更に、酸
素原子の含有も帯電性の向上に効果的である。 電荷輸送層13及び23を構成する炭素質膜としてはダイ
ヤモンド構造をもつアモルファス又は結晶に起因するピ
ークであるラマンスペクトルの1333cm-1を含む領域のス
トークス線で特徴づけられる構造を少なくとも部分的に
含み、ダイヤモンド相を50〜95%(体積比)で含むもの
である。電荷輸送層を構成する炭素質膜が完全なダイヤ
モンド構造を多量に含むダイヤモンド多結晶に近い膜で
あれば、電子写真用感光体の帯電性及び感度,表面硬
度,耐久性等を向上させることができる。また、得られ
る炭素質膜は非晶質もしくは結晶質のいかんにかかわら
ず、成膜条件によって例えば成膜時の水素ガスの流量比
を高める事により光学的バンドギャップを大きくする事
が出来る。 電荷輸送層13及び23を構成する炭素質膜は半導体的不
純物として、周期律表第III族又は第V族に属する原子
のドーピングを行ない、その特性を改善する事ができ
る。このような第III族又は第V族原子によるドーピン
グは、本発明の電子写真用感光体を正帯電又は負帯電で
使用する際の帯電性を高め、感度を向上させ、残留電位
を下げる効果がある。これは、これら原子のドーピング
により電荷輸送層13及び23の電荷キャリアの濃度が変化
するか、又は電荷キャリアの輸送性が変化するためと考
えられる。この変化は比較的おだやかであるので、その
制御は容易である。これら原子の添加量は5原子ppm以
上5原子%以下の範囲、より有効な範囲としては50原子
ppm以上1原子%以下であるのが望まし。これらのより
詳しい条件は実施例中で述べる。第III族に属する原子
としてはB,Al,Ga,In,Tl等が挙げあられる。第V族の原
子としてはN,P,As,Sb,Bi等が挙げられる。製造安定性,
コスト,効果の大きさなどからは、N,P,B,Alなどが特に
望ましい。 電荷輸送層13及び23の膜厚は使用条件等により適宜選
択することができるが、好ましくは1μm以上100μm
以下の間にあることが望ましい。これは、1μm未満で
は通常の実用化されている現像方法では満足できる可視
画像濃度が得られない場合があり、他方100μmを越え
ると残留電位が大きすぎる場合があったり、成膜に要す
る時間がかかり過ぎたり、支持体との密着性等に問題を
生じる場合があるためである。前記層厚のより好ましい
範囲は、5μm以上50μm以下である。この範囲では使
用条件がゆるやかになって使い易いばかりか、従来の感
光体に比して膜厚が薄くても画像濃度が高くなる傾向が
あるので、製造コスト低減にとって有利である。 本発明の電荷輸送層を構成する炭素質膜の膜構造は、
例えば、ラマンスペクトルの分析によって検知される。
先にも述べたように炭素質膜が完全なグラファイト構造
を有する場合は、1580cm-1付近に鋭いラマンピークが検
出される。グラファイト構造からの乱れが大きくなる
(結晶性が崩れアモルファスの傾向が増す)につれて13
60cm-1付近に新たにラマンピークが現われ、1580cm-1
近のラマンピークは高周波側にシフトし、1620cm-1付近
にショルダーが現われてくる。そしてピーク幅も広くな
っていく。炭素質膜がSP3の炭素からなるダイヤモンド
構造の場合は、1333cm-1に非常に鋭いピークが検出され
る。このピーク巾によってダイヤモンド構造において結
晶性が高いかどうか、アモルファス性が高いかどうかを
判別することができる。 本発明において好適に使用される炭素質膜としては、
ラマンスペクトルにおける1333cm-1のピーク強度IDと15
80cm-1のピーク強度IGの比ID/IGが好ましくは0.18〜5.
9、より好ましくは1.8〜5.9となるように作成されるの
が望ましい。本発明においてはラマンスペクトルのピー
ク強度は、測定されたラマンスペクトルを通常この分野
において採用されている方法によってピーク分割し、分
割された所定の各ピークごとに三角形近似法に従って求
められる値が採用される。 本発明の電子写真用感光体における電荷発生層12及び
22は、光導電性を有するものであれば従来公知のいかな
る構成のものでもよい。しかしながら組み合せの良好さ
から、例えばプラズマCVDにより成膜したA−Si:Hを主
体とする0.5〜20μm程度の膜厚のものや、これに更にG
eやO、C、N等を含有させたものが好ましいものとし
て挙げることができる。本発明ではこのような電荷発生
層からの電荷輸送層への電荷注入を良好に行なう事が出
来る。 本発明の電子写真用感光体では、電荷輸送層(13,2
3)として下記実施例に記載された条件で作成された電
荷輸送能力に優れ、且つ電気抵抗(電気伝導度の逆数)
の高い炭素原子を主体とする膜を用いているため、電荷
発生層(12,22)を従来の電子写真用感光体におけるよ
りも低抵抗のものとすることができる。具体的に例え
ば、電気抵抗の値として10-10Ωcm程度あるいはそれよ
りやや低いものであってもよい。従って、光導電性が大
きくても低抵抗であるために利用困難であった材料でも
使用する事が可能になり、電子写真感光体全体の特性と
して極めて高い感度が得られるものである。 電荷輸送層(13,23)中に、含有されるフッ素原子や
水素原子は電荷輸送層(13,23)の自由表面近くにのみ
含有されるか、又はその表面から内部方向に向って濃度
勾配を以て含有されてもよい。又、電荷輸送層(13、2
3)を構成する炭素質膜が完全なダイヤモンド構造を多
量に含むタイヤモンド多結晶に近い膜であれば、電子写
真用感光体の帯電性及び感度,表面硬度,耐久性等を向
上させることができるが、残留電位を低く押えるために
は、電荷輸送層(13,23)を構成する炭素質膜は、適量
のダイヤモンド構造を有する膜とされるのが望ましい。 本発明における炭素質膜で構成される電荷輸送層が第
2図のように表面層としての機能も持たせる場合、光学
的バンドギャップは、2.0eV以上、より好ましくは2.5eV
以上であることが望ましく、且つ二重結合が多量に含ま
れない様にするのが好ましい。このために水素原子やフ
ッ原子を適当量含有さることは効果的であり、特にフッ
素原子を含有させる場合、動摩擦係数の減少にも効果が
あり、好ましい。 本発明における電荷輸送層を構成する炭素質膜は、ギ
ャップステート密度が5×1017cm-3以下になる様に成膜
されるのが好ましいが、より好ましくは、1.5×1017cm
-3以下とされるのが望ましい。 即ち、ギャップステート密度が大きいと、電荷発生層
で発生した電荷が電荷輸送層の輸送途中でトラップされ
易く、残留電位が上がる等のことから、画質に悪影響を
及ぼす。ギャップステート密度を下げるには、前記した
特別な条件の成膜方法の他に、水素原子やフッ原子、窒
素原子、酸素原子を含有させることも効果的である。 本発明の電子写真用感光体の支持体14及び24は支持体
としての機械的強度が満たされれば絶縁体であっても導
電体であってもよいが、繰り返し使用する場合には少な
くとも支持体(14、24)の光受容層が設けられる側が導
電性処理されていることが望ましい。導電性支持体とし
てはAl,Fe,Ni、ステンレス,Sn,Zn,Cr,Mo,Ti,Ta,W,Au,A
g,Pt等の金属やSi,Ge,グラファイトなどが使用可能であ
る。光受容層の接着性等の改良その他の目的で導電性支
持体表面に支持体金属とは別の導電性の物質をコーティ
ングしても良い。絶縁性支持体としてはポリエステル,
ポリウレタン,ポリカーボネート,ポリスチレン,ポリ
アミド,PE等の有機ポリマーの他、ガラス,セラミック
スなどの無機材料も使用できる。支持体の大きさ及び形
状は本発明の電子写真用感光体の使用用途により自由に
選択する事が出来、手の平に乗る様な小さなカード状の
ものや円筒型あるいはベルト状のものなどどれも使用可
能である。 第1図の電子写真感光体の場合には、通常、表面層11
を設ける事が望ましい。特に電荷発生層12をA−Si:Hで
構成した場合には、高湿環境化での画像劣化防止の向上
やコロナ放電生成物の影響による画質低下防止の向上を
はかるために表面層11を設けることが望ましい。表面層
11は可視光領域においてある程度透明で電気伝導度が低
ければ色々な材料が使用可能である。例えばプラズマCV
Dなどで形成されたA−SiC(H),A−SiN(H)などの
膜でも良い。また電荷輸送層(13、23)に使用できる炭
素質膜であっても良いが、その場合は光学的バンドギャ
ップが、望ましくは2.0eV又はそれ以上であることが望
ましい。この場合、電気伝導度、水素原子やフッ素原子
の含有量は表面層11に要求される特性を満足するもので
あれば特に限定されない。また、表面層11に含有される
水素原子やフッ素原子は表面層11の自由表面近くにのみ
含有されるか、又はその表面から内部方向に向って濃度
勾配を持っていても良い。 第2図の電子写真感光体の場合には電荷注入阻止層21
を、電荷発生層22と支持体24との間に設ける事が望まし
い。これにより帯電能の一層の向上や画質の欠陥の発生
をより一層防止出来る。電荷注入阻止層21としてはプラ
ズマCVDなどで成膜された半導体的不純物がドーピング
されたA−Si(H,X)などが使用可能である。この場合
感光体を正帯電で使用する場合には電荷注入阻止層21は
p型又は電子易動度の小さいもの、負帯電で使用する場
合にはn型又は正孔易動度の小さいものとすることが好
ましい。p型又は電子易動度の小さいものとする場合に
は、B,Alのような第III族原子が、n型又は正孔易動度
の小さいものとする場合にはN,P,Asのような第V族原子
がドーパントとして適当である。 本発明の電子写真用感光体の電荷輸送層(13、23)
は、後述するような気相成膜法を用い、具体的には実施
例に示した条件で炭素化合物を含む気体を放電エネルギ
ーや熱エネルギーあるいは光エネルギーを利用しての励
起、イオン化あるいは分解する等により得る事ができ
る。この成膜の際、基板を加速電子でたたいたり、途中
で生じるイオンを電場で加速したり、プラズマ生成領域
に磁場を印加したりすることにより本発明の炭素質膜を
得ることができる。もちろん、炭素化合物の気体を全く
用いず、炭素又は炭素化合物を主体とする固体をターゲ
ットとするスパッタリングを利用する事もある特定の成
膜条件下では可能である。 成膜のメカニズムの詳細は定かではないが、炭素イオ
ン又は炭素化合物のイオンあるいは炭素化合物のラジカ
ル生成と、水素を用いる場合には水素の供給量が本発明
に適用される良質の炭素質膜を得る上で重要である。水
素を用いる場合には成膜前の励起過程で少なくとも部分
的にラジカル化又はイオン化させておくとよい。さら
に、気体にバイアス電圧をかけて成膜面をイオン衝撃す
るか、又は基体方向へ電子を加速して成膜面付近で炭素
化合物を電子で励起するのも有効である。この場合の電
子の供給は、プラズマによる他、加熱したフィラメント
を利用してもよい。また、基体に直接外部電源によりバ
イアス電圧を印加しない場合であっても、例えばRFプラ
ズマCVDを実施する場合におけるように基体を接地させ
ず、この基体側に高周波印加する事によって生じる自己
バイアスを利用することが望ましい。基体温度も重要な
パラメータであって、好ましくは、250℃以上、より好
ましくは、450℃以上に設定する事が望ましい。 本発明の電子写真用感光体の電荷輸送層を作成するた
めの成膜条件は、成膜方法、使用される装置の構造、寸
法、材質、使用する原料の種類などによって種々異なる
ものであり又、各成膜パラメータの値は独立的に決めら
れるものではなく各成膜パラメータの有機的関係に基い
て適宜所望に従って決められる。 放電を利用する気相成膜法(CVD)の場合一般的に
は、放電パワー(PW)として250〜650W、成膜時の圧力
(P)として7×10-4〜10Torr、基体温度(TS)として
は250〜700℃、基体バイアス(ESUB)としては−300〜0
V、磁場(H)としては、RFの場合は400〜800Gauss、マ
イクロ波の場合は、875Gauss又はその近くの値とされる
のが望ましい。 本発明においては、これらの各成膜パラメータの値の
範囲の中より本発明の目的とする炭素質膜で構成された
電荷輸送層が作製されるように装置に合せて適宜所望に
従って各成膜パラメータの値が具体的に選択されて成膜
条件がデザインされる。 その場合、暗導電率(δ)は、放電パワー、基体温
度、基体バアイスを上げることによって下げることがで
きる。又、暗導電率は、炭素化合物の原料ガスと水素ガ
スとを使用する場合には、炭素化合物の原料ガスの水素
ガスに対する流量比を増大することによって上げること
ができる。光学的吸収係数又はバンドギャップを増大さ
せるには、原料ガス種を適当に選択して使用したり、或
は、放電パワー、基体温度、基体バイアスを増大させる
ことによって成される。 炭素質膜中の水素原子及びフッ素原子の含有量は、主
として、原料の種類、原料の組み合わせ、ガス流量、放
電パワー、基体温度、圧力等を有機的関連性の下に適宜
選択することによって所望値に制御することができる。 動摩擦係数を下げるには、一般的には、放電パワー、
基体温度、基体バイアスを増大させることによって成さ
れる。又、前記炭素化合物のガスの流量を減少させれ
ば、一般的には、動摩擦係数を下げることができる。 炭素質膜の膜構造は主として基体バイアス、基体温度
を増大させるか又は/及び炭素原子供給用の原料ガスの
水素原子もしくはハロゲン原子供給用の原料ガスに対す
る流量の割合(ガス流量比)を減少させることによって
より完全なダイヤモンド構造を取る傾向になり、逆の場
合にはより完全なグラファイト構造を取る傾向になる。 本発明においては、上記の点を十分考慮した上で本発
明の目的とする炭素質膜を得る成膜条件が適宜選択さ
れ、いくつかの例が以降の実施例において具体的に示さ
れる。 第3図に本発明の電子写真用感光体の製造に好適な成
膜装置の一例を示す。この第3図において、符号26,27,
28,29,30,31,32,33,34,62,63,66,67で示すものは、成膜
に使用するガスのコントロールに用いるバルブである。
39,40,41,42,60は主原料ガス,エッチングガス,キャリ
アーガスあるいはドーピング用ガス等の所望のガスを保
持するガスボンベ、61は液体材料を気化させる装置で必
要に応じ水素ガスやアルゴンガスを一緒に流す事が出来
る様になっている。35,36,37,38,64,65はマスフローコ
ントローラーである。52は真空槽で主バルブ25を介して
真空排気ポンプへ通じている。真空槽52は全体を水冷出
来る様にしてある。45及び46は電極で、直流又は交流の
電圧を印加できるようになっている。電極46の表面には
必要に応じてスパッタリング用ターゲットを置くことが
できる。54,68がガード電極で、真空槽52と同様にアー
スされており、不要な場合は取り外せるようになってい
る。53は基体で、この表面に機能分離型の光受容層を成
膜する。44は基体加熱ヒーターで、高さを調節すること
が出来、タングステン、タンタル等のワイヤー、うず巻
き線又はメッシュ等の種々の形状のものを必要に応じて
使用し、加熱の際には通常は50Hzの交流電力を印加す
る。43は真空槽52のまわりに巻いたコイルで、必要に応
じて直流を流して磁場を発生させる。47は13.56MHzの高
周波電源で負荷インピーダンスに応じてマッチングを取
れるようにしてある。48は直流電源、50および51はキャ
パシター、49はインダクタンスコイルである。69,70は
電極45および46の高周波印加側を上下に入れ換えるため
の切り換え回路である。 第4図は本発明の電子写真感光体の製造に好適な成膜
装置の他の一例である。この第4図において、符号79,8
0,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92で示すもの
は、成膜に使用するガスのコントロールに用いるバルブ
である。バルブ86と85を使いわける事によりガス導入場
所を選択出来るようになっている。72,73,74,75,76は原
料ガス,エッチングガス,キャリアーガス,あるいはド
ーピング用ガス等の所望のガスを保持するガスボンベ、
78は液体材料を気化させる装置で必要に応じ水素ガスや
アルゴンガスを一緒に流す事が出来る様になっている。
93,94,95,96,97,98はマスフローコントローラーであ
る。71は真空槽で主バルブ104を介して真空排気ポンプ
へ通じている。107はマイクロ波電源、109はマイクロ波
の導波管である。108はインピーダンスのマッチングを
取るためのチューナーである。110はマイクロ波投入口
の窓ガラスで、石英板もしくはその他のマイクロ波を吸
収しにくい材料で出来ている。99は仕切り板で、その設
置位置を変化させる事が出来るようになっており、この
仕切板99の位置を調整することにより真空槽71内へ入射
したマイクロ波を反射して、その位置により共振を起こ
させ、効率よくマイクロ波が原料ガス等へ吸収される様
にする事が出来るようになっている。 106は電磁コイルで直流印加により静磁場を発生させ
ることができる。100は基体ホルダーで基体103を支えて
いる。基体103は基体ヒーター101及び102により基体を
加熱する事が出来るようになっている。基体ホルダー10
0はアースから絶縁されており、直流電源105で電圧印加
する事が出来る。108はガード電極である。 本発明における炭素原子をマトリックスの主体とする
膜の製造原料として用いることのできる炭素化合物とし
ては、メタン,エタン,プロパン,ブタン等のアルカン
系炭化水素又はその誘導体、またエチレン,プロピレ
ン,ブチレン,アミレン等のアルカン系炭化水素又はそ
の誘導体、またアセチレン,ペンチン,ブチン,ヘキシ
ン等のアルキン系炭化水素又はその誘導体が挙げられ
る。さらにはベンゼン,ナフタリン,アントラセン,ト
ルエン,キシレン、あるいはピリジン,ピコリン,キノ
リン,インドール,アクリジン,フェノール,クレゾー
ル等の芳香族炭化水素又はその誘導体、メタノール,エ
タノール,プロパノール,ブタノール等のアルコール,
アセトン,メチルエチルケトン,ジエチルケトン,ジイ
ソプロピルケトン,ジイソブチルケトン,ジアセチル等
のケトン類又はその誘導体、アセトアルデヒド,プロピ
オンアルデヒド,ブチルアルデヒド等のアルデヒド又は
その誘導体、メチルアミン,ジメチルアミン,トリメチ
ルアミン,エチルアミン,プロピルアミン等のアミン又
はその誘導体、ジメチルエーテル,メチルエチルエーテ
ル,ジイソプロピルエーテル,メチルnブチルエーテル
等のエーテル又はその誘導体、酢酸メチル,酢酸エチル
等の酢酸誘導体なども使用可能である。また、フッ素原
子を導入する場合のフッ化炭化水素及びフッ化炭素化化
合物としては、フッ化メタン,フッ化エタン,フッ化プ
ロパン,フッ化シクロヘキサン,ジフッ化メタン,トリ
フッ化メタン,テトラフッ化メタン,フルオルアセチレ
ン,フルオルベンゼン,フッ化アセチル,フッ化ホルミ
ル等が挙げられる。これら炭素化合物とフッ素と混合し
て用いる場合や、フッ化炭化水素のみを用いる場合、ま
たフッ化炭化水素と炭化水素化合物を混合する場合、ま
たフッ化炭化水素と水素を用いる場合等の組み合わせが
可能である。これらのうち常温で液体又は固体のもの
は、水素,アルゴン等のキャリアーガスを用いて、バブ
リングその他により反応室内へ運ぶか、又は加熱により
気化させて用いることが好ましい。上記の様な炭素化合
物とともに、水素,アンモニアなどを反応室内へ送り込
んでも良い。 また、周期律表第III族又は第V族の元素をドーピン
グする場合には、BH3,B2H6,PH3,AsH3,NH3の様な水
素化合物などやAl(CH3)3,Ga(CH3)3などの気体を同時に
送り込んで成膜を行なうと良い。 〔実施例〕 以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。 実施例1 第3図の装置を用い、第1図に例示の電子写真用感光
体を以下のようにして作成した。 まず、電気伝導度が約10-2Ω-1cm-1の円板型のn型シ
リコンウェハーを気体53として用い、フッ酸の希釈水溶
液で基体表面の酸化膜を除去した後、この基体を上部電
極45に固定した。次に真空槽52を密閉し、真空排気系に
より約2×10-7Torrまで減圧した。次に基体の円形形状
に合せてうず巻き状にまいたタングステンワイアー44に
50Hzの交流電力を印加して、このワイヤー44を約2500℃
まで加熱して、得られる輻射熱により、上記シリコン基
体を加熱した。シリコン基体の裏側が450℃になるまで
待った後に、ワイヤー44を約2000℃まで下げて基体温度
を安定させた。 次に電磁コイル43に直流電力を流して真空槽52の上部
容器表面での磁場が800Gaussになる様に電流の大きさを
制御した。さらに切り換え回路69,70をAの位置にセッ
トし、直流電源48を基体側が−300Vになる様に合せた。
そしてマスフローコントローラー37,38を最もしぼった
状態でCH4のボンベ41のバルブ28及び33、H2のボンベ42
のバルブ29及び34を開いた。そして、各々のガス流量が
5SCCM及び100SCCMとなる様にマスフローコントローラー
37及び38をセットした。このときの圧力は0.002Torrで
あった。 次に電源47をONにして放電を始め、投入パワーを350W
に合せた。全体が安定状態に達してから48時間後に放電
電源47と48をOFFにし、バルブ28,29を閉じて放電を停止
した。こうして炭素を主体とする約8μの電荷輸送層を
得た。 次に、基体加熱フィラメント44の電流を弱くしてその
まま放置し、基体温度が測定値で250℃まで下がるのを
待ってから極性切換スイッチ69と70をBの状態にした。
次にSiH4のボンベ60のバルブ62と66及びH2のボンベ42の
バルブ29及び34を開き、SiH4が10SCCM、H2が90SCCMとな
る様にマスフローコントローラー64と38を調節した。そ
して高周波電源47をONにし、約1μの厚さのA−Si:Hか
らなる電荷発生層を前記の電荷輸送層上に積層した。 これに続いて、C2H2のボンベ40のバルブ27及び32を開
き、マスフローメーター36を使ってアセチレンをSiH4
H2に加えて行き、A−Si:Hからなる電荷発生層上に約10
00ÅのA−Sic:Hからなる表面層を積層した。 すべての成膜が終わった後、バルブ27,28,29,32,33,3
4,30を閉じ、加熱フィラメント44の電流を切って基体が
充分に冷却した後、真空を破って前述の各層を形成した
基体を真空槽52から取り出した。 こうして得られた電子写真用感光体を実験用の電子写
真複写装置にセットして、電子写真特性を測定したとこ
ろ、良好な帯電性と光感度を示した。続いて負帯電し像
露光し、トナー現象したところ良好な画像が得られた。 上記のようにして得られた電子写真用感光体の電荷輸
送層と同様の成膜条件で膜厚1.5μmとして、光学的バ
ンドギャップ、電気伝導度、ラマンスペクトル及び水素
原子濃度の測定用の各試料を作成した。こうして得られ
た各試料の測定の結果により、前記感光体の電荷輸送層
の光学的バンドギャップは3.2eV、電気伝導度は約10-14
Ω-1cm-1、水素原子濃度は5原子%で、ラマン・スペク
トルには1333cm-1を含む領域に明瞭なストークス線が認
められることが傍証された。 実施例2 電荷輸送層の作成条件を以下のように変更する以外
は、実施例1と同様にして電子写真用感光体を作成し
た。 基体バイアスは−100Vで、基体温度を450℃とした。
原料ガスとしてC3OHとH2を用い、CH3OHを10SCCM、H2を1
00SCCMで真空層52の中へ送り込んだ。フィラメント温度
は2400℃とし、RFパワーは300Wとした。コイル43に電流
を流し、磁場600ガウスで成膜を行なった。成膜時の圧
力は10Torrとした。 このようにして得られた電子写真用感光体を実施例1
と同様に電子写真特性を測定したところ、高い帯電能と
感度を示し、負帯電して像露光し、トナー現像したとこ
ろ良好な画像を得られた。 これとは別に上記と全く同一の条件で電荷輸送層だけ
Si基体上に形成したものを膜組成分析したところ、膜中
には酸素が含まれており、また赤外吸収スペクトルによ
る水素原子濃度の測定によると水素原子は11原子%含有
されることが確認された。また別に光学的バンドギャッ
プ、電気伝導度の測定用の各試料を該実施例の電荷輸送
層の作成条件と同一条件で膜厚2μとして作成した。こ
れ等の試料の測定により光学的バンドギャップは2.8eV
で電気伝導度は乾燥雰囲気内で4×10-14Ω-1cm-1であ
ることが傍証された。 実施例3 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例1と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜はエタンと水素アンモニアの混合ガ
スを用い、流量はエタンを10SCCM、水素を87SCCM、アン
モニアを3SCCMとした。圧力は0.002Torr、RFパワー350
W、基体バイアス−230V、基体温度550℃で磁場は800Gau
ssとした。この条件と同一条件で物性測定用として成膜
した各試料の測定結果により、光学的バンドギャップは
3.1eV、電気伝導度は10-13Ω-1cm-1、水素原子濃度は7
原子%で、窒素原子が膜中に更に含まれていることが傍
証された。 他方、電子写真用感光体を実施例1と同様に実験用電
子写真複写装置にセットして電子写真特性を測定したと
ころ良好な帯電性と感度を示た。正帯電像露光してトナ
ー現像したところ、明瞭な画像が得られた。 実施例4 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例1と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜にはメタンと水素の混合ガスを用い
た、流量はメタンを5SCCM、水素を100SCCM、RFパワー45
0W、基体バイアス0V、基体温度250℃、圧力0.01Torrと
して行なった。このようにして得られた電子写真用感光
体は実施例1の場合と同様に良好な帯電性を示し、正帯
電で良好な画質のトナー像が得られた。この条件で成膜
した電荷輸送層の各物性値を実施例1と同様に測定した
ところ、バンドギャップは2.3eV、電気伝導度は3.8×10
-13Ω-1cm-1、水素原子濃度は11原子%である事が傍証
された。 実施例5 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例1と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜はメタンと水素の混合ガスを用いて
行ない、流量はメタンを5SCCM、水素を95SCCMとした。
そして、これに水素で1mol%まで希釈したジボランを0.
5SCCMの割合で流し込んだ。圧力は0.06Torr、基体温度3
50℃、RFパワー250W、基体バイアス−100Vで成膜を行な
った。できあがった電子写真用感光体は実施例1と同様
に良好な帯電性を示し、正帯電で良好な画質のトナー像
が得られた。 実施例1と同様にして求めた測定結果より、この条件
で成膜した電荷輸送層は光学的バンドギャップ2.1eV、
電気伝導度4×10-12Ω-1cm-1で水素原子を17原子%含
んでいることが傍証された。 実施例6 円筒状の基体上に成膜出来るように改造した第3図の
装置を用い、第2図に例示の電子写真用感光体を以下の
ようにして作成した。 Al製円筒基体を用い、まず真空槽52を約2×10-7Torr
まで真空排気した。次にAl基体を230℃に加熱し、SiH4
流量10SCCM、H2流量90SCCM、B2H6流量0.5SCCMとし0.1To
rrにて、RFパワー150WでBを高濃度で含むP型のA−S
i:Hからなる電荷注入阻止層を1000Åの厚さに形成し
た。次にSiH4とB2H6の流量をOにして、H2のみを流して
1hr放電を続けた。その後、再びSiH4を10SCCM流し、H2
流量90SCCMで放電させ、約1μのA−Si:Hからなる電荷
発生層を上記電荷注入阻止層上に形成した。 この後、SiH4とH2の流れを止め、4×10-7Torrまで減
圧した後、電荷輸送層の成膜を次の条件で行なった。す
なわち、アセトンを含有するH2ガスを気化装置61を用い
て発生させ、真空槽52へ送り込んだ。H2中のアセトンは
約3mol%であり、混合気の流量は200SCCM、圧力は1Torr
とした。また、RFパワーを450W、基体バイアスを−70
V、磁場の強さは500Gaussとした。 こうして得られた電子写真用感光体を実験用に改造し
たNP7550(キャノン株式会社製)にセットし、連続繰り
返し画像形成を行なったところいずれの転写画像も良好
な画質であった。 実施例1と同様にして求めた測定結果により、上記成
膜した電荷輸送層は、光学的バンドギャップが3.2eV、
電気伝導度6×10-13Ω-1cm-1、水素原子濃度が12原子
%であることが傍証された。 実施例7 第4図の装置を用い、以下の様にして第1図の構造の
電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜条件として、マイクロ波パワー600
W、原料ガスとしてエチレンと水素の混合ガスを用い
た。マイクロ波周波数は2.45GHzとした。エチレンの流
量は5SCCM、水素の流量は50SCCMで圧力は0.0007Torrと
した。磁場は875Gaussとし、電子サイクロトロン共鳴が
起きる様にした。この条件で隔壁99の位置を調節し、真
空槽71がマイクロ波の空洞共振器として動作する様にし
たところ、隔壁99の開口部からプラズマ吹き出しが見ら
れた。基体温度は350℃、基体バイアスは−150Vとし
た。 この様にして作成した電荷輸送層(膜厚9.3μm)の
上に引き続いてA−Si:Hの電荷発生層を作成した。まず
基体加熱ヒータ102の電流を切って基体温度が100℃まで
下がるのを待ち、それから電流を再び流して200℃で一
定に保った。次にSiH4を10SCCM、H2を50SCCM流して、圧
力を2.6×10-3Torrにし、磁場を875Gaussとしてマイク
ロ波を投入した。マイクロ波パワーは300Wとした。こう
して電荷輸送層上に約1μmのA−Si:Hからなる電荷発
生層を成膜し、さらに連続してCH4流量7SCCM、SiH4流量
3SCCM、H2流量50SCCMで表面層を形成し、第1図の構造
の電子写真用感光体を得た。 この感光体を実験用電子写真複写装置にセットし、電
子写真特性を測定したところ、高い帯電性と良好な感度
を示し、負帯電で像露光してトナー現像したところ良好
な画像が得られた。 実施例1と同様にして求めた測定結果より、上記成膜
した電荷輸送層の光学的バンドギャップは3eV以上あり
電気伝導度は10-15Ω-1cm-1で、水素原子が膜中に僅か
に存在していることが傍証された。 実施例8 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例1と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜はエチレンと水素の混合ガスを用い
て行ない、流量はエチレンを5SCCM、水素100SCCM、水素
で10mol%に希釈したフォスフィン0.5SCCMとし、圧力は
0.3Torrとした。基体温度350℃、RFパワー600W、磁場40
0Gauss、基体バイアスは−200Vで成膜を行なった。 こうして得られた電子写真用感光体について実施例1
と同様にして電子写真特性を測定したところ、負帯電で
良好な画質のトナー像が得られた。又、電荷輸送層中の
水素原子濃度は7原子%であった。 実施例9 第5図の装置を用い、以下のような成膜条件及び操作
を用いる以外は実施例6と同様の方法によって第2図の
構造の電子写真用感光体を作成した。 Al製円筒基体を用い、まず真空層52を約6×10-7Torr
まで真空排気した。次にAl基体を230℃に加熱しSiH4
量30SCCM、H2流量180SCCM、B2H6流量1.5SCCMとして、0.
1TorrにてRFパワー500WでBが高濃度にドーブされたP
型のA−Si:Hからなる電荷注入阻止層を1000Åの厚さに
形成した。次にSiH4とB2H6の流量を0にし、H2のみを流
して1hr放電をつづけた。その後、再びSiH4を30SCCM流
し、H2流量180SCCMで放電させ、約1μのA−Si:Hから
なる電荷発生層を上記電荷注入阻止層上に形成した。 この後、SiH2とH2の流れを止め、4×10-7Torrまで減
圧した後、電荷輸送層の成膜を次の条件で行なった。す
なわち、アセトンを含有するH2ガスを気化装置61を用い
て発生させ、真空層52へ送り込んだ。H2中のアセトンは
約3mol%であり混合気の流量は300SCCM、圧力は0.7Torr
とした。また、RFパワーを650W、基体バイアスを−110
V、磁場の強さは600Gaussとした。 こうして得られた電子写真用感光体は正帯電で良好な
帯電性を示した。この感光体を市販の複写機(キャノン
製NP7550)を改造した実験装置にとりつけた後、画像形
成を行なったところ良好な画質が得られ、120万枚のコ
ピーテスト後も初期の良好な画質が維持された。 実施例1と同様して求めた測定結果より、上記の電荷
輸送層の光学的バンドギャップは3.6eV、電気伝導度が
8.6×10-12Ω-1cm-1、水素原子濃度が5原子%であるこ
とが傍証された。 比較例1 第3図の装置を用い、極性切換スイッチ69と70をBの
状態にし、電荷輸送層の成膜条件を以下のように変えた
以外は実施例1と同様の手順により、第1図の構造の電
子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜は、C2H610SCCM、H290SCCMを原料と
し、圧力5Torr、RFパワー250W、基体温度200℃とし、成
膜中は基体加熱フィラメント44を800℃程度に下げて行
なった。電磁コイルには電流は流さず、基体付近に磁場
はかけなかった。この条件で得られた電荷輸送層の膜厚
は18μmであった。こうして得られた構造の電子写真用
感光体は実用的に使用するには耐久性の点で問題のある
ことが確認された。又、実施例1と同様にして求めた測
定結果から上記の電荷輸送層は、光学的バンドギャップ
は2.45eV、電気伝導度は約10-12Ω-1cm-1、水素原子濃
度は63原子%であることが傍証された。 比較例2 第3図の装置を用い、電荷輸送層の成膜条件を以下の
ようにする以外は実施例1と同様にして電子写真用感光
体を作成した。 電荷輸送層の成膜はエチレンガスと水素ガスの混合ガ
スを使用し、流量はエチレン5SCCM、水素120SCCM、圧力
0.03Torr、RFパワー450W、基体バイアス0V、基体温度は
成膜開始時に450℃、その後成膜中には基体加熱ヒータ
ー44の電流を切って行なった。直流バイアス用電源48の
電圧は0Vに設定し、極性切換スイッチ69と70は電荷輸送
層成膜時にはAの状態にした。磁場は用いなかった。こ
の条件で成膜した電荷輸送層の膜厚は8μmであった。
こうして得られた電子写真用感光体は実用的に使用する
には、光感度の点で問題があることが確認された。 実施例1と同様にして求めた測定結果から上記の電荷
輸送層は、光学的バンドギャップは1.43eV、電気伝導度
は2.3×10-11Ω-1c-1、水素原子濃度は8原子%である
ことが傍証された。 比較例3 第3図の装置を用い、極性切換スイッチ69と70をBの
状態にし、電荷輸送層の成膜条件を以下のように変えた
以外は実施例1と同様の手順により、第1図の構造の電
子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜は、C2H610SCCM、H290SCCM、を原料
とし、圧力5Torr、RFパワー250W、基体温度200℃とし、
成膜中は基体加熱フィラメント44を800℃程度に下げて
行なった。電磁コイルには電流は流さず、基体付近に磁
場はかけなかった。この条件で得られた電荷輸送層の膜
厚は18μmであった。こうして得られた電子写真用感光
体は実用的に使用するには問題があること確認された。
又、実施例1と同様にして求めた測定結果から上記の電
荷輸送層の、光学的バンドギャップは2.24eV、電気伝導
度は約10-13Ω-1cm-1、水素原子濃度は43原子%である
ことが傍証された。 比較例4 第3図の装置を用い、電荷輸送層の成膜条件を以下の
ようにする以外は実施例1と同様にして電子写真用感光
体を作成した。 電荷輸送層の成膜はエチレンガスと水素ガスの混合ガ
スを使用し、流量はエチレン5SCCM、水素120SCCM、圧力
0.03Torr、RFパワー450W、基体バイアス0V、基体温度は
成膜開始時に450℃、その後成膜中には基体加熱ヒータ
ー44の電流を切って行なった。直流バイアス用電源48の
電圧は0Vに設定し、極性切換スイッチ69と70は電荷輸送
層成膜時にはAの状態にした。磁場は用いなかった。こ
の条件で成膜した電荷輸送層の膜厚は8μmであった。
こうして得られた電子写真用感光体は実用的に使用する
には問題があることが確認された。又、実施例1と同様
にして求めた測定結果から上記の電荷輸送層は、光学的
バンドギャップは1.43eV、電気伝導度は3×10-10Ω-1c
m-1、水素原子濃度は8原子%であることが傍証され
た。 実施例10 第3図の装置を用い、次の様にして本発明の電子写真
様感光体を作成した。 Al製円板状基体を用い、まず真空層52を約2×10-7To
rrまで真空排気した。次に基体を230℃に加熱し、SiH41
0SCCM、H290SCCM、B2H60.5SCCMとして0.1Torrにて、RF
パワー150WでP型のA−Si:Hの電荷注入阻止層を1000Å
の厚さに形成した。次にSiH4を10SCCM流し、H290SCCMで
放電させ、約1μmのA−Si:H層を電荷発生層として形
成した。 この後、SiH4とH2の流れを止め5.3×10-7Torrまで減
圧した後、電荷輸送層の成膜を次の条件で行なった。CH
3OHを含有するH2ガスを気化装置61を用いて発生させ、
真空層52へ送り込んだ。H2の中のCH3OHは約5mol%であ
り、混合気の流量は200SCCM、圧力は1Torrであった。又
基体温度は350℃に保った。RFパワー450W、基体バイア
ス−70V、磁場の強さ500Gaussで放電させて、炭素を主
体とする層(膜厚1.5μm)を、既に成膜したA−Si:H
電荷発生層上に積層した。 このようにして得られた電子写真用感光体を実験用の
電子写真複写装置にセットし、電子写真特性を測定した
ところ、正帯電で良好な帯電性と感度を示した。続い
て、帯電し、像露光して、トナー現像したところ、得ら
れた画像は良好なトナー画像であった。 これとは別に、上記の様に得られた電子写真用感光体
の電荷輸送層と同様の成膜条件で、光学吸収係数の測定
用試料を形成し、それを常法に従って測定したところ、
上記条件で形成された炭素を主体とする層の光学吸収係
数は2.5eVにおいて8×103cm-1で光子のエネルギーが小
さくなる程吸収係数は小さくなるということが傍証され
た。又、電荷輸送層中の水素原子濃度は7原子%であっ
た。 実施例11 第4図に示す様な装置を用い、以下の用にして本発明
の電子写真用感光体を作成した。 Al製円板基体を用い、まず真空層71を約10-7Torrまで
真空排気した。次にこの基体を300℃まで加熱した。そ
してCH4 0.5SCCM、H2 50SCCMを流して圧力を3×10-2To
rrにし、磁場500Gauss、マイクロ波パワー400W、基体バ
イアス1.50Vでマイクロ波放電をおこさせ、電荷注入阻
止層を約500Åの厚さに形成した。次に圧力を2.4×10-3
Torrに下げ、基体加熱ヒーター102の電流を切って基体
温度を200℃まで下げ、その後ヒーター102を再びONにし
て200℃に保った。そして磁場875Gauss、マイクロ波パ
ワー300W、SiH4 10SCCM、H2 50SCCMでA−Si:H層を1μ
mの厚さに成膜した。 次に基体温度を300℃まで上げ、マイクロ波パワー450
W、磁場500Gauss、基体バイアス−70VでCH3Br 5SCCM、H
2 75SCCMを流し、圧力は約10-3Torrでマイクロ波放電さ
せた。 このようにして得られた電子写真用感光体の電子写真
特性を実施例1と同様にして、測定したところ、正帯電
で良好な帯電性と感度とを示した。続いて、実施例1と
同様にしてトナー画像が得られた。 これと別に、上記の様に得られた電子写真用感光体の
電荷輸送層と同様の成膜条件で、光学吸収係数及び水素
原子含有量の各測定用試料を形成してこれを常法に従っ
て測定したところ、上記条件で成膜した電荷輸送層であ
る炭素を主体とした膜中には水素原子が5原子%含有さ
れており、その光学吸収係数が2.5eVにて8×103cm-1
度であることが傍証された。 実施例12 第3図の装置を用い、第1図の例示の電子写真用感光
体を以下のようにして作成した。 まず、電気伝導度が約10-2Ω-1cm-1の円板のn型シリ
コンウェハーを基体53として用い、フッ酸の希釈水溶液
で基体表面の酸化膜を除去した後、この基体を上部電極
45に固定した。次に真空槽52を密閉し、真空排気系によ
り約2×10-7Torrまで減圧した。次に基体の円形形状に
合せてうず巻き状にまいたタングステンワイヤー44に50
Hzの交流電力を印加して、このワイヤー44を約2500℃ま
で加熱して、得られる輻射熱により、上記シリコン基体
を加熱した。シリコン基体の裏側が450℃になるまで待
った後に、ワイヤー44を約2000℃まで下げて基体温度を
安定させた。 次に電磁コイル43に直流電力を流して真空槽52の上部
容器表面での磁場が800Gaussになる様に電流の大きさを
制御した。さらに切り換え回路69,70をAの位置にセッ
トし、直流電源48を基体側が−60Vになる様に合せた。
そしてマスフローコントローラー37,38を最もしぼった
状態でCH4のボンベ41のバルブ28及び33、F2のボンベ42
のバルブ29及び34を開いた。そして、各々のガスの流量
が5SCCM及び60SCCMとなる様にマスフローコントローラ3
7及び38をセットした。このときの圧力は0.007Torrであ
った。 次に電源47をONにして放電を始め、投入パワーを350W
に合せた。全体が安定状態に達してから48時間後に放電
電源47と48をOFFにし、バルブ28,29を閉じて放電を停止
した。こうして炭素を主体とする約8μの電荷輸送層を
得た。 次に、基体加熱フィラメント44の電流を弱くしてその
まま放置し、基体温度が測定値で250℃まで下がるのを
待ってから極性切換スイッチ69と70をBの状態にした。
次にSiH4のボンベ60のバルブ62と66及びH2のボンベ39の
バルブ26及び31を開き、SiH4が10SCCM、H2が90SCCMとな
る様にマスフローコントローラー64と37を調節した。そ
して高周波電源47をONにし、約1μの厚さのA−Si:Hか
らなる電荷発生層を前記の電荷輸送層上に積層した。 これに続いて、C2H2のボンベ40のバルブ27及び32を開
き、マスフローメータ36を使ってアセチレンをSiH4とH2
に加えて行き、A−Si:Hからなる電荷発生層上に約1000
ÅのA−SiC:Hからなる表面層を積層した。 すべての成膜が終った後、バルブ26,27,28,29,31,32,
33,34,30を閉じ、加熱フィラメント44の電流を切って基
体が充分に冷却した後、真空を破って前述の各層を形成
した基体を真空槽52から取り出した。 こうして得られた電子写真用感光体を実験用の電子写
真複写装置にセットして、電子写真特性を測定したとこ
ろ、良好な帯電性と光感度を示した。続いて負帯電し像
露光して、トナー現像したところ良好な画像が得られ
た。 上記のようにして得られた電子写真用感光体の電荷輸
送層と同様の成膜条件で膜厚1.5μmとして、光学的バ
ンドギャップ、電気伝導度、ラマンスペクトル、フッ素
原子及び水素原子の濃度の測定用の各試料を作成した。
こうして得られた各試料の測定の結果により、前記感光
体の電荷輸送層の光学的バンドギャップは3.7eV、電気
伝導度は約10-16Ω-1cm-1、フッ素原子濃度は3原子%
程度、水素原子濃度は5原子%で、ラマンスペクトルに
は1333cm-1を含む領域に明瞭なストークス線が認められ
ることが傍証された。 実施例13 電荷輸送層の作成条件を以下のように変更する以外
は、実施例12と同様にして電子写真用感光体を作成し
た。 基体バイアス−70Vで、基体温度を450℃とした。原料
ガスとしてCH3FとH2を用い、CH3Fを10SCCM、H2を100SCC
Mで真空槽52の中へ送り込んだ。フィラメント温度は240
0℃とし、RFパワーは300Wとした。コイル43に電流を流
し、磁場600ガウスで成膜を行なった。成膜時の圧力は
0.02Torrとした。 このようにして得られた電子写真用感光体を実施例12
と同様に電子写真特性を測定したところ、高い帯電能と
感度を示し、負帯電して像露光し、トナー現像したとこ
ろ良好な画像が得られた。 これとは別に上記と全く同一の条件で電荷輸送層だけ
をSi基体上に形成したものを膜組成分析したところ、膜
中には酸素が含まれており、また赤外吸収スペクトルに
よるフッ素原子濃度及び水素原子濃度の測定によると、
フッ素原子が8原子%、水素原子が7原子%含有される
ことが確認された。また別に光学的バンドギャップ、電
気伝導度の測定用の各試料を該実施例の電荷輸送層の作
成条件と同一条件で膜厚2μとして作成した。これ等の
試料の測定により光学的バンドギャップは2.8eVで電気
伝導度は乾燥雰囲気内で4×10-14Ω-1cm-1であること
が傍証された。 実施例14 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例12と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜はCF4と水素とアンモニアの混合ガ
スを用い、流量はCF4を10SCCM、水素を87SCCM、アンモ
ニアを3SCCMとした。圧力は0.007Torr、RFパワー350W、
基体バイアス−80V、基体温度550℃で磁場は800Gaussと
した。この条件と同一条件で物性測定用として成膜した
各試料の測定結果により、光学的バンドギャップは3.2e
V、電気伝導度は0.5×10-13Ω-1cm-1、フッ素原子濃度
は12原子%、水素原子濃度は10原子%で、窒素が膜中に
更に含まれていることが傍証された。 他方、電子写真用感光体を実施例12と同様に実験用電
子写真複写装置にセットして電子写真特性を測定したと
ころ良好な帯電性と感度を示した。正帯電像露光してト
ナー現像したところ、明瞭な画像が得られた。 実施例15 電荷発生層と表面層の成膜条件を以下のように変更す
る以外は実施例12と同様にして電子写真用感光体を作成
した。 電荷発生層の成膜にはC2H4と水素とフッ素の混合ガス
を用いた。流量はC2H4を20SCCM、水素を60SCCM、フッ素
を10SCCM、RFパワー450W、基体バイアス0V、基体温度25
0℃、圧力0.1Torrとして行なった。この様にして得られ
た電子写真用感光体は実施例12の場合と同様に良好な帯
電性を示し、正帯電で良好な画質のトナー像が得られ
た。この条件で成膜した電荷輸送層のバンドギャップは
2.3eV、電気伝導度は2.0×10-13Ω-1cm-1、フッ素原子
濃度は10原子%、水素原子濃度は12原子%である事が傍
証された。 次にCH4を2SCCM、H2を60SCCM、F2を20SCCM流し、RFパ
ワーを500W、基体バイアス−50V、基体温度250℃、圧力
0.01Torrとして成膜に行なった。そして約1000Åの表面
層を得た。この表面層の電気伝導度は2.6×10-14Ω-1cm
-1、フッ素原子濃度2原子%、水素原子濃度5原子%の
硬質の膜であった。 このようにして得られた電子写真用感光体は帯電性が
よかった。 実施例16 円筒状の基体上に成膜出来るように改造した第3図の
装置を用い、第2図に例示の電子写真用感光体を以下の
ようにして作成した。 Al製円筒基体を用い、まず真空槽52を約2×10-7Torr
まで真空排気した。次にAl基体を230℃にし、SiH4流量1
0SCCM、H2流量90SCCM、B2H6流量0.5SCCMとして0.1Torr
にて、RFパワー150WでBを高濃度で含むP型のA−Si:H
からなる電荷注入阻止層を1000Åの厚さに形成した。次
にSiH4とB2H6の流量を0にして、H2のみを流して1hr放
電を続けた。その後、再びSiH4を10SCCM流し、H2流量90
SCCMで放電させ、約1μのA−Siからなる電荷発生層を
上記電荷注入阻止層上に形成した。 この後、SiH4とH2の流れを止め、4×10-7Torrまで減
圧した後、電荷輸送層の成膜を次の条件で行なった。す
なわち、アセトンを含有するH2ガスを気化装置61を用い
て発生させ、真空槽52へ送り込んだ。H2中のアセトンは
約3mol%であり、混合気の流量は200SCCM、これにフッ
素40SCCM流し圧力は0.5Torrとした。また、RFパワーを4
50W、基体バイアスを−70V、磁場の強さは500Gaussとし
た。 こうして得られた電子写真用感光体を実験用に改造し
たNP7550(キャノン株式会社製)にセットし、連続繰り
返し画像形成を行なったところいずれの転写画像も良好
な画質であった。又、電荷輸送層中の水素原子濃度は3
原子%、フッ素原子濃度は1原子%であった。 実施例17 第4図の装置を用い、以下の様にして第1図の構造の
電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜条件として、マイクロ波パワー600
W、原料ガスとしてCH2F2と水素の混合ガスを用いた。マ
イクロ波周波数は2.45GHzとした。CH2F2の流量は5SCC
M、水素の流量は50SCCMで圧力は0.0007Torrとした。磁
場は875Gaussとし、電子サイクロトロン共鳴が起きる様
にした。この条件で隔壁99の位置を調節し、真空槽71が
マイクロ波の空洞共振器として動作する様にしたとこ
ろ、隔壁99の開口部からプラズマ吹き出しが見られた。
基体温度は350℃、基体バイアスは−90Vとした。電荷輸
送層の膜厚は8.0μmで水素原子及びフッ素原子の含有
量は0.1原子%程度と少なかった。 この様にして作成した電荷輸送層(膜厚9.3μm)の
上に引き続いてA−Si:Hの電荷発生層を作成した。まず
基体加熱ヒータ102の電流を切って基体温度が100℃まで
下がるのを待ち、それから電流を再び流して200℃で一
定に保った。次にSiH4を10SCCM、H2を50SCCM流して、圧
力を2.6×10-3Torrにし、磁場を875Gaussとしてマイク
ロ波を投入した。マイクロ波パワーは300Wとした。こう
して電荷輸送層上に約1μmのA−Si:Hからなる電荷発
生層を成膜し、さらに連続してCH4流量7SCCM、SiH4流量
3SCCM、H2流量50SCCMで表面層を形成し、第1図の構造
の電子写真用感光体を得た。 この感光体を実験用電子写真複写装置にセットし、電
子写真特性を測定したところ、高い帯電性と良好な感度
を示し、負帯電で像露光してトナー現像したところ良好
な画像が得られた。 実施例18 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例12と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜はCH2F2と水素の混合ガスを用いて
行ない、流量はCH2F2を5SCCM、水素100SCCM、水素で10m
ol%に希釈したフォスフィン0.5SCCMとし、圧力は0.3To
rrとした。基体温度350℃、RFパワー600W、磁場400Gaus
s、基体バイアスは−120Vで成膜をなった。 こうして得られた電子写真用感光体について実施例12
と同様にして電子写真特性を測定したところ、負帯電で
良好な画質のトナー像が得られた。又、電荷輸送層中の
フッ素原子濃度は2原子%、水素原子濃度は5原子%で
あった。 実施例19 第5図の装置を用い、以下のような成膜条件及び操作
を用いる以外は実施例16と同様の方法によって第1図の
構造の電子写真用感光体を作成した。 Al製円筒基体を用い、まず真空層52を約6×10-7Torr
まで真空排気した。次にAl基体を230℃に加熱しSiH4
量30SCCM、H2流量180SCCM、B2H6流量1.5SCCMとして、0.
1TorrにてRFパワー500WでBが高濃度にドープされたP
型のA−Si:Hからなる電荷注入阻止層を1000Åの厚さに
形成した。次にSiH4とB2H6の流量を0にし、H2のみを流
して1hr放電をつづけた。その後、再びSiH4を30SCCM流
し、H2流量180SCCMで放電させ、約1μのA−Si:Hから
なる電荷発生層を上記電荷注入阻止層上に形成した。 この後、SiH4とH2の流れを止め、4×10-7Torrまで減
圧した後、電荷輸送層の成膜を次の条件で行なった。す
なわち、アセトンを含有するH2ガスを気化装置61を用い
て発生させ、真空層52へ送り込んだ。H2中のアセトンは
約3mol%であり混合気の流量は300SCCMこれにフッ素を4
0SCCM流し圧力は0.8Torrとした。また、RFパワーを650
W、基体バイアスを−110V、磁場の強さは600Gaussとし
た。 こうして得られた電子写真用感光体は正帯電で良好な
帯電性を示した。この感光体を市販の複写機(キャノン
製NP7550)を改造した実験装置にとりつけた後、画像形
成を行なったところ良好な画質が得られ、120万枚のコ
ピーテスト後も初期の良好な画質が維持された。又、電
荷輸送層中のフッ素原子濃度は10原子%、水素原子濃度
は7原子%であった。 比較例5 第3図の装置を用い、極性切換スイッチ69と70をBの
状態にし、電荷輸送層の成膜条件を以下のように変えた
以外は実施例13と同様の手順により、第1図の構造の電
子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜は、100%メタンを30SCCM、フッ素
を70SCCM流し、圧力5Torr、RFパワー250W、基体温度200
℃とし、成膜中は基体加熱フィラメント44を800℃程度
に下げて行なった。電磁コイルには電流は流さず、基体
付近に磁場はなけなかった。この条件で得られた電荷輸
送層の膜厚は18μmであった。こうして得られた第1図
の構造の電子写真用感光体は実用的に使用するには問題
があることが確認された。 比較例6 第3図の装置を用い、電荷輸送層の成膜条件を以下の
ようにする以外は実施例13と同様にして電子写真用感光
体を作成した。 電荷輸送層の成膜はエチレンガスと水素ガスとフッ素
ガスの混合ガスを使用し、流量はエチレン20SCCM、水素
50SCCM、フッ素を20SCCM、圧力0.04Torr、RFパワー450
W、基体バイアス0V、基体温度は成膜開始時に450℃、そ
の後成膜中には基体加熱ヒーター44の電流を切って行な
った。直流バイアス用電源48の電圧は0Vに設定し、極性
切換スイッチ69と70は電荷輸送層成膜時にはAの状態に
した。磁場は用いなかった。この条件で成膜した電荷輸
送層の膜厚は8μmであった。こうして得られた電子写
真用感光体は実用的に使用するには問題があることが確
認された。 実施例13と同様にして求めた測定結果から上記の電荷
輸送層は、光学的バンドギャップは1.34eV、電気伝導度
は7.8×10-9Ω-1cm-1、フッ素原子濃度は17原子%、水
素原子濃度20%であることが傍証された。 実施例20 第3図の装置を用い、第1図に例示の電子写真用感光
体を以下のようにして作成した。 まず、電気伝導度が約10-2Ω-1cm-1の円板型のn型シ
リコンウェハーを基体53として用い、フッ酸の希釈水溶
液で基体表面の酸化膜を除去した後、この基体を上部電
極45に固定した。次に真空槽52を密閉し、真空排気系に
より約2×10-7Torrまで減圧した。次に基体の円形形状
に合せてうず巻き状にまいたタングステンワイヤー44に
50Hzの交流電力を印加して、このワイヤー44を約2500℃
まで加熱して得られる輻射熱により、上記シリコン基体
を加熱した。シリコン基体の裏側が450℃になるまで待
った後に、ワイヤー44を約2000℃まで下げて基体温度を
450℃に安定させた。 次に電磁コイル43に直流電力を流して真空槽52の上部
容器表面での磁場が800Gaussになる様に電流の大きさを
制御した。さらに切り換え回路69、70をAの位置にセッ
トし、直流電源48を基体側が−70Vになる用に合せた。
そしてマスフローコントローラー37、38を最もしぼった
状態でCH4のボンベ41のバルブ28及び33、H2のボンベ42
のバルブ29及び34を開いた。そして、各々のガスの流量
が5SCCM及び100SCCMとなるようにマスフローコントロー
ラー37及び38をセットした。このときの圧力は0.01Torr
であった。 次に電源47をONにして放電を始め、投入パワーを350W
に合せた。全体が安定状態に達してから48時間後に放電
電源47と48をOFFにし、バルブ28、29を閉じて放電を停
止した。こうして簡素を主体とする約8μの電荷輸送層
を得た。 次に、基体加熱フィラメント44の電流を弱くしてその
まま放置し、基体温度が測定値で250℃まで下がるのを
待ってから極性切換スイッチ69と70をBの状態にした。
次にSiH4のボンベ60のバルブ62と66及びH2のボンベ42の
バルブ29及び34を開き、SiH4が10SCCM、H2が90SCCMとな
る様にマスフローコントローラー64と38を調節した。そ
して高周波電源47をONにし、約1μの厚さのA−Si:Hか
らなる電荷発生層を電荷輸送層上に積層した。 これに続いて、CH4の流量を1SCCM、H2の流量を50SCC
M、圧力を0.01Torr、また基体温度を300℃、バイアス−
90V、磁力800Gauss、RFパワー450Wとしてすでに基体上
に成膜された上記層上に新たな層(表面層)を成膜積層
した。 すべての成膜が終った後、バルブ27、28、29、32、3
3、34、30を閉じ、加熱フィラメント44の電流を切って
基体が充分に冷却した後、真空を破って前述の各層を形
成した基体を真空槽52から取り出した。 更に最終層(表面層)の成膜時のCH4の流量を2、
3、4、5、10SCCMの各成膜操作ごとにそれぞれ変化さ
せる以外は、上記と同様の操作によって合計6種類の電
子感光体を形成した。 こうして得られた第1図に示した構造を有する6種の
電子写真用感光体の本明細書本文に規定の方法で動摩擦
係数を測定し、更に実験用電子写真装置に組み込んで、
負帯電、像露光、トナー現像、転写、クリーニングの操
作を行ない、そのクリーニング特性を調べた。その結果
を表1に示す。 この表1からも明らかなように本明細書規定の動摩擦
係数が0.5以下の場合、よいクリーニング特性が得られ
ることがわかった。 実施例21 表面層の作成条件を以下のように変更する以外は、実
施例20と同様にして電子写真用感光体を作成した。 基体バイアスは−100Vで、基体温度を300℃とした。
原料ガスとしてCH3OHとH2を用い、CH3OHを3SCCM、H2を1
00SCCMで真空槽52の中へ送り込んだ。フィラメント温度
は2400℃とし、RFパワーは300Wとした。コイル43に電流
を流し、800Gaussとし、成膜を行なった。成膜時の圧力
は0.01Torrとした。 このようにして得られた電子写真用感光体の実施例20
と同様にして測定した動摩擦係数は、0.15となった。
又、膜中水素原子濃度は10原子%であった。 また、実験用電子写真複写装置に、これをセットし
て、その電子写真特性を測定したところ、高い帯電能と
良好な感度を示した。更に、負帯電して像露光し、トナ
ー現像したところ良好なトナー画像が得られ、またその
クリーニング特性も良好であった。 実施例22 表面層の成膜条件を以下のように変更する以外は実施
例20と同様にして電子写真用感光体を作成した。 表面層の成膜はエタンと水素とアンモニアの混合ガス
を用い、流量はエタンを3SCCM、水素を87SCCM、アンモ
ニアを3SCCMとした。圧力は0.01Torr、RFパワー350W、
基体温度250℃で磁場は800Gaussとした。 この条件で成膜した表面層の実施例20と同様にして測
定した動摩擦係数は0.2であった。 また、この様にして得られた電子写真用感光体の電子
写真特性を実施例21と同様に測定したところ、良好な帯
電能と感度を示した。更に、正帯電し、像露光してトナ
ー現像したところ、明瞭なトナー画像が得られた。また
そのクリーニング特性も良好であった。 これとは別に、上記の様に得られた電子写真用感光体
の表面層と同様の成膜条件で、膜組成分析用の試料を作
成して、その組成について測定したところ、上記条件で
成膜した表面層を形成する膜中には、8原子%の水素原
子が含まれ、また窒素原子が含まれていることが傍証さ
れた。 実施例23 表面層の成膜条件を以下のように変更する以外は実施
例20と同様にして電子写真用感光体を作成した。 表面層の成膜にはメタンと水素とフッ化水素の混合ガ
スを用いた。流量はメタンを3SCCM、水素を77SCCM、フ
ッ化水素10mol%の水素による稀釈ガスを3SCCM、RFパワ
ー450W、基体バイアス−80V、基体温度250℃、磁場は80
0Gauss、圧力0.01Torrとして行なった。このようにして
得られた電子写真用感光体の表面層の実施例20と同様に
して測定した動摩擦係数は0.2であった。 この様にして得られた電子写真用感光体の電子写真特
性を、実施例2と同様にして測定したところ、良好な帯
電能と感度を示した。更に、正帯電し、像露光して、ト
ナー現像したところ、良好な画質のトナーが得られた。
更にそのクリーニング特性も非常に良好であった。 これとは別に、表面層に膜組成分析用の試料を上記と
同様の成膜条件で作成して、その組成について測定した
ところ、上記条件で成膜した表面層を形成する膜中に
は、水素原子が8原子%含まれ、更に膜中にフッ素原子
が取り込まれている事が傍証された。 実施例24 円筒状の基体上に成膜できるように改造した第3図の
装置を用い、第2図に例示の電子写真用感光体を以下の
ようにして作成した。 Al製円筒状基体を用い、まず真空槽52を約2×10-7To
rrまで真空排気した。次にこのAl基体を230℃に加熱
し、SiH4流量10SCCM、H2流量90SCCM、B2H6流量0.5SCCM
として0.1Torrにて、RFパワー150WでBを高濃度で含む
P型のA−Si:Hからなる電荷注入阻止層を1000Åの厚さ
に形成した。次にSiH4とB2H6の流量を0にして、H2のみ
を流して1hr放電を続けた。その後、再びSiH4を10SCCM
流し、H2流量90SCCMで放電させ、約1μmのA−Si:Hか
らなる電荷発生層を上記電荷注入阻止層上に形成した。 この後、SiH4とH2の流れ止め、4×10-7Torrまで減圧
した後、電荷輸送層の成膜を次の条件で行なった。すな
わち、アセトンを含有するH2ガスを気化装置61を用いて
発生させ、真空槽52へ送り込んだ。H2中のアセトンは約
3mol%であり、混合気の流量は120SCCM、圧力は0.5Torr
とした。また、RFパワーを450W、基体バイアスを−70
V、磁場の強さは500Gaussとした。 こうして得られた電子写真用感光体の本明細書本文に
記載の方法によって測定した動摩擦係数は、0.15であっ
た。 更に、この電子写真用感光体を実験用に改造したNP75
50(商品名、キヤノン株式会社製)にセットし、その電
子写真特性を測定したところ、高い帯電能と良好な感度
を示した。更に、正帯電し、像露光してトナー現像した
ところ良好な画質のトナー像が得られた。しかも、その
クリーニング特性も良好であった。また、連続繰返し画
像形成を行なったところ、いずれの転写画像も、良好な
画質であった。又、表面層中の水素原子濃度は10原子%
であった。 実施例25 第4図の装置を用い、以下の様にして第1図の構造の
電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜条件として、マイクロ波パワー400
W、原料ガスとしてメチルブロマイドと水素との混合ガ
スを用いた。マイクロ波周波数は2.45GHzとした。メチ
ルブロマイドの流量は5SCCM、水素の流量は50SCCMで圧
力は0.0007Torrとした。磁場は875Gaussとし、電子サイ
クロトロン共鳴が起きる様にした。この条件で隔壁99の
位置を調節し、真空槽71かマイクロ波の空洞共振器とし
て動作する様にしたところ、隔壁99の開口部からプラズ
マ吹き出しが見られた。基体温度は350℃、基体バイア
スは−100Vとした。 この様にして作成した電荷輸送層(膜厚8.8μm)の
上に引き続いてA−Si:Hの電荷発生層を作成した。まず
基体加熱ヒータ102の電流を切って基体温度が100℃まで
下がるのを待ち、それから電流を再び流して200℃で一
定に保った。次にSiH4を10SCCM、H2を50SCCM流して、圧
力を2.6×10-3Torrにし、磁場を875Gaussとしてマイク
ロ波を投入した。マイクロ波パワーは300Wとした。こう
して電荷輸送層上に約1μmのA−Si:Hからなる電荷発
生層を成膜し、さらに連続してメチルブロマイド流量4S
CCM、H2流量50SCCM、圧力0.0007Torr、マイクロ波パワ
ー450Wで表面層を形成し、第1図の構造の電子写真用感
光体を得た。 この感光体の本願明細書本文に記載の方法で測定した
動摩擦係数は0.05であった。 得られた電子写真用感光体の電子写真特性を実施例2
と同様にして測定したところ、良好な帯電能と感度を示
した。更に、負帯電し、像露光してトナー現像したとこ
ろ良好な画質のトナー画像が得られた。しかも、そのク
リーニング特性も良好であった。 これとは別に、上記の様に得られた電子写真用感光体
の電荷輸送層と同様の成膜条件で、膜の物性及び組成の
分析用の各試料を作成して、その組成及び物性について
測定したところ、上記条件で成膜した電荷輸送層の光学
バンドギャップは3eV以上あり、電気伝導度は10-5Ω-1c
m-1で、水素原子が3原子%と臭素が僅かに膜中に存在
していることが傍証された。 実施例26 表面層の成膜条件を以下のように変更する以外は実施
例20と同様にして電子写真用感光体を作成した。 表面層の成膜はメチルプロマイドと水素の混合ガスを
用いて行ない、流量はメチルブロマイドを5SCCM、水素1
00SCCM、水素で10mol%に希釈したフォスフィン0.5SCCM
とし、圧力は0.3Torrとした。基体温度350℃、RFパワー
400W、磁場400Gauss、基体バイアスは−120Vで成膜を行
なった。 こうして得られた電子写真用感光体の実施例20と同様
にして測定した動摩擦係数は0.08であった。 また、この電子写真用感光体の電子写真特性を実施例
21と同様にして測定したところ、良好な帯電能と感度を
示した。また、負帯電し、像露光して、トナー現像した
ところ、良好な画質のトナー画像が得られた。しかも、
そのクリーニング特性も良好であった。又、表面層中の
水素原子濃度は10原子%であった。 実施例27 第5図の装置を用い、以下のような成膜条件及び操作
を用いる以外は実施例24と同様の方法によって第2図の
構造の電子写真用感光体を作成した。 Al製円筒基体を用い、まず真空槽52を約6×10-7Torr
まで真空排気した。次にこのAl基体を230℃に加熱しSiH
4流量30SCCM、H2流量180SCCM、B2H6流量1.5SCCMとし
て、0.1TorrにてRFパワー500WでBが高濃度にドープさ
れたP型のA−Si:Hからなる電荷注入阻止層を1000Åの
厚さに形成した。次にSiH4とB2H6の流量を0にし、H2
みを流して1hr放電を続けた。その後、再びSiH4を30SCC
M流し、H2流量180SCCMで放電させ、約1μmA−Si:Hから
なる電荷発生層を上記電荷注入阻止層上に形成した。 この後、SiH4とH2の流れを止め、4×10-7Torrまで減
圧した後、電荷輸送層の成膜を次の条件で行なった。す
なわち、アセトンを含有するH2ガスを気化装置61を用い
て発生させ、真空槽52へ送り込んだ。H2中のアセトンは
約3mol%であり混合気の流量は200SCCM、圧力は0.5Torr
とした。 また、RFパワーを650W、基体バイアスを−100V、磁場
の強さは600Gaussとした。 こうして得られた電子写真用感光体の実施例24と同様
にして測定した動摩擦係数は0.06であった。又、表面層
の水素原子濃度は5原子%であった。 更に、この電子写真用感光体を実験用に改造したNP75
50(商品名、キヤノン株式会社製)にセットし、その電
子写真特性を測定したところ、高い帯電能と良好な感度
を示した。更に、正帯電し、像露光してトナー現像した
ところ良好な画質のトナー像が得られた。しかも、120
万枚のコピーテスト後も初期の良好なクリーニング特性
が維持された。 実施例28 第3図の装置を用い、第1図に例示の電子写真用感光
体を以下のようにして作成した。 まず、電気導電度が約10-2Ω-1cm-1の円板型のn型シ
リコウェハーを基体53として用い、フッ酸希釈水溶液で
基体表面の酸化膜を除去した後、この基体を上部電極45
に固定した。次に真空槽52を密閉し、真空排気系により
約2×10-7Torrまで減圧した。次に基体の円形形状に合
せてうず巻き状にまいたタングステンワイヤー44に50Hz
の交流電力を印加して、このワイヤー44を約2500℃まで
加熱して得られる輻射熱により、上記シリコン基体を加
熱した。シリコン基体の裏側が450℃になるまで待った
後に、ワイヤー44を約2000℃まで下げて基体温度を約45
0℃に安定させた。 次に電磁コイル43に直流電力を流して真空槽52の上部容
器表面での磁場が800Gaussになる様に電流の大きさを制
御した。さらに切り換え回路69、70をAの位置にセット
し、直流電源48を基体側が−80Vになる様に合せた。そ
してマスフローコントローラー37、38を最もしぼった状
態でCH4のボンベ41のバルブ28及び33、H2のボンベ42の
バルブ29及び34を開いた。そして、各々のガスの流量が
2SCCM及び100SCCMとなる様にマスフローコントローラ37
及び38をセットした。このときの圧力は0.01Torrであっ
た。 次に電源47をONにして放電を始め、投入パワーを350W
に合せた。全体が安定状態に達してから48時間後に放電
電源47と48をOFFにし、バルブ28、29を閉じて放電を停
止した。こうして炭素を主体とする約9μの電荷輸送層
を得た。 次に、基体加熱フィラメント44の電流を弱くしてその
まま放置し、基体温度が測定値で250℃まで下がるのを
待ってから極性切換スイッチ69と70をBの状態にした。
次にSiH4のボンベ60のバルブ62と66及びH2のボンベ42の
バルブ29及び34を開き、SiH4が10SCCM、H2が90SCCMとな
る様にマスフローコントローラー64と38を調節した。そ
して高周波電源47をONにし、約1μの厚さのA−Si:Hか
らなる電荷発生層を前記電荷輸送層上に積層した。 これに続いて、C2H2のボンベ40のバルブ27及び32を開
き、マスフローメータ36を使ってアセチレンをSiH4とH2
に加えて行き、A−Si:Hからなる電荷発生層上に約1000
ÅのA−Si:HCからなる表面層を積層した。 すべての成増が終った後、バルブ27、28、29、32、3
4、30を閉じ、加熱フィラメント44の電流を切って基体
が充分に冷却した後、真空を破って前述の各層を形成し
た基体を真空槽52から取り出した。 得られた電子写真用感光体を実験用の電子写真複写装
置にセットして、電子写真特性を測定したところ、良好
な帯電性と光感度を示した。続いて、負帯電し、像露光
してトナー現像したところ高品位な画像が得られた。 これとは別に、上記の様に得られた電子写真用感光体
の電荷輸送層と同様の成膜条件で、ギャップステート密
度測定用の試料を作成し、測定したところ、上記条件で
形成された炭素を主体とする膜のギャップステート密度
が9×10-16cm-3であることが傍証された。又、電荷輸
送層中の水素原子濃度は5原子%であった。 実施例29 電荷輸送層の作成条件を以下のように変更する以外
は、実施例28と同様にして電子写真用感光体を作成し
た。 最後の表面層を成膜する際、基体バイアスは−100V
で、基体温度を350℃とした。原料ガスとしてCH3OHとH2
を用い、CH3OHを2SCCM、H2を100SCCMで真空槽52の中へ
送り込んだ。フィラメント温度は2400℃とし、RFパワー
は300Wとした。コイル43に電流を流し、磁場強度を実施
例1と同じにして成膜を行なった。成膜時の圧力は0.00
8Torrとした。 このようにして得られた電子写真用感光体の電子写真
特性を実施例28と同様にして測定したところ、高い帯電
能と良好な感度を示した。続いて、負帯電して像露光
し、トナー現像したところ良好なトナー画像が得られ
た。 これとは別に、表面層だけを上記と全く同一の条件で
Si基体上に形成した試料を作成し、それを分析したとこ
ろ、上記条件で形成された膜中には酸素原子が含まれる
ことが確認され、またそのギャップステート密度が3×
1017cm-3であることが傍証された。又、膜中の水素原子
濃度は10原子%であった。 実施例30 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例28と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜はエタンと水素とアンモニアの混合
ガスを用い、流量はエタンを10SCCM、水素を87SCCM、ア
ンモニアを3SCCMとした。圧力は0.008Torr、RFパワー35
0W、基体温度400℃、磁場は800Gaussとした。この条件
と同一の条件で物性測定用として成膜した各試料の測定
結果より、この炭素を主体とする膜のギャップステート
密度は1.3×1017cm-3であることが傍証され、また窒素
が膜中に含まれていることが確認され、又、膜中の水素
原子濃度は7原子%であった。 他方、得られた電子写真用感光体を実施例28と同様に
実験用電子写真複写装置にセットしてその電子写真特性
を測定したところ、良好な帯電性と感度を示した。更
に、正帯電し、像露光してトナー現像したところ、明瞭
な画像が得られた。 実施例31 電荷発生層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例28と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷発生層の成膜にはC2H4と水素とフッ化水素の混合
ガスを用いた。流量はC2H4を5SCCM、水素を77SCCM、フ
ッ化水素10mol%の水素による希釈ガスを3SCCM、RFパワ
ー450W、基体バイアス−70V、基体温度350℃、圧力0.01
Torr、磁場800Gaussとして行なった。 この様にして得られた電子写真用感光体の電子写真特
性を実施例28と同様に測定したところ、良好な帯電性を
示した。 これとは別に、実施例28と同様にして求められた測定
結果から、電荷発生層のギャップステート密度は9×10
16cm-3であることが傍証され、膜中にフッ素が取り込ま
れていることが確認され、又、水素原子濃度は7原子%
であった。 実施例32 円筒状の基体上に成膜できるように改造した第3図の
装置を用い、第2図に例示の電子写真用感光体を以下の
ようにして作成した。 Al製円筒基体を用い、まず真空槽52を約2×10-7Torr
まで真空排気した。次にAl基体を230℃に加熱し、SiH4
流量10SCCM、H2流量90SCCM、B2H6流量0.5SCCMとしえ0.1
Torrにて、RFパワー150WでBを高濃度で含むP型のA−
Si:Hからなる電荷注入阻止層を1000Åの厚さに形成し
た。次にSiH4とB2H6の流量を0にして、H2のみを流して
1hr放電を続けた。その後、再びSiH4を10SCCM流し、H2
流量90SCCMで放電させ、約1μのA−Si:Hからなる電荷
発生層を上記電荷注入阻止層に形成した。 この後、SiH4とH2の流れを止め、4×10-7Torrまで減
圧した後、電荷輸送層の成膜を次の条件で行なった。す
なわち、アセトンを含有するH2ガスを気化装置61を用い
て発生させ、真空槽52へ送り込んだ。H2中のアセトンは
約3mol%であり、混合気の流量は120SCCM、圧力は0.4To
rrとした。またRFパワーを450W、基体バイアスを−70
V、基体温度270℃、磁場の強さは500Gaussとした。 こうして得られた電子写真用感光体を実験用に改造し
たNP7550(商品名キヤノン株式会社製)にセットし、電
子写真特性を測定したところ、正帯電で良好な帯電性を
示し、良好な画質が得られた。更に連続繰返し画像形成
を行なったところ、いずれの画像も良好な画像であっ
た。 また、これとは別に実施例28と同様にして求めた測定
結果から上記条件で成膜された電荷輸送層を形成する炭
素を主体とする膜中のギャップステート密度は1.2×10
17cm-3であることが傍証された。又、電荷輸送層中の水
素原子濃度は18原子%であった。 実施例33 第4図の装置を用い、以下の様にして第1図の構造の
電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜条件としてマイクロ波パワー400W、
原料ガスとしてメチルブロマイドと水素との混合ガスを
用いた。マイクロ波周波数は2.45GHzとした。メチルブ
ロマイドの流量は2SCCM、水素の流量は50SCCMで圧力は
0.0007Torrとした。磁場は875Gaussとし、電子サイクロ
トロン共鳴が起きる様にした。この条件で隔壁99の位置
を調節し、真空槽71がマイクロ波の空洞共振器として動
作する様にしたところ、隔壁99の開口部からプラズマ吹
き出しが見られた。基体温度は350℃、基体バイアスは
−90Vとした。 この様にして作成した電荷輸送層(膜厚、8μm)の
上に引き続いてA−Si:Hの電荷発生層を作成した。まず
基体加熱ヒータ102の電流を切って基体温度が100℃まで
下がるのを待ち、それから電流を再び流して200℃で一
定に保った。次にSiH4を10SCCM、H2を40SCCM流して、圧
力を9×10-4Torrにし、磁場を875Gaussとしてマイクロ
波を投入した。マイクロ波パワーは300Wとした。こうし
て電荷輸送層上に約1μmのA−Si:Hからなる電荷発生
層を成膜し、さらに連続してCH4流量7SCCM、SiH4流量3S
CCM、H2流量50SCCMで表面層を形成し、第1図の構造の
電子写真用感光体を得た。 この感光体を実験用電子写真複写装置にセットし、電
子写真特性を測定したところ、高い帯電性と良好な感度
を示し、負帯電で像露光してトナー現像したところ良好
な画像が得られた。 これとは別に実施例28と同様にして求められた測定結
果より、上記の成膜した電荷輸送層のギャップステート
密度は6×1016cm-3であることが傍証され、水素原子が
4原子%と、臭素が僅かに膜中に存在していることが確
認された。 実施例34 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例28と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜はメチルブロマイドと水素の混合ガ
スを用いて行ない、流量はメチルブロマイドを5SCCM、
水素100SCCM、水素で10mol%に希釈したフォスフィン0.
5SCCMとし、圧力は0.3Torrとした。基体温度350℃、RF
パワー600W、磁場400Gauss、基体バイアスは−70Vで成
膜を行なった。 こうして得られた電子写真用感光体の電子写真特性を
実施例28と同様にして測定したところ、負帯電で良好な
画質のトナー画像が得られた。 更に、これとは別に、実施例28と同様にして求めた測
定結果より、上記電荷輸送層のギャップステート密度は
1.4×1017cm-3であることが傍証された。又、電荷輸送
層中の水素原子濃度は10原子%であった。 実施例35 第5図の装置を用い、以下のような成膜条件及び操作
を用いる以外は実施例32と同様の方法によって第2図の
構造の電子写真用感光体を作成した。 Al製円筒基体を用い、まず真空槽52を約6×10-7Torr
まで真空排気した。次にこのAl基体を230℃に加熱しSiH
4流量30SCCM、H2流量180SCCM、B2H6流量1.5SCCMとし
て、0.1TorrにてRFパワー500WでBが高濃度にドープさ
れたP型のA−Si:Hからなる電荷注入阻止層を1000Åの
厚さに形成した。次にSiH4とB2H6の流量を0にし、H2
みを流して1hr放電を続けた。その後、再びSiH4を30SCC
M流し、H2流量180SCCMで放電させ、約1μのA−Si:Hか
らなる電荷発生層を上記電荷注入阻止層上に形成した。 この後、SiH4とH2の流れを止め、4×10-7Torrまで減
圧した後、電荷輸送層の成膜を次の条件で行なった。す
なわち、アセトンを含有するH2ガスを気化装置61を用い
て発生させ、真空槽52へ送り込んだ。H2中のアセトンは
約3mol%であり混合気の流量は300SCCM、圧力は0.7Torr
とした。またRFパワーを650W、基体バイアスを−100V、
基体温度350℃、磁場の強さは600Gaussとした。 こうして得られた電子写真用感光体は電子写真特性を
実施例32と同様に測定したところ、正帯電で良好な帯電
性を示した。また、この感光体を実施例32と同様に市販
の複写機(キヤノン製NP7550)を改造した実験装置にセ
ットし、画像形成を行なったところ良好な画質が得ら
れ、120万枚のコピーテスト後も初期の良好な画質が維
持された。 更に、これとは別に、実施例1と同様にして求めた測
定結果より、上記電荷輸送層のギャップステート密度は
7×1016cm-3であることが傍証された。又、電荷輸送層
中の水素原子濃度は7原子%であった。 実施例36 第3図の装置に用い、第1図に例示の電子写真用感光
体を以下のようにして作成した。 まず、電気伝導度が約10-2Ω-1cm-1の円板型のp型シ
リコンウェハーを基体53として用い、フッ酸の希釈水溶
液で基体表面の酸化膜を除去した後、この基体を上部電
極45に固定した。次に真空槽52を密閉し、真空排気系に
より約2×10-7Torrまで減圧した。次に基体の円形形状
に合せてうず巻き状にまいたタングステンワイアー44に
50Hzの交流電力を印加して、このワイヤー44を約2500℃
まで加熱して得られる輻射熱により、上記シリコン基体
を加熱した。シリコン基体の裏側が600℃になるまで待
った後に、ワイヤー44を約2000℃まで下げて基体温度を
約600℃に安定させた。 次に電磁コイル43に直流電力を流して真空槽52の上部
容器表面での磁場が800Gaussになる様に電流の大きさを
制御した。さらに切り換え回路69,70をAの位置にセッ
トし、直流電源48を基体側が−300Vになる様に合せた。
そしてマスフローコントローラー37,38も最もしぼった
状態でCH4のボンベ41のバルブ28及び33、H2のボンベ42
のバルブ29及び34を開いた。そして、各々のガスの流量
が1SCCM及び100SCCMとなる様にマスフローコントローラ
ー37及び38をセットした。このときの圧力は0.002Torr
であった。 次に電源47をONにして放電を始め、投入パワーを350W
に合せた。全体が安定状態に達してから48時間後に放電
電源47と48をOFFにし、バルブ28,29を閉じて放電を停止
した。こうして炭素を主体とする約8μの電荷輸送層を
得た。 次に、基体加熱フィラメント44の電流を弱くしてその
まま放置し、基体温度が測定値で250℃まで下がるのを
待ってから極性切換スイッチ69と70をBの状態にした。
次にSiH4のボンベ60のバルブ62と66及びH2のボンベ42と
バルブ29及び34を開き、SiH4が10SCCM、H2が90SCCMとな
る様にマスフローコントローラー64と38を調節した。そ
して高周波電源47をONにし、約1μの厚さのA−Si:Hか
らなる電荷発生層を前記の電荷輸送層上に積層した。 これに続いて、C2H2のボンベ40のバルブ27及び32を開
き、マスフローメータ36を使ってアセチレンをSiH4とH2
に加えて行き、A−Si:Hからなる電荷発生層上に約1000
ÅのA−Si:HCからなる表面層を積層した。 すべての成膜が終った後、バルブ27,28,29,32,33,34,
30を閉じ、加熱フィラメント44の電流を切って基体が充
分に冷却した後、真空を破って前述の各層を形成した基
体を真空槽52から取り出した。 こうして得られた電子写真用感光体を実験用の電子写
真複写装置にセットして、その電子写真特性を測定した
ところ、良好な帯電性と光感度を示した。続いて、前帯
電し像露光して、トナー現像したところ高品位な画像が
得られた。 これとは別に、上記のようにして得られた電子写真用
感光体の電荷輸送層と同様の成膜条件で、光学的バンド
ギャップ、電気伝導度、ラマンスペクトル及び水素原子
濃度測定用の各試料を膜厚1.5μmとして作成した。
又、ダイヤモンド相測定用TEM試料も合せて作成した。
こうして得られた各試料の測定結果より、前記感光体の
電荷輸送層の光学バンドギャップが3.5eVの範囲にあ
り、電気伝導度が10-15Ω-1cm-1の範囲にあり、また水
素原子濃度が5原子%で、ラマン・スペクトルには1330
cm-1付近に明瞭なストークス線が認められることが傍証
され、又、ダイヤモンド相の割合は体積比で60%であっ
た。 実施例37 電荷輸送槽の作成条件を以下のように変更する以外
は、実施例36と同様にして電子写真用感光体を作成し
た。 基体バイアスは−100Vで、基体温度を600℃とした。
原料ガスとしてCH3OHとH2を用い、CH3OHを1SCCM、H2を1
00SCCMで真空槽52の中へ送り込んだ。フィラメント温度
は2400℃とし、RFパワーは300Wとした。コイル43には電
流を流さずに成膜を行なった。成膜時の圧力は0.002Tor
rとした。 このようにして得られた電子写真用感光体の電子写真
特性を実施例36の場合と同様に測定したところ、高い帯
電能と感度を示し、負帯電して像露光し、トナー画像し
たところ良好な画像が得られた。 これとは別に、上記と全く同一の条件で電荷輸送層だ
けをSi基体上に形成したものを膜組成分析したところ、
膜中には酸素原子が含まれており、また赤外吸収スペク
トルによる水素原子濃度の測定によると水素原子が11原
子%含有されていることが確認された。 また、これとは別に光学的バンドギャップ、電気伝導
度の測定用の試料を該実施例の電荷輸送層の作成条件と
同一条件で膜厚2μmとして作成した。ダイヤモンド相
測定用TEM試料も合せて作成した。この試料の測定結果
により、光学的バンドギャップは2.8eVで電気伝導度は
乾燥雰囲気内で4×10-14Ω-1cm-1であり、ダイヤモン
ド相の割合は体積比で85%であった。 実施例38 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例36と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜はエタンと水素とアンモニアの混合
ガスを用い、流量はエタンを1SCCM、水素を87SCCM、ア
ンモニアを3SCCMとした。圧力は0.002Torr、RFパワー35
0W、基体温度650℃で磁場は800Gaussとした。この条件
と同一条件で物性測定用として成膜した各試料の測定結
果より、光学的バンドギャップは3.1eV、電気伝導度は1
0-13Ω-1cm-1、水素原子濃度は7原子%で、窒素が膜中
に更に含まれていることが傍証された。又、ダイヤモン
ド層の割合は体積比で65%であった。 他方、得られた電子写真用感光体を実施例36と同様に
実験用電子写真複写装置にセットして電子写真特性を測
定したところ、良好な帯電性と感度を示した。また、別
に、正帯電し像露光して、トナー現像したところ明瞭な
画像がえられた。 実施例39 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例36と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜にはメタンと水素とフッ化水素の混
合ガスを用いた。流量はメタンを5SCCM、水素を77SCC
M、フッ化水素10mol%の水素による希釈ガスを3SCCM、R
Fパワー450W、基体バイアス0V、基体温度550℃、圧力0.
01Torrとして行なった。 この様にして得られた電子写真用感光体は実施例36の
場合と同様に、良好な帯電性を示し、正帯電で良好な画
質のトナー画像が得られた。 これとは別に、実施例36と同様に求められた測定結果
から電荷輸送層の光学的バンドギャップは2.3eV、電気
伝導度は3.8×10-13Ω-1cm-1、水素原子濃度は11原子%
で、膜中にはフッ素原子が取り込まれている事が傍証さ
れた。又、ダイヤモンド相の割合は体積比で50%であっ
た。 実施例40 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例36と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜はメタンと水素の混合ガスを用いて
行ない、流量はメタンを1SCCM、水素を100SCCMとした。
そして、これに水素で1mol%まで希釈したジボランを0.
5SCCMの割合で流し込んだ。圧力は0.06Torr、基体温度6
00℃、RFパワー250W、基体バイアス−100Vで成膜を行な
った。 できあがった電子写真用感光体は実施例36と同様に良
好な帯電性を示し、正帯電で良好な画質のトナー像が得
られた。 これとは別に、実施例36と同様に求めた測定結果よ
り、成膜した電荷輸送層の光学的バンドギャップは3.2e
V、電気伝導度は4×10-12Ω-1cm-1、水素原子濃度は9
原子%、ダイヤモンド相の割合は体積比で65%であるこ
とが傍証された。 実施例41 第4図の装置を用い、以下の様にして本発明の電子写
真用感光体を作成した。 化学研磨したMo基体103を基体ホルダー108に取付け、
真空槽内を10-7mmHgまで排気し、同時にヒータ102に電
流を流して基体を300℃まで加熱した後、H2ガスの供給
バルブ84,92,86を開けるとともに、マスフローコントロ
ーラー98にてH2ガス78を200SCCM真空槽に導入した。マ
イクロ電源107により周波数2.45GHzのマイクロ波300Wを
真空槽に導入すると同時にコイル106により真空槽中心
が875Gaussとなる様に磁場を発生させ、これによってH2
ガスプラズマがMo基体に照射された。この状態を約30分
経過せしめた後、アセチレンガス76をマスフローコント
ローラーを用いて真空槽に導入、同時にシランガス75を
マスフローコントローラー96により真空槽に導入し、Mo
基体上にA−SiC:H層を約1000Å形成した。 その後、アセチレンの導入を停止し、A−SiC:H膜上
にA−Si:H層を約1μm形成した。その後、シランガス
の導入を停止し、基体温度を700℃に上昇せしめた後、C
H4ガス72をマスフローコントローラー93により2SCCM導
入した。このH2とCH4ガスを導入して、マイクロウェー
ブプラズマが発生中はWフィラメント101を約2500℃に
加熱すると同時に直流電源105により、基体ホルダーを
−125VにしてA−Si:H膜上にダイヤモンド層を多く含む
炭素質膜を10μm積層し、電子写真用感光体を作った。
全てのガス導入を停止し、マイクロ波電源、コイル電
流、直流電源を切り、基体が充分冷却された後、真空槽
から取出した。こうして第2図に示した構造の電子写真
用感光体が得られた。 この電子写真特性を実施例1と同様にして実験用の電
子写真複写装置にセットしてチェックしたところ電子写
真用感光体として充分に実用的なものであった。 これとは別に、実施例36と同様にして膜組成及び物性
分析用の試料を、上記の最終層(電荷輸送層)の形成条
件と同一条件で作成し、分析したところ、上記最終層を
構成する炭素を主体とする膜は、ダイヤモンド相の割合
が体積比で60%であり、電気伝導度がほぼ10-11Ω-1cm
-1であり、水素原子濃度は1原子%、光学的バンドギャ
ップは2.7eV程度であることが傍証された。 実施例42 電荷輸送層の成膜条件を以下のように変更する以外は
実施例36と同様にして電子写真用感光体を作成した。 電荷輸送層の成膜はメチルブロマイドと水素ガスの混
合ガスを用いて行ない、流量はメチルブロマイドを1SCC
M、水素100SCCM、水素で10mol%に希釈したフォスフィ
ン0.5SCCMとし、圧力は0.3Torrとした。基体温度600
℃、RFパワー600W、磁場400Gauss、基体バイアスは−20
0Vで成膜を行なった。 こうして得られた電子写真用感光体について実施例36
と同様にして電子写真特性を測定したところ、負帯電で
良好な画質のトナー画像が得られた。又、電荷輸送層中
の水素原子濃度は3原子%、ダイヤモンド相の割合は体
積比で80%であった。 実施例43 第5図の装置を用い、以下のような成膜条件及び操作
を用いる以外は実施例41と同様の方法によって第2図の
構造の電子写真用感光体を作成した。 Al製円筒基体を用い、まず真空層52を約6×10-7Torr
まで真空排気した。次にこのAl基体を230℃に加熱しSiH
4流量30SCCM、H2流量180SCCM、B2H6流量1.5SCCMとし
て、0.1TorrにしてRFパワー500WでBが高濃度にドープ
されたP型のA−Si:Hからなる電荷注入阻止層を1000Å
の厚さに形成した。次にSiH4とB2H6の流量を0にし、H2
のみを流して1hr放電をつづけた。その後、再びSiH4を3
0SCCM流し、H2流量180SCCMで放電させ、約1μのA−S
i:Hからなる電荷発生層を上記電荷注入阻止層上に形成
した。 この後、SiH4とH2の流れを止め、4×10-7Torrまで減
圧した後、電荷輸送層の成膜を次の条件で行なった。す
なわち、アセトンを含有するH2ガスを気化装置61を用い
て発生させ、真空層52へ送り込んだ。H2中のアセトンは
約1mol%であり混合気の流量は300SCCM、圧力は0.7Torr
とした。また、RFパワーを650W、基体バイアスを−100
V、磁場の強さは600Guassとした。 こうして得られた電子写真用感光体は正帯電で良好な
帯電性を示した。この感光体を市販の複写機キヤノン製
NP7550を改造した実験用装置にとりつけた後、画像形成
を行なったところ良好な画質が得られ、120万枚のコピ
ーテスト後も初期の良好な画質が維持された。又、電荷
輸送層中の水素原子濃度は7原子%、ダイヤモンド相の
割合は体積比で90%であった。 実施例44 第3図の装置を用い、次の様にして本発明の電子写真
用感光体を作成した。 電気伝導度が約10-2Ω-1cm-1の円板型のp型シリコン
ウエハーを基体53として用い、表2のような成膜条件で
電子写真用感光体を作成した。 このように作成した感光体を実験用電子写真複写装置
にセットし、その電子写真特性を測定したところ、良好
な帯電性を示した。更に、負帯電し像露光して、トナー
現像したところ良好なトナー画像が得られた。 これとは別に、上記電荷輸送層の成膜条件と同一条件
で膜組成及び物性分析用の各試料を作成した。これら試
料のラマン分析の結果から上記電荷輸送層を構成する膜
は1333cm-1付近に鋭いピークを有することが傍証され
た。又、IR測定によればC−Hの吸収はみられないこと
が確認され、更に電気伝導度の測定結果から上記電荷輸
送層を構成する膜の電気伝導度は10-11Ω-1cm-1である
ことが傍証された。又、TEMによる観測によれば膜中の
グラファイト層の割合は体積比で1%程度であった。 比較例7 実施例44と同じ装置で電荷輸送層のガス流量のみを表
3のように変える以外は、実施例44と同様にして電子写
真用感光体を作成した。 このように作成した電子写真用感光体の電子感光特性
を実施例44と同様にして測定したところ、帯電性が低
く、更に満足なトナー画像が得られなかった。 これとは別に、上記電荷輸送層の成膜条件と同一条件
で膜組成及び物性分析用の各試料を作成した。これら試
料のラマン分析の結果から上記電荷輸送層を構成する膜
は1580cm-1付近と1360cm-1付近に大きなブロードなピー
クを有していることが傍証された。また、IR測定では29
00〜3100cm-1で吸収がみられ、電気伝導度の測定結果か
ら上記電荷輸送層を構成する膜の電気伝導度は10-6Ω-1
cm-1であることが傍証された。又、膜中のグラファイト
相の割合は体積比で21%であった。 実施例45 実施例44と同じ装置を用い、電荷輸送層のガス流量の
みを表4のように変える以外は実施例44と同様にして電
子写真用感光体を作成した。 この条件で作成した電子写真用感光体の電子写真特性
を実施例44と同様にして測定したところ、良好な帯電性
を示した。更に、正帯電で良好な画質のトナー画像が得
られた。 これとは別に、実施例44と同様にして求めた測定結果
から、上記電荷輸送層を構成する膜の膜中の水素原子濃
度は10原子%、電気伝導度は5×10-11Ω-1cm-1であ
り、更にラマン分光によれば1360cm-1と1580cm-1に弱い
ブロードなピークが存在することが傍証された。又、膜
中グラファイト相の割合は体積比で6%であった。 実施例46 実施例44と同じ装置を用い、電荷輸送層のガス流量の
みを表5のように変える以外は実施例44と同様にして電
子写真用感光体を作成した。 この条件で作成した電子写真用感光体の電子写真特性
を実施例44と同様にして測定したところ、良好な帯電性
を示し、更に正帯電で良好なトナー画像が得られた。 これとは別に、実施例44と同様にして求めた測定結果
から、上記電荷輸送層を構成する膜の水素原子濃度は6
原子%、電気伝導度は10-11Ω-1cm-1であり、ラマン分
析によれば、1360cm-1と1580cm-1に弱いブロードなピー
クが存在することが傍証された。又、膜中グラファイト
相の割合は体積比で5%であった。 実施例47 実施例44と同じ装置を用い、電荷輸送層のガス流量の
みを表6のように変える以外は実施例44と同様にして電
子写真用感光体を作成した。 この条件で作成した電子写真用感光体の電子写真特性
を実施例44と同様にして測定したところ、良好な帯電性
を示し、更に正帯電で良好なトナー画像が得られた。 これとは別に、実施例44と同様にして求めた測定結果
から、上記電荷輸送層を構成する膜の電気伝導度は10
-11Ω-1cm-1、水素原子濃度は11原子%で、ラマン分析
によれば、1360cm-1と1580cm-1に弱いブロードなピーク
が存在することが傍証された。又、グラファイト相の割
合は体積比で10%であった。 実施例48 第4図に示す様な装置を用いて表7の条件で電子写真
用感光体を作成した。 このように作成した電子写真用感光体の電子写真特性
を実施例44と同様にして測定したところは帯電性が非常
に高く、更に、負帯電で現像したところ良好なトナー画
像が得られた。 これとは別に、実施例44と同様にして求めた測定結果
から、上記電荷輸送層を構成する膜の水素原子濃度は15
原子%、電気伝導度は10-13Ω-1cm-3で、ラマン分析に
よれば1333cm-1のみに鋭いピークが表われることが傍証
された。又、グラファイト相の割合は体積比で2%程度
であった。 〔発明の効果〕 以上に説明したように、本発明によってもたらされる
効果としては下記に列挙するようなものを挙げることが
できる。 1)高い帯電能をもち、少ない帯電電流と少ない露光エ
ネルギー量で画像形成可能な電子写真用感光体を提供す
ることが可能となった。 2)高速画像形成が可能な電子写真用感光体を提供する
ことが可能となった。 3)濃度が高く、ハーフトーンが鮮明に出て且つ解像度
の高い、高品質な画像を得る事が容易に出来る電子写真
用感光体を提供する事が可能となった。 4)湿度、湿度等の使用環境の変動に対して安定な画像
を維持する事が可能な電子写真用感光体を提供する事が
可能となった。 5)繰り返し使用の際のコロナ放電生成物や紙粉などの
付着の影響が少なく、また表面に傷がつかず長期間継続
的に安定な画像を維持しながら使用可能な電子写真用感
光体を提供する事が可能となった。 6)光受容層の化学変化や劣化あるいは結晶化等の変質
がおこらず、長期間の悪環境化での保管に耐えて保管前
と変わらない良好な画質を再現する事が可能な電子写真
用感光体を提供する事が可能となった。 7)製造工程の途中やオフィス等での取扱いの際に人体
に触れても全く害がなく、また現像剤中に光受容層の一
部が削れて混入し、それがコピー上のトナー画像に含ま
れて人体に接触したりしても全く安全で、必要ならば使
用終了後に一般ゴミと一緒に廃棄する事も安全上全く問
題なく、一般家庭で使用する際にも特別の注意なしに安
全に使用可能で、火災などの非常時に他のものと一緒に
燃えてしまっても有毒な気体を放出しない、従ってあら
ゆる点で全く安全な電子写真用感光体を提供する事が可
能となった。 8)製造時に有害な原料を使用せず、又は従来に較べて
必要な有害原料の使用量が極端に少なくても製造可能
で、このため製造設備に取り付ける必要のある有害物除
外装置やその他の製造上の安全対策に要するコストを著
しく削減出来る電子写真用感光体を提供する事が可能と
なった。 9)製造時の原料として入手し易く、安価な原料を使用
する事の出来る低コストな電子写真用感光体を提供する
事が可能となった。 10)不均一材料の混合や分散あるいは粉度分布制御など
といった複雑な工程を取る事なく、また塗布液の調液や
塗布中の粘度制御あるいは多層構造の際に起きる層間汚
染や溶剤排気の処理などを必要としない簡略化された工
程で製造でき、またメンテナンスの容易な製造装置を用
いて製造出来る電子写真用感光体を提供する事が可能と
なった。 11)製造時の微粉末形成や製造容器内に付着した膜のは
がれによる微粒子の発生がなく、長時間安定して欠陥の
ない均一な光受容層を得る事の出来る電子写真用感光体
を提供する事が可能となった。 12)クリーニング性を向上させた電子写真用感光体を提
供することが可能となった。 13)高速におけるクリーニング性のみならず、長時間の
使用後にも使用前と同様なクリーニング性と画像を示す
耐久性を持った電子写真用感光体を提供することが可能
となった。 14)湿度、湿度等の使用環境の変動に対して安定なクリ
ーニング性と画像を維持する事が可能な電子写真用感光
体を提供することが可能となった。 15)繰り返し使用の際のコロナ放電生成物や紙粉などの
付着の影響が少なく、また表面に傷がつかず長時間継続
的に安定なクリーニング性や画像を維持しながら使用可
能な電子写真用感光体を提供する事が可能となった。 16)高速クリーニング、高速画像形成が可能な電子写真
用感光体を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】 第1図及び第2図は本発明の電子写真用感光体の実施形
態の例を示す模式的構成断面図、第3図は、第4図及び
第5図は本発明の電子写真用感光体の製造に用いること
のできる装置の一例を示す模式的概略図、第6図は動摩
擦係数の測定方法を示す概略図である。 14,24は支持体、13,23は電荷輸送層、12,22は電荷発生
層、11は表面層、21は電荷注入阻止層、52,71は成膜を
行なう真空槽、47は高周波電源、107はマイクロ波電
源、45,46は電極,100は基体ホルダー、43及び106は電磁
コイル、111はドラム、112,113は中心棒である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願昭61−227306 (32)優先日 昭61(1986)9月26日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願昭61−227310 (32)優先日 昭61(1986)9月26日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願昭61−227311 (32)優先日 昭61(1986)9月26日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願昭62−220491 (32)優先日 昭62(1987)9月4日 (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 平林 敬二 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 生駒 圭子 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 栗原 紀子 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 長部 国志 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−178974(JP,A) 特開 昭62−63937(JP,A)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.支持体上に電荷発生層と電荷輸送層とを積層した機
    能分離型の光受容層を有する電子写真用感光体であっ
    て、前記電荷輸送層がラマンスペクトルの1333cm-1を含
    む領域のストークス線で特徴づけられる構造を有するダ
    イヤモンド相が体積比で50〜95%で、ラマンスペクトル
    の1580cm-1を含む領域のストークス線で特徴づけられる
    構造を有するグラファイト相が体積比で20%以下の、炭
    素原子をマトリックスの主体とする膜であって、周期律
    表第III族または第V族に属する原子を5原子ppm以上5
    原子%以下、水素原子を0.01原子%以上30原子%以下、
    炭素原子を65原子%以上含有することを特徴とする電子
    写真用感光体。 2.前記炭素原子をマトリックスの主体とする膜が、光
    学的バンドギャップ1.5eV以上、電気伝導度10-11Ω-1cm
    -1以下の物性値を有する特許請求の範囲第1項に記載の
    電子写真用感光体。 3.前記炭素原子をマトリックスの主体とする膜が、窒
    素原子または酸素原子を含む特許請求の範囲第1項に記
    載の電子写真用感光体。 4.前記炭素原子をマトリックスの主体とする膜がラマ
    ンスペクトルにおける1333cm-1のピーク強度IDと1580cm
    -1のピーク強度IGの比ID/IGが0.18〜5.9とされる膜で
    ある特許請求の範囲第1項に記載の電子写真用感光体。 5.前記電荷輸送層の光学吸収係数が2.5eV以下のエネ
    ルギー光に対して104cm-1以下である特許請求の範囲第
    1項に記載の電子写真用感光体。 6.前記電荷輸送層に、フッ素原子が10原子ppm以上15
    原子%以下の範囲で含有されている特許請求の範囲第1
    項に記載の電子写真用感光体。 7.前記光受容層の最上層を前記電荷輸送層で構成し、
    該電荷輸送層の動摩擦係数が標準条件下において0.5以
    下である特許請求の範囲第1項に記載の電子写真用感光
    体。 8.前記電荷輸送層中のギャップステート密度が5×10
    17cm-3以下である特許請求の範囲第1項に記載の電子写
    真用感光体。
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