JP2013011882A - トナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステルを主成分にする結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー粒子を含有するトナーであって、結着樹脂は結晶構造をとりうる部位と結晶構造をとりえない部位を結合したブロックポリマーを含有し、トナーの示差走査熱量計(DSC)測定から求められる、結着樹脂に由来する最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上80℃以下であり、最大吸熱ピークの吸熱量が30J/g以上100J/g以下であり、ワックスは、3官能以上のエステルワックスであることを特徴とするトナー。
【選択図】なし
Description
従来、より低温での定着を可能とするためには結着樹脂をよりシャープメルトにする手法が効果的な方法の一つとして知られている。この点において結晶性ポリエステル樹脂を用いたトナーが紹介されている。結晶性ポリエステルは、分子鎖が配列することにより、明確なガラス転移を示さず、結晶融点まで軟化しにくいという特性を持つため、耐熱保存性と低温定着性を両立できる材料として検討が行われている。
しかしながら、トナーの結着樹脂に結晶性ポリエステルを単独で用いる場合、シャープメルト性は有するものの、高温での弾性がなく、ホットオフセット、紙上への染み込みのための光沢度の低下が発生し、定着の温度幅が狭くなってしまうことがある。そのため、プリンターでの低温環境下での連続画像形成では、オフセットや光沢ムラが発生しやすくなり、安定した画像を得ることが出来なかった。
そのため、結晶性ポリエステルの添加量を下げ、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルとを混合して用いたトナーが提案されている。
特許文献1では、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルを含有したカプセル型のトナーで、融点+20℃での貯蔵弾性率及び損失弾性率を制御することにより、定着のラチチュードの向上を図っている。
また、非晶性ポリエステルに結晶性ポリエステルを少量添加した場合、非晶性ポリエステルの粘度を変えることにより、高温での粘度を調整でき、ホットオフセットを抑えることが出来る。しかしながら、この場合、結晶性ポリエステルのシャープメルト性を十分に示すことができず、低温定着性に対する効果が十分に発揮できなかった。
このような問題を解決するため、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルとをブロック化した結着樹脂を用いたトナーが提案なされている。
特許文献2では、結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックのエステル化によりにより得られたブロック共重合体を用いることにより、低温度加熱による定着が可能であることが示されている。
特許文献3では、結晶性ポリエステルのセグメントと無定形ポリエステルのセグメントがアミノ架橋剤によって変性されてなるウレア変性ポリエステルにより、耐熱保存性及び耐ホットオフセット性を改良したトナーが示されている。
特許文献4では、脂肪族ポリエステル(すなわち結晶性ポリエステル)を必須成分とする結晶部と非晶部から構成される樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液を、液状又は超臨界状態の二酸化炭素中に分散させることによって、前記樹脂と有機溶剤を含有する樹脂粒子を形成し、次いで前記有機溶剤及び二酸化炭素を除去することによって得られるトナーが提案されている。
しかしながら、このようなブロックポリマーを含有したトナーを用いる場合においても、低温定着性に関し、特にトナー中のワックス分散性が十分でないと、コールドオフセットが発生し、十分な効果が得られない場合があった。また、結晶性ポリエステルの結晶化が不十分な場合、耐熱保存性が十分でなかったり、用いるワックスによっては、ワックスの染み出しや、結晶性ポリエステルとワックスとの相溶による結晶性の低下により、耐熱保存性の低下を引き起こしたりした。特に、昇温と、降温が繰り返えされるような環境下に長期間放置した場合に耐熱保存性の劣化現象が発生しやすかった。そのため更に改良し
たトナーが望まれている。
本発明者らは、上述した結晶性ポリエステルを用いたトナーの種々の問題点について検討を重ねた結果、特定の構造を有するワックスとの組み合わせにおいて、これらの問題を解決できることを見出し本発明に至った。
本発明のトナーは、ポリエステルを主成分にする結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記結着樹脂は、結晶構造をとりうる部位と結晶構造をとりえない部位を結合したブロックポリマーを含有し、前記トナーの示差走査熱量(DSC)測定から求められる、前記結着樹脂に由来する最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上、80℃以下であり、前記最大吸熱ピークの吸熱量が30J/g以上、10
0J/g以下であり、前記ワックスは、3官能以上のエステルワックスであることを特徴とする。
本発明においては、トナーの示差走査熱量(DSC)測定から求められる、結着樹脂に由来する最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)が、50℃以上、80℃以下である。当該結着樹脂に由来する最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)は、本発明に用いられる結着樹脂に含まれるブロックポリマーの構成要素である「結晶構造をとりうる部位」の集合体(以下、結晶性部位ともいう)の示差走査熱量(DSC)により測定される最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)を変更することにより制御することが出来る。具体的には結晶構造をとりうる部位のモノマー組成及び結晶化度により制御することが可能である。上記ピーク温度(Tp)を50℃以上、80℃以下にすることにより、耐熱保存性と低温定着性を満足するトナーを設計することが可能になる。上記ピーク温度(Tp)の下限は好ましくは55℃以上であり、ピーク温度(Tp)の上限は好ましくは70℃以下である。
本発明においては、トナーの示差走査熱量(DSC)測定から求められる、結着樹脂に由来する最大吸熱ピークの吸熱量(ΔH)が30J/g以上、100J/g以下である。ここで、当該ΔHは、トナー中において結晶性が維持された状態で存在している結晶性部位の結着樹脂全体における割合を反映する。すなわち、トナー中に結晶性部位を多く存在させた場合であっても、結晶性が損なわれている場合は、ΔHは小さくなる。従って、ΔHが上記範囲にあるようなトナーは、トナー中において結晶性を維持した状態で存在する結晶性部位の割合が適正であり、良好な低温定着性が得られる。上記ΔHが30J/gよりも小さいと、相対的にブロックポリマー中の「結晶性構造をとりえない部位」の集合体(以下、非晶性部位ともいう)の割合が大きくなり、その結果、結晶性部位のシャープメルト性よりも非晶性部位に由来するガラス転移点(Tg)の影響をより大きく受けるようになる。そのため、良好な低温定着性を示すことが困難となる。一方、上記ΔHが100J/gよりも大きいと、結晶性部位の割合が大きくなり、トナー中の着色剤の分散を阻害しやすくなり、画像濃度の低下が起こることがある。上記ΔHの好ましい範囲は、35J/g以上、90J/g以下である。
上記ΔHは、結晶構造をとりうる部位の含有量を変更することで調整することができ、更にトナー粒子に対して後述するアニール処理を施すことにより上記範囲に制御することが可能である。
この理由は以下の通り推察される。エステル系ワックスはトナー中における分散性に優れ、低温度条件で定着を行う場合のコールドオフセットの防止に対し有効である。ところがエステル系ワックスは結晶性樹脂(例えば、結晶性ポリエステル)と類似構造を有するため結晶性ポリエステルと相溶しやすい。相溶した場合、結晶性ポリエステルの結晶内部に入り、結晶性ポリエステルの結晶構造を崩しやすい。そのため、結晶性が低下し、耐熱性が不十分になりやすかった。特に、昇温と降温が繰り返されるような環境下にトナーを長期間放置した場合に耐熱保存性が不十分となる現象が発生しやすかった。また、耐熱保存性を満足する場合においても、ワックスの染み出しによる帯電の維持性が問題になる場合があった。
本発明のように3官能以上のエステルワックスを用いた場合、当該ワックスは分岐構造を有するため、直鎖構造をもつ結晶性ポリエステルと相溶し難くなり、結晶性ポリエステルの結晶構造を維持しやすくなる。本発明においては、さらに分岐構造の多い4官能以上のエステルワックスを用いることが好ましく、6官能以上のエステルワックスを用いることがより好ましい。
,000以下であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)が15,000以上、60,000以下であることが好ましい。この範囲であることで、トナーに適度な粘弾性を付与することが可能である。Mnのより好ましい範囲は、10,000以上、25,000以下であり、Mwのより好ましい範囲は、25,000以上、50,000以下である。さらに、Mw/Mnは6以下であることが好ましい。Mw/Mnのより好ましい範囲は3以下である。
ここで「ポリエステルを主成分にする」とは、結着樹脂の総量に対し、ポリエステル部位が50質量%以上占めることを意味する。また、上記ブロックポリマーに含有されるポリエステル部位も前述のポリエステル部位に含まれる。
また、上記ブロックポリマーとは、一分子内でポリマー同士が共有結合にて結ばれたポリマーである。上記結晶構造をとりうる部位とは、それ自体が多数集合すると、規則的に配列し結晶性を発現する部位であり、結晶性ポリマー鎖を意味する。本発明において結晶性ポリマー鎖は、結晶性ポリエステルであることが好ましい。また、上記結晶構造をとりえない部位とは、それ自体が集合しても規則的に配列せず、非晶性となる部位であり、非晶性ポリマー鎖を意味する。
上記ブロックポリマーは、例えば結晶性ポリマー鎖(A)と非晶性ポリマー鎖(B)とのAB型ジブロックポリマー、ABA型トリブロックポリマー、BAB型トリブロックポリマー、ABAB・・・・型マルチブロックポリマーの、いずれの形態であってもよい。また、上記ブロックポリマーの結晶性ポリマー鎖と非晶性ポリマー鎖との結合形態としては、ウレタン結合が非晶性ポリマー鎖の集合体である非晶性部位の粘弾性の制御、とりわけ高温における粘性を上げるために有効である。
以下、上記結晶性部位について、結晶性ポリエステルを例に挙げて説明するが、これに限定されるわけではない。
結晶性ポリエステルは、炭素数4以上20以下の脂肪族ジオールおよび多価カルボン酸を少なくとも原料として用いることが好ましい。
さらに、前記脂肪族ジオールは直鎖型であることが好ましい。直鎖型であることで、ポリエステルの結晶性を上げやすく好ましい。
上記脂肪族ジオールとしては、例えば以下のものを挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。また、場合によっては混合して用いることも可能である。1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール。これらのうち、融点の観点から、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。前記二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、例えば以下のものを挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオール。
次に、結晶性ポリエステルの調製に用いられる酸成分について述べる。結晶性ポリエステルの調製に用いられる酸成分は、多価カルボン酸が好ましい。多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸が好ましく、中でも脂肪族ジカルボン酸がより好ましく、結晶性の観点から、特に直鎖型のジカルボン酸が更に好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば以下のものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、場合によっては混合して用いることも可能である。蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸。あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物。これらのうち、セバシン酸、アジピン酸、1,10−デカンジカルボン酸、または、その低級アルキルエステルまたは酸無水物が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば以下のものを挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸。
これらのうち、テレフタル酸が入手の容易性、及び、低融点のポリマーを形成しやすいという点で好ましい。
また、二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。二重結合を有するジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時の高温オフセットを防ぐために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、これらの低級アルキルエステルまたは酸無水物も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸またはマレイン酸が好ましい。
前記結晶性ポリエステルの製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば直接重縮合、エステル交換法を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
前記結晶性ポリエステルの製造は、重合温度180℃以上230℃以下の間で行うことが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させることが好ましい。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させることが好ましい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させることが好ましい。
前記結晶性ポリエステルの製造時に使用可能な触媒としては、例えば以下を挙げることができる。チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドの如きチタン触媒;ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドの如きスズ触媒。
前記結晶性ポリエステルはアルコール末端であることが前記ブロックポリマーを調製する上で好ましい。そのため、前記結晶性ポリエステルの調製では酸成分とアルコール成分のモル比(アルコール成分/カルボン酸成分)は1.02以上1.20以下であることが好ましい。上記結晶性ポリエステルは、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において、数平均分子量(Mn)が2,000以上、20,000以下であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)が4,000以上、100,000以下であることが好ましい。Mnのより好ましい範囲は、3,000以上、15,000以下であり、Mwのより好ましい範囲は、6,000以上、80,000以下である。また、Mw/Mnは6以下であることが好ましい。Mw/Mnのより好ましい範囲は3以下である。さらに、示差走査熱量計(DSC)により測定される最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)が50℃以上、85℃以下であることが好ましく、55℃以上、80℃以下であることがより好ましい。
脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル系ポリマーが好適に例示できるが、ジオールとジイソシアネートを反応して得られるポリウレタンであることが好ましい。
以下、非晶性部位としてのポリウレタンについて述べる。前記ポリウレタンはジオールとジイソシアネート基を含有する物質との反応物であり、ジオール、ジイソシアネートの調整により、各種機能性をもつものを得ることができる。
前記ジイソシネートとしては以下のものが挙げられる。
炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、変性ジイソシアネートともいう)、並びにこれらの2種以上の混合物。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。m−及び/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
これらのうちで好ましいものは炭素数6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましいものはHDI、IPDI及びXDIである。
また、前記ポリウレタン樹脂は、前記したジイソシアネートに加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
また、前記ウレタン樹脂に用いることのできるジオールとしては、以下のものが挙げられる。
アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)付加物;ポリエステルジオール。
前記アルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。本発明においては分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
前記非晶性部位のガラス転移温度は、50℃以上130℃以下であることが好ましく、より好ましくは70℃以上130℃以下である。この範囲であることで、定着領域における弾性が維持されやすい。
結合剤を使う場合は、種々の結合剤が使用できる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、多酸無水物を用いて、脱水反応や付加反応を行うことができる。
また、結晶構造をとりうる部位が結晶性ポリエステルで、結晶構造をとりえない部位がポリウレタン樹脂であるブロックポリマーの場合は、各部位を別々に調製した後、結晶性ポリエステルのアルコール末端とポリウレタンのイソシアネート末端とをウレタン化反応させることにより調製できる。また、アルコール末端を持つ結晶性ポリエステルおよびポリウレタンを構成するジオール、ジイソシアネートを混合し、加熱することでも合成が可能である。この場合、前記ジオールおよびジイソシアネートの濃度が高い反応初期は、これらが選択的に反応してポリウレタンを形成し、ある程度分子量が大きくなった後に、ポリウレタンのイソシアネート末端と結晶性ポリエステルのアルコール末端とのウレタン化が起こる。
上記ブロックポリマーの効果を有効に発現するためには、可能な限り結晶性ポリエステルのホモポリマーや非晶性ポリマーのホモポリマーがトナー中に存在しないほうが好ましい。すなわち、ブロック化率が高いことが好ましい。
上記ブロックポリマーは、ウレタン結合濃度が1.00mmol/g以上、3.20mmol/g以下であることが好ましい。
ウレタン結合濃度が1.00mmol/g以上、3.20mmol/gにすることにより、結晶構造をとりうる部位を多く含むようなブロックポリマーであっても高温での粘性を更に高いレベルで維持することができ、良好な光沢度を高温領域まで維持させることが可能である。より好ましくはウレタン結合濃度が1.40mmol/g以上、2.60mmol/g以下である。なお、ブロックポリマーのウレタン結合濃度は、例えば結晶構造をとりえない部位としてウレタン構造を導入する場合、この時に用いるジイソシアネートの添加量を調整することによって制御することができる。
また、上記ブロックポリマーは、示差走査熱量(DSC)測定から求められる、上記結着樹脂に由来する最大吸熱ピークのピーク温度Tpより25℃高い温度(Tp+25)(℃)における貯蔵弾性率G’(Tp+25℃)が1.0×103Pa以上、1.0×105Pa以下であることが好ましく、より好ましくは2.0×103Pa以上、7.0×104Pa以下である。この要件を満たすことによって高温領域での定着性及び光沢度を更に向上させることが可能である。
また、上記ブロックポリマーは、結晶構造をとりうる部位を、50質量%以上、85質量%以下含有することが好ましい。ブロックポリマーにおける結晶構造をとりうる部位の含有量が50質量%以上であることで、結晶構造をとりうる部位の集合体である結晶性部位のシャープメルト性が有効に発現されやすくなる。より好ましくは、60質量%以上85質量%以下である。
一方、ブロックポリマーにおける上記結晶構造をとりえない部位の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。結晶構造をとりえない部位の含有量が10質量%以上であることで、シャープメルト後の結晶構造をとりえない部位の集合体である非晶性部位の弾性の維持が良好になる。より好ましくは、15質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上、50質量%未満であり、特に好ましくは15質量%以上、40質量%以下である。
上記ブロックポリマーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において、数平均分子量(Mn)が8,000以上、30,000以下であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)が15,000以上、60,000以下であることが好ましい。Mnのより好ましい範囲は、10,000以上、25,000以下であり、Mwのより好ましい範囲は、25,000以上、50,000以下である。また、Mw/Mnは6以下であることが好ましい。Mw/Mnのより好ましい範囲は3以下である。さらに、示差走査熱量計(DSC)で測定された最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)が50℃以上、80℃以下であることが好ましく、55℃以上、70℃以下であることがより好ましい。
本発明における結着樹脂としては、上記ブロックポリマーに加えて、トナー用の結着樹脂として知られているその他の公知の樹脂を含有させてもよい。その場合、当該ブロックポリマーは、結晶構造をとりうる部位を、結着樹脂全量に対し、50質量%以上、85質
量%以下含有することが好ましい。
3官能以上のエステルワックスは、例えば3官能以上の酸と長鎖直鎖飽和アルコールの縮合、または、3官能以上のアルコールと長鎖直鎖飽和脂肪酸の合成によって得られる。
本発明にて使用可能な3官能以上のアルコールとしては以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。また、場合によっては混合して用いることも可能である。グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール。また、これらの縮合物として、グリセリンの縮合したジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン及びデカグリセリンの如きポリグリセリン、トリメチロールプロパンの縮合したジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールの縮合したジペンタエリスリトール及びトリスペンタエリスリトールが挙げられる。これらのうち、分岐構造をもつ構造が好ましく、ペンタエルスリトール又はジペンタエリスリトールがより好ましく、特にジペンタエリスリトールが好ましい。
本発明にて使用可能な長鎖直鎖飽和脂肪酸は、一般式CnH2n+1COOHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
例えば以下のものを挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。また、場合によっては混合して用いることも可能である。カプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、ノニル酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸。その中でも、ワックスの融点の面からミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が好ましい。
本発明にて使用可能な3官能以上の酸としては以下のものを挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。また、場合によってはこれらの酸を混合して用いることも可能である。トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸。
本発明にて使用可能な長鎖直鎖飽和アルコールはCnH2n+1OHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
例えば以下のものを挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。また、場合によっては混合して用いることも可能である。カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール。その中でも、ワックスの融点の面からミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。
本発明において、ワックスのけん化価は、160mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは160mgKOH/g以上230mgKOH/g以下である。けん化価が160mgKOH/g以上の場合は、トナー中へのワックスの分散性がより良好になる。
本発明において、ワックスの分子量は、1500以上2200以下であることが好ましく、より好ましくは1600以上2000以下である。ワックスの分子量が上記の範囲内であることにより、昇温、降温を繰り返すヒートサイクル環境下で耐熱保存した後の流動性を維持しやすい。また、定着時にワックスが染み出しやすく、低温での耐オフセット性を更に向上させることができる。
本発明において、ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対し2.0質量部以上8.0質量部以下が好ましい。ワックスの含有量が上記の範囲内であることにより、トナー保存時のワックスの染み出しが生じにくく、定着時には離型効果を良好に得ることで耐オフセット性を更に向上させることができる。
イエロー用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中での分散性の観点から選択される。該着色剤は、結着樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下添加して用いられることが好ましい。
黒色着色剤としてカーボンブラックを用いる場合も、結着樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下添加して用いることが好ましい。また、黒色着色剤として磁性粉体を用いる場合、その添加量は結着樹脂100質量部に対し、40質量部以上150質量部以下であることが好ましい。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。
本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有させてもよい。
荷電制御剤の配合量は、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。
の如き結晶性樹脂の融点よりも高い温度を一度も経ることがないことを意味する。ただし、結晶性樹脂を製造する時における加熱は考慮しない。
結晶性ポリエステルは、融点以上の加熱を行うと、結晶性が崩れやすい。従って、非加熱にてトナーの製造を行えば、トナーに含有される結晶性ポリエステルの結晶性を崩すことなく、結晶性を維持した結晶性ポリエステルを含有するトナーが得られる。
非加熱でのトナー製法としては、例えば、下記に示す溶解懸濁法が挙げられるが、本発明はこれに限定されるわけではない。具体的には、本発明のトナーに用いられるトナー粒子の一形態として、(i)結着樹脂、着色剤及びワックスを、有機溶媒中に溶解または分散させた溶解物または分散物を得る工程、(ii)溶解物または分散物を、樹脂微粒子を分散させた超臨界状態または液体状態の二酸化炭素を有する分散媒体中に分散させて分散体を得る工程、(iii)分散体から有機溶媒を除去することによってトナー粒子を形成する工程を経て製造されたものが含まれる。
上記結晶性ポリエステルを含有するトナーの製造においては、上記のように分散媒体として高圧状態の二酸化炭素を用いることができる。すなわち、トナーに使用する結着樹脂の溶解液を高圧状態の二酸化炭素中に分散させて造粒を行い、造粒後の粒子に含まれる有機溶媒を二酸化炭素の相に抽出して除去した後、圧力を開放することによって二酸化炭素を分離し、トナー粒子として得る方法である。本発明において好適に用いられる高圧状態の二酸化炭素とは、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素である。なお、分散媒体は高圧状態の二酸化炭素が主成分(50質量%以上)であることが好ましい。
ここで、液体の二酸化炭素とは、二酸化炭素の相図上における三重点(温度=−57℃、圧力=0.5MPa)と臨界点(温度=31℃、圧力=7.4MPa)を通る気液境界線、臨界温度の等温線、および固液境界線に囲まれた部分の温度、圧力条件にある二酸化炭素を表す。また、超臨界状態の二酸化炭素とは、上記二酸化炭素の臨界点以上の温度、圧力条件にある二酸化炭素を表す。
本発明において、分散媒体中には他の成分として有機溶媒が含まれていてもよい。この場合、二酸化炭素と有機溶媒とが均一相を形成することが好ましい。
この方法によれば、高圧下で造粒が行われるため、結晶性ポリエステルの結晶性を維持しやすいばかりでなく、より高めることも可能である点で特に好適である。
以下に、本発明のトナー粒子を得る上で好適な、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を分散媒体として用いるトナー粒子の製造法を例示して説明する。
まず、結着樹脂を溶解することのできる有機溶媒中に、結着樹脂、着色剤、ワックスおよび必要に応じて他の添加物を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機によって均一に溶解または分散させる。
本発明で用いる有機溶媒としては、結着樹脂を溶解できるものが好ましく、アセトン及びメチルエチルケトンの如きケトン系溶媒が好ましい。その中でも、アセトンを好ましく用いることができる。
前記結着樹脂はアセトン不溶分が1.0質量%以下であることが好ましい。アセトン不溶分が1.0質量%を超える場合、トナー作製時の粘度が高くなり、トナー粒度が大きくなったり、粒度分布が広くなりやすい。より好ましくは、0.5質量%以下である。
次に、こうして得られた溶解液あるいは分散液(以下、単に結着樹脂溶解液という)を、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素中に分散させて油滴を形成する。
このとき、分散媒体としての液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素中には、分散剤を分散させておくことが好ましい。分散剤としては、無機微粒子分散剤、有機微粒子分散剤、それらの混合物のいずれでもよく、目的に応じて単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記無機微粒子分散剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、チタニア、酸化カルシウムの如き無機微粒子が挙げられる。
上記有機微粒子分散剤としては、例えば、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹
脂、ポリカーボネート、セルロースおよびこれらの混合物の如き有機微粒子が挙げられる。
非晶性樹脂からなる有機樹脂微粒子を分散剤として使用すると、二酸化炭素が前記樹脂中に溶解して樹脂を可塑化させ、ガラス転移温度を低下させるため、造粒の際に粒子同士が凝集を起こしやすくなる。したがって、有機樹脂微粒子としては結晶性を有する樹脂を使用することが好ましく、非晶性樹脂を用いる場合は、架橋構造を導入することが好ましい。また非晶性樹脂粒子を結晶性樹脂で被覆した微粒子であってもよい。
上記分散剤は、そのまま用いてもよいが、造粒時における上記油滴表面への吸着性を向上させるため、各種処理によって表面改質したものを用いてもよい。具体的には、シラン系、チタネート系、アルミネート系の如きカップリング剤による表面処理や、各種界面活性剤による表面処理、ポリマーによるコーティング処理が挙げられる。
油滴の表面に吸着した分散剤は、トナー粒子形成後もそのまま残留するため、分散剤として樹脂微粒子を用いた場合には、樹脂微粒子で表面が被覆されたトナー粒子を形成することができる。
上記樹脂微粒子の粒径は、体積平均粒径で30nm以上、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは、50nm以上、100nm以下である。樹脂微粒子の粒径を上記の範囲内にすることによって、造粒時の油滴の安定性がより向上させることができる。
また、上記樹脂微粒子の配合量は、油滴の形成に使用する上記結着樹脂溶解液中の固形分100質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましく、油滴の安定性や所望する粒径に合わせて適宜調整することができる。
本発明において、上記分散剤を液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素中に分散させる方法は、如何なる方法を用いてもよい。具体例としては、上記分散剤と液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を容器内に仕込み、撹拌や超音波照射により直接分散させる方法が挙げられる。また、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を仕込んだ容器に、上記分散剤を有機溶媒に分散させた分散液を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。
また、本発明において、上記結着樹脂溶解液を液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素中に分散させる方法は、如何なる方法を用いてもよい。具体例としては、上記分散剤を分散させた状態の液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を入れた容器に、上記結着樹脂溶解液を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。また、上記結着樹脂溶解液を仕込んだ容器に、上記分散剤を分散させた状態の液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を導入してもよい。
本発明において、上記液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素による分散媒体は、単一相であることが好ましい。上記結着樹脂溶解液を液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素中に分散させて造粒を行う場合、油滴中の有機溶媒の一部は分散体中に移行する。このとき、二酸化炭素の相と有機溶媒の相が分離した状態で存在することは、油滴の安定性が損なわれる原因となり好ましくない。したがって、上記分散媒体の温度や圧力、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素に対する上記結着樹脂溶解液の量は、二酸化炭素と有機溶媒とが均一相を形成し得る範囲内に調整することが好ましい。
また、上記分散媒体の温度および圧力については、造粒性(油滴形成のし易さ)や上記結着樹脂溶解液中の構成成分の上記分散媒体への溶解性にも注意が必要である。例えば、上記結着樹脂溶解液中の結着樹脂やワックスは、温度条件や圧力条件によっては、上記分散媒体に溶解することがある。通常、低温、低圧になるほど上記成分の分散媒体への溶解性は抑制されるが、形成した油滴が凝集・合一を起こし易くなり、造粒性は低下する。一方、高温、高圧になるほど造粒性は向上するものの、上記成分が上記分散媒体に溶解し易くなる傾向を示す。
さらに、上記分散媒体の温度については、結晶性ポリエステル成分の結晶性が損なわれないよう、結晶性ポリエステルの融点よりも低い温度でなければならない。
したがって、トナー粒子の製造において、上記分散媒体の温度は10℃以上、結晶性ポリエステルの融点未満の温度範囲であることが好ましい。
また、上記分散媒体を形成する容器内の圧力は、1MPa以上、20MPa以下であることが好ましく、2MPa以上、15MPa以下であることがより好ましい。尚、本発明における圧力とは、分散媒体中に二酸化炭素以外の成分が含まれる場合には、その全圧を示す。
また、本発明における分散媒体中に占める二酸化炭素の割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
こうして造粒が完了した後、油滴中に残留している有機溶媒を、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素による分散媒体を介して除去する。具体的には、油滴が分散された上記分散媒体にさらに液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を混合して、残留する有機溶媒を二酸化炭素の相に抽出し、この有機溶媒を含む二酸化炭素を、さらに液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素で置換することによって行う。
上記分散媒体と上記液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素の混合は、上記分散媒体に、これよりも高圧の液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を加えてもよく、また、上記分散媒体を、これよりも低圧の液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素中に加えてもよい。
そして、有機溶媒を含む二酸化炭素をさらに液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素で置換する方法としては、容器内の圧力を一定に保ちつつ、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を流通させる方法が挙げられる。このとき、形成されるトナー粒子は、フィルターで補足しながら行う。
上記液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素による置換が十分でなく、分散媒体中に有機溶媒が残留した状態であると、得られたトナー粒子を回収するために容器を減圧する際、上記分散媒体中に溶解した有機溶媒が凝縮してトナー粒子が再溶解したり、トナー粒子同士が合一したりするといった不具合が生じる場合がある。したがって、上記液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素による置換は、有機溶媒が完全に除去されるまで行う必要がある。流通させる液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素の量は、上記分散媒体の体積に対して1倍以上、100倍以下が好ましく、さらに好ましくは1倍以上、50倍以下、最も好ましくは1倍以上、30倍以下である。
容器を減圧し、トナー粒子が分散した液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を含む分散体からトナー粒子を取り出す際は、一気に常温、常圧まで減圧してもよいが、独立に圧力制御された容器を多段に設けることによって段階的に減圧してもよい。減圧速度は、トナー粒子が発泡しない範囲で設定することが好ましい。
尚、本発明において使用する有機溶媒や、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素は、リサイクルすることが可能である。
更に本発明のトナーは、結晶性ポリエステルの融点よりも低い温度条件にて加熱処理する工程を経ることが好ましい。本発明では、以後、この熱処理をアニール処理と称する。一般に、結晶性樹脂は、アニール処理を施すことによって結晶性が高まることが知られている。その原理は以下のように考えられている。すなわち、結晶性材料にアニール処理を行うと、その熱によって高分子鎖の分子運動性がある程度高くなるために、高分子鎖がより安定な構造、すなわち規則的な結晶構造へと再配向することで、結晶化が起こるというものである。結晶性材料の融点以上の温度で処理した場合には、高分子鎖は再配向に必要なエネルギーよりも高いエネルギーを得ることになるため、再結晶化は起こらない。
したがって、本発明におけるアニール処理は、トナー中の結晶性ポリエステルの分子運動を可能な限り活発化させるため、結晶性ポリエステルの融点に対して、限られた温度範囲内で行うことが重要である。
本発明において、アニール処理の温度は、予め得られたトナー粒子の示差走査熱量(DSC)測定を行い、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークのピーク温度を求めた後、このピーク温度に応じて決めればよい。具体的には、昇温速度10.0℃/minの条件でDSC測定したときに求められるピーク温度から15℃差し引いた温度以上、5℃差し引いた温度以下で熱処理を行うことが好ましい。より好ましくは、上記ピーク温度から10℃差し引いた温度以上、5℃差し引いた温度以下の温度範囲である。
本発明において、アニール処理は、トナー粒子の形成工程後であれば、どの段階で行ってもよい。
また、アニール処理時間は、トナー中の結晶性ポリエステルの割合や種類、結晶状態によって適宜調整可能であるが、通常は1時間以上、50時間以下の範囲で行うことが好ましい。より好ましくは、2時間以上、24時間以下の範囲である。
ワックスを含有するトナーを用いる場合、結晶性ポリエステルとの相溶で、アニール速度が変わる場合がある。結晶性ポリエステルとワックスの相溶が小さい場合、結晶性ポリエステルの結晶化速度は速くなりやすく、製造面において相溶を抑えたワックスを用いることは有効である。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他の如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体であっても良い。無機微粉体は、トナーの流動性の改良及びトナーの帯電性の均一化のためにトナー粒子に外添されることが好ましい。無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることがより好ましい。
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で或いは併用して用いられても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイル処理された疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナーの帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上でよい。
上記無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上3.5質量部以下である。
本発明のトナーの重量平均粒径(D4)は、3.0μm以上、8.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは、5.0μm以上、7.0μm以下である。このような重量平均粒径(D4)のトナーを用いることは、ハンドリング性を良好にしつつ、ドットの再現性を十分に満足する上で好ましい。
更に、本発明のトナーの重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比D4/D1は1.25以下であることが好ましい。より好ましくは1.20以下である。
<トナー等の示差走査熱量(DSC)測定における最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)及び最大吸熱ピークの吸熱量(ΔH)の測定方法>
本発明におけるトナー等(トナー、結晶性ポリエステル、ブロックポリマーを含む)の最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
トナーを試料とする場合において、最大吸熱ピーク(結着樹脂由来の最大吸熱ピーク)がワックス及び結着樹脂以外の樹脂(例えば、コアシェル構造を有するトナーにおけるシェル相の樹脂)の吸熱ピークと重なっていない場合には、得られた最大吸熱ピークの吸熱量をそのまま結着樹脂に由来する最大吸熱ピークの吸熱量として扱う。一方、トナーを試料とする場合において、ワックス及び結着樹脂以外の樹脂の吸熱ピークが結着樹脂の最大吸熱ピークと重なっている場合は、ワックス及び結着樹脂以外の樹脂に由来する吸熱量を、得られた最大吸熱ピークの吸熱量から差し引く必要がある。
以下の方法により、ワックス及び結着樹脂以外の樹脂に由来する吸熱量を、得られた最大吸熱ピークの吸熱量から差し引き、結着樹脂に由来する最大吸熱ピークの吸熱量を得る。
まず、別途ワックス単体のDSC測定を行い、吸熱特性を求める。次いでトナー中のワックスの含有量を求める。トナー中のワックスの含有量の測定は、特に制限されないが、例えば、DSC測定におけるピーク分離や、公知の構造解析によって行うことができる。その後、トナー中のワックス含有量からワックスに起因する吸熱量を算出し、上記得られた最大吸熱ピークの吸熱量からこの分を差し引けばよい。ワックスが結着樹脂と相溶しやすい場合には、前記ワックスの含有量に相溶率を乗じた上でワックスに起因する吸熱量を算出して差し引いておく必要がある。相溶率は、結着樹脂とワックスとを(結着樹脂の質量:ワックスの質量)で100:6の比率で混合したものについて求めた吸熱量を、予め求めておいた前記結着樹脂の吸熱量とワックス単体の吸熱量から算出される理論吸熱量で除した値から算出する。
なお、結着樹脂以外の樹脂に由来する吸熱量についても前記のワックスと同様の方法によって求める。ここで、相溶率は、結着樹脂と結着樹脂以外とを(結着樹脂の質量:結着樹脂以外の樹脂の質量)で100:6の比率で混合したものについて求めた吸熱量を、予め求めておいた前記結着樹脂の吸熱量と結着樹脂以外の樹脂の吸熱量から算出される理論吸熱量で除した値から算出する。
また、測定においては、結着樹脂1g当りの吸熱量とするために、試料の質量から結着樹脂以外の成分の質量を除く必要がある。
結着樹脂以外の成分の含有量は、公知の分析手段によって測定することができる。分析が困難な場合には、トナーの焼却残灰分量を求め、それにワックス等の焼却される結着樹脂以外の成分の量を加えた量を結着樹脂以外の成分の含有量と見なして、トナーの質量から差し引くことによって求めることができる。
トナー中の焼却残灰分は以下の手順で求める。予め秤量した30mlの磁性るつぼに約2gのトナーを入れる。るつぼを電気炉に入れ、約900℃で約3時間加熱し、電気炉中で放冷し、常温下でデシケーター中に1時間以上放冷し、焼却残灰分を含むるつぼの質量を秤量し、るつぼの質量を差し引くことにより焼却残灰分を算出する。
なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことを意味する。また、最大吸熱ピークの吸熱量(ΔH)はピークの面積から装置付属の解析ソフトを用いて計算により求める。
<ワックスの示差走査熱量(DSC)測定における最大吸熱ピークのピーク温度(ワックスの融点)の測定方法>
ワックスの示差走査熱量(DSC)測定における最大吸熱ピークのピーク温度(ワックスの融点)は、示差走査熱量計であるDSC Q1000(TA Instruments社製)を用い、ASTM D3418−82に準じて測定した。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジ
ウムの融解熱を用いた。
具体的には、試料約2mgを精秤、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30乃至180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行った。尚、測定においては、一度180℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを示す温度をワックスの融点とした。このとき、上記最大吸熱ピークとは、ピークが複数存在する場合には、最も吸熱量の大きいピークをいう。
Tgの測定方法は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を用いて以下の条件にて測定を行う。
《測定条件》
・モジュレーションモード
・昇温速度:0.5℃/分
・モジュレーション温度振幅:±1.0℃/分
・測定開始温度:25℃
・測定終了温度:130℃
昇温速度を変えるときは、新しい測定サンプルを用意した。昇温は1度のみ行い、「Reversing Heat Frow」を縦軸にとることでDSCカーブを得、オンセット値をTgとした。
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
樹脂(ブロックポリマーを含む)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分を、THFを溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定する。測定条件は以下の通りである。
(1)測定試料の作製
樹脂(試料)とTHFとを5mg/mlの濃度で混合し、室温にて5乃至6時間放置した後、充分に振とうし、THFと試料を試料の合一体がなくなるまで良く混ぜた。更に、室温にて12時間以上静置した。この時、試料とTHFの混合開始時点から、静置終了の時点までの時間が24時間以上となる様にした。
その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45乃至0.5μm、マイショリディスクH−25−2[東ソー社製])を通過させたものをGPCの試料とする。
(2)試料の測定
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度に於けるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料濃度を5mg/mlに調整した樹脂のTHF試料溶液を200μl注入して測定する。
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure ChemicalCo.製或いは東洋ソーダ工業社製の、分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用いる。又、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
尚、カラムとしては、1×103乃至2×106の分子量領域を適確に測定する為に、市販のポリスチレンゲルカラムを下記のように複数組合せて用いた。本発明における、GPCの測定条件は以下の通りである。
[GPC測定条件]
装置:LC−GPC 150C(ウォーターズ社製)
カラム:KF801、802、803、804、805、806、807(ショウデックス製)の7連
カラム温度:40℃
移動相:THF(テトラヒドロフラン)
ブロックポリマーにおける結晶構造をとりうる部位の割合(質量%)の測定は、1H−NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :ブロックポリマー50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。得られた1H−NMRチャートより、結晶構造をとりうる部位の構成要素に帰属されるピークの中から、他の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。同様に、非晶性部位の構成要素に帰属されるピークの中から、他の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択しこのピークの積分値S2を算出する。結晶構造をとりうる部位の割合は、上記積分値S1および積分値S2を用いて、以下のようにして求める。尚、n1、n2は着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
結晶構造をとりうる部位の割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2))}×100
上記結晶構造をとりうる部位の割合(モル%)を各成分の分子量により質量%に換算する。
基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料を1乃至3g精秤し、重さをW(g)とする。
(2)300(ml)の三角フラスコに試料を入れ、0.5mol/lのKOHのエタノール溶液25mlを加える。
(3)三角フラスコに空気冷却器を取り付け、ときどき内容物を振り混ぜながら30分間水浴、砂浴又は熱板で穏やかに加熱して反応させる。加熱するときは還流するエタノールの環が空気冷却器の上端に達しないように加熱温度を調節する。
(4)反応が終わった後、直ちに冷却し、内容物が寒天状に固まらないうちに空気冷却器の上から少量の水、又はキシレン/エタノール(1/3)混合溶液を吹き付けてその内壁を洗浄した後、空気冷却器を外す。
(5)0.5mol/lの塩酸を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビューレットを用いての自動滴定が利用できる。)。
(6)この時の塩酸の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時の塩酸の使用量をB(ml)とする。
(7)次式によりけん化価を計算する。fは塩酸のファクターである。
けん化価(mgKOH/g)={(B−S)×f×28.05}/W
樹脂微粒子分散液中の樹脂微粒子およびワックス分散液中のワックス粒子の体積平均粒
径はマイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、粒径0.001μm乃至10μmのレンジ設定で測定を行い、体積平均粒径(μm又はnm)として測定する。
樹脂のウレタン結合濃度の測定は、1H−NMRを用いて行う。
1H−NMRの測定は、以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒としてCDCl3を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
得られた1H−NMRチャートより、用いている樹脂の構成単位の水素量比をもとめ、構成物のmol比を求める。
求めた、mol比と、分子量から1gあたりのウレタン結合を構成する構成単位の濃度を求め、これをウレタン結合の濃度〔mmol/g〕とする。
ブロックポリマーの貯蔵弾性率G’は、粘弾性測定装置(レオメーター)ARES(Rheometrics Scientific社製)を用いて測定を行う。測定の概略は、Rheometrics Scientific社製発行のARES操作マニュアル902−30004(1997年8月版)、902−00153(1993年7月版)に記載されているが、以下の通りである。
・測定治具:torsion rectangular
・測定試料:ブロックポリマーを、加圧成型機を用い幅約12mm、高さ約20mm、厚み約2.5mmの直方体型試料を作製する(常温で1分間15kNを維持する)。加圧成型機はNPaシステム社製100kNプレスNT−100Hを用いる。
治具及びサンプルを常温(23℃)に1時間放置した後、治具にサンプルを取り付ける。図4参照。図4のように、測定部の幅約12mm、厚さ約2.5mm、高さ10mmになるように固定する。測定開始温度30.00℃まで10分間かけて温度調節した後、下記設定で測定を行う。
・測定周波数 :6.28ラジアン/秒
・測定歪みの設定:初期値を0.1%に設定し、自動測定モードにて測定を行う
・試料の伸長補正:自動測定モードにて調整
・測定温度 :30℃から150℃まで毎分2℃の割合で昇温する
・測定間隔 :30秒おき、すなわち1℃おきに粘弾性データを測定する
Microsoft社製Windows2000(登録商標)上で動作するRSI Orchesrator(制御、データ収集および解析ソフト)(Rheometrics
Scientific社製)へ、インターフェースを通じてデータ転送する。
このうち、上記トナーの示査走査熱量(DSC)測定から求められる、結着樹脂に由来する最大吸熱ピークのピーク温度Tpより、25℃高い温度におけるブロックポリマーの貯蔵弾性率(G’(Tp+25))の値を読み取る。
<結晶性ポリエステル1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 136.2質量部
・1,4−ブタンジオール 63.8質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、更に2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステル1を合成した。結晶性ポリエステル1の物性を表1に示す。
<結晶性ポリエステル2の合成>
結晶性ポリエステル1の合成において、原料の仕込みを以下のように変えた以外は全て同様にして、結晶性ポリエステル2を合成した。結晶性ポリエステル2の物性を表1に示す。
・セバシン酸 75.9質量部
・アジピン酸 53.9質量部
・1,4−ブタンジオール 70.2質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル3の合成>
結晶性ポリエステル1の合成において、原料の仕込みを以下のように変えた以外は全て同様にして、結晶性ポリエステル3を合成した。結晶性ポリエステル3の物性を表1に示す。
・ドデカン二酸 116.5質量部
・1,10−デカンジオール 83.5質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル4の合成>
結晶性ポリエステル1の合成において、原料の仕込みを以下のように変えた以外は全て同様にして、結晶性ポリエステル4を合成した。結晶性ポリエステル4の物性を表1に示す。
・セバシン酸 105.0質量部
・アジピン酸 28.0質量部
・1,4−ブタンジオール 67.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル5の合成>
結晶性ポリエステル1の合成において、原料の仕込みを以下のように変えた以外は全て同様にして、結晶性ポリエステル5を合成した。結晶性ポリエステル5の物性を表1に示す。
・オクタデカン二酸 152.9質量部
・1,4−ブタンジオール 47.1質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル6の合成>
結晶性ポリエステル1の合成において、原料の仕込みを以下のように変えた以外は全て同様にして、結晶性ポリエステル6を合成した。結晶性ポリエステル6の物性を表1に示す。
・セバシン酸 111.7質量部
・アジピン酸 21.9質量部
・1,4−ブタンジオール 66.4質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル7の合成>
結晶性ポリエステル1の合成において、原料の仕込みを以下のように変えた以外は全て同様にして、結晶性ポリエステル7を合成した。結晶性ポリエステル7の物性を表1に示
す。
・テトラデカン二酸 134.0質量部
・1,6−ヘキサンジオール 66.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル8の合成>
結晶性ポリエステル1の合成において、原料の仕込みを以下のように変えた以外は全て同様にして、結晶性ポリエステル8を合成した。結晶性ポリエステル8の物性を表1に示す。
・セバシン酸 137.5質量部
・1,4−ブタンジオール 62.5質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
・結晶性ポリエステル1 210.0質量部
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 56.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 34.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 300.0質量部
撹拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。その後、ターシャリーブチルアルコール3.0質量部を添加し、イソシアネート末端を修飾した。溶媒であるTHFを留去し、ブロックポリマー1を得た。得られたブロックポリマーの物性を表2に示す。
<ブロックポリマー2乃至12の合成>
ブロックポリマー1の合成において、表2に示す材料、配合量に変更することによりブロックポリマー2乃至12を得た。得られたブロックポリマー2乃至12の物性を表2に示す。
撹拌装置のついたビーカーに、アセトンを100.0質量部、ブロックポリマー1を100.0質量部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで撹拌を続け、ブロックポリマー樹脂溶液1を調製した。同様にして、ブロックポリマー樹脂溶液2乃至12を調製した。
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 117.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 83.0質量部
・アセトン 200.0質量部
撹拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。その後、ターシャリーブチルアルコール3.0質量部を添加し、イソシアネート末端を修飾した。溶媒であるアセトンを留去し、非晶性樹脂1を得た。得られた非晶性樹脂1はMnが4,400、Mwが20,000であった。
・結晶性ポリエステル8 115.0質量部・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部・イオン交換水 180.0質量部
以上の各成分を混合し100℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行い、体積平均粒径が180nm、固形分量が38.3質量%の結晶性ポリエステル樹脂分散液1を得た。
・非晶性樹脂1 115.0質量部・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部・イオン交換水 180.0質量部
以上の各成分を混合し100℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行い、体積平均粒径が200nm、固形分量が38.3質量%の非晶性樹脂分散液1を得た。
滴下漏斗を備え、加熱乾燥した二口フラスコに、ノルマルヘキサン870質量部を仕込んだ。別のビーカーに、ノルマルヘキサン42質量部、ベヘニルアクリレート(炭素数22個の直鎖アルキル基を有するアルコールのアクリレート)52質量部、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.3質量部を仕込み、20℃にて攪拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下漏斗に導入した。反応容器を窒素置換した後、密閉下、40℃にて1時間かけて単量体溶液を滴下した。滴下終了から3時間攪拌を続け、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.3質量部およびノルマルヘキサン42質量部の混合物を再度滴下し、40℃にて3時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却し,体積平均粒径200nm、固形分量20質量%の樹脂微粒子分散液1を得た。なお、この樹脂微粒子分散液中の樹脂微粒子の最大吸熱ピークのピーク温度は66℃であった。
・ジペンタエリスリトールパルチミン酸エステルワックス(WAX−1)
16質量部・ニトリル基含有スチレンアクリル樹脂(スチレン60質量部、n−ブチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル10質量部、ピーク分子量8500)
8質量部・アセトン 76質量部
上記を撹拌羽根突きのガラスビーカー(IWAKIガラス製)に投入し、系内を50℃に加熱することでワックスをアセトンに溶解させた。ついで、系内を50rpmで緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25℃にまで冷却させ乳白色の液体を得た。この溶液を1mmのガラスビーズ20質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間の分散を行い、ワックス分散液−1を得た。
上記ワックス分散液−1中のワックス粒径は、体積平均粒径で0.15μmであった。得られたワックス分散液−1、および使用したワックス(WAX−1)の特性を表3に示す。
<ワックス分散液−2乃至12の調製>
ワックス分散液−1で用いたジペンタエリスリトールパルチミン酸エステルワックス(WAX−1)の代わりに、表3に示すワックス(WAX−2乃至12)を用いたこと以外はワックス分散液−1の調製と同様にしてワックス分散液−2乃至12を調製した。得られたワックス分散液−2乃至12、および使用したWAX−2乃至12の特性を表3に示す。
<ワックス分散液の調製−13>
・ジペンタエリスリトールベヘン酸エステルワックス(WAX−2)
30.0質量部・ニトリル基含有スチレンアクリル樹脂(スチレン60質量部、n−ブチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル10質量部、ピーク分子量8500)
15.0質量部・カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部・イオン交換水 200.0質量部
以上を混合し95℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散
後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が0.20μm、固形分量が20.0質量%のワックス分散液13を得た。
・C.I.ピグメントブルー15:3 100.0質量部・アセトン 150.0質量部・ガラスビーズ(1mm) 200.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、着色剤分散液1を得た。
<着色剤分散液2の調製>
・C.I.ピグメントブルー15:3 45.0質量部・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部・イオン交換水 200.0質量部・ガラスビーズ(1mm) 250.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、着色剤分散液2を得た。
個数平均粒径0.25μmのマグネタイト粉と、個数平均粒径0.60μmのヘマタイト粉に対して、夫々4.0質量%のシラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)を加え、容器内で、100℃以上で高速混合撹拌し、それぞれの微粒子を親油化処理した。
・フェノール 10質量部
・ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド40質量%、メタノール10質量%、水50質量%) 6質量部
・親油化処理したマグネタイト 63質量部
・親油化処理したヘマタイト 21質量部
上記材料と、28%アンモニア水5質量部、水10質量部をフラスコに入れ、攪拌、混合しながら30分間で85℃まで昇温・保持し、3時間重合反応させて硬化させた。その後、30℃まで冷却し、更に水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)、60℃で乾燥して、磁性体が分散された状態の球状の磁性樹脂粒子を得た。
コート樹脂として、メチルメタクリレートとパーフルオロアルキル基(CF3−(CF2)m− :m=7)を有するメチルメタクリレートの共重合体(共重合比8:1、重量平均分子量45,000)を用いた。該コート樹脂100質量部に、個数平均粒径290nmのメラミン粒子を10質量部、比抵抗1×10−2Ω・cmで個数平均粒径30nmのカーボン粒子を6質量部加え、超音波分散機で30分間分散させた。更に、コート樹脂分がキャリアコアに対し、2.5質量部となるようにメチルエチルケトン及びトルエンの混合溶媒コート溶液を作製した(溶液濃度10質量%)。
このコート溶液を、剪断応力を連続して加えながら溶媒を70℃で揮発させて、上記磁性樹脂粒子表面への樹脂コートを行った。この樹脂コートされた磁性キャリア粒子を100℃で2時間撹拌しながら熱処理し、冷却、解砕した後、200メッシュの篩で分級して個数平均粒径33μm、真比重3.53g/cm3、見かけ比重1.84g/cm3、磁化の強さ42Am2/kgのキャリアAを得た。
(トナー粒子(処理前)1の製造工程)
図1の実験装置において、まず、バルブV1、V2、および圧力調整バルブV3を閉じ、トナー粒子を捕捉するためのフィルターと撹拌機構とを備えた耐圧の造粒タンクT1に樹脂微粒子分散液1(表4では「樹脂微粒子−1」と記載)を仕込み、内部温度を30℃
に調整した。次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素(純度99.99%)を耐圧容器T1に導入し、内部圧力が5MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。
一方、樹脂溶解液タンクT2にブロックポリマー樹脂溶液1、ワックス分散液1、着色剤分散液1、アセトンを仕込み、内部温度を30℃に調整した。
次に、バルブV2を開き、造粒タンクT1の内部を2000rpmで撹拌しながら、ポンプP2を用いて樹脂溶解液タンクT2の内容物を造粒タンクT1内に導入し、すべて導入を終えたところでバルブV2を閉じた。
導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は8MPaとなった。
尚、各種材料の仕込み量(質量比)は、次の通りである。
・ブロックポリマー樹脂溶液1 175.0質量部
・ワックス分散液1 31.3質量部
(固形分として、WAX−1が5質量部、ニトリル基含有スチレンアクリル樹脂(表4では「分散剤−1」と記載)が2.5質量部)
・着色剤分散液1 12.5質量部
・アセトン 31.2質量部
・樹脂微粒子分散液1 25.0質量部
・二酸化炭素 280.0質量部
尚、導入した二酸化炭素の質量は、二酸化炭素の温度(30℃)、および圧力(8MPa)から、二酸化炭素の密度を文献(Journal of Physical andChemical Reference data、vol.25、P.1509〜1596)に記載の状態式より算出し、これに造粒タンクT1の体積を乗じることにより算出した。
樹脂溶解液タンクT2の内容物の造粒タンクT1への導入を終えた後、さらに、2000rpmで3分間撹拌して造粒を行った。
次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素を造粒タンクT1内に導入した。この際、圧力調整バルブV3を10MPaに設定し、造粒タンクT1の内部圧力を10MPaに保持しながら、さらに二酸化炭素を流通させた。この操作により、造粒後の液滴中から抽出された有機溶媒(主にアセトン)を含む二酸化炭素を、溶剤回収タンクT3に排出し、有機溶媒と二酸化炭素を分離した。
造粒タンクT1内への二酸化炭素の導入は、最初に造粒タンクT1に導入した二酸化炭素質量の5倍量に到達した時点で停止した。この時点で、有機溶媒を含む二酸化炭素を、有機溶媒を含まない二酸化炭素で置換する操作は完了した。
さらに、圧力調整バルブV3を少しずつ開き、造粒タンクT1の内部圧力を大気圧まで減圧することで、フィルターに捕捉されているトナー粒子(処理前)1を回収した。得られたトナー粒子(処理前)1のDSC測定を行い、結着樹脂に由来する最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)を求めたところ、58℃であった。
(アニール処理工程)
アニール処理は、恒温乾燥器(佐竹化学製41−S5)を用いて行った。恒温乾燥器の内部温度を50℃に調整した。
上記トナー粒子(処理前)1を、ステンレス製バットに均等になるように広げて入れ、これを前記恒温乾燥器に入れて2時間静置した後、取り出した。こうして、アニール処理されたトナー粒子(処理後)1を得た。
(トナー1の調製)
次に、上記トナー粒子(処理後)1の100.0質量部に対し、アナターゼ型酸化チタン微粉末(BET比表面積80m2/g、個数平均粒径(D1)15nm、イソブチルトリメトキシシラン12質量%処理)0.9質量部をまずヘンシェルミキサー FM−10B(三井三池化工機(株)製)により外添した。その後、さらにオイル処理シリカ微粒子(BET比表面積95m2/g、シリコーンオイル15質量%処理)1.2質量部、ゾルゲルシリカ微粒子(BET比表面積24m2/g、個数平均粒径(D1)110nm)1
.5質量部を同じヘンシェルミキサーにて混合し、トナー1を得た。得られたトナー1(処理後)のDSC測定を行い、結着樹脂に由来する最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)を求めたところ、61℃であった。トナー1の作製条件、及び、トナー1の特性を表4及び5に示す。また、以下に示す手順に従って行った評価の結果を表6に示す。
約10gのトナー1を100mlのポリカップに入れ、50℃で3日及び53℃で3日放置した後、目視で評価した。
(評価基準)
A:まったく凝集物は確認されず、初期とほぼ同様の状態。
B:若干、凝集気味であるが、ポリカップを軽く5回振る程度で崩れる状態であり、特に問題とならない。
C:凝集気味であるが、指でほぐすと簡単にほぐれる状態であり、実使用に耐えうる。
D:凝集が激しく発生。
E:固形化しており、使用できない。
約10gのトナー1を100mlのポリカップに入れ、50℃で1日放置後、50℃と53℃の間を1℃/時間の速度で変化させ、3日の間12サイクル行った後トナーを取り出し凝集を確認した。ヒートサイクル試験のタイムチャートを図2に示す。
(耐熱保存性の評価基準)
A:まったく凝集物は確認されず、初期とほぼ同様の状態。
B:若干、凝集気味であるが、ポリカップを軽く5回振る程度で崩れる状態であり、特に問題とならない。
C:凝集気味であるが、指でほぐすと簡単にほぐれる状態であり、実使用に耐えうる。
D:凝集が激しく発生。
E:固形化しており、使用できない。
<ヒートサイクル試験後の帯電維持性の評価>
上記ヒートサイクル試験を行っていないトナーを常温常湿環境下(温度23℃/湿度60%)に1日放置し、標準トナーとして用意した。上記ヒートサイクル試験を行ったトナーを200メッシュ(目開き75μm)の篩にかけ、常温常湿環境下(温度23℃/湿度60%)に1日放置し、サンプルトナーとした。
トナー及びキャリア(日本画像学会標準キャリア フェライトコアを表面処理した球形キャリア N−01)を蓋付きのプラスチックボトルにそれぞれ、1.0g、19.0g入れ、測定環境に1日放置する。トナーとキャリアとを入れたプラスチックボトルを振盪器(YS−LD、(株)ヤヨイ製)にセットし、1秒間に4往復のスピードで1分間振とうし、トナーとキャリアからなる現像剤を帯電させる。
次に、図3に示す摩擦帯電量を測定する装置において摩擦帯電量を測定する。図3において、底に500メッシュ(目開き25μm)のスクリーン3のある金属製の測定容器2に、前述した現像剤約0.5〜1.5gを入れ、金属製のフタ4をする。この時の測定容器2全体の質量を秤りW1(g)とする。次に吸引機1(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口7から吸引し風量調節弁6を調整して真空計5の圧力を250mmAqとする。この状態で2分間吸引を行い、トナーを吸引除去する。この時の電位計9の電位をV(ボルト)とする。ここで、8はコンデンサーであり容量をC(mF)とする。また、吸引後の測定容器全体の質量を秤りW2(g)とする。この試料の摩擦帯電量(mC/kg)は下式の如く算出される。
試料の摩擦帯電量(mC/kg)=C×V/(W1−W2)
(帯電維持性の評価基準)
A:サンプルトナーの帯電量と標準トナーの帯電量との差が5%未満。
B:サンプルトナーの帯電量と標準トナーの帯電量との差が5%以上10%未満。
C:サンプルトナーの帯電量と標準トナーの帯電量との差が10%以上20%未満。
D:サンプルトナーの帯電量と標準トナーの帯電量との差が20%以上。
E:サンプルトナーが凝集、固形化しており、帯電評価できない。
当該評価は、トナー粒子を構成するコアの低分子量成分やワックスの染み出しの状態を評価するものである。
トナーの低温定着性は、剥離性による定着開始温度とコールドオフセット性による定着開始温度の2種類の方法で評価した
<剥離性による定着開始温度の評価>
上記トナー1を8.0質量部と上記のように製造されたキャリアA 92.0質量部を混合してなる二成分現像剤1を調製した。
評価には上記二成分現像剤1、カラーレーザー複写機CLC5000(キヤノン社製)を用いた。紙上のトナー載り量を1.2mg/cm2になるように上記複写機の現像コントラストを調整し、単色モードで、先端余白5mm、幅100mm、長さ28mmの、「べた」の未定着画像を常温常湿度環境下(23℃/60%RH)で作成した。紙は、厚紙A4用紙(「プローバーボンド紙」:105g/m2、フォックスリバー社製)を用いた。
次に、LBP5900(キヤノン社製)の定着器を手動で定着温度設定が可能となるように改造し、定着器の回転速度を270mm/s、ニップ内圧力:120kPaに変更した。該改造定着器を用い、常温常湿度環境下(23℃/60%RH)で、80℃から180℃の範囲で10℃ずつ定着温度を上昇させながら、上記「べた」の未定着画像の各温度における定着画像を得た。
得られた定着画像の画像領域に、柔和な薄紙(商品名「ダスパー」、小津産業社製)を被せ、該薄紙の上から4.9kPaの荷重をかけつつ5往復、該画像領域を摺擦した。摺擦前と摺擦後の画像濃度をそれぞれ測定して、下記式により剥離による画像濃度の低下率ΔD(%)を算出した。このΔD(%)が10%未満のときの温度を剥離性による定着開始温度とし、以下のような評価基準で評価した。
尚、画像濃度はカラー反射濃度計(Color reflection densitometer X−Rite 404A:製造元 X−Rite社製)で測定した。
(式):ΔD(%)={(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度}×100
(評価基準)
A:定着開始温度が100℃以下
B:定着開始温度が110℃
C:定着開始温度が120℃
D:定着開始温度が130℃
E:定着開始温度が140℃以上
尚、本発明においてはCランクまでを良好な低温定着性と判断した。
<コールドオフセット(C.O.)性による定着開始温度の評価>
上記剥離性による定着開始温度の評価で得られた定着画像を用いて、コールドオフセットの評価を行った。評価は、「べた」画像の周方向末端から定着ベルト1周分後方の白地になる部位で濃度変化を確認した。測定は東京電色技術センター製DENSITOMETER TC−6DSを用い、反射率(%)を、測定し、濃度の値とした。濃度が0.5%変化したところをコールドオフセット発生点とし、コールドオフセットが発生しなかった最低温度をコールドオフセット性による定着開始温度とした。
(評価基準)
A:定着開始温度が100℃以下
B:定着開始温度が110℃
C:定着開始温度が120℃
D:定着開始温度が130℃
E:定着開始温度が140℃以上
尚、本発明においてはCランクまでを良好なコールドオフセット性と判断した。
上記低温定着性の評価より、紙を普通紙A4用紙(「オフィスプランナー」:64g/m2、キヤノン製)に変更して定着性の評価を行った。定着後の画像より、目視にて定着器2周目に、前周期の高温オフセットトナーが見られた点を高温オフセット開始温度と判断し、高温オフセット開始温度より低い温度の最高温度を高温定着温度と判断した。なお、180℃まで高温オフセットが発生しなかったものに関しては、180℃を高温定着温度とした。
上記剥離性による定着開始温度と、コールドオフセット性による定着開始温度の高い方を定着開始温度とし、定着開始温度と高温定着温度の差(高温定着温度−定着開始温度)を定着領域とし、以下の判断を行った。
(評価基準)
A:定着領域が70℃以上
B:定着領域が60℃
C:定着領域が50℃
D:定着領域が40℃
E:定着領域が30℃以下
(トナー粒子(処理前)2の製造工程)
・結晶性ポリエステル樹脂分散液1 159.7質量部
・非晶性樹脂分散液1 68.6質量部
・着色剤分散液2 27.8質量部
・ワックス分散液13 41.7質量部
・ポリ塩化アルミニウム 0.41質量部
以上の各成分を丸型ステンレス製フラスコ中に入れ、ウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した。次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.36質量部を加え、ウルトラタラックスT50で分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら47℃まで加熱し、この温度で60分間保持した後、ここに非晶性樹脂分散液1、13.0質量部を緩やかに追加した。その後、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを5.4にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら96℃まで加熱し、5時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水3Lに再分散し、300rpmで15分間撹拌・洗浄した。これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.0になったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続し、トナー粒子(処理前)2を得た。得られたトナー粒子2のDSC測定での結着樹脂に由来する最大吸熱ピークのピーク温度は58℃であった。
(アニール処理工程)
アニール処理は、恒温乾燥器(佐竹化学製41−S5)を用いて行った。恒温乾燥器の内部温度を50℃に調整した。
上記トナー粒子(処理前)2を、ステンレス製バットに均等になるように広げて入れ、これを前記恒温乾燥器に入れて2時間静置した後、取り出した。こうして、アニール処理されたトナー粒子(処理後)2を得た。
(トナー2の調製)
次に、上記トナー粒子(処理後)2について、実施例1のトナーの調製1と同様の操作を行い、トナー2を得た。得られたトナー2(処理後)のDSC測定を行い、結着樹脂に
由来する最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)を求めたところ、61℃であった。トナー2の作製条件、及び、トナー2の特性を表4及び5に示す。また、実施例1と同様の方法にて評価した結果を表6に示す。
トナー粒子(処理前)1の製造工程におけるブロックポリマーおよびワックスを表4に示すように、ブロックポリマー樹脂溶液およびワックス分散液を選択する以外は、実施例1と同様に行い、トナー3乃至7を得た。トナーの作製条件、及び、トナーの特性を表4及び5に、評価結果を表6に示す。
トナー粒子(処理前)1の製造工程におけるブロックポリマーおよびワックスを表4に示すブロックポリマーおよびワックスになるように、ブロックポリマー樹脂溶液およびワックス分散液を選択する以外は、実施例1と同様に行いトナー8乃至30を得た。トナーの作製条件、及び、トナーの特性を表4及び5に、評価結果を表6に示す。
なお、実施例3、5、11及び14に係るトナー9、11、17及び20では、トナーの吸熱量曲線において、結着樹脂に由来する最大吸熱ピークにワックスの吸熱ピークが重なっていた。そのため、最大吸熱ピークの吸熱量からワックスの吸熱量を差し引いたものを結着樹脂に由来する最大吸熱ピークの吸熱量として各値を求めた。また、実施例に係るトナー1、2、5、11〜15、17〜28及び30では、トナーの吸熱量曲線において、結着樹脂に由来する最大吸熱ピークにトナーの樹脂微粒子によって形成されたシェル相の樹脂の吸熱ピークが重なっていた。そのため、最大吸熱ピークの吸熱量からシェル相の樹脂の吸熱量を差し引いたものを結着樹脂に由来する最大吸熱ピークの吸熱量として各値を求めた。
これら以外の例においては、トナーの吸熱量曲線における最大吸熱ピークをそのまま結着樹脂に由来する最大吸熱ピークとして各値を求めた。
T3:溶剤回収タンク、B1:二酸化炭素ボンベ、P1、P2:ポンプ、V1、V2:バルブ、V3:圧力調整バルブ
Claims (10)
- ポリエステルを主成分にする結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記結着樹脂は、結晶構造をとりうる部位と結晶構造をとりえない部位を結合したブロックポリマーを含有し、
前記トナーの示差走査熱量(DSC)測定から求められる、前記結着樹脂に由来する最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上、80℃以下であり、前記最大吸熱ピークの吸熱量が30J/g以上、100J/g以下であり、
前記ワックスは、3官能以上のエステルワックスであることを特徴とするトナー。 - 前記ワックスの示差走査熱量(DSC)測定における最大吸熱ピークのピーク温度は65℃以上であり、けん化価が160mgKOH/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
- 前記ワックスは、分子量が1500以上、2200以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
- 前記ワックスは、6官能以上のエステルワックスであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記ワックスは、ジペンタエリスリトールと長鎖直鎖飽和脂肪酸とをエステル結合させて得られるエステルワックスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対し2.0質量部以上8.0質量部以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記ブロックポリマーの結晶構造をとりうる部位は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを反応して得られる結晶性ポリエステルであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記ブロックポリマーの結晶性構造をとりえない部位は、ジオールとジイソシアネートを反応して得られるポリウレタンであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記ブロックポリマーは、結晶構造をとりうる部位を前記結着樹脂の全量に対し50質量%以上、85質量%以下含有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記トナー粒子は、
(i)前記結着樹脂、前記着色剤及び前記ワックスを、有機溶媒中に溶解または分散させた溶解物または分散物を得る工程、
(ii)該溶解物または該分散物を、樹脂微粒子を分散させた超臨界状態または液体状態の二酸化炭素を有する分散媒体中に分散させて分散体を得る工程、
(iii)該分散体から該有機溶媒を除去することによってトナー粒子を形成する工程
を経て製造されたものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のトナー。
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