JP2010192841A - 導電性基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリイミドなどの基材上に、好ましくは銅配線などパターン状の金属微粒子焼結膜を形成し、基材との密着性が高く、優れた導電性を有する導電性基板を提供すること。
【解決手段】基材上に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成し、該印刷層を焼成処理して金属微粒子焼結膜を形成してなる導電性基板であって、前記金属微粒子焼結膜おけるX線回折により測定した結晶子径が25nm以上であり、かつ前記金属微粒子焼結膜の断面の空隙率が1%以下である導電性基板及びその製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、導電性基板に関し、さらに詳しくは、基材上に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成し、該印刷層を焼成処理して金属微粒子焼結膜を形成してなる導電性基板及び該導電性基板の製造方法に関する。
従来から、フレキシブルプリント配線板などとして、ポリイミド樹脂で形成される基材上に回路パターンが形成されたものが用いられている。このような回路パターンを形成する方法としては、金属箔を貼り合せた基材上にフォトレジスト等を塗布し、所望の回路パターンを露光し、ケミカルエッチングによりパターンを形成する方法が用いられてきた。この方法では、導電性の配線として金属箔を用いることができるため、体積抵抗率が小さく、高性能の導電性基板を製造することができるが、このようなリソグラフィー技術を用いる該方法は工程数が多く、煩雑であるとともに、フォトレジスト材料を要するなどの欠点がある。
また、ポリイミドなどの基材に、銅などによって直接回路を形成する場合には、密着させることが困難であり、従来は、基材と回路の界面に密着性を付与する層を形成したり、被着面を荒らして密着性を向上させる方法がとられてきた。しかしながら、密着層を形成すると導電性や絶縁性が低下するという問題があり、被着面を荒らす方法では、被着界面の凹凸による導電性の低下といった問題があった。
これに対し、ポリイミド樹脂にアルカリ水溶液を塗布し、ポリイミド樹脂のイミド環を開裂してカルボキシル基を生成させ、これに金属イオン含有溶液を接触させて金属塩を生成させ、還元反応により金属薄膜を得る技術が提案されている(特許文献1、特許請求の範囲参照)。そして、金属はポリイミド樹脂の表層部内に埋包された状態となり、アンカーロッキング効果によって、密着性の高い薄膜を得ている(特許文献1、段落0049参照)。
しかしながら、この方法では、ポリイミドに銅がマイグレートしているため、配線が短絡したり、界面の凹凸が大きいために、電気信頼性が低下するという問題がある。
また、絶縁基板上に形成された絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層に形成された金属薄膜層とからなる積層体で、絶縁樹脂層と金属薄膜層の接触界面に金属酸化物が存在する積層体が提案されている(特許文献2、特許請求の範囲参照)。特許文献2によれば、金属酸化物が絶縁樹脂層と金属薄膜層の接着強度を増大させるとされている(特許文献2、段落0020参照)。
しかしながら、特許文献2に開示される積層体では、金属酸化物層、特に酸化銅の層は強酸に弱く、電解銅メッキ法によって配線を厚膜化する際に、金属酸化物層が溶解し、密着性が低下することが予想される。
特開2005−45236号公報 特開2008−200875号公報
本発明は、このような状況下になされたもので、ポリイミドなどの基材上に、銅配線などの金属微粒子焼結膜を形成してなり、金属微粒子焼結膜と基材との密着性が高く、優れた導電性を有する導電性基板及び該導電性基板の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基板に金属等の微粒子を印刷し、粒子どうしを焼結させて、薄膜を形成する技術を用いることで、基材に直接金属薄膜を形成し得ることが可能であることを見出した。一方で、この技術を用いても、基材と金属薄膜の界面の密着性が低下するという課題があり、その原因が焼結と同時に粒子同士の凝集による粒成長が起こり、基板界面との間で空隙が生じるためであることを発見した。この空隙が生じる点について、さらに検討した結果、粒子同士の凝集による粒成長が起こる前に短時間に焼結させ、X線回折の結果から得られる結晶子径を25nm以上に成長させることで、膜中や基材界面に空隙が生じないような構造が形成され、基材と金属薄膜の界面が平滑で、かつ、高い密着性が得られることを見出した。また、金属薄膜中には、有機物などが残存しない方が、より高い密着性が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、基材上に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成し、該印刷層を焼成処理して金属微粒子焼結膜を形成してなる導電性基板であって、前記金属微粒子焼結膜おけるX線回折により測定した結晶子径が25nm以上であり、かつ前記金属微粒子焼結膜の断面の空隙率が1%以下である導電性基板、
を提供するものである。
本発明によれば、ポリイミドなどの基材上に、銅配線などパターン状の金属微粒子焼結膜を形成してなり、基材との密着性が高く、優れた導電性を有する導電性基板を提供することができる。
実施例1にかかる本発明の導電性基板の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例2にかかる導電性基板の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1にかかる本発明の導電性基板のX線構造回折の結果である。 実施例1にかかる本発明の導電性基板のイオンエッチング深さ方向の元素分析を行った結果である。 比較例2にて製造した導電性基板のX線構造回折の結果である。
まず、本発明の導電性基板は、基材上に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成し、該印刷層を焼成処理して金属微粒子焼結膜を形成してなる。
(基材)
本発明において用いる基材としては、導電性基板に用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、高歪点ガラス、石英ガラス等のガラス基板、アルミナ、シリカなどのセラミックス基板等の無機材料を用いることができ、さらに高分子材料、紙などを用いることもできる。
また、本発明では後に詳述するように、金属又は金属酸化物微粒子が低温かつ短時間で焼結されて導電性薄膜が形成されるため、基材に損傷を与えることが少なく、高歪点ガラスなど耐熱性の高い特殊なガラスを使わなくてもよく、耐熱性の低い通常のソーダライムガラス等であっても使用することができる。さらには、プラスチックなどの高分子材料も基材とすることができ、特にポリイミドなどの樹脂フィルムを用いることができる点で非常に有用である。
基材として用い得る高分子材料としては、用途に応じて種々のものを挙げることができるが、融点200℃以上のものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、ガラス−エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテルなどを使用することができる。これらのうち、耐熱性、機械強度、電気絶縁性、耐薬品性などの点から、ポリイミド樹脂が好ましい。
本発明の導電性基板において、ポリイミド基材に対しても、金属微粒子焼結膜の密着性が良好である理由は定かではないが、ポリイミド表面にわずかに存在するカルボキシル基など極性の強い官能基と、本発明のような特異な構造を持つ金属微粒子焼結膜が、界面でイオン結合などの化学的な相互作用をしているためと考えられる。
基材の厚さについては特に制限はないが、基材が無機材料である場合には、通常0.1〜10mm程度、好ましくは0.5〜5mmである。
一方、プラスチック基材の場合には、通常10〜300μmの範囲である。10μm以上であると、導電層を形成する際に基材の変形が抑制され、形成される導電層の形状安定性の点で好適である。また、300μm以下であると巻き取り加工を連続して行う場合に、柔軟性の点で好適である。
(金属又は金属酸化物微粒子)
金属の種類としては、導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムなどの貴金属;銅、ニッケル、スズ、鉄、クロムなどの卑金属が挙げられる。
これらのうち、高い導電性を有し、かつ微粒子を容易に維持できる点から、金、銀、銅、及びニッケルが好ましく、導電性、経済性、耐マイグレーション性などを加味すると、銅が好ましい。
これらの金属は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して、又は合金化して使用してもよい。また、金属酸化物としては、酸化銀、酸化第一銅、酸化第二銅又はこれらの混合物などが好適に挙げられる。これらのうち、特に銅の化合物が好ましく、とりわけ、銅の酸化物(酸化第一銅、酸化第二銅又はこれらの混合物)が好適である。
なお、ここで金属酸化物には、金属の表面が酸化された態様も含み、本発明においては、表面が酸化された銅が好ましい。
上記金属微粒子及び金属酸化物微粒子の調製方法としては種々の方法があるが、メカノケミカル法などによる金属粉を粉砕して得る物理的な方法;CVD法や蒸着法、スパッタ法、熱プラズマ法、レーザー法のような化学的な乾式法;熱分解法、化学還元法、電気分解法、超音波法、レーザーアブレーション法、超臨界流体法、マイクロ波合成法等による化学的な湿式法と呼ばれる方法で作製できる。
得られた微粒子は、分散液とするために、微粒子にポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子やグラフト共重合高分子のような保護剤、界面活性剤、金属と相互作用するようなチオール基やアミノ基、水酸基、カルボキシル基を有する化合物で被覆することが好ましい。また、合成法によっては、原料の熱分解物や金属酸化物が粒子表面を保護し、分散性に寄与する場合もある。熱分解法や化学還元法などの湿式法で作製した場合は、還元剤などがそのまま微粒子の保護剤として作用することがある。
また、分散液の分散安定性を高めるために、微粒子の表面処理を行ったり、高分子、イオン性化合物、界面活性剤等からなる分散剤を添加してもよい。
上記微粒子の平均一次粒子径は1〜200nmの範囲であることが好ましい。平均一次粒子径が1nm以上であると分散液の分散安定性が良好であり、導電性薄膜を形成した際の導電性が良好となる。一方、平均一次粒子径が200nm以下であると融点が低く維持され、十分な焼結が可能であり、高い導電性が得られる。以上の観点から、微粒子の平均一次粒子径は1〜100nmの範囲が好ましく、1〜70nmの範囲がさらに好ましく、2〜50nmの範囲が特に好ましい。ここで、分散液中の微粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察像から測定される。
なお、これらの微粒子は、単結晶からなる微粒子であっても、より小さい結晶子が複数集まった多結晶微粒子であってもよい。
微粒子の分散液(塗布液)を構成し、上記微粒子を分散させる分散媒としては、水及び/又は有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)などのエーテル類;ヘキサン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素などが挙げられる。
さらに、造膜性を高めること、印刷適性を付与すること、及び分散性を高めることを目的として、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、あるいはウレタン樹脂等を樹脂バインダーとして分散液に添加してもよい。また、必要に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、あるいは安定剤等を添加してもよい。
本発明の微粒子分散液は、固形分濃度が5〜60質量%の範囲が好ましい。固形分濃度が5質量%以上であると十分な導電性が得られ、60質量%以下であると、粘度が十分に低く、基材への微粒子分散液の印刷が容易である。以上の観点から、微粒子分散液中の固形分濃度は10〜50質量%の範囲がより好ましい。
基材上に微粒子分散液を印刷する方法としては特に制限されず、グラビア印刷、スクリーン印刷、スプレーコート、スピンコート、コンマコート、バーコート、ナイフコート、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷などの方法を用いることができる。これらのうち、微細なパターニングを行うことができるという観点から、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、及びインクジェット印刷が好ましい。
また、本発明では、基材上に微粒子分散液を所望のパターンに直接印刷することができるため、従来のフォトレジストを用いた手法に比較して、著しく生産性を向上させることができる。
基材上の微粒子分散液は印刷後、通常の方法で乾燥を行ってもよい。具体的には、例えば、通常のオーブン等を用いて、80〜140℃程度の温度で0.1〜20分程度加熱して乾燥させる。乾燥後の印刷部分の膜厚は用途等に応じ、適宜塗布量や微粒子の平均一次粒子径等を変化させて制御することができるが、通常、0.01〜100μmの範囲、好ましくは0.1〜50μmの範囲である。
(焼成処理)
次に、本発明における焼成は、金属又は金属化合物微粒子が融着して、導電性薄膜を形成することができる方法であれば特に制限はなく、例えば、焼成炉で行ってもよいし、プラズマ、加熱触媒、紫外線、真空紫外線、電子線、赤外線ランプアニール、フラッシュランプアニール、レーザーなどを用いてもよい。これらの焼成は、不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で行うのが、金属微粒子焼結膜の導電性の観点から好ましい。
これらの焼成処理は、短時間に行われるのが好ましく、昇温速度は100℃/分以上、好ましくは200℃/分以上で行うのがよい。焼成反応にかかる時間は、5分以内、さらには2分以内とすることが好ましく、粒成長を抑制することができる。
また、金属微粒子が卑金属又は酸化物を含む場合は、還元性を持つ活性種を発生させる方法が好ましい。さらに、基材が樹脂や低耐熱基材である場合には、基材の熱ダメージを防ぐために、微粒子を塗布層の表層から加熱する方法を用いるのが好ましい。
上記のような焼成方法のうち、特に、マイクロ波エネルギーの印加により発生する表面波プラズマ(以下「マイクロ波表面波プラズマ」と称することがある。)による焼成処理は、基材への熱ダメージが少なく、大面積の処理が可能で、短時間の焼成処理が可能である。
本発明においては、マイクロ波表面波プラズマに晒すことにより焼成処理して、金属微粒子焼結膜、特にはパターン状の金属微粒子焼結膜からなる導電層を形成することが好ましい。
なお、表面波プラズマの処理の前に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷した印刷層に含まれる分散剤等の有機物を除去するために、大気下または酸素を含む雰囲気下、200〜500℃程度の温度で10分から2時間程度加熱することが好ましい。この加熱により、有機物が酸化分解除去される。
<表面波プラズマの発生方法>
前記表面波プラズマの発生方法に特に制限はなく、例えば減圧状態の焼成処理室の照射窓からマイクロ波エネルギーを供給し、該焼成処理室内に照射窓に沿う表面波プラズマを発生させる無電極プラズマ発生手段を用いることができる。
前記プラズマ発生手段としては、例えば焼成処理室の照射窓から周波数2450MHzのマイクロ波エネルギーを供給し、該処理室内に、電子温度が約1eV以下、電子密度が約1×1011〜1×1013cm-3のマイクロ波表面波プラズマを発生させることができる。
なお、マイクロ波エネルギーは、一般に周波数が300MHz〜3000GHzの電磁波であるが、例えば、2450MHzの電磁波が用いられる。この際、マイクロ波発振装置であるマグネトロンの精度誤差などのために2450MHz/±50MHzの周波数範囲を持っている。
このようなマイクロ波表面波プラズマは、プラズマ密度が高く、電子温度が低い特性を有し、前記印刷層を低温かつ短時間で焼成処理することが可能であり、緻密かつ平滑な金属微粒子焼結膜からなる導電層を形成することができる。表面波プラズマは、処理面に対して、面内で均一の密度のプラズマが照射される。その結果、他の焼成方式と比べて、面内で部分的に粒子の焼結が進行するなど、不均一な膜が形成されることが少なく、また粒成長を防ぐことができるため、非常に緻密で、平滑な膜が得られる。また、面内処理室内に電極を設ける必要がないので、電極由来の不純物のコンタミネーションを防ぐことができ、また処理材料に対して異常な放電によるダメージを防ぐことができる。さらに、プラスチック基材を用いる場合には、該基材のダメージが少ない。
また、マイクロ波表面波プラズマは、例えばポリイミドのような樹脂基材に対する金属微粒子焼結膜の密着性を高めるのに好ましい。この理由としては、マイクロ波表面波プラズマは、金属微粒子焼結膜との界面で水酸基やカルボキシル基などの極性官能基を発生させやすいためと推測される。
本発明においては、マイクロ波表面波プラズマを、還元性気体の雰囲気、好ましくは水素ガス雰囲気下で発生させる。これにより、金属微粒子表面に存在する絶縁性の酸化物が還元除去され、導電性能の良好な導電層が形成される。
このように、還元性気体の雰囲気下で、マイクロ波表面波プラズマを発生させ、前記印刷層を焼成処理することにより、金属微粒子表面に存在する酸化物が還元除去されるので、本発明においては、金属微粒子として、表面が酸化されている粒子や、内部まで酸化されている粒子を用いることができる。
なお、還元性雰囲気を形成する還元性気体としては、水素、一酸化炭素、アンモニアなどのガス、あるいはこれらの混合ガスが挙げられるが、特に、副生成物が少ない点で水素ガスが好ましい。
また、還元性気体には、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガスを混合して用いれば、プラズマが発生し易くなるなどの効果がある。
このように、マイクロ波表面波プラズマにより、焼成処理されて形成された金属微粒子焼結膜は、厚みが50nm〜2μm程度、好ましくは100〜1000nmである。
本発明の導電性基板は、X線回折により測定した結晶子径が25nm以上であることを特徴とする。結晶子径が25nm以上であると、基材と金属微粒子焼結膜との高い密着性が得られる。さらに高い密着性を得るとの観点から、X線回折により測定した結晶子径が28nm以上であることが好ましい。結晶子径の上限値については、特に制限はないが、通常100nm程度である。
X線回折測定の方法としては、薄膜X線回折装置を用いて、X線回折ピークを得る。得られた結果から、最も強度の強い結晶面のピークに関し、シェラーの式(D=kλ/βcosθ、D;結晶子径(nm)、k;定数、ここでは0.9を用いる、λ;X線波長(CuKα線)0.154nm、β;ピーク半値幅(rad))を用いて結晶子径を算出する。
また、金属微粒子焼結膜が銅の場合、上記方法で得たX線回折パターンにおいて、(111)面のピーク面積が、(200)面のピーク面積の2倍以上であることが好ましい。このピーク面積の比が2倍以上であると基材との密着性の点で好ましい。以上の観点から、該比率は2.2倍以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の導電性基板においては、金属微粒子焼結膜の断面の空隙率が1%以下であることが特徴である。該空隙率が1%以下であると、金属微粒子焼結膜と基材との密着性が高い。以上の点から、該空隙率は0.5%以下であることが好ましい。
この空隙率は、走査型電子顕微鏡を用いて金属微粒子焼結膜の断面観察を行い、得られた画像を画像処理によって黒色の部分を空隙とし、空隙部の面積比から算出する。なお、空隙率は、基材を除く金属微粒子焼結膜から算出し、基材と金属微粒子焼結膜の界面の空隙は、金属微粒子焼結膜の方に含める。
また、金属微粒子焼結膜内部の、X線光電子分光法により測定した炭素含有量が5%未満であることが好ましい。該炭素量が5%未満であると、焼結膜の緻密性、及び導電性の点で有利である。以上の観点から、該炭素量は1%未満であることがさらに好ましい。
該炭素量の測定は、X線光電子分光装置を用い、金属微粒子焼結膜をエッチングしながら、炭素の元素分析を行うものである。金属微粒子焼結膜と基材の界面までエッチングを行い、得られる全元素量中の炭素の相対量(%)で表す。
本発明の導電性基板は、基材上に密着性よく設けられた導電層、好適にはパターン状の導電層を有し、信頼性及び導電性の良好な基板である。すなわち、該導電層を構成する金属微粒子焼結膜は基材上に直接、密着しており、基材との間に異種金属層又は金属酸化物層を有さないため、導電性や絶縁性が低下することがない。また、基材の表面が平滑であるため、金属微粒子焼結膜との界面に凹凸がなく、導電性が低下することがない。
このような、本発明の導電性基板を用いた電子部材は、例えばプリント配線板、多層プリント配線板、フレキシブルプリント配線板などに有効に利用することができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
この例で得られた導電性基板について、以下の方法によって評価した。
1.表面抵抗
表面抵抗計((株)ダイアインスツルメンツ製「ロレスタGP」)を用いて、4探針法にて表面抵抗を測定し、膜厚から体積抵抗率を算出した。
2.走査型電子顕微鏡観察
(株)日立ハイテクノロジー製の走査型電子顕微鏡(SEM)「S−4800」を用い、加速電圧1〜5kVで観察した。ミクロトームを用いて試料を切断し、任意の5箇所について、幅1μmの範囲において、断面観察を10万倍の倍率で行った。画像処理によって、金属膜に占める空隙部の面積比を算出し、5箇所の平均値を空隙率とした。また、SEM写真から、基材の損傷の有無を観察し、また金属微粒子焼結膜の膜厚を測定した。
3.金属微粒子焼結膜の結晶子径
薄膜X線回折装置((株)リガク製「ATX−E」)を用いて、X線回折測定を行った。X線源としてはCuKα線(波長λ;0.154nm)を用い、測定角度(2θ)を20〜100度とした。得られた結果から、シェラーの式に基づいて結晶子径を算出した。
4.金属微粒子焼結膜中の元素分析
X線光電子分光装置((株)島津製作所製「ESCA−3400」)を用い、イオンエッチング深さ方向の元素分析を行った。エッチング条件は以下の通りであり、金属元素が検出されなくなるまでエッチングを行った。
使用ガス;アルゴン、加速電圧;0.1kV、エミッション電流;30mA
金属元素成分量が50%となる点を、金属微粒子焼結膜と基材との界面として、表面と界面からそれぞれ10%の部分を除いた金属微粒子焼結膜内部の炭素原子の相対量を求めた(図4参照)。
5.密着性(碁盤目剥離試験)
金属微粒子焼結膜側の表面を、1mm間隔の縦横10区分の碁盤目状にカッターで切り、粘着性テープ(ニチバン(株)製「セロテープ(登録商標)」、幅24mm)を貼った後に剥がし、升目の剥がれの程度で評価した。剥がれの表記方法としては、100個の碁盤目の剥がれが全くない場合を100/100と表記し、90個が残り10個が剥がれた場合を90/100、100個の碁盤目のすべてが剥がれた場合は0/100と表記した。
実施例1
平均1次粒子径が5nmの銅ナノ粒子トルエン分散液(アルバックマテリアル(株)製固形分30質量%)を、厚さ75μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトン200H」)に、スピンコート法により塗布し、自然乾燥させた。その後、銅微粒子を塗布した基板を、有機成分を除去するために大気下で、あらかじめ300℃で、30分間焼成した。
続いて、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子(株)製)により処理を行った。プラズマ処理は、水素ガスを用い、水素導入圧力20Pa、水素流量100sccmとし、マイクロ波出力1000Wで、昇温開始から30秒間プラズマ処理を行った。昇温速度は約400℃/minで、到達温度は230℃とした。
得られた銅ナノ粒子焼結膜について、上記方法により評価した結果を第1表に示す。
図1は、実施例1の導電性基板の断面の走査型電子顕微鏡写真(以下「SEM写真1」)である。該SEM写真1から明らかなように、実施例1の導電性基板は、金属微粒子焼結膜の厚さが約300nmであり、基材に損傷がないことがわかる。また、該SEM写真から算出した空隙率は0.1%以下であった。
また、図3は実施例1の導電性基板のX線構造回折の結果であり、横軸は測定角度(2θ)、縦軸はX線検出強度(cps)を意味する。この結果から、金属微粒子焼結膜における結晶子径は、41.2nmと算出された。
次に、図4は、実施例1の導電性基板のイオンエッチング深さ方向の元素分析を行った結果である。炭素含有量は0.5%であった。
実施例2
マイクロ波出力800W、昇温速度は約320℃/minで、到達温度は190℃としたこと以外は実施例1と同様とした。得られた銅ナノ粒子焼結膜について、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
実施例3
マイクロ波出力600W、昇温速度は約250℃/minで、到達温度は150℃としたこと以外は実施例1と同様とした。得られた銅ナノ粒子焼結膜について、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1において、マイクロ波表面波プラズマによる焼成処理に代えて、高周波プラズマ装置(ED−350特型、キヤノンアネルバエンジニアリング(株)製)を用いて焼成したこと以外は、実施例1と同様にして銅ナノ粒子焼結膜を得た。焼成の具体的方法としては、水素導入圧力10Pa、水素ガス流量100sccm、出力300W、昇温速度は約100℃/minで、到達温度は120℃とし、120℃到達後、3分間処理を行った。得られた銅ナノ粒子焼結膜について、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1において、マイクロ波表面波プラズマによる焼成処理に代えて、電気炉(ネムス(株)製)を用いて焼成したこと以外は実施例1と同様にして銅ナノ粒子焼結膜を得た。焼成の具体的方法としては、水素4%、アルゴン96%の還元雰囲気下、10℃/minで300℃まで昇温後30分保持し、その後自然冷却した。
得られた銅ナノ粒子焼結膜について、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。また、図2に断面の走査型電子顕微鏡写真(以下「SEM写真2」)及び図5にX線構造回折の結果を示す。
図5の結果から、金属微粒子焼結膜における結晶子径は、23.9nmと算出された。
また、該SEM写真2から明らかなように、比較例2の導電性基板は、金属微粒子焼結膜の厚さが約500nmであり、基材に損傷がないことがわかる。しかしながら、SEM写真1と比較することで明らかなように、空隙が多く見られ、該SEM写真2から算出した空隙率は11.1%と算出された。
Figure 2010192841
本発明の導電性基板は、基材と金属微粒子焼結膜との密着性が高く、かつ導電性に優れる。また、直接、基材に回路パターンを印刷法により形成することができる。したがって、該導電性基板は、プリント配線板、多層プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、電磁波シールドなどに有効に利用される。

Claims (16)

  1. 基材上に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成し、該印刷層を焼成処理して金属微粒子焼結膜を形成してなる導電性基板であって、前記金属微粒子焼結膜おけるX線回折により測定した結晶子径が25nm以上であり、かつ前記金属微粒子焼結膜の断面の空隙率が1%以下である導電性基板。
  2. 前記金属微粒子焼結膜内部の、X線光電子分光法により測定した炭素含有量が5%未満である請求項1に記載の導電性基板。
  3. 前記金属又は金属酸化物が、銅、酸化銅、及び表面が酸化された銅から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の導電性基板。
  4. X線回折パターンにおいて、(111)面のピーク面積が、(200)面のピーク面積の2倍以上である請求項3に記載の導電性基板。
  5. 前記金属微粒子焼結膜と基材の間に、異種金属層又は金属酸化物層を有さない請求項1〜4のいずれかに記載の導電性基板。
  6. 前記基材がポリイミド樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性基板。
  7. 前記焼成が、不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で行われる請求項1〜6のいずれかに記載の導電性基板。
  8. 前記焼成が、マイクロ波エネルギーの印加により発生する表面波プラズマにより行われる請求項1〜7のいずれかに記載の導電性基板。
  9. 基材上に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成する工程、該印刷層を焼成処理して金属微粒子焼結膜を形成する工程を有する導電性基板の製造方法であって、金属微粒子焼結膜おけるX線回折により測定した結晶子径が25nm以上であり、かつ金属微粒子焼結膜の断面の空隙率が1%以下である導電性基板の製造方法。
  10. 前記金属微粒子焼結膜内部の、X線光電子分光法により測定した炭素含有量が5%未満である請求項9に記載の導電性基板の製造方法。
  11. 前記金属又は金属酸化物が、銅、酸化銅、及び表面が酸化された銅から選ばれる少なくとも1種である請求項9又は10に記載の導電性基板の製造方法。
  12. X線回折パターンにおいて、(111)面のピーク面積が、(200)面のピーク面積の2倍以上である請求項11に記載の導電性基板の製造方法。
  13. 前記金属微粒子焼結膜と基材の間に、異種金属層又は金属酸化物層を有さない請求項9〜12のいずれかに記載の導電性基板の製造方法。
  14. 前記基材がポリイミド樹脂である請求項9〜13のいずれかに記載の導電性基板の製造方法。
  15. 前記焼成が、不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で行われる請求項9〜14のいずれかに記載の導電性基板の製造方法。
  16. 前記焼成が、マイクロ波エネルギーの印加により発生する表面波プラズマにより行われる請求項9〜15のいずれかに記載の導電性基板の製造方法。
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