JP5151622B2 - 導電性基板の製造方法及び導電性基板 - Google Patents
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Description
しかしながら、この方法では導電性材料として金属微粒子を用いるために、粒子間の界面での電気抵抗が問題であり、金属箔なみの導電性を達成するためには、金属微粒子を数百度の温度で焼結させることが必要である。ところが、数百度の温度での焼結を必要とすると、金属微粒子を分散させた塗料を塗布する基材が制限され、例えば、歪点が600℃程度の通常のガラスやPET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチックフィルムからなる基材を用いることは困難となる。
このような金属微粒子を分散させた塗料でパターンを直接基材に印刷する方法においては、得られる金属薄膜の基材に対する密着性が低いという問題点がある。これは、金属微粒子が焼結する際に、微粒子を被覆する保護層や金属微粒子を分散させるための分散剤に由来する有機成分が除去されることで、基材と金属微粒子との密着性が低下するためと考えられる。このような問題を解決するために、基材と金属微粒子の焼結層との間に別途密着層を形成させることが提案されている(特許文献1及び2参照)。
特許文献1に開示される技術は、絶縁基板上に非熱可塑性ポリイミド系樹脂と非熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体とからなる層を形成させておき、その上に一次粒子径が200nm以下の金属微粒子分散体を回路形状に付与し、加熱によって、前駆体をポリイミド系樹脂に転化させるとともに、金属微粒子を融着させて金属配線回路を形成するものである(特許文献1、特許請求の範囲参照)。
また、特許文献2に開示される技術は、基板の表面に金属微粒子を含む液体材料を配置し、所定のパターンの導電性配線を形成する際に、それに先立って基板の表面を液体材料に対して撥液性に制御し、その上に導電性配線の密着力を高めるための中間層を形成する導電性配線の形成方法である(特許文献2、特許請求の範囲参照)。
また、特許文献2で提案される方法は、中間層としてMn、Cr、Ni、Ti、Mg、Si、Vなどの微粒子を含む液体材料を用いることで、基材と導電膜配線の密着性を向上させようとするものであり、製造コストが大幅に増大するという問題点がある。
本発明は、このような状況下、基材として耐熱性の低い材料を用いることができ、実用上十分な導電性を有し、基材と導電性薄膜との密着性が高く、平滑性が良好であり、かつコスト的にも有利な導電性基板の製造方法及び該製造方法により得られる導電性基板を提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、基材上に導電性薄膜を有する導電性基板の製造方法であって、親水化処理されている基材にアゾール基を官能基として有するシランカップリング剤を塗布する工程、金属又は金属化合物の微粒子の分散液を印刷する工程、及び焼成する工程を有する導電性基板の製造方法であって、前記分散液中の金属又は金属化合物の微粒子の平均一次粒子径が1〜100nmである導電性基板の製造方法、及び該製造方法により得られる導電性基板を提供するものである。
本発明において用いる基材としては、導電性基板に用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、高歪点ガラス、石英ガラス等のガラス、アルミナ、シリカなどの無機材料を用いることができ、さらに高分子材料などを用いることもできる。また、本発明では後に詳述するように、金属又は金属化合物の微粒子が低温で焼結されて導電性薄膜が形成されるため、基材に損傷を与えることがなく、高歪点ガラスなど耐熱性の高い特殊なガラスを使わなくてもよく、耐熱性の低い通常のソーダライムガラス等であっても使用することができる。さらには、プラスチックなどの高分子材料も基材とすることができ、特に樹脂フィルムを用いることができる点で非常に有用である。
これらのうち、耐熱性、耐化学薬品性、電気絶縁性などの観点から、ポリイミドを用いることが好ましい。ポリイミドとしては、市販品として、カプトン(東レ・デュポン(株)製)、アピカル((株)カネカ製)、ユーピレックス(宇部興産(株)製)などが挙げられる。
本発明におけるシランカップリング剤としては、銅などの金属と錯体を形成する官能基であるアゾール基を含有することが特徴である。アゾール基としては、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、セレナゾール基、ピラゾール基、イソオキサゾール基、イソチアゾール基、トリアゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、テトラゾール基、オキサトリアゾール基、チアトリアゾール基、ベンダゾール基、インダゾール基、ベンズイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基などが挙げられ、これらのうち、銅との親和力の高さなどの点からイミダゾール基が好ましい。なお、イミダゾール基を官能基として有する市販品としては、日鉱金属(株)製のイミダゾールシランである「IS−1000」、「IM−1000」、「IS−1000D」及び「SP−10」などのシリーズが挙げられる。
親水化処理は、例えばポリイミドフィルムの場合であれば、イミド環の開裂が起こり、該開裂部分にカルボキシル基、水酸基等の親水性官能基を生成させるものである。
親水化処理の具体的方法としては、低圧プラズマ処理、常圧プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、エキシマランプ照射処理などのドライプロセス;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミン等によるアルカリ処理などのウェットプロセスが挙げられる。これらのうち、常圧プラズマ処理や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミン等によるアルカリ処理が処理効率の観点から好ましい。
金属の種類としては、導電性を有するものであれば特に制限されるものではないが、高い導電性を有し、かつ微粒子を容易に維持できる点から、金、銀、銅、ニッケル、及びスズが好ましく、さらには金、銀、銅、及びニッケルが好ましく、導電性及び経済性を加味すると、銅及び銀が好ましい。これらの金属は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して、又は合金化して使用してもよい。また、金属化合物としては金属酸化物、金属水酸化物などが挙げられる。具体的には、銀の化合物としては、酸化銀、有機銀化合物等が好ましく、銅の化合物としては、酸化第一銅、酸化第二銅又はこれらの混合物などが好適に挙げられる。これらのうち、特に銅の化合物が好ましく、とりわけ、銅の酸化物(酸化第一銅、酸化第二銅又はこれらの混合物)が好適である。
得られた微粒子は、分散液とするために、微粒子にポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子やグラフト共重合高分子のような保護剤、界面活性剤、金属と相互作用するようなチオール基やアミノ基、水酸基、カルボキシル基を有する化合物で被覆することが好ましい。また、合成法によっては、原料の熱分解物や金属酸化物が粒子表面を保護し、分散性に寄与する場合もある。熱分解法や化学還元法などの湿式法で作製した場合は、還元剤などがそのまま微粒子の保護剤として作用することがある。
また、分散液の分散安定性を高めるために、微粒子の表面処理を行ったり、高分子、イオン性化合物、界面活性剤等からなる分散剤を添加してもよい。
また、本発明では、基材上に微粒子分散液を所望のパターンに直接印刷することができるため、従来のフォトレジストを用いた手法に比較して、著しく生産性を向上させることができる。
プラズマ処理に好適に用いられる還元性気体としては、水素、一酸化炭素、アンモニアの他、メタノール、エタノール等のアルコール蒸気等が挙げられる。使用の簡便性の点で水素が好ましく用いられる。還元性気体を含む気体のプラズマ処理には、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスや、窒素ガス等のガスとの混合気体を用いたプラズマも包含される。
プラズマ処理は微粒子分散液の内部に過剰の熱を付与しないため、基材へのダメージを抑制することができ、樹脂フィルム等の耐熱性の低い基材を用いることを可能とする。
また、還元性気体を含む気体のプラズマ処理を用いることで、酸化しやすい銅であっても焼結することができ、また酸化銅を還元しつつ焼結させることができる。
プラズマの生起は、高周波電力を電極に印加し、電力量を100〜5000Wとして、所望のプラズマ密度を得る。プラズマ雰囲気中は、プラズマによる温度上昇もあるが、通常、20〜300℃の範囲、好ましくは20〜200℃の範囲に制御する。プラズマ処理の時間に関しては、プラズマ密度、雰囲気温度等との関係で、本発明の効果を奏する範囲で適宜決定されるものであるが、通常、10秒〜10分の範囲であり、30秒〜5分の範囲がより好ましい。
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた導電性基板について、以下の方法によって評価した。
1.基材の損傷
焼成後の基材の損傷を目視にて観察した。
2.体積抵抗率
低抵抗率計(ダイアインスツルメンツ社製「ロレスタGP」)を用いて、4探針法にて測定した。
3.密着性
導電性基板の導電性薄膜側表面を、1ミリ間隔の縦横10区分の碁盤目状にカッターで切り、粘着性テープ(ニチバン(株)社製「セロテープ(登録商標)No.405(商品名)」幅24mm)を貼った後に剥がし、枡目の剥がれの程度で評価した。剥がれの表記方法としては、100個の碁盤目の剥がれが全くない場合を100/100と表現し、90個が残り10個剥がれた場合を90/100、100個の碁盤目のすべてが剥がれた場合を0/100と表現した。
基材として、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトンH」)を用い、これを40℃に加熱した1Mの水酸化ナトリウム溶液中に10分間浸漬させることで、ポリイミドフィルム表面を親水化させた(親水化処理)。該ポリイミドフィルムの表面を水洗した後、イミダゾールシラン(日鉱金属(株)製「IS−1000」)の0.1質量%メタノール溶液中に10分間浸漬させた後、110℃で90分間乾燥させた(カップリング処理)。このようにしてシランカップリング剤を塗布したポリイミドフィルムの該表面に、透過型電子顕微鏡による観察像から測定された平均一次粒子径が5nmの銅微粒子トルエン分散液(アルバックマテリアル(株)製)をスピンコート法により印刷した。銅微粒子を塗布した基板を、有機成分を除去するために大気下であらかじめ300℃で焼成し、その後、水素ガスを含む高周波プラズマにより焼成処理を行った。高周波プラズマによる処理は、13.56MHzの高周波電源と、真空チャンバー内に平板電極型プラズマ発生部を備える装置により行った。銅微粒子を塗布した基板を、真空チャンバー内に設置して、約1×10-3Paまで減圧し、約30Paとなるまで、水素ガスを流量100mL/minで供給し、該圧力を維持したまま高周波電力を印加して400秒間の処理を行った後、基板を取り出した。取り出した基板の断面を走査型顕微鏡で観察したところ銅微粒子膜の厚みは0.3μmであった。上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、高周波プラズマによる焼成処理に代えて、電気炉を用い、水素4%、アルゴン96%の還元雰囲気下、300℃で30分間焼成したこと以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。導電性基板の断面を走査型顕微鏡で観察したところ銅微粒子膜の厚みは0.4μmであった。上記方法で評価した結果を第1表に示す。
実施例2において、親水化処理の方法を常圧プラズマ表面処理装置(積水化学工業(株)製)を用いたこと以外は実施例2と同様にして導電性基板を作製した。常圧プラズマによる親水化処理は、電圧185V、周波数30Hz、電極ギャップ1mm、ステージ搬送速度200mm/minとし、窒素ガスにより処理を行った。導電性基板の断面を走査型顕微鏡で観察したところ銅微粒子膜の厚みは0.4μmであった。上記方法で評価した結果を第1表に示す。
実施例2において、親水化処理及びカップリング処理のいずれも行わなかったこと以外は実施例2と同様にして導電性基板を作製した。導電性基板の断面を走査型顕微鏡で観察したところ銅微粒子膜の厚みは0.3μmであった。上記方法で評価した結果を第1表に示す。
実施例2において、カップリング剤として、イミダゾールシランに代えて、エポキシ系シランカップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM−403」)を用いたこと以外は実施例2と同様にして導電性基板を作製した。導電性基板の断面を走査型顕微鏡で観察したところ銅微粒子膜の厚みは0.4μmであった。上記方法で評価した結果を第1表に示す。
Claims (13)
- 基材上に導電性薄膜を有する導電性基板の製造方法であって、親水化処理されている基材にアゾール基を官能基として有するシランカップリング剤を塗布する工程、金属又は金属化合物の微粒子の分散液を印刷する工程、及び焼成する工程を有する導電性基板の製造方法であって、前記分散液中の金属又は金属化合物の微粒子の平均一次粒子径が1〜100nmである導電性基板の製造方法。
- 前記親水化処理がアルカリ処理である請求項1に記載の導電性基板の製造方法。
- 前記アゾール基がイミダゾール基である請求項1又は2に記載の導電性基板の製造方法。
- 前記焼成が金属又は金属化合物微粒子への選択加熱である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性基板の製造方法。
- 前記選択加熱が、還元性気体を含む気体のプラズマに晒すことによって行う請求項4に記載の導電性基板の製造方法。
- 前記還元性気体が水素である請求項5に記載の導電性基板の製造方法。
- 前記焼成が還元雰囲気の焼成炉で行われる請求項1〜3のいずれかに記載の導電性基板の製造方法。
- 基材上に金属又は金属化合物の微粒子の分散液を所望のパターンに印刷してなる請求項1〜7のいずれかに記載の導電性基板の製造方法。
- 前記金属又は金属化合物における金属の種類が金、銀、銅、ニッケル及びスズから選ばれる1種以上である請求項1〜8のいずれかに記載の導電性基板の製造方法。
- 前記金属又は金属化合物が銅又は銅化合物である請求項9に記載の導電性基板の製造方法。
- 前記基材が高分子材料である請求項1〜10のいずれかに記載の導電性基板の製造方法。
- 前記基材がポリイミドフィルムである請求項11に記載の導電性基板の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法により得られる導電性基板。
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