JP2019151117A - 積層体、それを用いた導電性基材の製造方法、電子デバイスの製造方法、および転写具 - Google Patents

積層体、それを用いた導電性基材の製造方法、電子デバイスの製造方法、および転写具 Download PDF

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Abstract

【課題】箔切れ性、転写性に優れ、導電性の良好な多孔性導電層を転写可能な積層体の提供。【解決手段】基材2と、基材2上に形成された多孔性導電層3と、多孔性導電層3上に形成された感圧接着層4とを有する積層体。【選択図】図1

Description

本発明は、多孔性導電層を有する積層体、それを用いた導電性基材の製造方法、電子デバイスの製造方法、および上記導電性基材の製造方法に用いられる転写具に関するものである。
従来、基材上に導電層や加飾層として金属層を形成する方法としては、例えば転写シートを用いる方法が知られている(特許文献1〜5参照)。
特許文献1には、基材上に保護層、金属蒸着層および接着層が積層された金属蒸着層転写シートを用いたアンテナ端子部の形成方法が提案されている。特許文献1のような金属蒸着層の場合、金属蒸着層の下地層には耐熱性が求められる。そのため、基材としてPETフィルムのような安価な汎用プラスチックフィルムを用いる場合、耐熱性が低いため、製膜プロセスや金属種、膜厚等が制限されるという問題があり、基材上に保護層等を形成することで耐熱性を確保している。一方、基材としてポリイミドフィルムやPENフィルム、ガラスフィルムのような耐熱性の高い基材を用いることもできるが、これらの基材は高価であり、剥離除去される転写シートの基材に適しているとはいえない。
特許文献2には、基材である剥離シートと、剥離シート上に設けられた絶縁体層と、絶縁体層に接して配置された金属箔とを有し、金属箔が剥離シートに対して絶縁体層との間に生じる静電気の引力によって付着されている転写用金属箔シートが提案されている。特許文献2のような金属箔の場合、基材との密着性が低いという問題があり、基材上に絶縁体層等の樹脂層を形成することで密着性を確保している。
特許文献3には、樹脂フィルムと、樹脂フィルムの表面に接着剤を介して設けられた金属箔と、金属箔上に塗着された熱硬化性接着剤とを有する熱転写用フィルムを用い、さらに凸状のヒューズ素子のパターンを有する転写用金型を用いて、絶縁基板上に熱硬化性接着剤を介して金属箔を転写用金型のヒューズ素子のパターン形状に転写する金属箔ヒューズの製造法が提案されている。この場合も、樹脂フィルムの表面に接着剤を介して金属箔を設けることで樹脂フィルムおよび金属箔の密着性を確保している。
ところで、転写シートには、箔切れ性も要求される。しかしながら、金属蒸着層や金属箔には延性があるため、転写時にバリが発生し、箔切れ性が悪いという問題がある。また、金属蒸着層では、結晶粒が大きく成長する場合があり、その場合には当然に箔切れ性が悪くなる。なお、箔切れ性を良くするために、転写シートを凹凸を有する金型に挟み、ストレスをかけて切断してから転写を行う方法も提案されているが、工程が煩雑になる。
また、一般に金属は熱伝導率が高いため、金属蒸着層や金属箔では熱が拡散しやすく、転写に要するエネルギーが大きくなる傾向があり、転写シートの形状が歪むおそれがある。
また、転写シートを被転写体に転写する際には、金属蒸着層や金属箔と被転写体とを接着させるために、例えば接着層として熱可塑性樹脂等のヒートシール剤を用いる場合、熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱する。この際、被転写体と金属蒸着層または金属箔との密着力が、基材と金属蒸着層または金属箔との密着力よりも大きくなることで、熱転写が実現する。この場合、ヒートシール剤のみで上記の密着力を調整するには限界があるため、被転写体と金属蒸着層または金属箔との密着力を、基材と金属蒸着層または金属箔との密着力よりも大きくするために、例えば金属蒸着層や金属箔の接着層との接触面を荒らす等、微細な凹凸を形成することが提案されているが、工程が煩雑になる。
特許文献4には、基材であるドナー基板上に光吸収層および金属ナノ粒子層が積層されたドナーエレメントを用い、ドナーエレメントおよび受理基板を接触して配置し、ドナーエレメント側からレーザーを照射して金属ナノ粒子層をアニールし、転写することによって、受理基板上に電気導体のパターンを形成する方法が提案されている。しかしながら、この方法では電導材料として金属ナノ粒子を用いるために、粒子間の界面での電気抵抗が問題であり、所望の導電性を達成するためには、金属ナノ粒子を高温でアニールすることが必要である。そのため、基材はレーザーアニールの高熱に耐える必要があり、基材が制限され、安価な汎用プラスチックフィルムを用いることは困難となる。また、剥離除去される基材として耐熱性の高い高価な基材を用いなければならず、コスト高になる。
一方、特許文献5には、基材上に金属超微粒子相互の焼結体層が形成された転写シートを用いて、表面に接着層が形成された被転写基板上に金属超微粒子相互の焼結体層からなる配線パターンを形成する方法が提案されている。この方法では、金属超微粒子を用いることで、比較的低温であっても焼結することができる。
しかしながら、金属超微粒子は酸化されることで導電性が低下する場合があり、被転写基板に金属超微粒子相互の焼結体層を転写する際に、導電性が低下するおそれがある。
このように、転写シートを用いた金属層の形成方法においては転写工程が煩雑であり、また、転写時の加熱による金属層の導電性の低下、転写シートの歪みの発生が懸念されている。そこで、良好な導電性を示す金属層を簡単な方法で形成可能な転写シートが求められている。
転写シートに関する発明ではないが、特許文献6においては、転写具を用いて、テープ状の接着剤を加熱することにより回路基板に配置する発明が開示されている。また、特許文献6には上記接着剤に導電粒子を分散させることにより、複数の回路基板を貼り合わせた際、配線同士を導通させることが開示されている。しかしながら、特許文献6の接着剤は抵抗が高く、被転写体に転写して配線等の導電層として用いることは困難である。
また、転写シートに関する発明ではないが、特許文献7には、修正テープに用いられる転写具において、修正テープにかえて異方性導電性テープを適用することにより、回路基板上に異方性導電膜を形成する発明が開示されている。しかしながら、特許文献7における異方性導電膜は、例えば、一対の回路基板同士を異方性導電膜を介して熱圧着することにより導電性が発現するものであり、回路基板上に形成された異方性導電膜そのものを回路基板における配線等の導電層として用いることは困難である。
したがって、特許文献6、7については、転写具を用いて導電層のパターンを形成することについては一切開示されていない。
特開2007−324641号公報 特開平7−101198号公報 特開平5−314888号公報 特表2008−541481号公報 特開2004−247572号公報 特開2004−210524号公報 特開2009−238676号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、箔切れ性、転写性に優れ、導電性の良好な多孔性導電層を転写可能な積層体、これを用いた導電性基材の製造方法および電子デバイスの製造方法、ならびに上記導電性基材の製造方法に用いられる転写具を提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、基材と、上記基材上に形成された多孔性導電層と、上記多孔性導電層上に形成された感圧接着層とを有することを特徴とする積層体を提供する。
本発明においては、多孔性導電層の孔の内部に、感圧接着層に含まれる樹脂を入り込ませることができる。そのため、多孔性導電層および感圧接着層の密着性を高めることができ、優れた転写性を得ることができる。
また、本発明において、感圧接着層としては感圧接着剤を用いることができるため、被転写基材上に積層体を転写するに際しては、加熱を必要とせず、多孔性導電層の酸化による導電性の低下や積層体の歪み等を抑制することができる。
また本発明においては、多孔性導電層を有するため、脆性が付与され、良好な箔切れ性、解像性を得ることができる。また、多孔性導電層は金属粒子を低温で焼結して形成することができるため、基材に損傷を与えることが少なく、耐熱性の高い基材を用いる必要はなく、耐熱性の低い基材も使用することができる。
また、本発明の積層体を用いることにより、導電性基材を容易に作製することができる。
上記発明においては、上記基材が樹脂基材であることが好ましい。上述したように、本発明においては耐熱性の低い基材も使用することができ、安価な汎用プラスチックの樹脂基材を用いることができる点で非常に有用である。
上記発明においては、上記多孔性導電層が、金属を含有することが好ましい。金属粒子を用いて、より低温で焼結して多孔性導電層を形成することができるからである。
上記発明においては、上記基材と上記多孔性導電層との間に保護層が形成されていてもよい。転写後は保護層により多孔性導電層を保護することができる。また、絶縁性を有する保護層とすることにより、多孔性導電層を絶縁することができる。
上記発明においては、上記積層体の形態が帯状であることが好ましい。被転写基材上に感圧接着層および多孔性導電層のパターンを容易に形成することができるからである。
本発明は、上述の積層体を準備する準備工程と、被転写基材上に上記積層体の感圧接着層および多孔性導電層を加圧して転写する転写工程とを有することを特徴とする導電性基材の製造方法を提供する。
本発明においては、上述の積層体を用いるため、箔切れ性、解像性、転写性に優れている。また、転写後も導電性の良好な多孔性導電層を得ることができる。さらに、導電性基材を容易に作製することができる。
上記発明においては、上記転写工程では、帯状の上記積層体を用いて上記被転写基材上に上記感圧接着層および上記多孔性導電層のパターンを加圧して転写することが好ましい。被転写基材用に多孔性導電層のパターンを有する導電性基材を容易に作製することができる。
上記発明においては、上記転写工程では、上記積層体の上記感圧接着層および上記多孔性導電層を上記被転写基材上に加圧して転写することにより、第1感圧接着層および第1多孔性導電層ならびに第2感圧接着層および第2多孔性導電層が積層された積層部を形成し、さらに、上記積層部に対して加熱処理および加圧処理の少なくともいずれかの処理することにより、上記第1多孔性導電層および第2多孔性導電層を電気的に接続させる接続工程を有していてもよい。上記記積層部において加圧された領域の第1多孔性導電層および第2多孔性導電層を電気的に接続することができるため、導電性基材における積層された多孔性導電層同士を容易な方法で導通させることができる。
本発明は、上述の導電性基材の製造方法により、導電性基材を作製する導電性基材作製工程を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法を提供する。
本発明においては、上述の導電性基材の製造方法により導電性基材を作製するため、導電性の良好な多孔性導電層を形成することができる。また、例えば多孔性導電層のパターンを形成する場合には、高解像度のパターンを形成することができる。また、帯状の積層体を用いた場合には、多孔性導電層のパターンを簡単に形成することができる。
本発明は、上述の積層体を用いて、被転写基材上に帯状の上記積層体の上記感圧接着層および上記多孔性導電層を加圧して転写するために用いられる転写具であって、上記積層体と、上記積層体の上記感圧接着層を外側にして巻き出す巻き出しリールと、上記巻き出しリールから引き出された上記積層体の上記感圧接着層および上記多孔性導電層を上記被転写基材上に加圧して転写する転写ヘッドと、上記感圧接着層および上記多孔性導電層の転写後の基材を巻き取る巻取りリールと、上記巻き出しリールおよび上記巻き取りリールを連動して回転させる連動機構とを有することを特徴とする転写具を提供する。
本発明においては、本発明の転写具を用いることにより、上述の導電性基材の製造方法において帯状の上記積層体を用いて上記被転写基材上に多孔性導電層のパターンを容易に形成することができる。
本発明の積層体は、箔切れ性、転写性に優れており、導電性の良好な多孔性導電層を転写することが可能であるという効果を奏する。
本発明の積層体の一例を示す概略断面図である。 本発明の導電性基材の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の導電性基材の製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明の導電性基材の製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明の積層体および導電性基材の他の例を示す概略断面図である。 本発明の積層体および導電性基材の他の例を示す概略断面図である。 本発明の導電性基材の製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明の積層体および導電性基材の他の例を示す概略断面図である。 本発明の導電性基材の製造方法の他の例を示す工程図である。 実施例5および実施例6の転写物おける多孔性導電層のパターンについて説明する図である。
以下、本発明の積層体、導電性基材の製造方法、電子デバイスの製造方法および転写具の詳細について説明する。
A.積層体
本発明の積層体は、基材と、上記基材上に形成された多孔性導電層と、上記多孔性導電層上に形成された感圧接着層とを有することを特徴とするものである。
本発明の積層体について図面を参照して説明する。
図1は本発明の積層体の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、積層体1は、基材2と、基材2上に形成された多孔性導電層3と、多孔性導電層3上に形成された感圧接着層4とを有している。
図2(a)〜(c)は本発明の積層体を用いた導電性基材の製造方法の一例を示す工程図であり、図1に例示する積層体を用いた例である。まず、図2(a)に示すように、積層体1および被転写基材11を準備する。次いで、図2(b)に示すように、積層体1の感圧接着層4と被転写基材11とが接するように配置し、積層体1側から圧着する。その後、図2(c)に示すように、基材2を剥離する。これにより、圧着された領域では感圧接着層4および多孔性導電層3が被転写基材11に転写され、導電性基材10が得られる。
図3(a)〜(c)は本発明の積層体を用いた導電性基材の製造方法の他の例を示す工程図であり、図1に示す積層体を用いた例である。まず、図3(a)に示すように、積層体1および被転写基材11を準備する。次いで、図3(b)に示すように、積層体1の感圧接着層4と被転写基材11とが接するように配置し、積層体1側から圧着する。この際、凹凸版12等により部分的に圧着する。その後、図3(c)に示すように、基材2側を剥離する。これにより、圧着された領域では感圧接着層4および多孔性導電層3が被転写基材11に転写され、感圧接着層4および多孔性導電層3のパターンを有する導電性基材10が得られる。
図4(a)、(b)は本発明の積層体を用いた導電性基材の製造方法の他の例を示す工程図である。また、図4(a)、(b)は帯状の積層体を有する転写具を用いた例である。また、図4(b)は図4(a)のA部分を多孔性導電層3側から見た概略平面図である。まず、図4(a)に示すように、帯状の積層体1と被転写基材11とを準備する。次に、転写具20を用いて、積層体1の感圧接着層4と被転写基材11とが接するように配置し、積層体1側から加圧しながら転写具20を所定の方向に移動する。この際、転写具20の移動方向に沿って、被転写基材11上に感圧接着層4および多孔性導電層3が転写され、基材2が剥離する。これにより、図4(a)、(b)に示すように被転写基材11上に感圧接着層4および多孔性導電層3のパターンを転写することができる。
なお、転写具20については、後述する。
本発明においては、多孔性導電層の孔の内部に感圧接着層に含まれる樹脂を入り込ませることができるので、多孔性導電層および感圧接着層が接着する表面積が大きくなるのみならず、アンカー効果により多孔性導電層および感圧接着層の密着性を高めることができる。したがって、本発明の積層体を被転写基材に転写する際には、被転写基材に感圧接着層および多孔性導電層を良好に転写することができ、優れた転写性を得ることができる。
また、後述するように、多孔性導電層では、金属粒子同士が焼結し、融着しているため、多孔性導電層の孔の内部に接着層由来の成分が入り込んでいる領域も導電性に寄与する。そのため、導電性を低下させることなく、接着層との密着性を高めることができる。
また、本発明において、感圧接着層としては感圧接着剤を用いることができるため、被転写基材上に積層体を転写するに際しては、加熱を必要としないことから、多孔性導電層の酸化による導電性の低下や積層体の歪み等を抑制することができる。
また本発明において、多孔性導電層は多孔質であるため、脆性が付与されるので、従来の蒸着層とは異なり、転写時にバリの発生が少なく、また大きな結晶粒が含まれることもない。したがって、良好な箔切れ性を得ることができる。さらに、図3(a)〜(c)に例示するように、本発明の積層体の感圧接着層および多孔性導電層のパターンを被転写基材に転写する場合には、解像度良く転写することができる。
ここで、金属粒子はその粒子径を小さくすると、低温で焼結することが知られている。本発明においては、このような金属粒子がナノ粒子化するとその金属粒子の融点よりも格段に低い温度で焼結する性質を利用して、金属粒子を低温で焼結して多孔性導電層を形成することができる。したがって、基材に損傷を与えることが少なく、耐熱性の高い基材を用いる必要はなく、耐熱性の低い基材も使用することができる。特に、ポリエチレンテレフタレート等の安価な汎用プラスチックの樹脂基材を用いることができる点で非常に有用である。
また本発明において、多孔性導電層は、例えば基材上に金属粒子を含有する金属粒子分散液を塗布し、焼成することで形成することができ、基材との密着性が良好な多孔性導電層を得ることができる。したがって、密着性向上のために、基材上に別の層を形成したり表面処理を施したりする必要がない。
また、本発明の積層体を被転写基材に転写することにより、被転写基材上に多孔性導電層を形成することができるため、被転写基材として、従来では多孔性導電層を形成することが困難であった基材も用いることができる。そのため、ポリエチレンテレフタレート等の安価な汎用プラスチックの樹脂基材や、紙基材等の上に多孔性導電層が形成された導電性基材を得ることができる。さらには、立体物である被転写基材への多孔性導電層の形成も可能である。
また、本発明における多孔性導電層は多孔質であることから曲げに対して高い耐性を示すことができる。そのため、基材が可撓性を有する場合は積層体に高い曲率を持たせながら、被転写基材へ転写することができる。
以下、本発明の積層体における各構成について説明する。
1.多孔性導電層
本発明における多孔性導電層は、基材上に形成されるものである。
ここで、多孔性導電層とは、多数の孔を有する導電層をいい、同じ体積を持つ孔の無い導電層よりも表面積が拡大されている。
多孔性導電層を構成する導電性材料としては、例えば金属、金属酸化物を挙げることができる。多孔性導電層を構成する導電性材料は1種でもよく2種以上であってもよい。
中でも、金属が好ましい。金属の粒子は、より低温で焼結して多孔性導電層を形成することができるからである。
金属としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、モリブデン、アルミニウム、アンチモン、スズ、クロム、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、亜鉛、チタン、鉛等が挙げられる。中でも、導電性やコスト等の観点から、銀、銅が好ましい。金属は1種であってもよく2種以上であってもよい。
金属酸化物としては、例えば酸化インジウム錫、アンチモンドープ酸化錫等が挙げられる。
多孔性導電層中の孔の形状は、少なくとも一部の孔に接着層由来の成分が入り込める形状であればよく、特に限定されない。少なくとも多孔性導電層の接着層側の面には、多数の孔が互いに連結した連通孔を有することが好ましい。
多孔性導電層の空孔率としては、導電性および密着性を両立可能な範囲に適宜調整すればよく、特に限定されない。具体的には、多孔性導電層の空孔率は5%〜50%の範囲内であることが好ましく、中でも、10%〜45%の範囲であることが好ましく、特に、15%〜40%の範囲内であることが好ましい。空孔率が大きすぎると、多孔性導電層と基材との密着性が低下するおそれがある。また、空孔率が小さすぎると、多孔性導電層の孔の内部に接着層由来の成分が入り込むことによる上述の効果が十分に得られない場合がある。
なお、多孔性導電層の空孔率は、多孔性導電層を構成する材料が存在していない部分を表すものであり、接着層由来の成分が混在している部分も含まれる。
空孔率は、接着層形成前の多孔性導電層の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像から確認することができる。具体的には、得られたSEM像から孔の面積と多孔性導電層の面積とをそれぞれ算出し、孔の面積を多孔性導電層の面積で除することにより上記断面における空孔率を求めることができる。また、空孔率は、基材を除く多孔性導電層から算出し、基材と多孔性導電層と界面の孔は、多孔性導電層の方に含める。
また、空孔率は、積層体の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像から確認することもできる。具体的には、得られたSEM像から孔の面積と、接着層由来の成分の面積と、多孔性導電層の面積とをそれぞれ算出し、孔の面積と接着層由来の成分の面積との合計を、多孔性導電層の面積で除することにより上記断面における空孔率を求めることができる。
積層体の大きさに応じて適宜複数の断面について同様に空孔率を求め、その平均値を多孔性導電層の空孔率とする。
空孔率は、後述する多孔性導電層の形成方法において、金属粒子分散液に用いられる金属粒子の粒子径や、分散剤の種類、焼成条件等により適宜調整することができる。
多孔性導電層3は、図1に例示するように基材2上の全面に形成されていてもよく、図5(a)に例示するように基材2上にパターン状に形成されていてもよい。図5(a)に例示するように多孔性導電層3が基材2上にパターン状に形成されている場合には、積層体1を部分的に転写しなくとも、図5(b)に例示するように被転写基材11上に多孔性導電層3のパターンを転写することができる。
多孔性導電層の厚みは、0.01μm〜50μm程度であり、好ましくは0.05μm〜10μmの範囲内、特に好ましくは0.1μm〜5μmの範囲内である。
多孔性導電層の形成方法としては、基材上に金属粒子を含有する金属粒子分散液を塗布し、焼成する方法が用いられる。
なお、本願明細書において、金属粒子とは、金属状態の粒子に加えて、合金状態の粒子や、金属化合物の粒子等も含まれるものである。
金属粒子としては、焼成後に導電性を生じる金属粒子の中から適宜選択して用いることができる。
金属粒子を構成する金属としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、モリブデン、アルミニウム、アンチモン、スズ、クロム、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、亜鉛、チタン、鉛等が挙げられる。中でも、導電性やコスト等の観点から、銀、銅が好ましい。金属粒子を構成する金属は1種であってもよく2種以上であってもよい。また、2種以上の金属がコアシェル構造を形成しているものや、金属状態の粒子の表面が酸化または窒化されているもの等を用いてもよい。金属粒子は、表面が酸化されていてもよく、また内部まで酸化されていてもよい。
また、金属化合物の粒子を構成する金属化合物としては、例えば金属酸化物、金属窒化物、金属水素化物、金属水酸化物、有機金属化合物等が挙げられる。これらの金属化合物は、焼成時に分解されて金属状態となるものであることが好ましい。例えば、還元して導電性を発現する金属化合物の粒子、具体的には酸化第一銅、酸化第二銅、酸化銀、窒化銅、水素化銅等の金属化合物の粒子を挙げることができる。また、金属酸化物としては、例えば酸化インジウム錫、アンチモンドープ酸化錫等も挙げられる。
金属粒子は1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、金属状態の粒子が好ましい。金属状態の粒子は、より低温で焼結して多孔性導電層を形成することができるからである。
金属粒子は金属ナノ粒子であることが好ましい。すなわち、多孔性導電層は、金属ナノ粒子の焼結体であることが好ましい。金属ナノ粒子を含有する金属粒子分散液を塗布し、焼成して多孔性導電層を形成する場合には、孔径や結晶粒径を箔切れ性に好適な範囲に制御することができるからである。
金属粒子の平均粒子径は、1nm〜200nmの範囲であることが好ましく、中でも2nm〜150nmの範囲内、特に2nm〜100nmの範囲内が好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、多孔性導電層を形成する際に用いられる金属粒子分散液の分散安定性が良好であり、多孔性導電層を形成した際の導電性が良好となり、また融点が低く維持され、十分な焼結が可能であり、高い導電性が得られる。
ここで、金属粒子の平均粒子径は、後述する金属粒子分散液中の金属粒子の平均1次粒子径であり、透過型電子顕微鏡による観察像から測定することができる。
金属粒子の調製方法としては、例えば、メカノケミカル法等による金属粉または金属酸化物粉を粉砕して得る物理的な方法;CVD法や蒸着法、スパッタ法、熱プラズマ法、レーザー法のような化学的な乾式法;熱分解法、化学還元法、電気分解法、超音波法、レーザーアブレーション法、超臨界流体法、マイクロ波合成法等による化学的な湿式法と呼ばれる方法が挙げられる。
得られた金属粒子は、金属粒子分散液とするために、金属粒子を、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子化合物やグラフト共重合高分子化合物のような保護剤、界面活性剤、金属または金属酸化物と相互作用するようなチオール基やアミノ基、水酸基、カルボキシル基を有する化合物で被覆することが好ましい。また、金属粒子の合成法によっては、原料の熱分解物や酸化物が粒子表面を保護し、分散性に寄与する場合もある。熱分解法や化学還元法等の湿式法の場合は、還元剤等がそのまま金属粒子の保護剤として作用することがある。また、金属粒子分散液の分散安定性を高めるために、金属粒子の表面処理を行ったり、金属粒子分散液に高分子化合物、イオン性化合物、界面活性剤等からなる分散剤を添加したりしてもよい。
金属粒子分散液に用いられる分散媒としては、金属粒子を分散させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば水、有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えばアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
また、金属粒子分散液には、必要に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、あるいは安定剤等を添加してもよい。
金属粒子分散液は、固形分濃度が5質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも10質量%〜90質量%の範囲内、特に15質量%〜85質量%の範囲内であることが好ましい。固形分濃度が上記範囲内であると、十分な導電性が得られ、また粘度が十分に低く、基材への金属粒子分散液の塗布が容易である。
基材上に金属粒子分散液を塗布する際には、基材上の全面に金属粒子分散液を塗布してもよく、基材上にパターン状に金属粒子分散液を塗布してもよい。
基材上に金属粒子分散液を塗布する方法としては、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、スプレーコート、スピンコート、コンマコート、バーコート、ナイフコート、ダイコート、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷等を挙げることができる。基材上にパターン状に金属粒子分散液を塗布する場合には、微細なパターニングを行うことができるという観点から、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷が好ましい。
金属粒子分散液の塗布後は、通常の方法で乾燥を行ってもよい。例えば、一般的なオーブン等を用いて、80℃〜140℃程度の温度で0.1分〜20分程度加熱する乾燥方法が挙げられる。乾燥後の塗膜の厚みは、塗布量や金属粒子の平均粒子径等を調整することで制御することができるが、通常、0.01μm〜100μm程度であり、好ましくは0.1μm〜50μmの範囲内である。
金属粒子分散液の塗膜を焼成する方法としては、金属粒子を焼結できる方法であればよく、一般的な焼成方法を適用することができる。例えば、加熱処理、光処理、プラズマ処理による方法等が挙げられる。塗膜を焼成することにより、金属粒子の焼結体からなる多孔性導電層が得られる。
加熱処理としては、例えばホットプレート加熱、熱風加熱、熱板や熱ロールによるホットプレス法が挙げられる。
光処理としては、例えばレーザー処理、紫外線ランプ処理、赤外線ランプ処理、遠赤外線ランプ処理、フラッシュ光ランプ処理等が挙げられる。
プラズマ処理は、還元性を示す水素、一酸化炭素、アンモニア、アルコール等のガスを電離してプラズマ状態とし、反応性の高い活性種を生成させる処理であり、例えば、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ、容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、大気圧プラズマ、マイクロ波プラズマ、マイクロ波エネルギーの印加により発生する表面波プラズマ等が挙げられる。中でも、表面波プラズマ処理が好ましい。
なお、上記の焼成方法は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
マイクロ波表面波プラズマは、プラズマ密度が高く、電子温度が低い特性を有し、塗膜を低温かつ短時間で焼成処理することが可能であり、緻密かつ平滑な多孔性導電層を形成することができる。表面波プラズマは、処理面に対して、面内で均一の密度のプラズマが照射される。その結果、他の焼成方式と比べて、面内で部分的に金属粒子の焼結が進行する等、不均一な膜が形成されることが少なく、また粒成長を防ぐことができるため、非常に緻密で、平滑な膜が得られる。また、面内処理室内に電極を設ける必要がないので、電極由来の不純物のコンタミネーションを防ぐことができ、また処理材料に対して異常な放電によるダメージを防ぐことができる。さらに、樹脂基材を用いる場合には、樹脂基材のダメージが少なく、またその他の層へのダメージも少ない。
また、マイクロ波表面波プラズマは、樹脂基材に対する多孔性導電層の密着性を高めるのに好適である。この理由としては、マイクロ波表面波プラズマは、基材と多孔性導電層との界面で水酸基やカルボキシル基等の極性官能基を発生させやすいためと推測される。特にポリエステル基材に対して、還元性ガス雰囲気下で発生するプラズマを用いた場合には、基材のエステル結合に、還元性ガスを有するガスのプラズマが反応し、基材の界面側に改質が起こり、極性の高い反応基が多く発生するために、多孔性導電層と基材との界面での密着性が向上するものと推察している。したがって、マイクロ波表面波プラズマは、従来のように基材表面を予めプラズマ処理等により粗化して、多孔性導電層との密着性を向上させる方法に比較しても、基材と多孔性導電層との密着性が高い点で優れている。
なお、マイクロ波表面波プラズマの条件については、例えば特開2010−86825号公報に記載の条件を適用することができる。
焼成時の雰囲気としては、多孔性導電層を構成する導電性材料の種類に応じて適宜選択される。
金属を含有する多孔性導電層を形成する場合には、不活性ガスまたは還元性ガスの雰囲気とすることが好ましく、中でも還元性ガスとすることが好ましい。還元性ガス雰囲気の場合、金属粒子表面に存在する酸化物が還元除去され、導電性の良好な多孔性導電層を形成することができる。そのため、金属を含有する多孔質層である多孔性導電層を形成する場合には、金属粒子として、表面が酸化されている金属粒子や、内部まで酸化されている金属粒子を用いることができる。
還元性ガスとしては、例えば、水素、一酸化炭素、アンモニア、およびこれらの混合ガス等が挙げられる。中でも、水素ガスが好ましい。金属粒子表面に付着した有機物の除去には水素ガスが好適である。
還元性ガスには、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスを混合してもよい。この場合、プラズマが発生し易くなる等の効果がある。
一方、金属酸化物を含有する多孔性導電層を形成する場合には、窒素やアルゴン等の不活性ガスと、必要に応じて酸素とを含んだ雰囲気とすればよい。
さらに、銅を含有する多孔性導電層を形成する場合には、水素プラズマや窒素プラズマによる方法が好ましい。特に水素プラズマで行うことで、3×10−6Ω・cm〜3×10−5Ω・cm程度の比抵抗が得られ、また基材との密着性が良好な多孔性導電層を形成することができるからである。
焼成温度としては、金属粒子を焼結できる温度であればよく、金属粒子の種類や粒子径、焼成方法等に応じて適宜選択される。中でも、焼成温度は、基材の耐熱温度以下であることが好ましく、銀粒子を例とすれば、100℃〜150℃の範囲内が好ましい。
焼成時間としては、金属粒子の種類、焼成方法等に応じて適宜選択される。例えば銀粒子を加熱処理により焼成する場合、焼成時間は10分〜120分の範囲内、中でも15分〜40分の範囲内であることが好ましい。また、例えば銅粒子を水素プラズマにより焼成する場合、焼成時間は1分〜10分の範囲内、中でも2分〜5分の範囲内であることが好ましい。
2.感圧接着層
本発明における感圧接着層は、上記多孔性導電層上に形成されるものである。感圧接着層は、本発明の積層体を被転写基材に転写する際に、多孔性導電層と被転写基材とを接着させる機能を有するものである。
感圧接着層の材料としては、感圧接着剤や、光照射により粘着性または接着性が低下する感光性樹脂等を挙げることができる。
感圧接着剤としては、多孔性導電層と被転写基材とを接着できるものであれば特に限定されるものではなく、積層体が転写される被転写基材の種類に応じて適宜選択される。例えば、転写箔に用いられる一般的な感圧接着剤を用いることができる。感圧接着剤は1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記感圧接着剤としては、加圧により粘着性または接着性を発現するものであればよく、一部が硬化する硬化性樹脂や架橋したゴム材を用いてもよい。
感圧接着剤としては、具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、スチレン―ブタジエン共重合体、天然ゴム、カゼイン、ゼラチン、ロジン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、スチロール樹脂、ポリオレフィン、ウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の従来の接着剤として既知のものが広く使用できる。感圧接着剤としては室温でべたつきがなく、加圧により粘着性または接着性を発現するものが好ましい。
光照射により粘着性または接着性が低下する感光性樹脂としては、例えば紫外線、可視光線、赤外線等の特定波長の光の照射によって硬化し、粘着性または接着性が低下するものであり、かつ、光未照射部では多孔性導電層と被転写基材とを接着できるものを用いることができる。具体的には、多官能(メタ)アクリル樹脂に光重合開始剤を処方したもの、あるいはエポキシ樹脂に光酸発生剤または光塩基発生剤を処方した光硬化性ワニス等、既知のものが広く使用できる。また、溶剤希釈型、W/Oエマルジョン型、溶剤を含まないノンソル型を用いてもよい。このような感光性樹脂は1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、感圧接着層には、感圧接着剤以外に添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば分散剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
感圧接着剤を用いる場合、感圧接着層4は、図1に例示するように基材2上の全面に形成されていてもよく、図6(a)に例示するように基材2上にパターン状に形成されていてもよい。図6(a)に示すように感圧接着層4が基材2上にパターン状に形成されている場合には、積層体1を部分的に転写しなくとも、図6(c)に示すように被転写基材11上に多孔性導電層3のパターンを転写することができる。
また、光照射により粘着性または接着性が低下する感光性樹脂を用いる場合、接着層4は、通常、図7(a)に例示するように基材2上の全面に形成される。
図7(a)〜(d)は本発明の積層体を用いた導電性基材の製造方法の他の例を示す工程図であり、感圧接着層4に光照射により粘着性または接着性が低下する感光性樹脂を用いた例である。まず、図7(a)に示すように、基材2上に多孔性導電層3および感圧接着層4が順に積層された積層体1を準備し、感圧接着層4にフォトマスク15を介して光16をパターン状に照射し、感圧接着層4の光照射部での粘着性または接着性を低下させ、低接着部4bを形成する。次に、図7(b)〜(c)に示すように、積層体1の感圧接着層4と被転写基材11とが接するように配置し、密着させる。その後、図7(d)に示すように、基材2側を剥離する。感圧接着層4は、光未照射部である接着部4aと、光照射部であり粘着性または接着性が低下した低接着部4bとを有するため、接着部4aでは被転写基材11との接着性が高くなるが、低接着部4bでは被転写基材11との接着性が低くなる。そのため、基材2側を剥離する際に、低接着部4bでは基材2とともに多孔性導電層3および感圧接着層4が剥離し、接着部4aでは被転写基材11と接着して多孔性導電層3が転写される。これにより、感圧接着層4および多孔性導電層3のパターンを有する導電性基材10が得られる。この場合にも、積層体1を部分的に転写しなくとも、被転写基材11上に多孔性導電層3のパターンを転写することができる。
感圧接着層の形成方法としては、例えば多孔性導電層上に感圧接着剤、感光性樹脂等の樹脂組成物を塗布し、乾燥する方法が挙げられる。樹脂組成物の塗布方法としては、一般的な塗布方法から適宜選択して適用することができ、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、スプレーコート、スピンコート、コンマコート、バーコート、ナイフコート、ダイコート、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷等を挙げることができる。
感圧接着層の厚みとしては、本発明の積層体を被転写基材に転写する際に箔切れが可能な厚みであれば特に限定されるものではなく、転写方法や、被転写基材の種類等によって適宜選択される。具体的には、感圧接着層の厚みは、0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜25μmの範囲内であることがより好ましい。感圧接着層の厚みが薄すぎると、被転写基材との接着性が不十分になってしまう可能性がある。また、厚すぎると、本発明の積層体を転写する際に、感圧接着層に加わる圧力が大きくなりすぎ被転写基材等に損傷が生じてしまう可能性がある。また、例えば被転写基材が紙基材である場合、紙基材には種類によって転写しにくいものがあるが、その場合には転写性の観点から、感圧接着層の厚みは上記範囲の中でも比較的厚いことが好ましい。
また、図6(b)に例示するように、感圧接着層4上に非感圧接着層5がパターン状に形成されていてもよい。この場合にも、積層体1を部分的に転写しなくとも、図6(c)に示すように被転写基材11上に多孔性導電層3のパターンを転写することができる。
非感圧接着層の材料としては、例えば接着層が溶融する温度に対して溶融しない熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。
非感圧接着層の厚みとしては、本発明の積層体を被転写基材に転写する際に、感圧接着層と被転写基材とを接着させることが可能な厚みであればよく、転写方法や、被転写基材の種類等によって適宜選択される。具体的には、非感圧接着層の厚みは、100nm〜3μmの範囲内であることが好ましい。
非感圧接着層の形成方法としては、例えば感圧接着層上に樹脂組成物をパターン状に塗布し、乾燥し、必要に応じて硬化する方法が挙げられる。樹脂組成物の塗布方法としては、一般的な塗布方法から適宜選択して適用することができる。
3.基材
本発明に用いられる基材は、上記の多孔性導電層および感圧接着層を支持するものである。
基材としては、上記多孔性導電層を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板、セラミックス基板等の無機基材や、金属基材、樹脂基材、紙基材等を用いることができる。
中でも、基材は樹脂基材であることが好ましい。本発明においては、後述するように、金属粒子を低温で焼結して多孔性導電層を形成することができるため、基材に損傷を与えることが少なく、耐熱性の高い基材を用いる必要はなく、耐熱性の低い基材も使用することができる。特に、ポリエチレンテレフタレート等の安価な汎用プラスチックの樹脂基材を用いることができる点で非常に有用である。
樹脂基材としては、一般的な樹脂基材を用いることができる。樹脂基材の好適な具体例としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス−エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリノルボルネン等のポリシクロオレフィン、液晶性高分子化合物等の樹脂フィルムが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート等の安価な汎用プラスチックの樹脂基材が好適である。
基材は可撓性を有していてもよく剛性を有していてもよく、本発明の積層体を被転写基材に転写する方法等に応じて適宜選択される。中でも、基材は可撓性を有することが好ましい。上述の多孔性導電層は、多孔質であり、曲げに対して高い耐性を示す。そのため、基材が可撓性を有する場合は積層体に高い曲率を持たせながら、被転写基材へ転写することができるからである。また、上述の理由から、可撓性を有する樹脂基材であることがより好ましい。
また、基材の表面には、離型層が形成されていてもよく、離型処理が施されていてもよい。基材と多孔性導電層または保護層との剥離が容易となるからである。
離型層の材料としては、例えばフッ素系離型剤、シリコーン系離型剤、ワックス系離型剤等が挙げられる。離型層の形成方法としては、例えば離型剤をディップコート、スプレーコート、ロールコート等の塗布法により塗布する方法が挙げられる。
また、離型処理としては、例えばフッ素処理、シリコーン処理等の表面処理が挙げられる。
基材の厚みとしては、特に限定されるものではないが、無機基材の場合には、通常0.1mm〜10mm程度であり、好ましくは0.5mm〜5mmの範囲内である。一方、樹脂基材の場合には、基材の厚みは、通常1.0μm〜1000μm程度である。樹脂基材の厚みが上記範囲内であると、多孔性導電層を形成する際に基材の変形が抑制され、形成される多孔性導電層の形状安定性の点で好適であり、また巻き取り加工を連続して行う場合に柔軟性の点で好適である。
4.その他の構成
本発明の積層体は、上記の基材、多孔性導電層および感圧接着層以外に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。例えば、基材の多孔性導電層の形成面とは反対側の面に帯電防止層、耐熱保護層、耐擦層、滑性層等が設けられていてもよい。また、基材と多孔性導電層との間に保護層が形成されていてもよい。以下、保護層について説明する。
(保護層)
本発明においては、図8(a)に例示するように、基材2と多孔性導電層3との間に保護層6が形成されていてもよい。保護層6は、図8(b)に示すように、多孔性導電層3が積層体1から被転写基材11へと転写された後は、導電性基材10の最外層となるため、摩耗や光、薬品等から多孔性導電層3を保護することができる。また、絶縁性を有する保護層とすることにより、多孔性導電層を絶縁することができる。
保護層の材料としては、多孔性導電層を保護することができ、絶縁性を有するものであればよく、例えば紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が挙げられる。また、保護層は、フィラーをさらに含有していてもよい。
また、保護層として、保護フィルムを用いてもよい。
保護層の形成方法としては、例えば基材上に硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥する方法が挙げられる。硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、例えばグラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロールコーティング法等が挙げられる。
保護層として保護フィルムを用いる場合には、基材と保護フィルムとを弱粘着層を介して貼り合わせることができる。弱粘着層は、基材を剥離する際に、基材とともに弱粘着層も剥離可能なものであることが好ましい。
保護層の厚みは、0.5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、3μm〜15μmの範囲内であることがより好ましい。保護層の厚みが上記範囲内であると、優れた高硬度性、耐スクラッチ性、耐薬品性および耐汚染性等の表面物性が得られ、さらに優れた成形性および形状追従性を得ることができる。
5.形態
本発明の積層体の形態としては、被転写基材上に感圧接着層および多孔性導電層を転写することができれば特に限定されず、例えば、シート状、帯状を挙げることができる。
中でも、本発明においては、積層体の形態が帯状であることが好ましい。被転写基材上に多孔性導電層を所望の配線パターンに容易に形成することができるからである。また、この場合、基材としては可撓性を有するものであることが好ましい。
積層体の形態が帯状である場合、積層体の線幅については用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、0.5mm〜50mmの範囲内、中でも1.0mm〜30mmの範囲内、特に1.0mm〜10mmの範囲内であることが好ましい。
上記線幅が上記範囲内である場合は、公知の修正テープの転写具を積層体の転写具に適用することができ、被転写基材上に多孔性導電層を所望の配線パターンに容易に形成することができるからである。
帯状の積層体は、例えば、帯状の基材上に感圧接着層および多孔性導電層を形成することにより得ることができる。また、帯状の積層体は、シート状の積層体を所定の線幅で切断することにより得ることができる。
6.用途
本発明の積層体は、後述するように導電性基材の作製に用いることができ、例えば、プリント配線基板、電磁波シールド材、アンテナ、パワー半導体、ノイズフィルタ、コンデンサ電極、各種センサー用電極(タッチセンサー、バイオセンサー、温度センサー、ガスセンサー、光センサー、圧力センサー、フローセンサー)、ディスプレイ用電極、太陽電池用電極、ICカード、RFID等の作製および接合材、コネクタ材に利用することができる。
また、本発明の積層体は、非接触型ICカードに記録された情報の不正読み取りを防止するための電磁波シールド層、共振周波数を変調させるための導電層として使用することができる。例えば、カードの一部に多孔性導電層を付与して読み取りができない状態として輸送し、使用時に感圧接着剤層ごとスクラッチして取り除くことが可能である。本発明の積層体は、多孔性導電層を有するので、感圧接着剤層の粘着力を制御することで、スクラッチで容易に剥離させることが可能である。
また、本発明の積層体は、多孔性導電層の色や光沢を活かした意匠、デザイン、文字等の形成にも利用できる。
B.導電性基材の製造方法
本発明の導電性基材の製造方法は、上述の積層体を準備する準備工程と、被転写基材上に上記積層体の上記感圧接着層および上記多孔性導電層を加圧して転写する転写工程とを有することを特徴とする導電性基材の製造方法である。
図2(a)〜(c)、図3(a)〜(c)、図4(a)、(b)は本発明の導電性基材の製造方法の一例を示す工程図である。なお、図2(a)〜(c)、図3(a)〜(c)、図4(a)、(b)については、上記「A.積層体」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
本発明においては、多孔性導電層の孔の内部に感圧接着層に含まれる樹脂を入り込ませることができるので、多孔性導電層および感圧接着層が接着する表面積が大きくなるのみならず、アンカー効果により多孔性導電層および感圧接着層の密着性を高めることができる。したがって、転写工程では、被転写基材に感圧接着層および多孔性導電層を良好に転写することができ、優れた転写性を得ることができる。
また、本発明において、感圧接着層としては感圧接着剤、粘着剤を用いることができるため、被転写基材上に積層体を転写するに際しては、加熱を必要とせず、多孔性導電層の酸化による導電性の低下や積層体の歪み等を抑制することができる。
また本発明において、多孔性導電層は多孔質であるため、脆性が付与されるので、従来の蒸着層とは異なり、転写時にバリの発生が少なく、また大きな結晶粒が含まれることもない。したがって、良好な箔切れ性を得ることができる。さらに、図3(a)〜(c)に例示するように、積層体の感圧接着層および多孔性導電層のパターンを被転写基材上に転写する場合には、解像度良く転写することができる。また、図4(a)、(b)に例示するように帯状の積層体を用いることにより、転写具を用いて感圧接着層および多孔性導電層のパターンを被転写基材上に容易に転写することができる。
また本発明においては、金属粒子を低温で焼結して多孔性導電層を形成することができるため、積層体の基材として、耐熱性の高い基材を用いる必要はなく、耐熱性の低い基材も使用することができる。特に、ポリエチレンテレフタレート等の安価な汎用プラスチックの樹脂基材を用いることができる。したがって、製造コストを削減することができる。
また、被転写基材上に感圧接着層および多孔性導電層を転写するため、被転写基材として、従来では多孔性導電層を形成することが困難であった基材も用いることができる。そのため、ポリエチレンテレフタレート等の安価な汎用プラスチックの樹脂基材や、紙基材等の被転写基材上に多孔性導電層が形成された導電性基材を得ることができる。さらには、立体物である被転写基材への多孔性導電層の形成も可能である。また、被転写基材上に感圧接着層および多孔性導電層を加圧して転写するだけで、容易に導電性基材を作製することができる。
以下、本発明の導電性基材の製造方法における各工程について説明する。
1.準備工程
本発明における準備工程は、上述の積層体を準備する工程である。
なお、積層体については、上記「A.積層体」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
2.転写工程
本発明における転写工程は、被転写基材上に上記積層体の感圧接着層および多孔性導電層を加圧して転写する工程である。
被転写基材としては、感圧接着層を介して多孔性導電層を加圧して転写することができるものであれば特に限定されるものではなく、導電性基材の用途等に応じて適宜選択される。例えば、樹脂基材、紙基材、ガラス基材、セラミックス基材、金属基材等が挙げられる。
被転写基材上に積層体の感圧接着層および多孔性導電層を加圧して転写する方法としては、被転写基材上の所定の位置に感圧接着層を接着させることができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えばローラーまたはスタンプを用いる方法、プレスする方法等が挙げられる。
また、図3(a)〜(c)に例示するように、被転写基材上に感圧接着層および多孔性導電層のパターンを加圧して転写する場合には、転写方法としては、例えば凹凸版を用いる方法、針等の突起物を用いて積層体を描画する方法等を挙げることができる。
被転写基材上に感圧接着層および多孔性導電層を加圧して転写する際には、被転写基材上に感圧接着層および多孔性導電層のパターンを加圧して転写してもよい。被転写基材上に多孔性導電層のパターンが形成された導電性基材を得ることができる。
被転写基材上に感圧接着層および多孔性導電層のパターンを加圧して転写する場合には、上述のように凹凸版または針等を用いる方法を適用してもよく、また図6(a)に例示するような感圧接着層4が予めパターン状に形成された積層体1を用いてもよく、図6(b)に例示するような感圧接着層4上に非感圧接着層5がパターン状に形成された積層体1を用いてもよい。
また、被転写基材上に多孔性導電層のパターンを加圧して転写する場合には、上記の他にも、図4(a)に示すように帯状の積層体を用いてもよく、図5(a)に例示するような多孔性導電層3が予めパターン状に形成された積層体1を用いてもよい。
被転写基材上に積層体の感圧接着層を接着させた後は、通常、積層体を基材側から物理的に引き離すことにより、被転写基材上に感圧接着層が接着された領域では多孔性導電層から基材を剥離することができる。
本発明においては、積層体の基材として可撓性を有するものを用いた場合は、基材を曲げながら積層体を基材側から物理的に引き離すことにより多孔性導電層から基材を剥離することができ、曲面や段差を有する形状、角を有する形状など複雑な形状を有する立体物へ転写を容易に行うことができるため好ましい。
3.接続工程
本発明においては、転写工程では、積層体の感圧接着層および多孔性導電層を被転写基材上に加圧して転写することにより、図9(a)に示すように、第1感圧接着層4cおよび第1多孔性導電層3aならびに第2感圧接着層4dおよび第2多孔性導電層3bが積層された積層部Xを形成し、さらに、積層部Xに圧力Pを加えることにより、図9(b)に示すように第1多孔性導電層3aおよび第2多孔性導電層3bを電気的に接続させる接続工程を有していてもよい。
なお、図9(a)、(b)は本発明の導電性基材の製造方法における接続工程の一例を示す工程図である。なお、図示はしないが、積層部に対しては加熱処理をすることにより、上記第1多孔性導電層および第2多孔性導電層を電気的に接続させることもできる。
上記記積層部において加圧された領域の第1多孔性導電層および第2多孔性導電層を電気的に接続することができるため、導電性基材における積層された多孔性導電層同士を容易な方法で導通させることができる。より具体的には、上記第1多孔性導電層および第2多孔性導電層は、多孔質であるため、上記積層部を加圧することにより、多孔質膜内に第2感圧接着層に含まれる樹脂を入り込ませることができ、第1多孔性導電層および第2多孔性導電層を接触させて電気的に接続させることができる。
また、本発明においては、図示はしないが上述した積層部の全域において第1多孔性導電層および第2多孔性導電層を電気的に接続させてもよく、図9(b)に示すように積層部Xの一部において1多孔性導電層3aおよび第2多孔性導電層3bを電気的に接続させてもよい。この場合、積層部において加圧されていない領域においては第1多孔性導電層および第2多孔性導電層の絶縁層として第2感圧接着層を用いることができる。
第1感圧接着層および第1多孔性導電層は被転写基材上の全域に形成されていてもよく、所定のパターンで形成されていてもよい。また、第2感圧接着層および第2多孔性導電層については、被転写基材上の全域に形成されていてもよく、所定のパターンで形成されていてもよい。
本発明においては、上記積層部に対して加熱処理および加圧処理の少なくともいずれかの処理することにより、上記第1多孔性導電層および第2多孔性導電層を電気的に接続させることができ、積層部に対して加熱処理を行なってもよく、加圧処理を行なってもよく、加熱処理および加圧処理の両方をおこなってもよい。
上記積層部の加圧処理方法としては、第1多孔性導電層および第2多孔性導電層を電気的に接続させることができる方法であれば特に限定されず、例えば、第2多孔性導電層側から所定の圧力で押圧する方法、例えば、ローラー、スタンプ、プレス、凹凸版、針状、ペン先状のもので押圧する方法が挙げられる。特に、ローラーで押圧したり、針状のもので擦って描画するように横方向のせん断力をかける方法は、感圧接着剤がせん断力により軟化し、転写しやすくなるので好ましい。
また、上記積層部の加熱処理方法としては、第2導電層側から加熱ローラー、ホットスタンプ、熱プレス、針状やペン先状のスポット加熱、赤外線、レーザなどの電磁波による加熱が挙げられる。
また、積層部の加圧処理および加熱処理の両方を同時に行う方法としては、例えば、上記積層部を加圧する際に、積層部表面を摩擦することにより加熱する方法を挙げることができる。
C.電子デバイスの製造方法
本発明の電子デバイスの製造方法は、上述の導電性基材の製造方法により、導電性基材を作製する導電性基材作製工程を有することを特徴とする製造方法である。
本発明においては、上述の導電性基材の製造方法により導電性基材を作製するため、導電性の良好な多孔性導電層を形成することができる。また、例えば多孔性導電層のパターンを形成する場合には、高解像度のパターンを形成することができる。
また本発明においては、上述の導電性基材の製造方法により導電性基材を作製するため、製造コストを削減することができる。
以下、本発明の電子デバイスの製造方法における工程について説明する。
1.導電性基材作製工程
本発明における導電性基材作製工程は、上述の導電性基材の製造方法により、導電性基材を作製する工程である。
なお、導電性基材の製造方法については、上記「B.導電性基材の製造方法」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
2.その他の工程
本発明の電子デバイスの製造方法は、導電性基材作製工程以外に、必要に応じて他の工程を有していてもよい。他の工程は、電子デバイスに応じて適宜選択される。
3.電子デバイス
本発明における電子デバイスとしては、例えば、プリント配線基板、電磁波シールド材、アンテナ、パワー半導体、ノイズフィルタ、コンデンサ電極、各種センサー用電極(タッチセンサー、バイオセンサー、温度センサー、ガスセンサー、光センサー、圧力センサー、フローセンサー)、ディスプレイ用電極、太陽電池用電極、ICカード、RFID等に適用することができる。
また、本発明の電子デバイスが、例えば、非接触型ICカードである場合、多孔性導電層は、非接触型ICカードに記録された情報の不正読み取りを防止するための電磁波シールド層、共振周波数を変調させるための導電層として使用することができる。また、この場合、非接触型ICカードに一時的に多孔性導電層を付与し、後で感圧接着剤層ごとスクラッチして取り除くことが可能である。上記非接触型ICカードは、多孔性導電層を有するので、感圧接着剤層の粘着力を制御することで、スクラッチで容易に剥離させることが可能である。
D.転写具
本発明の転写具は、上述の積層体を用いて、被転写基材上に帯状の上記積層体の上記感圧接着層および上記多孔性導電層を加圧して転写するために用いられるものであって、上記積層体と、上記積層体の上記感圧接着層を外側にして巻き出す巻き出しリールと、上記巻き出しリールから引き出された上記積層体の上記感圧接着層および上記多孔性導電層を上記被転写基材上に加圧して転写する転写ヘッドと、上記感圧接着層および上記多孔性導電層の転写後の基材を巻き取る巻取りリールと、上記巻き出しリールおよび上記巻き取りリールを連動して回転させる連動機構とを有することを特徴とするものである。
本発明の転写具について図を用いて説明する。図4(a)は本発明の転写具の一例を示す模式図である。図4(a)に示す転写具20は、積層体1と、積層体1の感圧接着層4を外側にして巻き出す巻き出しリール21と、巻き出しリール21から引き出された積層体1の感圧接着層4および多孔性導電層3を、被転写基材11上に加圧して転写する転写ヘッド22と、感圧接着層4および多孔性導電層3の転写後の基材2を巻き取る巻取りリール23と、巻き出しリール21および巻き取りリール23を連動して回転させる連動機構24とを有している。巻き出しリール21は支軸25により回転可能に支持されており、巻き取りリール23は支軸26により回転可能に支持されている。転写ヘッド22は被転写基材11側の先端が薄くなる板状部材で構成され、積層用転写体1が転写ヘッドから外れることを抑制するためのフランジ27を有している。連動機構24は、巻き出しリール21と同角速度で回転するように形成された第1歯車24aと、巻き取りリール23と同角速度で回転するように形成され上記第1歯車24aとかみ合わされて用いられ、上記第1歯車24aよりも歯数が少ない第2歯車24bとを有する。積層体1、巻き出しリール21、転写ヘッド22、巻き取りリール23、連動機構24はケース28に収納されている。ケース28は積層体1をケース28内の所定の位置に配置するガイドピン29を有している。
本発明においては、本発明の転写具を用いることにより、上述の導電性基材の製造方法において帯状の上記積層体を用いて上記被転写基材上に多孔性導電層のパターンを容易に形成することができる。
以下、本発明に用いられる転写具の詳細について説明する。
1.積層体
本発明に用いられる積層体は、その形態が帯状のものである。積層体の詳細については上述した「A.積層体」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
2.巻き出しリール
本発明に用いられる巻き出しリールは、上記積層体の上記粘着層を外側にして巻き出すものである。
巻き出しリールとしては、積層体の感圧接着層側を外側にして巻き出すことができれば特に限定されず、一般的な転写具に用いられるものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。また、巻き出しリールは、通常、支軸により回転可能に支持されている。
3.転写ヘッド
本発明に用いられる転写ヘッドは、上記巻き出しリールから引き出された上記積層体の上記粘着層および上記多孔性導電層を、上記被転写基材上に加圧して転写するものである。
転写ヘッドとしては、積層体の粘着層および多孔性導電層を被転写基材上に加圧して転写することができれば特に限定されず、例えば、被転写基材側の先端が次第に薄くなるテーパー状の板状部材や、加圧用のローラー部材を有している。また、転写ヘッドは、さらに積層用転写体が転写ヘッドから外れることを抑制するためのフランジを有していてもよい。転写ヘッドの形態、材料については、一般的な転写具の構成と同様とすることができる。例えば、特開2009−238676号公報に記載の転写ヘッドを用いることができる。
4.巻き取りリール
本発明に用いられる巻き取りリールは、上記粘着層および上記多孔性導電層の転写後の基材を巻き取るものである。
巻き取りリールとしては、上記粘着層および上記多孔性導電層の転写後の基材を巻き取ることができれば特に限定されず、一般的な転写具に用いられるものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。また、巻き取りリールは、通常、支軸により回転可能に支持されている。
5.連動機構
本発明に用いられる連動機構は、上記巻き出しリールおよび上記巻き取りリールを連動して回転させるものである。
連動機構は、積層体が巻き出しリールおよび巻き取りリールの間で緩まないように一定の張りを有するように巻き出しリールおよび巻き取りリールを連動させて回転させることができれば特に限定されない。例えば、巻き出しリールと同角速度で回転するように形成された第1歯車と、巻き取りリールと同角速度で回転するように形成され上記第1歯車とかみ合わされて用いられ、上記第1歯車よりも歯数が少ない第2歯車とを有する連動機構であってもよい。また、巻き出しリールと同軸に設けられた巻き出しプーリー、巻き取りリールと同軸に設けられた巻き取りプーリー、巻き出しプーリーおよび巻き取りプーリーを連結するベルトを有する連動機構であってもよい。
6.ケース
本発明の転写具においては、通常、上記積層体、巻き出しリール、巻き取りリールおよび連動機構はケース内に配置される。また、ケースは、積層体をケース内の所定の位置に配置するガイドピン、ガイドロール等を有していてもよい。ケースとしては、一般的な転写具に用いられるものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
7.その他
本発明においては、修正テープ等に用いられる公知の転写具の修正テープの代わりに、積層体を配置することで転写具を構成してもよい。
8.用途
本発明の転写具は、上述した導電性基材の製造方法において、被転写基材上に感圧接着層および多孔性導電層の配線パターンを転写する際に好適に用いることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[合成例1:銅粒子の合成]
200ml三ッ口フラスコ中に、水酸化銅 10.0g(和光純薬工業製)、デカン酸 34.5g(花王製ルナック10−98)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)18.5gを量り取った。この混合液を撹拌しながら100℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、3−エトキシプロピルアミン 41.3g(広栄化学工業製)を添加し、100℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を、氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 10.0gをPGME 18.5g(関東化学製)に溶解させた溶液を添加し、10分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。30℃まで冷却後、ヘキサン66gを添加した。遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、銅粒子を得た。
得られた銅粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は65nmであった。
[調製例1:銅粒子分散体の調製]
合成例1で得られた銅粒子40質量部、高分子分散剤としてソルスパース 41000(ルーブリゾール製)4質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)56質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、銅粒子分散体を得た。
[製造例1:導電フィルムAの作製]
PETフィルム(商品名 コスモシャイン A4100、東洋紡製、膜厚100μm)に銅粒子分散体をバーコーター#4を使って塗布し、温風乾燥機で80℃、3分乾燥させ、赤銅光沢を持つフィルムを得た。その後、水素ガスを導入圧力20Paで導入しながら、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子株式会社製)を用いて、マイクロ波出力450Wで240秒間焼成し、多孔性導電層を有する導電フィルムAを得た。
[製造例2:導電フィルムBの作製]
ナノAgインク(三ツ星ベルト製 商品名MDot CF107)をペンタンジオールで40%希釈した後、PETフィルム(商品名 コスモシャイン A4100、東洋紡製、膜厚100μm)にバーコーター#4を使って塗布し、温風乾燥機で120℃、30分乾燥かつ焼成して、銀光沢を持ち、多孔性導電層を有する導電フィルムBを得た。
[製造例3:導電フィルムCの作製]
PETフィルム(商品名 コスモシャイン A4100、東洋紡製、膜厚100μm)に銅をスパッタ法により製膜し、導電層を有する導電フィルムCを得た。
[評価]
(多孔性導電層および導電層のシート抵抗値の測定)
多孔性導電層および導電層の導電性評価は、表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ社製「ロレスタGP」、PSPタイププローブ)を用いて、4探針法によりシート抵抗値を測定することにより行った。導電フィルムA、Bの多孔性導電層のシート抵抗値は、共に0.20Ω/□、導電フィルムCの導電層のシート抵抗値は0.08Ω/□であった。
(多孔性導電層および導電層の膜厚の測定)
多孔性導電層および導電層の膜厚評価は下記の通り行った。作製した導電フィルムA、Bについて保護層として多孔性導電層上部に真空蒸着法にてカーボンを、スパッタ法にて白金を順次積層し、次いでFIB(集束イオンビーム、日立ハイテク製 FB−2100)を用いてタングステンを積層後、多孔性導電層の断面を作製した。その後、SEM(日立ハイテク製 S−4800)を用いて基板を45°傾斜させた状態にて多孔性導電層断面を観察し、SEM像より膜厚を測定した。膜厚は30k〜40kの倍率で測定したSEM像内で10箇所測長し、傾斜分を補正した後、その平均値を膜厚とした。導電フィルムCの導電層の膜厚評価についても、多孔性導電層と同様にして求めた。導電フィルムAの多孔性導電層の膜厚は400nm、導電フィルムBの多孔性導電層の膜厚は380nm、導電フィルムCの多孔性導電層の膜厚は400nmであった。この結果から、導電フィルムAの体積抵抗値は8.0μΩ・cm、導電フィルムBの体積抵抗値は7.6μΩ・cm、導電フィルムCの体積抵抗値は3.0μΩ・cmであることが分かった。
(多孔性導電層および導電層の空孔率の測定)
多孔性導電層および導電層の空孔率測定は下記の通り行った。上記膜厚測定において得られたSEM像における、孔の面積と、銅の面積とをそれぞれ算出し、孔の面積を、多孔性銅層の面積で除することにより当該断面における空孔率を求めた。導電フィルムAの多孔性導電層の空孔率は35%、導電フィルムBの多孔性導電層の空孔率は30%、導電フィルムCの導電層の空孔率は0%であった。
[実施例1−1:転写用積層体1]
感圧接着剤(日本製紙製アウローレン200MX)を導電フィルムAの銅面上にバーコーター#4で塗布し、温風乾燥機で90℃、30秒で乾燥させた。約1.5μmの感圧接着剤層を形成した。
[実施例1−2:転写用積層体2]
転写用積層体1の感圧接着剤を、日本製紙製アウローレン200MXとアウローレン350MXを重量比1:2の比率で混合したものに変えたこと以外は転写用積層体1と同様の手順により、転写用積層体2を作製した。
[実施例1−3:転写用積層体3]
転写用積層体1の導電フィルムAを導電フィルムBに変えたこと以外は転写用積層体1と同様の手順により、転写用積層体3を作製した。
[比較例1:転写用積層体4]
転写用積層体1の導電フィルムAを導電フィルムCに変えたこと以外は転写用積層体1と同様の手順により、転写用積層体4を作製した。
[評価]
転写用積層体1〜4について、市販の上質紙に感圧接着剤塗布面を重ね、裏面から樹脂性のヘラによって加圧し、PETフィルムを剥離した。転写性を目視で確認し、転写物のシート抵抗値を測定した。結果を表1に示す。なお、表中の転写性については、転写前の転写等積層体の導電層の面積に対する、被転写物に転写された導電層の面積の比率で表わしている。転写されていない導電層については転写用積層体に残っていた。
Figure 2019151117
[実施例2−1〜実施例2−3および比較例2]
転写用積層体1〜4について、積層体を幅5mmにカットし、巻出しリール、樹脂製の転写ヘッド、巻き取りリールを備える転写具を準備し、巻出しリールにロール状に転写用積層体を固定した。続いて、市販の上質紙に、転写用積層体の感圧接着剤塗布面がくるようにして転写ヘッドで加圧し、その転写性を目視で確認し、転写物のシート抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2019151117
[実施例3−1〜実施例3−3および比較例3]
転写用積層体1〜4について、市販の上質紙に、転写用積層体の感圧接着剤塗布面がくるようにしてインクを取り除いたボールペンのペン先で押圧し、連続のパターンを描画した。その転写性を目視で確認し、パターンの両端をテスターで測定し、導通の有無を調べた。結果を表3に示す。
Figure 2019151117
比較例3においては、転写用積層体4における導電層が部分的に被転写基材である上質紙上に転写されたが、転写用積層体4における導電層を上質紙上に転写することができなかった。
[実施例4−1〜実施例4−3]
転写用積層体1〜3について、市販の厚紙を箱状に組み立てたパッケージに対し、パッケージ表面に、転写用積層体の感圧接着剤塗布面がくるようにして、インクを取り除いたボールペンのペン先で押圧し、パッケージ側面を1周するように、連続のパターンを描画した。パターンの両端をテスターで測定し、導通の有無を調べた。結果を表4に示す。
Figure 2019151117
[実施例5]
実施例2−1における転写用積層体1を用いて、市販の上質紙に、転写用積層体1の感圧接着剤塗布面がくるようにして転写ヘッドで加圧し、多孔性導電層のラインパターンを転写した。更に、転写された多孔性導電層のラインパターンと交差するように、市販の上質紙に、転写用積層体の感圧接着剤塗布面がくるようにして転写ヘッドで加圧して多孔性導電層のラインパターンを転写した。図10に示すように、被転写基材11である上質紙上に多孔性導電層31、32のラインパターンが交差した転写物を作製した。それぞれの多孔性導電層31、32のラインパターンの端Y、Zにテスターをあてて調べたところ、2本の多孔性導電層31、32のラインパターンが導通していることを確認した。
[実施例6]
実施例2−2における転写用積層体2について、実施例5と同様に、図10に示す多孔性導電層31、32のラインパターンが交差した転写物を作製した。それぞれの多孔性導電層31、32のラインパターンの端Y、Zにテスターをあてて調べたところ、2本の多孔性導電層31、32のラインパターンが導通していないことを確認した。
更に、図10に示すように2本の多孔性導電層31、32のラインパターンの交点Xに対して、シリコーンゴム製の棒を用いて加圧した。加圧後の2本の多孔性導電層のラインパターンの端部Y、Zについてテスターをあてて調べたところ、2本の多孔性導電層31、32のラインパターンが導通していることを確認した。
[実施例7]
導電フィルムAの上に、市販のテープのり2種(ドットライナープチ(ハート柄)、ドットライナープチ(スター柄)、コクヨS&T製)の粘着パターンを写し取り、転写用積層体とした。続いて、被転写基材として市販の上質紙に、上述の転写用積層体の粘着パターン面を重ね、樹脂製のヘラによって加圧したところ、パターン状(ハート型、星型)に銅膜を転写することができた。
1 … 積層体
2 … 基材
3 … 多孔性導電層
3a … 第1多孔性導電層
3b … 第2多孔性導電層
4 … 感圧接着層
4c … 第1感圧接着層
4d … 第2感圧接着層
6 … 保護層
10 … 導電性基材
11 … 被転写基材

Claims (1)

  1. 基材と、
    前記基材上に形成された多孔性導電層と、
    前記多孔性導電層上に形成された感圧接着層と
    を有することを特徴とする積層体。
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