JP6710018B2 - 導電パターン基板の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1〜特許文献5では、導電材料の粉末と熱可塑性樹脂等のバインダとを含む導電性ペーストを準備し、これを溝部に充填することにより、導電パターン基板を製造する方法が記載されている。また、導電性ペーストの充填方法としては、インクジェット法等を用いて、溝部のみに導電性ペーストを充填する方法、基材の全面に導電性ペーストを塗布した後、スキージや各種研磨装置を用いて平面部上の導電性ペーストを削り取る方法が記載されている。
また、特許文献6では、平面部に剥離層を形成した上で、導電性ペーストを基材の全面に塗布し、平面部上の導電性ペーストを剥離層と共に除去する方法が記載されている。
このような方法によれば、パターン状の導電層が基材の溝部に埋設された形態の導電パターン基板を得ることができる。
また、平面部上の導電性ペーストを削り取る方法では、スキージが溝部に接触することで溝部の形状が変形するといった問題や、導電性ペーストの削り残しが生じる結果、短絡等の不具合が生じるおそれがあるといった問題がある。
さらに、剥離層を形成する方法では、剥離層の形成により導電パターン基板の製造工程が煩雑になるといった問題がある。
したがって、上記剥離工程において、配線用溝部以外の上記基材表面(以下、単に平面部と称する場合がある。)に形成された多孔性導電層のみを容易に剥離することができる。
また、上記焼結工程によって金属ナノ粒子同士が焼結した多孔性導電層を形成することにより、基材との密着性が低く、面方向の強度に優れた多孔性導電層を平面部上に形成することができる。このため、上記剥離工程において平面部に形成された多孔性導電層の剥離を容易に行うことができる。
このようなことから、高精細な導電パターンを容易に形成することができる。
以下、本発明の導電パターン基板の製造方法について詳細に説明する。
次いで、上記基材1上に塗布された上記ナノ粒子分散液2に熱風hを吹き付けることによりナノ粒子分散液2中の分散媒を乾燥させ、上記金属ナノ粒子を含む塗膜を形成する(図1(b))。
次いで、上記塗膜3に対して、水素ガス雰囲気下で表面波プラズマ処理pを行うことにより、上記塗膜3に含まれる上記金属ナノ粒子同士を焼結させ、多孔性導電層を形成する(図1(c))。
次いで、剥離用基材5を多孔性導電層4のうち、上記配線用溝部1a以外の上記基材表面である平面部1bに形成された上記多孔性導電層4のみに接触させた後(図1(d))、剥離用基材5とともに上記多孔性導電層4を剥離することにより、上記平面部1bに形成された上記多孔性導電層4を剥離し、配線用溝部1aにのみ多孔性導電層4が形成された導電パターン基板10を得るものである(図1(e))。
なお、図1(a)が塗布工程であり、図1(b)が乾燥工程であり、図1(c)が焼結工程であり、図1(d)〜(e)が剥離工程である。
また、この例では、剥離工程において、剥離用基材5として支持用基材5aおよび支持用基材5a上に形成された粘着層5bを有する粘着テープを用いるものである。
したがって、上記剥離工程において、平面部に形成された多孔性導電層のみを容易に剥離することができる。
また、上記焼結工程によって金属ナノ粒子同士が焼結した多孔性導電層を形成することにより、基材との密着性が低く、面方向の強度に優れた多孔性導電層を平面部上に形成することができる。このため、上記剥離工程において平面部に形成された多孔性導電層の剥離を容易に行うことができる。
このようなことから、高精細な導電パターンを容易に形成することができる。
すなわち、導電性微粒子を有機または無機のバインダと共に用いる一般的な導電性ペーストでは、バインダの割合が比較的多く、最終的に配線として用いる導電層も導電性微粒子がバインダ中に分散された形態となる。このような導電層は、バインダの存在により面方向の結合が強く、また基材との密着力も大きい。
これに対して、金属ナノ粒子同士を焼結させ、多孔性導電層の形成に用いられるナノ粒子分散液も、金属ナノ粒子の分散媒中の分散安定性の観点からバインダ樹脂等が添加されることもある。しかしながら、このようなバインダ樹脂等は焼結時に分解除去されるものであることから、その添加量は少ない。したがって、ナノ粒子分散液を塗布し、次いで乾燥させることで形成された塗膜は、一般的な導電性ペーストで形成した塗膜と比較して面方向の結合力が低く、配線用溝部が形成されたような段差がある箇所では、塗膜が容易に破断されたものとなる。
このようなことから、乾燥工程により配線用溝部の境界で破断した塗膜を形成することができるのである。
すなわち、乾燥工程により形成された塗膜は、少量ながらバインダ樹脂等を含む。一方、焼結工程後は、バインダ樹脂等は分解除去された状態となる。
このため、上記多孔性導電層は、上記塗膜と比較してバインダ樹脂等の含有量が少なく、基材との密着力が低いものとなる。
このようなことから、焼結工程により塗膜が多孔性導電層とされることにより、基材との密着力が低下するのである。
以下、本発明の導電パターン基板の製造方法の各工程について詳細に説明する。
本発明における塗布工程は、配線が形成される溝部である配線用溝部を一方の表面に有する基材を準備し、上記基材の上記配線用溝部が形成された表面に、金属ナノ粒子および分散媒を含むナノ粒子分散液を塗布する工程である。
本工程に用いられる基材は、配線が形成される溝部である配線用溝部を一方の表面に有するものである。
上記基材の可視光領域における透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。ここで、基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
なお、上記基材の透過率は、基材の平面部が形成された箇所での透過率をいうものである。
例えば、上記基材は、支持基材を1層のみ含む単層構造、2以上の支持基材が積層された多層構造、支持基材および上記支持基材上に形成され、配線用溝部が形成された表面層を有する多層構造等とすることができる。
本発明において、上記基材の形成方法がインプリント法である場合には、上記基材が支持基材および上記支持基材上に形成された表面層を有するものであることが好ましい。配線用溝部の形成が容易だからである。
なお、ここでいうインプリント法とは、凹凸をエンボス加工、刻印、型により付与する方法をいうものである。
上記無機材料としては、例えば、ガラス(例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなど)、アルミナ等を挙げることができる。
上記樹脂材料としては、一般的な樹脂材料を用いることができる。樹脂材料の好適な具体例としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス−エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリノルボルネン等のポリシクロオレフィン、液晶性高分子化合物等が挙げられる。
本発明においては、樹脂材料として熱可塑性樹脂を用いること、すなわち、支持基材が熱可塑性樹脂基材である場合には、後述する熱インプリント法により直接パターンを転写することが可能である。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アセタール系樹脂、フェノキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。
上記硬化性樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂や、光硬化性樹脂等が挙げられる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
上記光硬化性樹脂としては、例えば、光ラジカル硬化反応を用いるラジカル重合型樹脂、光カチオン硬化反応を用いるカチオン重合型樹脂を挙げることができる。
上記ラジカル重合型樹脂としては、例えば、アクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーなどの化合物が挙げられる。
上記カチオン重合型樹脂としては、例えば、ビニル基、エポキシ基や、オキセタニル基等の光カチオン重合性基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーなどの化合物が挙げられる。
なお、光硬化性樹脂を用いる場合には、1種類のみを用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。上記光硬化性樹脂として、例えば、ラジカル重合型樹脂とカチオン重合型樹脂とを併用してもよい。
上記無機硬化性材料としては、例えば、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート等の前駆体を、加水分解による重縮合により硬化させた材料が挙げられ、金属としては、Si、Ti、Al、Znなどが挙げられる。
また、上記無機構造に有機構造を組み合わせた有機無機ハイブリッド硬化性材料としては、例えば、ポリシロキサン等の無機骨格にエチレン性不飽和二重結合等の光硬化性有機官能基が結合した材料や、シスセスキオキサンコポリマー等が挙げられる。
上記光硬化性樹脂を用いる場合は、支持基材として、透明なものを用いることが、支持基材を通して光を照射し硬化できるために好ましい。
上記厚みは、上記基材の層構造が多層構造である場合には、上記基材を構成する全ての層の合計の厚みをいうものである。
なお、上記幅は、配線用溝部の配線方向に直交する距離のうち最も広い箇所の幅をいうものであり、通常、配線用溝部の境界間の距離とすることができる。上記幅は、具体的には、図1(a)中のaで示されるものである。
上記深さは、例えば、0.05μm〜50μmの範囲内とすることができ、なかでも0.1μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。なお、上記深さは、配線用溝部の最も深い箇所と配線用溝部の上面の距離をいうものである。配線用溝部の上面は、配線用溝部の境界で隣接する平面部の上面と同じ高さの面をいうものである。上記深さは、具体的には、図1(a)中のbで示されるものである。
上記配線用溝部の断面形状は、所望の導電性の多孔性導電層を形成可能なものであれば特に限定されるものではない。上記断面形状は、例えば、矩形だけではなく、くさび型、台形、半球型またはその組合せとすることができる。
上記平面部は、凹凸表面を有するものであっても良いが、通常、平坦面を有するものである。
上記基材のインプリント法を用いた形成方法は、より具体的には、配線用溝部を形成可能な凹凸パターンが表面に形成されたテンプレート(モールド、スタンパとも言われる。)を準備し、支持基材表面に塗布形成された表面層用材料の塗膜に上記テンプレートを押し付けて、力学的に変形させて凹凸パターンを上記塗膜に精密に転写することにより、配線用溝部が形成された表面層を形成することで、支持基材および支持基材上に形成され、配線用溝部が形成された表面層を有する基材を得る方法とすることができる。
なお、テンプレートの凹凸パターンを表面層材料に転写して得られた表面層を、さらにテンプレートとして用いることも可能である。
また、テンプレートは、表面が離型処理されていることが好ましい。
本工程に用いられるナノ粒子分散液は、金属ナノ粒子および分散媒を含むものである。
本工程に用いられる金属ナノ粒子は、多孔性導電層を形成した際に導電性を発揮することができるものであればよい。
このような金属ナノ粒子は、金属状態のナノ粒子に加えて、合金状態のナノ粒子や、金属化合物のナノ粒子等も含まれるものである。
また、金属化合物の粒子を構成する金属化合物としては、例えば金属酸化物、金属窒化物、金属水素化物、金属水酸化物、有機金属化合物等が挙げられる。これらの金属化合物は、焼成時に分解されて金属状態となるものであることが好ましい。例えば、還元して導電性を発現する金属化合物の粒子、具体的には酸化第一銅、酸化第二銅、酸化銀、窒化銅、水素化銅等の金属化合物の粒子を挙げることができる。また、金属酸化物としては、例えば酸化インジウム錫、アンチモンドープ酸化錫等も挙げられる。
本発明においては、なかでも、上記金属ナノ粒子を構成する材料が、銀または銅であること、すなわち、上記金属ナノ粒子が銀ナノ粒子または銅ナノ粒子であることが好ましく、特に銅であること、すなわち、上記金属ナノ粒子が銅ナノ粒子であることが好ましい。上記金属ナノ粒子を構成する材料が上述の材料であることにより、導電パターン基板を導電性およびコストに優れたものとすることができるからである。
なお、本工程において、略球状とは、球状に近似できる略球状の他、真球も含むものである。
上記平均一次粒径は、1nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、2nm〜150nmの範囲内であることが好ましく、特に、10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。上記粒径であることにより、強度および導電性に優れた多孔性導電層を形成できるからである。
なお、上記金属ナノ粒子の平均一次粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、透過型電子顕微鏡写真(TEM)(例えば、日立ハイテク製 H−7650)にて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の一次粒子の最長部の長さの平均値を平均一次粒径とすることができる。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
なお、固形分中とは、分散媒以外の全ての成分を含むものである。
本工程に用いられる分散媒としては、上記金属ナノ粒子を安定的に分散可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水、有機溶媒を用いることができる。
上記有機溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルアルコールアセテート類、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、テトラデカン等の脂肪族炭化水素等の炭化水素類、アミド類、ラクトン類等を用いることができる。
上記分散媒の含有量は、上記ナノ粒子分散液中に5質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、10質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましく、特に15質量%〜85質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、上記ナノ粒子分散液を配線用溝部内に安定的に充填可能なものとすることができきるからである。
本工程に用いられるナノ粒子分散液は、金属ナノ粒子および分散媒を含むものであるが、必要に応じてその他の成分を含むものであってもよい。
上記その他の成分は、金属ナノ粒子を分散媒中で安定化を目的とする金属ナノ粒子の表面を覆う分散保護剤、基材への密着性、成膜性および印刷適性向上を目的とするバインダ成分を含むものであっても良い。
上記その他の成分は、必要に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、安定剤等を含むものであっても良い。
また、金属ナノ粒子の合成法によっては、原料の熱分解物や酸化物が粒子表面を保護し、分散性に寄与する場合もある。熱分解法や化学還元法等の湿式法の場合は、還元剤等がそのまま金属ナノ粒子の保護剤として作用することがある。
本工程における上記ナノ粒子分散液の塗布方法としては、基材の全面にナノ粒子分散液を塗布することができる方法を用いることができる。
上記塗布方法は、例えばスピンコート法、ダイコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法等の一般的な塗布方法から適宜選択することができる。
本発明における乾燥工程は、上記基材上に塗布された上記ナノ粒子分散液を乾燥させ、上記金属ナノ粒子を含む塗膜を形成する工程である。
上記乾燥方法は、具体的には、減圧乾燥、加熱乾燥、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。常圧で乾燥させる場合、基材が劣化しない温度範囲で乾燥させることが好ましい。
上記乾燥方法は、より具体的には、50℃〜300℃の範囲内の温度で、1分〜120分程度加熱処理する方法とすることができる。また、加熱処理時の雰囲気としては、大気下または酸素を含む雰囲気とすることができる。
ここで、上記境界で破断しているとは、平面視上、上記境界の全てで破断しているものに限らず、境界の一部で破断しているものも含むものである。
本工程においては、なかでも、上記塗膜が、平面視上、上記境界の全てで破断していることが好ましい。上記剥離工程で上記配線用溝部以外の上記基材表面に形成された上記多孔性導電層を容易に剥離可能とすることができるからである。
本工程においては、配線用溝部内に形成された塗膜の上面が、配線用溝部の上面と同じまたは上面より低いことが好ましく、なかでも、配線用溝部の上面より低いことが好ましい。上記塗膜が配線用溝部の境界で破断したものとすることが容易だからである。また、焼成工程において配線用溝部に形成される多孔性導電層の上面も配線用溝部の上面と同じまたは上面より低いものとすることができ、剥離工程において配線用溝部内の多孔性導電層を安定的に残すことができるからである。例えば、剥離工程が剥離用基材として粘着テープを用いて平面部上の多孔性導電層を剥離する場合、粘着テープが配線用溝部内の多孔性導電層に接触することを効果的に抑制できるからである。
なお、上記塗膜の上面は、配線用溝部内の塗膜の最も表面側をいうものである。既に説明した図1(c)は、上記塗膜の上面が配線用溝部の上面と同じである場合の一例を示す概略断面図である。図2は、上記塗膜の上面が配線用溝部の上面より低い場合の一例を示す概略断面図である。
なお、上記平面部上の塗膜の厚みは、平面部上の塗膜の最も厚みが厚い箇所での厚みをいうものである。上記厚みは、具体的には既に説明した図1(c)中のcで示される距離である。
本発明における焼結工程は、上記塗膜に含まれる上記金属ナノ粒子同士を焼結させ、多孔性導電層を形成する工程である。
上記焼成方法としては、例えば、加熱処理、光処理およびプラズマ処理等を挙げることができる。
上記加熱処理としては、例えばホットプレート加熱、熱風加熱、熱板や熱ロールによるホットプレス法が挙げられる。
上記光処理としては、レーザー処理、紫外線ランプ処理、赤外線ランプ処理、遠赤外線ランプ処理、フラッシュ光ランプ処理等が挙げられる。
上記プラズマ処理は、還元性を示す水素、一酸化炭素、アンモニア、アルコール等のガスを電離してプラズマ状態とし、反応性の高い活性種を生成させる処理であり、例えば、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ、容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、大気圧プラズマ、マイクロ波プラズマ、マイクロ波エネルギーの印加により発生する表面波プラズマ等が挙げられる。
本発明においては、なかでも、上記焼成方法が、表面波プラズマを用いるプラズマ処理(以下、表面波プラズマ処理と称する場合がある。)であること、すなわち、上記焼結工程が、表面波プラズマ処理により上記塗膜を焼成することで、上記金属ナノ粒子同士を焼結させるものであることが好ましい。表面波プラズマ処理は、塗膜の表面側から金属ナノ粒子の焼結を進行させやすい傾向にある。このため、基材への熱ダメージを抑制できる。また、底部側が表面側より焼結の程度が少なくなるように焼結することが容易であり、配線用溝部内の塗膜に含まれる金属ナノ粒子について、底部側を表面側より焼結の程度が少なくなるように焼結することができる。これにより、配線用溝部に基材との密着性に優れた多孔性導電層とすることができるからである。
なお、上記焼結方法は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、処理室内に発生させるマイクロ表面波プラズマとしては、電子温度が約1eV以下、電子密度が約1×1011cm−3〜1×1013cm−3とすることができる。
金属を含有する多孔性導電層を形成する場合には、不活性ガスまたは還元性ガスの雰囲気とすることが好ましく、中でも還元性ガスとすることが好ましい。特に金属が卑金属である場合には、還元性ガスの雰囲気であることが好ましい。還元性ガス雰囲気の場合、金属ナノ粒子表面に存在する酸化物が還元除去され、導電性の良好な多孔性導電層を形成することができる。そのため、金属を含有する多孔性導電層を形成する場合には、金属ナノ粒子として、表面が酸化されている金属ナノ粒子や、内部まで酸化されている金属ナノ粒子を用いることができる。
還元性ガスには、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスを混合してもよい。この場合、プラズマが発生し易くなる等の効果がある。
焼成時間としては、金属ナノ粒子の種類、焼成方法等に応じて適宜選択される。例えば銀ナノ粒子を加熱処理により焼成する場合、焼成時間は10分〜120分の範囲内、中でも15分〜40分の範囲内であることが好ましい。また、例えば銅ナノ粒子を水素プラズマにより焼成する場合、焼成時間は1分〜10分の範囲内、中でも2分〜5分の範囲内であることが好ましい。
このような多孔性導電層は、金属ナノ粒子の焼結の程度が厚み方向に均一であっても良いが、配線用溝部内の多孔性導電層は、底部側が表面側より焼結の程度が低くなるように焼結したものであることが好ましい。底部側の金属ナノ粒子の焼結の程度が低いことで、配線用溝部に基材との密着性に優れた多孔性導電層を形成できるからである。
ここで、焼結の程度については、焼結の程度が低いほど、原材料としての金属ナノ粒子が原型を残している。したがって、底部側が表面側より焼結の程度が低い場合には、底部側ほど粒子形状を維持していることで確認することができる。
金属ナノ粒子が原型を残している程度の確認方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて多孔性導電層の断面観察を行う方法を用いることができる。
また、焼結の程度が低いほど、ナノ粒子分散液に添加されていた樹脂等の有機物由来の残渣が多い。したがって、焼結の程度が低い場合には、有機物の残存量が多いことで確認することができる。
上記平面部上の多孔性導電層の空孔率としては、5%〜50%の範囲内であることが好ましく、なかでも、10%〜45%の範囲内であることが好ましく、特に15%〜40%の範囲内であることが好ましい。上記空孔率が上述の範囲内であることにより、多孔性導電層を面方向に十分な強度で結合したものとすることができるからである。このため、上記多孔性導電層を剥離工程において剥離容易なものとすることができるからである。
なお、空孔率は、下記の方法により測定することができる。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて多孔質膜の断面観察を行い、得られたSEM像から孔の面積と多孔性導電層の面積とをそれぞれ算出し、孔の面積を多孔性導電層の面積で除することにより上記断面における空孔率を求めることができる。また、空孔率は、基材を除く多孔性導電層から算出し、基材と多孔性導電層と界面の孔は、多孔性導電層の方に含める。
そして、導電パターン基板の大きさに応じて適宜複数の断面について同様に空孔率を求め、その平均値を多孔性導電層の空孔率とする。
上記断面観察を行う面積としては、各箇所で50nm×50nm以上とすることができる。
また、上記空孔率の平均値は、より具体的には、ランダムに選択された10箇所以上で求められた空孔率の平均値とすることができる。
本発明における剥離工程は、上記配線用溝部以外の上記基材表面に形成された上記多孔性導電層を剥離する工程である。
本発明においては、上記剥離方法が、粘着性または接着性を有する剥離用基材を上記配線用溝部以外の上記基材表面に形成された上記多孔性導電層のみに接触させたのち、上記剥離用基材とともに上記多孔性導電層を剥離する方法であることが好ましい。上記多孔性導電層を容易に剥離できるからである。
このような剥離用基材としては、支持用基材、および支持用基材上に形成され、粘着剤を含む粘着層または接着剤を含む接着層を有するものとすることができる。
上記支持用基材の形状は、フィルム形状であってもよくローラー形状であってもよい。すなわち、上記剥離用基材は、粘着テープ、微粘着テープ等の粘着性または接着性を有する剥離用フィルム、粘着ローラー、微粘着ローラー等の粘着性または接着性を有する剥離用ローラー等とすることができる。
上記粘着層に含まれる粘着剤および接着層に含まれる接着剤としては、上記粘着層および接着層のそれぞれと、多孔性導電層との密着力が、基材および多孔性導電層の密着力よりも大きくなるものであればよく、一般的な接着剤、粘着剤から適宜選択することができる。
上記支持用基材としては、接着層または粘着層を支持することができるものであればよく、例えばガラス基材、樹脂基材等を挙げることができる。
本発明の導電パターン基板の製造方法は、上記塗布工程、乾燥工程、焼結工程および剥離工程を有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有するものであってもよい。
上記その他の工程としては、上記剥離工程後に、配線用溝部内に形成された多孔性導電層を覆うように保護層を形成する保護層形成工程を挙げることができる。
上記保護層を構成する材料としては、絶縁性を有すものであれば良く、例えば、上記基材の構成材料と同様とすることができる。
より具体的には、上記導電パターン基板は、透明導電膜、電磁波シールド材、アンテナ、ノイズフィルタ、タッチパネルセンサ、発光素子、ディスプレイ用電極、太陽電池用電極等に利用することができる。
200ml三ッ口フラスコ中に、水酸化銅 10.0g(和光純薬工業製)、デカン酸 34.5g(花王製ルナック10−98)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)18.5gを量り取った。この混合液を撹拌しながら100℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、3−エトキシプロピルアミン 41.3g(広栄化学工業製)を添加し、100℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を、氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 10.0gをPGME 18.5g(関東化学製)に溶解させた溶液を添加し、10分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。30℃まで冷却後、ヘキサン66gを添加した。遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、銅粒子を得た。
得られた銅粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は65nmであった。
次の手順で、銅ナノ粒子分散液を調製した。合成例で得られた銅粒子 3.0質量部、ソルスパース41000(日本ルーブリゾール製) 0.3質量部、PGME 4.2質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、銅ナノ粒子分散液を得た。
シリコン基材上に、エッチング法により形成された幅の異なる2種類のライン状の溝パターンが形成されたものを用意し、ジメチルポリシロキサン膜に転写したものを、マスター版とした。
なお、2種類のライン上の溝パターンは、幅が1.0μmおよび2.0μmの2種類であり、長さが10mm、深さが5.0μm、断面形状が長方形状とした。
次いで、支持基材として準備した厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)に、紫外線硬化型樹脂を塗布、マスター版を重ね合わせた後、紫外線硬化型樹脂(セイカビームPCD04、大日精化製)に対して、紫外線ランプ(フュージョンUVシステムズ社製、Hバルブ)を用い、200mJ/cm2の積算露光量で基材側から露光した後、マスター版を取り外した。これにより、支持基材上に紫外線硬化型樹脂が硬化して形成され、かつ、配線用溝部を有する表面層を有する基材を得た。配線用溝部は、幅が1.0μmおよび2.0μmの2種類であり、それぞれ深さが3.5μmであり、その断面形状は長方形状であることを走査型電子顕微鏡(SEM)観察により確認した。
製造例で調整した銅ナノ粒子分散液を、製造例で作製した配線用溝部を有する基材にバーコーターで塗布し、80℃のオーブンで2分間乾燥し、塗膜を形成した。塗膜を顕微鏡により観察したところ、塗膜は、配線用溝部の境界で破断が生じていることが確認された。
その後、水素ガスを導入圧力20Paで導入しながら、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子株式会社製)を用いて、マイクロ波出力450Wで240秒間、塗膜を焼成し、銅粒子同士が焼結した多孔性銅層を形成した。これにより導電性基板を得た。
得られた多孔性銅層は、顕微鏡観察の結果、配線用溝部の境界で破断が生じていることが確認された。
続いて、剥離用基材としての粘着テープを、配線用溝部以外の基材表面に形成された多孔性銅層のみに接触させたのち剥離したところ、配線用溝部以外の基材表面に形成された多孔性銅層を剥離することができた。これにより、導電パターン基板を得た。
その後、配線用溝部内に残存した多孔性銅層を顕微鏡により観察した結果、配線用溝部内で断線がない多孔性銅層が得られていることが確認できた。また、配線用溝部以外の基材表面以外に、多孔性銅層の残りは観察されなかった。
なお、導電性基板および導電パターン基板を顕微鏡で観察した結果を図3に示す。図3は、導電性基板および導電パターン基板の2.0μm幅の配線用溝部周辺の観察結果であり、図3(a)は透過光観察であり、図3(b)は反射光観察である。図3(a)では、配線用溝部の境界で光の透過が観察され、配線用溝部の境界で破断が生じていることが確認できた。また、図3(b)では、配線用溝部の箇所のみが銅色で着色し、平面部はステージの色が透過して観察されることが確認できた。
銀ナノ粒子インク(商品名 MDot CF107、三ツ星ベルト製、銀粒子の平均一次粒径;100nm以下)を、メタノールで銀ナノ粒子の銀ナノ粒子分散液中の含有量が40質量%になるよう希釈して、銀ナノ粒子分散液を得た。
製造例で作製した配線用溝部を有する基材に、銀ナノ粒子分散液をバーコーターで塗布した後、分散媒を乾燥することにより塗膜を形成した。塗膜を顕微鏡により観察したところ、塗膜は、配線用溝部の境界で破断が生じていることが確認された。
次いで、上記基材を120℃の熱風炉で30分間加熱することにより、塗膜を焼成し、塗膜に含まれる銀ナノ粒子同士を焼結させた。これにより導電性基板を得た。
得られた多孔性銀層は、顕微鏡観察の結果、配線用溝部の境界で破断が生じていることが確認された。
続いて、剥離用基材としての粘着テープを、配線用溝部以外の基材表面に形成された多孔性銀層のみに接触させたのち剥離したところ、配線用溝部以外の基材表面に形成された多孔性銀層を剥離することができた。これにより、導電パターン基板を得た。
その後、配線用溝部内に残存した多孔性銀層を顕微鏡により観察した結果、配線用溝部内で断線がない多孔性銀層が得られていることが確認できた。また、配線用溝部以外の基材表面以外に、多孔性銀層の残りは観察されなかった。
(多孔性導電層の膜厚の測定)
上記実施例で得られた導電性基板および導電パターン基板について、膜厚評価を行った。各実施例で作製した導電性基板および導電パターン基板について保護層として多孔性導電層上部に真空蒸着法にてカーボンを、スパッタ法にて白金を順次積層し、次いでFIB(集束イオンビーム、日立ハイテク製 FB−2100)を用いてタングステンを積層後、多孔性導電層の断面を作製した。
その後、SEM(日立ハイテク製 S−4800)を用いて基材を45°傾斜させた状態にて多孔性導電層断面を観察し、SEM像より膜厚を測定した。膜厚は30k〜40kの倍率で測定したSEM像内で10箇所測長し、傾斜分を補正した後、その平均値を膜厚とした。
実施例1の導電性基板において、配線用溝部以外の基材表面に形成された多孔性銅層の膜厚は250nmであった。
実施例1の導電パターン基板の断面観察の結果、1.0μm幅および2.0μm幅の配線用溝部の両者ともに、多孔性銅層が充填されていることを確認した。また、1.0μm幅および2.0μm幅の配線用溝部内の多孔性銅層の膜厚は、それぞれ、1.5μmおよび1.5μmであった。
実施例2の導電性基板において、配線用溝部以外の基材表面に形成された多孔性銀層の膜厚は200nmであった。
実施例2の導電パターン基板の断面観察の結果、1.0μm幅および2.0μm幅の配線用溝部の両者ともに、多孔性銀層が充填されていることを確認した。また、1.0μm幅および2.0μm幅の配線用溝部内の多孔性銀層の膜厚はそれぞれ、0.7μmおよび3.0μmであった。
なお、実施例1の1.0μm幅の配線用溝部周辺のSEM像を図4に示す。
実施例で作製した導電パターン性基板の配線用溝部に形成された多孔性導電層の空孔率を測定した。
測定は、上記「多孔性導電層の膜厚の測定」と同様の方法により30k〜40kの倍率で撮影したSEM像を用いた。
また、空孔率は、多孔性導電層の異なる10箇所で測定し、平均(各箇所での空孔率の合計を10で除したもの)することにより求めた。
なお、各箇所での空孔率の測定はSEM像内の700nm×700nmの正方形断面内で行った。
その結果、実施例1の多孔性導電層の空孔率は35%であり、実施例2の多孔性導電層の空孔率は30%であった。
実施例で得られた導電性基板の配線用溝部以外の基材表面に形成された多孔性導電層について、導電性評価を行った。多孔性導電層のシート抵抗値の測定は、表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ製「ロレスタGP」、PSPプローブタイプ)を用いて、上記多孔性導電層に4探針を接触させ、4探針法によりシート抵抗値を測定することにより行った。
実施例1の多孔性銅層のシート抵抗値は0.25Ω/□であり、実施例2の多孔性銀層のシート抵抗値は0.19Ω/□であった。
1a … 配線用溝部
1b … 平面部
2 … ナノ粒子分散液
3 … 塗膜
4 … 多孔性導電層
5 … 剥離用基材
10 … 導電パターン基板
Claims (3)
- 配線が形成される溝部である配線用溝部を一方の表面に有する基材を準備し、
前記基材の前記配線用溝部が形成された表面に、金属ナノ粒子および分散媒を含むナノ粒子分散液を塗布する塗布工程と、
前記基材上に塗布された前記ナノ粒子分散液を乾燥させ、前記配線用溝部の境界で破断された前記金属ナノ粒子を含む塗膜を形成する乾燥工程と、
前記塗膜に含まれる前記金属ナノ粒子同士を焼結させ、多孔性導電層を形成する焼結工程と、
前記配線用溝部以外の前記基材表面に形成された前記多孔性導電層を剥離する剥離工程と、
を有し、
前記配線用溝部の幅が、0.1μm〜50μmの範囲内であり、かつ深さが、0.1μm〜30μmの範囲内であり、
前記剥離工程が、粘着性または接着性を有する剥離用基材を前記配線用溝部以外の前記基材表面に形成された前記多孔性導電層のみに接触させたのち、前記剥離用基材とともに前記多孔性導電層を剥離するものであることを特徴とする導電パターン基板の製造方法。 - 前記金属ナノ粒子が、銀ナノ粒子または銅ナノ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の導電パターン基板の製造方法。
- 前記焼結工程が、表面波プラズマ処理により前記塗膜を焼成することで、前記金属ナノ粒子同士を焼結させるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電パターン基板の製造方法。
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