JP6562196B2 - 銅微粒子焼結体と導電性基板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、プリント基板等の回路形成材料、その他の微小配線材料や帯電防止材、電磁波遮断材、赤外線遮断材等の分野において有用な、導電性の銅微粒子焼結体とこれを基板上に有する導電性基板の製造方法に関するものである。
金属微粒子を含む導電性インクを既存の印刷技術を利用して所定の配線パターンとして描画させるプリンテッドエレクトロニクスは、従来のプリント基板作製法で用いられる露光やエッチングを必要とせず有害な化学物質を排出しないクリーンな製造工程として近年注目されている。その際の印刷技術としてはドクターブレード、ダイコーター、バーコーター、フローコーター、スピンコーターなどの塗工機や、スクリーン印刷、インクジェット、スプレーなどが知られている。また、導電性インクは主に金属微粒子に加えて分散安定剤、有機溶剤で構成されるが、コーターやスクリーン印刷では、インクに適度な流動性や接着性を与えるため焼成バインダーが添加される。焼成バインダーにはアクリル、フェノール、エポキシ等の合成樹脂や、アセチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類、ゴム類などが用いられる。
ただ、印刷された導電性インクはそのままの状態では独立した微粒子の集合体であるため、導電性は極めて低い。このため、加熱処理をして金属微粒子の焼結体を形成することで導電性を付与している。一般的な金属の焼結は1000℃以上の温度で行われるが、プリント配線材料への適用においては、基板材料のエポキシ樹脂の熱分解温度250〜350℃を下回る低温での焼結が求められる。このための低温焼結法としては、金属粒子をnmオーダーまで微粒化させることで、バルク材料よりも低温度で原子や分子の移動が生じ、焼結が容易となることが知られている。そして、金属微粒子の生成過程においては、粒子径を制御するための有機保護剤が用いられ、これに伴い生成された微粒子は有機保護層により覆われている。焼結現象は金属粒子同士が接していなければ生じないため、焼結時はこれらの有機保護層を除去する必要があり、これまでにも様々な手法が考案されている。例えば、銅微粒子の周囲を覆う有機保護層を含酸素雰囲気中で分解させた後、含水素もしくは不活性雰囲気中で還元させる二段階の焼成手法により導電性薄膜を得る手法が考案されている(特許文献1、非特許文献1)。
こうして作製された配線材は、電気絶縁性の担保と、湿度環境におけるイオンマイグレーション防止のため、ソルダーレジストが施されて使用される。ソルダーレジストは基板全面にレジスト剤を印刷した後、レジスト形成面を紫外線硬化させ、アルカリ洗浄液で未硬化部分を洗浄除去して形成される。
特開2007−262446号公報
Thin Solid Films 520 (2012) 2789-2793
前記の特許文献1および非特許文献1の方法では、第一の焼成工程で微粒子周囲の有機保護剤を加熱分解して除去しているが、焼成バインダーをインクに添加した場合には、大量のバインダー樹脂が微粒子周囲に展開されることになり、これらを分解除去することは困難と考えられる。よって、この手法を焼成バインダーが必要となる塗工機やスクリーン印刷に適用することは難しい。
金属微粒子が小さいほど焼結温度低下が見込めるが、サブミクロンを下回る微粒子は凝集力が強いため溶液中で分散させることが難しい。また、粒子が小さいほど表面積が大きくなり、必然的に粒子周囲を覆う有機保護剤の量が多くなる。多量の保護剤は加熱分解を困難にする他、時折、インクのゲル化などを引き起こし、凝集しやすい粒子特性と相まって、インクジェットやスプレーなどのノズル詰まりなどの原因になりかねない。
そして様々な提案がなされている従来の技術における大きな問題点は、化学物質によるエッチングを必要としないクリーンな製造工程として注目されているプリンテッドエレクトロニクスにおいても、配線形成後にソルダーレジストの塗工が必要であり、その工程は従来のプリント基板と同様に紫外線照射や有害な化学物質の使用を余儀なくされている点である。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、焼成バインダーを用いる塗工機やスクリーン印刷への適用が可能であって、多量の保護剤を必要とすることなく、ソルダーレジスト塗工にともなう不都合も懸念されない、導電性銅微粒焼結体とこれを用いた導電性基板の新しい製造方法を提供することを課題としている。
本発明の製造方法は以下のことを特徴としている。
すなわち、少なくとも次の処理工程をもって基板上に樹脂被膜を有する銅微粒子の焼結体を生成させることを特徴とする導電性の銅微粒子焼結体の製造方法である。
(A)銅微粒子および焼成バインダーを含有する導電性インクの基板上への塗布
(B)前記塗布後の銅微粒子のうちの亜酸化銅(Cu2O)分率が7質量%以上となるものとする酸化処理
(C)前記酸化処理後の還元処理
上記製造方法においては、基板上に塗布する銅微粒子の平均粒子径は100nm以上であることが好ましい。
また、焼成バインダーの熱分解開始温度は、酸化処理および還元処理の温度よりも高いことが好ましい。
空気中での加熱による酸化処理であることや、水素による還元処理であることも好ましい。
そして本発明は、以上方法により形成することを特徴とする導電性基板の製造方法も提供する。
また、上記の方法により得られたものであることを特徴とする銅微粒子焼結体と、導電性基板も提供する。
上記のとおりの本発明においては、銅微粒子は平均粒子径が100nm以上粒子を使用することができる。導電性インクは従来通りの手法で、有機保護層を有する銅微粒子、分散安定剤、有機溶剤、焼成バインダーにより構成するが、焼成バインダー樹脂は焼成温度より熱分解開始温度が高い材料を用いることが好ましい。作製した銅微粒子インクを基板に塗工後、焼成ターゲット温度の空気中で銅微粒子を亜酸化銅が7質量%以上になるまで酸化させる。その後、微量の水素を含む不活性雰囲気で還元し、導電性薄膜を得る。
本発明によれば、導電性インクにはバインダー樹脂が含まれるため、インクに適度な流動性や接着性が付与され、いかなる印刷手法にも適用可能となる。100nmを超える銅微粒子は粒子の凝集力を低下させインクの分散性の向上に寄与する。基板に塗工された銅微粒子は、亜酸化銅が7質量%以上になるまで空気中で加熱酸化されることで、銅と亜酸化銅の密度差により粒子の膨張が生じ、バインダー樹脂や有機保護剤の存在下においても隣接する金属粒子と接触することが可能となり焼結を容易にする。また、この時に生じる亜酸化銅微粒子は数10nm以下であるため、後の微量の水素を含む不活性雰囲気での加熱処理により銅に還元される過程で、融点降下による焼結が進行しやすい利点がある。一方、バインダー樹脂の熱分解開始温度は焼成温度よりも高いため、一部は還元雰囲気により炭化すると思われるものの、大半が加熱の影響を受けずに残り、焼結された銅微粒子の周囲に被膜を形成する。バインダー樹脂にアクリル樹脂、フェノール樹脂、エチルセルロース等の疎水性かつ熱安定性を有する材料を用いることで、ソルダーレジストと同様の機能を付与することが可能である。
このようにして得られた導電性基板は、焼結により高い導電性が付与されると同時に、バインダー樹脂が焼結体の周囲に被膜を形成する。バインダー樹脂に疎水性と熱安定性に優れた材料を選定することで、作製した導電性基板にソルダーレジストと同様の機能を有するレジスト層を付与することが可能となる。以上により、本手法を用いれば、配線パターンの印刷から焼成に至る一連の工程で、レジスト層までを同時に形成することが可能となり、工程の大幅削減に寄与する他、有害な化学物質を一切排出しないクリーンな製造工程が実現可能となる。
実施例1でのビヒクルTG計測結果。 実施例1で得られた銅薄膜の断面SEM像。 実施例1でのXRD計測結果。 実施例1での印刷後のSEM像。 実施例1での酸化処理後のSEM像。 実施例1での還元処理後のSEM像。 実施例1の各工程での粒子形状のTEM像。 実施例1での酸化処理後粒子の高倍率TEM像。 本発明の焼結メカニズムの模式図。 実施例2で得られた銅薄膜の断面SEM像。 実施例2でのXRD計測結果。 実施例2での酸化処理後のSEM像。 実施例2での還元処理後のSEM像。 比較例1でのXRD計測結果。 比較例1での還元処理後のSEM像。
本発明の導電性の銅微粒子焼結体並びに導電性基板の製造方法は、前記のとおり、少なくとも次の処理工程をもって基板上に樹脂被膜を有する銅微粒子の焼結体を生成させることを必須としている。
(A)銅微粒子および焼成バインダーを含有する導電性インクの基板上への塗布。
(B)前記塗布後の銅微粒子のうちの亜酸化銅(Cu2O)分率が7質量%以上となるものとする銅微粒子の酸化処理。
(C)前記酸化処理後の還元処理。
まず処理工程(A)における導電性インクについて説明すると、銅微粒子と焼成バインダーを含むことを必須としている。ここで銅微粒子は平均粒子径が100nm以上であることが好ましい。このような銅微粒子の製造、調製方法については特に限定されないが、例えば、ヒドラジン還元法、ポリオール法、レーザーアブレーション法、液中プラズマ法等の方法が例示される。
前記のとおり、本発明においては、好ましくは、銅粒子の凝集力を低下させるために、平均粒子径を100nm以上とする。さらに好ましくは、平均粒子径は、100nm〜300nmの範囲内である。
ここで、銅粒子の平均粒子径は、SEM写真観察により視野から50個の粒子を無作為に抽出し、その投影径(定方向径)の数平均として求めることができる。
そして焼成バインダーについては、その熱分解開始温度は、酸化処理および還元処理の温度よりも高いことや、疎水性、熱安定性を有する材料が好ましい。さらに粘性、取扱い性等を考慮すると、例えばセルロース系材料が好適なものとして例示される。エチルセルロース、寒天、ポリビニルブチラール、ポリアクリル、PEEK、ウレタン、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン等の高分子およびその共重合体等である。これ以外にもフェノール樹脂系材料、エポキシ系材料なども考慮される。
本発明においては、焼結により高い導電性が付与されると同時に、焼成バインダー樹脂が焼結体の周囲に被膜を形成する。バインダー樹脂に疎水性と熱安定性に優れた材料を選定することで、作製した導電性基板にソルダーレジストと同様の機能を有するレジスト層を付与することが可能となる。配線パターンの印刷から焼成に至る一連の工程で、レジスト層までを同時に形成することが可能となり、工程の大幅削減に寄与する他、有害な化学物質を一切排出しないクリーンな製造工程が実現可能となる。また水素を含む不活性雰囲気における(C)還元処理工程においては、銅微粒子焼結体を内包したバインダー樹脂の表面が炭化することも考えられ、そのような場合には、より疎水性が付与されることでレジスト層の機能が強化されることを補足しておく。
また、エチルセルロースは150℃程度まで加熱することで軟化するため、焼結前工程における亜酸化銅形成による銅微粒子同士の接触を容易ならしめる上、また亜酸化銅の還元時には速やかに流動して焼結体の周囲に被膜を形成できる点で望ましい。
導電性インクには、さらに分散剤、溶媒等の配合が考慮される。分散剤としては、例えば、ポリアミン型、ポリカルボン酸型などの高分子型分散剤、アルキルポリアミンなどの界面活性剤、等が例示される。また溶媒としてはテルピネオール、エチレングリコール等が例示される。
導電性インクの組成割合については、全体を100質量%とすると、一般的に次の範囲が例示される。
銅微粒子:10重量〜70重量%
焼成バインダー: 10重量%以下
分散剤:0重量〜10重量%
溶媒:30重量〜90重量%
この組成割合について、処理工程(B)(C)において銅微粒子は焼成時に焼成バインダーの存在レベルを超えていることが好ましいことから、銅微粒子と焼成バインダーとの配合比は
33:1〜10:1(銅微粒子:焼成バインダー 重量比)
の範囲となるようにすることが好ましい。処理工程(B)においては、空気中での加熱や酸素ガスやその不活性ガスとの混合ガス等を用いて加熱することができる。
処理工程(C)においては、水素ガスや水素ガスと不活性ガスとの混合ガス等を用いて加熱することができる。
処理工程(B)では、隣接する銅微粒子同士の接触(後述の実施例3における酸化処理後のシート抵抗10MΩ/sq以下)を考慮すると、銅微粒子における亜酸化銅(Cu2O)分率が7%以上であるようにする。7%〜24%の範囲内であることが好ましい。空気中での加熱処理の場合には、加熱温度は130℃以上170℃以下を目安とすることができる。
これ以外の亜酸化銅(Cu2O)分率の範囲において30%を大きく超える場合は、空気下の加熱温度の目安が200℃を超えるような高温となり(実施例3に示す結果より)、加熱温度を下げるためには別途酸素ガス導入による酸素濃度の調整などが必要となる。また、多量の亜酸化銅の発生に伴い、還元処理に対しても、1)還元時間を長くする、2)還元温度を上げる、3)水素濃度を上げる等の対処が必要になると考えられる。
本発明では、例えば、前記のとおり、100nm以上の銅微粒子は粒子の凝集力を低下させる。導電性インクには焼成バインダー樹脂を添加することで、インクに適度な流動性や接着性を与える。基板に塗工された銅微粒子は、亜酸化銅が7質量%以上になるまで空気中で加熱酸化されることで、銅と亜酸化銅の密度差により粒子の膨張が生じ、バインダー樹脂や有機保護剤の存在下においても隣接する金属粒子と接触する。この時に生じる亜酸化銅微粒子は数10nm以下であるため、後の微量の水素を含む不活性雰囲気での加熱処理により、銅に還元される過程で融点降下による焼結が進行する。バインダー樹脂は焼成温度より熱分解開始温度が高い材料を用いるため、大半は加熱の影響を受けずに残り、焼結された銅微粒子の周囲に被膜を形成する。
以下実施例を示し、さらに詳しく説明する。
<実施例1>
有機保護剤としてゼラチン(新田ゼラチン製)、原料に酸化銅(II)(日進ケムコ製)、還元剤としてヒドラジン一水和物(関東化学製もしくは純正化学製)を用いて銅粒子を合成した。すなわち、まず、ゼラチンと純水を1:30の割合で十分に溶解させた水溶液に対して、酸化銅を8重量部添加し、アンモニア水を用いてpH11に調整した後、撹拌しながら80℃昇温した後、酸化銅1molに対し2.4mol分のヒドラジン一水和物を添加して2時間反応させた。デカント法により上澄み除去および水洗を行ない得られた銅粒子に対して、5重量部の分散剤、53重量部の焼成用ビヒクル(日新化成製ECビヒクル)、53重量部のαテルピネオールを混合した後、超高圧分散機を用いて約48wt%の銅微粒子のインクを調製した。前記焼成用ビヒクルは溶剤と焼成バインダーであるエチルセルロースで構成されており、溶媒は150℃でほぼ全量揮発し、エチルセルロースの分解開始温度はTGの計測結果から約210℃であることがわかっている(図1)。
得られたインクはドクターブレードによりアルミナ基板上に20μmの塗工厚で印刷され、窒素中60℃での溶媒の乾燥、200℃空気中での4時間の酸化処理を経て、200℃の3%水素97%窒素混合雰囲気にて2時間の還元処理をして銅粒子の薄膜焼結体を得た。膜厚はSEM断面の観察結果より約2.7μmであった(図2)。
導電性は抵抗率計測器Loresta-GPにより2cm角の試料で縦横3点ずつ計6点の計測を行い、平均体積抵抗率は3×10-5Ω・cmとバルク銅の1.55×10-6Ω・cmに対して良好な導電性を示した。
焼成過程のXRD測定結果(図3)は、a)印刷後、一旦、b)酸化処理後に試料が酸化された後、c)還元処理後に銅に再還元されていることを示している。XRDによる準定量(RIR法)の結果、この試料の酸化処理後は銅が71wt%、亜酸化銅が29wt%であった。
各工程におけるSEM観察は有機成分の残渣を確認するため、図4、図5、図6に示したように、a)二次電子像とb)反射電子像を撮影して比較した。b)反射電子像は原子番号依存性があることから、金属銅など原子番号の大きいものは明るく、有機成分など原子番号の小さいものは暗い像となる。印刷後は各々が有機成分に覆われた独立した粒子である(図4)。空気中で加熱を行うと数10nm以下の粒子が多く発生して各々の粒子間が接触する(図5)。更に3%水素中で加熱すると微小粒子が結合して焼結体を形成するが、その周囲はバインダー樹脂に覆われた状態であることが確認できる(図6)。
各工程における粒子形状の変化を把握するため、合成した銅微粒子、酸化処理後、還元処理後の試料を少量剥離サンプリングさせてTEM像を観察した(図7)。a)銅粒子(合成後)のb)酸化処理後、100〜200nmほどの銅微粒子の周囲に10nmほどの微小粒子が発生する。c)還元処理後のTEM観察像からは粒子間が焼結されていることが明瞭に確認できる。b)酸化処理後に発生した10nmほどの微小粒子は、高倍率観察で確認された回折格子を計測した結果、a)視野1およびb)視野2の何れも亜酸化銅であることが確認できた(図8)。
以上のことから、本発明での焼成メカニズムは図9のようであると考えられる。a)印刷後の銅微粒子は各々が独立しているが、酸化処理工程では銅微粒子の酸化に伴い発生する亜酸化銅超微粒子形成過程で銅と亜酸化銅の密度差による体積膨張が生じて、隣り合った銅微粒子はバインダー樹脂の層を越えて亜酸化銅超微粒子を通して接触する。このようなb)酸化処理後に還元処理されることで超微粒子間の融点降下により焼結がなされると考えられる。c)還元処理後は体積収縮が生じるため、焼結された粒子はバインダー樹脂に内包される。
<実施例2>
実施例1と同じインクをドクターブレードによりアルミナ基板上に塗工厚40μmで印刷し、窒素中60℃での溶媒の乾燥、150℃空気中で4時間の酸化処理を経て、150℃の3%水素97%窒素混合雰囲気にて8時間の還元処理をして銅粒子の薄膜焼結体を得た。膜厚はSEM断面の観察結果より約5.3μmであった(図10)。
導電性は抵抗率計測器Loresta-GPにより2cm角の試料で縦横3点ずつ計6点の計測を行い、平均体積抵抗率は3.1×10-5Ω・cmとバルク銅の1.55×10-6Ω・cmに対して良好な導電性を示した。
焼成過程のXRD測定結果は(図11)、実施例1と同様に、a)印刷後、一旦、b)酸化処理後、c)還元処理後に銅に再還元されていることを示している。XRDによる準定量(RIR法)の結果、この試料の酸化処理後は銅が85wt%、亜酸化銅が15wt%であった。
各工程におけるSEM観察は有機成分の残渣を確認するため、実施例1と同様にa)二次電子像とb)反射電子像を撮影して比較した。空気中で加熱して酸化を行うと数10nm以下の粒子が多く発生して各々の粒子間が接触する(図12)。更に3%水素中で加熱して還元すると微小粒子が結合して焼結体を形成するが、その周囲はバインダー樹脂に覆われた状態であることが確認できる(図13)。
比較例
実施例1と同じインクをドクターブレードによりアルミナ基板上に塗工厚40μmで印刷し、窒素中60℃での溶媒の乾燥、200℃窒素中(純度99.99%)で4時間の加熱処理を経て、200℃の3%水素97%窒素混合雰囲気にて4時間の還元処理を実施した。
導電性は抵抗率計測器Loresta-GPにより2cm角の試料で縦横3点ずつ計6点の計測を行ったが、計測不能であり絶縁体であることを確認した。
焼成過程のXRD測定結果(図14)は、a)印刷後のb)熱処理後、並びにc)還元処理後に試料の組成に大きな変化がないことを示している。還元処理後のSEM観察像(図15)は、先に図4で示した印刷後のSEM像と比較しても殆ど変化がなく、各々が有機成分に覆われた独立した粒子であることが確認できる。このことから酸化処理を行わない系では粒子間が焼結されず、導電性が発現しないとことが明確となった。
<実施例3>
実施例1、実施例2と比較例とから、酸化処理後に亜酸化銅を介して銅粒子間が接触することが、その後の還元処理時の焼結に作用することが確認された。そこで、どの程度まで酸化を進行させれば銅粒子間が接触するのかを検討した。
すなわち、実施例1と同じインクを、ドクターブレードによりアルミナ基板上に塗工厚40μmで印刷し、窒素中60℃で溶媒を乾燥させた印刷基板を複数枚用意し、これらを各々100℃、130℃、150℃、200℃の空気中で4時間の酸化処理を行い、XRDによる銅と亜酸化銅の準定量測定と、抵抗率計測器Loresta-GPによる導電性測定を実施した。また、比較例として200℃の窒素中(純度99.99%)で4時間の加熱処理を行ったものも作製し、同様の計測を行った。
結果を表1に示す。窒素中での加熱処理の場合は、酸化処理後に導電性が発現しなかった。空気中においては加熱温度が100℃の場合は導電性が発現しなかったが、130℃、150℃、200℃ではMΩオーダーの導通が確認できた。この結果から空気中では100℃では亜酸化銅の生成が少なく、隣接する銅微粒子同士の十分な接触に至らないため絶縁体を示すが、130℃以上に加熱すると亜酸化銅の生成と同時に抵抗が減少することがわかる。実施例1、実施例2の結果を鑑みると、この段階で隣接する銅微粒子同士が亜酸化銅を介して接触したと考えられる。150℃では亜酸化銅が増えて抵抗はさらに若干減少する。200℃まで温度を上げると抵抗は上昇に転ずる。これは全体に対して亜酸化銅の割合が増えることで、亜酸化銅の固有抵抗が支配的になってくるからと考えられる。以上の結果を踏まえ、さらに検討することで、好ましくは、本系におけるシート抵抗10MΩ/sq以下とするには、亜酸化銅分率が7%以上24%以下、空気中での加熱温度としては130℃以上170℃以下を目安とすることが考慮される。

Claims (5)

  1. 板上に樹脂被膜を有する銅微粒子の焼結体を生成させる、導電性の銅微粒子焼結体の製造方法であって、以下の処理工程:
    (A)銅微粒子および焼成バインダーを含有し、銅微粒子と焼成バインダーとの配合比(銅微粒子:焼成バインダー)が重量比で33:1〜10:1である導電性インクの基板上への塗布
    (B)前記塗布後の銅微粒子のうちの亜酸化銅(Cu2O)分率が7質量%以上であり、かつ、亜酸化銅(Cu 2 O)の粒子直径が数10nm以下になるものとする酸化処理、および
    (C)前記酸化処理後の還元処理
    を含み、
    前記酸化処理および前記還元処理は、130℃以上かつ焼成バインダーの熱分解開始温度より低い温度での加熱によってなされることを特徴とする導電性の銅微粒子焼結体の製造方法。
  2. 基板上に塗布する銅微粒子の平均粒子径は100nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の銅微粒子焼結体の製造方法。
  3. 前記酸化処理は、空気中での加熱であることを特徴とする請求項1または2に記載の銅微粒子焼結体の製造方法。
  4. 銅微粒子の焼結体の周囲に焼成バインダーによる被膜が形成されているとともに、隣接する銅微粒子同士が接触していることを特徴とする銅微粒子焼結体。
  5. 請求項4の銅微粒子焼結体による配線パターンが形成されていることを特徴とする導電性基板。
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