JP2005131851A - 高強度スクリーン印刷用Niメッキシートおよびその製造方法 - Google Patents

高強度スクリーン印刷用Niメッキシートおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電子部品製造工程中のスクリーン印刷に用いられるNiメッキシートの強度の向上を図る。
【解決手段】当該Niメッキシートの製造工程において、金属繊維を編組してメッシュ織物に対してNiメッキを施す工程と、Niメッキ後の前記メッシュ織物を所定の温度下において所定時間保持する工程とを設ける。その際、所定の温度として、120〜240℃の範囲内の温度を選択することとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子部品の製造工程における、例えば電極、回路パターン等を形成するスクリーン印刷工程において用いられるスクリーン印刷用のNiメッキシートおよびその製造方法に関する。より詳細には、微細な形状、薄い厚さを等有する電極等の形成に際して好適に用いられるNiメッキシートおよびその製造方法に関する。
電子部品製造工程におけるスクリーン印刷は、印刷パターンが形成されたスクリーンメッシュを用いて被印刷物、例えばグリーンシート上の所定部分に対して、導電性ペーストを所定形状に形成する際に用いられる。実際のスクリーン印刷工程は、スクリーンメッシュ上面に導電性ペーストを供給し、スキージによってこれをスクリーンメッシュに押し付けることで行われる。この押し付け操作によって、導電性ペースト等がスクリーンメッシュ上の所定パターンを通過する。
その際、スキージによって、スクリーンメッシュはスキージとの接触部分がグリーンシート側に撓ませられ、スクリーンメッシュ下面とセラミックグリーンシート表面との間隔が狭まる。その結果、所定パターンを通過した導電性ペースト等はグリーンシート表面に容易に付着する。同時に、スキージの移動によってこの撓み部分が回復して、セラミックグリーンシート表面における当該接触点以外での不必要な導電性ペースト等の付着防止がなされる。また、このスクリーンメッシュの回復が早やかになされることにより、パターンの端部が急峻に形成され、形成精度の良いパターンが得られる。
電子部品はその小型化、高性能化が積極的に進められており、そこで用いられる電極等も同時にその形状が微細化と、形成位置精度の向上とが進められている。この、形状の微細化と位置精度(以降パターン精度として総称する。)の向上を進めるためには、前述した撓み量を必要最小限とすることが効果的と考えられる。このため、当該工程に用いられるスクリーンメッシュとして、従来用いられていたポリエステル等の繊維と比較して弾性変形量が小さいく且つ強度の高い、例えばステンレススチール等の金属繊維から構成されたものが広範に用いられている。
しかしながら、ステンレススチール等からなる金属細線は、繰り返しの曲げ変形を受けることにより個々の繊維の延びが累積し、印刷により得られるパターン精度が急速に低下するという欠点を有している。このため、このような金属細線の欠点に対する方策として、特許文献1乃至3に開示されるように、金属細線の表面に対して高強度のNiメッキを施すことで得られたスクリーンメッシュが用いられている。
特開平6−179258号公報 特開2000−177099号公報 特開2003−175684号公報
Niメッキシートは、その弾性を主として金属繊維たるステンレススチールによって担っている。従って、Niメッキによって補助的にシートの強度を向上させた場合であっても、連続印刷によってシートが延びてパターンが変形する程度は従来と比較して延長されただけであり、基本的にシートが延びる現象を防止することはできない。このため、現在も進められている電子部品の小型化等に対応する上で、金属細線の太さを細くした場合には、シート変形が顕著となり、求められるパターン精度を連続印刷においても得ることは困難になると考えられる。また、近年、スクリーン印刷の更なる用途として、例えばフラットパネルディスプレイの電極形成といった、大面積に対する印刷工程にも対応可能なスクリーンメッシュの構築も望まれている。当該用途に関しては、一回の印刷工程においてスキージから負荷を受ける時間が長くなること等から、シート強度をこれまで以上に高める必要があると考えられる。
特許文献3は、このようなシート強度の向上を目的とするものであり、金属細線の交差部分に対して荷重をかけて当該部分を押し潰し、その上で当該部分をNiメッキによって覆い且つこの交差部分で個々の金属細線を固定することとしている。しかし、交差部分に付加される荷重は、大きすぎる場合には金属細線の破断の可能性を増大させ、また小さすぎる場合には充分な効果が得られず、適当な押し潰し量が得られるように荷重を調整する必要がある。これら調整は、金属細線の太さが細くなるに伴ってより困難になると考えられる。また、シート面全域に渡って所望の押し潰し量を得る必要があり、シート面積が増大することで当該工程を確実に行うことは困難になると考えられる。従って、シート強度を向上させるために、制御が困難であり且つ大面積化への展開が困難と思われる当該技術とは異なった技術の確立が求められる。
本発明は上記状況に鑑みて為されたものであり、簡便な方法を通じて得られる高強度を有するスクリーン印刷用のNiメッキメッシュスクリーンシート(以下Niメッキシート)およびその製造方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明に係るNiメッキシートは、金属繊維を編組してなるメッシュ織物に対してNiメッキを施してなるスクリーン印刷用Niメッキシートであって、Niメッキにより得られる層の結晶格子の(200)面におけるX線回折ピークの半価幅が0.64〜0.85degreeの範囲であることを特徴としている。
なお、より高いシート強度を得る上で、当該半価幅の範囲は、更に0.70〜0.82degreeの範囲であることが好ましい。また、上述のNiメッキシートにおいては、更にNiメッキにより得られる層の結晶格子(111)面のX線回折ピーク強度に対する(200)面のX線回折ピーク強度の比率が0.4〜0.6の範囲であることが好ましい。
また、上記課題を解決するために、本発明に係るNiメッキシートは、金属繊維を編組してなるメッシュ織物に対してNiメッキを施してなるスクリーン印刷用Niメッキシートであって、Niメッキにより得られる層の結晶格子(111)面のX線回折ピーク強度に対する(200)面のX線回折ピーク強度の比率が0.4〜0.6の範囲であることを特徴としている。なお、より高いシート強度を得る上で、当該比率の範囲は、更に0.42〜0.52の範囲であることが好ましい。
また、上記課題を解決するために、本発明に係るスクリーン印刷用のNiメッキシートを製造する方法は、金属繊維を編組してメッシュ織物に対してNiメッキを施す工程と、Niメッキ後の前記メッシュ織物を所定の温度下において所定時間保持する工程とを有することが好ましい。なお、当該方法において、所定の温度は、120〜240℃の範囲内の温度であることが好ましい。また、所定時間は作業効率等を勘案して1時間程度であることが好ましい。
本発明によれば、従来の工程に対して、シートに対して熱処理を施す工程を付加するのみで高い強度を有するNiメッキシートを得ることが可能となる。当該工程は、大面積のシート或いはより細い金属細線からなるシートの場合であってもこれを施すことが容易である。また、熱処理条件における温度或いは時間に対する効果が急峻でないことから、工程の管理が容易にもかかわらず充分な効果が得られるという利点がある。
本発明に実施の形態に係るNiメッキシートを好適に得る条件について以下に述べる。本発明者は、金属細線上に形成されたNiメッキ層の特性を改善することによってスクリーンメッシュの強度を向上させることが可能であるとの観点から、金属細線上のNiメッキ層に熱処理を施す方法を案出した。熱処理の効果について検討し、得られた結果を図1に示す。同図中、点線は、熱処理温度に対する金属細線上に形成されたNi層のビッカース硬さの依存性を示す。また実線は、当該金属細線を用いて引っ張り試験を行った結果の伸び率の熱処理温度依存性を示す。伸び率は、引っ張り荷重を徐々に増加させながら金属細線の伸びを測定し、5kgの荷重がかかった際と、金属細線が破断に至った際の伸びをそれぞれ測定し、これらを比率として示している。なお、本図に示す条件において、熱処理を施す時間は、所定の時間として全て同じ1時間としている。
Niメッキ層を所定の温度下において保持する熱処理に際して、Ni層の硬度は熱処理温度の上昇と共に増し、およそ220℃で最高値を取り、その後熱処理温度の上昇に伴って急激に軟化している。また、5kgの荷重を負荷した際の伸び率は、熱処理温度の上昇と共に減少し、およそ220℃で最低値を取り、その後熱処理温度の上昇に伴って増加している。硬度の増加と、伸び率の減少はNi層の強度の向上を意味している。従って、適当な熱処理条件を選択することによって、Ni層の強度を高めることでシート自体の強度を向上させることが可能となることがわかる。なお、本発明者は、熱処理時間に関しても確認を行い、熱処理の効果を発現する上で熱処理温度の寄与率がより大きいことを確認している。このため、本発明を実施する上での基本的なパラメータは熱処理温度であるとして以下の説明を行うこととする
熱処理により上述の効果が得られる原因として、Niメッキ層の結晶性の変化が考えられる。そこで、無処理のNiメッキ層、および、150℃、220℃および300℃の温度にて一時間の熱処理を行ったNiメッキ層についてのX線回折強度を測定した。得られた結果を図2A〜2Dにそれぞれ示す。図中第一のピーク51.517degreeはNiにおける(200)面の存在を示し、第二のピーク44.259degreeは(111)面の存在を示している。形成時のままのNiメッキ層においては、(111)面のピーク強度が(200)面のピーク強度よりも大きくなっている。
これは、Niメッキ層中の結晶格子として(200)面を有するものより(111)面を有するものの方が多いことを示している。また、半価幅が大きいことから、当該層における結晶性が低いことを示している。熱処理を行うことによってこれらピーク強度は逆転し、(200)面を有する結晶格子の数が増加する。150℃および220℃での熱処理においては、個々のピークの大きさ或はその半価幅はほぼ一定の関係を有している。従って、この温度域においては、結晶性は大きく変化しないと考えられる。熱処理温度が更に高い300℃となることで、個々ピークが急峻化してその半価幅が減少している。
以上の結果を示す図2A〜2Dの結果に基づいて、熱処理温度と個々のピークにおける半価幅との関係を図3に、熱処理温度と個々のピーク強度の比との関係を図4に示す。図3、特に図中の(200)面のピーク強度の熱処理温度依存性によれば、120℃〜240℃の温度範囲において、0.64〜0.85degree程度の、他の温度範囲と比較して略一定の半価幅が得られている。熱処理温度がこの温度域よりも高くなると半価幅は急激に減少する。300℃の熱処理条件にて得られる回折パターンは、略安定した結晶構造からなるNi固有の回折パターンを示すものである。従って、熱処理温度をこれ以上高くしても、半価幅のこれ以上の現象は生じないと思われる。
(111)面のピーク強度に対する(200)面のピーク強度の比率は、熱処理温度に伴って変化し、図4に示すように、その変化は半価幅の場合と同様の傾向を示している。即ち、熱処理温度の上昇と共にピーク強度比は急激に低下し、120℃〜240℃の温度範囲において0.4〜0.6程度の他の温度範囲と比較して略一定のピーク強度比を示し、更なる温度上昇と共にまた急激に低下する。300℃以上での熱処理条件においては、略安定した結晶構造からなるNi固有の回折パターンはこれ以上大きく変化せず、従って強度比はこの後略一定の値を示すこととなる。
以上のX線回折から得られた結果は、図1に示す好適な強度が得られる熱処理温度域とほぼ一致している。従って、Niメッキ層の強度変化は、熱処理によるその結晶性の変化に起因すると考えられる。以上の結果から、Niメッキ層形成後の金属細線からなるメッシュスクリーンに対して、120℃〜240℃の温度範囲、より好適には半価幅およびピーク強度比の変化がより小さい150℃〜220℃の温度範囲での熱処理を施すことによって、シート強度の向上を図ることが可能となる。
また、上述した結晶性を示すNiメッキ層を用いることによって、従来よりも高い強度を有するシートを得ることが可能となる。具体的にはX線回折の(200)面におけるピークの半価幅が0.64〜0.85degreeの範囲、より好適にはその範囲内においても特に変化量が小さい範囲である0.70〜0.82degreeに存在するNiメッキ層を有するシートを用いることとすれば良い。或いは、(111)面のピーク強度に対する(200)面のピーク強度の比率が0.4〜0.6の範囲、より好適にはその範囲内においても特に変化量が小さい範囲である0.42〜0.52に存在するNiメッキ層を有するシートを用いることとすれば良い。
なお、このような結晶性を有するNiメッキ層は、上述したように熱処理によって得ることとしても良い。しかし、いわゆるショットピーニング、プレス等の加工によって結晶異性を変化させる、メッキ工程の各パラメータを変化させて当該結晶性を得る、更には蒸着法等当該結晶異性が得られる層形成方法を用いる等、本実施の形態以外の方法によって当該結晶性を得ることとしても良い。
本発明に係るNiメッキシートの用途として、導電性ペーストからなるパターンをセラミックスグリーンシート上に印刷する場合を例示した。しかしながら、本発明に係るシートの用途はこれに限定されるものではなく、プリント基板上の配線を形成する場合、絶縁体を形成するためのスラリーを所定のパターンとして形成する場合、等種々の電子部品の製造工程に対して用いることが可能である。
Niメッキ層の硬度および伸び率の熱処理温度に対する依存性を示す図である。 (A)〜(D)Niメッキ層のX線回折の結果を示す図である。 Niメッキ層のX線回折において得られた各ピークの半価幅に関し、その熱処理温度依存性を示す図である。 Niメッキ層のX線回折において得られた(111)面のピーク強度に対する(200)面のピーク強度の比率に関し、その熱処理温度依存性を示す図である。

Claims (5)

  1. 金属繊維を編組してなるメッシュ織物に対してNiメッキを施してなるスクリーン印刷用Niメッキシートであって、
    前記Niメッキにより得られる層の結晶格子の(200)面におけるX線回折ピークの半価幅が0.64〜0.85degreeの範囲であることを特徴とするNiメッキシート。
  2. 前記Niメッキにより得られる層の結晶格子(111)面のX線回折ピーク強度に対する(200)面のX線回折ピーク強度の比率が0.4〜0.6の範囲であることを特徴とする請求項1記載のNiメッキシート。
  3. 金属繊維を編組してなるメッシュ織物に対してNiメッキを施してなるスクリーン印刷用Niメッキシートであって、
    前記Niメッキにより得られる層の結晶格子(111)面のX線回折ピーク強度に対する(200)面のX線回折ピーク強度の比率が0.4〜0.6の範囲であることを特徴とするNiメッキシート。
  4. スクリーン印刷用のNiメッキシートを製造する方法であって、
    金属繊維を編組してメッシュ織物に対してNiメッキを施す工程と、
    Niメッキ後の前記メッシュ織物を所定の温度下において所定時間保持する工程とを有することを特徴とするNiメッキシートの製造方法。
  5. 前記所定の温度は、120〜240℃の範囲内の温度であることを特徴とする請求項4記載のNiメッキシートの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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