JP2021017646A - 圧延材 - Google Patents
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Abstract
【課題】車載スイッチやコネクタには母材に銅合金材を使用した銀めっき接点が使用されているが、局所的な電気伝導度がばらついたり、耐摩耗性が低いことなどの問題があった。【解決手段】銅合金板の少なくとも片方の表面に結晶配向を制御したニッケルめっき下地の銀めっきを施した銅合金複合箔及び銅合金複合箔を圧延処理品(3〜10%)することにより旧圧延処理品(10〜40%)と比べ、結晶配向を変化させ耐摩耗性に優れた銅合金複合箔を得る事ができる。【選択図】図5
Description
本発明は、強度、導電性、表面形状に優れた銅合金複合箔、並びに該銅合金複合箔の製造方法に関するものであり、例えばスイッチやコネクタのような入り−切り操作における耐摩耗性に優れた特性を求められる用途に適した銅合金複合箔を提供するものである。
近年、輸送機器は、電子制御化が急速に進んでおり、従来の動力電流を直接遮断する直切方式の接点から、電気信号を切断する信号切方式の接点の搭載が増加している。また、ハイブリッド車や電気自動車に搭載される大電流、高電圧機器を接続する大電流、高電圧向けコネクタに銀めっき材が使用されている。
このように、車載スイッチやコネクタには母材に銅及び銅合金材を使用した銀めっき接点が使用されている。
このように、車載スイッチやコネクタには母材に銅及び銅合金材を使用した銀めっき接点が使用されている。
これらスイッチ及びコネクタ端子に使用される銀めっきに求められる特性は、スイッチの繰り返し入り−切り操作による耐久性、摺動による膜の摩耗が少なく、削れにくいことである。
従来から銅合金複合箔として銀めっきを施した銅合金複合箔が製品化されているが、表面に凹凸があるため局所的な電気伝導度がばらついたり、耐摩耗性が低いなどが課題となっていた。(例えば特許文献1や非特許文献1)
本発明は上記近年の要望に鑑み、課題を解決すべく鋭意研究を行った結果なされたものであり、耐摩耗性に優れた高耐摩耗性と高導電性を併せ持つ銅合金複合箔並びにその製造方法を提供するものである。
本発明の基本的な考え方は、次のとおりである。即ち、銅合金複合箔の表面にニッケル下地めっきを施した後、その上に導電性と耐摩耗性を併せ持つ銀の平滑層を施すことにより、耐摩耗性に優れた銅合金複合箔を製造する方法及びこの方法を用いて作製した銅合金複合箔の圧延材を提供することである。
本発明は、銅合金板の少なくとも片方の表面にニッケルめっき下地を施し、その上に銀めっきの平滑層を設けたことを特徴とする銅合金複合箔であり、X線回折法による当該銀の平滑層表面の(200)結晶配向の強度が(111)結晶配向の強度を100としたとき70以上100以下である銅合金複合箔である。ここで結晶配向の強度とは、X線の回折強度ということもある。
この発明の作用は、硬度が比較的低い(200)結晶配向の銀と硬度が比較的高い(111)結晶配の銀の平滑層を設けることにより、柔軟性と硬度を兼ね備えた耐摩耗性の高い銅合金複合箔である。また、比較的硬度が高い(111)結晶配向に対し、比較的硬度が低い(200)結晶配向の割合を増やすことにより耐摩耗性を高める作用である。
この発明は銅合金板の少なくとも片方の表面にニッケルめっき下地を施し、その上に銀めっきにより銀の層を施す銀めっき工程と、この銀めっき工程により作成した銅合金複合箔を圧延する圧延工程とを含む銅合金複合箔の製造方法であって、この製造方法において銅合金にめっきした銀がX線回折法において(111)結晶配向の強度に対する(200)結晶配向の強度を、それぞれ旧圧延材と比較して1.1〜1.3倍に強くすることを特徴とする銅合金複合箔の製造方法である。
この発明の作用は、銀めっきを施す際に発現しやすい結晶の配向である(111)結晶配向を圧延工程により圧延し再結晶化することにより、X線回折法による銀の(200)結晶配向の強度を選択的に高めて(111)結晶配向の強度を100とした際、(200)結晶配向の強度を70以上100以下の範囲内で旧圧延材に比べ高くし、耐摩耗性に優れた銅合金複合箔の圧延材を製造し、耐摩耗性に優れた銅合金複合箔を製造するという作用である。
耐摩耗性に優れた高耐摩耗性と高導電性とを併せ持つ銅合金複合箔であり、この銅合金複合箔を製造することができる。
以下、本発明の銅合金複合箔についてより詳細に説明する。本発明の銅合金複合箔は、銅合金板の少なくとも片方の表面にニッケルめっき下地を施し、その上に銀めっきを施す。このニッケルめっき及び銀めっきの方法としては、特に限定されないが、ニッケルめっきはスルファミン酸浴、ワット浴、銀めっきはアルカリ性シアン化銀めっき浴、アルカリ性非シアン浴を利用できる。
また、密着不良の改善のため、銀ストライクめっきを施すこともできる。
銀めっきの結晶配向は、X線回折装置により測定できる。
また、密着不良の改善のため、銀ストライクめっきを施すこともできる。
銀めっきの結晶配向は、X線回折装置により測定できる。
この銀めっきを施した銅合金複合箔に圧延処理することにより、耐摩耗性に優れた銅合金複合箔を効果的に得ることができる。この圧延した銅合金複合箔の銀の結晶の配向は、X線回折装置により測定できる。この圧延した銅合金複合箔の銀の結晶は、(111)結晶配向を100としたとき(200)結晶配向の強度が70以上100以下であると好ましい。この圧延した銀の(111)結晶配向の硬度はビッカース硬度で約131、(200)結晶配向の硬度はビッカース硬度で約82であるため、ここで示した結晶配向の割合により、表面硬度を任意に設定することができる。
(111)結晶配向、(200)結晶配向の有無や割合は、それぞれX線回折装置によるこの銅合金複合箔のX線回折測定により得ることができる。(111)結晶配向は、回折角2θで37°(°は、度と記すこともある)〜39°付近に得られ、(200)結晶配向は43°〜46°付近に得られ、それぞれの結晶配向のX線回折強度は、得られたX線回折のピーク強度やそれぞれの回折角領域のX線回折ピーク付近の強度の積分値より求めることができる。
この発明の銅合金複合箔において、耐摩耗性が高くなる理由については現時点では定かではないが、非特許文献1によると[111]結晶配向の銀めっきの表面硬さがビッカース硬度で約131、[200]結晶配向の銀めっきの表面硬さがビッカース硬度で約82であることから、比較的硬い[111]結晶配向に対し、比較的柔らかい[200]結晶配向の割合が高くなることが耐摩耗性の向上に寄与していると考えている。
銅合金板に銀めっきを施した後の銅合金複合箔の圧延工程について説明する。
銅合金複合箔に直接接する第一の圧延ロール、第一の圧延ロールに回転と圧延のための応力を伝える中間ロール、中間ロールに回転と圧延のための応力を与えるバックロールなどの各ロールを用いることが好ましい。これらロール形状は、圧延前の0.08mm厚の銅合金複合箔の厚みを5.0%程度の厚みまで軽圧延する場合には、第一の圧延ロールの直径として40mmから50mm、中間ロールの直径として90〜120mm、バックロールとして250mm〜350mm程度であると好ましく圧延でき、銀の結晶配向が好ましい割合となる。第一の圧延ロールの硬さについては、ロックウェル硬度(HRCと記す場合もある。)で55から70で好ましく圧延することができる。軽圧延の方向を制御するため、延ばしたい方向に引張応力を加えながら圧延することもできる。
銅合金複合箔に直接接する第一の圧延ロール、第一の圧延ロールに回転と圧延のための応力を伝える中間ロール、中間ロールに回転と圧延のための応力を与えるバックロールなどの各ロールを用いることが好ましい。これらロール形状は、圧延前の0.08mm厚の銅合金複合箔の厚みを5.0%程度の厚みまで軽圧延する場合には、第一の圧延ロールの直径として40mmから50mm、中間ロールの直径として90〜120mm、バックロールとして250mm〜350mm程度であると好ましく圧延でき、銀の結晶配向が好ましい割合となる。第一の圧延ロールの硬さについては、ロックウェル硬度(HRCと記す場合もある。)で55から70で好ましく圧延することができる。軽圧延の方向を制御するため、延ばしたい方向に引張応力を加えながら圧延することもできる。
銀めっきの前にニッケルめっきを施す場合は、ニッケルめっきのバラツキにより圧延後の銀めっきの結晶配向の割合が制御できなくなる。ニッケルめっきを銀めっきの前に施す場合には、ニッケルめっきが厚くなる場所を切断し、その後圧延することで、銀めっきの結晶配向を好ましく整えることができる。銅合金複合箔の両端に電極を配置するとこの銅合金複合箔の両端の一部を切断し圧延工程により連続的に圧延できるため、好ましい。
なお、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
「実施例1及び比較例1の耐久性評価結果」
<実験装置>
X線回折装置 株式会社島津製作所製 XRD−6000 動式摩耗試験装置 新東科学株式会社 HHS−2000 圧子:鋼球 走査型電子顕微鏡 日本電
子株式会社 JSM−IT500HR エネルギー分散型分析装置 Thermo Fisher Scientific株式会社 NORAN System7
<実験装置>
X線回折装置 株式会社島津製作所製 XRD−6000 動式摩耗試験装置 新東科学株式会社 HHS−2000 圧子:鋼球 走査型電子顕微鏡 日本電
子株式会社 JSM−IT500HR エネルギー分散型分析装置 Thermo Fisher Scientific株式会社 NORAN System7
本発明の結晶配向となるように調整した銅合金複合箔を作製した。この銅合金複合箔は、銅合金板と銀めっきの間にニッケルめっきを施した。この銅合金複合箔をX線回折装置により測定した。測定結果の一部を図1に示す。この銅合金複合箔の銀めっき面の結晶配向は、(111)結晶配向の強度100に対し、(200)結晶配向の強度が81.6だった。この試料に対し、動式摩耗試験装置により1Nの荷重をかけて摩耗試験を行った結果を図3に示す。摩耗試験の結果、動距離に対する摩擦係数にバラツキの少ない良好な結果が得られた。また、1000回の往復摩耗試験後の試験部及び実試験部の成分分析を行った結果、1000回の往復摩耗試験を行った箇所の銀の含有率は、97.05%であり、同一表面の摩耗試験を行っていない箇所の銀の含有率は、97.13%だった。これらから算出したこの試験による銀の含有量の低下率は0.08%であり、良好な結果だった。スイッチの荷重を0.1N、接触面積を10倍とした場合、往復動回数1000回×試験荷重10倍×接触面積10倍÷銀の低下率(%)としたとき算出されるこの銅合金複合箔の耐久性は、125万回と算出され、基準値である5万回を上回った。
(比較例1)
銅合金板の表面にめっきにより銀の層を施す銀めっき工程と、この銀めっき工程より作成した銅合金複合箔を圧延する旧圧延処理とを行った。この銅合金複合箔の銀めっき面をX線回折装置により測定した。測定結果の一部を図2に示す。このときの結晶配向は、(111)結晶配向の強度100に対し、(200)結晶配向の強度が66.8だった。この試料に対し、動式摩耗試験装置により1N(ニュートンと示すこともある)の荷重をかけて摩耗試験を行った結果を図4に示す。摩耗試験の結果、動距離に対する摩擦係数にバラツキの少ない良好な結果が得られた。また、1000回の往復摩耗試験後の試験部及び実試験部の成分分析を行った結果、1000回の往復摩耗試験を行った箇所の銀の含有率は96.70%であり、同一表面の試験を行っていない箇所の銀の含有率は97.63%だった。これらから算出したこの試験による銀の含有量の低下率は0.95%であり、良好な結果だった。スイッチの荷重を0.1N、接触面積を10倍とした場合、往復動回数1000回×試験荷重10倍×接触面積10倍÷銀の低下率(%)としたときに算出されるこの銅合金複合箔の耐久性は、10.5万回と算出され、基準値である5万回を上回った。
これらの結果から、圧延により前述した結晶配向の強度がそれぞれ旧圧延材の結晶配向の強度より増加する事が確認された。
この銅合金複合箔の試料に対し、摺動式摩耗試験装置により1N(ニュートンと示すこともある)の荷重をかけて摩耗試験を行ったところ、本発明である圧延材の耐久性は旧圧延材を大幅に上回った結果であった。
銅合金板の表面にめっきにより銀の層を施す銀めっき工程と、この銀めっき工程より作成した銅合金複合箔を圧延する旧圧延処理とを行った。この銅合金複合箔の銀めっき面をX線回折装置により測定した。測定結果の一部を図2に示す。このときの結晶配向は、(111)結晶配向の強度100に対し、(200)結晶配向の強度が66.8だった。この試料に対し、動式摩耗試験装置により1N(ニュートンと示すこともある)の荷重をかけて摩耗試験を行った結果を図4に示す。摩耗試験の結果、動距離に対する摩擦係数にバラツキの少ない良好な結果が得られた。また、1000回の往復摩耗試験後の試験部及び実試験部の成分分析を行った結果、1000回の往復摩耗試験を行った箇所の銀の含有率は96.70%であり、同一表面の試験を行っていない箇所の銀の含有率は97.63%だった。これらから算出したこの試験による銀の含有量の低下率は0.95%であり、良好な結果だった。スイッチの荷重を0.1N、接触面積を10倍とした場合、往復動回数1000回×試験荷重10倍×接触面積10倍÷銀の低下率(%)としたときに算出されるこの銅合金複合箔の耐久性は、10.5万回と算出され、基準値である5万回を上回った。
これらの結果から、圧延により前述した結晶配向の強度がそれぞれ旧圧延材の結晶配向の強度より増加する事が確認された。
この銅合金複合箔の試料に対し、摺動式摩耗試験装置により1N(ニュートンと示すこともある)の荷重をかけて摩耗試験を行ったところ、本発明である圧延材の耐久性は旧圧延材を大幅に上回った結果であった。
Claims (2)
- 銅合金板の少なくとも片方の表面にニッケルめっき下地を施し、その上に銀めっきの平滑層を設けたことを特徴とする銅合金複合箔であり、X線回折法による当該銀の平滑層表面の(111)結晶配向の強度を100とすると(200)結晶配向の強度が70以上100以下である銅合金複合箔。
- 銅合金板の少なくとも片方の表面にニッケルめっき下地を施し、その上に銀めっきの層を施す銀めっき工程と、該銀めっき工程により作成した銅合金複合箔を圧延する圧延工程とを含む銅合金複合箔の製造方法であって、前記圧延工程後の銅合金複合箔の銀がX線回折法において(111)結晶配向の強度に対する(200)結晶配向の強度を、旧圧延材と比較して1.1〜1.3倍強くすることを特徴とする銅合金複合箔の製造方法
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JP2019143366A JP2021017646A (ja) | 2019-07-17 | 2019-07-17 | 圧延材 |
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Cited By (3)
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WO2023189419A1 (ja) * | 2022-03-30 | 2023-10-05 | 古河電気工業株式会社 | 電気接点材料、ならびにこれを用いた接点、端子およびコネクタ |
WO2023189418A1 (ja) * | 2022-03-30 | 2023-10-05 | 古河電気工業株式会社 | 電気接点材料、ならびにこれを用いた接点、端子およびコネクタ |
WO2023189417A1 (ja) * | 2022-03-30 | 2023-10-05 | 古河電気工業株式会社 | 電気接点材料、ならびにこれを用いた接点、端子およびコネクタ |
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2019
- 2019-07-17 JP JP2019143366A patent/JP2021017646A/ja active Pending
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