JP5119661B2 - 導電性被膜付き基材の製造方法および導電性被膜付き基材 - Google Patents
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Description
この方法により作製される導電性被膜付き基材としては、例えば、図1に示すように、基材2と、基材2の上に設けられた多孔質の導電性被膜3と、その孔部分に充填された接着剤(オーバーコート剤)4と、導電性被膜3の表面に酸化防止や傷防止を目的として設けられたオーバーコート層5と、導電性被膜3の一部が表面に露出した電極部6とを有する導電性被膜付き基材1が挙げられる。
この方法は、導電性被膜と基材とを接着する工程と、オーバーコートを形成する工程とが別々に行われるため、手間とコストがかかるという問題がある。
また、本発明は、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を提供することを目的とする。
(1)導電性組成物を基材上に塗布し、多孔質の導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程と、前記導電性被膜上にスクリーン印刷によりオーバーコート剤を塗布して、前記基材と前記導電性被膜とを接着させ、かつ、前記導電性被膜の表面にオーバーコート層と電極部とを形成して導電性被膜付き基材を得るオーバーコート工程とを具備する導電性被膜付き基材の製造方法であって、
前記オーバーコート工程中に、網目を部分的に塞いだ薄塗り印刷部を有するスクリーンを用いてスクリーン印刷を行い、前記オーバーコート剤の塗布量を部分的に少なくし、前記導電性被膜の一部が表面に露出した電極部を形成する、導電性被膜付き基材の製造方法。
(2)前記導電性組成物が、酸化銀と、第二級脂肪酸銀塩とを含有する上記(1)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(3)前記第二級脂肪酸銀塩が、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸を用いて得られる第二級脂肪酸銀塩である上記(2)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(4)前記第二級脂肪酸銀塩が、炭素原子数7以下の第二級脂肪酸銀塩であり、
前記導電性組成物が、更に、炭素原子数8以上の脂肪酸および/または炭素原子数8以上の脂肪酸銀塩を含有する上記(2)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(5)前記導電性組成物が、更に、還元剤を含有する上記(2)〜(4)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(6)前記多孔質の導電性被膜が、空隙率10〜80%の導電性被膜である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(7)前記オーバーコート剤が、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを含有するウレタン系接着剤である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(8)前記ポリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する上記(7)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(9)前記オーバーコート剤の23℃における粘度が、1〜1000mPa・sである上記(1)〜(8)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(10)前記薄塗り印刷部のスクリーン線数が30〜150lpiであり、前記薄塗り印刷部の透過率が20〜70%である上記(1)〜(9)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法により得られる導電性被膜付き基材。
また、本発明の導電性被膜付き基材は、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する。
図3(a)および(b)は、本発明の製造方法の一例を示す模式図である。
本発明の導電性被膜付き基材の製造方法(以下「本発明の製造方法」という。)は、導電性組成物を基材2の上に塗布し、多孔質の導電性被膜3を形成する導電性被膜形成工程(図3(a))と、導電性被膜3の上にスクリーン印刷によりオーバーコート剤を塗布して、基材2と導電性被膜3とをオーバーコート剤4で接着させ、かつ、導電性被膜3の表面にオーバーコート層5と電極部6とを形成して導電性被膜付き基材を得るオーバーコート工程(図3(b))とを具備する導電性被膜付き基材の製造方法であって、上記オーバーコート工程中に、網目を部分的に塞いだ薄塗り印刷部を有するスクリーンを用いてスクリーン印刷を行い、上記オーバーコート剤の塗布量を部分的に少なくし、導電性被膜3の一部が表面に露出した電極部6を形成する、導電性被膜付き基材の製造方法である。
以下、各工程について説明する。
上記導電性被膜形成工程は、導電性組成物を基材上に塗布し、多孔質の導電性被膜を形成する工程である。
上記基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等のフィルム;銅板、銅箔、ガラス、エポキシ等の基板等が挙げられる。
上記基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリイミドから形成される基材が、柔軟性に優れる点から好ましい。
上記第二級脂肪酸銀塩としては、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られる第二級脂肪酸銀塩が低温で導電性被膜を形成できる点から好ましい態様の1つである。具体的には、下記式(1)で表される沸点が200℃以下の第二級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られるものが好適に挙げられる。
また、上記式(1)中、R2の炭素原子数1〜10のアルキル基としては、上記R1の炭素原子数1〜6のアルキル基以外に、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。R2は、メチル基、エチル基、n−プロピル基であるのが好ましい。
これらのうち、2−メチルプロパン酸であるのが、得られる第二級脂肪酸銀塩である2−メチルプロパン酸銀塩を含有する導電性組成物を用いて形成される導電性被膜の形成時間が短時間、具体的には、180℃程度の温度で数秒となる点から好ましい。
前者の方法としては、具体的には、上記酸化銀と、溶剤により上記脂肪酸を溶液化したものとを、ボールミル等により混練し、固体である上記酸化銀を粉砕しながら、室温で、1〜24時間程度、好ましくは2〜8時間反応させるのが好ましい。
中でも、イソホロンおよび/またはα−テルピネオールを溶媒として用いるのが、上記反応により得られる第二級脂肪酸銀塩を含有する導電性組成物のチクソ性が良好となる点から好ましい。
炭素原子数2以上の脂肪族炭化水素基は、特に制限されない。脂肪族炭化水素基は、鎖状であり、直鎖状および分岐状のいずれでもよく、不飽和結合を有することができる。
上記炭素原子数8以上の脂肪酸銀塩の炭素原子数は、チクソ性により優れるという点から、8〜22が好ましく、10〜18がより好ましい。
nは、1〜4の整数であるのが好ましい。
炭素原子数2以上の脂肪族炭化水素基としては、上記と同様のものが挙げられる。
上記金属粉としては、具体的には、例えば、銅、銀、アルミニウム等が挙げられ、中でも、銅、銀であるのが好ましい。また、0.01〜10μmの粒径の金属粉であるのが好ましい。
また、上記脂肪酸と、過剰量の上記酸化銀とを混合し、上記第二級脂肪酸銀塩を合成して、酸化銀と第二級脂肪酸銀塩とを含有する導電性組成物を製造することもできる。
塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。
熱処理の条件は特に制限されないが、例えば、上記第二級脂肪酸銀塩として沸点が200℃以下の第二級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られる第二級脂肪酸銀塩を用いる場合は、100〜250℃の温度で、数秒〜数十分間、加熱する処理であるのが好ましく、160℃程度で、1分程度、加熱する処理であるのがより好ましい。熱処理の温度および時間がこの範囲であると、耐熱性の低い基材にも導電性被膜を形成することができる。
上記光照射は、塗布された導電性組成物に、紫外線または赤外線を照射して行う。照射時間等の条件は、適宜設定することができる。
なお、本明細書において導電性被膜の空隙率は、SEMを用い、表・断面の画像から画像処理を行い、パソコン上で計算を行うことで、空隙分散率を算出して求められる値である。
オーバーコート工程は、上述した導電性被膜形成工程により得られた導電性被膜上に、スクリーン印刷によりオーバーコート剤を塗布して、基材と導電性被膜とを接着させ、かつ、導電性被膜の表面にオーバーコート層と電極部とを形成して導電性被膜付き基材を得る工程である。このオーバーコート工程では、網目を部分的に塞いだ薄塗り印刷部を有するスクリーンを用いてスクリーン印刷を行い、オーバーコート剤の塗布量を部分的に少なくし、導電性被膜の一部が表面に露出した電極部を形成する。
薄塗り印刷部の位置および大きさは、特に限定されず、形成させる電極部の位置および大きさに応じて適宜設定することができる。
上記オーバーコート剤としては、使用する基材の種類等に応じて適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。中でも、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを含有するウレタン系接着剤が、接着性に優れ、湿気により硬化することができる点から好ましい。
なお、本明細書における粘度は、JIS K7117−1に準じ、E型粘度計を用いて、23℃にて測定された値を示す。
また、網目を部分的に塞いだ薄塗り印刷部を有するスクリーンを用いてスクリーン印刷を行うことにより、薄塗り印刷部におけるオーバーコート剤の透過率は、スクリーンの薄塗り印刷部以外の部分(以下「厚塗り印刷部」または「厚塗り部」という。)に比べて小さくなり、塗布量が相対的に少なくなる。したがって、厚塗り印刷部では、導電性被膜と基材との密着性を確保しつつ導電性被膜の表面にオーバーコート層を形成でき、薄塗り印刷部では導電性被膜と基材との密着性を確保しつつ導電性被膜が表面に露出した電極部を形成できる。
即ち、本発明の製造方法によれば、接着、オーバーコートおよび電極部形成を同時に行うことができるため、導電性被膜付き基材を効率よく製造できる。
本発明の導電性被膜付き基材は、例えば、電子回路、アンテナ等の回路の作製に好適に用いることができる。
(実施例1)
1.導電性被膜形成工程
酸化銀(I)100g、イソ酪酸銀17g、ステアリン酸2.5gおよびα−テルピネオール40gをボールミルで24時間混合し、酸化銀を粉砕しつつ反応させて導電性組成物を得た。
得られた導電性組成物をPETフィルム(ルミラーS56、東レ社製)、PENフィルム(テオネックス081、帝人デュポンフィルム社製)およびポリイミドフィルム(カプトン、東レ・デュポン社製)のそれぞれに塗布した後、160℃で1分間の条件で乾燥し、導電性被膜を作製した。
また、接着剤塗布前に導電性被膜の体積抵抗率を抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製、以下同じ。)を用いた4端子4探針法により測定し、また、下記の方法により密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
オーバーコートを行う前に、網目スクリーン(EXスクリーン 90−040/230pw、NBC株式会社製、ポリエステル製)の網目を部分的に塞いで薄塗り印刷部を有するスクリーン(薄塗り印刷部のスクリーン線数50lpi、透過率40%)を作製した。
次に、各導電性被膜の上に、作製したスクリーンを用いて、ウレタン−エポキシ系接着剤(Y−coat242R、横浜ゴム社製、粘度100mPa・s)をスクリーン印刷により塗布し、導電性被膜の表面に厚塗り印刷部において厚さ2μmのオーバーコート層と、電極部とを形成して各導電性被膜付き基材を得た。
結果を下記第1表に示す。
密着性の評価は、碁盤目テープはく離試験により行った。
各試料の導電性被膜に1mmの基盤目100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を付着させ、直ちにテープの一端を直角に保ち、瞬間的に引き離し、剥がれないで残った基盤目の個数を調べた。
導電性組成物として、バインダを含有する市販の銀ペースト(FA−353、藤倉化成社製)を用いた点以外は、実施例1と同様に、導電性被膜および導電性被膜付き基材を作製し、各導電性被膜の体積抵抗率を測定し、各導電性被膜付き基材の密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
図5は、比較例1の基材上に形成された導電性被膜(接着剤塗布前)の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(1000倍)である。図5から明らかなように、得られた導電性被膜には、孔がほとんどなかった。比較例1の導電性被膜の空隙率は約8%だった。
酸化銀(I)100g、第三級脂肪酸銀塩であるネオデカン酸銀塩75gおよびα−テルピネオール40gをボールミルで24時間混合し、酸化銀を粉砕しつつ反応させて導電性組成物を得た。
得られた導電性組成物を用いて、実施例1と同様に、導電性被膜および導電性被膜付き基材を作製し、各導電性被膜の体積抵抗率を測定し、また、各導電性被膜の付き基材の密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
図6は、比較例2の基材上に形成された導電性被膜(接着剤塗布前)の断面のSEM写真(1000倍)である。
図6から明らかなように、得られた導電性被膜には孔がほとんどなかった。比較例2の導電性被膜の空隙率は0%だった。
一方、実施例1の接着剤塗布後の導電性被膜付き基材は、優れた密着性を有し、更に、その導電性被膜の体積抵抗率は比較例1に比べて格段に低くすることができた。
実施例1と同様にPETフィルム上に導電性被膜を作製した。
次に、下記第2表に示すスクリーン線数、透過率の網目スクリーンを用いて、第2表に示す粘度のオーバーコート剤(Y−coat242R、横浜ゴム社製)をスクリーン印刷により塗布し、導電性被膜の表面に厚塗り印刷部において厚さ2μmのオーバーコート層を形成して各導電性被膜付き基材を得た。
得られた各導電性被膜付き基材について、上記の方法と同様に体積抵抗率および密着性を評価した。また、各導電性被膜付き基材の外観を下記の方法により評価した。
得られた各導電性被膜付き基材のオーバーコート層表面を目視で観察した。
均一で塗りムラがなかったものを「○」とし、塗りムラが大きかったものを「×」とした。
2 基材
3 導電性被膜
4 接着剤(オーバーコート剤)
5 オーバーコート層
6 電極部
Claims (11)
- 導電性組成物を基材上に塗布し、多孔質の導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程と、前記導電性被膜上にスクリーン印刷によりオーバーコート剤を塗布して、前記基材と前記導電性被膜とを接着させ、かつ、前記導電性被膜の表面にオーバーコート層と電極部とを形成して導電性被膜付き基材を得るオーバーコート工程とを具備する導電性被膜付き基材の製造方法であって、
前記オーバーコート工程中に、網目を部分的に塞いだ薄塗り印刷部を有するスクリーンを用いてスクリーン印刷を行い、前記オーバーコート剤の塗布量を部分的に少なくし、前記導電性被膜の一部が表面に露出した電極部を形成する、導電性被膜付き基材の製造方法。 - 前記導電性組成物が、酸化銀と、第二級脂肪酸銀塩とを含有する請求項1に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
- 前記第二級脂肪酸銀塩が、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸を用いて得られる第二級脂肪酸銀塩である請求項2に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
- 前記第二級脂肪酸銀塩が、炭素原子数7以下の第二級脂肪酸銀塩であり、
前記導電性組成物が、更に、炭素原子数8以上の脂肪酸および/または炭素原子数8以上の脂肪酸銀塩を含有する請求項2に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。 - 前記導電性組成物が、更に、還元剤を含有する請求項2〜4のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
- 前記多孔質の導電性被膜が、空隙率10〜80%の導電性被膜である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
- 前記オーバーコート剤が、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを含有するウレタン系接着剤である請求項1〜6のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
- 前記ポリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する請求項7に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
- 前記オーバーコート剤の23℃における粘度が、1〜1000mPa・sである請求項1〜8のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
- 前記薄塗り印刷部のスクリーン線数が30〜150lpiであり、前記薄塗り印刷部の透過率が20〜70%である請求項1〜9のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法により得られる導電性被膜付き基材。
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