JP5320962B2 - 導電性組成物、導電性被膜の形成方法および導電性被膜 - Google Patents
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前記金属粉末またはその混合物は、
a)2〜10マイクロメーターの直径、および1マイクロメーター未満の厚さを持つ金属フレーク0〜100%;および
b)0.1マイクロメーター未満の直径を持つ、コロイド状金属粒子0〜100%(ただし前記金属粒子はより大きい粒子へ著しく凝集することはない)
を含む金属粉末またはその混合物であり(ただし、前記a)および前記b)がいずれも0%である場合を除く)、
さらに、前記組成物は基板上に塗布でき、オーブン中で加熱して450℃未満の温度で該組成物を固体純金属導体に固定することのできる組成物。」が開示されている。
そのため、耐熱性の低い基材(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フイルム等)に導電性被膜を形成することは困難であった。また、長時間の加熱処理を要するため、導電性被膜の生産性が低いという問題があった。
同様に、特許文献3に記載の組成物は、金属粉末を含有するものの、加熱温度が高いため耐熱性の低い基材に導電性被膜を形成することは困難であるという問題があった。
(式(I)中、nは0〜2の整数を表し、R 1 は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R 2 は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nが0または1である場合、複数のR 2 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nが2である場合、複数のR 1 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(II)中、R 1 は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数のR 1 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(III)中、R 1 は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R 3 は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。複数のR 1 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
(式(IV)中、R4は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
本発明の導電性組成物を用いれば、耐熱性の低い基材上にも電子回路、アンテナ等の回路を容易かつ短時間で作製することができるため非常に有用である。
また、本発明の導電性組成物は、比抵抗をより小さい導電性被膜を形成する観点から、更に酸化銀(D)を含有しているのが好ましい。
以下に、金属材料(A)、脂肪酸銀塩(B)、2級脂肪酸銀塩(C)および酸化銀(D)について詳述する。
本発明の導電性組成物で用いる金属材料(A)は、電気抵抗率が20×10-6Ω・cm以下の金属材料であれば特に限定されず、その具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等が好適に挙げられる。
これらのうち、金、銀、銅であるのが、得られる本発明の導電性組成物により形成される導電性被膜の比抵抗がより小さくなる理由から好ましい。
同様の観点から、上記金属材料(A)の平均粒径は、0.01〜5μmであるのがより好ましく、0.01〜1μmであるのが更に好ましい。
上記金属材料(A)の含有量がこの範囲であると、得られる本発明の導電性組成物を用いて形成される導電性被膜の比抵抗をより小さくしつつ、その形成性(塗布性)も良好となる。
本発明の導電性組成物で用いる脂肪酸銀塩(B)は、水酸基を1個以上、好ましくは2個以上有する脂肪酸銀塩であり、具体的には、以下に示す水酸基を1個以上有する脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られるものである。
式(2)中、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(3)中、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(1)中、R2の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ヘプタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基が挙げられる。R2としては、メチレン基、エチレン基であるのが好ましい。上記式(1)中、nの0〜2の整数としては、1または2であるのが好ましい。
また、上記式(3)中、R3の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ヘプタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基が挙げられる。R2としては、メチレン基、エチレン基であるのが好ましい。
この反応は、例えば、上記式(1)〜(3)で表される化合物を用いた場合は以下に示す反応式で表される反応が進行するものであれば特に限定されないが、上記酸化銀を粉砕しつつ進行させる方法や、上記酸化銀を粉砕した後に上記脂肪酸を反応させる方法が好ましい。前者の方法としては、具体的には、上記酸化銀と、溶剤により上記脂肪酸を溶液化したものとを、ボールミル等により混練し、固体である上記酸化銀を粉砕させながら、室温で、1〜24時間程度、好ましくは2〜8時間反応させるのが好ましい。
式(II)中、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(III)中、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
中でも、イソホロンおよび/またはα−テルピネオールを溶媒として用いるのが、上記反応により得られる脂肪酸銀塩(B)を含有する本発明の導電性組成物のチクソ性が良好となる。
本発明の導電性組成物で用いる2級脂肪酸銀塩(C)は、沸点が200℃以下の2級脂肪酸を用いて得られるものであり、具体的には、以下に示す沸点が200℃以下の2級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られるものである。
また、上記式(4)中、R5の炭素数1〜10のアルキル基としては、上記R4の炭素数1〜6のアルキル基以外に、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。R5としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基であるのが好ましい。
これらのうち、2−メチルプロパン酸、2−メチルブタン酸であるのが、得られる2級脂肪酸銀塩(C)である2−メチルプロパン酸銀塩、2−メチルブタン酸銀塩を含有する本発明の導電性組成物を用いて形成される導電性被膜の形成がより低温かつ短時間で可能となる理由から好ましい。
この反応は、例えば、上記式(4)で表される化合物を用いた場合は以下に示す反応式で表される反応が進行するものであれば特に限定されないが、上記酸化銀を粉砕しつつ進行させる方法や上記酸化銀を粉砕した後に上記2級脂肪酸を反応させる方法が好ましい。前者の方法としては、具体的には、上記酸化銀と、溶剤により上記2級脂肪酸を溶液化したものとを、ボールミル等により混練し、固体である上記酸化銀を粉砕させながら、室温で、1〜24時間程度、好ましくは2〜8時間反応させるのが好ましい。
中でも、イソホロンおよび/またはα−テルピネオールを溶媒として用いるのが、上記反応により得られる2級脂肪酸銀塩(C)を含有する本発明の導電性組成物のチクソ性が良好となる。
具体的には、150℃程度の温度で30分程度で、比抵抗が30μΩ・cm以下の導電性被膜を形成することができる。ここで、本明細書においては、比抵抗は、150℃で30分間乾燥させた導電性被膜について、低抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製)を用いた4端子4探針法により比抵抗(体積固有抵抗値)を測定した値である。
これは、脂肪酸銀塩(B)が有する分子内の水酸基の存在により、熱処理による銀への分解(還元)が非常に促進され、また、2級脂肪酸銀塩(C)が熱処理により銀に分解されやすく、かつ、分解により生じる2級脂肪酸またはその分解物が揮発されやすいためであると考えられる。更に、脂肪酸銀塩(B)および2級脂肪酸銀塩(C)を含有する本発明の導電性組成物により形成される導電性被膜は多孔質となるため、その孔中に金属材料(A)が入り込んで隙間を埋め、導電性を高めるためと考えられる。
本発明の導電性組成物に所望により含有してもよい酸化銀(D)は、酸化銀(I)、即ち、Ag2Oである。
本発明においては、酸化銀(D)の形状は特に限定されないが、粒子径が10μm以下の粒子状であるのが好ましく、1μm以下であるのがより好ましい。粒子径がこの範囲であると、より低温で自己還元反応が生ずるので、結果的により低温で導電性被膜を形成できる。
上記酸化銀(D)の含有量がこの範囲であると、得られる本発明の導電性組成物を用いて形成される導電性被膜の比抵抗を更に小さくしつつ、その形成性(塗布性)も良好となる。
造膜性樹脂としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
これらのうち、少ない配合量で基材に対して高い密着性を有する導電性被膜を形成することができ、その結果、本発明の導電性組成物の小さい比抵抗も維持しやすいという理由から、ポリエステルウレタン樹脂であるのが好ましい。
上記還元剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール類等が挙げられる。
また、本発明の導電性組成物は、接着性を向上させる観点から、上記脂肪酸銀塩(B)および上記2級脂肪酸銀塩(C)以外に、ネオデカン酸銀塩等のその他の脂肪酸銀塩を上記脂肪酸銀塩(B)および上記2級脂肪酸銀塩(C)よりも少ないモル数で含有していてもよい。
本発明においては、上述したように、上記脂肪酸銀塩(B)および上記2級脂肪酸銀塩(C)の反応に用いられる酸化銀は上記酸化銀(D)と同様であるため、本発明の導電性組成物の製造方法は、上記酸化銀(A)を含有する場合、予め合成した上記脂肪酸銀塩(B)および上記2級脂肪酸銀塩(C)と上記酸化銀(D)とを混合する方法以外に、上記脂肪酸銀塩(B)の生成に用いられる水酸基を1個以上有する脂肪酸および上記2級脂肪酸銀塩(C)の生成に用いられる200℃以下の2級脂肪酸と、過剰量の上記酸化銀(D)とを混合し、混合中に上記脂肪酸銀塩(B)および上記2級脂肪酸銀塩(C)を合成する方法であってもよい。
以下に、塗膜形成工程、熱処理工程について詳述する。
上記塗膜形成工程は、本発明の導電性組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する工程である。
ここで、基材としては、上記で例示した耐熱性の低い基材以外に、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドなどのフィルム;銅板、銅箔、ガラス、エポキシ、紙などの基板;等が挙げられる。
本発明の導電性組成物は、必要に応じて上記で例示したα−テルピネオール等の溶剤を用いて溶液化された後、以下に例示する塗布方法により基材上に塗布され、塗膜を形成する。
塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。
上記熱処理工程は、上記塗膜形成工程で得られた塗膜を熱処理して導電性被膜を得る工程である。
本発明においては、塗膜を熱処理することにより、上記脂肪酸銀塩(B)および上記2級脂肪酸銀塩(C)が熱処理により銀に分解され、その銀が上記金属材料(A)を融着することにより本発明の導電性被膜(銀膜)が形成される。
また、上記酸化銀(D)を含有する場合は、上記脂肪酸銀塩(B)および上記2級脂肪酸銀塩(C)が熱処理(分解)により生じた脂肪酸またはその分解物が揮発する一方で、分解により生じた一部の脂肪酸と上記酸化銀(D)とが反応し、再び脂肪酸銀塩(B)および2級脂肪酸銀塩(C)を生成し、それが還元(銀と脂肪酸への分解)されるサイクルを繰り返すことにより本発明の導電性被膜(銀膜)が形成される。
ボールミルに、下記表1に示す成分を下記表1中に示すグラム数で添加し、これらを混合することにより導電性組成物を調製した。
次いで、調製した導電性組成物を基材である厚さ100μmのPETフイルム(ルミラーS56、東レ社製)上に、スクリーン印刷で塗布して塗膜を形成した後、オーブンにて150℃で30分間乾燥し、導電性被膜を作製した。
また、脂肪酸銀塩(C)として用いた2−メチルプロパン酸銀塩(イソ酪酸銀塩)は、脂肪酸である2−メチルプロパン酸(イソ酪酸)と酸化銀との反応により得られるものである。同様に、2−メチルブタン酸銀塩(2−メチル酪酸銀塩)は、2−メチルブタン酸(2−メチル酪酸)と酸化銀との反応により得られるものである。同様に、2−エチルブタン酸銀塩(2−エチル酪酸銀塩)は、2−エチルブタン酸(2−エチル酪酸)と酸化銀との反応により得られるものである。下記表1中に、これらの脂肪酸銀塩(C)の反応に用いたイソ酪酸の級数と沸点を記載する。
また、脂肪酸銀塩(B)のモル数Bと、2級脂肪酸銀塩(C)のモル数Cとのモル比(B/C)も下記表1中に示す。
150℃で30分間乾燥させて得られた各導電性被膜について、低抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製)を用いた4端子4探針法により比抵抗(体積固有抵抗値)を測定した。その結果を下記表1に示す。
なお、下記表1中、「測定不可」とは、導電性被膜の膜状態が悪いため、値が得られなかったことを示す。
また、上記金属材料(A)を含有していても、上記脂肪酸銀塩(B)および/または上記2級脂肪酸銀塩(C)を含有しない導電性組成物(比較例2および3)は、いずれも導電性被膜の膜状態が非常に悪く、比抵抗が測定できないか非常に高くなることが分かった。
これに対し、上記金属材料(A)、上記脂肪酸銀塩(B)および上記2級脂肪酸銀塩(C)を含有する導電性組成物(実施例1〜9)は、塗布後の乾燥条件が150℃、30分間であっても比抵抗の小さい導電性被膜を形成できることが分かった。特に、酸化銀(D)を配合して調製した導電性組成物(実施例3〜5、8および9)は、比抵抗がより小さい導電性膜を形成できることが分かった。
Claims (9)
- 電気抵抗率が20×10-6Ω・cm以下の金属材料(A)と、水酸基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)と、沸点が200℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる水酸基を有しない2級脂肪酸銀塩(C)と、を含有し、
前記金属材料(A)が、金、銀または銅であり、
前記脂肪酸銀塩(B)が、下記式(I)〜(III)のいずれかで表される化合物である、導電性組成物。
(式(I)中、nは0〜2の整数を表し、R 1 は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R 2 は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nが0または1である場合、複数のR 2 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nが2である場合、複数のR 1 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(II)中、R 1 は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数のR 1 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(III)中、R 1 は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R 3 は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。複数のR 1 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。) - 前記金属材料(A)が、平均粒径が0.01〜10μmの金属粉末である請求項1に記載の導電性組成物。
- 前記金属材料(A)の含有量が、前記脂肪酸銀塩(B)および前記2級脂肪酸銀塩(C)の合計100質量部に対して10〜1000質量部である請求項1または2に記載の導電性組成物。
- 前記脂肪酸銀塩(B)のモル数Bと、前記2級脂肪酸銀塩(C)のモル数Cとのモル比(B/C)が、1/1〜15/1である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性組成物。
- 前記2級脂肪酸銀塩(C)が、下記式(IV)で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の導電性組成物。
(式(IV)中、R4は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。) - 更に、酸化銀(D)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の導電性組成物。
- 前記酸化銀(D)の含有量が、前記脂肪酸銀塩(B)および前記2級脂肪酸銀塩(C)の合計100質量部に対して100〜2000質量部である請求項6に記載の導電性組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の導電性組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、得られた塗膜を熱処理して導電性被膜を得る熱処理工程と、を具備する導電性被膜の形成方法。
- 前記熱処理が、100〜250℃の温度に加熱する処理である請求項8に記載の導電性被膜の形成方法。
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