JP4339919B2 - 導電性組成物、導電性被膜の形成方法および導電性被膜 - Google Patents
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Description
そのため、耐熱性の低い基材(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フイルム等)に導電性被膜を形成することは困難であった。また、長時間の加熱処理を要するため、導電性被膜の生産性が低いという問題があった。
上記脂肪酸銀塩(B)が、下記式(I)で表される化合物である導電性組成物。
(式(I)中、nは0または1を表し、R 1 は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R 2 は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。複数のR 2 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
本発明の導電性組成物を用いれば、耐熱性の低い基材上にも電子回路、アンテナ等の回路を容易かつ短時間で作製することができるため非常に有用である。
以下に、酸化銀(A)、脂肪酸銀塩(B)について詳述する。
本発明の導電性組成物で用いる酸化銀(A)は、酸化銀(I)、即ち、Ag2Oである。
本発明においては、酸化銀(A)の形状は特に限定されないが、粒子径が10μm以下の粒子状であるのが好ましく、1μm以下であるのがより好ましい。粒子径がこの範囲であると、より低温で自己還元反応が生ずるので、結果的により低温で導電性被膜を形成できる。
本発明の導電性組成物で用いる脂肪酸銀塩(B)は、水酸基を2個以上有する上記式(I)で表される脂肪酸銀塩であり、具体的には、以下に示す水酸基を2個以上有する脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られるものである。
また、上記式(1)中、R2の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ヘプタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基が挙げられる。R2としては、メチレン基、エチレン基であるのが好ましい。
この反応は、例えば、上記式(1)で表される化合物を用いた場合は以下に示す反応式で表される反応が進行するものであれば特に限定されないが、上記酸化銀を粉砕しつつ進行させる方法や、上記酸化銀を粉砕した後に上記脂肪酸を反応させる方法が好ましい。前者の方法としては、具体的には、上記酸化銀と、溶剤により上記脂肪酸を溶液化したものとを、ボールミル等により混練し、固体である上記酸化銀を粉砕させながら、室温で、1〜24時間程度、好ましくは2〜8時間反応させるのが好ましい。
中でも、イソホロンおよび/またはα−テルピネオールを溶媒として用いるのが、上記反応により得られる脂肪酸銀塩(B)を含有する本発明の導電性組成物のチクソ性が良好となる。
これは、脂肪酸銀塩(B)が有する分子内の水酸基の存在により、熱処理による銀への分解(還元)が非常に促進されるためであると考えられる。また、熱重量測定(TGA)の結果からも、3級脂肪酸銀塩よりも還元されやすいことが明らかとなっている。
上記金属粉としては、具体的には、例えば、銅、銀、アルミニウム等が挙げられ、中でも、銅、銀であるのが好ましい。また、0.01〜10μmの粒径の金属粉であるのが好ましい。
上記還元剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール類等が挙げられる。
また、本発明の導電性組成物は、接着性を向上させる観点から、上記脂肪酸銀塩(B)以外に、ネオデカン酸銀塩等のその他の脂肪酸銀塩を上記脂肪酸銀塩(B)よりも少ないモル数で含有していてもよい。
本発明においては、上述したように、上記脂肪酸銀塩(B)の反応に用いられる酸化銀は上記酸化銀(A)と同様であるため、本発明の導電性組成物の製造方法は、予め合成した上記脂肪酸銀塩(B)と上記酸化銀(A)とを混合する方法以外に、過剰量の上記酸化銀(A)と上記脂肪酸銀塩(B)の反応に用いられる水酸基を2個以上有する脂肪酸とを混合し、混合中に上記脂肪酸銀塩(B)を合成する方法であってもよい。
以下に、塗膜形成工程、熱処理工程について詳述する。
上記塗膜形成工程は、本発明の導電性組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する工程である。
ここで、基材としては、上記で例示した耐熱性の低い基材以外に、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドなどのフィルム;銅板、銅箔、ガラス、エポキシ、紙などの基板;等が挙げられる。
本発明の導電性組成物は、必要に応じて上記で例示したα−テルピネオール等の溶剤を用いて溶液化された後、以下に例示する塗布方法により基材上に塗布され、塗膜を形成する。
塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。
上記熱処理工程は、上記塗膜形成工程で得られた塗膜を熱処理して導電性被膜を得る工程である。
本発明においては、塗膜を熱処理することにより、上記脂肪酸銀塩(B)が熱処理により銀に分解され、分解により生じた脂肪酸またはその分解物が揮発する一方で、分解により生じた一部の脂肪酸と上記酸化銀(A)とが反応し、再び脂肪酸銀塩(B)を生成し、それが還元(銀と脂肪酸への分解)されるサイクルを繰り返すことにより本発明の導電性被膜(銀膜)が形成される。
酸化銀(I)と、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩とを、下記表1中に示すモル比になるようα−テルピネオール中で混合し、導電性組成物を調製した。なお、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩は、脂肪酸である2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸と酸化銀との反応により得られるものである。
次いで、調製した導電性組成物を基材である厚さ100μmのPETフイルム(ルミラーS56、東レ社製)上に、スクリーン印刷で塗布して塗膜を形成した後、オーブンにて160℃で5分間乾燥し、導電性被膜を作製した。
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩に代えて、脂肪酸である2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸と酸化銀との反応により得られる2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸銀塩を用いた以外は、実施例3と同様の方法により、導電性組成物を調製し、導電性被膜を作製した。
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩に代えて、脂肪酸であるヒドロキシピバル酸と酸化銀との反応により得られるヒドロキシピバル酸銀塩を用いた以外は、実施例3と同様の方法により、導電性組成物を調製し、導電性被膜を作製した。
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩に代えて、脂肪酸であるマロン酸と酸化銀との反応により得られるマロン酸銀塩を用いた以外は、実施例3と同様の方法により、導電性組成物を調製し、導電性被膜を作製した。
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩に代えて、脂肪酸であるプロピオン酸と酸化銀との反応により得られるプロピオン酸銀塩を用いた以外は、実施例3と同様の方法により、導電性組成物を調製し、導電性被膜を作製した。
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩に代えて、脂肪酸であるピバル酸と酸化銀との反応により得られるピバル酸銀塩を用いた以外は、実施例3と同様の方法により、導電性組成物を調製し、導電性被膜を作製した。
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩に代えて、脂肪酸であるn−酪酸と酸化銀との反応により得られるn−酪酸銀塩を用いた以外は、実施例3と同様の方法により、導電性組成物を調製し、導電性被膜を作製した。
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩に代えて、脂肪酸であるネオデカン酸と酸化銀との反応により得られるネオデカン銀塩を用いた以外は、実施例3と同様の方法により、導電性組成物を調製し、導電性被膜を作製した。
160℃で5分間乾燥させて得られた各導電性被膜について、低抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製)を用いた4端子4探針法により比抵抗(体積固有抵抗値)を測定した。その結果を下記表1に示す。
なお、下記表1中、「測定不可」とは、導電性被膜の膜状態が悪いため、値が得られなかったことを示す。
これに対し、実施例1〜6および参考例1で調製した水酸基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)を含有する導電性組成物は、塗布後の乾燥条件が160℃、5分間であっても導電性被膜を形成できることが分かった。特に、酸化銀と脂肪酸銀塩とのモル比が2/1〜15/1にある実施例2〜4、6および参考例1で調製した導電性組成物では、比抵抗も良好な導電性膜を形成できることが分かった。
Claims (6)
- 前記酸化銀(A)のモル数Aと、前記脂肪酸銀塩(B)のモル数Bとのモル比(A/B)が、2/1〜25/1である請求項1に記載の導電性組成物。
- 前記脂肪酸銀塩(B)が、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩および2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸銀塩からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1または2に記載の導電性組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の導電性組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、得られた塗膜を熱処理して導電性被膜を得る熱処理工程と、を具備する導電性被膜の形成方法。
- 前記熱処理が、100〜250℃の温度に加熱する処理である請求項4に記載の導電性被膜の形成方法。
- 請求項4または5に記載の導電性被膜の形成方法により得られる導電性被膜。
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