JP2004152881A6 - 半導体装置の生産システム、半導体装置の作製方法、半導体装置並びに電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】基板処理の効率を高めることができる連続発振のレーザー装置、レーザー照射方法及び該レーザー装置を用いた半導体装置の作製方法の提供を課題とする。
【解決手段】半導体膜のうち、パターニング後に基板上に残される部分をマスクに従って把握する。そして、少なくともパターニングすることで得られる部分を結晶化することができるようにレーザー光の走査部分を定め、該走査部分にビームスポットがあたるようにし、半導体膜を部分的に結晶化する。つまり本発明では、半導体膜全体にレーザー光を走査して照射するのではなく、少なくとも必要不可欠な部分が最低限結晶化できるようにレーザー光を走査する。上記構成により、半導体膜を結晶化させた後パターニングにより除去される部分にレーザー光を照射する時間を省くことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】半導体膜のうち、パターニング後に基板上に残される部分をマスクに従って把握する。そして、少なくともパターニングすることで得られる部分を結晶化することができるようにレーザー光の走査部分を定め、該走査部分にビームスポットがあたるようにし、半導体膜を部分的に結晶化する。つまり本発明では、半導体膜全体にレーザー光を走査して照射するのではなく、少なくとも必要不可欠な部分が最低限結晶化できるようにレーザー光を走査する。上記構成により、半導体膜を結晶化させた後パターニングにより除去される部分にレーザー光を照射する時間を省くことができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板又は半導体膜などをレーザー光を用いて結晶化又はイオン注入後の活性化をするレーザー処理装置及びレーザー照射方法と、当該レーザー装置を用いて形成された半導体装置及びその作製方法と、前記半導体装置を用いた電子機器と、該レーザー装置を用いた半導体装置の生産システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、基板上にTFTを形成する技術が大幅に進歩し、アクティブマトリクス型の半導体表示装置への応用開発が進められている。特に、多結晶半導体膜を用いたTFTは、従来の非晶質半導体膜を用いたTFTよりも電界効果移動度(モビリティともいう)が高いので、高速動作が可能である。そのため、従来基板の外に設けられた駆動回路で行っていた画素の制御を、画素と同一の基板上に形成した駆動回路で行うことが可能である。
【0003】
ところで半導体装置に用いる基板は、コストの面から単結晶シリコン基板よりも、ガラス基板が有望視されている。ガラス基板は耐熱性に劣り、熱変形しやすいため、ガラス基板上にポリシリコンTFTを形成する場合には、ガラス基板の熱変形を避けるために、半導体膜の結晶化にレーザーアニールが用いられる。
【0004】
レーザーアニールの特徴は、輻射加熱或いは伝導加熱を利用するアニール法と比較して処理時間を大幅に短縮できることや、半導体又は半導体膜を選択的、局所的に加熱して、基板に殆ど熱的損傷を与えないことなどが挙げられている。
【0005】
なお、ここでいうレーザーアニール法とは、半導体基板又は半導体膜に形成された損傷層を再結晶化する技術や、基板上に形成された非晶質半導体膜を結晶化させる技術を指している。また、半導体基板又は半導体膜の平坦化や表面改質に適用される技術も含んでいる。適用されるレーザー発振装置は、エキシマレーザーに代表される気体レーザー発振装置、YAGレーザーに代表される固体レーザー発振装置であり、レーザー光の照射によって半導体の表面層を数十ナノ〜数十マイクロ秒程度のごく短時間加熱して結晶化させるものとして知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
レーザーはその発振方法により、パルス発振と連続発振の2種類に大別される。パルス発振のレーザーは出力エネルギーが比較的高いため、ビームスポットの大きさを数cm2以上として量産性を上げることができる。特に、ビームスポットの形状を光学系を用いて加工し、長さ10cm以上の線状にすると、基板へのレーザー光の照射を効率的に行うことができ、量産性をさらに高めることができる。そのため、半導体膜の結晶化には、パルス発振のレーザーを用いるのが主流となりつつあった。
【0007】
ところが近年、半導体膜の結晶化においてパルス発振のレーザーよりも連続発振のレーザーを用いる方が、半導体膜内に形成される結晶の粒径が大きくなることが見出された。半導体膜内の結晶粒径が大きくなると、該半導体膜を用いて形成されるTFTの移動度が高くなり、結晶粒界によるTFTの特性のばらつきが抑えられる。そのため、連続発振のレーザーはにわかに脚光を浴び始めている。
【0008】
しかし、一般的に連続発振のレーザーは、パルス発振のレーザーに比べてその最大出力エネルギーが小さいため、ビームスポットのサイズが10−3mm2程度と小さい。そのため、1枚の大きな基板を処理するためには、基板におけるビームの照射位置を上下左右に移動させる必要があり、基板1枚あたりの処理時間が長くなる。よって、基板処理の効率が悪く、基板の処理速度の向上が重要な課題となっている。
【0009】
本発明は上述した問題に鑑み、従来に比べて基板処理の効率を高めることができる連続発振のレーザー装置、レーザー照射方法及び該レーザー装置を用いた半導体装置の作製方法の提供を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のレーザー装置は、被処理物に対するレーザー光の照射位置を制御する第1の手段と、レーザー光を発振する複数の第2の手段(レーザー発振装置)と、前記複数のレーザー発振装置から発振されたレーザー光の被処理物におけるビームスポットを互いに一部重ね合わせる第3の手段(光学系)と、前記複数の各第2の手段の発振を制御し、なおかつレーザー光のビームスポットがマスクの形状のデータ(パターン情報)に従って定められる位置を覆うように前記第1の手段を制御する第4の手段とを有している。
【0011】
なお、マスクのデータに従って定められる位置とは、半導体膜のうち、結晶化後にパターニングすることで得られる部分である。本発明では第4の手段において、絶縁表面に形成された半導体膜のうち、パターニング後に基板上に残される部分をマスクに従って把握する。そして、少なくともパターニングすることで得られる部分を結晶化することができるようにレーザー光の走査部分を定め、該走査部分にビームスポットがあたるように第1の手段を制御して、半導体膜を部分的に結晶化する。つまり本発明では、半導体膜全体にレーザー光を走査して照射するのではなく、少なくとも必要不可欠な部分が最低限結晶化できるようにレーザー光を走査する。上記構成により、半導体膜を結晶化させた後パターニングにより除去される部分にレーザー光を照射する時間を省くことができる。
【0012】
本発明では上記構成を実現するために、半導体膜の成膜後、レーザー光による結晶化の前に、半導体膜にレーザー光でマーカーを付ける。そして該マーカーの位置を基準として、マスクをもとにレーザー光を走査する位置を定める。
【0013】
上記構成によって、レーザー光照射にかかる時間を短縮化することができ、なおかつ基板の処理速度を向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のレーザー装置の構成について説明する。図1に本発明のレーザー装置のブロック図を示す。
【0015】
本発明のレーザー装置100は、被処理物に対するレーザー光の照射位置を制御する第1の手段に相当するステージコントローラ101を有している。
【0016】
また、本発明のレーザー装置100は、レーザー光を発振する第2の手段に相当する複数のレーザー発振装置102(102a〜102d)を有している。なお図1では4つのレーザー発振装置102a〜102dを設けている例について示しているが、本発明のレーザー装置100が有するレーザー発振装置102はこの数に限定されない。本発明のレーザー発振装置100が有するレーザー発振装置102は、2つ以上8つ以下であれば良い。また全てのレーザー発振装置は同じレーザーを用いており、その波長は互いに同じでも異なっていても良い。
【0017】
レーザーは、処理の目的によって適宜変えることが可能である。本発明では、公知のレーザーを用いることができる。レーザーは、連続発振の気体レーザーもしくは固体レーザーを用いることができる。気体レーザーとして、エキシマレーザー、Arレーザー、Krレーザーなどがあり、固体レーザーとして、YAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライドレーザー、Ti:サファイアレーザー、Y2O3レーザーなどが挙げられる。固体レーザーとしては、Cr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti、Yb又はTmがドーピングされたYAG、YVO4、YLF、YAlO3などの結晶を使ったレーザーが適用される。当該レーザーの基本波はドーピングする材料によって異なり、1μm前後の基本波を有するレーザー光が得られる。基本波に対する高調波は、非線形光学素子を用いることで得ることができる。
【0018】
またさらに、固体レーザーから発せられらた赤外レーザー光を非線形光学素子でグリーンレーザー光に変換後、さらに別の非線形光学素子によって得られる紫外レーザー光を用いることもできる。
【0019】
なお本発明のレーザー装置は、上記4つの手段の他に、被処理物の温度を調節する手段を備えていても良い。
【0020】
また本発明のレーザー装置100は、レーザー発振装置102a〜102dのそれぞれから発振されるレーザー光の、被処理物におけるビームスポットを互いに一部重ね合わせることができる第3の手段に相当する光学系103を有している。
【0021】
さらに本発明のレーザー装置100は、第4の手段に相当するCPU104を有している。CPU104はレーザー発振装置102の発振を制御し、なおかつレーザー光のビームスポットがマスクのデータに従って定められる位置を覆うように、第1の手段に相当するステージコントローラ101を制御することができる。
【0022】
図2(A)に、各レーザー発振装置102a〜102dから発振されるレーザー光の被処理物107におけるビームスポットの形状の一例を示す。図2(A)に示したビームスポットは楕円形状を有している。なお本発明のレーザー装置において、レーザー発振装置から発振されるレーザー光のビームスポットの形状は、楕円に限定されない。ビームスポットの形状はレーザーの種類によって異なるし、光学系により成形することもできる。例えば、ラムダ社製のXeClエキシマレーザー(波長308nm、パルス幅30ns)L3308から射出されたレーザー光の形状は、10mm×30mm(共にビームプロファイルにおける半値幅)の矩形状である。また、YAGレーザーから射出されたレーザー光の形状は、ロッド形状が円筒形であれば円状となり、スラブ型であれば矩形状となる。このようなレーザー光を光学系により、さらに成形することにより、所望の大きさのレーザー光をつくることもできる。
【0023】
図2(B)に図2(A)に示したビームスポットの長軸y方向におけるレーザー光のエネルギー密度の分布を示す。ビームスポットが楕円形状であるレーザー光のエネルギー密度の分布は、楕円の中心Oに向かうほど高くなっている。αは、エネルギー密度が、所望の結晶を得るために必要とする値を超えている、長軸y方向における幅に相当する。
【0024】
次に、図2に示したビームスポットを有するレーザー光を合成したときの、ビームスポットの形状を、図3(A)に示す。図3(A)に示すように、各レーザー光のビームスポットは、各楕円の長軸が一致し、なおかつ互いにビームスポットの一部が重なることで合成され、1つのビームスポットが形成されている。なお以下、各楕円の中心Oを結ぶことで得られる直線を中心軸と呼ぶ。
【0025】
図3(B)に、図3(A)に示した合成後のビームスポットの、中心軸方向におけるレーザー光のエネルギー密度の分布を示す。合成前の各ビームスポットが重なり合っている部分においてエネルギー密度が加算されるので、各楕円の中心Oの間においてエネルギー密度が平坦化される。
【0026】
図3(B)から、複数のレーザー光を重ね合わせてエネルギー密度の低い部分を互いに補い合うようにすることで、複数のレーザー光を重ね合わせないで単独で用いるよりも、半導体膜の結晶性を効率良く高めることができるということがわかる。例えば図3(B)の斜線で示した領域においてのみ、所望の結晶を得るために必要なエネルギー密度の値を超えており、その他の領域ではエネルギー密度が低かったと仮定する。この場合、4つのビームスポットを重ね合わせないと、中心軸方向の幅がαで示される斜線の領域でしか、所望の結晶を得ることができない。しかし、ビームスポットを図3(B)で示したように重ね合わせることで、中心軸方向の幅がβ(β>4α)で示される領域において所望の結晶を得ることができ、より効率良く半導体膜を結晶化させることができる。
【0027】
図3(A)における被処理物107が、基板に成膜された半導体膜である場合について、図4(A)を用いて説明する。なお、図4(A)では、アクティブマトリクス型の半導体装置を作製するために成膜された半導体膜500を示しており、破線501が画素部、破線502が信号線駆動回路、破線503が走査線駆動回路の形成される部分に相当する。
【0028】
また本発明では、複数のレーザー光のビームスポットを互いに一部重ね合わせて合成し、1つのビームスポットを形成する。このとき合成前の各ビームスポットの中心が直線状になるように、各ビームスポットを重ね合わせる。
【0029】
なお、合成後のビームスポットは、合成前のビームスポットの中心を互いに結ぶことにより形成される直線(以下、中心軸と呼ぶ)と、走査する方向とが垂直になるようにしても良いし、垂直にならないようにしても良い。合成後のビームスポットの中心軸と、走査する方向とが垂直の場合、最も基板の処理効率が高まる。一方合成後のビームスポットの中心軸と、走査する方向とが45°±35°となるように、望ましくは45°により近い値になるように走査することで、以下の利点が得られる。
【0030】
図31(A)、(B)に、走査方向に対するビームスポットの中心軸の角度を27°、波長532nm、出力エネルギー2W、移動速度を20cm/secとし、窒化珪素上に形成された1000Åの非晶質珪素膜にNd:YVO4を照射して結晶化させたときの、結晶方位の逆極点図(Inverse pole figure)のマップ図を示す。基板と平行な面内において走査方向と垂直な方向をx、走査方向をy、基板と垂直な方向をzとすると、図31(A)は半導体膜のz方向に垂直な面における結晶方位の分布を示しており、図31(B)はy方向に垂直な面における結晶方位の分布を示している。また図31(C)はy方向に垂直な面における逆極点図であり、各結晶方位の分布の割合を示している。そして、図31(D)は極点図であり、TDが走査方向yに相当し、001がz方向に垂直な面における極点図、011がy方向とz方向を合成した方向に垂直な面における極点図、111はx方向とy方向とz方向を合成した方向に垂直な面における極点図を示している。
【0031】
また図32(A)、(B)に、走査方向に対するビームスポットの中心軸の角度を45°、波長532nm、出力エネルギー1.6W、移動速度を20cm/secとし、窒化珪素上に形成された1000Åの非晶質珪素膜にNd:YVO4を照射して結晶化させたときの、結晶方位の逆極点図(Inverse pole figure)のマップ図を示す。基板と平行な面内において走査方向と垂直な方向をx、走査方向をy、基板と垂直な方向をzとすると、図32(A)は半導体膜のz方向に垂直な面における結晶方位の分布を示しており、図32(B)はy方向に垂直な面における結晶方位の分布を示している。また図32(C)はy方向に垂直な面における逆極点図であり、各結晶方位の分布の割合を示している。そして、図32(D)は極点図であり、TDが走査方向yに相当し、001がz方向に垂直な面における極点図、011がy方向とz方向を合成した方向に垂直な面における極点図、111はx方向とy方向とz方向を合成した方向に垂直な面における極点図を示している。
【0032】
図31、図32からわかるように、結晶粒はビームスポットの中心軸に対して垂直方向に成長している。上記構成によって、走査する方向とビームスポットの中心軸とが垂直になるように走査した場合に比べて、活性層中に存在する結晶粒の数が多くなり、結晶の方位や結晶粒に起因する特性のばらつきを低減することができる。
【0033】
図4(B)に、画素部が形成される部分501におけるビームスポット507の拡大図を示す。また図4(C)に、信号線駆動回路502が形成される部分におけるビームスポット507の拡大図を示す。本発明では、ビームスポット507の中心軸と、走査方向とが垂直にならないようにする。具体的には、ビームスポットの中心軸と、走査方向との間に形成される鋭角θAが45°±35°となるようにし、より望ましくは45°となるようにする。
【0034】
またレーザー光は、図3(B)に示すようにビームスポットのエッジの部分におけるエネルギー密度が他の部分よりも低くなっており、被処理物への処理が均一に行えない場合がある。よって、結晶化後に半導体膜をパターニングすることで得られる島状の半導体膜に相当する部分506と、レーザー光の軌跡のエッジとが重なることのないように、レーザー光を照射することが望ましい。
【0035】
なお、図4(A)ではレーザー光を矢印の方向に走査するが、必ずしもこの矢印の方向に走査する必要はない。図33(A)に、レーザー光の走査方向が、図4(A)の場合に対して90°回転している例について示す。また図33(B)に、画素部501と走査線駆動回路503においてレーザー光の走査方向が図33(A)の場合と同じであり、信号線駆動回路502においては、走査方向が図33(A)の場合と同じレーザー光と、図4(A)の場合と同じレーザー光とを両方照射している例を示す。この場合、レーザー光が重なる部分において半導体膜の表面が荒れることがあるので、活性層が形成される部分においてレーザー光が重ならないようにするのが好ましい。また、図33(B)では信号線駆動回路において走査方向の異なるレーザー光を照射しているが、走査線駆動回路503と画素部501でも走査方向の異なるレーザー光を照射するようにしても良い。
【0036】
そして本発明では、CPU104に入力される半導体膜のパターニングのマスクに従って、レーザー光を走査する部分を定める。なおレーザー光を走査する部分は、半導体膜の、結晶化後にパターニングすることで得られる部分を覆うようにする。CPU104では、半導体膜のうち、少なくともパターニングすることで得られる部分を結晶化することができるように、レーザー光の走査部分を定め、該走査部分にビームスポット即ち照射位置があたるように、第1の手段に相当するステージコントローラ101を制御して、半導体膜を部分的に結晶化する。
【0037】
図5(A)に、レーザー光の走査する部分と、マスクとの関係を示す。なお図5(A)では、ビームスポットの中心軸と走査方向とがほぼ垂直になっている。図5(B)に、ビームスポットの中心軸と走査方向とが45°の場合の、レーザー光の走査する部分と、マスクとの関係を示す。510は半導体膜のうち、パターニングに得られる島状の半導体膜を示しており、これらの島状の半導体膜510を覆うように、レーザー光の走査部分が定められる。511はレーザー光の走査部分であり、島状の半導体膜510を覆っている。図5に示すように、本発明ではレーザー光を半導体膜全面に照射するのではなく、少なくとも必要不可欠な部分を最低限結晶化できるようにレーザー光を走査する。
【0038】
なお、結晶化後の半導体膜をTFTの活性層として用いる場合、レーザー光の走査方向は、チャネル形成領域のキャリアが移動する方向と平行になるように定めるのが望ましい。
【0039】
図6にTFTの活性層の一例を示す。図6(A)ではチャネル形成領域が1つ設けられている活性層を示しており、チャネル形成領域520を挟むようにソース領域またはドレイン領域となる不純物領域521、522が設けられている。本発明のレーザー装置を用いて半導体膜を結晶化させるとき、レーザー光の走査方向は矢印に示すように、チャネル形成領域のキャリアが移動する方向と平行になるように、走査方向を定めるようにする。523はビームスポットの形状を示しており、ビームスポット523のうち、斜線で示した領域524において、エネルギー密度が、良好な結晶を得るために必要である値を超えている。活性層全体に、斜線で示した領域524のレーザー光が照射されるようにすることで、活性層の結晶性をより高めることができる。
【0040】
また、図6(B)では、チャネル形成領域が3つ設けられている活性層を示しており、チャネル形成領域530を挟むように不純物領域533、534が設けられている。また、チャネル形成領域531を挟むように不純物領域534、535が設けられており、さらにチャネル形成領域532を挟むように不純物領域535、536が設けられている。そして、本発明のレーザー装置を用いて半導体膜を結晶化させるとき、レーザー光の走査方向は矢印に示すように、チャネル形成領域のキャリアが移動する方向と平行になるように、走査方向を定めるようにする。
【0041】
なお、レーザー光の走査部分を定めるためには、半導体膜に対するマスクの位置を定めるためのマーカーを、半導体膜に形成する必要がある。図7に、アクティブマトリクス型の半導体装置を作製するために成膜された半導体膜において、マーカーを形成する位置を示す。なお、図7(A)は1つの基板から1つの半導体装置を作製する例を示しており、図7(B)は1つの基板から4つの半導体装置を作製する例を示している。
【0042】
図7(A)において540は基板上に成膜された半導体膜であり、破線541が画素部、破線542が信号線駆動回路、破線543が走査線駆動回路の形成される部分に相当する。544はマーカーが形成される部分(マーカー形成部)であり、半導体膜の4隅に位置するように設けられている。
【0043】
なお図7(A)ではマーカー形成部544を4つそれぞれ4隅に設けたが、本発明はこの構成に限定されない。半導体膜におけるレーザー光の走査部分と、半導体膜のパターニングのマスクとの位置合わせをすることができるのであれば、マーカー形成部の位置及びその数は上述した形態に限定されない。
【0044】
図7(B)において550は基板上に成膜された半導体膜であり、破線551は後の工程において基板を分断するときのスクライブラインである。図7(B)では、スクライブライン551に沿って基板を分断することで、4つの半導体装置を作製することができる。なお分断により得られる半導体装置の数はこれに限定されない。
【0045】
552はマーカーが形成される部分(マーカー形成部)であり、半導体膜の4隅に位置するように設けられている。なお図7(B)ではマーカー形成部552を4つそれぞれ4隅に設けたが、本発明はこの構成に限定されない。半導体膜におけるレーザー光の走査部分と、半導体膜のパターニングのマスクとの位置合わせをすることができるのであれば、マーカー形成部の位置及びその数は上述した形態に限定されない。
【0046】
マーカーを形成する際に用いるレーザーは、代表的にはYAGレーザー、CO2レーザー等が挙げられるが、無論この他のレーザーを用いて形成することは可能である。
【0047】
次に、本発明のレーザー装置を用いた半導体装置の生産システムについて説明する。
【0048】
図8に本発明の生産システムの流れをフローチャートで示す。まずCADを用いて半導体装置の設計を行う。そして、設計された半導体膜のパターニングのマスクの形状に関する情報を、レーザー装置が有するCPUに入力する。
【0049】
一方、非晶質半導体膜を基板上に成膜した後、非晶質半導体膜が成膜された基板をレーザー装置に設置する。そして、レーザーを用いて半導体膜の表面にマーカーを形成する。
【0050】
CPUでは入力されたマスクの情報に基づき、マーカーの位置を基準にして、レーザー光の走査部分を決定する。そして形成されたマーカーを基準にして、レーザー光の走査部分にレーザー光を照射し、半導体膜を部分的に結晶化する。
【0051】
そして、レーザー光を照射した後、レーザー光照射により得られた多結晶半導体膜をパターニングしてエッチングし、島状の半導体膜を形成する。以下、島状の半導体膜からTFTを作製する工程が行われる。TFTの具体的な作製工程はTFTの形状によって異なるが、代表的にはゲート絶縁膜を成膜し、島状の半導体膜に不純物領域を形成する。そして、ゲート絶縁膜及びゲート電極を覆うように層間絶縁膜を形成し、該層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、不純物領域の一部を露出させる。そして該コンタクトホールを介して不純物領域に接するように層間絶縁膜上に配線を形成する。
【0052】
なお、比較対象のために、図9に従来の半導体装置の生産の流れをフローチャートで示す。図9に示すように、CADによる半導体装置のマスク設計が行われる。一方で、基板に非晶質半導体膜が成膜され、該非晶質半導体膜が成膜された基板をレーザー装置に設置する。そして、非晶質半導体膜全体にレーザー光が照射されるように走査し、非晶質半導体膜全体を結晶化させる。そして、結晶化により得られた多結晶半導体膜にマーカーを形成し、該マーカーを基準として多結晶半導体膜をパターニングして島状の半導体膜を形成する。そして該島状の半導体膜を用いてTFTを作製する。
【0053】
このように本発明の生産システムでは、図9に示すような従来の場合とは異なり、マーカーをレーザー光を用いて非晶質半導体膜を結晶化させる前に形成する。そして、半導体膜のパターニングのマスクの情報に従って、レーザー光を走査させる。
【0054】
上記構成により、半導体膜を結晶化させた後パターニングにより除去される部分にレーザー光を照射する時間を省くことができるので、レーザー光照射にかかる時間を短縮化することができ、なおかつ基板の処理速度を向上させることができる。
【0055】
なお、図10に、触媒を用いて半導体膜を結晶化させる工程を含む場合の、本発明の生産システムのフローチャートを示す。触媒元素を用いる場合、特開平7−130652号公報、特開平8−78329号公報で開示された技術を用いることが望ましい。
【0056】
図10の図8と異なる点は、非晶質半導体膜を成膜後にNiを用いて結晶化させる工程(NiSPC)を含んでいる点である。例えば特開平7−130652号公報に開示されている技術を用いる場合、重量換算で10ppmのニッケルを含む酢酸ニッケル塩溶液を非晶質半導体膜に塗布してニッケル含有層を形成し、500℃、1時間の脱水素工程の後、500〜650℃で4〜12時間、例えば550℃、8時間の熱処理を行い結晶化する。尚、使用可能な触媒元素は、ニッケル(Ni)以外にも、ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、といった元素を用いても良い。
【0057】
そして図10では、レーザー光照射を用いて、NiSPCにより結晶化された半導体膜の結晶性をさらに高める。レーザー光照射により得られた多結晶半導体膜は触媒元素を含んでおり、図10ではレーザー光照射後にその触媒元素を結晶質半導体膜から除去する工程(ゲッタリング)を行う。ゲッタリングは特開平10−135468号公報または特開平10−135469号公報等に記載された技術を用いることができる。
【0058】
具体的には、レーザー照射後に得られる多結晶半導体膜の一部にリンを添加し、窒素雰囲気中で550〜800℃、5〜24時間、例えば600℃、12時間の熱処理を行う。すると多結晶半導体膜のリンが添加された領域がゲッタリングサイトとして働き、多結晶半導体膜中に存在するリンをリンが添加された領域に偏析させることができる。その後、多結晶半導体膜のリンが添加された領域をパターニングにより除去することで、触媒元素の濃度を1×1017atoms/cm3以下好ましくは1×1016atoms/cm3程度にまで低減された島状の半導体膜を得ることができる。
【0059】
このように本発明では、半導体膜全体にレーザー光を走査して照射するのではなく、少なくとも必要不可欠な部分を最低限結晶化できるようにレーザー光を走査する。上記構成により、半導体膜を結晶化させた後パターニングにより除去される部分にレーザー光を照射する時間を省くことができ、基板1枚あたりにかかる処理時間を大幅に短縮することができる。
【0060】
また、レーザー光の軌跡の幅を変えることができるので、レーザー光の軌跡のエッジが、パターニングによって得られる半導体と重なるのを防ぐことができる。また不必要な部分にレーザー光を照射することで基板に与えられるダメージを軽減することができる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0062】
(実施例1)
本実施例では、本発明のレーザー装置に用いられる光学系について説明する。
【0063】
図11に、本発明のレーザー装置に用いられる光学系の具体的な構成を示す。図11(A)は本発明のレーザー装置の光学系の側面図であり、図11(A)の矢印Bの方向から見た側面図を図11(B)に示す。なお図11(B)の矢印Aの方向から見た側面図が、図11(A)に相当する。
【0064】
図11はビームスポットを4つ合成して1つのビームスポットにする場合の光学系を示している。なお本発明において合成するビームスポットの数はこれに限定されず、合成するビームスポットの数は2以上8以下であれば良い。
【0065】
401、402、403、404、405はシリンドリカルレンズであり、図11には示されていないが、本実施例の光学系はシリンドリカルレンズを6つ用いている。図12に図11に示した光学系の斜視図を示す。シリンドリカルレンズ403、404、405、406のそれぞれに、異なるレーザー発振装置からレーザー光が入射される。
【0066】
そしてシリンドリカルレンズ403、405によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ401に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズにおいてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物400に照射される。また、シリンドリカルレンズ404、406によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ402に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズにおいてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物400に照射される。
【0067】
被処理物400におけるレーザー光のビームスポットは互いに一部重なることで合成されて、1つのビームスポットになっている。
【0068】
なお、本実施例では、被処理物400に最も近いシリンドリカルレンズ401、402の焦点距離を20mmとし、シリンドリカルレンズ403〜406の焦点距離を150mmとする。そしてシリンドリカルレンズ401、402から被処理物400へのレーザー光の入射角θ1は、本実施例では25°とし、シリンドリカルレンズ403〜406からシリンドリカルレンズ401、402へのレーザー光の入射角θ2を10°とするように各レンズを設置する。
【0069】
なお各レンズの焦点距離及び入射角は設計者が適宜設定することが可能である。さらに、シリンドリカルレンズの数もこれに限定されず、また用いる光学系はシリンドリカルレンズに限定されない。本発明は、各レーザー発振装置から発振されるレーザー光のビームスポットを、半導体膜の結晶化に適した形状及びエネルギー密度になるように加工し、なおかつ全てのレーザー光のビームスポットを互いに重ね合わせて合成し、1つのビームスポットにすることができるような光学系であれば良い。
【0070】
なお本実施例では、4つのビームスポットを合成する例について示しており、この場合4つのレーザー発振装置にそれぞれ対応するシリンドリカルレンズを4つと、該4つのシリンドリカルレンズに対応する2つのシリンドリカルレンズとを有している。n(n=2、4、6、8)のビームスポットを合成する場合、nのレーザー発振装置にそれぞれ対応するnのシリンドリカルレンズと、該nのシリンドリカルレンズに対応するn/2のシリンドリカルレンズとを有している。n(n=3、5、7)のビームスポットを合成する場合、nのレーザー発振装置にそれぞれ対応するnのシリンドリカルレンズと、該nのシリンドリカルレンズに対応する(n+1)/2のシリンドリカルレンズとを有している。
【0071】
なお、戻り光がもときた光路をたどって戻るのを防ぐために、基板に対する入射角は、0より大きく90°より小さくなるように保つようにするのが望ましい。
【0072】
また、均一なレーザー光の照射を実現するためには、照射面に垂直な平面であって、かつ合成前の各ビームの形状をそれぞれ長方形と見立てたときの短辺を含む面または長辺を含む面のいずれか一方を入射面と定義すると、前記レーザー光の入射角度θは、入射面に含まれる前記短辺または前記長辺の長さがW、前記照射面に設置され、かつ、前記レーザー光に対して透光性を有する基板の厚さがdであるとき、θ≧arctan(W/2d)を満たすのが望ましい。この議論は合成前の個々のレーザー光について成り立つ必要がある。なお、レーザー光の軌跡が、前記入射面上にないときは、該軌跡を該入射面に射影したものの入射角度をθとする。この入射角度θでレーザー光が入射されれば、基板の表面での反射光と、前記基板の裏面からの反射光とが干渉せず、一様なレーザー光の照射を行うことができる。以上の議論は、基板の屈折率を1として考えた。実際は、基板の屈折率が1.5前後のものが多く、この数値を考慮に入れると上記議論で算出した角度よりも大きな計算値が得られる。しかしながら、ビームスポットの長手方向の両端のエネルギーは減衰があるため、この部分での干渉の影響は少なく、上記の算出値で十分に干渉減衰の効果が得られる。
【0073】
(実施例2)
本実施例では、レーザー光照射の途中で、レーザー光のビームスポットの大きさを変える例について説明する。
【0074】
本発明のレーザー装置は、CPUにおいて、入力されたマスクの情報に基づきレーザー光を走査する部分を把握する。さらに本実施例では、ビームスポットの長さをマスクの形状に合わせて変えるようにする。
【0075】
図13に、半導体膜のパターニングのマスクの形状と、ビームスポットの長さの関係を一例として示す。560は半導体膜のパターニングのマスクの形状を示しており、レーザー照射による結晶化の後、該マスクに従って半導体膜がパターニングされる。
【0076】
561と562は、レーザー光が照射された部分を示している。なお561は、4つのレーザー発振装置から出力されたレーザー光のビームスポットを重ね合わせて合成することで得られるビームスポットを、走査した部分である。一方、562は、2つのレーザー発振装置から出力されたレーザー光のビームスポットを重ね合わせて合成することで得られるビームスポットを、走査した部分である。
【0077】
2つのレーザー発振装置から出力されたレーザー光を合成することで得られるビームスポットは、4つのレーザー発振装置のうちの2つのレーザー発振装置の発振を停止することで得られる。ただしこの場合、残された2つのレーザー発振装置から出力される2つのビームスポットが、重なっている事が重要である。
【0078】
なお本実施例のように、レーザー光を走査している途中でビームスポットの長さを変える場合、ビームスポットを短いほうから長いほうへ変えるよりも、長いほうから短いほうへ変えるほうがレーザー発振装置からの出力が安定するのでより好ましい。よって、CPUにおいてマスクの形状の情報をもとに、ビームスポットを長いほうから短いほうへ変えるようにレーザー光の走査順序を考慮したほうが良い。さらには、マスクの設計の段階で、レーザー光の走査順序を考慮に入れてマスクを設計するようにしても良い。
【0079】
上記構成により、レーザー光の軌跡の幅を変えることができるので、レーザー光の軌跡のエッジが、パターニングによって得られる半導体と重なるのを防ぐことができる。また不必要な部分にレーザー光を照射することで基板に与えられるダメージをさらに軽減することができる。
【0080】
本実施例は、実施例1と組み合わせて実施することが可能である。
【0081】
(実施例3)
本実施例では、レーザー光照射の途中で、光学系が有するシャッターによりレーザー光を遮り、所定の部分にのみレーザー光を照射する例について説明する。
【0082】
本発明のレーザー装置は、CPUにおいて、入力されたマスクの情報に基づきレーザー光を走査する部分を把握する。さらに本実施例では、走査するべき部分のみにレーザー光が照射されるようにシャッターを用いてレーザー光を遮る。このときシャッターは、レーザー光を遮ることが可能であり、なおかつレーザー光によって変形または損傷しないような材質で形成するのが望ましい
【0083】
図14に、半導体膜のパターニングのマスクの形状と、レーザー光が照射される部分の関係を一例として示す。570は半導体膜のパターニングのマスクの形状を示しており、レーザー照射による結晶化の後、該マスクに従って半導体膜がパターニングされる。
【0084】
571は、レーザー光が照射された部分を示している。破線はレーザー光がシャッターで遮られている部分を示しており、本実施例では結晶化させる必要のない部分にはレーザー光が照射しないか、照射されていてもそのエネルギー密度が低くなるようにすることができる。したがって、不必要な部分にレーザー光を照射することで基板に与えられるダメージをさらに軽減することができる。
【0085】
本実施例は、実施例1または実施例2と組み合わせて実施することが可能である。
【0086】
(実施例4)
本実施例では、レーザー光の走査方向を変更する例について説明する。
【0087】
レーザー光の照射方向を、チャネル形成領域のキャリアが移動する方向と平行にすることで、半導体膜中の結晶粒の成長方向がキャリアの移動方向と重なり、移動度を高めることができる。しかし回路の設計上の制約のために、チャネル形成領域がキャリアの移動方向と平行になるように、全ての活性層をレイアウトすることが難しい場合がある。この場合、マスクの情報に従って、レーザー光の走査方向を変更するのが望ましい。
【0088】
図15に、半導体膜のパターニングのマスクの形状と、レーザー光が照射される部分の関係を一例として示す。580、583は半導体膜のパターニングのマスクの形状を示しており、レーザー照射による結晶化の後、該マスクに従って半導体膜がパターニングされる。580と583はチャネル形成領域においてキャリアの移動する方向が垂直になるように設計されている。
【0089】
本発明のレーザー装置は、CPUにおいて、入力されたマスクの情報に基づきレーザー光を走査する部分を把握する。一方、パターニングして得られる島状の半導体膜の、チャネル形成領域におけるキャリアの移動方向を、情報としてCPUに入力する。具体的には、活性層の形状に対してレーザー光の走査方向を予め決めておく。そしてCPUでは、その予め定められた活性層の形状に対するレーザー光の走査方向と、マスクの形状から得られる各活性層の形状とを比較参照し、半導体膜の各走査部分の走査方向を決める。
【0090】
581は、レーザー光を水平方向に走査したときにレーザー光が照射された部分を示しており、その走査方向は、パターニング後に得られる島状の半導体膜580のチャネル形成領域となる部分のキャリアの移動する方向と平行になっている。582は、レーザー光を垂直方向に走査したときにレーザー光が照射された部分を示しており、その走査方向は、パターニング後に得られる島状の半導体膜583のチャネル形成領域となる部分のキャリアの移動する方向と平行になっている。
【0091】
なお図15の584〜587に示したように、走査方向の異なるレーザー光が重なって照射されるところは、半導体膜の表面が荒れてしまい、後に形成されるゲート絶縁膜の特性に悪影響を及ぼす可能性があるので、TFTの活性層として用いるのは好ましくない。よってマスクの設計の段階で、レーザー光の走査方向及び走査部分を定めておき、レーザー光の重なる部分に島状の半導体膜を配置しないようにマスクのレイアウトを決定するのが望ましい。
【0092】
また、実施例2に示すようにレーザー光のビームスポットの中心軸方向の長さを変えることでレーザー光の軌跡のエッジの部分が島状の半導体膜と重なるのを防いでも良い。また、実施例3に示すようにシャッターを用いることで、レーザー光の軌跡のエッジの部分が島状の半導体膜と重なるのを防いだり、レーザー光が重なるのを防いだりするようにしても良い。
【0093】
本実施例は、実施例1〜3と組み合わせて実施することが可能である。
【0094】
(実施例5)
本実施例では、マーカー形成部423に設けられたマーカーの一例を示す。
【0095】
図16(A)に本実施例のマーカーの上面図を示す。421、422は半導体膜に形成された基準となるマーカー(以下、基準マーカーと呼ぶ)であり、それぞれ形状が矩形である。基準マーカー421は、全てその矩形の長辺が水平方向に配置されており、各基準マーカー421は一定の間隔を保って垂直方向に配置されている。基準マーカー422は全てその矩形の長辺が垂直方向に配置されており、各基準マーカー422は一定の間隔を保って水平方向に配置されている。
【0096】
基準マーカー421はマスクの垂直方向の位置を定める基準となり、基準マーカー422はマスクの水平方向の位置を定める基準となっている。424、425は半導体膜のパターニング用マスクのマーカーであり、それぞれ形状が矩形である。マーカー424はその矩形の長辺が水平方向に配置されるように、なおかつマーカー425はその矩形の長辺が垂直方向に配置されるように、半導体パターニング用のマスクの位置を定める。そして、マーカー424が定められた2つの隣り合う基準マーカー421の丁度真中に位置するように、なおかつマーカー425が定められた2つの隣り合う基準マーカー422の丁度真中に位置するように、半導体パターニング用のマスクの位置を定める。
【0097】
図16(B)に半導体膜に形成された基準マーカーの斜視図を示す。基板431に成膜された半導体膜430の一部は、レーザーによって矩形状に削られており、該削られた部分が基準マーカー421、422として機能する。
【0098】
なお本実施例に示したマーカーはほんの一例であり、本発明のマーカーはこれに限定されない。本発明で用いるマーカーは、半導体膜をレーザー光で結晶化させる前に形成することができ、なおかつレーザー光の照射による結晶化の後にでも用いることができるものであれば良い。
【0099】
本実施例は、実施例1〜4と組み合わせて実施することが可能である。
【0100】
(実施例6)
本実施例では、8つのレーザー発振装置を用いた本発明のレーザー装置の、光学系について説明する。
【0101】
図17、図18に、本実施例のレーザー装置に用いられる光学系の具体的な構成を示す。図17は本発明のレーザー装置の光学系の側面図であり、図17の矢印Bの方向から見た側面図を図18に示す。なお図18の矢印Aの方向から見た側面図が、図17に相当する。
【0102】
本実施例ではビームスポットを8つ合成して1つのビームスポットにする場合の光学系を示している。なお本発明において合成するビームスポットの数はこれに限定されず、合成するビームスポットの数は2以上8以下であれば良い。
【0103】
441〜450はシリンドリカルレンズであり、図17、図18には示されていないが、本実施例の光学系は12のシリンドリカルレンズ441〜452を用いている。図19に図17、図18に示した光学系の斜視図を示す。シリンドリカルレンズ441〜444のそれぞれに、異なるレーザー発振装置からレーザー光が入射される。
【0104】
そしてシリンドリカルレンズ450、445によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ441に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズ441においてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物440に照射される。また、シリンドリカルレンズ451、446によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ442に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズ442においてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物440に照射される。また、シリンドリカルレンズ449、447によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ443に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズ443においてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物440に照射される。また、シリンドリカルレンズ452、448によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ444に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズ444においてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物440に照射される。
【0105】
被処理物440におけるレーザー光のビームスポットは互いに一部重なることで合成されて、1つのビームスポットになっている。
【0106】
なお、本実施例では、被処理物440に最も近いシリンドリカルレンズ441〜444の焦点距離を20mmとし、シリンドリカルレンズ445〜452の焦点距離を150mmとする。そしてシリンドリカルレンズ441〜444から被処理物440へのレーザー光の入射角θ1は、本実施例では25°とし、シリンドリカルレンズ445〜452からシリンドリカルレンズ441〜444へのレーザー光の入射角θ2を10°とするように各レンズを設置する。
【0107】
なお各レンズの焦点距離及び入射角は設計者が適宜設定することが可能である。さらに、シリンドリカルレンズの数もこれに限定されず、また用いる光学系はシリンドリカルレンズに限定されない。本発明は、各レーザー発振装置から発振されるレーザー光のビームスポットを、半導体膜の結晶化に適した形状及びエネルギー密度になるように加工し、なおかつ全てのレーザー光のビームスポットを互いに重ね合わせて合成し、1つのビームスポットにすることができるような光学系であれば良い。
【0108】
なお本実施例では、8つのビームスポットを合成する例について示しており、この場合8つのレーザー発振装置にそれぞれ対応するシリンドリカルレンズを8つと、該8つのシリンドリカルレンズに対応する4つのシリンドリカルレンズとを有している。
【0109】
本実施例は、実施例1〜5と組み合わせて実施することが可能である。
【0110】
(実施例7)
本実施例ではアクティブマトリクス基板の作製方法について図25〜図28を用いて説明する。本明細書ではCMOS回路、及び駆動回路と、画素TFT、保持容量とを有する画素部を同一基板上に形成された基板を、便宜上アクティブマトリクス基板と呼ぶ。
【0111】
まず、本実施例ではバリウムホウケイ酸ガラス、またはアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラスからなる基板600を用いる。なお、基板600としては、石英基板やシリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。また、本実施例の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。
【0112】
次いで、基板600上に酸化珪素膜、窒化珪素膜または酸化窒化珪素膜などの絶縁膜から成る下地膜601を公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等)により形成する。本実施例では下地膜601として下地膜601a、601bの2層の下地膜を用いるが、前記絶縁膜の単層膜または2層以上積層させた構造を用いても良い(図25(A))。
【0113】
次いで、下地膜601上に、公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等)により25〜80nm(好ましくは30〜60nm)の厚さで非晶質半導体膜692を形成する(図25(A))。なお、本実施例では非晶質半導体膜を成膜しているが、微結晶半導体膜、結晶性半導体膜であっても良い。また、非晶質珪素ゲルマニウム膜などの非晶質構造を有する化合物半導体膜を用いても良い。
【0114】
次に、非晶質半導体膜692をレーザー結晶化法により結晶化させる。レーザー結晶化法は、本発明のレーザー装置を用いて行う。本発明では、レーザー装置のCPUに入力されたマスクの情報に従って、非晶質半導体膜を部分的に結晶化させる。もちろん、レーザー結晶化法だけでなく、他の公知の結晶化法(RTAやファーネスアニール炉を用いた熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いた熱結晶化法等)と組み合わせて行ってもよい。
【0115】
非晶質半導体膜の結晶化に際し、連続発振が可能な固体レーザーを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波を用いることで、大粒径の結晶を得ることができる。代表的には、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いるのが望ましい。具体的には、連続発振のYVO4レーザーから射出されたレーザー光を非線形光学素子により高調波に変換し、出力10Wのレーザー光を得る。また、共振器の中にYVO4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法もある。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザー光に成形して、被処理体に照射する。このときのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、10〜2000cm/s程度の速度でレーザー光に対して相対的に半導体膜を移動させて照射する。
【0116】
なおレーザーは、連続発振の気体レーザーもしくは固体レーザーを用いることができる。気体レーザーとして、エキシマレーザー、Arレーザー、Krレーザーなどがあり、固体レーザーとして、YAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライドレーザー、Ti:サファイアレーザー、Y2O3レーザーなどが挙げられる。固体レーザーとしては、Cr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti、Yb又はTmがドーピングされたYAG、YVO4、YLF、YAlO3などの結晶を使ったレーザー等も使用可能である。当該レーザーの基本波はドーピングする材料によって異なり、1μm前後の基本波を有するレーザー光が得られる。基本波に対する高調波は、非線形光学素子を用いることで得ることができる。
【0117】
上述したレーザー結晶化によって、非晶質半導体膜に部分的に結晶化された領域693、694、695が形成される(図25(B))。
【0118】
次に、部分的に結晶性が高められた結晶性半導体膜を所望の形状にパターニングして、結晶化された領域693、694、695から島状の半導体膜602〜606を形成する(図25(C))。
【0119】
また、島状の半導体膜602〜606を形成した後、TFTのしきい値を制御するために微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを行ってもよい。
【0120】
次いで、島状の半導体膜602〜606を覆うゲート絶縁膜607を形成する。ゲート絶縁膜607はプラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを40〜150nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。本実施例では、プラズマCVD法により110nmの厚さで酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)で形成した。勿論、ゲート絶縁膜は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
【0121】
また、酸化珪素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)とO2とを混合し、反応圧力40Pa、基板温度300〜400℃とし、高周波(13.56MHz)電力密度0.5〜0.8W/cm2で放電させて形成することができる。このようにして作製される酸化珪素膜は、その後400〜500℃の熱アニールによりゲート絶縁膜として良好な特性を得ることができる。
【0122】
次いで、ゲート絶縁膜607上に膜厚20〜100nmの第1の導電膜608と、膜厚100〜400nmの第2の導電膜609とを積層形成する。本実施例では、膜厚30nmのTaN膜からなる第1の導電膜608と、膜厚370nmのW膜からなる第2の導電膜609を積層形成した。TaN膜はスパッタ法で形成し、Taのターゲットを用い、窒素を含む雰囲気内でスパッタする。また、W膜は、Wのターゲットを用いたスパッタ法で形成した。その他に6フッ化タングステン(WF6)を用いる熱CVD法で形成することもできる。いずれにしてもゲート電極として使用するためには低抵抗化を図る必要があり、W膜の抵抗率は20μΩcm以下にすることが望ましい。W膜は結晶粒を大きくすることで低抵抗率化を図ることができるが、W膜中に酸素などの不純物元素が多い場合には結晶化が阻害され高抵抗化する。従って、本実施例では、高純度のW(純度99.9999%)のターゲットを用いたスパッタ法で、さらに成膜時に気相中からの不純物の混入がないように十分配慮してW膜を形成することにより、抵抗率9〜20μΩcmを実現することができる。
【0123】
なお、本実施例では、第1の導電膜608をTaN、第2の導電膜609をWとしたが、特に限定されず、いずれもTa、W、Ti、Mo、Al、Cu、Cr、Ndから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成してもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素膜に代表される半導体膜を用いてもよい。また、AgPdCu合金を用いてもよい。また、第1の導電膜をタンタル(Ta)膜で形成し、第2の導電膜をW膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化チタン(TiN)膜で形成し、第2の導電膜をW膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化タンタル(TaN)で形成し、第2の導電膜をWとする組み合わせ、第1の導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、第2の導電膜をAl膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、第2の導電膜をCu膜とする組み合わせとしてもよい。
【0124】
また、2層構造に限定されず、例えば、タングステン膜、アルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜、窒化チタン膜を順次積層した3層構造としてもよい。また、3層構造とする場合、タングステンに代えて窒化タングステンを用いてもよいし、アルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜に代えてアルミニウムとチタンの合金膜(Al−Ti)を用いてもよいし、窒化チタン膜に代えてチタン膜を用いてもよい。
【0125】
なお、導電膜の材料によって、適宜最適なエッチングの方法や、エッチャントの種類を選択することが重要である。
【0126】
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストからなるマスク610〜615を形成し、電極及び配線を形成するための第1のエッチング処理を行う。第1のエッチング処理では第1及び第2のエッチング条件で行う(図26(B))。本実施例では第1のエッチング条件として、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を25:25:10(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを行う。基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。この第1のエッチング条件によりW膜をエッチングして第1の導電層の端部をテーパー形状とする。
【0127】
この後、レジストからなるマスク610〜615を除去せずに第2のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30:30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。CF4とCl2を混合した第2のエッチング条件ではW膜及びTaN膜とも同程度にエッチングされる。なお、ゲート絶縁膜上に残渣を残すことなくエッチングするためには、10〜20%程度の割合でエッチング時間を増加させると良い。
【0128】
上記第1のエッチング処理では、レジストからなるマスクの形状を適したものとすることにより、基板側に印加するバイアス電圧の効果により第1の導電層及び第2の導電層の端部がテーパー形状となる。このテーパー部の角度は15〜45°となる。こうして、第1のエッチング処理により第1の導電層と第2の導電層から成る第1の形状の導電層617〜622(第1の導電層617a〜622aと第2の導電層617b〜622b)を形成する。616はゲート絶縁膜であり、第1の形状の導電層617〜622で覆われない領域は20〜50nm程度エッチングされ薄くなった領域が形成される。
【0129】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング処理を行う(図26(C))。ここでは、エッチングガスにCF4とCl2とO2とを用い、W膜を選択的にエッチングする。この時、第2のエッチング処理により第2の導電層628b〜633bを形成する。一方、第1の導電層617a〜622aは、ほとんどエッチングされず、第2の形状の導電層628〜633を形成する。
【0130】
そして、レジストからなるマスクを除去せずに第1のドーピング処理を行い、島状の半導体膜にn型を付与する不純物元素を低濃度に添加する。ドーピング処理はイオンドープ法、若しくはイオン注入法で行えば良い。イオンドープ法の条件はドーズ量を1×1013〜5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を40〜80kVとして行う。本実施例ではドーズ量を1.5×1013atoms/cm2とし、加速電圧を60kVとして行う。n型を付与する不純物元素として15族に属する元素、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いるが、ここではリン(P)を用いる。この場合、導電層628〜633がn型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、自己整合的に不純物領域623〜627が形成される。不純物領域623〜627には1×1018〜1×1020 atoms /cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加する。
【0131】
レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスク634a〜634cを形成して第1のドーピング処理よりも高い加速電圧で第2のドーピング処理を行う。イオンドープ法の条件はドーズ量を1×1013〜1×1015atoms/cm2とし、加速電圧を60〜120kVとして行う。ドーピング処理は第2の導電層628b〜632bを不純物元素に対するマスクとして用い、第1の導電層のテーパー部の下方の島状の半導体膜に不純物元素が添加されるようにドーピングする。続いて、第2のドーピング処理より加速電圧を下げて第3のドーピング処理を行って図27(A)の状態を得る。イオンドープ法の条件はドーズ量を1×1015〜1×1017 atoms/cm2とし、加速電圧を50〜100kVとして行う。第2のドーピング処理および第3のドーピング処理により、第1の導電層と重なる低濃度不純物領域636、642、648には1×1018〜5×1019 atoms /cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加され、高濃度不純物領域635、641、644、647には1×1019〜5×1021 atoms /cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加される。
【0132】
もちろん、適当な加速電圧にすることで、第2のドーピング処理および第3のドーピング処理は1回のドーピング処理で、低濃度不純物領域および高濃度不純物領域を形成することも可能である。
【0133】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスク650a〜650cを形成して第4のドーピング処理を行う。この第4のドーピング処理により、pチャネル型TFTの活性層となる島状の半導体膜に前記一導電型とは逆の導電型を付与する不純物元素が添加された不純物領域653、654、659、660を形成する。第2の導電層628a〜632aを不純物元素に対するマスクとして用い、p型を付与する不純物元素を添加して自己整合的に不純物領域を形成する。本実施例では、不純物領域653、654、659、660はジボラン(B2H6)を用いたイオンドープ法で形成する。(図27(B))この第4のドーピング処理の際には、nチャネル型TFTを形成する島状の半導体膜はレジストからなるマスク650a〜650cで覆われている。第1乃至3のドーピング処理によって、不純物領域653と654、659と660にはそれぞれ異なる濃度でリンが添加されているが、そのいずれの領域においてもp型を付与する不純物元素の濃度を1×1019〜5×1021atoms/cm3となるようにドーピング処理することにより、pチャネル型TFTのソース領域およびドレイン領域として機能するために何ら問題は生じない。
【0134】
以上までの工程で、それぞれの島状の半導体膜に不純物領域が形成される。
【0135】
次いで、レジストからなるマスク650a〜650cを除去して第1の層間絶縁膜661を形成する。この第1の層間絶縁膜661としては、プラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを100〜200nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。本実施例では、プラズマCVD法により膜厚150nmの酸化窒化珪素膜を形成した。勿論、第1の層間絶縁膜661は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
【0136】
次いで、図27(C)に示すように、活性化処理としてレーザー照射方法を用いる。レーザーアニール法を用いる場合、結晶化の際に用いたレーザーを使用することが可能である。活性化の場合は、移動速度は結晶化と同じにし、0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.01〜10MW/cm2)のエネルギー密度が必要となる。また結晶化の際には連続発振のレーザーを用い、活性化の際にはパルス発振のレーザーを用いるようにしても良い。
【0137】
また、第1の層間絶縁膜を形成する前に活性化処理を行っても良い。
【0138】
そして、加熱処理(300〜550℃で1〜12時間の熱処理)を行うと水素化を行うことができる。この工程は第1の層間絶縁膜661に含まれる水素により島状の半導体膜のダングリングボンドを終端する工程である。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)や、3〜100%の水素を含む雰囲気中で300〜650℃で1〜12時間の加熱処理を行っても良い。
【0139】
次いで、第1の層間絶縁膜661上に無機絶縁膜材料または有機絶縁物材料から成る第2の層間絶縁膜662を形成する。本実施例では、膜厚1.6μmのアクリル樹脂膜を形成したが、粘度が10〜1000cp、好ましくは40〜200cpのものを用いても良い。また表面に凸凹が形成されるものを用いても良い。
【0140】
本実施例では、鏡面反射を防ぐため、表面に凸凹が形成される第2の層間絶縁膜を形成することによって画素電極の表面に凸凹を形成した。また、画素電極の表面に凹凸を持たせて光散乱性を図るため、画素電極の下方の領域に凸部を形成してもよい。その場合、凸部の形成は、TFTの形成と同じフォトマスクで行うことができるため、工程数の増加なく形成することができる。なお、この凸部は配線及びTFT部以外の画素部領域の基板上に適宜設ければよい。こうして、凸部を覆う絶縁膜の表面に形成された凸凹に沿って画素電極の表面に凸凹が形成される。
【0141】
また、第2の層間絶縁膜662として表面が平坦化する膜を用いてもよい。その場合は、画素電極を形成した後、公知のサンドブラスト法やエッチング法等の工程を追加して表面を凹凸化させて、鏡面反射を防ぎ、反射光を散乱させることによって白色度を増加させることが好ましい。
【0142】
次に、第2の層間絶縁膜662を形成した後、第2の層間絶縁膜662に接するように、第3の層間絶縁膜672を形成する。
【0143】
そして、駆動回路686において、各不純物領域とそれぞれ電気的に接続する配線663〜667を形成する。なお、これらの配線は、膜厚50nmのTi膜と、膜厚500nmの合金膜(AlとTiとの合金膜)との積層膜をパターニングして形成する。もちろん、二層構造に限らず、単層構造でもよいし、三層以上の積層構造にしてもよい。また、配線の材料としては、AlとTiに限らない。例えば、TaN膜上にAlやCuを形成し、さらにTi膜を形成した積層膜をパターニングして配線を形成してもよい。(図28)
【0144】
また、画素部687においては、画素電極670、ゲート配線669、接続電極668を形成する。この接続電極668によりソース配線(633aと633bの積層)は、画素TFT684と電気的な接続が形成される。また、ゲート配線669は、画素TFT684のゲート電極と電気的な接続が形成される。また、画素電極670は、画素TFT684のドレイン領域と電気的な接続が形成され、さらに保持容量を形成する一方の電極として機能する島状の半導体膜606と電気的な接続が形成される。また、画素電極670としては、AlまたはAgを主成分とする膜、またはそれらの積層膜等の反射性の優れた材料を用いることが望ましい。
【0145】
以上の様にして、nチャネル型TFT681とpチャネル型TFT682からなるCMOS回路、及びnチャネル型TFT683を有する駆動回路686と、画素TFT684、保持容量685とを有する画素部687を同一基板上に形成することができる。こうして、アクティブマトリクス基板が完成する。
【0146】
駆動回路686のnチャネル型TFT681はチャネル形成領域637、ゲート電極の一部を構成する第1の導電層628aと重なる低濃度不純物領域636(GOLD領域)、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域652を有している。このnチャネル型TFT681と電極666で接続してCMOS回路を形成するpチャネル型TFT682にはチャネル形成領域640、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域653と、p型を付与する不純物元素が導入された不純物領域654を有している。また、nチャネル型TFT683にはチャネル形成領域643、ゲート電極の一部を構成する第1の導電層630aと重なる低濃度不純物領域642(GOLD領域)、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域656を有している。
【0147】
画素部の画素TFT684にはチャネル形成領域646、ゲート電極の外側に形成される低濃度不純物領域645(LDD領域)、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域658と、n型を付与する不純物元素およびp型を付与する不純物元素が導入された不純物領域657を有している。また、保持容量685の一方の電極として機能する島状の半導体膜には、n型を付与する不純物元素およびp型を付与する不純物元素が添加されている。保持容量685は、絶縁膜616を誘電体として、電極(632aと632bの積層)と、島状の半導体膜とで形成している。
【0148】
本実施例の画素構造は、ブラックマトリクスを用いることなく、画素電極間の隙間が遮光されるように、画素電極の端部をソース配線と重なるように配置形成する。
【0149】
本実施例は、実施例1〜実施例8と組み合わせて実施することが可能である。
【0150】
(実施例8)
本実施例では、実施例7で作製したアクティブマトリクス基板から、反射型液晶表示装置を作製する工程を以下に説明する。説明には図29を用いる。
【0151】
まず、実施例7に従い、図28の状態のアクティブマトリクス基板を得た後、図28のアクティブマトリクス基板上、少なくとも画素電極670上に配向膜867を形成しラビング処理を行う。なお、本実施例では配向膜867を形成する前に、アクリル樹脂膜等の有機樹脂膜をパターニングすることによって基板間隔を保持するための柱状のスペーサ872を所望の位置に形成した。また、柱状のスペーサに代えて、球状のスペーサを基板全面に散布してもよい。
【0152】
次いで、対向基板869を用意する。次いで、対向基板869上に着色層870、871、平坦化膜873を形成する。赤色の着色層870と青色の着色層871とを重ねて、遮光部を形成する。また、赤色の着色層と緑色の着色層とを一部重ねて、遮光部を形成してもよい。
【0153】
本実施例では、実施例7に示す基板を用いている。従って、少なくともゲート配線669と画素電極670の間隙と、ゲート配線669と接続電極668の間隙と、接続電極668と画素電極670の間隙を遮光する必要がある。本実施例では、それらの遮光すべき位置に着色層の積層からなる遮光部が重なるように各着色層を配置して、対向基板を貼り合わせた。
【0154】
このように、ブラックマトリクス等の遮光層を形成することなく、各画素間の隙間を着色層の積層からなる遮光部で遮光することによって工程数の低減を可能とした。
【0155】
次いで、平坦化膜873上に透明導電膜からなる対向電極876を少なくとも画素部に形成し、対向基板の全面に配向膜874を形成し、ラビング処理を施した。
【0156】
そして、画素部と駆動回路が形成されたアクティブマトリクス基板と対向基板とをシール材868で貼り合わせる。シール材868にはフィラーが混入されていて、このフィラーと柱状スペーサによって均一な間隔を持って2枚の基板が貼り合わせられる。その後、両基板の間に液晶材料875を注入し、封止剤(図示せず)によって完全に封止する。液晶材料875には公知の液晶材料を用いれば良い。このようにして図29に示す反射型液晶表示装置が完成する。そして、必要があれば、アクティブマトリクス基板または対向基板を所望の形状に分断する。さらに、対向基板のみに偏光板(図示しない)を貼りつけた。そして、公知の技術を用いてFPCを貼りつけた。
【0157】
以上のようにして作製される液晶表示装置はエネルギー分布が周期的または一様なレーザー光が照射され、大粒径の結晶粒が形成された半導体膜を用いて作製されたTFTを有しており、前記液晶表示装置の動作特性や信頼性が十分なものとなり得る。そして、このような液晶表示装置は各種電子機器の表示部として用いることができる。
【0158】
なお、本実施例は実施例1〜実施例7と組み合わせて実施することが可能である。
【0159】
(実施例9)
本実施例では、実施例7で示したアクティブマトリクス基板を作製するときのTFTの作製方法を用いて、発光装置を作製する例を以下に説明する。本明細書において、発光装置とは、基板上に形成された発光素子を該基板とカバー材の間に封入した表示用パネルおよび該表示用パネルにTFT等を実装した表示用モジュールを総称したものである。なお、発光素子は、電場を加えることで発生するルミネッセンス(Electro Luminescence)が得られる有機化合物を含む層(発光層)と陽極層と、陰極層とを有する。また、有機化合物におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)があり、これらのうちどちらか、あるいは両方の発光を含む。
【0160】
なお、本明細書中では、発光素子において陽極と陰極の間に形成された全ての層を有機発光層と定義する。有機発光層には具体的に、発光層、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等が含まれる。基本的に発光素子は、陽極層、発光層、陰極層が順に積層された構造を有しており、この構造に加えて、陽極層、正孔注入層、発光層、陰極層や、陽極層、正孔注入層、発光層、電子輸送層、陰極層等の順に積層した構造を有していることもある。
【0161】
なお本実施例で用いられる発光素子は、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層または電子輸送層等が、無機化合物単独で、または有機化合物に無機化合物が混合されている材料で形成されている形態をも取り得る。また、これらの層どうしが互いに一部混合していても良い。
【0162】
図30(A)は、第3の層間絶縁膜750まで形成した時点での、本実施例の発光装置の断面図である。図30(A)において、基板700上に設けられたスイッチングTFT733、電流制御TFT734は実施例7の作製方法を用いて形成される。本実施例ではスイッチングTFT733は、チャネル形成領域が二つ形成されるダブルゲート構造としているが、チャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造もしくは三つ以上形成される構造であっても良い。また、本実施例では電流制御TFT734は、チャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造としているが、チャネル形成領域が二つ以上形成される構造であっても良い。
【0163】
基板700上に設けられた駆動回路が有するnチャネル型TFT731、pチャネル型TFT732は実施例7の作製方法を用いて形成される。なお、本実施例ではシングルゲート構造としているが、ダブルゲート構造もしくはトリプルゲート構造であっても良い。
【0164】
第3の層間絶縁膜750は、発光装置の場合、第2の層間絶縁膜751に含まれる水分が有機発光層に入るのを防ぐのに効果的である。第2の層間絶縁膜751が有機樹脂材料を有している場合、有機樹脂材料は水分を多く含むため、第3の層間絶縁膜750を設けることは特に有効である。
【0165】
実施例7の第3の層間絶縁膜を作製する工程まで終了したら、本実施例では第3の層間絶縁膜750上に画素電極711を形成する。
【0166】
なお、画素電極711は、透明導電膜からなる画素電極(発光素子の陽極)である。透明導電膜としては、酸化インジウムと酸化スズとの化合物、酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物、酸化亜鉛、酸化スズまたは酸化インジウムを用いることができる。また、前記透明導電膜にガリウムを添加したものを用いても良い。画素電極711は、配線を形成する前に平坦な第3の層間絶縁膜750上に形成する。本実施例においては、樹脂からなる第2の層間絶縁膜751を用いてTFTによる段差を平坦化することは非常に重要である。後に形成される発光層は非常に薄いため、段差が存在することによって発光不良を起こす場合がある。従って、発光層をできるだけ平坦面に形成しうるように画素電極を形成する前に平坦化しておくことが望ましい。
【0167】
次に、画素電極711形成後、ゲート絶縁膜752、第1の層間絶縁膜753、第2の層間絶縁膜751、第3の層間絶縁膜750にコンタクトホールを形成する。そして画素電極711を覆って第3の層間絶縁膜750上に導電膜を形成し、レジスト760を形成する。そしてレジスト760を用いて該導電膜をエッチングすることで、各TFTの不純物領域とそれぞれ電気的に接続する配線701〜707を形成する。なお、これらの配線は、膜厚50nmのTi膜と、膜厚500nmの合金膜(AlとTiとの合金膜)との積層膜をパターニングして形成する。もちろん、二層構造に限らず、単層構造でもよいし、三層以上の積層構造にしてもよい。また、配線の材料としては、AlとTiに限らない。例えば、TaN膜上にAlやCuを形成し、さらにTi膜を形成した積層膜をパターニングして配線を形成してもよい(図30(B))。
【0168】
また、配線707は電流制御TFT734のソース配線(電流供給線に相当する)であり、706は電流制御TFT734の画素電極711上に重ねることで画素電極711と電気的に接続する電極である。
【0169】
配線701〜707を形成後、図30(B)に示すようにレジスト760を除去せず、そのままパッシベーション膜712を形成する。パッシベーション膜712は、配線701〜707、第3の層間絶縁膜750及びレジスト760を覆うように形成する。パッシベーション膜712は、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウムもしくは窒化酸化アルミニウムを含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層で用いる。そしてパッシベーション膜712をエッチングして、画素電極711の一部を露出させる。
【0170】
画素電極711の上には発光層713が形成される。なお、図30(B)では一画素しか図示していないが、本実施例ではR(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層を作り分けている。また、本実施例では蒸着法により低分子系有機発光材料を形成している。具体的には、正孔注入層として20nm厚の銅フタロシアニン(CuPc)膜を設け、その上に発光層として70nm厚のトリス−8−キノリノラトアルミニウム錯体(Alq3)膜を設けた積層構造としている。Alq3にキナクリドン、ペリレンもしくはDCM1といった蛍光色素を添加することで発光色を制御することができる。
【0171】
但し、以上の例は発光層として用いることのできる有機発光材料の一例であって、これに限定する必要はまったくない。発光層、電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせて発光層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれば良い。例えば、本実施例では低分子系有機発光材料を発光層として用いる例を示したが、中分子系有機発光材料や高分子系有機発光材料を用いても良い。なお、本明細書中において、昇華性や溶解性を有さない有機化合物の凝集体(好ましくは分子数が10以下)又は連鎖する分子の長さが5μm以下(好ましくは50μm以下)の有機発光材料を中分子系有機発光材料とする。また、高分子系有機発光材料を用いる例として、正孔注入層として20nmのポリチオフェン(PEDOT)膜をスピン塗布法により設け、その上に発光層として100nm程度のパラフェニレンビニレン(PPV)膜を設けた積層構造としても良い。なお、PPVのπ共役系高分子を用いると、赤色から青色まで発光波長を選択できる。また、電荷輸送層や電荷注入層として炭化珪素等の無機材料を用いることも可能である。これらの有機発光材料や無機材料は公知の材料を用いることができる。
【0172】
次に、発光層713の上には導電膜からなる陰極714が設けられる。本実施例の場合、導電膜としてアルミニウムとリチウムとの合金膜を用いる。勿論、公知のMgAg膜(マグネシウムと銀との合金膜)を用いても良い。陰極材料としては、周期表の1族もしくは2族に属する元素からなる導電膜もしくはそれらの元素を添加した導電膜を用いれば良い。
【0173】
この陰極714まで形成された時点で発光素子715が完成する。なお、ここでいう発光素子715は、画素電極(陽極)711、発光層713及び陰極714で形成されたダイオードを指す。
【0174】
発光素子715を完全に覆うようにして保護膜754を設けても良い。保護膜754としては、炭素膜、窒化珪素膜もしくは窒化酸化珪素膜を含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層で用いる。
【0175】
この際、カバレッジの良い膜を保護膜754として用いることが好ましく、炭素膜、特にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を用いることは有効である。DLC膜は室温から100℃以下の温度範囲で成膜可能であるため、耐熱性の低い発光層713の上方にも容易に成膜することができる。また、DLC膜は酸素に対するブロッキング効果が高く、発光層713の酸化を抑制することが可能である。そのため、この後に続く封止工程を行う間に発光層713が酸化するといった問題を防止できる。
【0176】
本実施例では、発光層と713は全てバリア性の高い炭素膜、窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウムもしくは窒化酸化アルミニウム等の無機絶縁膜で覆われているため、水分や酸素等が発光層に入って発光層が劣化するのをより効果的に防ぐことができる。
【0177】
特に第3絶縁膜750、パッシベーション膜712、保護膜754を、シリコンをターゲットとしたスパッタリング法により作製される窒化珪素膜を用いることで、より発光層への不純物の侵入を防ぐことができる。成膜条件は適宜選択すれば良いが、特に好ましくはスパッタガスには窒素(N2)又は窒素とアルゴンの混合ガスを用い、高周波電力を印加してスパッタリングを行う。基板温度は室温の状態とし、加熱手段を用いなくても良い。既に有機絶縁膜や有機化合物層を形成した後は、基板を加熱せずに成膜することが望ましい。但し、吸着又は吸蔵している水分を十分除去するために、真空中で数分〜数時間、50〜100℃程度で加熱して脱水処理することは好ましい。
【0178】
室温でシリコンをターゲットとし、13.56MHzの高周波電力を印加し、窒素ガスのみ用いたスパッタリング法で形成された窒化珪素膜は、その赤外吸収スペクトルにおいてN−H結合とSi−H結合の吸収ピークが観測されず、またSi−Oの吸収ピークも観測されていないことが特徴的であり、膜中に酸素濃度及び水素濃度は1原子%以下であることがわかっている。このことからも、より効果的に酸素や水分などの不純物の侵入を防ぐことができるのがわかる。
【0179】
さらに、発光素子715を覆って封止材717を設け、カバー材718を貼り合わせる。封止材717としては紫外線硬化樹脂を用いれば良く、内部に吸湿効果を有する物質もしくは酸化防止効果を有する物質を設けることは有効である。また、本実施例においてカバー材718はガラス基板や石英基板やプラスチック基板(プラスチックフィルムも含む)の両面に炭素膜(好ましくはダイヤモンドライクカーボン膜)を形成したものを用いる。
【0180】
こうして図30(B)に示すような構造の発光装置が完成する。なお、パッシベーション膜712を形成した後、保護膜を形成するまでの工程をマルチチャンバー方式(またはインライン方式)の成膜装置を用いて、大気解放せずに連続的に処理することは有効である。また、さらに発展させてカバー材718を貼り合わせる工程までを大気解放せずに連続的に処理することも可能である。
【0181】
こうして、基板700上にnチャネル型TFT731、pチャネル型TFT732、スイッチングTFT(nチャネル型TFT)733および電流制御TFT(nチャネル型TFT)734が形成される。
【0182】
さらに、図30を用いて説明したように、ゲート電極に絶縁膜を介して重なる不純物領域を設けることによりホットキャリア効果に起因する劣化に強いnチャネル型TFTを形成することができる。そのため、信頼性の高い発光装置を実現できる。
【0183】
また、本実施例では画素部と駆動回路の構成のみ示しているが、本実施例の製造工程に従えば、その他にも信号分割回路、D/Aコンバータ、オペアンプ、γ補正回路などの論理回路を同一の絶縁体上に形成可能であり、さらにはメモリやマイクロプロセッサをも形成しうる。
【0184】
以上のようにして作製される発光装置はエネルギー分布が周期的または一様なレーザー光が照射され、大粒径の結晶粒が形成された半導体膜を用いて作製されたTFTを有しており、前記発光装置の動作特性や信頼性が十分なものとなり得る。そして、このような発光装置は各種電子機器の表示部として用いることができる。
【0185】
なお、本実施例は実施例1〜実施例7のいずれか一と組み合わせて実施することが可能である。
【0186】
(実施例10)
本実施例では、レーザー照射により結晶化された半導体膜のSEM写真について説明する。
【0187】
ガラス基板上に下地膜として、プラズマCVD法により酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)400nmを形成した。続いて、前記下地膜上に半導体膜として、プラズマCVD法により非晶質珪素膜150nmを形成した。そして、500℃で3時間の熱処理を行って、半導体膜が含有する水素を放出させた後、レーザアニール法により半導体膜の結晶化を行った。レーザアニール法の条件は、レーザ光としてYVO4レーザの第2高調波を用い、レーザ光の入射角θを18°として矩形状ビームを形成し、ビームスポットの中心軸が走査方向に対して直角になるように基板を50cm/secの速度で移動させながら照射して、半導体膜の結晶化を行った。
【0188】
このようにして得られた結晶性半導体膜にセコエッチングを行って、SEMにより1万倍にて表面を観察した結果を図20に示す。なお、セコエッチングにおけるセコ液はHF:H2O=2:1に添加剤としてK2Cr2O7を用いて作製されるものである。図20は、図中の矢印で示す方向にレーザ光を相対的に走査させて得られたものであり、走査方向に対して大粒径の結晶粒が形成されている様子がわかる。
【0189】
このように、レーザー光を用いて結晶化を行った半導体膜には大粒径の結晶粒が形成されているため、前記半導体膜を用いてTFTを作製すると、そのチャネル形成領域に含まれうる結晶粒界の本数を少なくすることができる。また、個々の結晶粒は実質的に単結晶と見なせる結晶性を有することから、単結晶半導体を用いたトランジスタと同等もしくはそれ以上の高いモビリティ(電界効果移動度)を得ることも可能である。
【0190】
さらに、形成された結晶粒が一方向に揃っているため、キャリアが結晶粒界を横切る回数を極端に減らすことができる。そのため、オン電流値(TFTがオン状態にある時に流れるドレイン電流値)、オフ電流値(TFTがオフ状態にある時に流れるドレイン電流値)、しきい値電圧、S値及び電界効果移動度のバラツキを低減することも可能となり、電気的特性は著しく向上する。
【0191】
(実施例11)
本実施例では、特開平7−183540号公報に記載された方法を利用し、レーザー照射により結晶化された半導体膜のSEM写真について説明する。
【0192】
実施例10にしたがって、非晶質珪素膜を形成した後、特開平7−183540号公報に記載された方法を利用し、前記半導体膜上にスピンコート法にて酢酸ニッケル水溶液(重量換算濃度5ppm、体積10ml)を塗布し、500℃の窒素雰囲気で1時間、550℃の窒素雰囲気で12時間の熱処理を行った。続いて、レーザアニール法により、半導体膜の結晶性の向上を行う。レーザアニール法の条件は、レーザ光としてYVO4レーザの第2高調波を用い、レーザ光の入射角θを18°として矩形状ビームを形成し、ビームスポットの中心軸が走査方向に対して直角になるように基板を50cm/sの速度で移動させながら照射して、半導体膜の結晶性の向上を行った。
【0193】
このようにして得られた結晶性半導体膜にセコエッチングを行って、SEMにより1万倍にて表面を観察した。その結果を図21に示す。図21は、図中の矢印で示す方向にレーザ光を相対的に走査させて得られたものであり、走査方向に対して大粒径の結晶粒が形成されている様子がわかる。また、図20で示す結晶粒よりも図21で示す結晶粒の方が、レーザ光の相対的な走査方向に対して交差する方向に形成される粒界が少ないことが特徴的である。
【0194】
このように、レーザー光を用いて結晶化を行った半導体膜には大粒径の結晶粒が形成されているため、前記半導体膜を用いてTFTを作製すると、そのチャネル形成領域に含まれうる結晶粒界の本数を少なくすることができる。また、個々の結晶粒は実質的に単結晶と見なせる結晶性を有することから、単結晶半導体を用いたトランジスタと同等もしくはそれ以上の高いモビリティ(電界効果移動度)を得ることも可能である。
【0195】
さらに、形成された結晶粒が一方向に揃っているため、キャリアが結晶粒界を横切る回数を極端に減らすことができる。そのため、オン電流値、オフ電流値、しきい値電圧、S値及び電界効果移動度のバラツキを低減することも可能となり、電気的特性は著しく向上する。
【0196】
(実施例12)
本実施例では、実施例10に従って結晶化された半導体膜を用いてTFTを作製した例について説明する。
【0197】
本実施例では、ガラス基板を用い、ガラス基板上に下地膜として、プラズマCVD法により酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=27%、N=24%、H=17%)50nm、酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)100nmを積層した。次いで、下地膜上にプラズマCVD法により非晶質珪素膜150nmを形成した。そして、500℃で3時間の熱処理を行って、半導体膜が含有する水素を放出させ、YVO4レーザの第2高調波を用いて、実施例10に記載の条件に従って結晶化させた。
【0198】
そして、第1のドーピング処理を行う。これはしきい値を制御するためのチャネルドープである。材料ガスとしてB2H6を用い、ガス流量30sccm、電流密度0.05μA、加速電圧60kV、ドーズ量1×1014 atoms/cm2として行った。続いて、パターニングを行って、結晶化された半導体膜を所望の形状にエッチングした後、エッチングされた半導体膜を覆うゲート絶縁膜としてプラズマCVD法により膜厚115nmの酸化窒化珪素膜を形成する。次いで、ゲート絶縁膜上に導電膜として膜厚30nmのTaN膜と、膜厚370nmのW膜を積層形成する。
【0199】
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストからなるマスク(図示せず)を形成して、W膜、TaN膜、ゲート絶縁膜をエッチングした後、第2のドーピング処理を行い、半導体膜にn型を付与する不純物元素を導入する。この場合、W膜、TaN膜をエッチングすることで形成された導電層が、n型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、自己整合的にチャネル形成領域と、該チャネル形成領域を挟んでいる不純物領域とが形成される。本実施例では第2のド−ピング処理は、半導体膜の膜厚が150nmと厚いため2条件に分けて行った。本実施例では、材料ガスとしてフォスフィン(PH3)を用い、ドーズ量を2×1013atoms/cm2とし、加速電圧を90kVとして行った後、ドーズ量を5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を10kVとして行った。
【0200】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスクをnチャネル型TFTの半導体膜を覆うように形成して、第3のドーピング処理を行う。この第3のドーピング処理により、pチャネル型TFTの活性層となる半導体膜に前記一導電型とは逆の導電型を付与する不純物元素が添加された不純物領域を形成する。導電層を不純物元素に対するマスクとして用い、p型を付与する不純物元素を添加して自己整合的に不純物領域を形成する。本実施例では第3のド−ピング処理においても、半導体膜の膜厚が150nmと厚いため2条件に分けて行った。本実施例では、材料ガスとしてジボラン(B2H6)を用い、ドーズ量を2×1013atoms/cm2とし、加速電圧を90kVとして行った後、ドーズ量を1×1015atoms/cm2とし、加速電圧を10kVとして行った。
【0201】
以上までの工程で、それぞれの島状の半導体膜にチャネル形成領域と、該チャネル形成領域を挟む不純物領域が形成される。
【0202】
次いで、レジストからなるマスクを除去して、プラズマCVD法により第1の層間絶縁膜として膜厚50nmの酸化窒化珪素膜(組成比Si=32.8%、O=63.7%、H=3.5%)を形成した。次いで、熱処理により、島状の半導体膜の結晶性の回復、それぞれの島状の半導体膜に添加された不純物元素の活性化を行う。本実施例ではファーネスアニール炉を用いた熱アニール法により、窒素雰囲気中にて550度4時間の熱処理を行った。
【0203】
次いで、第1の層間絶縁膜上に無機絶縁膜材料または有機絶縁物材料から成る第2の層間絶縁膜を形成する。本実施例では、CVD法により膜厚50nmの窒化珪素膜を形成した後、膜厚400nmの酸化珪素膜を形成した。そして、熱処理を行うと水素化処理を行うことができる。本実施例では、ファーネスアニール炉を用い、410度で1時間、窒素雰囲気中にて熱処理を行った。
【0204】
続いて、各不純物領域とそれぞれ電気的に接続する配線を形成する。本実施例では、膜厚50nmのTi膜と、膜厚500nmのAl―Si膜と、膜厚50nmのTi膜との積層膜をパターニングして形成した。もちろん、二層構造に限らず、単層構造でもよいし、三層以上の積層構造にしてもよい。また、配線の材料としては、AlとTiに限らない。例えば、TaN膜上にAlやCuを形成し、さらにTi膜を形成した積層膜をパターニングして配線を形成してもよい。
【0205】
以上の様にして形成されたnチャネル型TFTとpチャネル型TFTの電気的特性を測定した。nチャネル型TFTの電気的特性を図22(A)に、pチャネル型TFTの電気的特性を図22(B)に示す。電気的特性の測定条件は、測定点をそれぞれ2点とし、ゲート電圧Vg=―16〜16Vの範囲で、ドレイン電圧Vd=1V、5Vとした。また、図22において、ドレイン電流(ID)は実線で、移動度(μFE)は点線で示している。
【0206】
図22より、実施例10で形成された結晶性半導体膜を用いたTFTの電気的特性は著しく向上していることがわかる。これは、半導体膜に大粒径の結晶粒が形成されているため、前記半導体膜を用いてTFTを作製すると、そのチャネル形成領域に含まれうる結晶粒界の本数を少なくすることができるためである。さらに、形成された結晶粒は一方向に揃っているため、キャリアが結晶粒界を横切る回数を極端に減らすことができる。そのため、特に移動度が、nチャネル型TFTにおいて524cm2/Vs、pチャネル型TFTにおいて205cm2/Vsとなることがわかる。このようなTFTを用いて半導体装置を作製すれば、その動作特性および信頼性をも向上することが可能となる。
【0207】
(実施例13)
本実施例では、実施例11に従って結晶化された半導体膜を用いてTFTを作製した例について説明する。
【0208】
実施例11に従って、半導体膜として非晶質珪素膜まで形成する。そして、特開平7−183540号公報に記載された方法を利用し、前記半導体膜上にスピンコート法にて酢酸ニッケル水溶液(重量換算濃度5ppm、体積10ml)を塗布して金属含有層を形成する。そして、500℃の窒素雰囲気で1時間、550℃の窒素雰囲気で12時間の熱処理を行った。続いて、レーザアニール法により、半導体膜の結晶性の向上を行う。レーザアニール法の条件は、レーザ光としてYVO4レーザの第2高調波を用い、実施例11に記載した条件に従って行った。
【0209】
これ以降の工程は実施例12にしたがって行い、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTが形成された。これらの電気的特性を測定し、レーザアニールにおいて、nチャネル型TFTの電気的特性を図23(A)に、pチャネル型TFTの電気的特性を図23(B)に示す。電気的特性の測定条件は、測定点をそれぞれ2点とし、ゲート電圧Vg=―16〜16Vの範囲で、ドレイン電圧Vd=1、5Vとした。また、図23において、ドレイン電流(ID)は実線で、移動度(μFE)は点線で示している。
【0210】
図23より、実施例11で形成された結晶性半導体膜を用いたTFTの電気的特性は著しく向上していることがわかる。これは、本発明を用いて結晶化を行った半導体膜には大粒径の結晶粒が形成されているため、前記半導体膜を用いてTFTを作製すると、そのチャネル形成領域に含まれうる結晶粒界の本数を少なくすることができるためである。さらに、形成された結晶粒は一方向に揃っているおり、かつ、レーザ光の相対的な走査方向に対して交差する方向に形成される粒界が少ないため、キャリアが結晶粒界を横切る回数を極端に減らすことができる。そのため、特に移動度がnチャネル型TFTにおいて595cm2/Vs、pチャネル型TFTにおいて199cm2/Vsと非常に優れていることがわかる。そして、このようなTFTを用いて半導体装置を作製すれば、その動作特性および信頼性をも向上することが可能となる。
【0211】
(実施例14)
本発明のレーザー装置によって形成された半導体装置を用いた電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それら電子機器の具体例を図24に示す。
【0212】
図24(A)は表示装置であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明の半導体装置は表示部2003に用いることができる。半導体装置は自発光型であるためバックライトが必要なく、液晶ディスプレイよりも薄い表示部とすることができる。なお、表示装置は、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0213】
図24(B)はデジタルスチルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。本発明の半導体装置は表示部2102及びその他回路に用いることができる。
【0214】
図24(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明の半導体装置は表示部2203及びその他回路に用いることができる。
【0215】
図24(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明の半導体装置は表示部2302及びその他回路に用いることができる。
【0216】
図24(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示するが、本発明の半導体装置はこれら表示部A、B2403、2404及びその他回路に用いることができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
【0217】
図24(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。本発明の半導体装置は表示部2502及びその他回路に用いることができる。
【0218】
図24(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。本発明の半導体装置は表示部2602及びその他回路に用いることができる。
【0219】
ここで図24(H)は携帯電話であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。本発明の半導体装置は表示部2703及びその他回路に用いることができる。なお、表示部2703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0220】
なお、上述した電子機器の他に、フロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる。
【0221】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。また、本実施例の電子機器は実施例1〜13に示したいずれの構成の半導体装置を用いても良い。
【0222】
(実施例15)
レーザー光を照射する被処理物を載置するステージは、X方向またはY方向に設けられたガイドレールに沿って移動させるのが一般的である。そしてガイドレールと、ステージを固定する部分(スライダ)との間には、ボール(ベアリング)と呼ばれる曲面を有した物体が挟まれており、摩擦による負荷を低減してステージの移動をスムーズに行えるような機構が設けられている。
【0223】
このボールは度重なるステージの移動により磨耗するため、定期的なメンテナンスによる交換が必要であり、またよりスムーズにステージを移動させるためには、ステージの移動の際に生じる摩擦をより小さくする必要があった。
【0224】
図34(A)に本実施例の、ステージを移動させるための手段(位置制御手段)を示す。7000はガイドレールであり、ステージを一定の方向に移動させるために、一方向に沿って凹凸が形成されている。また、7001はスライダと呼ばれるステージを固定する部分であって、ガイドレール7000に沿って移動させることができる。またロッド7002は、スライダ7001に設けられた孔を貫いている軸であり、ガイドレールに沿う方向に設けられている。ロッド7002は、エンドプレート7004によってガイドレール7000に固定されている。
【0225】
スライダ7001にはケーブル7003を介して、電源電圧と空気が送られている。図34(B)にスライダ7001の拡大図を示す。スライダ7001は、スライダ7001とガイドレール7000とが引き合うような磁場を、電源電圧により生じさせる。また、スライダ7001は、スライダ7001に設けられた孔においてロッド7002と接触しないよう離れる方向の磁場を、電源電圧により生じさせる。そして一方で、送られてきた空気を、空気孔7005からスライダ7001とガイドレール7000の間に放出する。スライダ7001とガイドレール7000は、この磁場により引き合う方向に力が働き、空気の放出により離れる方向に力が働くため、一定の間隔が保たれる。
【0226】
なお、ケーブルを介して与えられた電源電圧により磁場を生じさせるのではなく、ガイドレール7000とスライダ7001のいずれか一方を磁性体にするようにしても良い。またガイドレール7000とスライダ7001の両方を磁性体としても良い。
【0227】
また、ケーブルを介して与えられた電源電圧により磁場を生じさせるのではなく、ロッド7002とスライダ7001のいずれか一方を磁性体、もう一方を磁性体により引きつけられる材料で形成するようにして、磁場を生じさせても良い。またロッド7002とスライダ7001の両方を磁性体としても良い。
【0228】
本実施例で示したようなステージの移動手段を用いることで、非接触にて、ガイドレールに沿ったステージの移動が可能になり、ボールの磨耗による定期的なボールの交換を不要にして、メンテナンスを容易にすることができる。また、非接触であるため摩擦が殆ど生じず、ボールを用いた場合に比べてステージの移動をよりスムーズに行うことができる。
【0229】
図34(C)に、スライダ7001上に固定されたステージ7010の上に、レーザー光を照射する被処理物7011を載置している様子を示す。本実施例のステージの移動手段により、ステージの移動がよりスムーズになるので、レーザー光の照射をより均一に行なうことが可能になる。
【0230】
本実施例は、実施例1〜14と組み合わせて実施することが可能である。
【0231】
(実施例16)
本実施例では、アクティブ除振台を用いた場合について説明する。
【0232】
図35(A)に、本発明のレーザー装置をアクティブ除振台上に載置した状態を示す。アクティブ除振台は、レーザー装置を実際に載置する定盤7100と、複数のアイソレータ7102と、足場となる架台7101と、コントローラ7103とを有している。
【0233】
定盤7100は、アイソレータ7102を間に挟んで架台7101上に設けられている。アイソレータ7102は、振動を検知して除振するためのジンバル機構が設けられたジンバルピストン(空気ばね)を有している。そしてコントローラ7103は、ジンバルピストンの動作を制御している。
【0234】
ちなみに、図35(A)において定盤7100上に載置されているレーザー装置は、4つのレーザー発振装置7104を有している。また7105は光学系であり、レーザー発振装置7104から出力された光路を変更したり、そのビームスポットの形状を加工したりして、レーザー光を集光することができる。さらに、本発明の光学系7105で重要なのは、複数のレーザー発振装置7104から出力されたレーザー光のビームスポットを互いに一部重ね合わせることで、合成できることである。
【0235】
合成されたビームスポットは、被処理物である基板7106に照射される。基板7106はステージ7107上に載置されている。図35(A)では、位置制御手段7108、7109が、被処理物におけるビームスポットの位置を制御する手段に相当し、ステージ7107の位置が、位置制御手段7108、7109によって制御されている。位置制御手段7108がX方向におけるステージ7107の位置の制御を行っており、位置制御手段7109はY方向におけるステージ7107の位置制御を行う。
【0236】
図35(B)を用いて、ジンバルピストンの具体的な機能について説明する。図35(B)において、7200はジンバルピストンの大まかな構成を示したものである。ジンバルピストン7200は、架台7101に固定されている支持台7202と、定盤7100に固定されているロードディスク7201とを有している。ロードディスク7201にはサポートロッド7204が固定されており、定盤7100が振動することでロードディスク7201が揺れると、支持台7202の内部でサポートロッド7204が振り子状に揺れ動く構造になっている。
【0237】
変位センサ7205は、該サポートロッド7204を用いて、Xで示す位置におけるロードディスク7201の変位をモニターする。また、Xで示す位置におけるロードディスク7201の変位の加速度を第1加速度センサ7206でモニターし、X0で示す位置における架台7101の変位の加速度を第2加速度センサ7207でモニターする。
【0238】
これら3つのモニターの結果は、コントローラ7103に送られる。コントローラ7103は、変位センサ7205、第1加速度センサ7206及び第2加速度センサ7207でのモニターの結果から、定盤7100の変位と、変位の加速度と、変位の速度とを得て、これらの値から定盤7100の振動を抑えるための、変位、加速度及び速度の各フィードバックの値を求める。そして該変位、加速度及び速度の各フィードバックの値に従ってロードディスク7201に逆の振動を与えるように圧縮空気をジンバルピストン7200に与える。
【0239】
上記構成により、架台7101が設置されている床からの振動、及び位置制御手段7108、7109等によるレーザー装置からの振動を、圧縮空気により与えられる振動により相殺することができ、定盤7100の振動を抑えることができる。
【0240】
なおコントローラ7103は、定盤7100に与えられる振動を学習し、次に同じ振動が与えられた際に、速やかに除振を行なえる機能を備えていても良い。
【0241】
定盤7100の振動を抑えることで、レーザー装置が有する光学系のアライメントが振動によりずれるのを防ぐことができる。特に複数台のレーザー発振装置を用いてビームスポットを合成するような、光学系のより精密なアライメントが要求される場合には、上記構成は非常に有用である。
【0242】
本実施例は、実施例1〜15と組み合わせて実施することが可能である。
【0243】
(実施例17)
本実施例では、レーザービームを重ね合わせたときの、各レーザービームの中心間の距離と、エネルギー密度との関係について説明する。
【0244】
図36に、各レーザービームの中心軸方向におけるエネルギー密度の分布を実線で、合成されたレーザービームのエネルギー密度の分布を破線で示す。レーザービームの中心軸方向におけるエネルギー密度の値は、一般的にガウス分布に従っている。
【0245】
合成前のレーザービームにおいて、ピーク値の1/e2以上のエネルギー密度を満たしている中心軸方向の距離を1としたときの、各ピーク間の距離をXとする。また、合成されたレーザービームにおいて、合成後のピーク値と、バレー値の平均値に対するピーク値の割増分をYとする。シミュレーションで求めたXとYの関係を、図37に示す。なお図37では、Yを百分率で表した。
【0246】
図37において、エネルギー差Yは以下の式1の近似式で表される。
【0247】
【式1】
Y=60−293X+340X2(Xは2つの解のうち大きい方とする)
【0248】
式1に従えば、例えばエネルギー差を5%程度にしたい場合、X≒0.584となるようにすれば良いということがわかる。Y=0となるのが理想的だが、それではレーザービームの長さが短くなるので、スループットとのバランスでXを決定すると良い。
【0249】
次に、Yの許容範囲について説明する。図38に、レーザービームが楕円形状を有している場合の、中心軸方向におけるビーム幅に対するYVO4レーザーの出力(W)の分布を示す。斜線で示す領域は、良好な結晶性を得るために必要な出力エネルギーの範囲であり、3.5〜6Wの範囲内に合成したレーザー光の出力エネルギーが納まっていれば良いことがわかる。
【0250】
合成後のレーザービームの出力エネルギーの最大値と最小値が、良好な結晶性を得るために必要な出力エネルギー範囲にぎりぎりに入るとき、良好な結晶性が得られるエネルギー差Yが最大になる。よって図38の場合は、エネルギー差Yが±26.3%となり、上記範囲にエネルギー差Yが納まっていれば良好な結晶性が得られることがわかる。
【0251】
なお、良好な結晶性を得るために必要な出力エネルギーの範囲は、どこまでを結晶性が良好だと判断するかによって変わり、また出力エネルギーの分布もレーザービームの形状によって変わってくるので、エネルギー差Yの許容範囲は必ずしも上記値に限定されない。設計者が、良好な結晶性を得るために必要な出力エネルギーの範囲を適宜定め、用いるレーザーの出力エネルギーの分布からエネルギー差Yの許容範囲を設定する必要がある。
【0252】
本実施例は、実施例1〜16と組み合わせて実施することが可能である。
【0253】
【発明の効果】
本発明では、半導体膜全体にレーザー光を走査して照射するのではなく、少なくとも必要不可欠な部分を最低限結晶化できるようにレーザー光を走査する。上記構成により、半導体膜を結晶化させた後パターニングにより除去される部分にレーザー光を照射する時間を省くことができ、基板1枚あたりにかかる処理時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザー装置の構造を示す図。
【図2】本発明のレーザービームの形状及びエネルギー密度の分布を示す図。
【図3】本発明のレーザービームの形状及びエネルギー密度の分布を示す図。
【図4】被処理物においてレーザー光の移動する方向を示す図。
【図5】被処理物においてレーザー光の移動方向を示す図。
【図6】TFTの活性層におけるレーザー光の移動方光を示す図。
【図7】マーカーの位置を示す図。
【図8】本発明の生産システムの流れを示すフローチャート。
【図9】従来の生産システムの流れを示すフローチャート。
【図10】本発明の生産システムの流れを示すフローチャート。
【図11】本発明のレーザー装置の光学系の図。
【図12】本発明のレーザー装置の光学系の図。
【図13】被処理物においてレーザー光の移動する方向を示す図。
【図14】被処理物においてレーザー光の移動する方向を示す図。
【図15】被処理物においてレーザー光の移動する方向を示す図。
【図16】マーカーの構造を示す図。
【図17】本発明のレーザー装置の光学系の図。
【図18】本発明のレーザー装置の光学系の図。
【図19】本発明のレーザー装置の光学系の図。
【図20】結晶化された半導体膜のSEM写真。
【図21】結晶化された半導体膜のSEM写真。
【図22】TFTの特性を示す図。
【図23】TFTの特性を示す図。
【図24】本発明の半導体装置を用いた電子機器の図。
【図25】本発明のレーザー装置を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図26】本発明のレーザー装置を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図27】本発明のレーザー装置を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図28】本発明のレーザー装置を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図29】本発明のレーザー装置を用いて作製された液晶表示装置の図。
【図30】本発明のレーザー装置を用いた発光装置の作製方法を示す図。
【図31】半導体膜の逆極点図。
【図32】半導体膜の逆極点図。
【図33】被処理物においてレーザー光の移動する方向を示す図。
【図34】位置制御手段の構成を示す図。
【図35】アクティブ除振台の構成を示す図。
【図36】重ね合わせたレーザービームの中心軸方向におけるエネルギー密度の分布を示す図。
【図37】レーザービームの中心間の距離とエネルギー差の関係を示す図。
【図38】レーザービームの中心軸方向における出力エネルギーの分布を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板又は半導体膜などをレーザー光を用いて結晶化又はイオン注入後の活性化をするレーザー処理装置及びレーザー照射方法と、当該レーザー装置を用いて形成された半導体装置及びその作製方法と、前記半導体装置を用いた電子機器と、該レーザー装置を用いた半導体装置の生産システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、基板上にTFTを形成する技術が大幅に進歩し、アクティブマトリクス型の半導体表示装置への応用開発が進められている。特に、多結晶半導体膜を用いたTFTは、従来の非晶質半導体膜を用いたTFTよりも電界効果移動度(モビリティともいう)が高いので、高速動作が可能である。そのため、従来基板の外に設けられた駆動回路で行っていた画素の制御を、画素と同一の基板上に形成した駆動回路で行うことが可能である。
【0003】
ところで半導体装置に用いる基板は、コストの面から単結晶シリコン基板よりも、ガラス基板が有望視されている。ガラス基板は耐熱性に劣り、熱変形しやすいため、ガラス基板上にポリシリコンTFTを形成する場合には、ガラス基板の熱変形を避けるために、半導体膜の結晶化にレーザーアニールが用いられる。
【0004】
レーザーアニールの特徴は、輻射加熱或いは伝導加熱を利用するアニール法と比較して処理時間を大幅に短縮できることや、半導体又は半導体膜を選択的、局所的に加熱して、基板に殆ど熱的損傷を与えないことなどが挙げられている。
【0005】
なお、ここでいうレーザーアニール法とは、半導体基板又は半導体膜に形成された損傷層を再結晶化する技術や、基板上に形成された非晶質半導体膜を結晶化させる技術を指している。また、半導体基板又は半導体膜の平坦化や表面改質に適用される技術も含んでいる。適用されるレーザー発振装置は、エキシマレーザーに代表される気体レーザー発振装置、YAGレーザーに代表される固体レーザー発振装置であり、レーザー光の照射によって半導体の表面層を数十ナノ〜数十マイクロ秒程度のごく短時間加熱して結晶化させるものとして知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
レーザーはその発振方法により、パルス発振と連続発振の2種類に大別される。パルス発振のレーザーは出力エネルギーが比較的高いため、ビームスポットの大きさを数cm2以上として量産性を上げることができる。特に、ビームスポットの形状を光学系を用いて加工し、長さ10cm以上の線状にすると、基板へのレーザー光の照射を効率的に行うことができ、量産性をさらに高めることができる。そのため、半導体膜の結晶化には、パルス発振のレーザーを用いるのが主流となりつつあった。
【0007】
ところが近年、半導体膜の結晶化においてパルス発振のレーザーよりも連続発振のレーザーを用いる方が、半導体膜内に形成される結晶の粒径が大きくなることが見出された。半導体膜内の結晶粒径が大きくなると、該半導体膜を用いて形成されるTFTの移動度が高くなり、結晶粒界によるTFTの特性のばらつきが抑えられる。そのため、連続発振のレーザーはにわかに脚光を浴び始めている。
【0008】
しかし、一般的に連続発振のレーザーは、パルス発振のレーザーに比べてその最大出力エネルギーが小さいため、ビームスポットのサイズが10−3mm2程度と小さい。そのため、1枚の大きな基板を処理するためには、基板におけるビームの照射位置を上下左右に移動させる必要があり、基板1枚あたりの処理時間が長くなる。よって、基板処理の効率が悪く、基板の処理速度の向上が重要な課題となっている。
【0009】
本発明は上述した問題に鑑み、従来に比べて基板処理の効率を高めることができる連続発振のレーザー装置、レーザー照射方法及び該レーザー装置を用いた半導体装置の作製方法の提供を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のレーザー装置は、被処理物に対するレーザー光の照射位置を制御する第1の手段と、レーザー光を発振する複数の第2の手段(レーザー発振装置)と、前記複数のレーザー発振装置から発振されたレーザー光の被処理物におけるビームスポットを互いに一部重ね合わせる第3の手段(光学系)と、前記複数の各第2の手段の発振を制御し、なおかつレーザー光のビームスポットがマスクの形状のデータ(パターン情報)に従って定められる位置を覆うように前記第1の手段を制御する第4の手段とを有している。
【0011】
なお、マスクのデータに従って定められる位置とは、半導体膜のうち、結晶化後にパターニングすることで得られる部分である。本発明では第4の手段において、絶縁表面に形成された半導体膜のうち、パターニング後に基板上に残される部分をマスクに従って把握する。そして、少なくともパターニングすることで得られる部分を結晶化することができるようにレーザー光の走査部分を定め、該走査部分にビームスポットがあたるように第1の手段を制御して、半導体膜を部分的に結晶化する。つまり本発明では、半導体膜全体にレーザー光を走査して照射するのではなく、少なくとも必要不可欠な部分が最低限結晶化できるようにレーザー光を走査する。上記構成により、半導体膜を結晶化させた後パターニングにより除去される部分にレーザー光を照射する時間を省くことができる。
【0012】
本発明では上記構成を実現するために、半導体膜の成膜後、レーザー光による結晶化の前に、半導体膜にレーザー光でマーカーを付ける。そして該マーカーの位置を基準として、マスクをもとにレーザー光を走査する位置を定める。
【0013】
上記構成によって、レーザー光照射にかかる時間を短縮化することができ、なおかつ基板の処理速度を向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のレーザー装置の構成について説明する。図1に本発明のレーザー装置のブロック図を示す。
【0015】
本発明のレーザー装置100は、被処理物に対するレーザー光の照射位置を制御する第1の手段に相当するステージコントローラ101を有している。
【0016】
また、本発明のレーザー装置100は、レーザー光を発振する第2の手段に相当する複数のレーザー発振装置102(102a〜102d)を有している。なお図1では4つのレーザー発振装置102a〜102dを設けている例について示しているが、本発明のレーザー装置100が有するレーザー発振装置102はこの数に限定されない。本発明のレーザー発振装置100が有するレーザー発振装置102は、2つ以上8つ以下であれば良い。また全てのレーザー発振装置は同じレーザーを用いており、その波長は互いに同じでも異なっていても良い。
【0017】
レーザーは、処理の目的によって適宜変えることが可能である。本発明では、公知のレーザーを用いることができる。レーザーは、連続発振の気体レーザーもしくは固体レーザーを用いることができる。気体レーザーとして、エキシマレーザー、Arレーザー、Krレーザーなどがあり、固体レーザーとして、YAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライドレーザー、Ti:サファイアレーザー、Y2O3レーザーなどが挙げられる。固体レーザーとしては、Cr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti、Yb又はTmがドーピングされたYAG、YVO4、YLF、YAlO3などの結晶を使ったレーザーが適用される。当該レーザーの基本波はドーピングする材料によって異なり、1μm前後の基本波を有するレーザー光が得られる。基本波に対する高調波は、非線形光学素子を用いることで得ることができる。
【0018】
またさらに、固体レーザーから発せられらた赤外レーザー光を非線形光学素子でグリーンレーザー光に変換後、さらに別の非線形光学素子によって得られる紫外レーザー光を用いることもできる。
【0019】
なお本発明のレーザー装置は、上記4つの手段の他に、被処理物の温度を調節する手段を備えていても良い。
【0020】
また本発明のレーザー装置100は、レーザー発振装置102a〜102dのそれぞれから発振されるレーザー光の、被処理物におけるビームスポットを互いに一部重ね合わせることができる第3の手段に相当する光学系103を有している。
【0021】
さらに本発明のレーザー装置100は、第4の手段に相当するCPU104を有している。CPU104はレーザー発振装置102の発振を制御し、なおかつレーザー光のビームスポットがマスクのデータに従って定められる位置を覆うように、第1の手段に相当するステージコントローラ101を制御することができる。
【0022】
図2(A)に、各レーザー発振装置102a〜102dから発振されるレーザー光の被処理物107におけるビームスポットの形状の一例を示す。図2(A)に示したビームスポットは楕円形状を有している。なお本発明のレーザー装置において、レーザー発振装置から発振されるレーザー光のビームスポットの形状は、楕円に限定されない。ビームスポットの形状はレーザーの種類によって異なるし、光学系により成形することもできる。例えば、ラムダ社製のXeClエキシマレーザー(波長308nm、パルス幅30ns)L3308から射出されたレーザー光の形状は、10mm×30mm(共にビームプロファイルにおける半値幅)の矩形状である。また、YAGレーザーから射出されたレーザー光の形状は、ロッド形状が円筒形であれば円状となり、スラブ型であれば矩形状となる。このようなレーザー光を光学系により、さらに成形することにより、所望の大きさのレーザー光をつくることもできる。
【0023】
図2(B)に図2(A)に示したビームスポットの長軸y方向におけるレーザー光のエネルギー密度の分布を示す。ビームスポットが楕円形状であるレーザー光のエネルギー密度の分布は、楕円の中心Oに向かうほど高くなっている。αは、エネルギー密度が、所望の結晶を得るために必要とする値を超えている、長軸y方向における幅に相当する。
【0024】
次に、図2に示したビームスポットを有するレーザー光を合成したときの、ビームスポットの形状を、図3(A)に示す。図3(A)に示すように、各レーザー光のビームスポットは、各楕円の長軸が一致し、なおかつ互いにビームスポットの一部が重なることで合成され、1つのビームスポットが形成されている。なお以下、各楕円の中心Oを結ぶことで得られる直線を中心軸と呼ぶ。
【0025】
図3(B)に、図3(A)に示した合成後のビームスポットの、中心軸方向におけるレーザー光のエネルギー密度の分布を示す。合成前の各ビームスポットが重なり合っている部分においてエネルギー密度が加算されるので、各楕円の中心Oの間においてエネルギー密度が平坦化される。
【0026】
図3(B)から、複数のレーザー光を重ね合わせてエネルギー密度の低い部分を互いに補い合うようにすることで、複数のレーザー光を重ね合わせないで単独で用いるよりも、半導体膜の結晶性を効率良く高めることができるということがわかる。例えば図3(B)の斜線で示した領域においてのみ、所望の結晶を得るために必要なエネルギー密度の値を超えており、その他の領域ではエネルギー密度が低かったと仮定する。この場合、4つのビームスポットを重ね合わせないと、中心軸方向の幅がαで示される斜線の領域でしか、所望の結晶を得ることができない。しかし、ビームスポットを図3(B)で示したように重ね合わせることで、中心軸方向の幅がβ(β>4α)で示される領域において所望の結晶を得ることができ、より効率良く半導体膜を結晶化させることができる。
【0027】
図3(A)における被処理物107が、基板に成膜された半導体膜である場合について、図4(A)を用いて説明する。なお、図4(A)では、アクティブマトリクス型の半導体装置を作製するために成膜された半導体膜500を示しており、破線501が画素部、破線502が信号線駆動回路、破線503が走査線駆動回路の形成される部分に相当する。
【0028】
また本発明では、複数のレーザー光のビームスポットを互いに一部重ね合わせて合成し、1つのビームスポットを形成する。このとき合成前の各ビームスポットの中心が直線状になるように、各ビームスポットを重ね合わせる。
【0029】
なお、合成後のビームスポットは、合成前のビームスポットの中心を互いに結ぶことにより形成される直線(以下、中心軸と呼ぶ)と、走査する方向とが垂直になるようにしても良いし、垂直にならないようにしても良い。合成後のビームスポットの中心軸と、走査する方向とが垂直の場合、最も基板の処理効率が高まる。一方合成後のビームスポットの中心軸と、走査する方向とが45°±35°となるように、望ましくは45°により近い値になるように走査することで、以下の利点が得られる。
【0030】
図31(A)、(B)に、走査方向に対するビームスポットの中心軸の角度を27°、波長532nm、出力エネルギー2W、移動速度を20cm/secとし、窒化珪素上に形成された1000Åの非晶質珪素膜にNd:YVO4を照射して結晶化させたときの、結晶方位の逆極点図(Inverse pole figure)のマップ図を示す。基板と平行な面内において走査方向と垂直な方向をx、走査方向をy、基板と垂直な方向をzとすると、図31(A)は半導体膜のz方向に垂直な面における結晶方位の分布を示しており、図31(B)はy方向に垂直な面における結晶方位の分布を示している。また図31(C)はy方向に垂直な面における逆極点図であり、各結晶方位の分布の割合を示している。そして、図31(D)は極点図であり、TDが走査方向yに相当し、001がz方向に垂直な面における極点図、011がy方向とz方向を合成した方向に垂直な面における極点図、111はx方向とy方向とz方向を合成した方向に垂直な面における極点図を示している。
【0031】
また図32(A)、(B)に、走査方向に対するビームスポットの中心軸の角度を45°、波長532nm、出力エネルギー1.6W、移動速度を20cm/secとし、窒化珪素上に形成された1000Åの非晶質珪素膜にNd:YVO4を照射して結晶化させたときの、結晶方位の逆極点図(Inverse pole figure)のマップ図を示す。基板と平行な面内において走査方向と垂直な方向をx、走査方向をy、基板と垂直な方向をzとすると、図32(A)は半導体膜のz方向に垂直な面における結晶方位の分布を示しており、図32(B)はy方向に垂直な面における結晶方位の分布を示している。また図32(C)はy方向に垂直な面における逆極点図であり、各結晶方位の分布の割合を示している。そして、図32(D)は極点図であり、TDが走査方向yに相当し、001がz方向に垂直な面における極点図、011がy方向とz方向を合成した方向に垂直な面における極点図、111はx方向とy方向とz方向を合成した方向に垂直な面における極点図を示している。
【0032】
図31、図32からわかるように、結晶粒はビームスポットの中心軸に対して垂直方向に成長している。上記構成によって、走査する方向とビームスポットの中心軸とが垂直になるように走査した場合に比べて、活性層中に存在する結晶粒の数が多くなり、結晶の方位や結晶粒に起因する特性のばらつきを低減することができる。
【0033】
図4(B)に、画素部が形成される部分501におけるビームスポット507の拡大図を示す。また図4(C)に、信号線駆動回路502が形成される部分におけるビームスポット507の拡大図を示す。本発明では、ビームスポット507の中心軸と、走査方向とが垂直にならないようにする。具体的には、ビームスポットの中心軸と、走査方向との間に形成される鋭角θAが45°±35°となるようにし、より望ましくは45°となるようにする。
【0034】
またレーザー光は、図3(B)に示すようにビームスポットのエッジの部分におけるエネルギー密度が他の部分よりも低くなっており、被処理物への処理が均一に行えない場合がある。よって、結晶化後に半導体膜をパターニングすることで得られる島状の半導体膜に相当する部分506と、レーザー光の軌跡のエッジとが重なることのないように、レーザー光を照射することが望ましい。
【0035】
なお、図4(A)ではレーザー光を矢印の方向に走査するが、必ずしもこの矢印の方向に走査する必要はない。図33(A)に、レーザー光の走査方向が、図4(A)の場合に対して90°回転している例について示す。また図33(B)に、画素部501と走査線駆動回路503においてレーザー光の走査方向が図33(A)の場合と同じであり、信号線駆動回路502においては、走査方向が図33(A)の場合と同じレーザー光と、図4(A)の場合と同じレーザー光とを両方照射している例を示す。この場合、レーザー光が重なる部分において半導体膜の表面が荒れることがあるので、活性層が形成される部分においてレーザー光が重ならないようにするのが好ましい。また、図33(B)では信号線駆動回路において走査方向の異なるレーザー光を照射しているが、走査線駆動回路503と画素部501でも走査方向の異なるレーザー光を照射するようにしても良い。
【0036】
そして本発明では、CPU104に入力される半導体膜のパターニングのマスクに従って、レーザー光を走査する部分を定める。なおレーザー光を走査する部分は、半導体膜の、結晶化後にパターニングすることで得られる部分を覆うようにする。CPU104では、半導体膜のうち、少なくともパターニングすることで得られる部分を結晶化することができるように、レーザー光の走査部分を定め、該走査部分にビームスポット即ち照射位置があたるように、第1の手段に相当するステージコントローラ101を制御して、半導体膜を部分的に結晶化する。
【0037】
図5(A)に、レーザー光の走査する部分と、マスクとの関係を示す。なお図5(A)では、ビームスポットの中心軸と走査方向とがほぼ垂直になっている。図5(B)に、ビームスポットの中心軸と走査方向とが45°の場合の、レーザー光の走査する部分と、マスクとの関係を示す。510は半導体膜のうち、パターニングに得られる島状の半導体膜を示しており、これらの島状の半導体膜510を覆うように、レーザー光の走査部分が定められる。511はレーザー光の走査部分であり、島状の半導体膜510を覆っている。図5に示すように、本発明ではレーザー光を半導体膜全面に照射するのではなく、少なくとも必要不可欠な部分を最低限結晶化できるようにレーザー光を走査する。
【0038】
なお、結晶化後の半導体膜をTFTの活性層として用いる場合、レーザー光の走査方向は、チャネル形成領域のキャリアが移動する方向と平行になるように定めるのが望ましい。
【0039】
図6にTFTの活性層の一例を示す。図6(A)ではチャネル形成領域が1つ設けられている活性層を示しており、チャネル形成領域520を挟むようにソース領域またはドレイン領域となる不純物領域521、522が設けられている。本発明のレーザー装置を用いて半導体膜を結晶化させるとき、レーザー光の走査方向は矢印に示すように、チャネル形成領域のキャリアが移動する方向と平行になるように、走査方向を定めるようにする。523はビームスポットの形状を示しており、ビームスポット523のうち、斜線で示した領域524において、エネルギー密度が、良好な結晶を得るために必要である値を超えている。活性層全体に、斜線で示した領域524のレーザー光が照射されるようにすることで、活性層の結晶性をより高めることができる。
【0040】
また、図6(B)では、チャネル形成領域が3つ設けられている活性層を示しており、チャネル形成領域530を挟むように不純物領域533、534が設けられている。また、チャネル形成領域531を挟むように不純物領域534、535が設けられており、さらにチャネル形成領域532を挟むように不純物領域535、536が設けられている。そして、本発明のレーザー装置を用いて半導体膜を結晶化させるとき、レーザー光の走査方向は矢印に示すように、チャネル形成領域のキャリアが移動する方向と平行になるように、走査方向を定めるようにする。
【0041】
なお、レーザー光の走査部分を定めるためには、半導体膜に対するマスクの位置を定めるためのマーカーを、半導体膜に形成する必要がある。図7に、アクティブマトリクス型の半導体装置を作製するために成膜された半導体膜において、マーカーを形成する位置を示す。なお、図7(A)は1つの基板から1つの半導体装置を作製する例を示しており、図7(B)は1つの基板から4つの半導体装置を作製する例を示している。
【0042】
図7(A)において540は基板上に成膜された半導体膜であり、破線541が画素部、破線542が信号線駆動回路、破線543が走査線駆動回路の形成される部分に相当する。544はマーカーが形成される部分(マーカー形成部)であり、半導体膜の4隅に位置するように設けられている。
【0043】
なお図7(A)ではマーカー形成部544を4つそれぞれ4隅に設けたが、本発明はこの構成に限定されない。半導体膜におけるレーザー光の走査部分と、半導体膜のパターニングのマスクとの位置合わせをすることができるのであれば、マーカー形成部の位置及びその数は上述した形態に限定されない。
【0044】
図7(B)において550は基板上に成膜された半導体膜であり、破線551は後の工程において基板を分断するときのスクライブラインである。図7(B)では、スクライブライン551に沿って基板を分断することで、4つの半導体装置を作製することができる。なお分断により得られる半導体装置の数はこれに限定されない。
【0045】
552はマーカーが形成される部分(マーカー形成部)であり、半導体膜の4隅に位置するように設けられている。なお図7(B)ではマーカー形成部552を4つそれぞれ4隅に設けたが、本発明はこの構成に限定されない。半導体膜におけるレーザー光の走査部分と、半導体膜のパターニングのマスクとの位置合わせをすることができるのであれば、マーカー形成部の位置及びその数は上述した形態に限定されない。
【0046】
マーカーを形成する際に用いるレーザーは、代表的にはYAGレーザー、CO2レーザー等が挙げられるが、無論この他のレーザーを用いて形成することは可能である。
【0047】
次に、本発明のレーザー装置を用いた半導体装置の生産システムについて説明する。
【0048】
図8に本発明の生産システムの流れをフローチャートで示す。まずCADを用いて半導体装置の設計を行う。そして、設計された半導体膜のパターニングのマスクの形状に関する情報を、レーザー装置が有するCPUに入力する。
【0049】
一方、非晶質半導体膜を基板上に成膜した後、非晶質半導体膜が成膜された基板をレーザー装置に設置する。そして、レーザーを用いて半導体膜の表面にマーカーを形成する。
【0050】
CPUでは入力されたマスクの情報に基づき、マーカーの位置を基準にして、レーザー光の走査部分を決定する。そして形成されたマーカーを基準にして、レーザー光の走査部分にレーザー光を照射し、半導体膜を部分的に結晶化する。
【0051】
そして、レーザー光を照射した後、レーザー光照射により得られた多結晶半導体膜をパターニングしてエッチングし、島状の半導体膜を形成する。以下、島状の半導体膜からTFTを作製する工程が行われる。TFTの具体的な作製工程はTFTの形状によって異なるが、代表的にはゲート絶縁膜を成膜し、島状の半導体膜に不純物領域を形成する。そして、ゲート絶縁膜及びゲート電極を覆うように層間絶縁膜を形成し、該層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、不純物領域の一部を露出させる。そして該コンタクトホールを介して不純物領域に接するように層間絶縁膜上に配線を形成する。
【0052】
なお、比較対象のために、図9に従来の半導体装置の生産の流れをフローチャートで示す。図9に示すように、CADによる半導体装置のマスク設計が行われる。一方で、基板に非晶質半導体膜が成膜され、該非晶質半導体膜が成膜された基板をレーザー装置に設置する。そして、非晶質半導体膜全体にレーザー光が照射されるように走査し、非晶質半導体膜全体を結晶化させる。そして、結晶化により得られた多結晶半導体膜にマーカーを形成し、該マーカーを基準として多結晶半導体膜をパターニングして島状の半導体膜を形成する。そして該島状の半導体膜を用いてTFTを作製する。
【0053】
このように本発明の生産システムでは、図9に示すような従来の場合とは異なり、マーカーをレーザー光を用いて非晶質半導体膜を結晶化させる前に形成する。そして、半導体膜のパターニングのマスクの情報に従って、レーザー光を走査させる。
【0054】
上記構成により、半導体膜を結晶化させた後パターニングにより除去される部分にレーザー光を照射する時間を省くことができるので、レーザー光照射にかかる時間を短縮化することができ、なおかつ基板の処理速度を向上させることができる。
【0055】
なお、図10に、触媒を用いて半導体膜を結晶化させる工程を含む場合の、本発明の生産システムのフローチャートを示す。触媒元素を用いる場合、特開平7−130652号公報、特開平8−78329号公報で開示された技術を用いることが望ましい。
【0056】
図10の図8と異なる点は、非晶質半導体膜を成膜後にNiを用いて結晶化させる工程(NiSPC)を含んでいる点である。例えば特開平7−130652号公報に開示されている技術を用いる場合、重量換算で10ppmのニッケルを含む酢酸ニッケル塩溶液を非晶質半導体膜に塗布してニッケル含有層を形成し、500℃、1時間の脱水素工程の後、500〜650℃で4〜12時間、例えば550℃、8時間の熱処理を行い結晶化する。尚、使用可能な触媒元素は、ニッケル(Ni)以外にも、ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、といった元素を用いても良い。
【0057】
そして図10では、レーザー光照射を用いて、NiSPCにより結晶化された半導体膜の結晶性をさらに高める。レーザー光照射により得られた多結晶半導体膜は触媒元素を含んでおり、図10ではレーザー光照射後にその触媒元素を結晶質半導体膜から除去する工程(ゲッタリング)を行う。ゲッタリングは特開平10−135468号公報または特開平10−135469号公報等に記載された技術を用いることができる。
【0058】
具体的には、レーザー照射後に得られる多結晶半導体膜の一部にリンを添加し、窒素雰囲気中で550〜800℃、5〜24時間、例えば600℃、12時間の熱処理を行う。すると多結晶半導体膜のリンが添加された領域がゲッタリングサイトとして働き、多結晶半導体膜中に存在するリンをリンが添加された領域に偏析させることができる。その後、多結晶半導体膜のリンが添加された領域をパターニングにより除去することで、触媒元素の濃度を1×1017atoms/cm3以下好ましくは1×1016atoms/cm3程度にまで低減された島状の半導体膜を得ることができる。
【0059】
このように本発明では、半導体膜全体にレーザー光を走査して照射するのではなく、少なくとも必要不可欠な部分を最低限結晶化できるようにレーザー光を走査する。上記構成により、半導体膜を結晶化させた後パターニングにより除去される部分にレーザー光を照射する時間を省くことができ、基板1枚あたりにかかる処理時間を大幅に短縮することができる。
【0060】
また、レーザー光の軌跡の幅を変えることができるので、レーザー光の軌跡のエッジが、パターニングによって得られる半導体と重なるのを防ぐことができる。また不必要な部分にレーザー光を照射することで基板に与えられるダメージを軽減することができる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0062】
(実施例1)
本実施例では、本発明のレーザー装置に用いられる光学系について説明する。
【0063】
図11に、本発明のレーザー装置に用いられる光学系の具体的な構成を示す。図11(A)は本発明のレーザー装置の光学系の側面図であり、図11(A)の矢印Bの方向から見た側面図を図11(B)に示す。なお図11(B)の矢印Aの方向から見た側面図が、図11(A)に相当する。
【0064】
図11はビームスポットを4つ合成して1つのビームスポットにする場合の光学系を示している。なお本発明において合成するビームスポットの数はこれに限定されず、合成するビームスポットの数は2以上8以下であれば良い。
【0065】
401、402、403、404、405はシリンドリカルレンズであり、図11には示されていないが、本実施例の光学系はシリンドリカルレンズを6つ用いている。図12に図11に示した光学系の斜視図を示す。シリンドリカルレンズ403、404、405、406のそれぞれに、異なるレーザー発振装置からレーザー光が入射される。
【0066】
そしてシリンドリカルレンズ403、405によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ401に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズにおいてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物400に照射される。また、シリンドリカルレンズ404、406によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ402に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズにおいてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物400に照射される。
【0067】
被処理物400におけるレーザー光のビームスポットは互いに一部重なることで合成されて、1つのビームスポットになっている。
【0068】
なお、本実施例では、被処理物400に最も近いシリンドリカルレンズ401、402の焦点距離を20mmとし、シリンドリカルレンズ403〜406の焦点距離を150mmとする。そしてシリンドリカルレンズ401、402から被処理物400へのレーザー光の入射角θ1は、本実施例では25°とし、シリンドリカルレンズ403〜406からシリンドリカルレンズ401、402へのレーザー光の入射角θ2を10°とするように各レンズを設置する。
【0069】
なお各レンズの焦点距離及び入射角は設計者が適宜設定することが可能である。さらに、シリンドリカルレンズの数もこれに限定されず、また用いる光学系はシリンドリカルレンズに限定されない。本発明は、各レーザー発振装置から発振されるレーザー光のビームスポットを、半導体膜の結晶化に適した形状及びエネルギー密度になるように加工し、なおかつ全てのレーザー光のビームスポットを互いに重ね合わせて合成し、1つのビームスポットにすることができるような光学系であれば良い。
【0070】
なお本実施例では、4つのビームスポットを合成する例について示しており、この場合4つのレーザー発振装置にそれぞれ対応するシリンドリカルレンズを4つと、該4つのシリンドリカルレンズに対応する2つのシリンドリカルレンズとを有している。n(n=2、4、6、8)のビームスポットを合成する場合、nのレーザー発振装置にそれぞれ対応するnのシリンドリカルレンズと、該nのシリンドリカルレンズに対応するn/2のシリンドリカルレンズとを有している。n(n=3、5、7)のビームスポットを合成する場合、nのレーザー発振装置にそれぞれ対応するnのシリンドリカルレンズと、該nのシリンドリカルレンズに対応する(n+1)/2のシリンドリカルレンズとを有している。
【0071】
なお、戻り光がもときた光路をたどって戻るのを防ぐために、基板に対する入射角は、0より大きく90°より小さくなるように保つようにするのが望ましい。
【0072】
また、均一なレーザー光の照射を実現するためには、照射面に垂直な平面であって、かつ合成前の各ビームの形状をそれぞれ長方形と見立てたときの短辺を含む面または長辺を含む面のいずれか一方を入射面と定義すると、前記レーザー光の入射角度θは、入射面に含まれる前記短辺または前記長辺の長さがW、前記照射面に設置され、かつ、前記レーザー光に対して透光性を有する基板の厚さがdであるとき、θ≧arctan(W/2d)を満たすのが望ましい。この議論は合成前の個々のレーザー光について成り立つ必要がある。なお、レーザー光の軌跡が、前記入射面上にないときは、該軌跡を該入射面に射影したものの入射角度をθとする。この入射角度θでレーザー光が入射されれば、基板の表面での反射光と、前記基板の裏面からの反射光とが干渉せず、一様なレーザー光の照射を行うことができる。以上の議論は、基板の屈折率を1として考えた。実際は、基板の屈折率が1.5前後のものが多く、この数値を考慮に入れると上記議論で算出した角度よりも大きな計算値が得られる。しかしながら、ビームスポットの長手方向の両端のエネルギーは減衰があるため、この部分での干渉の影響は少なく、上記の算出値で十分に干渉減衰の効果が得られる。
【0073】
(実施例2)
本実施例では、レーザー光照射の途中で、レーザー光のビームスポットの大きさを変える例について説明する。
【0074】
本発明のレーザー装置は、CPUにおいて、入力されたマスクの情報に基づきレーザー光を走査する部分を把握する。さらに本実施例では、ビームスポットの長さをマスクの形状に合わせて変えるようにする。
【0075】
図13に、半導体膜のパターニングのマスクの形状と、ビームスポットの長さの関係を一例として示す。560は半導体膜のパターニングのマスクの形状を示しており、レーザー照射による結晶化の後、該マスクに従って半導体膜がパターニングされる。
【0076】
561と562は、レーザー光が照射された部分を示している。なお561は、4つのレーザー発振装置から出力されたレーザー光のビームスポットを重ね合わせて合成することで得られるビームスポットを、走査した部分である。一方、562は、2つのレーザー発振装置から出力されたレーザー光のビームスポットを重ね合わせて合成することで得られるビームスポットを、走査した部分である。
【0077】
2つのレーザー発振装置から出力されたレーザー光を合成することで得られるビームスポットは、4つのレーザー発振装置のうちの2つのレーザー発振装置の発振を停止することで得られる。ただしこの場合、残された2つのレーザー発振装置から出力される2つのビームスポットが、重なっている事が重要である。
【0078】
なお本実施例のように、レーザー光を走査している途中でビームスポットの長さを変える場合、ビームスポットを短いほうから長いほうへ変えるよりも、長いほうから短いほうへ変えるほうがレーザー発振装置からの出力が安定するのでより好ましい。よって、CPUにおいてマスクの形状の情報をもとに、ビームスポットを長いほうから短いほうへ変えるようにレーザー光の走査順序を考慮したほうが良い。さらには、マスクの設計の段階で、レーザー光の走査順序を考慮に入れてマスクを設計するようにしても良い。
【0079】
上記構成により、レーザー光の軌跡の幅を変えることができるので、レーザー光の軌跡のエッジが、パターニングによって得られる半導体と重なるのを防ぐことができる。また不必要な部分にレーザー光を照射することで基板に与えられるダメージをさらに軽減することができる。
【0080】
本実施例は、実施例1と組み合わせて実施することが可能である。
【0081】
(実施例3)
本実施例では、レーザー光照射の途中で、光学系が有するシャッターによりレーザー光を遮り、所定の部分にのみレーザー光を照射する例について説明する。
【0082】
本発明のレーザー装置は、CPUにおいて、入力されたマスクの情報に基づきレーザー光を走査する部分を把握する。さらに本実施例では、走査するべき部分のみにレーザー光が照射されるようにシャッターを用いてレーザー光を遮る。このときシャッターは、レーザー光を遮ることが可能であり、なおかつレーザー光によって変形または損傷しないような材質で形成するのが望ましい
【0083】
図14に、半導体膜のパターニングのマスクの形状と、レーザー光が照射される部分の関係を一例として示す。570は半導体膜のパターニングのマスクの形状を示しており、レーザー照射による結晶化の後、該マスクに従って半導体膜がパターニングされる。
【0084】
571は、レーザー光が照射された部分を示している。破線はレーザー光がシャッターで遮られている部分を示しており、本実施例では結晶化させる必要のない部分にはレーザー光が照射しないか、照射されていてもそのエネルギー密度が低くなるようにすることができる。したがって、不必要な部分にレーザー光を照射することで基板に与えられるダメージをさらに軽減することができる。
【0085】
本実施例は、実施例1または実施例2と組み合わせて実施することが可能である。
【0086】
(実施例4)
本実施例では、レーザー光の走査方向を変更する例について説明する。
【0087】
レーザー光の照射方向を、チャネル形成領域のキャリアが移動する方向と平行にすることで、半導体膜中の結晶粒の成長方向がキャリアの移動方向と重なり、移動度を高めることができる。しかし回路の設計上の制約のために、チャネル形成領域がキャリアの移動方向と平行になるように、全ての活性層をレイアウトすることが難しい場合がある。この場合、マスクの情報に従って、レーザー光の走査方向を変更するのが望ましい。
【0088】
図15に、半導体膜のパターニングのマスクの形状と、レーザー光が照射される部分の関係を一例として示す。580、583は半導体膜のパターニングのマスクの形状を示しており、レーザー照射による結晶化の後、該マスクに従って半導体膜がパターニングされる。580と583はチャネル形成領域においてキャリアの移動する方向が垂直になるように設計されている。
【0089】
本発明のレーザー装置は、CPUにおいて、入力されたマスクの情報に基づきレーザー光を走査する部分を把握する。一方、パターニングして得られる島状の半導体膜の、チャネル形成領域におけるキャリアの移動方向を、情報としてCPUに入力する。具体的には、活性層の形状に対してレーザー光の走査方向を予め決めておく。そしてCPUでは、その予め定められた活性層の形状に対するレーザー光の走査方向と、マスクの形状から得られる各活性層の形状とを比較参照し、半導体膜の各走査部分の走査方向を決める。
【0090】
581は、レーザー光を水平方向に走査したときにレーザー光が照射された部分を示しており、その走査方向は、パターニング後に得られる島状の半導体膜580のチャネル形成領域となる部分のキャリアの移動する方向と平行になっている。582は、レーザー光を垂直方向に走査したときにレーザー光が照射された部分を示しており、その走査方向は、パターニング後に得られる島状の半導体膜583のチャネル形成領域となる部分のキャリアの移動する方向と平行になっている。
【0091】
なお図15の584〜587に示したように、走査方向の異なるレーザー光が重なって照射されるところは、半導体膜の表面が荒れてしまい、後に形成されるゲート絶縁膜の特性に悪影響を及ぼす可能性があるので、TFTの活性層として用いるのは好ましくない。よってマスクの設計の段階で、レーザー光の走査方向及び走査部分を定めておき、レーザー光の重なる部分に島状の半導体膜を配置しないようにマスクのレイアウトを決定するのが望ましい。
【0092】
また、実施例2に示すようにレーザー光のビームスポットの中心軸方向の長さを変えることでレーザー光の軌跡のエッジの部分が島状の半導体膜と重なるのを防いでも良い。また、実施例3に示すようにシャッターを用いることで、レーザー光の軌跡のエッジの部分が島状の半導体膜と重なるのを防いだり、レーザー光が重なるのを防いだりするようにしても良い。
【0093】
本実施例は、実施例1〜3と組み合わせて実施することが可能である。
【0094】
(実施例5)
本実施例では、マーカー形成部423に設けられたマーカーの一例を示す。
【0095】
図16(A)に本実施例のマーカーの上面図を示す。421、422は半導体膜に形成された基準となるマーカー(以下、基準マーカーと呼ぶ)であり、それぞれ形状が矩形である。基準マーカー421は、全てその矩形の長辺が水平方向に配置されており、各基準マーカー421は一定の間隔を保って垂直方向に配置されている。基準マーカー422は全てその矩形の長辺が垂直方向に配置されており、各基準マーカー422は一定の間隔を保って水平方向に配置されている。
【0096】
基準マーカー421はマスクの垂直方向の位置を定める基準となり、基準マーカー422はマスクの水平方向の位置を定める基準となっている。424、425は半導体膜のパターニング用マスクのマーカーであり、それぞれ形状が矩形である。マーカー424はその矩形の長辺が水平方向に配置されるように、なおかつマーカー425はその矩形の長辺が垂直方向に配置されるように、半導体パターニング用のマスクの位置を定める。そして、マーカー424が定められた2つの隣り合う基準マーカー421の丁度真中に位置するように、なおかつマーカー425が定められた2つの隣り合う基準マーカー422の丁度真中に位置するように、半導体パターニング用のマスクの位置を定める。
【0097】
図16(B)に半導体膜に形成された基準マーカーの斜視図を示す。基板431に成膜された半導体膜430の一部は、レーザーによって矩形状に削られており、該削られた部分が基準マーカー421、422として機能する。
【0098】
なお本実施例に示したマーカーはほんの一例であり、本発明のマーカーはこれに限定されない。本発明で用いるマーカーは、半導体膜をレーザー光で結晶化させる前に形成することができ、なおかつレーザー光の照射による結晶化の後にでも用いることができるものであれば良い。
【0099】
本実施例は、実施例1〜4と組み合わせて実施することが可能である。
【0100】
(実施例6)
本実施例では、8つのレーザー発振装置を用いた本発明のレーザー装置の、光学系について説明する。
【0101】
図17、図18に、本実施例のレーザー装置に用いられる光学系の具体的な構成を示す。図17は本発明のレーザー装置の光学系の側面図であり、図17の矢印Bの方向から見た側面図を図18に示す。なお図18の矢印Aの方向から見た側面図が、図17に相当する。
【0102】
本実施例ではビームスポットを8つ合成して1つのビームスポットにする場合の光学系を示している。なお本発明において合成するビームスポットの数はこれに限定されず、合成するビームスポットの数は2以上8以下であれば良い。
【0103】
441〜450はシリンドリカルレンズであり、図17、図18には示されていないが、本実施例の光学系は12のシリンドリカルレンズ441〜452を用いている。図19に図17、図18に示した光学系の斜視図を示す。シリンドリカルレンズ441〜444のそれぞれに、異なるレーザー発振装置からレーザー光が入射される。
【0104】
そしてシリンドリカルレンズ450、445によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ441に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズ441においてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物440に照射される。また、シリンドリカルレンズ451、446によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ442に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズ442においてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物440に照射される。また、シリンドリカルレンズ449、447によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ443に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズ443においてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物440に照射される。また、シリンドリカルレンズ452、448によってそのビームスポットの形状が加工されたレーザー光が、シリンドリカルレンズ444に入射する。入射したレーザー光はシリンドリカルレンズ444においてそのビームスポットの形状が加工され、被処理物440に照射される。
【0105】
被処理物440におけるレーザー光のビームスポットは互いに一部重なることで合成されて、1つのビームスポットになっている。
【0106】
なお、本実施例では、被処理物440に最も近いシリンドリカルレンズ441〜444の焦点距離を20mmとし、シリンドリカルレンズ445〜452の焦点距離を150mmとする。そしてシリンドリカルレンズ441〜444から被処理物440へのレーザー光の入射角θ1は、本実施例では25°とし、シリンドリカルレンズ445〜452からシリンドリカルレンズ441〜444へのレーザー光の入射角θ2を10°とするように各レンズを設置する。
【0107】
なお各レンズの焦点距離及び入射角は設計者が適宜設定することが可能である。さらに、シリンドリカルレンズの数もこれに限定されず、また用いる光学系はシリンドリカルレンズに限定されない。本発明は、各レーザー発振装置から発振されるレーザー光のビームスポットを、半導体膜の結晶化に適した形状及びエネルギー密度になるように加工し、なおかつ全てのレーザー光のビームスポットを互いに重ね合わせて合成し、1つのビームスポットにすることができるような光学系であれば良い。
【0108】
なお本実施例では、8つのビームスポットを合成する例について示しており、この場合8つのレーザー発振装置にそれぞれ対応するシリンドリカルレンズを8つと、該8つのシリンドリカルレンズに対応する4つのシリンドリカルレンズとを有している。
【0109】
本実施例は、実施例1〜5と組み合わせて実施することが可能である。
【0110】
(実施例7)
本実施例ではアクティブマトリクス基板の作製方法について図25〜図28を用いて説明する。本明細書ではCMOS回路、及び駆動回路と、画素TFT、保持容量とを有する画素部を同一基板上に形成された基板を、便宜上アクティブマトリクス基板と呼ぶ。
【0111】
まず、本実施例ではバリウムホウケイ酸ガラス、またはアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラスからなる基板600を用いる。なお、基板600としては、石英基板やシリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。また、本実施例の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。
【0112】
次いで、基板600上に酸化珪素膜、窒化珪素膜または酸化窒化珪素膜などの絶縁膜から成る下地膜601を公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等)により形成する。本実施例では下地膜601として下地膜601a、601bの2層の下地膜を用いるが、前記絶縁膜の単層膜または2層以上積層させた構造を用いても良い(図25(A))。
【0113】
次いで、下地膜601上に、公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等)により25〜80nm(好ましくは30〜60nm)の厚さで非晶質半導体膜692を形成する(図25(A))。なお、本実施例では非晶質半導体膜を成膜しているが、微結晶半導体膜、結晶性半導体膜であっても良い。また、非晶質珪素ゲルマニウム膜などの非晶質構造を有する化合物半導体膜を用いても良い。
【0114】
次に、非晶質半導体膜692をレーザー結晶化法により結晶化させる。レーザー結晶化法は、本発明のレーザー装置を用いて行う。本発明では、レーザー装置のCPUに入力されたマスクの情報に従って、非晶質半導体膜を部分的に結晶化させる。もちろん、レーザー結晶化法だけでなく、他の公知の結晶化法(RTAやファーネスアニール炉を用いた熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いた熱結晶化法等)と組み合わせて行ってもよい。
【0115】
非晶質半導体膜の結晶化に際し、連続発振が可能な固体レーザーを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波を用いることで、大粒径の結晶を得ることができる。代表的には、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いるのが望ましい。具体的には、連続発振のYVO4レーザーから射出されたレーザー光を非線形光学素子により高調波に変換し、出力10Wのレーザー光を得る。また、共振器の中にYVO4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法もある。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザー光に成形して、被処理体に照射する。このときのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、10〜2000cm/s程度の速度でレーザー光に対して相対的に半導体膜を移動させて照射する。
【0116】
なおレーザーは、連続発振の気体レーザーもしくは固体レーザーを用いることができる。気体レーザーとして、エキシマレーザー、Arレーザー、Krレーザーなどがあり、固体レーザーとして、YAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライドレーザー、Ti:サファイアレーザー、Y2O3レーザーなどが挙げられる。固体レーザーとしては、Cr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti、Yb又はTmがドーピングされたYAG、YVO4、YLF、YAlO3などの結晶を使ったレーザー等も使用可能である。当該レーザーの基本波はドーピングする材料によって異なり、1μm前後の基本波を有するレーザー光が得られる。基本波に対する高調波は、非線形光学素子を用いることで得ることができる。
【0117】
上述したレーザー結晶化によって、非晶質半導体膜に部分的に結晶化された領域693、694、695が形成される(図25(B))。
【0118】
次に、部分的に結晶性が高められた結晶性半導体膜を所望の形状にパターニングして、結晶化された領域693、694、695から島状の半導体膜602〜606を形成する(図25(C))。
【0119】
また、島状の半導体膜602〜606を形成した後、TFTのしきい値を制御するために微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを行ってもよい。
【0120】
次いで、島状の半導体膜602〜606を覆うゲート絶縁膜607を形成する。ゲート絶縁膜607はプラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを40〜150nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。本実施例では、プラズマCVD法により110nmの厚さで酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)で形成した。勿論、ゲート絶縁膜は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
【0121】
また、酸化珪素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)とO2とを混合し、反応圧力40Pa、基板温度300〜400℃とし、高周波(13.56MHz)電力密度0.5〜0.8W/cm2で放電させて形成することができる。このようにして作製される酸化珪素膜は、その後400〜500℃の熱アニールによりゲート絶縁膜として良好な特性を得ることができる。
【0122】
次いで、ゲート絶縁膜607上に膜厚20〜100nmの第1の導電膜608と、膜厚100〜400nmの第2の導電膜609とを積層形成する。本実施例では、膜厚30nmのTaN膜からなる第1の導電膜608と、膜厚370nmのW膜からなる第2の導電膜609を積層形成した。TaN膜はスパッタ法で形成し、Taのターゲットを用い、窒素を含む雰囲気内でスパッタする。また、W膜は、Wのターゲットを用いたスパッタ法で形成した。その他に6フッ化タングステン(WF6)を用いる熱CVD法で形成することもできる。いずれにしてもゲート電極として使用するためには低抵抗化を図る必要があり、W膜の抵抗率は20μΩcm以下にすることが望ましい。W膜は結晶粒を大きくすることで低抵抗率化を図ることができるが、W膜中に酸素などの不純物元素が多い場合には結晶化が阻害され高抵抗化する。従って、本実施例では、高純度のW(純度99.9999%)のターゲットを用いたスパッタ法で、さらに成膜時に気相中からの不純物の混入がないように十分配慮してW膜を形成することにより、抵抗率9〜20μΩcmを実現することができる。
【0123】
なお、本実施例では、第1の導電膜608をTaN、第2の導電膜609をWとしたが、特に限定されず、いずれもTa、W、Ti、Mo、Al、Cu、Cr、Ndから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成してもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素膜に代表される半導体膜を用いてもよい。また、AgPdCu合金を用いてもよい。また、第1の導電膜をタンタル(Ta)膜で形成し、第2の導電膜をW膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化チタン(TiN)膜で形成し、第2の導電膜をW膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化タンタル(TaN)で形成し、第2の導電膜をWとする組み合わせ、第1の導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、第2の導電膜をAl膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、第2の導電膜をCu膜とする組み合わせとしてもよい。
【0124】
また、2層構造に限定されず、例えば、タングステン膜、アルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜、窒化チタン膜を順次積層した3層構造としてもよい。また、3層構造とする場合、タングステンに代えて窒化タングステンを用いてもよいし、アルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜に代えてアルミニウムとチタンの合金膜(Al−Ti)を用いてもよいし、窒化チタン膜に代えてチタン膜を用いてもよい。
【0125】
なお、導電膜の材料によって、適宜最適なエッチングの方法や、エッチャントの種類を選択することが重要である。
【0126】
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストからなるマスク610〜615を形成し、電極及び配線を形成するための第1のエッチング処理を行う。第1のエッチング処理では第1及び第2のエッチング条件で行う(図26(B))。本実施例では第1のエッチング条件として、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を25:25:10(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを行う。基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。この第1のエッチング条件によりW膜をエッチングして第1の導電層の端部をテーパー形状とする。
【0127】
この後、レジストからなるマスク610〜615を除去せずに第2のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30:30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。CF4とCl2を混合した第2のエッチング条件ではW膜及びTaN膜とも同程度にエッチングされる。なお、ゲート絶縁膜上に残渣を残すことなくエッチングするためには、10〜20%程度の割合でエッチング時間を増加させると良い。
【0128】
上記第1のエッチング処理では、レジストからなるマスクの形状を適したものとすることにより、基板側に印加するバイアス電圧の効果により第1の導電層及び第2の導電層の端部がテーパー形状となる。このテーパー部の角度は15〜45°となる。こうして、第1のエッチング処理により第1の導電層と第2の導電層から成る第1の形状の導電層617〜622(第1の導電層617a〜622aと第2の導電層617b〜622b)を形成する。616はゲート絶縁膜であり、第1の形状の導電層617〜622で覆われない領域は20〜50nm程度エッチングされ薄くなった領域が形成される。
【0129】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング処理を行う(図26(C))。ここでは、エッチングガスにCF4とCl2とO2とを用い、W膜を選択的にエッチングする。この時、第2のエッチング処理により第2の導電層628b〜633bを形成する。一方、第1の導電層617a〜622aは、ほとんどエッチングされず、第2の形状の導電層628〜633を形成する。
【0130】
そして、レジストからなるマスクを除去せずに第1のドーピング処理を行い、島状の半導体膜にn型を付与する不純物元素を低濃度に添加する。ドーピング処理はイオンドープ法、若しくはイオン注入法で行えば良い。イオンドープ法の条件はドーズ量を1×1013〜5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を40〜80kVとして行う。本実施例ではドーズ量を1.5×1013atoms/cm2とし、加速電圧を60kVとして行う。n型を付与する不純物元素として15族に属する元素、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いるが、ここではリン(P)を用いる。この場合、導電層628〜633がn型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、自己整合的に不純物領域623〜627が形成される。不純物領域623〜627には1×1018〜1×1020 atoms /cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加する。
【0131】
レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスク634a〜634cを形成して第1のドーピング処理よりも高い加速電圧で第2のドーピング処理を行う。イオンドープ法の条件はドーズ量を1×1013〜1×1015atoms/cm2とし、加速電圧を60〜120kVとして行う。ドーピング処理は第2の導電層628b〜632bを不純物元素に対するマスクとして用い、第1の導電層のテーパー部の下方の島状の半導体膜に不純物元素が添加されるようにドーピングする。続いて、第2のドーピング処理より加速電圧を下げて第3のドーピング処理を行って図27(A)の状態を得る。イオンドープ法の条件はドーズ量を1×1015〜1×1017 atoms/cm2とし、加速電圧を50〜100kVとして行う。第2のドーピング処理および第3のドーピング処理により、第1の導電層と重なる低濃度不純物領域636、642、648には1×1018〜5×1019 atoms /cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加され、高濃度不純物領域635、641、644、647には1×1019〜5×1021 atoms /cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加される。
【0132】
もちろん、適当な加速電圧にすることで、第2のドーピング処理および第3のドーピング処理は1回のドーピング処理で、低濃度不純物領域および高濃度不純物領域を形成することも可能である。
【0133】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスク650a〜650cを形成して第4のドーピング処理を行う。この第4のドーピング処理により、pチャネル型TFTの活性層となる島状の半導体膜に前記一導電型とは逆の導電型を付与する不純物元素が添加された不純物領域653、654、659、660を形成する。第2の導電層628a〜632aを不純物元素に対するマスクとして用い、p型を付与する不純物元素を添加して自己整合的に不純物領域を形成する。本実施例では、不純物領域653、654、659、660はジボラン(B2H6)を用いたイオンドープ法で形成する。(図27(B))この第4のドーピング処理の際には、nチャネル型TFTを形成する島状の半導体膜はレジストからなるマスク650a〜650cで覆われている。第1乃至3のドーピング処理によって、不純物領域653と654、659と660にはそれぞれ異なる濃度でリンが添加されているが、そのいずれの領域においてもp型を付与する不純物元素の濃度を1×1019〜5×1021atoms/cm3となるようにドーピング処理することにより、pチャネル型TFTのソース領域およびドレイン領域として機能するために何ら問題は生じない。
【0134】
以上までの工程で、それぞれの島状の半導体膜に不純物領域が形成される。
【0135】
次いで、レジストからなるマスク650a〜650cを除去して第1の層間絶縁膜661を形成する。この第1の層間絶縁膜661としては、プラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを100〜200nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。本実施例では、プラズマCVD法により膜厚150nmの酸化窒化珪素膜を形成した。勿論、第1の層間絶縁膜661は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
【0136】
次いで、図27(C)に示すように、活性化処理としてレーザー照射方法を用いる。レーザーアニール法を用いる場合、結晶化の際に用いたレーザーを使用することが可能である。活性化の場合は、移動速度は結晶化と同じにし、0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.01〜10MW/cm2)のエネルギー密度が必要となる。また結晶化の際には連続発振のレーザーを用い、活性化の際にはパルス発振のレーザーを用いるようにしても良い。
【0137】
また、第1の層間絶縁膜を形成する前に活性化処理を行っても良い。
【0138】
そして、加熱処理(300〜550℃で1〜12時間の熱処理)を行うと水素化を行うことができる。この工程は第1の層間絶縁膜661に含まれる水素により島状の半導体膜のダングリングボンドを終端する工程である。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)や、3〜100%の水素を含む雰囲気中で300〜650℃で1〜12時間の加熱処理を行っても良い。
【0139】
次いで、第1の層間絶縁膜661上に無機絶縁膜材料または有機絶縁物材料から成る第2の層間絶縁膜662を形成する。本実施例では、膜厚1.6μmのアクリル樹脂膜を形成したが、粘度が10〜1000cp、好ましくは40〜200cpのものを用いても良い。また表面に凸凹が形成されるものを用いても良い。
【0140】
本実施例では、鏡面反射を防ぐため、表面に凸凹が形成される第2の層間絶縁膜を形成することによって画素電極の表面に凸凹を形成した。また、画素電極の表面に凹凸を持たせて光散乱性を図るため、画素電極の下方の領域に凸部を形成してもよい。その場合、凸部の形成は、TFTの形成と同じフォトマスクで行うことができるため、工程数の増加なく形成することができる。なお、この凸部は配線及びTFT部以外の画素部領域の基板上に適宜設ければよい。こうして、凸部を覆う絶縁膜の表面に形成された凸凹に沿って画素電極の表面に凸凹が形成される。
【0141】
また、第2の層間絶縁膜662として表面が平坦化する膜を用いてもよい。その場合は、画素電極を形成した後、公知のサンドブラスト法やエッチング法等の工程を追加して表面を凹凸化させて、鏡面反射を防ぎ、反射光を散乱させることによって白色度を増加させることが好ましい。
【0142】
次に、第2の層間絶縁膜662を形成した後、第2の層間絶縁膜662に接するように、第3の層間絶縁膜672を形成する。
【0143】
そして、駆動回路686において、各不純物領域とそれぞれ電気的に接続する配線663〜667を形成する。なお、これらの配線は、膜厚50nmのTi膜と、膜厚500nmの合金膜(AlとTiとの合金膜)との積層膜をパターニングして形成する。もちろん、二層構造に限らず、単層構造でもよいし、三層以上の積層構造にしてもよい。また、配線の材料としては、AlとTiに限らない。例えば、TaN膜上にAlやCuを形成し、さらにTi膜を形成した積層膜をパターニングして配線を形成してもよい。(図28)
【0144】
また、画素部687においては、画素電極670、ゲート配線669、接続電極668を形成する。この接続電極668によりソース配線(633aと633bの積層)は、画素TFT684と電気的な接続が形成される。また、ゲート配線669は、画素TFT684のゲート電極と電気的な接続が形成される。また、画素電極670は、画素TFT684のドレイン領域と電気的な接続が形成され、さらに保持容量を形成する一方の電極として機能する島状の半導体膜606と電気的な接続が形成される。また、画素電極670としては、AlまたはAgを主成分とする膜、またはそれらの積層膜等の反射性の優れた材料を用いることが望ましい。
【0145】
以上の様にして、nチャネル型TFT681とpチャネル型TFT682からなるCMOS回路、及びnチャネル型TFT683を有する駆動回路686と、画素TFT684、保持容量685とを有する画素部687を同一基板上に形成することができる。こうして、アクティブマトリクス基板が完成する。
【0146】
駆動回路686のnチャネル型TFT681はチャネル形成領域637、ゲート電極の一部を構成する第1の導電層628aと重なる低濃度不純物領域636(GOLD領域)、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域652を有している。このnチャネル型TFT681と電極666で接続してCMOS回路を形成するpチャネル型TFT682にはチャネル形成領域640、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域653と、p型を付与する不純物元素が導入された不純物領域654を有している。また、nチャネル型TFT683にはチャネル形成領域643、ゲート電極の一部を構成する第1の導電層630aと重なる低濃度不純物領域642(GOLD領域)、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域656を有している。
【0147】
画素部の画素TFT684にはチャネル形成領域646、ゲート電極の外側に形成される低濃度不純物領域645(LDD領域)、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域658と、n型を付与する不純物元素およびp型を付与する不純物元素が導入された不純物領域657を有している。また、保持容量685の一方の電極として機能する島状の半導体膜には、n型を付与する不純物元素およびp型を付与する不純物元素が添加されている。保持容量685は、絶縁膜616を誘電体として、電極(632aと632bの積層)と、島状の半導体膜とで形成している。
【0148】
本実施例の画素構造は、ブラックマトリクスを用いることなく、画素電極間の隙間が遮光されるように、画素電極の端部をソース配線と重なるように配置形成する。
【0149】
本実施例は、実施例1〜実施例8と組み合わせて実施することが可能である。
【0150】
(実施例8)
本実施例では、実施例7で作製したアクティブマトリクス基板から、反射型液晶表示装置を作製する工程を以下に説明する。説明には図29を用いる。
【0151】
まず、実施例7に従い、図28の状態のアクティブマトリクス基板を得た後、図28のアクティブマトリクス基板上、少なくとも画素電極670上に配向膜867を形成しラビング処理を行う。なお、本実施例では配向膜867を形成する前に、アクリル樹脂膜等の有機樹脂膜をパターニングすることによって基板間隔を保持するための柱状のスペーサ872を所望の位置に形成した。また、柱状のスペーサに代えて、球状のスペーサを基板全面に散布してもよい。
【0152】
次いで、対向基板869を用意する。次いで、対向基板869上に着色層870、871、平坦化膜873を形成する。赤色の着色層870と青色の着色層871とを重ねて、遮光部を形成する。また、赤色の着色層と緑色の着色層とを一部重ねて、遮光部を形成してもよい。
【0153】
本実施例では、実施例7に示す基板を用いている。従って、少なくともゲート配線669と画素電極670の間隙と、ゲート配線669と接続電極668の間隙と、接続電極668と画素電極670の間隙を遮光する必要がある。本実施例では、それらの遮光すべき位置に着色層の積層からなる遮光部が重なるように各着色層を配置して、対向基板を貼り合わせた。
【0154】
このように、ブラックマトリクス等の遮光層を形成することなく、各画素間の隙間を着色層の積層からなる遮光部で遮光することによって工程数の低減を可能とした。
【0155】
次いで、平坦化膜873上に透明導電膜からなる対向電極876を少なくとも画素部に形成し、対向基板の全面に配向膜874を形成し、ラビング処理を施した。
【0156】
そして、画素部と駆動回路が形成されたアクティブマトリクス基板と対向基板とをシール材868で貼り合わせる。シール材868にはフィラーが混入されていて、このフィラーと柱状スペーサによって均一な間隔を持って2枚の基板が貼り合わせられる。その後、両基板の間に液晶材料875を注入し、封止剤(図示せず)によって完全に封止する。液晶材料875には公知の液晶材料を用いれば良い。このようにして図29に示す反射型液晶表示装置が完成する。そして、必要があれば、アクティブマトリクス基板または対向基板を所望の形状に分断する。さらに、対向基板のみに偏光板(図示しない)を貼りつけた。そして、公知の技術を用いてFPCを貼りつけた。
【0157】
以上のようにして作製される液晶表示装置はエネルギー分布が周期的または一様なレーザー光が照射され、大粒径の結晶粒が形成された半導体膜を用いて作製されたTFTを有しており、前記液晶表示装置の動作特性や信頼性が十分なものとなり得る。そして、このような液晶表示装置は各種電子機器の表示部として用いることができる。
【0158】
なお、本実施例は実施例1〜実施例7と組み合わせて実施することが可能である。
【0159】
(実施例9)
本実施例では、実施例7で示したアクティブマトリクス基板を作製するときのTFTの作製方法を用いて、発光装置を作製する例を以下に説明する。本明細書において、発光装置とは、基板上に形成された発光素子を該基板とカバー材の間に封入した表示用パネルおよび該表示用パネルにTFT等を実装した表示用モジュールを総称したものである。なお、発光素子は、電場を加えることで発生するルミネッセンス(Electro Luminescence)が得られる有機化合物を含む層(発光層)と陽極層と、陰極層とを有する。また、有機化合物におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)があり、これらのうちどちらか、あるいは両方の発光を含む。
【0160】
なお、本明細書中では、発光素子において陽極と陰極の間に形成された全ての層を有機発光層と定義する。有機発光層には具体的に、発光層、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等が含まれる。基本的に発光素子は、陽極層、発光層、陰極層が順に積層された構造を有しており、この構造に加えて、陽極層、正孔注入層、発光層、陰極層や、陽極層、正孔注入層、発光層、電子輸送層、陰極層等の順に積層した構造を有していることもある。
【0161】
なお本実施例で用いられる発光素子は、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層または電子輸送層等が、無機化合物単独で、または有機化合物に無機化合物が混合されている材料で形成されている形態をも取り得る。また、これらの層どうしが互いに一部混合していても良い。
【0162】
図30(A)は、第3の層間絶縁膜750まで形成した時点での、本実施例の発光装置の断面図である。図30(A)において、基板700上に設けられたスイッチングTFT733、電流制御TFT734は実施例7の作製方法を用いて形成される。本実施例ではスイッチングTFT733は、チャネル形成領域が二つ形成されるダブルゲート構造としているが、チャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造もしくは三つ以上形成される構造であっても良い。また、本実施例では電流制御TFT734は、チャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造としているが、チャネル形成領域が二つ以上形成される構造であっても良い。
【0163】
基板700上に設けられた駆動回路が有するnチャネル型TFT731、pチャネル型TFT732は実施例7の作製方法を用いて形成される。なお、本実施例ではシングルゲート構造としているが、ダブルゲート構造もしくはトリプルゲート構造であっても良い。
【0164】
第3の層間絶縁膜750は、発光装置の場合、第2の層間絶縁膜751に含まれる水分が有機発光層に入るのを防ぐのに効果的である。第2の層間絶縁膜751が有機樹脂材料を有している場合、有機樹脂材料は水分を多く含むため、第3の層間絶縁膜750を設けることは特に有効である。
【0165】
実施例7の第3の層間絶縁膜を作製する工程まで終了したら、本実施例では第3の層間絶縁膜750上に画素電極711を形成する。
【0166】
なお、画素電極711は、透明導電膜からなる画素電極(発光素子の陽極)である。透明導電膜としては、酸化インジウムと酸化スズとの化合物、酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物、酸化亜鉛、酸化スズまたは酸化インジウムを用いることができる。また、前記透明導電膜にガリウムを添加したものを用いても良い。画素電極711は、配線を形成する前に平坦な第3の層間絶縁膜750上に形成する。本実施例においては、樹脂からなる第2の層間絶縁膜751を用いてTFTによる段差を平坦化することは非常に重要である。後に形成される発光層は非常に薄いため、段差が存在することによって発光不良を起こす場合がある。従って、発光層をできるだけ平坦面に形成しうるように画素電極を形成する前に平坦化しておくことが望ましい。
【0167】
次に、画素電極711形成後、ゲート絶縁膜752、第1の層間絶縁膜753、第2の層間絶縁膜751、第3の層間絶縁膜750にコンタクトホールを形成する。そして画素電極711を覆って第3の層間絶縁膜750上に導電膜を形成し、レジスト760を形成する。そしてレジスト760を用いて該導電膜をエッチングすることで、各TFTの不純物領域とそれぞれ電気的に接続する配線701〜707を形成する。なお、これらの配線は、膜厚50nmのTi膜と、膜厚500nmの合金膜(AlとTiとの合金膜)との積層膜をパターニングして形成する。もちろん、二層構造に限らず、単層構造でもよいし、三層以上の積層構造にしてもよい。また、配線の材料としては、AlとTiに限らない。例えば、TaN膜上にAlやCuを形成し、さらにTi膜を形成した積層膜をパターニングして配線を形成してもよい(図30(B))。
【0168】
また、配線707は電流制御TFT734のソース配線(電流供給線に相当する)であり、706は電流制御TFT734の画素電極711上に重ねることで画素電極711と電気的に接続する電極である。
【0169】
配線701〜707を形成後、図30(B)に示すようにレジスト760を除去せず、そのままパッシベーション膜712を形成する。パッシベーション膜712は、配線701〜707、第3の層間絶縁膜750及びレジスト760を覆うように形成する。パッシベーション膜712は、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウムもしくは窒化酸化アルミニウムを含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層で用いる。そしてパッシベーション膜712をエッチングして、画素電極711の一部を露出させる。
【0170】
画素電極711の上には発光層713が形成される。なお、図30(B)では一画素しか図示していないが、本実施例ではR(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層を作り分けている。また、本実施例では蒸着法により低分子系有機発光材料を形成している。具体的には、正孔注入層として20nm厚の銅フタロシアニン(CuPc)膜を設け、その上に発光層として70nm厚のトリス−8−キノリノラトアルミニウム錯体(Alq3)膜を設けた積層構造としている。Alq3にキナクリドン、ペリレンもしくはDCM1といった蛍光色素を添加することで発光色を制御することができる。
【0171】
但し、以上の例は発光層として用いることのできる有機発光材料の一例であって、これに限定する必要はまったくない。発光層、電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせて発光層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれば良い。例えば、本実施例では低分子系有機発光材料を発光層として用いる例を示したが、中分子系有機発光材料や高分子系有機発光材料を用いても良い。なお、本明細書中において、昇華性や溶解性を有さない有機化合物の凝集体(好ましくは分子数が10以下)又は連鎖する分子の長さが5μm以下(好ましくは50μm以下)の有機発光材料を中分子系有機発光材料とする。また、高分子系有機発光材料を用いる例として、正孔注入層として20nmのポリチオフェン(PEDOT)膜をスピン塗布法により設け、その上に発光層として100nm程度のパラフェニレンビニレン(PPV)膜を設けた積層構造としても良い。なお、PPVのπ共役系高分子を用いると、赤色から青色まで発光波長を選択できる。また、電荷輸送層や電荷注入層として炭化珪素等の無機材料を用いることも可能である。これらの有機発光材料や無機材料は公知の材料を用いることができる。
【0172】
次に、発光層713の上には導電膜からなる陰極714が設けられる。本実施例の場合、導電膜としてアルミニウムとリチウムとの合金膜を用いる。勿論、公知のMgAg膜(マグネシウムと銀との合金膜)を用いても良い。陰極材料としては、周期表の1族もしくは2族に属する元素からなる導電膜もしくはそれらの元素を添加した導電膜を用いれば良い。
【0173】
この陰極714まで形成された時点で発光素子715が完成する。なお、ここでいう発光素子715は、画素電極(陽極)711、発光層713及び陰極714で形成されたダイオードを指す。
【0174】
発光素子715を完全に覆うようにして保護膜754を設けても良い。保護膜754としては、炭素膜、窒化珪素膜もしくは窒化酸化珪素膜を含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層で用いる。
【0175】
この際、カバレッジの良い膜を保護膜754として用いることが好ましく、炭素膜、特にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を用いることは有効である。DLC膜は室温から100℃以下の温度範囲で成膜可能であるため、耐熱性の低い発光層713の上方にも容易に成膜することができる。また、DLC膜は酸素に対するブロッキング効果が高く、発光層713の酸化を抑制することが可能である。そのため、この後に続く封止工程を行う間に発光層713が酸化するといった問題を防止できる。
【0176】
本実施例では、発光層と713は全てバリア性の高い炭素膜、窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウムもしくは窒化酸化アルミニウム等の無機絶縁膜で覆われているため、水分や酸素等が発光層に入って発光層が劣化するのをより効果的に防ぐことができる。
【0177】
特に第3絶縁膜750、パッシベーション膜712、保護膜754を、シリコンをターゲットとしたスパッタリング法により作製される窒化珪素膜を用いることで、より発光層への不純物の侵入を防ぐことができる。成膜条件は適宜選択すれば良いが、特に好ましくはスパッタガスには窒素(N2)又は窒素とアルゴンの混合ガスを用い、高周波電力を印加してスパッタリングを行う。基板温度は室温の状態とし、加熱手段を用いなくても良い。既に有機絶縁膜や有機化合物層を形成した後は、基板を加熱せずに成膜することが望ましい。但し、吸着又は吸蔵している水分を十分除去するために、真空中で数分〜数時間、50〜100℃程度で加熱して脱水処理することは好ましい。
【0178】
室温でシリコンをターゲットとし、13.56MHzの高周波電力を印加し、窒素ガスのみ用いたスパッタリング法で形成された窒化珪素膜は、その赤外吸収スペクトルにおいてN−H結合とSi−H結合の吸収ピークが観測されず、またSi−Oの吸収ピークも観測されていないことが特徴的であり、膜中に酸素濃度及び水素濃度は1原子%以下であることがわかっている。このことからも、より効果的に酸素や水分などの不純物の侵入を防ぐことができるのがわかる。
【0179】
さらに、発光素子715を覆って封止材717を設け、カバー材718を貼り合わせる。封止材717としては紫外線硬化樹脂を用いれば良く、内部に吸湿効果を有する物質もしくは酸化防止効果を有する物質を設けることは有効である。また、本実施例においてカバー材718はガラス基板や石英基板やプラスチック基板(プラスチックフィルムも含む)の両面に炭素膜(好ましくはダイヤモンドライクカーボン膜)を形成したものを用いる。
【0180】
こうして図30(B)に示すような構造の発光装置が完成する。なお、パッシベーション膜712を形成した後、保護膜を形成するまでの工程をマルチチャンバー方式(またはインライン方式)の成膜装置を用いて、大気解放せずに連続的に処理することは有効である。また、さらに発展させてカバー材718を貼り合わせる工程までを大気解放せずに連続的に処理することも可能である。
【0181】
こうして、基板700上にnチャネル型TFT731、pチャネル型TFT732、スイッチングTFT(nチャネル型TFT)733および電流制御TFT(nチャネル型TFT)734が形成される。
【0182】
さらに、図30を用いて説明したように、ゲート電極に絶縁膜を介して重なる不純物領域を設けることによりホットキャリア効果に起因する劣化に強いnチャネル型TFTを形成することができる。そのため、信頼性の高い発光装置を実現できる。
【0183】
また、本実施例では画素部と駆動回路の構成のみ示しているが、本実施例の製造工程に従えば、その他にも信号分割回路、D/Aコンバータ、オペアンプ、γ補正回路などの論理回路を同一の絶縁体上に形成可能であり、さらにはメモリやマイクロプロセッサをも形成しうる。
【0184】
以上のようにして作製される発光装置はエネルギー分布が周期的または一様なレーザー光が照射され、大粒径の結晶粒が形成された半導体膜を用いて作製されたTFTを有しており、前記発光装置の動作特性や信頼性が十分なものとなり得る。そして、このような発光装置は各種電子機器の表示部として用いることができる。
【0185】
なお、本実施例は実施例1〜実施例7のいずれか一と組み合わせて実施することが可能である。
【0186】
(実施例10)
本実施例では、レーザー照射により結晶化された半導体膜のSEM写真について説明する。
【0187】
ガラス基板上に下地膜として、プラズマCVD法により酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)400nmを形成した。続いて、前記下地膜上に半導体膜として、プラズマCVD法により非晶質珪素膜150nmを形成した。そして、500℃で3時間の熱処理を行って、半導体膜が含有する水素を放出させた後、レーザアニール法により半導体膜の結晶化を行った。レーザアニール法の条件は、レーザ光としてYVO4レーザの第2高調波を用い、レーザ光の入射角θを18°として矩形状ビームを形成し、ビームスポットの中心軸が走査方向に対して直角になるように基板を50cm/secの速度で移動させながら照射して、半導体膜の結晶化を行った。
【0188】
このようにして得られた結晶性半導体膜にセコエッチングを行って、SEMにより1万倍にて表面を観察した結果を図20に示す。なお、セコエッチングにおけるセコ液はHF:H2O=2:1に添加剤としてK2Cr2O7を用いて作製されるものである。図20は、図中の矢印で示す方向にレーザ光を相対的に走査させて得られたものであり、走査方向に対して大粒径の結晶粒が形成されている様子がわかる。
【0189】
このように、レーザー光を用いて結晶化を行った半導体膜には大粒径の結晶粒が形成されているため、前記半導体膜を用いてTFTを作製すると、そのチャネル形成領域に含まれうる結晶粒界の本数を少なくすることができる。また、個々の結晶粒は実質的に単結晶と見なせる結晶性を有することから、単結晶半導体を用いたトランジスタと同等もしくはそれ以上の高いモビリティ(電界効果移動度)を得ることも可能である。
【0190】
さらに、形成された結晶粒が一方向に揃っているため、キャリアが結晶粒界を横切る回数を極端に減らすことができる。そのため、オン電流値(TFTがオン状態にある時に流れるドレイン電流値)、オフ電流値(TFTがオフ状態にある時に流れるドレイン電流値)、しきい値電圧、S値及び電界効果移動度のバラツキを低減することも可能となり、電気的特性は著しく向上する。
【0191】
(実施例11)
本実施例では、特開平7−183540号公報に記載された方法を利用し、レーザー照射により結晶化された半導体膜のSEM写真について説明する。
【0192】
実施例10にしたがって、非晶質珪素膜を形成した後、特開平7−183540号公報に記載された方法を利用し、前記半導体膜上にスピンコート法にて酢酸ニッケル水溶液(重量換算濃度5ppm、体積10ml)を塗布し、500℃の窒素雰囲気で1時間、550℃の窒素雰囲気で12時間の熱処理を行った。続いて、レーザアニール法により、半導体膜の結晶性の向上を行う。レーザアニール法の条件は、レーザ光としてYVO4レーザの第2高調波を用い、レーザ光の入射角θを18°として矩形状ビームを形成し、ビームスポットの中心軸が走査方向に対して直角になるように基板を50cm/sの速度で移動させながら照射して、半導体膜の結晶性の向上を行った。
【0193】
このようにして得られた結晶性半導体膜にセコエッチングを行って、SEMにより1万倍にて表面を観察した。その結果を図21に示す。図21は、図中の矢印で示す方向にレーザ光を相対的に走査させて得られたものであり、走査方向に対して大粒径の結晶粒が形成されている様子がわかる。また、図20で示す結晶粒よりも図21で示す結晶粒の方が、レーザ光の相対的な走査方向に対して交差する方向に形成される粒界が少ないことが特徴的である。
【0194】
このように、レーザー光を用いて結晶化を行った半導体膜には大粒径の結晶粒が形成されているため、前記半導体膜を用いてTFTを作製すると、そのチャネル形成領域に含まれうる結晶粒界の本数を少なくすることができる。また、個々の結晶粒は実質的に単結晶と見なせる結晶性を有することから、単結晶半導体を用いたトランジスタと同等もしくはそれ以上の高いモビリティ(電界効果移動度)を得ることも可能である。
【0195】
さらに、形成された結晶粒が一方向に揃っているため、キャリアが結晶粒界を横切る回数を極端に減らすことができる。そのため、オン電流値、オフ電流値、しきい値電圧、S値及び電界効果移動度のバラツキを低減することも可能となり、電気的特性は著しく向上する。
【0196】
(実施例12)
本実施例では、実施例10に従って結晶化された半導体膜を用いてTFTを作製した例について説明する。
【0197】
本実施例では、ガラス基板を用い、ガラス基板上に下地膜として、プラズマCVD法により酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=27%、N=24%、H=17%)50nm、酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)100nmを積層した。次いで、下地膜上にプラズマCVD法により非晶質珪素膜150nmを形成した。そして、500℃で3時間の熱処理を行って、半導体膜が含有する水素を放出させ、YVO4レーザの第2高調波を用いて、実施例10に記載の条件に従って結晶化させた。
【0198】
そして、第1のドーピング処理を行う。これはしきい値を制御するためのチャネルドープである。材料ガスとしてB2H6を用い、ガス流量30sccm、電流密度0.05μA、加速電圧60kV、ドーズ量1×1014 atoms/cm2として行った。続いて、パターニングを行って、結晶化された半導体膜を所望の形状にエッチングした後、エッチングされた半導体膜を覆うゲート絶縁膜としてプラズマCVD法により膜厚115nmの酸化窒化珪素膜を形成する。次いで、ゲート絶縁膜上に導電膜として膜厚30nmのTaN膜と、膜厚370nmのW膜を積層形成する。
【0199】
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストからなるマスク(図示せず)を形成して、W膜、TaN膜、ゲート絶縁膜をエッチングした後、第2のドーピング処理を行い、半導体膜にn型を付与する不純物元素を導入する。この場合、W膜、TaN膜をエッチングすることで形成された導電層が、n型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、自己整合的にチャネル形成領域と、該チャネル形成領域を挟んでいる不純物領域とが形成される。本実施例では第2のド−ピング処理は、半導体膜の膜厚が150nmと厚いため2条件に分けて行った。本実施例では、材料ガスとしてフォスフィン(PH3)を用い、ドーズ量を2×1013atoms/cm2とし、加速電圧を90kVとして行った後、ドーズ量を5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を10kVとして行った。
【0200】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスクをnチャネル型TFTの半導体膜を覆うように形成して、第3のドーピング処理を行う。この第3のドーピング処理により、pチャネル型TFTの活性層となる半導体膜に前記一導電型とは逆の導電型を付与する不純物元素が添加された不純物領域を形成する。導電層を不純物元素に対するマスクとして用い、p型を付与する不純物元素を添加して自己整合的に不純物領域を形成する。本実施例では第3のド−ピング処理においても、半導体膜の膜厚が150nmと厚いため2条件に分けて行った。本実施例では、材料ガスとしてジボラン(B2H6)を用い、ドーズ量を2×1013atoms/cm2とし、加速電圧を90kVとして行った後、ドーズ量を1×1015atoms/cm2とし、加速電圧を10kVとして行った。
【0201】
以上までの工程で、それぞれの島状の半導体膜にチャネル形成領域と、該チャネル形成領域を挟む不純物領域が形成される。
【0202】
次いで、レジストからなるマスクを除去して、プラズマCVD法により第1の層間絶縁膜として膜厚50nmの酸化窒化珪素膜(組成比Si=32.8%、O=63.7%、H=3.5%)を形成した。次いで、熱処理により、島状の半導体膜の結晶性の回復、それぞれの島状の半導体膜に添加された不純物元素の活性化を行う。本実施例ではファーネスアニール炉を用いた熱アニール法により、窒素雰囲気中にて550度4時間の熱処理を行った。
【0203】
次いで、第1の層間絶縁膜上に無機絶縁膜材料または有機絶縁物材料から成る第2の層間絶縁膜を形成する。本実施例では、CVD法により膜厚50nmの窒化珪素膜を形成した後、膜厚400nmの酸化珪素膜を形成した。そして、熱処理を行うと水素化処理を行うことができる。本実施例では、ファーネスアニール炉を用い、410度で1時間、窒素雰囲気中にて熱処理を行った。
【0204】
続いて、各不純物領域とそれぞれ電気的に接続する配線を形成する。本実施例では、膜厚50nmのTi膜と、膜厚500nmのAl―Si膜と、膜厚50nmのTi膜との積層膜をパターニングして形成した。もちろん、二層構造に限らず、単層構造でもよいし、三層以上の積層構造にしてもよい。また、配線の材料としては、AlとTiに限らない。例えば、TaN膜上にAlやCuを形成し、さらにTi膜を形成した積層膜をパターニングして配線を形成してもよい。
【0205】
以上の様にして形成されたnチャネル型TFTとpチャネル型TFTの電気的特性を測定した。nチャネル型TFTの電気的特性を図22(A)に、pチャネル型TFTの電気的特性を図22(B)に示す。電気的特性の測定条件は、測定点をそれぞれ2点とし、ゲート電圧Vg=―16〜16Vの範囲で、ドレイン電圧Vd=1V、5Vとした。また、図22において、ドレイン電流(ID)は実線で、移動度(μFE)は点線で示している。
【0206】
図22より、実施例10で形成された結晶性半導体膜を用いたTFTの電気的特性は著しく向上していることがわかる。これは、半導体膜に大粒径の結晶粒が形成されているため、前記半導体膜を用いてTFTを作製すると、そのチャネル形成領域に含まれうる結晶粒界の本数を少なくすることができるためである。さらに、形成された結晶粒は一方向に揃っているため、キャリアが結晶粒界を横切る回数を極端に減らすことができる。そのため、特に移動度が、nチャネル型TFTにおいて524cm2/Vs、pチャネル型TFTにおいて205cm2/Vsとなることがわかる。このようなTFTを用いて半導体装置を作製すれば、その動作特性および信頼性をも向上することが可能となる。
【0207】
(実施例13)
本実施例では、実施例11に従って結晶化された半導体膜を用いてTFTを作製した例について説明する。
【0208】
実施例11に従って、半導体膜として非晶質珪素膜まで形成する。そして、特開平7−183540号公報に記載された方法を利用し、前記半導体膜上にスピンコート法にて酢酸ニッケル水溶液(重量換算濃度5ppm、体積10ml)を塗布して金属含有層を形成する。そして、500℃の窒素雰囲気で1時間、550℃の窒素雰囲気で12時間の熱処理を行った。続いて、レーザアニール法により、半導体膜の結晶性の向上を行う。レーザアニール法の条件は、レーザ光としてYVO4レーザの第2高調波を用い、実施例11に記載した条件に従って行った。
【0209】
これ以降の工程は実施例12にしたがって行い、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTが形成された。これらの電気的特性を測定し、レーザアニールにおいて、nチャネル型TFTの電気的特性を図23(A)に、pチャネル型TFTの電気的特性を図23(B)に示す。電気的特性の測定条件は、測定点をそれぞれ2点とし、ゲート電圧Vg=―16〜16Vの範囲で、ドレイン電圧Vd=1、5Vとした。また、図23において、ドレイン電流(ID)は実線で、移動度(μFE)は点線で示している。
【0210】
図23より、実施例11で形成された結晶性半導体膜を用いたTFTの電気的特性は著しく向上していることがわかる。これは、本発明を用いて結晶化を行った半導体膜には大粒径の結晶粒が形成されているため、前記半導体膜を用いてTFTを作製すると、そのチャネル形成領域に含まれうる結晶粒界の本数を少なくすることができるためである。さらに、形成された結晶粒は一方向に揃っているおり、かつ、レーザ光の相対的な走査方向に対して交差する方向に形成される粒界が少ないため、キャリアが結晶粒界を横切る回数を極端に減らすことができる。そのため、特に移動度がnチャネル型TFTにおいて595cm2/Vs、pチャネル型TFTにおいて199cm2/Vsと非常に優れていることがわかる。そして、このようなTFTを用いて半導体装置を作製すれば、その動作特性および信頼性をも向上することが可能となる。
【0211】
(実施例14)
本発明のレーザー装置によって形成された半導体装置を用いた電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それら電子機器の具体例を図24に示す。
【0212】
図24(A)は表示装置であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明の半導体装置は表示部2003に用いることができる。半導体装置は自発光型であるためバックライトが必要なく、液晶ディスプレイよりも薄い表示部とすることができる。なお、表示装置は、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0213】
図24(B)はデジタルスチルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。本発明の半導体装置は表示部2102及びその他回路に用いることができる。
【0214】
図24(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明の半導体装置は表示部2203及びその他回路に用いることができる。
【0215】
図24(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明の半導体装置は表示部2302及びその他回路に用いることができる。
【0216】
図24(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示するが、本発明の半導体装置はこれら表示部A、B2403、2404及びその他回路に用いることができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
【0217】
図24(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。本発明の半導体装置は表示部2502及びその他回路に用いることができる。
【0218】
図24(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。本発明の半導体装置は表示部2602及びその他回路に用いることができる。
【0219】
ここで図24(H)は携帯電話であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。本発明の半導体装置は表示部2703及びその他回路に用いることができる。なお、表示部2703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0220】
なお、上述した電子機器の他に、フロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる。
【0221】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。また、本実施例の電子機器は実施例1〜13に示したいずれの構成の半導体装置を用いても良い。
【0222】
(実施例15)
レーザー光を照射する被処理物を載置するステージは、X方向またはY方向に設けられたガイドレールに沿って移動させるのが一般的である。そしてガイドレールと、ステージを固定する部分(スライダ)との間には、ボール(ベアリング)と呼ばれる曲面を有した物体が挟まれており、摩擦による負荷を低減してステージの移動をスムーズに行えるような機構が設けられている。
【0223】
このボールは度重なるステージの移動により磨耗するため、定期的なメンテナンスによる交換が必要であり、またよりスムーズにステージを移動させるためには、ステージの移動の際に生じる摩擦をより小さくする必要があった。
【0224】
図34(A)に本実施例の、ステージを移動させるための手段(位置制御手段)を示す。7000はガイドレールであり、ステージを一定の方向に移動させるために、一方向に沿って凹凸が形成されている。また、7001はスライダと呼ばれるステージを固定する部分であって、ガイドレール7000に沿って移動させることができる。またロッド7002は、スライダ7001に設けられた孔を貫いている軸であり、ガイドレールに沿う方向に設けられている。ロッド7002は、エンドプレート7004によってガイドレール7000に固定されている。
【0225】
スライダ7001にはケーブル7003を介して、電源電圧と空気が送られている。図34(B)にスライダ7001の拡大図を示す。スライダ7001は、スライダ7001とガイドレール7000とが引き合うような磁場を、電源電圧により生じさせる。また、スライダ7001は、スライダ7001に設けられた孔においてロッド7002と接触しないよう離れる方向の磁場を、電源電圧により生じさせる。そして一方で、送られてきた空気を、空気孔7005からスライダ7001とガイドレール7000の間に放出する。スライダ7001とガイドレール7000は、この磁場により引き合う方向に力が働き、空気の放出により離れる方向に力が働くため、一定の間隔が保たれる。
【0226】
なお、ケーブルを介して与えられた電源電圧により磁場を生じさせるのではなく、ガイドレール7000とスライダ7001のいずれか一方を磁性体にするようにしても良い。またガイドレール7000とスライダ7001の両方を磁性体としても良い。
【0227】
また、ケーブルを介して与えられた電源電圧により磁場を生じさせるのではなく、ロッド7002とスライダ7001のいずれか一方を磁性体、もう一方を磁性体により引きつけられる材料で形成するようにして、磁場を生じさせても良い。またロッド7002とスライダ7001の両方を磁性体としても良い。
【0228】
本実施例で示したようなステージの移動手段を用いることで、非接触にて、ガイドレールに沿ったステージの移動が可能になり、ボールの磨耗による定期的なボールの交換を不要にして、メンテナンスを容易にすることができる。また、非接触であるため摩擦が殆ど生じず、ボールを用いた場合に比べてステージの移動をよりスムーズに行うことができる。
【0229】
図34(C)に、スライダ7001上に固定されたステージ7010の上に、レーザー光を照射する被処理物7011を載置している様子を示す。本実施例のステージの移動手段により、ステージの移動がよりスムーズになるので、レーザー光の照射をより均一に行なうことが可能になる。
【0230】
本実施例は、実施例1〜14と組み合わせて実施することが可能である。
【0231】
(実施例16)
本実施例では、アクティブ除振台を用いた場合について説明する。
【0232】
図35(A)に、本発明のレーザー装置をアクティブ除振台上に載置した状態を示す。アクティブ除振台は、レーザー装置を実際に載置する定盤7100と、複数のアイソレータ7102と、足場となる架台7101と、コントローラ7103とを有している。
【0233】
定盤7100は、アイソレータ7102を間に挟んで架台7101上に設けられている。アイソレータ7102は、振動を検知して除振するためのジンバル機構が設けられたジンバルピストン(空気ばね)を有している。そしてコントローラ7103は、ジンバルピストンの動作を制御している。
【0234】
ちなみに、図35(A)において定盤7100上に載置されているレーザー装置は、4つのレーザー発振装置7104を有している。また7105は光学系であり、レーザー発振装置7104から出力された光路を変更したり、そのビームスポットの形状を加工したりして、レーザー光を集光することができる。さらに、本発明の光学系7105で重要なのは、複数のレーザー発振装置7104から出力されたレーザー光のビームスポットを互いに一部重ね合わせることで、合成できることである。
【0235】
合成されたビームスポットは、被処理物である基板7106に照射される。基板7106はステージ7107上に載置されている。図35(A)では、位置制御手段7108、7109が、被処理物におけるビームスポットの位置を制御する手段に相当し、ステージ7107の位置が、位置制御手段7108、7109によって制御されている。位置制御手段7108がX方向におけるステージ7107の位置の制御を行っており、位置制御手段7109はY方向におけるステージ7107の位置制御を行う。
【0236】
図35(B)を用いて、ジンバルピストンの具体的な機能について説明する。図35(B)において、7200はジンバルピストンの大まかな構成を示したものである。ジンバルピストン7200は、架台7101に固定されている支持台7202と、定盤7100に固定されているロードディスク7201とを有している。ロードディスク7201にはサポートロッド7204が固定されており、定盤7100が振動することでロードディスク7201が揺れると、支持台7202の内部でサポートロッド7204が振り子状に揺れ動く構造になっている。
【0237】
変位センサ7205は、該サポートロッド7204を用いて、Xで示す位置におけるロードディスク7201の変位をモニターする。また、Xで示す位置におけるロードディスク7201の変位の加速度を第1加速度センサ7206でモニターし、X0で示す位置における架台7101の変位の加速度を第2加速度センサ7207でモニターする。
【0238】
これら3つのモニターの結果は、コントローラ7103に送られる。コントローラ7103は、変位センサ7205、第1加速度センサ7206及び第2加速度センサ7207でのモニターの結果から、定盤7100の変位と、変位の加速度と、変位の速度とを得て、これらの値から定盤7100の振動を抑えるための、変位、加速度及び速度の各フィードバックの値を求める。そして該変位、加速度及び速度の各フィードバックの値に従ってロードディスク7201に逆の振動を与えるように圧縮空気をジンバルピストン7200に与える。
【0239】
上記構成により、架台7101が設置されている床からの振動、及び位置制御手段7108、7109等によるレーザー装置からの振動を、圧縮空気により与えられる振動により相殺することができ、定盤7100の振動を抑えることができる。
【0240】
なおコントローラ7103は、定盤7100に与えられる振動を学習し、次に同じ振動が与えられた際に、速やかに除振を行なえる機能を備えていても良い。
【0241】
定盤7100の振動を抑えることで、レーザー装置が有する光学系のアライメントが振動によりずれるのを防ぐことができる。特に複数台のレーザー発振装置を用いてビームスポットを合成するような、光学系のより精密なアライメントが要求される場合には、上記構成は非常に有用である。
【0242】
本実施例は、実施例1〜15と組み合わせて実施することが可能である。
【0243】
(実施例17)
本実施例では、レーザービームを重ね合わせたときの、各レーザービームの中心間の距離と、エネルギー密度との関係について説明する。
【0244】
図36に、各レーザービームの中心軸方向におけるエネルギー密度の分布を実線で、合成されたレーザービームのエネルギー密度の分布を破線で示す。レーザービームの中心軸方向におけるエネルギー密度の値は、一般的にガウス分布に従っている。
【0245】
合成前のレーザービームにおいて、ピーク値の1/e2以上のエネルギー密度を満たしている中心軸方向の距離を1としたときの、各ピーク間の距離をXとする。また、合成されたレーザービームにおいて、合成後のピーク値と、バレー値の平均値に対するピーク値の割増分をYとする。シミュレーションで求めたXとYの関係を、図37に示す。なお図37では、Yを百分率で表した。
【0246】
図37において、エネルギー差Yは以下の式1の近似式で表される。
【0247】
【式1】
Y=60−293X+340X2(Xは2つの解のうち大きい方とする)
【0248】
式1に従えば、例えばエネルギー差を5%程度にしたい場合、X≒0.584となるようにすれば良いということがわかる。Y=0となるのが理想的だが、それではレーザービームの長さが短くなるので、スループットとのバランスでXを決定すると良い。
【0249】
次に、Yの許容範囲について説明する。図38に、レーザービームが楕円形状を有している場合の、中心軸方向におけるビーム幅に対するYVO4レーザーの出力(W)の分布を示す。斜線で示す領域は、良好な結晶性を得るために必要な出力エネルギーの範囲であり、3.5〜6Wの範囲内に合成したレーザー光の出力エネルギーが納まっていれば良いことがわかる。
【0250】
合成後のレーザービームの出力エネルギーの最大値と最小値が、良好な結晶性を得るために必要な出力エネルギー範囲にぎりぎりに入るとき、良好な結晶性が得られるエネルギー差Yが最大になる。よって図38の場合は、エネルギー差Yが±26.3%となり、上記範囲にエネルギー差Yが納まっていれば良好な結晶性が得られることがわかる。
【0251】
なお、良好な結晶性を得るために必要な出力エネルギーの範囲は、どこまでを結晶性が良好だと判断するかによって変わり、また出力エネルギーの分布もレーザービームの形状によって変わってくるので、エネルギー差Yの許容範囲は必ずしも上記値に限定されない。設計者が、良好な結晶性を得るために必要な出力エネルギーの範囲を適宜定め、用いるレーザーの出力エネルギーの分布からエネルギー差Yの許容範囲を設定する必要がある。
【0252】
本実施例は、実施例1〜16と組み合わせて実施することが可能である。
【0253】
【発明の効果】
本発明では、半導体膜全体にレーザー光を走査して照射するのではなく、少なくとも必要不可欠な部分を最低限結晶化できるようにレーザー光を走査する。上記構成により、半導体膜を結晶化させた後パターニングにより除去される部分にレーザー光を照射する時間を省くことができ、基板1枚あたりにかかる処理時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザー装置の構造を示す図。
【図2】本発明のレーザービームの形状及びエネルギー密度の分布を示す図。
【図3】本発明のレーザービームの形状及びエネルギー密度の分布を示す図。
【図4】被処理物においてレーザー光の移動する方向を示す図。
【図5】被処理物においてレーザー光の移動方向を示す図。
【図6】TFTの活性層におけるレーザー光の移動方光を示す図。
【図7】マーカーの位置を示す図。
【図8】本発明の生産システムの流れを示すフローチャート。
【図9】従来の生産システムの流れを示すフローチャート。
【図10】本発明の生産システムの流れを示すフローチャート。
【図11】本発明のレーザー装置の光学系の図。
【図12】本発明のレーザー装置の光学系の図。
【図13】被処理物においてレーザー光の移動する方向を示す図。
【図14】被処理物においてレーザー光の移動する方向を示す図。
【図15】被処理物においてレーザー光の移動する方向を示す図。
【図16】マーカーの構造を示す図。
【図17】本発明のレーザー装置の光学系の図。
【図18】本発明のレーザー装置の光学系の図。
【図19】本発明のレーザー装置の光学系の図。
【図20】結晶化された半導体膜のSEM写真。
【図21】結晶化された半導体膜のSEM写真。
【図22】TFTの特性を示す図。
【図23】TFTの特性を示す図。
【図24】本発明の半導体装置を用いた電子機器の図。
【図25】本発明のレーザー装置を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図26】本発明のレーザー装置を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図27】本発明のレーザー装置を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図28】本発明のレーザー装置を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図29】本発明のレーザー装置を用いて作製された液晶表示装置の図。
【図30】本発明のレーザー装置を用いた発光装置の作製方法を示す図。
【図31】半導体膜の逆極点図。
【図32】半導体膜の逆極点図。
【図33】被処理物においてレーザー光の移動する方向を示す図。
【図34】位置制御手段の構成を示す図。
【図35】アクティブ除振台の構成を示す図。
【図36】重ね合わせたレーザービームの中心軸方向におけるエネルギー密度の分布を示す図。
【図37】レーザービームの中心間の距離とエネルギー差の関係を示す図。
【図38】レーザービームの中心軸方向における出力エネルギーの分布を示す図。
Claims (16)
- 絶縁表面上に成膜された半導体膜にマーカーを形成する手段と、
前記半導体膜に形成するパターン情報を記憶する手段と、
前記マーカーを基準とし、前記パターン情報を用いて前記半導体膜のパターニング後に得られる島状の半導体膜となる領域を特定し、少なくとも前記島状の半導体膜となる領域を含むように、前記半導体膜のレーザー光を走査する領域を定める手段と、
レーザー発振装置と、
前記レーザー発振装置から発振されたレーザー光を加工する光学系と、
前記加工されたレーザー光が、前記定められたレーザー光を走査する領域に照射されるように、前記半導体膜における前記レーザー光のビームスポットの位置を制御する手段と、
前記パターン情報に従って前記レーザー光が照射された半導体膜をパターニングする手段と、
を備えることを特徴とする半導体装置の生産システム。 - 絶縁表面上に成膜された半導体膜にマーカーを形成する手段と、
前記半導体膜に形成するパターン情報を記憶する手段と、
前記マーカーを基準とし、前記パターン情報を用いて前記半導体膜のパターニング後に得られる島状の半導体膜となる領域を特定し、少なくとも前記島状の半導体膜となる領域を含むように、前記半導体膜のレーザー光を走査する領域を定める手段と、
レーザー発振装置と、
前記レーザー発振装置から発振されたレーザー光を加工する光学系と、
前記加工されたレーザー光が、前記定められたレーザー光を走査する領域に照射されるように、前記半導体膜における前記レーザー光のビームスポットの位置を制御する手段と、
前記パターン情報に従って前記レーザー光が照射された半導体膜をパターニングする手段と、
を備え、
前記レーザー光を照射する際に、前記半導体膜におけるレーザー光のビームスポットの、走査する方向における幅を変えることを特徴とする半導体装置の生産システム。 - 絶縁表面上に成膜された半導体膜に第1のレーザー光でマーカーを形成する手段と、
前記半導体膜に形成するパターン情報を記憶する手段と、
前記マーカーを基準とし、前記パターン情報を用いて前記半導体膜のパターニング後に得られる島状の半導体膜となる領域を特定し、少なくとも前記島状の半導体膜となる領域を含むように、前記半導体膜の第2のレーザー光を走査する領域を定める手段と、
レーザー発振装置と、
前記レーザー発振装置から発振された第2のレーザー光を加工する光学系と、
前記加工された第2のレーザー光が、前記定められた第2のレーザー光を走査する領域に照射されるように、前記半導体膜における前記第2のレーザー光のビームスポットの位置を制御する手段と、
前記パターン情報に従って前記第2のレーザー光が照射された半導体膜をパターニングする手段と、
を備えていることを特徴とする半導体装置の生産システム。 - 請求項1乃至請求項2のいずれか一項において、前記レーザー発振装置は、連続発振の固体レーザーであることを特徴とする半導体装置の生産システム。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、前記レーザー発振装置は、連続発振のYAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライドレーザー、Y2O3レーザーまたはTi:サファイアレーザーから選ばれた一種または複数種であることを特徴とする半導体装置の生産システム。
- 請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、前記レーザー発振装置は連続発振のエキシマレーザー、ArレーザーまたはKrレーザーから選ばれた一種または複数種であることを特徴とする半導体装置の生産システム。
- 請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、前記レーザー光は第2高調波であることを特徴とする半導体装置の生産システム。
- 複数のレーザー発振装置から複数のレーザー光を出力し、
半導体膜において、前記複数のレーザー光のビームスポットを光学系を用いて重ね合わせて、1つのビームスポットを形成し、
前記半導体膜のうち、パターン情報によって定められる領域のみに前記形成されたビームスポットを走査することで、前記パターン情報によって定められる領域の結晶性を高め、
前記結晶性が高められた領域を前記パターン情報を用いてパターニングすることで、結晶性を有する島状の半導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 複数のレーザー発振装置から複数のレーザー光を出力し、
半導体膜において、前記複数のレーザー光のビームスポットを、各中心が直線を描くように光学系を用いて重ね合わせて、1つのビームスポットを形成し、
前記半導体膜のうち、パターン情報によって定められる領域のみに前記形成されたビームスポットを走査することで、前記パターン情報によって定められる領域の結晶性を高め、
前記結晶性が高められた領域を前記パターン情報を用いてパターニングすることで、結晶性を有する島状の半導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 請求項8または請求項9において、前記レーザー発振装置は、連続発振の固体レーザーであることを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項8乃至請求項10のいずれか一項において、前記レーザー発振装置は、連続発振のYAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライドレーザー、Y2O3レーザーまたはTi:サファイアレーザーから選ばれた一種または複数種であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項8乃至請求項11のいずれか一項において、前記レーザー発振装置は連続発振のエキシマレーザー、ArレーザーまたはKrレーザーから選ばれた一種または複数種であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項8乃至請求項12のいずれか一項において、前記レーザー光は第2高調波であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項8乃至請求項13のいずれか一項において、前記レーザー発振装置は2以上8以下であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項8乃至請求項14のいずれか1項に記載の半導体装置の作製方法を用いて形成されたことを特徴とする半導体装置。
- 請求項8乃至請求項15のいずれか1項に記載の前記半導体装置を用いることを特徴とする電子機器。
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