JP2008092784A - ブラシレスモータの駆動装置及びブラシレスモータの始動方法並びにブラシレスモータのロータ停止位置検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ブラシレスモータを始動するときは、時間t1からt2の間でロータの停止位置を検出したら、ロータの停止位置に応じた始動励磁パターンを初期通電時間Ts1だけ入力する。その後、通電を停止すると、フリーラン中のロータの回転位置に応じて励磁切り替えタイミング信号に複数の信号SL1,SL2,SL3,SL4が順次発生する。これら信号SL1〜SL4の中から、2つ目以降の信号SL2〜SL4を使ってロータ位置を検出し、通常の通電切り替え制御に移行する。
【選択図】図8
Description
この他にも、特定位置にロータを位置決めする第一の通電パターンを通電してロータ位置を特定位置に吸い付けてロック状態とし、そこから60°進んだ第二の通電パターンを微小時間通電した後、第二の通電パターンからさらに60°進んだ第三の通電パターンを通電することでブラシレスモータを始動する方法がある(例えば、特許文献4参照)。
特許文献2に開示されているような方法は、特別な回路を不要とするメリットを有するが、3相通電では印加電圧によるインダクタンスの差は小さいので、方形波パルス電圧のパルス幅の差が小さくなってしまい、精度の良い検知が難しかった。
また、ブラシレスモータを始動させる従来の方法で、オープンループ強制通電をする場合、外乱に弱く、ブラシレスモータのパラメータ依存性が大きいのでパラメータの設定が困難であった。また、強制通電を継続することで徐々にロータが回転し始めるようになるので、始動に要する時間が長くかかり、始動時のトルクも小さかった。なお、強制的な通電切り替えを多数回行うと、外乱の影響をさらに受け易くなってしまう。
所定の通電パターンでロータをロック状態にする場合や、インダクタンスを測定する場合も、ブラシレスモータが回転し始めてからロータ位置が検出できるようになるまでの間は、オープンループ強制通電を行う必要があるので、同様の課題を有する。さらに、ロータをロック状態にする場合、イナーシャの大きいモータでは、ロータを位置決めするまでに長い時間が必要であった。
逆回転状態から始動する場合、相電流がゼロになる位置を調べてから、回転方向や回転の周波数を算出するので、複雑な処理が必要であった。また、逆転方向から徐々に正転方向の周波数に変化させるので、始動までに長い時間が必要だった。
この発明は、このような事情に鑑みてなれたものであり、簡単な方法で短時間にモータを始動させ、かつ始動時に大きいトルクが得られるようにすることを主な目的とする。
このブラシレスモータの駆動装置では、始動したときにロータの回転位置を正しく検出できるように、一旦加速した後にフリーラン状態にし、フリーラン中に発生する誘起電圧からロータ位置を検出する。このときの誘起電圧は、パルス幅変調信号などの影響を受けない状態なので、ロータ位置が正しく検出される。ロータ位置を検出した後は通常の通電切り替えを実施する。
このブラシレスモータの駆動装置では、ロータがステータに吸い付いて逆トルクが発生しない範囲内で加速が行われるので、ロータ位置の検出に十分な回転速度でフリーランさせることができる。
このブラシレスモータの駆動装置は、フリーランさせたときに1回目に発生する信号は、コイルに溜まっていたエネルギによる方形波パルス電圧である可能があるので、この信号を使用せずに、2回目以降の信号を使用することで検出精度を向上させる。
このブラシレスモータの駆動装置は、励磁パターンを切り替えるときに発生する方形波パルス電圧のパルス幅を複数種類の励磁パターンのそれぞれについて調べ、その最大値又は最小値でロータの停止位置を特定する。ロータの停止位置に合わせた始動用の励磁パターンが予め定められているので、その励磁パターンでブラシレスモータを始動する。
このブラシレスモータの駆動装置は、ある相のコイルをN極磁化した後、そのコイルがS極磁化される前に無通電状態になることで、コイルの残留磁化が解消される。S極磁化からN極磁化に変化するときも間に無通電状態になるので、コイルの残留磁化が解消される。
このブラシレスモータの駆動装置は、ロータ停止位置に対して位相差が120°の励磁パターンを選択すると、ロータの回転を開始するのに十分なトルクが得られ、かつ回転直後にトルクが増加するような回転特性が得られる。このため、ロータを安定して起動し、大きな加速度を得ることができる。
このブラシレスモータの駆動装置は、方形波パルス電圧が高い場合に分圧回路で所望する電圧レベルにすることで信号処理が可能になる。
このブラシレスモータの駆動装置は、逆回転中にロータにブレーキをかけて、停止状態又は、ほぼ停止した状態にしてからロータの停止位置を検出する。検出された停止位置に基づいて始動処理を実施する。
このブラシレスモータの駆動装置は、フィルタによる位相遅れを考慮して励磁パターンの切り替えタイミングを補正し、適切なタイミングで相切り替えが行えるようにする。
このブラシレスモータの駆動装置でフィルタは、パルス幅変調制御における高周波数成分のノイズを除去する特性を有するので、ブラシレスモータの回転速度が大きいときに位相遅れが生じ易い。フィルタ遅れ位相補正手段は、このような位相遅れを補正する。
このブラシレスモータの駆動装置は、回転速度によらない装置に固有の遅れ位相を補正する機能を有する。
このブラシレスモータの駆動方法では、ロータが回転を始めたら通電を停止してフリーラン状態にする。このときに発生する誘起電圧から回転中のロータの位置を検出する。これ以降は、検出したロータの位置に基づいて通常の通電切り替えを実施してブラシレスモータの駆動制御を行う。
このブラシレスモータの始動方法では、始動時に1回目の通電切り替えタイミングに相当する時間まで加速を行ってからフリーランさせ、4回目の通電切り替えタイミングに相当する時間までにロータの位置を検知する。
このブラシレスモータのロータ停止位置検出方法では、ある相のコイルをN極磁化した後、そのコイルがS極磁化される前に無通電状態になることで、コイルの残留磁化が解消される。S極磁化からN極磁化に変化するときも間に無通電状態になるので、コイルの残留磁化が解消され、ロータ停止位置の検出精度が向上する。
このブラシレスモータの始動方法では、ロータ停止位置に対して位相差が120°の励磁パターンを選択することで、ロータの回転を開始するのに十分なトルクが得られ、かつ回転直後にトルクを増加させることができる。このため、ブラシレスモータを確実に始動できる。
このブラシレスモータの始動方法では、ブラシレスモータを正転させるように始動制御を行ったときに、ロータ位置が検出できれば、そのまま通常の回転制御に移行する。これに対して、ロータ位置が検出できない場合は、逆回転状態にあると判定し、ロータにブレーキをかけてから、再度始動制御を実施する。
始動時にブラシレスモータが正方向に回転していないと判定された場合に、ロータを停止させるような通電制御を行ってから、再度始動処理を実施すると、逆回転状態からも速やかに正転方向に始動させることができる。このようにすると、逆転方向を判定する複雑な処理が不要になる。
図1に示すように、ブラシレスモータシステムは、ブラシレスモータ1と、ブラシレスモータ1の回転駆動を制御する駆動装置2とを有する。
ブラシレスモータ1は、永久磁石を有するロータとステータを有し、ステータには3相(U、V、W)のコイルが周方向に順番に巻装されている。なお、このブラシレスモータシステムは、ロータ位置を検出するセンサを有しないセンサレスタイプのシステムである。
コンパレータ17A〜17Cは、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より高いときはローレベルの信号を出力し、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より低いときはハイレベルの信号を出力するパルス信号を発生させる。各コンパレータ17A〜17Cでは電気角120°の分解能のパルス信号が作成される。これら信号は、それぞれがローパスフィルタ回路18A〜18Cを経て合成信号生成回路19に入力される。
分圧回路14は、ブラシレスモータ1の各通電線に発生する端子電圧(例えば、12Vや36Vなど)を2つの抵抗で分圧し、制御装置11で使用可能な電圧レベル(例えば、3Vや5Vなど)にする回路である。
回転方向判定手段23は、励磁切り替えタイミングから回転方向を判定し、回転方向検出ロジック選択手段24と、ブレーキ停止手段25に所定の指令を出力する。回転方向検出ロジック選択手段24は、ブラシレスモータ1の回転方向によって分離手段21が使用するロジックを選択可能な場合に使用される。ブレーキ停止手段25は、ブラシレスモータ1を停止させるような通電パターンを通電する際に使用される。
ブラシレスモータ1を始動するときは、ブラシレスモータ1が停止している場合と、ブラシレスモータ1が外部負荷によって回転させられている場合とがある。さらに、ブラシレスモータ1が回転させられている場合には、正回転している場合と、逆回転している場合とがある。例えば、ブラシレスモータ1をラジエータファンの回転機構に使用した場合、ラジエータからエンジンルームに向かう方向に風が吹いている場合には、通電しなくてもラジエータファンの回転に従ってブラシレスモータ1が正回転させられる。これに対して、ブラシレスモータ1が逆回転している場合とは、エンジン側からラジエータの方向に風が吹いているときや、ラジエータファンに対して逆方向に負圧が生じたときが考えられる。
なお、領域R1と領域R2は、重ならずに回転速度N1を境界として区分けしても良い。領域R1と領域R3は、重ならずに回転速度−N1を境界として区分けしても良い。
ロータ位置を予め定めた回数検出できないときは(ステップS108でNo)、誘起電圧のエッジ間隔を計測するカウンタが予め設定された回数オーバーフローするまで待つ(ステップS110)。カウンタが所定回数オーバーフローしたら(ステップS110でYes)、回転方向判定手段23はブラシレスモータ1が逆転していると判定する。その結果、ブレーキ停止手段25によるブレーキ処理として、低デューティで2相通電ロック処理を行う(ステップS111)。ブレーキ処理は、予め定められた一定時間実施し、この時間が経過したら(ステップS112)、ステップS101に戻る。
ステップS103の詳細について説明する。ここでは、コイルが作る磁束の方向と、マグネットの磁束の方向が同方向のときにマグネットのコアの透磁率が大きくなってインダクタンスが小さくなることに着目して停止位置を決定している。
励磁パターン#1は、U相のコイル(以下、U相という)からV相のコイル(以下、U相という)に電流を流す。U相がN極磁化され、V相がS極磁化される。U、V、W相の配置及びロータ41の停止位置が図示する配置であった場合には、矢印に示すようにU相からロータ41の永久磁石42のS極、N極を順番に通り、V相に向かう磁束が形成される。
励磁パターン#2は、U相からW相に電流を流す。U相がN極磁化され、W相がS極磁化される。矢印に示すようにU相からロータ41の永久磁石のS極、N極を順番に通り、W相に向かう磁束が形成される。
励磁パターン#3は、V相からW相に電流を流す。V相がN極磁化され、W相がS極磁化される。矢印に示すようにV相からロータ41の永久磁石のS極、N極を順番に通り、W相に向かう磁束が形成される。
励磁パターン#4は、V相からU相に電流を流す。V相がN極磁化され、U相がS極磁化される。矢印に示すようにV相からロータ41の永久磁石のS極、N極を順番に通り、U相に向かう磁束が形成される。
励磁パターン#5は、W相からU相に電流を流す。W相がN極磁化され、U相がS極磁化される。矢印に示すようにW相からロータ41の永久磁石のS極、N極を順番に通り、U相に向かう磁束が形成される。
励磁パターン#6は、W相からV相に電流を流す。W相がN極磁化され、V相がS極磁化される。矢印に示すようにW相からロータ41の永久磁石のS極、N極を順番に通り、V相に向かう磁束が形成される。
ステップ0は、励磁パターン#1を選択してパルス幅変調信号のデューティを100%にして通電する。残りのW相は、開放される。ステップ1では、デューティを0%にしていずれの相にも通電しない。ステップ0が終了してステップ1に移行するとき、インバータ13のスイッチング素子がオフになった瞬間にコイルに蓄えられていた電気エネルギがスイッチング素子の還流ダイオードを介して電流として流れる。このときのV相の端子に方形波パルス電圧が発生する。この端子電圧を方形波パルス電圧として、分圧回路14に取り込んで分圧し、方形波パルス電圧幅検出手段29に入力する。方形波パルス電圧幅検出手段29は、パルスの立ち下がりエッジを検出したときのカウント値を調べる。カウント値は、ステップの切り替えタイミングからの経過時間に相当するので、このカウント値を励磁パターン#1(UV通電)に対する方形波パルス電圧幅として記憶手段29Aに記憶する。
ステップ4では励磁パターン#3で通電してU相を開放する。ステップ5でいずれの相にも通電せずに、W相に発生する方形波パルス電圧のパルス幅を調べて励磁パターン#3(VW通電)に対する方形波パルス電圧幅として記憶手段29Aに記憶する。
ステップ6では励磁パターン#4で通電してW相を開放する。ステップ7でいずれの相にも通電せずに、U相に発生する方形波パルス電圧のパルス幅を調べて励磁パターン#4(VU通電)に対する方形波パルス電圧幅として記憶手段29Aに記憶する。
ステップ8では励磁パターン#5で通電してV相を開放する。ステップ9でいずれの相にも通電せずに、U相に発生する方形波パルス電圧のパルス幅を調べて励磁パターン#5(WU通電)に対する方形波パルス電圧幅として記憶手段29Aに記憶する。
ステップ10では励磁パターン#6で通電してU相を開放する。ステップ11でいずれの相にも通電せずに、V相に発生する方形波パルス電圧のパルス幅を調べて励磁パターン#6(WV通電)に対する方形波パルス電圧幅として記憶手段29Aに記憶する。
ロータ位置推定手段31の処理の詳細を具体的に説明すると、予め方形波パルス電圧幅のカウント値が1000以下であることがわかっている場合には、最小値を格納するメモリに初期値として1000より大きい値を格納しておき、励磁パターン#1の方形波パルス電圧幅のカウント値と比較する。カウント値が小さい場合には、最小値のメモリに格納されるデータを初期値から励磁パターン#1のカウント値に置き換える。最小値のメモリのデータと、全ての方形波パルス電圧幅のカウント値を順番に比較し、小さい方のカウント値を最小値のメモリに格納していく。最終的に格納されているカウント値が最小値となり、そのときの励磁パターンが、方形波パルス電圧幅が最小となる励磁パターンになる。
時間t1で始動信号が入力されたら、時間t2までの間にロータ停止位置検出処理(ステップS103)が行われる。この間の回転速度はゼロである。
ここで、初期通電時間Ts1は、通電をOFFにした後で誘起電圧のエッジが複数回、例えば、4回以上発生するまでの間、ロータ41を回転速度N1以上でフリーランさせることができるだけロータ41を加速できる時間である。この観点からは、初期通電時間Ts1が長いことが望ましい。しかしながら、初期通電時間Ts1が長すぎて通常運転時における励磁パターンの切り替え位置を越えて同じ励磁パターンを継続すると、逆トルクが発生してしまってロータ41を減速させてしまう。したがって、初期通電時間Ts1は、逆トルクが発生しない範囲内で、できるだけ長い時間とすることが好ましい。初期通電時間Ts1の決定方法の一例としては、設計段階や製造段階でブラシレスモータ1をホールセンサ付きで始動させ、最初にホールセンサの信号が切り替わるまでの時間を測定し、これと略同じ時間又はこれより短い時間を初期通電時間Ts1として制御装置11に記憶させることがあげられる。
さらに、ロータ41がフリーランすることで、ロータ41の回転位置に応じて所定の相のモータ端子に誘起電圧が発生する。この場合には、W相位置信号、U相位置信号、V相位置信号の順番に立ち上がりエッジ、又は立ち下がりエッジが発生している。その結果、励磁切り換えタイミング信号は、W相のエッジに起因する2回目の信号SL2と、U相のエッジに起因する3回目の信号SL3と、V相のエッジに起因する4回目の信号SL4とが発生する。なお、全相をOFFにすることで、インバータ13からブラシレスモータ1に入力されるパルス幅変調信号などの不要な信号成分がない状態で誘起電圧と等価中性点電位の交点を計測できるようになるので、ロータ位置を正確に検出できる。
また、イナーシャが大きいブラシレスモータでは、2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔と、3〜4回目の信号SL3,SL4の時間間隔が略等しい。このため、2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔のみでセンサレス駆動に移行しても良い。このようにすると、さらに短い時間で定常的な運転を開始することができる。また、1回目の信号SL1と2回目の信号SL2の時間間隔だけを取得してセンサレス駆動に移行しても良い。イナーシャが小さいブラシレスモータに有効である。この場合は、初期通電時間SL1は予め設定された値を用いており、SL2のタイミングを検出した時点でSL1とSL2の時間間隔を演算し、それをロータ位置信号として使用することができるので、2回目の信号SL2まででセンサレス駆動に移行できるようになる。
また、イナーシャが小さいブラシレスモータでは、減速が大きくなって2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔より、3〜4回目の信号SL3,SL4の時間間隔の方が大きくなる。この場合には、時間間隔の変化から加速度を算出し、この加速度を用いて次の時間間隔を推定することで励磁通電タイミングを算出しても良い。
定常駆動モードでは、モータ端子の誘起電圧を検出してロータ位置を検出するが、誘起電圧波形には方形波状のスイッチングパルス(方形波パルス電圧)が重畳するので、このようなノイズを除去する必要がある。この実施の形態では、各相のロータ位置信号に相当するエッジを検出したときに、他相のレベル検出を行って、ロータ位置信号と方形波パルス電圧とを区別している。この際に使用される正転専用ロジックは、表1に示す誘起電圧信号検出ロジックと、表2に示す方形波パルス電圧終了エッジ判定ロジックとからなる。なお、正転専用ロジックは、図1に示す回転方向判定手段23がブラシレスモータ1が正転していると判定する場合に、回転方向検出ロジック選択手段24の指令によって分離手段21が参照する。
例えば、図11の例では、固定子巻線Uの位置検出信号Ussのエッジの発生タイミングの直前に、固定子巻線Wのマスク信号WmをH(High)レベルに設定する。同様に、固定子巻線Vの位置検出信号Vssのエッジエッジの発生タイミングの直前に、固定子巻線Uのマスク信号UmをH(High)レベルに設定する。固定子巻線Wの位置検出信号Wssのエッジの発生タイミングの直前に、固定子巻線Vのマスク信号VmをH(High)レベルに設定する。これら各マスク信号Um,Vm,Wmの信号レベルは所定の電気角の間維持された後にL(Low)レベルに変更される。
図15に示す範囲R4がブラシレスモータ1の回転速度の制御範囲である場合、ローパスフィルタ回路15A〜15Cは、範囲R4より高い周波数領域にカットオフ周波数fcが設定される。図15は、横軸を周波数の対数表示をし、縦軸を位相にしたボード線図である。カットオフ周波数fcのローパスフィルタ回路15A〜15Cを通った誘起電圧信号には遅れ位相θ1が生じる。遅れ位相θ1は、高周波数になる程、大きくなる。
G(s)=1/(τs+1) (1)
式(1)から、遅れ位相θ1〔rad〕は、
θ1=−arctan(ωτ) (2)
θ1=−arctan(2πτ×f) (3)
となる。単位を〔°〕に変換し、遅れにとると、
θ1=arctan(2πτ×f)×360/2π (4)
となる。電気角60°回転するのに要する時間をTaとすると、1/f=6Taなので、
θ1=arctan(2πτ/6Ta)×360/2π (5)
式(5)からフィルタ15A〜15Cによる遅れ位相θ1を算出できる。遅れ位相θ1は、式(5)からその都度計算しても良いが、この実施の形態では遅れ位相補正部22Aにマップ登録しておき、時間Taで検索して遅れ位相θ1を求める。
遅れ位相θ2は、のフィルタ15A〜15C以外のその他の回路及びソフトウェア処理によって発生する。この遅れ位相θ2は、コンパレータ17A〜17C、ローパスフィルタ回路18A〜18C、マイコンなどに起因して発生する。このときの遅れ時間T2は、回転速度に依らず一定値である。したがって、電気角60°回転するのに要する時間Taに対する遅れ時間T2の割合から遅れ位相θ2を算出できる。
θ2=(T2/Ta)×60〔°〕 (6)
Ew=30−(θ1+θ2) (7)
になる。マップを使用してタイミングEwを補正することで、タイミングEwを速やかに演算できる。さらに、補正したタイミングEwを使用することで、回転速度に依らずに励磁を精度良く切り替えられる。
図16に示すように、始動前の状態が前記したフリーラン状態と同じになる。図4のフローチャートに従ってステップS103からステップS106の処理を実施してもフリーランしている回転状態への影響は少なく、フリーラン状態を維持できる。したがって、ステップS108からステップS109に進んで、定常駆動モードに移行する。
図4のステップS101からステップS107を実施しても、逆回転しているロータ41の誘起電圧波形では、正転専用ロジックでロータ位置信号を抽出することはできない。したがって、ロータ位置信号が例えば1〜9秒程度の所定の時間の間、検出できないときは(ステップS110に相等)、回転方向判定手段23が逆転状態になる判定する。
この場合、図1に示す制御装置11は、ブレーキ停止手段25が2相ロック通電を一定の時間、過電流をならない程度の低いデューティでブラシレスモータ1に印加させる。ラジエータファンにはブレーキとして働き、ラジエータファンの回転速度が小さくなって、停止状態に近くなる。図17に示すように、2相ロック通電を継続する時間は、予め設定されたブレーキ通電時間で、例えば、1〜9秒程度である。これによって、ブラシレスモータ1の回転速度は、−N1からゼロに近付く。前記したように、ラジエータファンは、逆回転している場合に回転数及びトルクは小さいからである。
コイルが作る磁束とマグネットが作る磁束が同じ方向の場合、つまりコイルとマグネットの間で磁束が流れ易いようなロータ位置ではインダクタンスが小さくなることに着目したので、従来の方法に比べて精度良く、かつ安定してロータ停止位置を検出することができる。
方形波パルス電圧を発生させる励磁パターンの順番、つまりロータ停止位置の検索順番において、N極磁化からS極磁化に変化させる場合には、その間に無通電となるような励磁パターンを実行するような切り替え順番にしたので、コイルを巻装する鉄心の残留磁化の影響を受け難くなってインダクタンスの検出精度を向上させることができる。
このようにすると、ブラシレスモータ1がコイル鉄心の残留磁化の影響を受け易い構成である場合に、残留磁化の影響をさらに低減させ、インダクタンスの検出精度を向上させることができる。
フリーランさせるまでの通電時間(Ts1)は、逆トルクが発生しない範囲内にしたので、フリーラン中にロータ41が大きく減速することがなく、ロータ位置を正しく検出することができる。
フリーラン時に発生する1回目の信号SL1を使用せずに、2回目以降の信号SL2〜SL4を使用すると、1回目に方形波パルス電圧に起因する信号が発生した場合でも正しい検知が可能になる。
この実施の形態は、正転専用ロジックに加えて逆転専用ロジックを使用することを特徴とする。装置構成は、第1の実施の形態と同様である。
図19に始動時の動作のフローチャートを示す。ステップS101からステップS108まで、すなわち、始動開始時のブラシレスモータ1の回転速度が図3の領域R1又は領域R2にあるときの処理は、第1の実施の形態と同じである。始動時の回転速度が領域R3にあるときは、ステップS108からステップS110Aに進む。
これに対して、ロータ位置検出信号が得られなかった場合は(ステップS110BでNo)、一定時間待機してから(ステップS110CでYes)、ステップS111に進む。
この実施の形態は、最初にブレーキ処理を実施することを特徴とする。
図20に示すように、過電流検出処理(ステップS101)を行なった後、低デューティでの2相通電ロック処理を実施する(ステップS102A)。ブレーキ時間は、一定時間とする(ステップS102B)。これらの処理は、第1の実施の形態におけるステップS111,S112に相当する処理である。始動時にブラシレスモータ1の回転速度がいずれの領域R1〜R3にある場合でも、ブレーキ処理によって強制的に領域R1に制御されるようになる。以降の処理は、第1の実施の形態と同じある。
また、図21に示すように、逆転専用ロジックを使用する場合(ステップS110Aに相当)についても、最初にステップS102A,S102Bでブレーキ処理を行うことで、ブラシレスモータ1の回転速度がいずれの領域R1〜R3にある場合でも、ブレーキ処理によって強制的に領域R1に制御されるようになる。
例えば、電源電圧が変動する場合など、端子電圧が変動する場合には、分圧回路14の代わりにレベル変換回路を使用することが望ましい。レベル変換回路は、トランジスタやFET、コンパレータなどを使用し、電源電圧に応じて端子電圧を下げられるように構成される。
始動時の通電制御は、シャント抵抗13Aから電流値をモニタし、所定値以上にならないように制御すれば良く、デューティ50%に限定されない。
初期通電時間Ts1は、電圧・電流方程式、位置・トルク方程式に所定の物理定数を代入して求めたり、シミュレーションで決定しても良い。
なお、図7において、始動時にブラシレスモータ1を逆転させるときには、120°進んだ励磁パターンを始動時の励磁パターンとして選択する。
2 駆動装置
11 制御装置
14 分圧回路
15A,15B,15C フィルタ
22 励磁切り替えタイミング演算手段
22A 遅れ位相補正部(フィルタ遅れ位相補正手段、回路遅れ位相補正手段)
26 通電パターン決定手段
27 励磁電圧出力手段
29 方形波パルス電圧幅検出手段
31 ロータ位置推定手段
41 ロータ
SL2,SL3,SL4 信号
Ts1 初期通電時間
Claims (16)
- ブラシレスモータを駆動させる駆動装置であって、
前記ブラシレスモータの始動時にロータの停止位置に合わせた励磁パターンを初期通電時間だけ前記ブラシレスモータに通電した後、通電を停止して前記ブラシレスモータの前記ロータをフリーランさせる通電パターン決定手段と、
フリーラン中にモータ端子に発生する誘起電圧からロータ位置を検出して励磁タイミングを決定する励磁切り替えタイミング演算手段と、
を有することを特徴とするブラシレスモータの駆動装置。 - 初期通電時間は、前記ロータが回転を開始してから1回目の通電切り替えタイミングまでの時間以下の長さであることを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータの駆動装置。
- 前記励磁切り替えタイミング演算手段は、フリーラン中に2回目以降にモータ端子に発生する誘起電圧の信号の時間間隔から励磁タイミングを演算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブラシレスモータの駆動装置。
- 前記ブラシレスモータを駆動可能な励磁パターンを複数選択し、各々の励磁パターンを前記ロータが回転しない時間範囲で順番に通電させる励磁電圧出力手段と、
励磁パターンを切り替えたときに前記ブラシレスモータのコイルに発生する方形波パルス電圧のパルス幅を検出する方形波パルス電圧幅検出手段と、
複数の励磁パターンにおけるそれぞれの方形波パルス電圧のパルス幅から最小値又は最大値を求め、最小値又は最大値となる励磁パターンから前記ロータの停止位置を判定するロータ位置推定手段と、
を有し、前記ロータ位置推定手段で判定した前記ロータの停止位置から所定の電気角だけ遅角又は進角させた通電パターンを始動励磁パターンとして出力するように構成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のブラシレスモータの駆動装置。 - 前記励磁電圧出力手段は、コイルをN極磁化する励磁パターンと、同じコイルをS極磁化する励磁パターンの間に、そのコイルを無通電とする励磁パターンを実施することを特徴とする請求項4に記載のブラシレスモータの駆動装置。
- ロータ位置推定手段が方形波パルス電圧のパルス幅の最小値から前記ロータの停止位置を判定したときに、正転時には120°位相を遅らせた励磁パターンを出力し、逆転時には120°位相を進ませた励磁パターンを出力することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のブラシレスモータの駆動装置。
- コイルに発生する方形波パルス電圧を分圧して方形波パルス電圧幅検出手段に入力する分圧回路を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のブラシレスモータの駆動装置。
- 前記ロータが逆回転しているときに、低デューティの電圧を印加し、前記ロータにブレーキをかけてから前記励磁電圧出力手段を稼動させることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか一項に記載のブラシレスモータの駆動装置。
- 前記ブラシレスモータの各相の端子電圧を検出する手段に前記端子電圧の検出信号に含まれるノイズを除去するフィルタを設け、前記励磁切り替えタイミング演算手段に前記ブラシレスモータの回転速度によって変化する前記フィルタの遅れ位相を補正するフィルタ遅れ位相補正手段を設けたことを特徴とする請求項8に記載のブラシレスモータの駆動装置。
- 前記フィルタは、前記ブラシレスモータをパルス幅変調制御するときに発生するノイズを除去する1次CRフィルタであることを特徴とする請求項9に記載のブラシレスモータの駆動装置。
- 前記励磁切り替えタイミング演算手段は、前記フィルタ以外の回路による遅れ位相を補正する回路遅れ位相補正手段をさらに有することを特徴とする請求項10に記載のブラシレスモータの駆動装置。
- ブラシレスモータを始動させる始動方法であって、
ロータの停止位置に合わせた励磁パターンを初期通電時間だけ前記ブラシレスモータに通電した後、通電を停止して前記ブラシレスモータの前記ロータをフリーランさせるステップと、
フリーラン中にモータ端子に発生する誘起電圧からロータ位置を検出するステップと、
検出したロータ位置に基づいて励磁パターンの切り替えを行うステップと、
を有することを特徴とするブラシレスモータの始動方法。 - 初期通電時間は、前記ロータが回転を開始してから1回目の通電切り替えタイミングまでの時間以下の長さであり、ロータ位置を検出するステップは、ロータを回転させたときにモータ端子に発生する誘起電圧が4回目発生するまでの間に行われることを特徴とする請求項12に記載のブラシレスモータの始動方法。
- ブラシレスモータを駆動可能な励磁パターンを複数選択し、前記ブラシレスモータのコイルをN極磁化する励磁パターンと、同じコイルをS極磁化する励磁パターンの間に、そのコイルを無通電とする励磁パターンが通電されるように通電順番を選択し、各々の励磁パターンをロータが回転しない時間範囲で順番に通電させ、励磁パターンを切り替えたときに前記ブラシレスモータのコイルに発生する方形波パルス電圧のパルス幅の最小値から前記ロータの停止位置を判定することを特徴とするブラシレスモータのロータ停止位置検出方法。
- ブラシレスモータを始動させるにあたり、前記ブラシレスモータを駆動可能な励磁パターンを複数選択し、各々の励磁パターンをロータが回転しない時間範囲で順番に通電させ、励磁パターンを切り替えたときに前記ブラシレスモータのコイルに発生する方形波パルス電圧のパルス幅を調べ、その最小値からロータ停止位置を判定し、正転時にはロータ停止位置から120°位相を遅らせた励磁パターンを出力し、逆転時にはロータ停止位置から120°位相を進ませた励磁パターンを出力することを特徴とするブラシレスモータの始動方法。
- ブラシレスモータを始動させる始動方法であって、
コイルのインダクタンスを利用してロータの停止位置を検出するステップと、
前記ロータの停止位置から120°位相を遅らせた励磁パターンを一定時間出力した後、全相の通電を停止するステップと、
全相の通電を停止した状態で誘起電圧によるロータ位置検出が可能な場合に、検出されたロータ位置に基づいて通電制御をするステップと、
全相の通電を停止した状態で誘起電圧によるロータ位置検出が不能な場合に、前記ロータの回転を停止させるような励磁パターンを通電するステップと、
を有し、前記ロータの回転を停止させるような励磁パターンを所定時間通電した後に、前記コイルのインダクタンスを利用して前記ロータの停止位置を検出するステップを実施することを特徴とするブラシレスモータの始動方法。
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