次に、この発明の実施形態を図1に基づいて説明する。図1は、本実施の形態のセンサレスブラシレスモータ装置のシステムブロック図である。センサレスブラシレスモータ装置100は、センサレスブラシレスモータ200と、センサレスブラシレスモータ200に接続されたセンサレスブラシレスモータ用制御装置1とを備える。
センサレスブラシレスモータ200は、いわゆるスター接続されたU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)が備えられているステータ(図示せず)と、複数の永久磁石が設けられ、ステータに対し回転自在に配置されたロータ(図示せず)とを備える。センサレスブラシレスモータ用制御装置1は、センサレスブラシレスモータ200に備えられているU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に制御電流を供給する。
センサレスブラシレスモータ用制御装置1は、インバータ回路2、電流値測定手段3、通電指令手段4、ロータ位置検出手段5および通電パターン選定手段6を備えている。インバータ回路2は、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)および直流電源BTに接続され、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に制御電流を供給する。
インバータ回路2と接地Gとの間には、シャント抵抗3aが配置され、接続点P1にてインバータ回路2に接続されている。そして、インバータ回路2からU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給される制御電流は、シャント抵抗3aを流れ、制御電流の電流値に比例した電圧降下がシャント抵抗3aに生じる。そのため、接続点P1と接続点P2の電位差は、制御電流の電流値に比例した電圧値となる。
電流値測定手段3は、接続点P1および接続点P2に接続され、接続点P1と接続点P2の電位差を検出し、この検出された電圧値からインバータ回路2からU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給される制御電流の電流値を測定する。そして、測定した電流値に対応する電流値信号を出力する。
通電指令手段4は、インバータ回路2に接続され、第1から第4の通電指令手段(41、42、43、44)を備える。第1から第4の通電指令手段(41、42、43、44)は、それぞれ所定の通電パターンの制御電流をインバータ回路2からU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給させることを指令する第1から第4の指令信号を、インバータ回路2に供給する。
第1の通電指令手段41は、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に予め定められた複数の通電パターンの制御電流を、予め定められた順番で供給させることをインバータ回路2に指令する複数の指令信号からなる第1の指令信号をインバータ回路2に供給する。なお、第2から第4の通電指令手段(42、43、44)については、後述する。
ロータ位置検出手段5は、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に接続され、ロータが回転しているときにU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に生じる誘起電圧の信号からロータの回転位置を検出し、検出された回転位置に対応する位置信号を出力する。
通電パターン選定手段6は、予め定められた電流閾値が記憶されている閾値メモリ51、比較手段52、第1のカウンタ53、記憶手段54および選定手段55を備えている。比較手段53は、電流値測定手段3から供給される電流値信号と閾値メモリ52に記憶されている電流閾値とを比較し、電流値信号と電流閾値とを比較し、両者が一致した場合に通知信号を出力する。
第1のカウンタ53は、第1の通電指令手段41から供給される第1の指令信号によりカウント値を計数する動作を行い、比較手段53から供給される信号により、カウント値に対応するカウント値信号を記憶手段54に供給する。その後、一定時間経過後にカウンタ53はリセットされる。記憶手段54は、第1のカウンタ53から供給されるカウント値信号を複数記憶し、選定手段55は、記憶手段54に記憶されている複数のカウント値信号から最小のカウント値であるかを選定する。そして、選定手段55は、いずれのカウント値信号が最小のカウント値となる通電パターンを選定し、選定された通電パターンに対応する選定通電パターン信号を出力する。なお、選定通電パターン信号については、後述する。
図2および図3に基づき第2および第3の通電指令手段(42、43)の構成について説明する。第2の通電指令手段42は、第1の通電パターン生成手段42aおよび予め定められた第1のカウント値を計数する第2のカウンタ42bを備え、第1の通電パターン生成手段42aは、通電パターン選定手段5の選定手段55、第2のカウンタ42bから信号が供給され、選定手段55、第2のカウンタ42bから供給される信号に基づきインバータ回路2に第2の指令信号を予め定められた時間供給する。そして、第2の指令信号は、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に選定通電パターン信号に対応する通電パターンの制御電流を、予めら定められた時間供給させることをインバータ回路2に指令する信号である。
第3の通電指令手段43は、第2の通電パターン生成手段43aおよび予め定められた第2のカウント値を計数する第3のカウンタ43bを備え、第2の通電パターン生成手段43aは、通電パターン選定手段5の選定手段55、第3のカウンタ43bから信号が供給され、選定手段55、第3のカウンタ43bから供給される信号に基づきインバータ回路2に第3の指令信号を供給する。
第4の通電指令手段44は、ロータ位置検出手段6により検出される位置信号に基づき、予め定められた複数の通電パターンの制御電流を、予め定められた順番で供給させることをインバータ回路2に指令する第4の指令信号をインバータ回路2に供給する。
次に、本実施の形態のセンサレスブラシレスモータ用制御装置1の動作について説明する。図4には、センサレスブラシレスモータ用制御装置1で行われる一連の動作を表すフローチャートが示される。図4に示すように、センサレスブラシレスモータ用制御装置1は、動作が開始されると(S100)、順に、(イ)停止位置検出モード(S200)、(ロ)停止位置補正モード(S300)、(ハ)起動モード(S400)、(ニ)フリーランモード(S500)、(ホ)センサレス制御モード(S500)が実行される。
(イ)停止位置検出モード(S200)について、図5、図6および図7に基づき説明する。図5および図6は、(イ)停止位置検出モードにおける本実施の形態のセンサレスブラシレスモータ用制御装置1の動作を示すフローチャートであり、図7は、(イ)停止位置検出モードにおける本実施の形態のセンサレスブラシレスモータ用制御装置1の動作を説明するタイミングチャートである。
(イ)停止位置検出モード(S200)において、第1の通電指令手段41からインバータ回路2に供給される第1の指令信号は、複数の指令信号である第1から第6の通電パターン信号から構成されている。まず、この第1から第6の通電パターン信号について説明する。
第1の通電パターン信号は、U相の電気巻線(U)からV相の電気巻線(V)に電流が流れる電流路が形成される「第1の通電パターン」の制御電流をインバータ回路2に対し供給させることを指令する信号であり、第2の通電パターン信号は、U相の電気巻線(U)からW相の電気巻線(W)に電流が流れる電流路が形成される「第2の通電パターン」の制御電流をインバータ回路2に対し供給させることを指令する信号である。
第3の通電パターン信号は、V相の電気巻線(V)からW相の電気巻線(W)に電流が流れる電流路が形成される「第3の通電パターン」の制御電流をインバータ回路2に対し供給させることを指令する信号であり、第4の通電パターン信号は、V相の電気巻線(V)からU相の電気巻線(U)に電流が流れる電流路が形成される「第4の通電パターン」の制御電流をインバータ回路2に対し供給させることを指令する信号である。
第5の通電パターン信号は、W相の電気巻線(W)からU相の電気巻線(U)に電流が流れる電流路が形成される「第4の通電パターン」の制御電流をインバータ回路2に対し供給させることを指令する信号であり、第6の通電パターン信号は、W相の電気巻線(W)からV相の電気巻線(V)に電流が流れる電流路が形成される「第5の通電パターン」の制御電流をインバータ回路2に対し供給させることを指令する信号である。
(イ)停止位置検出モード(S200)が開始されると(S201)、第1の通電指令手段41から第1の通電パターン信号が、インバータ回路2および第1のカウンタ53に供給される(S202)。そして、第1の通電パターン信号が供給されると第1のカウンタ53のカウンタ値はリセットされ、第1のカウンタ53はカウント値「ゼロ」からカウント値を計数する動作を行う(S203)。
その後、電流値信号と閾値メモリ52に記憶されている電流閾値とを比較し、電流値測定手段3から供給される電流値信号と閾値メモリ52に記憶されている電流閾値とが一致した場合に比較手段52から通知される通知信号が通知されているか否が判断され(S204)、比較手段52からの通知信号が通知されていないと判断された場合には、比較手段52から通知信号が通知されるまで監視が行われる。
そして、通知信号が通知されていると判断された場合には、第1の通電指令手段41からインバータ回路2への第1の通電パターン信号の供給は停止されるとともに(S205)、記憶手段54は、第1のカウンタ53から供給されているカウンタ値信号を第1のカウント値として記憶する(S206)。
上記と同様に、第1の通電パターン信号に引き続き、第1の通電指令手段41からは、第1の通電パターン信号が出力されてから、予め定められた時間の経過後に、第2から第6の通電パターン信号が、それぞれ予め定められた時間をおいて出力される。第1の通電指令手段41から第2の通電パターン信号が、インバータ回路2および第1のカウンタ53に供給されると(S207)、第1のカウンタ53のカウンタ値はリセットされ、第1のカウンタ53はカウント値「ゼロ」から計数する動作を行う(S208)。
その後、比較手段52からの通知信号が通知されているか否が判断され(S209)、比較手段52からの通知信号が通知されていないと判断された場合には、比較手段52から通知信号が通知されるまで監視される。そして、通知信号が通知されていると判断された場合には、第1の通電指令手段41からインバータ回路2への第2の通電パターン信号の供給は停止されるとともに(S210)、記憶手段54は、第1のカウンタ53から供給されているカウンタ値信号を第2のカウント値として記憶する(S211)。
第1の通電指令手段41から第3の通電パターン信号が、インバータ回路2および第1のカウンタ53に供給されると(S212)、第1のカウンタ53のカウンタ値はリセットされ、第1のカウンタ53はカウント値「ゼロ」から計数する動作を行う(S213)。
その後、比較手段52からの通知信号が通知されているか否が判断され(S214)、比較手段52からの通知信号が通知されていないと判断された場合には、比較手段52から通知信号が通知されるまで監視される。そして、通知信号が通知されていると判断された場合には、第1の通電指令手段41からインバータ回路2への第3の通電パターン信号の供給は停止されるとともに(S215)、記憶手段54は、第1のカウンタ53から供給されているカウンタ値信号を第3のカウント値として記憶する(S216)。
第1の通電指令手段41から第4の通電パターン信号が、インバータ回路2および第1のカウンタ53に供給されると(S217)、第1のカウンタ53のカウンタ値はリセットされ、第1のカウンタ53はカウント値「ゼロ」から計数する動作を行う(S218)。
その後、比較手段52からの通知信号が通知されているか否が判断され(S219)、比較手段52からの通知信号が通知されていないと判断された場合には、比較手段52から通知信号が通知されるまで監視される。そして、通知信号が通知されていると判断された場合には、第1の通電指令手段41からインバータ回路2への第4の通電パターン信号の供給は停止されるとともに(S220)、記憶手段54は、第1のカウンタ53から供給されているカウンタ値信号を第4のカウント値として記憶する(S221)。
第1の通電指令手段41から第5の通電パターン信号が、インバータ回路2および第1のカウンタ53に供給されると(S222)、第1のカウンタ53のカウンタ値はリセットされ、第1のカウンタ53はカウント値「ゼロ」から計数する動作を行う(S223)。
その後、比較手段52からの通知信号が通知されているか否が判断され(S224)、比較手段52からの通知信号が通知されていないと判断された場合には、比較手段52から通知信号が通知されるまで監視される。そして、通知信号が通知されていると判断された場合には、第1の通電指令手段41からインバータ回路2への第5の通電パターン信号の供給は停止されるとともに(S225)、記憶手段54は、第1のカウンタ53から供給されているカウンタ値信号を第5のカウント値として記憶する(S226)。
第1の通電指令手段41から第6の通電パターン信号が、インバータ回路2および第1のカウンタ53に供給されると(S227)、第1のカウンタ53のカウンタ値はリセットされ、第1のカウンタ53はカウント値「ゼロ」から計数する動作を行う(S228)。
その後、比較手段52からの通知信号が通知されているか否が判断され(S229)、比較手段52からの通知信号が通知されていないと判断された場合には、比較手段52から通知信号が通知されるまで監視される。そして、通知信号が通知されていると判断された場合には、第1の通電指令手段41からインバータ回路2への第6の通電パターン信号の供給は停止されるとともに(S230)、記憶手段54は、第1のカウンタ53から供給されているカウンタ値信号を第6のカウント値として記憶する(S231)。
上記の第1から第6の通電パターン信号に基づく第1から第6のカウンタ値が記憶手段に記憶されると(S206、S211、S216、S221、S226、S231)、選定手段55は、第1から第6のカウント値のうち最小の値となるカウント値を選定する(S232)。そして、第1から第6の通電パターン信号のうち、カウント値が最小となったいずれか一つの通電パターン信号を選定するとともに次の停止位置補正モードに通知し(S233)、停止位置検出モードは終了する(S234)。
本実施の形態におけるセンサレスブラシレスモータ用制御装置1では、以下に示すセンサレスブラシレスモータ200の特性を利用することにより、ロータの停止位置を検する。
センサレスブラシレスモータ200には、ロータに取り付けられている複数の永久磁石により生じる磁束φ0が形成されている。一方、U相、V相またはW相の電気巻線(U、V、W)に制御電流が供給されると、センサレスブラシレスモータ200には、制御電流により形成される磁束φ1が生じる。センサレスブラシレスモータ200における磁束φ1の経路の長さ、並びに磁束φ1の流れる方向と磁束φ0の流れる方向との関係により、U相、V相またはW相の電気巻線(U、V、W)に供給される制御電流の単位時間あたりの変化量が変化する。
通常、ステータとロータとの間に形成されている磁力により生ずるコギングトルクが、センサレスブラシレスモータに備えられたロータに作用する。そして、ロータに作用するコギングトルクにより、ロータは磁気的な安定状態、すなわち、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)のうちいずれか一つの電気巻線が巻装され、ステータに備えられたティースの径方向の中心線に対し、円周方向両側に線対称の位置に極性の異なる永久磁石が配置される状態で停止している。
そのため、第1から第6の通電パターンの制御電流を、順に、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給すると、供給された制御電流により形成される磁束φ1の流れる経路が最小となり、磁束φ1の流れる方向と磁束φ0の流れる方向とが一致する通電パターンが存在する。
そして、磁束φ1の流れる経路が最小となり、磁束φと磁束φ0の流れる方向とが一致する場合には、U相、V相またはW相の電気巻線(U、V、W)に供給される制御電流の単位時間あたりの変化量が最大となる。
本実施の形態のセンサレスブラシレスモータ用制御装置1は、この制御電流の単位時間あたりの変化量が最大となる通電パターンを選定する。そして、選定された通電パターンの情報から、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)が巻装されたステータのそれぞれのティースに対し、永久磁石がどのような位置で配置される状態でロータが停止しているか、すなわち、ロータの停止位置が検出される。
次に、図7に基づき、ステータとロータの間に形成されるコギングトルクにより、ロータがステータに対し任意の位置で停止しているときに、(イ)停止位置検出モードによるセンサレスブラシレスモータ200に備えられているロータの停止位置の検出について説明する。
処理S202により第1の通電パターン生成手段42aから、第1の通電パターン信号がインバータ回路2に供給されると、時刻T1から第1の通電パターンの制御電流のU相の電気巻線(U)からV相の電気巻線(V)への供給が開始される。そして、処理203により、同じく時刻T1から第1のカウンタ53は、カウント値「ゼロ」からカウント値を計数する動作を開始する。
時間の経過ともに上昇する第1の通電パターンの制御電流の電流値は、時刻T1aにおいて電流閾値と一致し、処理204により比較手段52から通知信号が通知される。そして、通知信号を契機に処理205により第1の通電パターンの制御電流のU相の電気巻線(U)からV相の電気巻線(V)への供給は停止されるとともに、処理206により時刻T1から時刻T1aまでに第1のカウンタ53が計数される第1のカウント値C1が記憶手段54に記憶される。なお、第1のカウント値C1は、第1の通電パターンの制御電流の電流値が電流閾値と一致するまでに要する通電時間ΔT1に相当する。
同様に、処理S207から処理211により時刻T2から時刻T2aまでに第1のカウンタ53が計数する第2のカウント値C2が記憶手段54に記憶され、処理212から処理216により時刻T3から時刻T3aまでに第1のカウンタ53が計数する第3のカウント値C3が記憶手段54に記憶され、処理217から処理221により時刻T4から時刻T4aまでに第1のカウンタ53が計数する第4のカウント値C4が記憶手段54に記憶される。
そして、処理222から処理226により時刻T5から時刻T5aまでに第1のカウンタ53が計数する第5のカウント値C5が記憶手段54に記憶され、処理227から処理231により時刻T6から時刻T6aまでに第1のカウンタ53が計数する第6のカウント値C6が記憶手段54に記憶される。なお、第2から第6のカウント値(C2からC6)は、それぞれ第2から第6の通電パターンの制御電流の電流値が電流閾値と一致するまでに要する通電時間ΔT2から通電時間ΔT6に相当する。
第1から第6の通電パターンの制御電流の電流値は、非常に短い時間で電流閾値まで達するため、第1から第6の通電パターンの制御電流により、ロータが回転することはない。
処理232および処理233では、選定手段55は、第1から第6の通電パターン信号のうち、カウント値が最小となったいずれか一つの通電パターン信号を選定するとともに出力する。なお、処理201から処理234までは、数ミリから数十ミリ秒以下で実行される。
例えば、図7に示す場合では、第1から第6のカウント値(C1からC6)のうち第6のカウント値C6が最小であり、第6の通電パターン信号が選定手段55から出力される。なお、第6の通電パターン信号が選定手段55から出力される場合は、U相の電気巻線Uが巻装されたステータのティースに対して、円周方向両側に線対称の位置に極性の異なる永久磁石が配置される位置がロータの停止位置である。
前述のように、センサレスブラシレスモータ200に備えられたロータは、ロータとステータとの間に形成されるコギングトルクにより、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)のうちいずれか一つの電気巻線が巻装されたステータのティースに対し、円周方向両側に線対称の位置に極性の異なる永久磁石が配置される状態で停止している。そして、第1から第6の通電パターンの制御電流のうち単位時間あたりの変化量が最大となる通電パターンの制御電流が必ず1つだけ存在する。
従って、本実施の形態のセンサレスブラシレスモータ用制御装置1は、第1から第6の通電パターンの制御電流からただ一つ存在する単位時間あたりの変化量が最大となる通電パターンを確実に特定することができ、特定された通電パターンからロータの停止位置を特定することができる。さらに、センサレスブラシレスモータ用制御装置1において停止位置を特定するための処理201から処理234までは、数ミリから数十ミリ秒以下の短い時間で実行されるため、速やかにロータの停止位置を検出することができる。
次に、(ロ)停止位置補正モードについて、図8に基づき説明する。上記の第1から第6の通電パターン信号のうちから選定され、カウント値が最小となる通電パターン信号(以下「選定通電パターン信号」とする。)が選定手段55から、第2の指令手段42の第1の通電パターン生成手段42aおよび第2のカウンタ42bに供給されると(ロ)停止位置補正モードは開始される(S301)。
選定通電パターン信号が第1の通電パターン生成手段42aに供給されると、第1の通電パターン生成手段42aは、インバータ回路2への選定通電パターン信号を第2の指令信号として供給することを開始する(S302)。選定通電パターン信号のインバータ回路2への供給により、インバータ回路2から、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)のうちのいずれか2つの電気巻線に、選定通電パターン信号に対応する通電パターンの制御電流の供給が開始される。
第1の通電パターン生成手段42aと同様に、選定通電パターン信号が第2のカウンタ42bに供給されると、第2のカウンタ42bは、カウント値が「ゼロ」にリセットされ(S303)、カウント値「ゼロ」から予め定められた第1のカウント値までの計数を開始する(S304)。そして、第2のカウンタ42bが第1のカウント値までの計数を完了し、カウントアップしたか否かが判断され(S305)、カウントアップしていないと判断される場合には、第2のカウンタ42bがカウントアップされ閾値とカウント値が一致するまで、監視がなされる。
カウントアップされ閾値とカウント値が一致したと判断された場合には、第2のカウンタ42bから閾値とカウント値が一致したことを通知する信号が第1の通電パターン生成手段42aに供給され、第1の通電パターン生成手段42aは、インバータ回路2への選定通電パターン信号の供給を停止する(S306)。選定通電パターン信号のインバータ回路2に対する供給の停止により、インバータ回路2から、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)のうちのいずれか2つの電気巻線に供給されていた制御電流の供給が停止される。
前述したように、通常は、ロータに作用するコギングトルクにより、センサレスブラシレスモータ200のロータは磁気的な安定状態となる位置で停止している。しかしながら、例えば、センサレスブラシレスモータ200が粘性の大きい液体を作動流体とするポンプの駆動源として用いられたときには、コギングトルクよりも作動流体の抵抗力による負荷トルクの方が大きくなる場合がある。
その場合、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)のうちいずれか一つの電気巻線が巻装されたステータのティースの中心線に対し、円周方向両側に非対称の位置に極性の異なる永久磁石が配置される状態でロータが停止してしまうことがある。
例えば、図10に示すように、U相の電気巻線Uが巻装されたティース204Uの中心線L1に対し、極性の異なる永久磁石(202a、202b)が円周方向両側に非対称の位置に配置される状態でロータ201が停止してしまうことがある。
同図においては、W相の電気巻線WからV相の電気巻線Vに供給される第6の通電パターンの制御電流により形成される磁束φ1の経路が、第1から第6の通電パターンの制御電流により形成される磁束φ1の経路のうちで最も短い。また、第6の通電パターンの制御電流により形成される磁束φ1の方向が、永久磁石により形成される磁束φ0の方向と一致している。そのため、第6の通電パターン信号が、選定通電パターン信号として選定されている。
本実施の形態のセンサレスブラシレスモータ用制御装置1では、処理S301から処理307において、選定通電パターン信号に対応する第6の通電パターンの制御電流が、再度、W相の電気巻線WからV相の電気巻線Vに供給される。この第6の通電パターンの制御電流により、ロータ201には、ロータを磁気的な安定状態となる位置に回転させるトルクTq1が生じる。そして、図11に示すように、トルクTq1により、ロータは磁気的な安定状態となる位置に配置される。
(ハ)起動モードについて、図9に基づき説明する。選定通電パターン信号が選定手段55から、第3の指令手段43の第2の通電パターン生成手段43aおよび第3のカウンタ43bに供給されると(ハ)起動モードは開始される(S401)。
第1から第6の通電パターン信号から選定される選定通電パターン信号が第2の通電パターン生成手段43aに供給されると、第2の通電パターン生成手段43aは、選定通電パターン信号として選定された通電パターン信号と異なる通電パターン信号(以下「起動通電パターン信号」)を選定し、選定された起動通電パターン信号を第3の指令信号としてインバータ回路2に対し供給することを開始する(S402)。
起動通電パターン信号のインバータ回路2への供給により、インバータ回路2から、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)のうちのいずれか2つの電気巻線に、起動通電パターン信号に対応する通電パターンの制御電流の供給が開始される。
選定通電パターン信号がインバータ回路2に供給されることによりU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給される通電パターンの制御電流に対し、起動通電パターン信号がインバータ回路2に供給されることによりU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給される制御電流は、以下に示す予め定められる通電パターンの制御電流となる。
選定通電パターン信号により、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)のうち2つの電気巻線(以下「選定電気巻線」とする。)に「一の方向」に流れる制御電流が供給される。これに対し、起動通電パターン信号により、(1)選定電気巻線と異なる電気巻線と、(2)選定電気巻線のうちいずれか一方の電気巻線に制御電流が流れる。そして、(3)選定電気巻線のうちいずれか一方の電気巻線に流れる制御電流は、上記の「一の方向」と反対の「他の方向」に流れる制御電流となる。
例えば、選定通電パターン信号により、第1の通電パターンの制御電流がU相の電気巻線UからV相の電気巻線に流れた場合、(1)U相およびV相の電気巻線(U、V)と異なるW相の電気巻線Wと、(2)U相およびV相の電気巻線(U、V)のうちいずれか一方であるU相またはV相の電気巻線(U、V)、すなわち、W相とU相の電気巻線(W、U)またはW相とV相の電気巻線(W、V)に制御電流が流れる。
そして、その制御電流の流れる向きは、(3)W相とU相の電気巻線(W、U)においてはW相の電気巻線WからU相の電気巻線Uへの方向であり、W相とV相の電気巻線(W、U)においてはV相の電気巻線VからW相の電気巻線Wへの方向である。すなわち、起動通電パターン信号により、W相の電気巻線WからU相の電気巻線Uに流れる第5の通電パターンの制御電流、または、V相の電気巻線VからW相の電気巻線Wに流れる第3の通電パターンの制御電流が電気巻線に供給される。
第2の通電パターン生成手段43aと同様に、選定通電パターン信号が第3のカウンタ43bに供給されると、第3のカウンタ43bは、カウント値が「ゼロ」にリセットされ(S403)、カウント値「ゼロ」から予め定められた第2のカウント値までの計数を開始する(S404)。そして、第2のカウンタ43bが第2のカウント値までの計数を完了し、カウントアップし予め定められた閾値と一致したか否かが判断され(S405)、一致していないと判断される場合には、第3のカウンタ43bが閾値と一致するまで監視がなされる。
閾値と一致したと判断された場合には、第3のカウンタ43bから閾値と一致したことを通知する信号が第2の通電パターン生成手段43aに供給され、第2の通電パターン生成手段43aは、インバータ回路2への起動通電パターン信号の供給を停止する(S406)。起動通電パターン信号のインバータ回路2に対する供給の停止により、インバータ回路2から、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)のうちのいずれか2つの電気巻線に供給されていた制御電流の供給が停止される。
次に、(ニ)フリーランモード(S500)、(ホ)センサレス制御モード(S600)について説明する。上記の(ハ)起動モードの処理が実行されることにより、ロータには、起動トルクが作用し、ロータは所定の回転数以上で回転し、電気巻線には所定の電圧値以上の誘起電圧が生じる。(ニ)フリーランモード(S500)では、この起動トルクによりロータが回転するときに生じる誘起電圧からロータ位置検出手段6により回転中のロータの回転位置を検出し、検出された回転位置に対応する位置信号が、ロータ位置検出手段6より出力する。
(ホ)センサレス制御モード(S600)では、(ニ)フリーランモードにおいて検出された回転中のロータの回転位置の情報が第4の通電指令手段44に供給され、供給された回転中のロータの回転位置の情報に基づき、第4の通電指令手段44は、第1から第6の通電パターンの制御信号を、第4の指令信号としてインバータ回路2に供給する。
この第4の指令信号によりインバータ回路2からU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)には、ロータの回転位置の情報に基づく第1から第6の通電パターンの制御電流が供給され、誘起電圧の信号に基づき制御電流がセンサレスブラシレスモータに供給されるセンサレス制御が実施される。
次に、本実施の形態のセンサレスブラシレスモータ用制御装置1が有する効果について、図12および図13に基づき説明する。図12は、(イ)停止位置検出モードにおいて、第1から第6の通電パターンの制御電流がU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給されたときの各制御電流の通電時間を示す。同図において、ロータが磁気的な安定状態の位置で停止していない状態における通電時間は実線で示される。一方、ロータが磁気的な安定状態の位置で停止している状態における通電時間は破線で示される。
同図におけるロータの位置では、ロータが磁気的な安定状態の位置で停止しているか否かにかかわらず、第6の通電パターンの制御電流がU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給されたときの通電時間が短い。そのため、ロータが磁気的な安定状態の位置に停止しているとき、および安定状態の位置に停止していないときのいずれの場合でも、第6の通電パターン信号が選定通電パターン信号として選定される。そして、選定通電パターン信号として選定された第6の通電パター信号に基づき、第4または第2の通電パターン信号が、起動通電パターン信号として選定される。
図13は、図12においてロータの停止位置が検出され、第4または第2の通電パターン信号が、起動通電パターン信号として選定された後に、(ニ)起動モードにおいて、起動通電パターン信号に対応し第4または第2の通電パターンの制御電流がU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給されたときにロータに作用する起動トルクを示す。同図において、ロータが磁気的な安定状態の位置で停止していない状態における起動トルクを破線で示し、ロータが磁気的な安定状態の位置で停止している状態における起動トルクを実線で示す。
図13の実線にて示すように、ロータが磁気的な安定状態の位置で停止している状態において、第4または第2の通電パターンの制御電流がU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給されたときにロータに作用する起動トルクの値は、それぞれピーク値であるTa、Tbである。それに対し、ロータが磁気的な安定状態の位置で停止していない状態において、第4または第2の通電パターンの制御電流がU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に供給されたときにロータに作用する起動トルクの値は、それぞれTc、Tdとなり、ピーク値であるTa、Tbよりも小さくなる(Tc<Ta、Td<Tb)。
しがたって、ロータが磁気的な安定状態の位置で停止している状態における起動トルクの値に対し、ロータが磁気的な安定状態の位置で停止していない状態おける起動トルクの値は、小さくなってしまう。起動トルクの値が小さくなってしまうと、・・・・?
それに対し、本実施の形態のセンサレスブラシレスモータ用制御装置1は、(イ)停止位置検出モードの後に(ロ)停止位置補正モードが実行される。ロータが磁気的な安定状態の位置で停止していない場合にも、(ロ)停止位置補正モードが実行されることにより、センサレスブラシレスモータ用制御装置1は、ロータの停止位置を磁気的な安定状態の位置へと補正することができる。すなわち、ロータの停止位置を、図12において実線にて示す磁気的な安定状態に停止していない位置から、破線にて示す磁気的な安定状態に停止している位置へと補正することができる。
上記のように、ロータの停止位置を磁気的な安定状態に停止している位置へと補正することができるため、ロータに作用する起動トルクの値を、ピーク値とすることができ、フリーランするロータの回転数を所定の回転数以上とすることができ、ロータの回転位置を検出するのに十分な電圧値の誘起電圧をU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に生じせることができる。停止位置によらず、毎回安定したフリーラン回転数とすることができるので始動失敗による脱調を防ぐことができる。