JP5634541B2 - ブラシレスファンモータの駆動装置及びブラシレスファンモータの制御方法 - Google Patents
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Description
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ブラシレスファンモータのロータ停止位置を精度良く検出できるようにすることを主な目的とする。
コイルに通電したときに、ロータ停止位置によって磁束の流れ易さが異なる。このブラシレスファンモータの駆動装置は、コイルに流れる電流が所定の閾値になるまでに要する時間が通電パターンによって変化することに着目してロータ停止位置を検出する。ロータ停止位置は、コイルの流れる電流が所定の閾値になるまでに要する時間が最も少ない位置になる。
このブラシレスファンモータの駆動装置は、連続して選択された2つの通電パターンの間でカウント値の増減を演算し、マップを検索することでロータ停止位置を決定するための情報を得る。
このブラシレスファンモータの駆動装置は、コイルに過電流を流さないように設けられている過電流検出回路を利用してロータ停止位置を判定する。
このブラシレスファンモータの制御方法は、コイルに流れる電流が所定の閾値以上になったら、電流供給を停止させると共に閾値に達するまでの時間をカウントする。複数の通電パターンについて、電流供給と停止を繰り返し、その間の時間をカウントして比較する。ロータ停止位置は、コイルに流れる電流が所定の閾値になるまでの時間が最も少ない位置になるので、カウント値の変化を調べればロータ停止位置がわかる。
このブラシレスファンモータのロータ停止位置の検出方法は、磁束の流れ易さによるカウント値の変化が通電パターンによって正弦波状又は台形波状に変化することを利用し、3つ又は4つの通電パターンについてカウントを行ってロータ停止位置を検出する。
図1に示すように、ブラシレスモータシステムは、ブラシレスモータ1と、ブラシレスモータ1の回転駆動を制御する駆動装置2とを有する。このブラシレスモータシステムは、ロータ位置を検出するセンサを有しないセンサレスタイプのシステムである。
ブラシレスモータ1は、永久磁石を有するロータとステータを有し、ステータには3相(U、V、W)のコイルU,V,Wが周方向に順番に巻装されている。
この場合は、等価中性点の電位は、電源電圧の1/2を中心にした略三角波になる。
コンパレータ17A〜17Cは、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より高いときはローレベルの信号を出力し、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より低いときはハイレベルの信号を出力するパルス信号を発生させる。各コンパレータ17A〜17Cでは電気角120°の分解能のパルス信号が作成される。これら信号は、それぞれがローパスフィルタ回路18A〜18Cを経て分離手段21に入力される。
過電流保護手段39は、過電流検出信号が入力されるとダイオードに電流が流れ、PWMデューティ決定手段28からの出力信号がHi側プリドライバ37Aに入力されないように構成されている。
通電パターン決定手段26は、停止位置検出モード26Aと、始動励磁モード26Bと、フリーラン制御モード26Cと、定常励磁モード26Dと、ブレーキ停止モード26Eと、停止モード26Fを備えている。
通電パターン決定手段26の停止位置検出モード26Aは、外部からの始動指令を受けて励磁信号出力手段27にロータ停止位置を検出するためのパルス幅変調信号を発生させる。
始動励磁モード26Bは、ロータ位置推定手段31が判定したロータ停止位置に応じた通電パターンを決定する。
フリーラン制御モード26Cは、始動通電パターンを所定の初期通電時間Ts1だけ通電させた後、ブラシレスモータ1をフリーランさせて、励磁切り替えタイミング演算手段22のフリーランモード22Cによってロータ位置を検出する処理を実施する。
定常励磁モード26Dは、ブラシレスモータ1が回転しているときに励磁切り替えタイミング演算手段22の定常モード22Dが演算した励磁切り替えタイミングでロータ位置に応じた通電パターンを決定する。
これらの処理の詳細については、後述する。
電流印加時間比較手段30は、電流印加時間計測手段29の記憶手段29Aに記憶されたカウント値が入力され、後述するデータ処理を実施する。その出力はロータ位置推定手段31に接続されており、ロータ位置推定手段31と共にロータ位置を決定する位置推定手段を構成する。
ロータ位置推定手段31は、電流印加時間比較手段30の計算結果に基づいて停止時や低速時のロータ位置を推定する。
ブラシレスモータ1の始動時は、停止中のブラシレスモータ1を始動する場合と、外力によってブラシレスモータ1が回転させられている状態から始動する場合とがある。例えば、ブラシレスモータ1をラジエータファンの回転機構に使用した場合、ラジエータからエンジンルームに向かう方向に風が吹いている場合には、通電しなくてもラジエータファンの回転に従ってブラシレスモータ1が正回転させられる。これに対して、ブラシレスモータ1が逆回転している場合とは、エンジン側からラジエータの方向に風が吹いているときや、ラジエータファンに対して逆方向に負圧が生じたときが考えられる。
駆動装置2は、横軸に示すブラシレスモータ1の回転速度がゼロを含む領域R1であれば、インダクタンス検出による始動開始処理を実行する。
ブラシレスモータ1の回転速度が正回転方向で領域R1より大きい領域R2にあれば、誘起電圧検出によるロータ位置検出を行い、回転制御をする。逆回転方向に回転速度が領域R1より大きい領域R3にある場合には、逆回転状態判別処理と、ロータの停止処理により領域R1へと移行させ、インダクタンス検出による始動開始処理を実行する。領域R1と領域R2は、回転速度がN1(rpm)付近で重なっている。回転速度N1は、誘起電圧検出によるロータ位置検出が不能となる低速回転速度に相当する。これは、回転速度がゼロ又は低速であれば、インダクタンス検出により電気角60°の分解能でロータ位置を検出し、正転方向に最大トルクを発生させることが可能な位相で通電を実施することができるのに対し、回転速度が上昇するにしたがって、インダクタンス検出によるロータ位置の検出結果は、電気角60°から位相がずれて検出精度が悪くなるため、起動トルクが停止状態と比較して減少するからである。
なお、領域R1と領域R2は、重ならずに回転速度N1を境界として区分けしても良い。領域R1と領域R3は、重ならずに回転速度−N1を境界として区分けしても良い。
モード選択手段40は、回転速度信号と過電流フラグ信号を確認する。過電流フラグは、インバータ回路13のシャント抵抗13Aを流れる電流値をモニタし、シャント抵抗13Aを流れる電流が、所定の値を越えたらON、つまり過負荷状態と判定する。回転速度信号がONとなったとき、過電流フラグがONならば(ステップS101でYes)、全相をOFFにして停止処理を実施して(ステップS102)、ここでの処理を終了する。このとき、PWMデューティを0%に設定し、各種パラメータも初期化する。
これに対し、回転速度信号はONであるが過電流フラグ信号がOFFの場合(ステップS101でNo)、通電パターン決定手段26を停止位置検出モード26Aにセットし(ステップS103)、ブラシレスモータ1のインダクタンスを検出してロータ位置を検出する停止位置検出処理を実施する(ステップS104)。
始動励磁処理を実施したら、ステップS107からステップS108に進んでフリーラン処理が実施される。このフリーラン処理では、慣性でブラシレスモータ1のロータがフリーランしている間に発生する誘起電圧から、正転専用ロジックを用いてロータの位置検出を実施する。
誘起電圧を用いたロータの位置検出が可能になったら、ステップS109からステップS110に進んで定常励磁処理が実施される(ステップS110)。誘起電圧を用いてロータの位置を検出できないときは、ステップS111からステップS112に進んでブレーキ停止処理が実施する(ステップS112)。
通電パターン#1は、U相のコイルUからV相のコイルVに電流を流す。U相がN極磁化され、V相がS極磁化される。
通電パターン#2は、U相からW相のコイルWに電流を流す。U相がN極磁化され、W相がS極磁化される。
通電パターン#3は、V相からW相に電流を流す。V相がN極磁化され、W相がS極磁化される。
通電パターン#4は、V相からU相に電流を流す。V相がN極磁化され、U相がS極磁化される。
通電パターン#5は、W相からU相に電流を流す。W相がN極磁化され、U相がS極磁化される。
通電パターン#6は、W相からV相に電流を流す。W相がN極磁化され、V相がS極磁化される。
通電パターン#1では、U相からV相への通電を行い、その後に回生期間を設ける。すなわち、スイッチング素子40UNとスイッチング素子40VLにデューティ100%のPWM信号を入力し、それぞれをN極磁化とS極磁化する。コイルUからコイルVに電流が流れ、これに応じた電流がシャント抵抗13Aに流れる。シャント抵抗13Aに流れる電流は、電源20を通してブラシレスモータ1に印加される印加電流であり、時間の経過と共に徐々に増加する。
記憶手段29Aに記憶されるカウント値は、ロータ停止位置によって変化する。ロータ停止位置に対応する通電パターンでは、最も磁束が流れ易く、過電流閾値に達するまでの時間が短くなる。図7の例では、通電パターン#3のときが最も大きく、その隣りの通電パターン#2、#4が次に大きい、そして通電パターン#6のときが最も小さい。したがって、通電パターン#6に相当する位置にロータが停止していることになる。このように、カウント値の大小を電流印加時間比較手段30で調べれば、ロータ位置推定手段31においてロータ停止位置を推定することが可能になる。
3相のブラシレスモータ1の2相間に電流を流してロータを回転させると、図8に示すように、位相がずれた正弦波状(又は台形波状)のトルクが発生する。例えば、通電パターン#3であるVW通電状態でロータを外部から回転させようとしたとき、ロータ位置の位相が±0°のときはトルクがゼロになり、ロータ位置の位相が+60°のときはプラス側の最大トルクの86.6%のトルクが得られる。以下、ロータ位置の位相が+120°のときはプラス側の最大トルクの86.6%のトルク、ロータ位置の位相が180°のときはゼロ、ロータ位置の位相が+210°のときはマイナス側の最大トルクの86.6%のトルクがそれぞれ得られる。
したがって、ロータ位置に応じて常にプラス側に大きいトルクが得られるように回転させるためには、ロータ位置がP1のときに通電パターン#3を実施すると、その後トルクが増大するので大きい力でロータ41を回転させることができる。
ロータ位置がP1のとき、ロック通電パターンはUV通電であるため、UV通電パターンから120°位相が進んだVW通電パターンを使用すれば高いトルクで始動させられる。ロック通電状態となるとき、ロータマグネット磁束とコイル磁束は増磁状態なのでコイルのインダクタンスが小さくなる。このため、任意のロータ位置においてコイルインダクタンスの最も小さな通電パターンを検索することで、任意のロータ位置におけるロック通電パターンを特定することができる。したがって、特定したロック通電パターンから120°位相が進んだ通電パターンを使用すれば高いトルクで始動させられる。なお、トルク波形が台形波になるときは、120°矩形波駆動であっても、ほぼ100%トルクを常に出すことができる。なお、ロック通電パターンは、ロータ停止位置に相当するものである。
図9のP6のロータ位置に対して最も増磁となる通電パターンは、通電パターン#6のWV通電である。このときにロータをプラス側の最大トルクでプラス方向に回転させるのは、120°進めた通電パターン#2:UW通電である。これは、P6のロータ位置に対して通電パターン#2の通電を実施すると、ステータコイルの磁束とロータマグネットの磁束による吸引反発の関係から、ロータにプラス方向に回転する力(トルク)を発生させることができるからである。
これは図6の(b)の状態と等価であり、ロータマグネットのN極の方向をd軸、d軸と直交した方向をq軸とすると、ステータコイルによる磁束のq軸成分は−86.6%であり、ロータをプラス方向に回転させると、q軸成分の磁束の絶対値は増加する。
また、P6にあるロータをマイナス側の最大トルクでマイナス方向に回転させるためには、通電パターン#4:VU通電を実施すれば良い。P6のロータ位置に対して通電パターン#4の通電を実施すると、ステータコイルの磁束とロータマグネットの磁束による吸引反発の関係から、ロータにマイナス方向に回転する力(トルク)が発生させられるからである。この場合、これは図6の(d)の状態と等価であり、ステータコイルによる磁束のq軸成分は86.6%であり、ロータをマイナス方向に回転させると、q軸成分の磁束の絶対値は増加する。
このため、吸引力が最大になり、反発力がゼロになる。コイル磁束ベクトルは、d軸成分が100%で、q軸成分が0%になる。瞬間発生トルクは0%になり、ロータがどちらに回転してもq軸成分の磁束の絶対値が増加するが、発生トルクは小さくほとんどゼロである。この状態では、ステータコアを貫く磁束が最大となって、磁気飽和し易い。コアの透磁率が最小になって、ステータコイルのインダクタンスも最小となる。
図9では、破線が発生トルクの変化を示し、実線がインダクタンスの変化を示している。インダクタンスが最大となる通電パターン#3が、通電時間が最も大きくなる通電パターンである。したがって、この通電パターン#3の1つ前の通電パターン、若しくは通電時間が最小となる通電パターン#6の2つ先の通電パターンが、正転方向の最大トルク発生可能通電パターンであり、この場合は通電パターン#2になる。
同様に、通電時間が最大となる通電パターン#3の1つ先の通電パターン、若しくは通電時間が最小となる通電パターン#6の2つ前の通電パターンが、逆転方向の最大トルク発生可能通電パターンである。このように求めた最大トルク発生可能通電パターンを、起動通電パターンにセットすることで、高トルクな起動が可能になる。
図10の(b)に示すように、各通電時間波形を三角波として捉え、これら三角波のそれぞれを微分(差分ΔTをとる)して傾きの符号を求めると、図10の(c)に示すようになる。例えば、ラインL4の通電時間波形で、通電時間T1から通電時間T2に至るまでは減少傾向にあるので、通電時間T1と通電時間T2の差分ΔTの符号は、「−」になる。
マップ30Aの構成を以下に示す。
このように、表1に示すようなマップ30Aを予め用意しておき、前後して通電される2つの通電パターンのそれぞれの通電時間の差分で検索することで、3回又は4回の通電でロータ回転位置を推定できるようになる。なお、全ての場合において4回通電を行ってからロータ停止位置を判別しても良い。
最初に過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aが選択され(ステップS121)、停止位置検出サブルーチンAが実施される(ステップS122)。停止位置検出サブルーチンAは、通電パターンの決定(ステップS122A)と、次のモードへの移行の可否の判定(ステップS122B)を実施する。
始動励磁パターンが確定していないときは、ステップS122BからステップS123に進む。この処理は、過電流検出信号の立下りを検出したときに発生する割り込み処理であり、ブラシレスモータ1に電流が流れている間待機し(ステップS123)、過電流検出が検出されたら(ステップS124)、停止位置検出サブルーチンBを実施する(ステップS125)。その後、停止位置検出サブルーチンAに戻る。
これに対し、始動励磁パターンが確定したときは、ステップS122BからステップS126に進んでカウンタ29Bを停止させる。この後、始動励磁モードに移行し(ステップS127)、過電流保護手段32の過電流検出モード32Bを設定する(ステップS128)。具体的には、過電流検出手段38が過電流を検出したら(ステップS128A)、過電流フラグを「1」にセットする(ステップS128B)。
通電Noカウンタが「1」であれば(ステップS205でYes)、通電パターン#1を実施する(ステップS206)。そして、ここでの処理を抜ける。
同様に、通電Noカウンタが「2」であれば(ステップS207でYes)、通電パターン#2を実施する(ステップS208)。
通電Noカウンタが「3」であれば(ステップS209でYes)、通電パターン#3を実施する(ステップS210)。
カウンタ番号が「2」であれば(ステップS253でYes)、カウンタ29Bのカウント値を通電時間T2として記憶手段29Aにメモリさせる(ステップS254)。さらに、差分T12を算出する(ステップS255)。
カウンタ番号が「3」であれば(ステップS256でYes)、カウンタ29Bのカウント値を通電時間T3として記憶手段29Aにメモリさせる(ステップS257)。さらに、差分T12を算出する(ステップS258)。
一方、差分T12>0で、かつ差分T23<0で(ステップS263)、正転時には(ステップS264でNo)、起動通電パターンを通電パターン#4に設定する(ステップS265)。逆転時であれば(ステップS264でYes)、起動通電パターンを通電パターン#6に設定する(ステップS266)。
ここで、差分T12>0、T23>0,T34>0の場合(ステップS270でYes)、正転時であれば(ステップS271でNo)、起動通電パターンを通電パターン#6に設定する(ステップS272)。逆転時であれば(ステップS271でYes)、起動通電パターンを通電パターン#2に設定する(ステップS273)。
差分T12<0、T23<0,T34<0の場合(ステップS278でYes)、正転時であれば(ステップS279でNo)、起動通電パターンを通電パターン#3に設定する(ステップS280)。逆転時であれば(ステップS279でYes)、起動通電パターンを通電パターン#5に設定する(ステップS281)。
差分T12<0、T23<0,T34>0の場合(ステップS282でYes)、正転時であれば(ステップS283でNo)、起動通電パターンを通電パターン#2に設定する(ステップS284)。逆転時であれば(ステップS283でYes)、起動通電パターンを通電パターン#4に設定する(ステップS285)。
図15に示すように、通電パターン決定手段26の始動励磁モード26Bでは、そのロータ位置に対して最大のトルクを発生可能な位相の始動通電パターンを決定し、励磁信号出力手段27に始動通電パターンを出力させる(ステップS131)。初期通電カウンタを起動させ、予め設定した一定の初期通電時間Ts1が経過するまで、前記した位相に通電する(ステップS132)。そして、所期通電時間Ts1経過したことを確認したら、モード選択手段40が通電パターン決定手段26をフリーラン制御モード26Cにセットする(ステップS133)。
図16に示すように、最初に、通電パターン決定手段26のフリーラン制御モード26Cがフリーランパターンとして、全相の通電をOFFにする通電パターンを出力する(ステップS141)。
慣性でブラシレスモータ1のロータがフリーランしている間に発生する誘起電圧から、正転専用ロジックを用いてロータの位置検出を実施する(ステップS142)。ロータ位置を予め定めた回数だけ検出できたら(ステップS143でYes)、通電パターン決定手段26を定常励磁モード26Dにセットし、誘起電圧によるセンサレス駆動(定常駆動モード)に移行する(ステップS144)。
ステップS143でロータ位置を予め定めた回数検出されていないときは(ステップS143でNo)、誘起電圧のエッジ間隔を計測する回数が予め設定された回数経過するまで(ステップS145)、ステップS142を繰り返す。所定回数経過してもロータ位置を予め定めた回数検出できないときは(ステップS145でYes)、ブラシレスモータ1が逆転していると判定し、モード選択手段40は、通電パターン決定手段26をブレーキ停止モード26Eにセットする(ステップS146)。
図17に示すように、ブレーキ停止モード26Eによるブレーキ停止処理として、低デューティで2相通電ロック処理が行われる(ステップS151)。2相通電ロック処理は、予め定められた一定時間実施し、この時間が経過したら(ステップS152)、停止位置検出モード26Aがセットされる(ステップS153)。
時間t1で始動信号が入力されたら、時間t2までの間にロータ停止位置検出処理(ステップS103)が行われる。この間の回転速度はゼロである。
ここで、初期通電時間Ts1は、通電をOFFにした後で誘起電圧のエッジが複数回、例えば、4回以上発生するまでの間、ロータ41を回転速度N1以上でフリーランさせることができるだけロータ41を加速できる時間である。この観点からは、初期通電時間Ts1が長いことが望ましい。しかしながら、初期通電時間Ts1が長すぎて通常運転時における励磁パターンの切り替え位置を越えて同じ励磁パターンを継続すると、逆トルクが発生してしまってロータ41を減速させてしまう。したがって、初期通電時間Ts1は、逆トルクが発生しない範囲内で、できるだけ長い時間とすることが好ましい。初期通電時間Ts1の決定方法の一例としては、設計段階や製造段階でブラシレスモータ1をホールセンサ付きで始動させ、最初にホールセンサの信号が切り替わるまでの時間を測定し、これと略同じ時間又はこれより短い時間を初期通電時間Ts1として制御装置11に記憶させることがあげられる。
また、イナーシャが大きいブラシレスモータでは、2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔と、3〜4回目の信号SL3,SL4の時間間隔が略等しい。このため、2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔のみでセンサレス駆動に移行しても良い。このようにすると、さらに短い時間で定常的な運転を開始することができる。また、1回目の信号SL1と2回目の信号SL2の時間間隔だけを取得してセンサレス駆動に移行しても良い。イナーシャが小さいブラシレスモータに有効である。この場合は、初期通電時間SL1は予め設定された値を用いており、SL2のタイミングを検出した時点でSL1とSL2の時間間隔を演算し、それをロータ位置信号として使用することができるので、2回目の信号SL2まででセンサレス駆動に移行できるようになる。
また、イナーシャが小さいブラシレスモータでは、減速が大きくなって2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔より、3〜4回目の信号SL3,SL4の時間間隔の方が大きくなる。この場合には、時間間隔の変化から加速度を算出し、この加速度を用いて次の時間間隔を推定することで励磁通電タイミングを算出しても良い。
定常駆動モードでは、モータ端子の誘起電圧を検出してロータ位置を検出するが、誘起電圧波形には方形波状のスイッチングパルス(方形波パルス電圧)が重畳するので、このようなノイズを除去する必要がある。この実施の形態では、各相のロータ位置信号に相当するエッジを検出したときに、他相のレベル検出を行って、ロータ位置信号と方形波パルス電圧とを区別している。この際に使用される正転専用ロジックは、表2に示す誘起電圧信号検出ロジックと、表3に示す方形波パルス電圧終了エッジ判定ロジックとからなる。
なお、正転専用ロジックは、ブラシレスモータ1が正回転していると判定された場合に、回転方向検出ロジック選択手段24の指令によって分離手段21が参照する。
例えば、図21の例では、U相の位置検出信号Ussのエッジの発生タイミングの直前に、W相のマスク信号WmをH(High)レベルに設定する。同様に、V相の位置検出信号Vssのエッジエッジの発生タイミングの直前に、U相のマスク信号UmをH(High)レベルに設定する。W相の位置検出信号Wssのエッジの発生タイミングの直前に、V相のマスク信号VmをH(High)レベルに設定する。これら各マスク信号Um,Vm,Wmの信号レベルは所定の電気角の間維持された後にL(Low)レベルに変更される。
図25に示す範囲R5がブラシレスモータ1の回転速度の制御範囲である場合、ローパスフィルタ回路15A〜15Cは、範囲R5より高い周波数領域にカットオフ周波数fcが設定される。図25は、横軸を周波数の対数表示とし、縦軸を位相にしたボード線図である。カットオフ周波数fcのローパスフィルタ回路15A〜15Cを通った誘起電圧信号には遅れ位相θ1が生じる。遅れ位相θ1は、高周波数になる程、大きくなる。
G(s)=1/(τs+1) (1)
式(1)から、遅れ位相θ1〔rad〕は、
θ1=−arctan(ωτ) (2)
θ1=−arctan(2πτ×f) (3)
となる。単位を〔°〕に変換し、遅れにとると、
θ1=arctan(2πτ×f)×360/2π (4)
となる。電気角60°回転するのに要する時間をTaとすると、1/f=6Taなので、θ1=arctan(2πτ/6Ta)×360/2π (5)
式(5)からローパスフィルタ回路15A〜15Cによる遅れ位相θ1を算出できる。遅れ位相θ1は、式(5)からその都度計算しても良いが、この実施の形態では遅れ位相補正部22Aにマップ登録しておき、時間Taで検索して遅れ位相θ1を求める。
遅れ位相θ2は、ローパスフィルタ回路15A〜15C以外のその他の回路及びソフトウェア処理によって発生する。この遅れ位相θ2は、コンパレータ17A〜17C、ローパスフィルタ回路18A〜18C、マイコンなどに起因して発生する。このときの遅れ時間T2は、回転速度に依らず一定値である。したがって、電気角60°回転するのに要する時間Taに対する遅れ時間T2の割合から遅れ位相θ2を算出できる。
θ2=(T2/Ta)×60〔°〕 (6)
Ew=30−(θ1+θ2) (7)
になる。マップを使用してタイミングEwを補正することで、タイミングEwを速やかに演算できる。さらに、補正したタイミングEwを使用することで、回転速度に依らずに励磁を精度良く切り替えられる。
図26に示すように、始動前の状態が前記したフリーラン状態と同じになる。図5のフローチャートに従ってステップS103からステップS108の処理を実施してもフリーランしている回転状態への影響は少なく、フリーラン状態を維持できる。したがって、ステップS109からステップS110に進んで、定常駆動モードに移行する。
図5のステップS101からステップS108を実施しても、逆方向に回転しているロータ41の誘起電圧波形では、正転専用ロジックでロータ位置信号を抽出することはできない。したがって、ロータ位置信号が例えば1〜9秒程度の所定の時間の間、検出できないときは、励磁切り替えタイミング演算手段22のフリーランモード22Cからの励磁切り替えタイミング信号がモード選択手段40に送られないので、モード選択手段が逆転状態にあると判定する。
この場合、図1に示す制御装置11は、ブレーキ停止モード26Eが2相ロック通電を一定の時間、過電流とならない程度の低いデューティでブラシレスモータ1に印加する(ブレーキ停止モード26E)。ラジエータファンにはブレーキとして働き、ラジエータファンの回転速度が小さくなって、停止状態に近くなる。
インダクタンス検出のための特別の回路が不要になるので回路構成を簡略化できる。
例えば、正転専用ロジックに加えて逆転専用ロジックを使用しても良い。逆転専用ロジックは、回転方向判定手段23が逆転と判定するときに回転方向検出ロジック選択手段24によって選択されるもので、表3に示す誘起電圧信号検出ロジックと、表2に示す方形波パルス電圧終了エッジ判定ロジックとからなり、分離手段21に登録されている。逆転専用ロジックを使用することで逆回転状態にあることを確実に検出できるようになる。
6つの通電パターン全てについてカウント値を計数してロータ停止位置を判定しても良い。
ブラシレスモータ1は、複数台を並列に接続させても良い。
ロータ停止位置を検出した後の始動方法や、定常回転時の駆動方法は、実施の形態に限定されない。
2 駆動装置
11 制御装置
13 インバータ回路
13A シャント抵抗(電流測定手段)
29A 記憶手段
29B カウンタ
30 電流印加時間比較手段(位置推定手段)
30A マップ
31 ロータ位置推定手段(位置推定手段)
38 過電流検出手段(電流比較手段)
41 ロータ
U,V,W コイル
Claims (5)
- エンジンルーム内のラジエータに対して配設され、ラジエータファンの回転機構に使用され、永久磁石を有するロータと複数相のコイルが巻装されたステータを備えるブラシレスファンモータの駆動装置において、
複数相の前記コイルに電流を供給するインバータ回路と、
前記電流の供給を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記コイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させる位置信号発生手段と、
前記コイルに流れる電流の電流値が予め設定された閾値以上になったら、前記コイルに供給する電流を停止させると共に、電流測定手段を用いて測定された電流値が予め設定された閾値に達したことを示す検出信号を出力する電流比較手段と、
前記通電パターンを指令する信号が出力されてから前記検出信号が出力されるまでの時間をカウント値として通電パターンごとに計数するカウンタと、
前記通電パターンを指令する信号に応じて前記コイルに供給する電流の供給と停止が繰り返され、前記発生させた通電パターンごとに計数された前記カウント値から該通電パターンを指令する信号が出力されている期間を前記コイルに電流を供給する期間として得ることにより、前記計数されたカウント値の大小からロータ停止位置を決定する位置推定手段と、
を備えることを特徴とするブラシレスファンモータの駆動装置。 - 連続して選択された2つの通電パターンにおけるカウント値の増減と、ロータ停止位置を関連付けたマップを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のブラシレスファンモータの駆動装置。 - 前記インバータ回路は、複数相の通電切り換え用の複数のスイッチング素子を備え、
前記電流比較手段は、前記インバータ回路に流れる過電流を検出する過電流検出回路であり、
前記電流比較手段が前記過電流を検出した場合、全ての前記スイッチング素子が遮断状態に駆動されるとともに、前記制御装置は、前記コイルの通電を終了させるように制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブラシレスファンモータの駆動装置。 - エンジンルーム内のラジエータに対して配設され、ラジエータファンの回転機構に使用され、永久磁石を有するロータと複数相のコイルが巻装されたステータを備えるブラシレスファンモータの制御方法であって、
複数相の前記コイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させるステップと、
前記コイルに流れる電流が所定の閾値以上になったら、電流供給を停止させるステップと、
前記通電パターンを指令する信号の出力から前記コイルに流れる電流が前記閾値に達するまでの時間をカウント値としてカウンタで計数するステップと、
複数の通電パターンに対して前記カウンタで計数したカウント値から該通電パターンを指令する信号が出力されている期間を前記コイルに電流を供給する期間として得ることにより、前記計数したカウント値の変化からロータ停止位置を判定するステップと、
を備えることを特徴とするブラシレスファンモータの制御方法。 - 前記カウンタで計数するステップは、3つ又は4つの通電パターンについて実施されることを特徴とする請求項4に記載のブラシレスファンモータの制御方法。
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