JP2010088267A - ブラシレスモータの制御装置及び制御方法 - Google Patents

ブラシレスモータの制御装置及び制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ブラシレスモータに供給される電源電圧が変動する場合においても、ロータの停止位置を正確に検出することのできる制御装置を提供する。
【解決手段】ブラシレスモータ1を始動させるとき、制御装置2がロータの停止位置検出区間において、バッテリ電源15の供給する電圧値に応じたデューティ比によるPWM制御によりブラシレスモータ1に通電を行い、通電を停止した後に発生する誘起電流によりロータ位置を検出し、検出したロータ位置とバッテリ電源15の電圧値とに基づいてPWM制御によりロータに一定の力を加える通電を行う。その後、制御装置2は、通電を停止して、フリーラン中のロータの回転位置に応じて発生する励磁切り替えタイミング信号を検出し、検出した励磁切り替えタイミング信号を用いて定常時励磁パターン選択手段によりセンサレス駆動に移行する。
【選択図】図1

Description

本発明は、主にブラシレスモータの制御装置に関する。
ロータが永久磁石を有するタイプのブラシレスモータは、ロータの回転位置を検出する位置センサを設けずに位置センサレスで駆動制御を行うことがある。この場合には、開放区間(非通電相)のモータ端子に現れる誘起電圧と等価中性点電位をコンパレータに入力して得られるパルス信号のエッジ間隔からロータの回転位置を検出している。ところが、ブラシレスモータの始動時など、回転数がゼロである場合や回転数が極めて小さい場合には、誘起電圧が発生しないか極めて小さいので、回転位置の検出に十分な信号が得られなかった。
ロータの停止位置を検出する従来の方法としては、ロータが動かない程度の短いパルス電流を1つのコイルから他の2つのコイルに同時に流し、ロータの停止位置の違いによって微妙に変化するインダクタンスの違いで生じるキックバックパルス信号(還流電流)の時間幅の差に基づいてロータ静止位置を識別するものがある(例えば、特許文献1)。この方法に使用される回路は、コイルごとにコンパレータを有する。コイルに発生するキックバックパルス信号の電圧としきい電圧とをコンパレータで比較することでキックバックパルス信号が発生している時間によりロータの停止位置を検出する。
特開2002−335691号公報
しかしながら、上述の方法では、外部環境、例えば、温度や他の負荷によりブラシレスモータに供給する電源電圧が低い場合、位置検出を行うのに十分な電流のキックバックパルス信号(還流電流)がコイルに流れずに当該還流電流の測定ができないためにロータ位置の検出が行えないという問題がある。一方、電源電圧が高い場合、ブラシレスモータのコイルに過電流が流れてロータ及びステータの永久磁石に不可逆的な減磁が生じてしまうという問題がある。
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、ブラシレスモータに供給される電源電圧が変動する場合においても、ロータの停止位置を正確に検出することのできる制御装置を提供することにある。
上記問題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、ブラシレスモータを駆動させる駆動装置であって、始動信号が入力されると、当該ブラシレスモータに供給される電源の電圧値に基づいて前記ブラシレスモータが有する複数のコイルに通電するための停止位置検出通電パターンかを選択する停止位置検出パターン選択手段と、選択された前記停止位置検出通電パターンに基づいて前記複数のコイルに通電がなされた後、通電を停止した際に発生する誘起電流から前記ロータの停止位置を検出するロータ停止位置検出手段と、前記ロータの停止位置を検出の後に、前記ロータの停止位置及び前記電源値に基づいて、PWM制御により予め定めた電流値で前記複数のコイルに通電を行うためのフリーラン通電パターンを選択する始動励磁パターン選択手段と、前記ロータの回転により発生する誘起電流から検出される前記ロータの位置及び回転速度に基づいて、PWM制御により前記複数のコイルに通電を行うための運転通電パターンを選択する定常時励磁パターン選択手段と、前記複数のコイルに対して、選択された前記停止位置検出通電パターンに基づいて通電を行い、次に選択された前記フリーラン通電パターンに基づいて通電を行い、その後に選択された前記運転通電パターンに基づいて通電を行う励磁電圧出力手段と、を有することを特徴とするブラシレスモータの制御装置である。
このようにブラシレスモータの駆動装置では、電源の電圧値に応じたデューティ比によるPWM制御を行うことにより一定の電流を複数のコイルに印加してロータの位置を検出し、検出したロータの位置と電圧値とに基づいてロータを一旦加速してフリーラン状態にし、フリーラン中に発生する誘起電圧からロータの位置を検出し、検出したロータ位置から複数のコイルを通電させてブラシレスモータを回転させるセンサレス駆動に移行する。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のブラシレスモータの制御装置であって、前記電圧値ごとに対応した複数の前記停止位置検出通電パターン、前記フリーラン通電パターン、及び、前記定常時励磁パターンが記録された印加電圧・電流制御マップ記憶手段と、を有することを特徴とする。
予め通電パターンを用意しておくことにより、ブラシレスモータを動作させる際の計算量を削減することができる。
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載のブラシレスモータの制御装置であって、前記ロータ停止位置検出手段による前記ロータの位置検出の前に、前記ブラシレスモータが有する複数のコイルのうち所定のコイルにのみ通電するブレーキ通電パターンを前記電圧値に基づいて選択する停止パターン選択手段、を有し、前記印加電圧・電流制御マップ記憶手段には、前記電圧値ごとに対応した複数の前記ブレーキ通電パターンが記憶され、前記励磁電圧出力手段は、選択された前記ブレーキ通電パターンに基づいて通電することを特徴とする。
ブラシレスモータを始動させる前のロータの停止位置検出が正しく行えないとき、特定のコイルのみに通電するブレーキ通電を行い、ロータを特定の位置で停止させてロータの位置を検出することができる。
また、請求項4に係る発明は、ブラシレスモータを駆動させる駆動方法であって、始動信号が入力されると、前記ブラシレスモータに供給される電源の電圧値に基づいて停止位置検出通電パターンを選択するステップと、選択された前記停止位置検出通電パターンに基づいて前記ブラシレスモータが有する複数のコイルに通電を行うステップと、選択された前記停止位置検出通電パターンに基づいた前記複数のコイルに通電の後、通電を停止した際に発生する誘起電流から前記ロータの停止位置を検出するステップと、前記ロータの停止位置を検出の後に、前記ロータの停止位置及び前記電圧値に基づいてPWM制御により予め定めた電流値で前記複数のコイルに通電を行うためのフリーラン通電パターンを選択するステップと、選択された前記フリーラン通電パターンに基づいて前記複数のコイルに通電を行うステップと、前記ロータが回転により前記複数のコイルに発生する誘起電圧から検出される前記ロータの位置及び回転速度に基づいて、PWM制御により前記複数のコイルに通電をするための運転通電パターンを選択するステップと、選択された前記運転パターンに基づいて前記複数のコイルに通電を行うステップと、を有することを特徴とするブラシレスモータの制御方法である。
このブラシレスモータの制御方法では、始動開始前にロータの位置を検出し、検出したロータの位置と電源の電圧値とに基づいて予め定めた電流を印加してロータを回転させてフリーランさせた後に、センサレス駆動に移行する。
この発明によれば、ブラシレスモータの制御装置は、ブラシレスモータに供給される電圧が変動する場合においても、電圧値に応じたデューティ比を用いたPWM制御によりブラシレスモータが有する複数のコイルに通電することにより、電圧値の変化によらずブラシレスモータに安定した通電を行うことができる。これにより、制御装置は、ロータが停止状態のときにロータの停止位置を正しく検出し、検出したロータ位置と電圧値とに基づいたPWM制御を行うことにより一定の電流値による通電を行うことでロータの回転数を安定させた始動が可能になる。また、フリーランにおいて、電源電圧ロータの回転数が安定することで、正しくロータの回転を検出することが容易になり、短時間でロータの回転位置を検出して、ブラシレスモータを通常運転にすることが可能となる。
以下、本発明の一実施形態によるブラシレスモータの制御装置を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるブラシレスモータ1と、ブラシレスモータ1の回転を制御する制御装置2とを有するブラシレスモータ装置100を示す概略ブロック図である。
ブラシレスモータ1は、永久磁石を有するロータとステータとを有し、ステータには3相(U相、V相、W相)のコイルが週方向に巻装されている。なお、このブラシレスモータ装置100は、ロータの位置を検出するセンサを有しないセンサレスタイプの装置である。
制御装置2は、マイコンなどから構成される制御部11と、誘起電圧I/F(インターフェイス)回路12と、インバータ13と、端子電圧レベル変換回路14と、ブラシレスモータ1を駆動するためのバッテリ電源15と、バッテリ電源15の供給する電圧を計測するバッテリ電源電圧モニタ手段16と、インバータ13が備える複数のスイッチング素子13Aのオン・オフを切り替えるプリドライバ17と、過電流検出回路18とを有する。なお、バッテリ電源15は、本実施形態において定格電圧12Vを供給する3個の鉛バッテリを直列接続することで構成され、使用環境や負荷などにより供給する電圧が27V〜48Vの間で変化する。
誘起電圧I/F回路12は、3相のそれぞれのモータ端子から電圧が入力され、等価中性点電位を検出してモータ端子電位と比較して3つのパルス信号を生成し、生成したパルス信号をロータ回転位置検出手段21に出力する。ここで、誘起電圧I/F回路12のパルス信号を生成する回路として、例えば、U相については、V相とW相とのモータ端子から等価中性点電位を検出する2相間比較方式を採用し、当該中性点電位とU相のモータ端子に印加される電位とを比較して大きいときにハイレベルの信号を出力し、小さいときにローレベルの信号を出力してパルス信号を出力する。また、誘起電圧I/F回路12は、U相と同様に、V相及びW相のモータ端子電位と等価中性点電位とを比較して、V相及びW相のパルス信号を生成してロータ回転位置検出手段21に出力する。
インバータ13は、図示するように、6個のスイッチング素子13Aを2個ずつ直列に接続し、当該直列接続されたスイッチング素子13Aをバッテリ電源15に対して並列に接続し、バッテリ電源15に対して並列にコンデンサ13Bを接続して構成される回路であって、バッテリ電源15から供給される直流電圧をプリドライバ17から入力されるパルス幅変調信号(駆動信号)に基づく交流電圧に変換し、ブラシレスモータ1の各相、U相、V相、W相に印加する。各スイッチング素子13Aは、例えば、FET(Field Effective Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などを用いて構成される。なお、インバータ13と接地電位との間には、過電流検出回路18がインバータ13に流れる電流を検出できるようにシャント抵抗13Cが設けられている。
端子電圧レベル変換回路14は、ブラシレスモータ1の通電線に印加される電圧(例えば、36V)を、2つの抵抗で分圧して制御部11で使用可能なレベルの電圧(例えば、3Vや5V)に変換する回路である。
プリドライバ17は、制御部11から入力される信号により、インバータ13のスイッチング素子13Aのオン・オフを切り替えて、ブラシレスモータ1のコイルに電圧・電流を印加する。また、プリドライバ17は、過電流検出回路18からか電流が流れていることを示す信号が入力されると、バッテリ電源15に接続されたスイッチング素子13Aをオフにしてブラシレスモータ1のコイルに過電流が流れることを防ぐ。
制御部11は、誘起電圧I/F回路12に接続されるロータ回転位置検出手段21と、バッテリ電源電圧モニタ手段16に接続される印加電圧・電流制御マップ記憶手段22と、励磁電圧出力手段23と、端子電圧レベル変換回路14に接続されるロータ停止位置検出手段24と、外部から始動信号が入力される通電パターン決定手段26とを有する。
ロータ回転位置検出手段21は、入力される3相それぞれの誘起電流からロータの回転位置及び回転速度を検出して通電パターン決定手段26に出力する。
印加電圧・電流制御マップ記憶手段22には、バッテリ電源15が出力し得る電圧値ごとに対応した複数の停止位置検出通電パターンが記録された停止位置検出通電テーブルと、バッテリ電源15が出力し得る電圧値ごとに対応した複数のフリーラン通電パターンが記録されたフリーラン通電テーブルと、ロータの回転位置及び回転速度の組み合わせそれぞれに対応した複数の運転通電パターンが記録された運転通電テーブルと、バッテリ電源15が出力し得る電圧値ごとに対応した複数のブレーキ通電パターンが記録されたブレーキ通電テーブルとが記憶されている。
ここで、停止位置検出通電パターンは、励磁電圧出力手段23に対して予め定められたU相、V相、W相のうちの2相に順次通電する停止位置検出用の励磁パターン(インバータ13に備えられたスイッチング素子13Aのオン・オフの組み合わせ)と、バッテリ電源15の供給し得る最小の電圧値である27Vを常に印加するデューティ比とが含まれる情報である。なお、停止位置検出のためのコイルへの通電は、ロータが回転しない程度の電流値で短時間に行われる。また、ロータの停止位置検出におけるデューティ比は、バッテリ電源15が供給する電圧が高くなると、小さくなり、PWM制御によりコイルに印加する電圧を27Vで安定させる。
これにより、キックバックパルス信号の最大値は、バッテリ電源15から供給される電圧値が変化しても一定に保つことができ、ロータの停止位置検出の精度を高めることが可能になる。なお、ロータが回転しない程度の時間は、ブラシレスモータ1のイナーシャ(慣性)などによって異なるが、例えば、数μ秒から数m秒である。
また、フリーラン通電パターンとは、励磁電圧出力手段23にロータを所定の回転速度で回転させる通電を行うための励磁パターンと、コイルに一定の電流を印加するデューティ比とが含まれる情報である。ここで、フリーラン通電パターンにおけるデューティ比は、バッテリ電源15が供給する電圧が高くなると小さくなり、バッテリ電源15が供給する電圧が低くなると大きくなり、PWM制御によりコイルに印加される電流を安定させる。これにより、フリーラン状態において、ロータの回転数は、バッテリ電源15の供給する電圧値に係らず安定させることが可能になる。ここで、所定の回転速度とは、U相、V相、W相それぞれに発生する誘起電流(還流電流)により、ロータ回転位置検出手段21がロータの回転位置及び回転速度の検出を行うことでセンサレス駆動に移行できるロータの回転速度である。また、この一定の電流とは、ブラシレスモータ1の特性値を用いたシミュレーションや、実機を用いた実験などから計測されたセンサレス駆動に移行するために十分な回転数が得られる電流である。
また、運転通電パターンとは、ロータ回転位置検出手段21が検出するロータの位置とロータの回転速度とに応じた励磁パターン及びコイルに印加する電圧を決定するデューティ比とを含む情報である。
また、ブレーキ通電パターンとは、U相、V相、W相のいずれかのコイルから他のコイルに電流を流す励磁パターンと、一定の電流をブラシレスモータ1のコイルに印加するためのデューティ比とが含まれる情報である。これにより、ロータを特定のコイルに一定の力で引き付けて、ロータを所望の位置に固定することができる。バッテリ電源15の供給する電圧値に係らず一定の電流をコイルに流すことができるので、ロータを所望の位置に固定するまでの時間が安定すると共に、バッテリ電源15の供給する電圧値が高いときにロータ及びステータの永久磁石に対して不可逆的減磁を起こすことを防ぐことができる。
なお、ブレーキ通電パターンにおけるデューティ比は、バッテリ電源15の供給する電圧値が大きくなると小さくなり、コイルに印加する電流値を一定に保つ。
励磁電圧出力手段23は、通電パターン決定手段26から入力される励磁パターン及びPWM制御のデューティ比に基づいて、プリドライバ17を介して、インバータ13の制御を行い、ブラシレスモータ1のコイルに通電する制御を行う。
ロータ停止位置検出手段24は、停止位置検出通電パターンを用いてブラシレスモータ1のコイルに通電した後に、通電を停止した際に発生するキックバックパルス信号(還流電流)が端子電圧レベル変換回路14を介して入力され、入力されたキックバックパルス信号に基づいて、ロータの停止位置又はロータの低速回転時のロータ位置を検出する。
通電パターン決定手段26は、停止位置検出パターン選択手段31と、始動励磁パターン選択手段32と、フリーラン制御手段33と、定常時励磁パターン選択手段34と、停止パターン選択手段35とを有する。
停止位置検出パターン選択手段31は、外部から始動信号が入力されると、バッテリ電源電圧モニタ手段16から入力されるバッテリ電源15が供給する電圧値に対応した停止位置検出通電パターンを印加電圧・電流制御マップ記憶手段22から読み出して(選択して)、励磁電圧出力手段23がロータ停止位置を検出するためのパルス幅変調信号をプリドライバ17に出力させる制御を行う。
始動励磁パターン選択手段32は、ロータ停止位置検出手段24が検出したロータの停止位置又は低速回転時のロータ位置と、バッテリ電源電圧モニタ手段16から入力されるバッテリ電源15の電圧値とに対応したフリーラン通電パターンを読み出して、励磁電圧出力手段23が所定の初期通電時間の間通電するためのパルス幅変調信号をプリドライバ17に出力させる制御を行う。
フリーラン制御手段33は、始動励磁パターン選択手段32が初期通電時間の間通電した後に、ロータをフリーランさせて当該ロータの回転位置をロータ回転位置検出手段21に検出させる制御を行う。
定常時励磁パターン選択手段34は、ブラシレスモータ1が回転しているときにロータ回転位置検出手段21から入力されるロータの回転位置及び回転速度に対応した運転通電パターンを印加電圧・電流制御マップ記憶手段22から読み出して、読み出した運転通電パターンに基づいて励磁電圧出力手段23が誘起電圧によるセンサレス駆動をするためのパルス幅変調信号をプリドライバ17に出力させる制御を行う。
停止パターン選択手段35は、バッテリ電源電圧モニタ手段16から入力されるバッテリ電源15が供給する電圧値に対応したブレーキ通電パターンを読み出して、読み出したブレーキ通電パターンに基づいて励磁電圧出力手段23がロータをU相、V相、W相のいずれかに一定の力で引き付けるパルス幅変調信号をプリドライバ17に出力させる制御を行う。これにより、ロータが外的要因で回転しているとき、ロータを特定の位置に停止させることができる。
次に、図2は、ロータの停止位置検出の処理を示す概略波形図である。
ロータの停止位置検出は、ステップ0〜ステップ12のステップからなり、各ステップを開始する際に、ロータ停止位置検出手段24が有するカウンタの値がリセットされる。
ステップ0において、停止位置検出パターン選択手段31は、励磁パターン#1(UV通電)を選択し、励磁電圧出力手段23及びプリドライバ17を介して電源電圧に応じたデューティ比によるPWM制御によりインバータ13を制御して、U相のコイルからV相のコイルへ通電する制御を行う。
次に、ステップ1では、停止位置検出パターン選択手段31は、励磁電圧出力手段23とプリドライバ17とを介して、インバータ13のスイッチング素子13Aを全てオフ状態にする。このとき、U相のコイルとV相のコイルとに蓄えられていた電気エネルギによる還流電流がシャント抵抗電流として流れ、V相のモータ端子にスパイクパルス信号が発生する。ロータ停止位置検出手段24は、端子電圧レベル変換回路14を介して入力されるV相のモータ端子におけるスパイクパルス信号の時間幅をカウンタを用いて計測する。
ステップ2では、停止位置検出パターン選択手段31は、励磁パターン#2(UW通電)を選択し、励磁電圧出力手段23及びプリドライバ17を介して電源電圧に応じたデューティ比によるPWM制御によりインバータ13を制御して、U相のコイルからW相のコイルへ通電する制御を行う。
次に、ステップ3では、停止位置検出パターン選択手段31は、励磁電圧出力手段23とプリドライバ17とを介して、インバータ13のスイッチング素子13Aを全てオフ状態にする。このとき、U相のコイルとW相のコイルとに蓄えられていた電気エネルギによる還流電流がシャント抵抗電流として流れ、W相のモータ端子スパイクパルス信号が発生する。ロータ停止位置検出手段24は、端子電圧レベル変換回路14を介して入力されるW相のモータ端子におけるスパイクパルス信号の時間幅をカウンタを用いて計測する。なお、以下、ステップ0及びステップ2と同様に、停止位置検出パターン選択手段31は、励磁電圧出力手段23とプリドライバ17とを介して電源電圧に応じたデューティ比によるPWM制御によりインバータ13を制御して、コイルに通電する。
ステップ4では、停止位置検出パターン選択手段31は、励磁パターン#3(VW通電)を選択する。ステップ5では、停止位置検出パターン選択手段31は、インバータ13のスイッチング素子13Aを全てオフ状態する。このとき、ロータ停止位置検出手段24は、端子電圧レベル変換回路14を介して入力されるW相のモータ端子におけるスパイクパルス信号の時間幅をカウンタを用いて計測する。
ステップ6では、停止位置検出パターン選択手段31は、励磁パターン#4(VU通電)を選択する。ステップ7では、停止位置検出パターン選択手段31は、インバータ13のスイッチング素子13Aを全てオフ状態する。このとき、ロータ停止位置検出手段24は、端子電圧レベル変換回路14を介して入力されるU相のモータ端子におけるスパイクパルス信号の時間幅をカウンタを用いて計測する。
ステップ8では、停止位置検出パターン選択手段31は、励磁パターン#5(WU通電)を選択する。ステップ9では、停止位置検出パターン選択手段31は、インバータ13のスイッチング素子13Aを全てオフ状態する。このとき、ロータ停止位置検出手段24は、端子電圧レベル変換回路14を介して入力されるU相のモータ端子におけるスパイクパルス信号の時間幅をカウンタを用いて計測する。
ステップ10では、停止位置検出パターン選択手段31は、励磁パターン#6(WV通電)を選択する。ステップ11では、停止位置検出パターン選択手段31は、インバータ13のスイッチング素子13Aを全てオフ状態する。このとき、ロータ停止位置検出手段24は、端子電圧レベル変換回路14を介して入力されるV相のモータ端子におけるスパイクパルス信号の時間幅をカウンタを用いて計測する。
そして、ステップ11に続くステップ12のタイミングで、ロータ停止位置検出手段24は、ステップ0〜ステップ11においけ計測したそれぞれのスパイクパルス信号のなかからスパイクパルス信号の時間幅が最も短い励磁パターンを選択し、選択した励磁パターンでインダクタンスが最小になるロータ位置をロータの停止位置とする。例えば、図2においては、励磁パターン#6のスパイクパルス信号の時間幅が最も短くなる。そして、ロータ停止位置検出手段24は、このときのロータの位置を停止位置として始動励磁パターン選択手段32に出力する。
次に、図3は、始動信号が入力されてからブラシレスモータ1がセンサレス駆動するまでの動作を示す概略波形図である。図3は、横軸方向に時間経過をとっており、縦軸方向に各種の情報が並んで配置されており、最も上側に示されているホールセンサ合成信号は、ホールセンサがブラシレスモータ1に取り付けられていた場合にホールセンサの出力として想定される信号である。
まず、時刻1において、始動信号が制御装置2に入力されると、時刻t2までの間に上述したロータ停止位置検出処理が行われる。このカンのロータの回転速度はゼロである。
なお、バッテリ電源電圧モニタ手段16は、始動信号が入力されるまで常にバッテリ電源15の電圧値を計測し、始動信号が入力されるとバッテリ電源15の電圧値の計測をやめ、最後に計測した電圧値を出力する。
続いて、時刻t2において、ロータ停止位置検出手段24によりロータの停止位置が検出されたら、シャント抵抗13Cの電流波形に示すように、始動励磁パターン選択手段32は、バッテリ電源15の電圧値に対応したフリーラン通電パターンを選択し、励磁電圧出力手段23及びプリドライバ17を介して、インバータ13がコイルに一定の電流を通電してロータに力を加えて回転させる。この間、ロータの回転速度が徐々に増大する。
ここで、初期通電時間Ts1は、通電をオフ状態にした後で誘起電圧のエッジが複数回、例えば、4回以上発生するまでの間、ロータを一定の回転速度でフリーランさせることができるまでロータを加速できる時間である。この観点からは、初期通電時間Ts1が長いことが望ましいが、長すぎると励磁パターンの切り替え位置を越えても同じ励磁パターンにより通電を続けると、逆トルクが発生してしまいロータを減速させてしまう。従って、初期通電時間Ts1は、逆トルクが発生しない範囲内で、できるだけ長い時間とすることが好ましい。
初期通電時間Ts1の決定方法の一例としては、設計段階におけるシミュレーションや実機にホールセンサを取り付けた測定で、ブラシレスモータ1を始動させ、最初に励磁切り替えタイミングとなるまでの時間を測定し、これと同じ時間又はこれより短い時間を初期通電時間Ts1とする。印加電圧・電流制御マップ記憶手段22には、この初期通電時間Ts1に基づいたフリーラン通電パターンとして記憶させるとともに、フリーラン制御手段33は、このように定めた初期通電時間Ts1の間通電する動作させる。
時間t3で初期通電時間Ts1が経過したら、フリーラン制御手段33が全相への通電をOFFにする。シャント抵抗13Cを流れる電流値がゼロになり、ロータがフリーランする。以降は、時間の経過と共に回転速度がゆるやかに減少する。時間t3では、各位置信号にパルスが現れている。このため、3相合成信号の立ち上がりエッジに対応して、励磁切り替えタイミング信号に1つ目の信号SL1が発生している。このとき、パルス信号は、ステータのコイルに蓄積されたエネルギがフライホイールパルスとして放出されときに、3相全てのモータ端子電圧に方形波パルス電圧が発生することに起因して発生している。通常駆動の場合はこれらのキックバックパルス信号はロータ回転位置検出手段21により無視できるが、時間t3では全相をOFFするロジックなので、通常駆動時には在り得ない例外状態となるため、キックバックパルス信号を無視できずに誤検出となる。このため、始動後の1回目の信号SL1はロータ位置の検出には使用しない。
さらに、W相位置信号、U相位置信号、V相位置信号の順番に立ち上がりエッジ、又は立ち下がりエッジが発生している。その結果、励磁切り換えタイミング信号は、W相のエッジに起因する2回目の信号SL2と、U相のエッジに起因する3回目の信号SL3と、V相のエッジに起因する4回目の信号SL4とが発生する。なお、全相をOFFにすることで、インバータ13からブラシレスモータ1に入力されるパルス幅変調信号などの不要な信号成分がない状態で誘起電圧と等価中性点電位の交点を計測できるようになるので、ロータ回転位置検出手段21によりロータ位置を正確に検出できる。
この間、ロータ回転位置検出手段21は、2回目の信号SL2と3回目の信号SL3の時間間隔を計測して電気角60°を算出する。さらに、3回目の信号SL3と4回目の信号SL4の時間間隔を計測して電気角60°を算出する。これら時間間隔に基づいて、4回目の信号SL4から例えば電気角30°進角させるなどして、励磁切り替えタイミングを算出する。そして、以降は、モータ端子電圧と等価中性点電位の比較結果から生成される3相合成信号に基づいて励磁切り替えタイミングを決定し、通電パターンの切り替え制御を行うことで、ブラシレスモータ1のセンサレス駆動が行われる。ホールセンサを有する場合の電気角120°矩形波駆動と同等性能の駆動が可能になって、回転速度が制御される。
なお、イナーシャが大きいブラシレスモータでは、5回目以降の信号を取得し、同様にして時間間隔から励磁通電タイミングを算出しても良い。始動時の安定性や、正確性をさらに向上できる。
また、イナーシャが大きいブラシレスモータでは、2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔と、3〜4回目の信号SL3,SL4の時間間隔が略等しい。このため、2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔のみでセンサレス駆動に移行しても良い。このようにすると、さらに短い時間で定常的な運転を開始することができる。また、1回目の信号SL1と2回目の信号SL2の時間間隔だけを取得してセンサレス駆動に移行しても良い。イナーシャが小さいブラシレスモータに有効である。この場合は、初期通電時間SL1は予め設定された値を用いており、SL2のタイミングを検出した時点でSL1とSL2の時間間隔を演算し、それをロータ位置信号として使用することができるので、2回目の信号SL2まででセンサレス駆動に移行できるようになる。
また、イナーシャが小さいブラシレスモータでは、減速が大きくなって2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔より、3〜4回目の信号SL3,SL4の時間間隔の方が大きくなる。この場合には、時間間隔の変化から加速度を算出し、この加速度を用いて次の時間間隔を推定することで励磁通電タイミングを算出しても良い。
次に、図4は、本実施形態と従来例とそれぞれのロータの停止位置検出における電流値を比較する波形図である。図4において、横軸方向に時間経過をとっており、縦軸方向にブラシレスモータ1に流れる電流値を示している。
図4(a)は、バッテリ電源15の供給する電圧値が、27V、30V、36V、42V、48Vそれぞれの場合における本実施形態の電流値を示す波形図である。図4(b)は、バッテリ電源15の供給する電圧値が、27V、30V、36V、42V、48Vそれぞれの場合における従来例の電流値を示す波形図である。
図示するように、本実施形態においては、バッテリ電源15の供給する電圧値に応じてデューティ比を変化させたことで、バッテリ電源15の供給する電圧値に関わらずシャント抵抗電流のビーク値を略24Aに保たれている。
また、図5は、本実施形態と従来例とそれぞれのフリーランにおけるロータの回転数を比較する波形図である。図5(a)は、バッテリ電源15の供給する電圧値が、27V、30V、36V、42V、48Vそれぞれの場合における本実施形態のフリーランにおける回転数を示す波形図である。図5(b)は、バッテリ電源15の供給する電圧値が、27V、30V、36V、42V、48Vそれぞれの場合における従来例のフリーランにおける回転数を示す波形図である。
図示するように、本実施形態においては、バッテリ電源15の供給する電圧値に応じてデューティ比を変化させたことで、バッテリ電源15の供給する電圧値に関わらずロータの回転速度が略150rpmに保たれている。一方、従来例においては、回転数にばらつきが生じ、電圧値が27Vでは電気角960度、1080度及び1320度ではロータの回転数が下がり、ロータ位置検出エラーにより誤った回転速度が検出されてしまっている。なお、ここでは、ロータ回転数の検出の下限は100rpmになっている。
上述のように、始動信号が入力されてからブラシレスモータ1のセンサレス駆動を行うまでの処理において、ブラシレスモータ1に印加する電圧をPWM制御によりバッテリ電源15が供給する電圧値に関わらずブラシレスモータ1に一定の電流を流すことで、ロータの停止位置検出を行い、フリーランにおいてロータを一定の回転速度で回転させることができ、ロータ位置検出を安定して行うことが可能となる。
また、バッテリ電源15から供給される電圧が高い場合、PWM制御のデューティ比を少なくすることで、ブラシレスモータ1に印可する電圧・電流を抑えることができ、過電流が流れることを防ぐことができる。これにより、ロータ及びステータに備えられる永久磁石に対して不可逆的な減磁が発生してブラシレスモータ1を劣化させることを防ぐことができる。
なお、本実施形態においては、印加電圧・電流制御マップ記憶手段22は、バッテリ電源15から供給される電圧値と、バッテリ電源15の近傍の温度とによる2つのパラメータの値ごとに対応する停止位置検出通電パターン、フリーラン通電パターン及び運転通電パターンを記憶してもよい。これにより、温度によりバッテリ電源15が供給する電圧値が、変化する場合にも対応することができ、ブラシレスモータ1に安定して通電を行うことによりロータの停止位置が正しく検出して始動性能を向上させることが可能となる。
上述の制御部11は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。その場合、上述した始動信号が入力されてからセンサレス駆動に移行するまでの処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われることになる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
本実施形態によるブラシレスモータと、ブラシレスモータの回転を制御する制御装置とを有するブラシレスモータ装置を示す概略ブロック図である。 同実施形態におけるロータの停止位置検出の処理を示す概略波形図である。 同実施形態における始動信号が入力されてからブラシレスモータ1がセンサレス駆動するまでの動作を示す概略波形図である。 同実施形態と従来例とそれぞれのロータの停止位置検出における電流値を比較する波形図である。 同実施形態と従来例とそれぞれのフリーランにおけるロータの回転数を比較する波形図である。
符号の説明
1…ブラシレスモータ、2…制御装置、11…制御部
12…誘起電圧I/F回路、13…インバータ、13A…スイッチング素子
13B…コンデンサ、13C…シャント抵抗、14…端子電圧レベル変換回路
15…バッテリ電源、16…バッテリ電源電圧モニタ手段、17…プリドライバ
18…過電流検出回路
21…ロータ回転位置検出手段、22…印加電圧・電流制御マップ記憶手段
23…励磁電圧出力手段、24…ロータ停止位置検出手段
26…通電パターン決定手段、31…停止位置検出パターン選択手段
32…始動励磁パターン選択手段、33…フリーラン制御手段
34…定常時励磁パターン選択手段、35…停止パターン選択手段
100…ブラシレスモータ装置

Claims (4)

  1. ブラシレスモータを駆動させる駆動装置であって、
    始動信号が入力されると、当該ブラシレスモータに供給される電源の電圧値に基づいて前記ブラシレスモータが有する複数のコイルに通電するための停止位置検出通電パターンを選択する停止位置検出パターン選択手段と、
    選択された前記停止位置検出通電パターンに基づいて前記複数のコイルに通電がなされた後、通電を停止した際に発生する誘起電流からロータの停止位置を検出するロータ停止位置検出手段と、
    前記ロータの停止位置を検出の後に、前記ロータの停止位置及び前記電圧値に基づいて、PWM制御により予め定めた電流値で前記複数のコイルに通電を行うためのフリーラン通電パターンを選択する始動励磁パターン選択手段と、
    前記ロータの回転により発生する誘起電流から検出される前記ロータの位置及び回転速度に基づいて、PWM制御により前記複数のコイルに通電を行うための運転通電パターンを選択する定常時励磁パターン選択手段と、
    前記複数のコイルに対して、選択された前記停止位置検出通電パターンに基づいて通電を行い、次に選択された前記フリーラン通電パターンに基づいて通電を行い、その後に選択された前記運転通電パターンに基づいて通電を行う励磁電圧出力手段と、
    を有することを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  2. 前記電圧値ごとに対応した複数の前記停止位置検出通電パターン、前記フリーラン通電パターン、及び、前記定常時励磁パターンが記録された印加電圧・電流制御マップ記憶手段と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータの制御装置。
  3. 前記ロータ停止位置検出手段による前記ロータの位置検出の前に、前記ブラシレスモータが有する複数のコイルのうち所定のコイルにのみ通電するブレーキ通電パターンを前記電圧値に基づいて選択する停止パターン選択手段、
    を有し、
    前記印加電圧・電流制御マップ記憶手段には、前記電圧値ごとに対応した複数の前記ブレーキ通電パターンが記憶され、
    前記励磁電圧出力手段は、選択された前記ブレーキ通電パターンに基づいて通電する
    ことを特徴とする請求項2に記載のブラシレスモータの制御装置。
  4. ブラシレスモータを駆動させる駆動方法であって、
    始動信号が入力されると、前記ブラシレスモータに供給される電源の電圧値に基づいて停止位置検出通電パターンを選択するステップと、
    選択された前記停止位置検出通電パターンに基づいて前記ブラシレスモータが有する複数のコイルに通電を行うステップと、
    選択された前記停止位置検出通電パターンに基づいた前記複数のコイルに通電の後、通電を停止した際に発生する誘起電流から前記ロータの停止位置を検出するステップと、
    前記ロータの停止位置を検出の後に、前記ロータの停止位置及び前記電圧値に基づいてPWM制御により予め定めた電流値で前記複数のコイルに通電を行うためのフリーラン通電パターンを選択するステップと、
    選択された前記フリーラン通電パターンに基づいて前記複数のコイルに通電を行うステップと、
    前記ロータが回転により前記複数のコイルに発生する誘起電圧から検出される前記ロータの位置及び回転速度に基づいて、PWM制御により前記複数のコイルに通電をするための運転通電パターンを選択するステップと、
    選択された前記運転通電パターンに基づいて前記複数のコイルに通電を行うステップと、
    を有することを特徴とするブラシレスモータの制御方法。
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