JP4722962B2 - ブラシレスモータのロータ位置推定装置、ブラシレスモータの起動制御システム、および、ブラシレスモータの起動制御方法 - Google Patents

ブラシレスモータのロータ位置推定装置、ブラシレスモータの起動制御システム、および、ブラシレスモータの起動制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、ブラシレスモータの起動に関し、詳しくは、ブラシレスモータのロータ位置を推定する技術に関する。
従来、ステータ側にコイルを配設し磁極を有するロータを回転させるようにして、ロータとの摺動子をなくしたブラシレスモータが知られている。このようなブラシレスモータでは、その起動時にロータが停止している位置(以下、「ロータ位置」という)を推定することが必要になるが、摺動子を有するモータとは異なり、ロータ位置の推定は困難である。
ブラシレスモータにおいて、ロータ位置を推定する最も単純な方法は、センサによって検知する方法である。ただし、この場合、部品点数の増加などが生じてしまう。そこで従来、ステータに配設されるコイルに電圧を印加し、当該コイルに流れる電流の変化からロータ位置を推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ここに開示される技術は、ロータの回転方向に対し垂直な方向の磁束を所定角度毎に発生させるように電圧を印加して、コイルに流れる電流である巻線電流の大きさを測定することにより、ロータ位置を推定するものである。具体的には、電流が増加しても磁束密度の変化が小さくなるいわゆる磁気飽和がコイルに生じると、電圧一定の下でコイルのインダクタンスが減少するため、電流が増加するという現象が起きる。このとき、ロータ位置に対応する角度では、ロータ自身の発生する磁束によって磁気飽和しやすい。したがって、従来技術では、所定角度毎に磁束の方向を変えるように電圧を複数回印加し、それぞれの場合の巻線電流を検出するようにして、当該巻線電流のピークを比べることにより、ロータ位置を推定している。
特開昭63−69489号公報
ところで、ブラシレスモータを、車載用の燃料ポンプに用いることを考える。この場合、コイルに印加される電圧は、車載用のバッテリによるものとなり、そのため、電圧が変動するおそれがある。例えば、車載電装品によって電圧降下が生じたり、あるいは、故障時などに外部に接続されるバッテリによって電圧上昇が生じたりするという具合である。
このとき、上記特許文献1に開示される技術では、ロータの回転方向に対し垂直な方向の磁束を所定角度毎に発生させるように電圧を印加して巻線電流の大きさを測定するのであるが、比較する方向毎に電圧が一定であることを前提としている。ところが、車載用のバッテリを用いる場合など、途中で電源電圧が変動すると、巻線電流のピークの比較が意味をなさなくなってしまい、ロータ位置の推定精度が低下してしまう。
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電源電圧の変動があったとしても、ロータ位置を精度よく推定可能なブラシレスモータのロータ位置推定装置、ブラシレスモータの起動制御システム、および、ブラシレスモータの起動制御方法を提供することにある。
請求項1に記載のブラシレスモータのロータ位置推定装置は、ブラシレスモータのロータの停止位置(ロータ位置)を推定するものである。ここで、ブラシレスモータは、コイルが巻回されてなるステータ、および、当該ステータに回転可能に支持されるロータを有している。
本発明では、電流検出手段が、コイルに流れる電流である巻線電流を直接的または間接的に検出する。「直接的または間接的に」としたのは、電流そのものを検出する場合の他、電流の流れる抵抗器の両端の電位差(電圧)を検出する場合などを含める趣旨である。また、電圧印加手段が、ロータの回転方向に対して垂直な複数の方向にそれぞれ磁束を発生させるよう電圧を印加する。この電圧印加手段は、例えば電源およびスイッチング回路として具現化される。
ここで特に、電圧印加制御手段は、複数の方向のうち予め定められた方向に対し順に磁束を発生させるように電圧印加手段を制御する。「予め定められた方向」とは、ロータ位置を推定するための方向であり、例えば「複数の方向」がロータの回転方向に30度間隔毎に12方向に設定される場合、そのうちの60度間隔毎の6方向を予め定められた方向とする、という具合である。また、電圧印加制御手段は、所定の電圧印加時間が経過すると、電圧印加手段による電圧の印加を終了する。
このとき、電圧印加に使用される電源の電圧が電源電圧検出手段によって検出されるようになっており、電流補正手段により、電圧印加制御手段の制御により磁束が発生する方向毎に、電源電圧と予め設定される基準電圧との比率に基づき巻線電流が補正される。そして、ロータ位置推定手段によって、補正後の巻線電流が比較されることにより、巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向が特定され、当該特定される方向に基づき、ロータの停止位置が推定される。
つまり、本発明では、予め定められた方向毎に電圧を印加するのであるが、都度、電源電圧を検出し、その方向毎に、巻線電流を補正するようにした。このようにすれば、電源電圧が変動したとしても、比較する方向毎に巻線電流が補正されるため、ロータ位置を精度よく推定することができる。
ただし、電圧を印加している期間は、当該印加によって電源電圧が変動してしまい、電源電圧を適切に検出できなくなるおそれがある。この点、請求項2では、電源電圧検出手段が、予め定められた各方向への電圧の印加に先立って、電源の電圧を検出する。このようにすれば、電源電圧を適切に検出することができる。
また、検出される巻線電流をそのたびに補正するようにしてもよいが、最終的にピーク振幅値を比較することを考えると、請求項3に示すように、電流補正手段によって巻線電流のピーク振幅値が補正されることとしてもよい。このようにすれば、検出される巻線電流をそのたびに補正する構成と比較して、処理に無駄がなくなる。
さらにまた、ロータ位置の推定について、請求項4に示すように、補正後の巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向に基づき、ロータの回転方向の所定角度範囲にロータの磁極があるものとして、ロータの停止位置を推定することが例示される。
ここまでは、ブラシレスモータのロータ位置推定装置の発明として説明してきたが、次に示すようなブラシレスモータの起動制御システムの発明として実現することもできる。
すなわち、請求項5に記載のブラシレスモータの起動制御システムは、ブラシレスモータの起動制御を実行するものである。
本発明のブラシレスモータの起動制御システムは、電流検出手段、電圧印加手段、電圧印加制御手段、電源電圧検出手段、電流補正手段、および、ロータ位置推定手段、を備えている。ただし、これらの手段は、上述したロータ位置推定装置が備える各手段と同様のものであるため、説明を割愛する。
これらの手段に加え、本発明は、モータ起動制御手段を備えており、このモータ起動制御手段によって、ロータ位置推定手段にて推定されるロータの停止位置に基づき、ロータを転流させるための磁束の方向が決定される。上述した例で言えば、「複数の方向」がロータの回転方向に30度間隔毎に12方向に設定されることを前提に、60度間隔毎の6方向を「予め定められた方向」とした場合、残りの6方向を、ロータを転流させるための磁束方向にすることが考えられる。このとき、ロータの停止位置に基づいて、これら残りの6方向のうちの一方向を、ロータを転流させるための磁束の方向として決定する。このような磁束の方向が決定されると、モータ起動制御手段によって、決定された方向に磁束を発生させるよう電圧印加手段が制御され、ブラシレスモータが起動される。
本発明のブラシレスモータの起動制御システムにおいても、上述したロータ位置推定装置と同様の効果が奏される。すなわち、電源電圧が変動したとしても、比較する方向毎に巻線電流が補正されるため、ロータ位置を精度よく推定することができる。加えて、本発明によれば、ブラシレスモータの適切な起動が実現される。
また、このようなブラシレスモータの起動制御システムにおいても、次に示すような構成を採用することができる。
例えば、請求項6では、電源電圧検出手段が、予め定められた各方向への電圧の印加に先立って、電源の電圧を検出する。このようにすれば、電源電圧を適切に検出することができる。また例えば、請求項7では、電流補正手段が巻線電流のピーク振幅値を補正する。このようにすれば、検出される巻線電流をそのたびに補正する構成と比較して、処理に無駄がなくなる。
また、ロータ位置の推定について、請求項8に示すように、補正後の巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向に基づき、ロータの回転方向の所定角度範囲にロータの磁極があるものとして、ロータの停止位置を推定することが例示される。
以上は、ブラシレスモータのロータ位置推定装置および起動制御システムの発明として説明してきたが、本発明は、時系列に行われる起動処理に特徴を有している。したがって、次に示すようなブラシレスモータの起動制御方法の発明として実現してもよい。
請求項9に記載のブラシレスモータの起動制御方法は、コイルが巻回されてなるステータ、および、当該ステータに回転可能に支持されるロータを有するブラシレスモータを備え、当該ブラシレスモータの起動制御を実行するブラシレスモータの起動制御方法であって、下記の手順(1)〜(8)で実行されることを特徴とする。
手順(1)では、コイルに電圧を印加するための電源の電圧を検出する。
手順(2)では、ロータの回転方向に対して垂直な複数の方向のうち予め定められた方向に対し磁束を発生させるようコイルに対し電圧を印加する。
手順(3)では、手順(1)で検出される電源電圧を一定時間印加したときコイルに流れる電流である巻線電流を検出する。
手順(4)では、電圧印加時間が経過すると、電圧の印加を終了する。
手順(5)では、手順(1)で検出される電源電圧と予め定められる基準電圧との比率に基づき、巻線電流を補正する。
手順(6)では、予め定められた方向のすべてに対し、上記手順(1)〜(5)を繰り返す。
手順(7)では手順(5)にて補正された巻線電流を比較することによって、予め定められた方向のうち巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向を特定し、当該特定される方向に基づき、ロータの停止位置を推定する。
手順(8)では、推定されるロータの停止位置に基づき、複数の方向の中からロータを転流させるための磁束の方向を決定し、当該方向に磁束を発生させるよう電圧印加手段を制御して、ブラシレスモータを起動する。
このようなブラシレスモータの起動制御方法によれば、上述した発明と同様の効果が奏される。すなわち、電源電圧が変動したとしても、比較する方向毎に巻線電流が補正されるため、ロータ位置を精度よく推定することができる。また、ブラシレスモータの適切な起動が実現される。
このとき、請求項10に示すように、手順(5)では、巻線電流のピーク振幅値を補正することとしてもよい。このようにすれば、検出される巻線電流をそのたびに補正する構成と比較して、処理に無駄がなくなる。
また、請求項11に示すように、手順(7)では、補正後の巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向に基づき、ロータの回転方向の所定角度範囲に前記ロータの磁極があるものとして、ロータの停止位置を推定することとしてもよい。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のブラシレスモータの起動制御システム1の概略構成を示すブロック図である。なお、本実施形態のブラシレスモータの起動制御システム1は、車載用の燃料ポンプの駆動に用いられるものである。
ブラシレスモータの起動制御システム1は、モータ10と、電圧印加部20と、電流検出部30と、制御部40と、ドライバ回路50と、電圧検出部80とを備えている。
モータ10は、いわゆるブラシレスモータであり、ステータおよび、ステータに対して回転するロータ14(図4(a)参照)を有する(ステータは不図示)。図4(a)中のロータ14は、棒状となっているが、実際は円板状の部材であり、磁極を有するように、その表面に永久磁石が貼り付けられている。図4(a)では、N極およびS極を有するものとして模式的にロータ14を示している。このロータ14を内部に収容し、回転可能に支持するのが、ステータである。図4(a)に示したロータ14は、点Oを回転中心として、時計回りに回転するものとする。
再び図1を参照すると、電圧印加部20は、電源60と、インバータ70とを有している。電源60は、車載用のバッテリである。この電源60によって発生させられる電圧を、以下「電源電圧」という。インバータ70は、モータ10のステータに巻回されるコイルへ電圧を印加するためのスイッチング回路である。
電流検出部30は、電源60とインバータ70との間に電気的に接続されており、コイルに流れる電流を検出する。詳細には、電流に比例する電圧を検出する。また、電圧検出部80は、電源電圧を検出する。
制御部40は、ドライバ回路50を経由して、インバータ70を制御する。また、制御部40には、電流検出部30および電圧検出部80からの測定値が入力されるようになっている。
次に、ブラシレスモータの起動制御システム1の回路構成を、図2に基づき説明する。
モータ10がステータおよびロータを有することは既に述べたが、このステータは径内方向へ所定角度毎に突出する突出部を有しており、この突出部に、三相コイル11、12、13が巻回されている。具体的には、U相コイル11、V相コイル12、W相コイル13が巻回されている。そして、三相コイル11、12、13への電圧印加の態様を切り換えるのが、上述したインバータ70である。
インバータ70は、電界効果トランジスタの一種である6つのMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor )71、72、73、74、75、76で構成されている。これらMOSFET71〜76は、スイッチング素子として機能し、ゲートの電位により、ドレイン−ソース間がON(導通)またはOFF(遮断)される。以下、MOSFET71〜76を、単に、FET71〜76と記述する。また、6つのFET71〜76を区別する必要があるときは、図2中の記号を用い、FET(Su+)71、FET(Sv+)72、FET(Sw+)73、FET(Su−)74、FET(Sv−)75、FET(Sw−)76と記述する。
ここで、これらFET71〜76の接続について説明しておく。
3つのFET71〜73のドレインが、電源電圧に接続されている。また、これらのFET71〜73のソースがそれぞれ、残り3つのFET74〜76のドレインに接続されている。さらにまた、これらのFET74〜76のソースが後述する図示しない電流検出部30を経由して接地されている。また、6つのFET71〜76のゲートは、ドライバ回路50の6つの出力端子に接続されている。かかる構成により、制御部40は、ドライバ回路50を経由して、6つのFET71〜76のON/OFFを個別に切り換え可能となっている。
そして、FET(Su+)71およびFET(Su−)74の接続点が、U相コイル11の一端部15に接続されている。また、FET(Sv+)72とFET(Sv−)75との接続点が、V相コイル12の一端部16に接続されている。さらにまた、FET(Sw+)73とFET(Sw−)76との接続点が、W相コイル13の一端部17に接続されている。また、U相コイル11、V相コイル12、および、W相コイル13の他端が相互に接続されて、他端部18となっている。
電流検出部30は、例えばシャント抵抗の両端の電位差を測定する回路として構成することが例示される。この例では、電流に比例する電圧を測定することになる。この測定結果は、制御部40へ出力される。また、電圧検出部80は、上述したように電源電圧を測定する。この測定結果も、制御部40へ出力される。
次に、本実施形態のブラシレスモータの起動制御システム1の動作を説明する。
図3は、制御部40にて実行される起動処理を示すフローチャートである。最初のステップS100において(以下、「ステップ」を省略し、単に記号Sで示す)、電源電圧を検出する。この処理は、電圧検出部80からの測定結果を取得するものである(図2参照)。続く、S101にて、電圧を印加する。この処理は、モータ10のステータに巻回された三相コイル11、12、13に電圧を印加するものである。
ここで、三相コイル11、12、13に対する電圧の印加について、図4を参照しつつ説明する。
図4(a)は、三相コイル11、12、13への電圧印加によって発生する磁束の方向を示す説明図である。電圧印加によって発生させられる磁束の方向は、時計回りに60度毎に設定されている。図4(a)では、磁束の方向を、矢印V1、V2、V3、V4、V5、V6で示した。これらの磁束は、FET71〜76のON/OFFの組み合わせで電圧印加の態様を変えることにより、発生させられる。例えば、図4(a)に示した矢印V1で示す方向の磁束を発生させる場合、図4(b)に示すように、FET(Su+)71をONにし、FET(Sv+)72をOFFにし、FET(Sw+)73をOFFにし、FET(Su−)74をOFFにし、FET(Sv−)75をONにし、FET(Sw−)76をONにする。この場合、U相コイル11の一端部15に電源電圧が印加されて、V相コイル12およびW相コイル13の一端部16、17が低電位となる。したがって、U相コイル11→他端部18→V相コイル12およびW相コイル13というように電流が流れる。これにより、矢印V1で示す方向の磁束が発生する。矢印V2で示す方向の磁束を発生させる場合、図4(b)に示すように、FET71〜76をそれぞれ、ON、ON、OFF、OFF、OFF、ONとする。同様に、矢印V3で示す方向の磁束は、FET71〜76をそれぞれOFF、ON、OFF、ON、OFF、ONとすることで発生させる。矢印V4で示す方向の磁束はFET71〜76をそれぞれOFF、ON、ON、ON、OFF、OFFとすることで発生させ、矢印V5で示す方向の磁束はFET71〜76をそれぞれOFF、OFF、ON、ON、ON、OFFとすることで発生させ、矢印V6で示す方向の磁束はFET71〜76をそれぞれON、OFF、ON、OFF、ON、OFFとすることで発生させる。なお、以下では、電圧印加によって発生させられる磁束の方向を「電圧印加方向」という。特に矢印V1〜V6の方向を示す場合、電圧印加方向V1、電圧印加方向V2、・・・、電圧印加方向V6ということにする。
図3中のS101では、最初に図4(a)中の電圧印加方向V1の電圧が印加される。
続くS102では、電流応答検出を行う。この処理は、電流検出部30からの測定結果を取得するものである(図2参照)。
次のS103では、電圧印加時間が経過したか否かを判断する。本実施形態では、電圧印加時間は一定となっている。ここで電圧印加時間が経過したと判断された場合(S103:YES)、S104へ移行する。一方、電圧印加時間が経過していないうちは(S103:NO)、S102からの処理を繰り返す。
S104では、電流の検出を終了する。したがって、S103にて肯定判断される直前にS102において検出された電流検出値が、採用されることになる。このとき、電圧印加時間において電流は右上がりに増加していくため、S104の処理が終了した時点でS102で検出されている電流は、ピーク振幅値となる。また、S104では、電圧の印加を終了する。この処理は、FET71〜76のすべてをOFFにするものであり、ドライバ回路50を経由してFET71〜76の各ゲートを所定の電位にすることで実現される。
続くS105では、電流検出値を補正する。この処理は、S100にて検出された電源電圧に基づき行われるものであり、具体的には、電源電圧と基準電圧との比率を電流検出値に乗じるものである。
次のS106では、電圧印加回数が「6」であるか否かを判断する。この処理は、電圧印加方向V1〜V6のすべての方向に対し電圧を印加したか否かを判断するものである。ここで電圧印加回数=「6」である場合(S106:YES)、S107へ移行する。一方、電圧印加回数≠「6」である場合(S106:NO)、S100からの処理を繰り返す。S100からの処理が繰り返されることによって、電圧印加方向毎に電源電圧が検出され、電圧印加方向V1→V2→V3→・・・→V6という順序で電圧が印加されることになる。
S107では、補正後の電流検出値が最大となる電圧印加方向を探索する。この処理は、電圧印加方向V1〜V6の中から補正後の電流検出値(ピーク振幅値)が最大となるものを探索する処理である。続くS108では、強制転流させる電圧印加方向を決定する。そして、次のS109ではモータ10を起動し、その後、本起動処理を終了する。なお、強制転流させる電圧印加方向については後述する。
ここで、上述した起動処理についての理解を容易にするため、図5および図6に基づき、具体的な説明を加える。ここでは、最初に図5を用いて図3中のS107までの処理を説明し、次に図6を用いてS108、S109の処理を説明する。
図5(a)および(b)は、電圧印加方向、電源電圧、印加電圧、および、巻線電流を対応させて示す説明図である。ここでは、ロータ14は、電圧印加方向V1にN極が向くようにして停止しているものとする。またここでは、電源電圧Vinが時間とともに増加し、これに伴い印加電圧も上昇しているものとして説明する。なお、図5(a)は、電流検出値の補正を行わない比較例を示しており、図5(b)は、電流検出値の補正を行う本実施形態の場合を示している。
図5(a)に示すように、最初に時刻t1で電圧を印加すると、三相コイル11、12、13の電流は右上がりに増加していく。そして、一定時間の経過後、時刻t2において電圧印加を終了する。このときは、まだ一方向にしか電圧を印加していないため、時刻t3において、別の方向となるよう電圧を印加する。このようにして、電圧印加方向V1〜V6(図4(a)参照)のすべてに電圧が印加される。巻線電流は、図5(a)に示す右上がりのものとなり、図中に記号a〜fで示す電流検出値(ピーク振幅値)を比較することになる。
ところが、電源電圧Vinが時間とともに増加しているため、電流検出値も大きくなってしまう。したがって、図5(a)では、電圧印加方向V6に対応する電流検出値(図中に記号fで示した)が最大となっており、ロータ位置を正確に推定できない。
そこで、本実施形態では、同様に電圧を印加するのであるが(図3中のS101)。このとき、電圧の印加に先立って時刻T1に、電源電圧を検出する(S100)。ここで検出される電源電圧をVinとして説明を続ける。電圧が印加されると、三相コイル11、12、13の電流は右上がりに増加していく。そして、一定時間の経過後(S103:YES)、時刻T7において電圧の印加を終了するとともに電流検出を終了する(S104)。このとき、電源電圧Vinと基準電圧Vsとの比率(Vs/Vin)を電流検出値に乗じて、電流検出値を補正する(S105)。例えば、図5(a)中に記号aで示した電流のピークが、図5(b)に記号Aで示すように、上方へ補正されるという具合である。
このときは、まだ一方向(電圧印加方向V1)にしか電圧を印加していないため(図3中のS106:NO)、次に、時刻T2において、電圧印加方向V2となるよう電圧が印加される(S101)。このようにして、電圧印加方向V1〜V6(図4(a)参照)のすべてに電圧が印加されるように処理が繰り返される。
したがって、それぞれの方向におけるピークの電流検出値をIx(xは1〜6の整数、以下同様)とし、図5中の時刻T1、T2、T3、T4、T5、T6にて検出される電源電圧をVinxとすれば、補正後の電流検出値Ix’は、

Ix’=Ix・(Vs/Vinx)

として表される。
電圧印加方向V6の電圧の印加が行われて電圧印加回数が「6」になると(S106:YES)、補正後の電流検出値が最大となる電圧印加方向が探索される(S107)。図5(b)では、電圧印加方向V1における電流検出値が最大となっている。したがって、電圧印加方向V1に(厳密には当該方向を中心とする所定角度範囲に)ロータ14のN極があるものと推定される。
図6(a)は、ロータ14を強制転流させるための磁束の発生方向(以下「転流電圧印加方向」という)を示す説明図である。図6(b)は、電流閾値到達時間が最小となる電圧印加方向、ロータ推定位置範囲、および転流電圧印加方向の対応関係を示す説明図である。さらにまた、図6(c)は、転流電圧印加方向に対応するFET71〜76のON/OFFを示す説明図である。
図6(a)に示すように転流電圧印加方向は、電圧印加方向V1〜V6に対して、30度ずつずれた位置に設定されている。具体的には、電圧印加方向V1を0度とした場合に、30度、90度、150度、210度、270度、330度の方向に設定されている。以下、転流電圧印加方向を、30deg、90deg、150deg、210deg、270deg、330degで示す。
上述したように、電圧印加方向V1〜V6のうちで補正後の電流検出値が最大となる方向を探索する(図3中のS107)。このとき、ロータ14のN極は、当該方向を中心とするプラスマイナス15度の範囲、すなわち30度の範囲にあるものと推定される。この推定ロータ位置範囲は、図6(a)中にI、II、III、IV、V、VIとして示すごとくである。そして、図6(b)に示すように、カウンタ数が最小となる電圧印加方向が例えばV1である場合、推定ロータ位置範囲はIの範囲と推定される。同様に電圧印加方向V2であれば推定ロータ位置範囲はIIの範囲と推定され、V3であればIIIの範囲と推定され、V4であればIVの範囲と推定され、V5であればVの範囲と推定され、V6であればVIの範囲と推定される。
そして、推定ロータ位置範囲がIである場合、図6(b)に示すように、転流電圧印加方向は30degとなる。すなわち、推定ロータ範囲Iに対し時計回り方向の最も近い位置に磁束を発生させることによって、ロータ14を時計回り方向へ転流させる。同様に、推定ロータ位置範囲がIIである場合、転流電圧印加方向は90degとなる。推定ロータ位置範囲がIIIである場合、転流電圧印加方向は150degとなり、推定ロータ位置範囲がIVである場合、転流電圧印加方向は210degとなり、推定ロータ位置範囲がVである場合、転流電圧印加方向は270degとなり、推定ロータ位置範囲がVIである場合、転流電圧印加方向は330degとなる。
このような対応関係から転流電圧印加方向が決定されて(図3中のS108)、電圧印加が行われてモータ10が起動される(S109)。具体的には、図6(c)に示すごとく、転流電圧印加方向へ磁束は、FET71〜76の切り換えにより、U相コイル11、V相コイル12、および、W相コイル13への電圧印加の態様を変えることによって発生させられる。
例えば、転流電圧印加方向が30degである場合、図6(c)に示すように、FET(Su+)71をONにし、FET(Sv+)72をOFFにし、FET(Sw+)73をOFFにし、FET(Su−)74をOFFにし、FET(Sv−)75をOFFにし、FET(Sw−)76をONにする。この場合、U相コイル11の一端部15に電源電圧が印加されて、W相コイル13の一端部17が低電位となる(図2参照)。したがって、U相コイル11→他端部18→W相コイル13というように電流が流れる。これにより、転流電圧印加方向としての30degの磁束が発生する。転流電圧印加方向が90degであれば、図6(c)に示すように、FET71〜76をそれぞれ、OFF、ON、OFF、OFF、OFF、ONとする。同様に、転流電圧印加方向が150degである場合の磁束は、FET71〜76をそれぞれOFF、ON、OFF、ON、OFF、OFFとすることで発生させる。転流電圧印加方向が210degである場合の磁束はFET71〜76をそれぞれOFF、OFF、ON、ON、OFF、OFFとすることで発生させ、転流電圧印加方向が270degである場合の磁束はFET71〜76をそれぞれOFF、OFF、ON、OFF、ON、OFFとすることで発生させ、転流電圧印加方向が330degである場合の磁束はFET71〜76をそれぞれON、OFF、OFF、OFF、ON、OFFとすることで発生させる。
なお、本実施形態のモータ10が「ブラシレスモータ」を構成し、電流検出部30が「電流検出手段」を構成し、電圧印加部20が「電流印加手段」を構成し、制御部40が「電圧印加制御手段」、「電流補正手段」、「ロータ位置推定手段」および「モータ起動制御手段」を構成し、電圧検出部80が「電源電圧検出手段」を構成する。そして、図3中のS101、S103、S104およびS106が「電流印加制御手段」としての処理に相当し、S105の処理が「電流補正手段」としての処理に相当し、S107が「ロータ位置推定手段」としての処理に相当し、S108およびS109の処理が「モータ起動制御手段」としての処理に相当する。また、図3中のS100の処理が「手順(1)」に相当し、S101の処理が「手順(2)」に相当し、S102の処理が「手順(3)」に相当し、S103およびS104の処理が「手順(4)」に相当し、S105の処理が「手順(5)」に相当し、S106の処理が「手順(6)」に相当し、S107の処理が「手順(7)」に相当し、S108およびS109の処理が「手順(8)」に相当する。
次に、本実施形態のブラシレスモータの起動制御システム1の発揮する効果について説明する。
本実施形態では、最初に電源電圧を検出し(図3中のS100)、電圧を一定時間だけ印加して、電流応答を検出する(S101〜S104)。そして、S100で検出された電源電圧と基準電圧との比率を電流検出値に乗じ、電流検出値を補正する(S105)。具体的には、図6(b)に記号A〜Fで示したように、各方向においてピークの電流検出値が上方または下方へ補正されることになる。そして、電流検出値が最大となる電圧印加方向が探索され(S107)、ロータ14の停止位置が推定される。このような方法によれば、電源電圧が変動したとしても、電流検出値が基準電圧に基づいて補正されるため、ロータ位置を精度よく推定することが可能となる。その結果、モータ10の適切な起動が実現される。
また、本実施形態によれば、電圧印加(図3中のS101)に先立って電源電圧を検出するため(S100)、電圧印加による電圧降下の影響を受けることなく、電源電圧を適切に検出することができる。
さらにまた、本実施形態では、電圧印加時間が経過したと判断された際(S103:YES)、S102にて検出されている電流検出値、すなわちピーク振幅値が補正される(S105)。これにより、検出される巻線電流をそのたびに補正する構成と比較して、処理に無駄がなくなる。
(第2実施形態)
第2実施形態は、上記第1実施形態とは、制御部40にて実行される起動処理が異なっている。そこで、起動処理および、その特徴部分について説明し、上記第1実施形態と同様の構成についての説明は割愛する。なお、上記第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付して示す。
図7は、制御部40にて実行される起動処理を示すフローチャートである。最初のステップS200において(以下、「ステップ」を省略し、単に記号Sで示す)、電源電圧を検出する。この処理は、電圧検出部80からの測定結果を取得するものである(図2参照)。
続くS201では、電圧を印加する。この処理は、モータ10のステータに巻回された三相コイル11、12、13に電圧を印加するものである。ここでは、最初に図4(a)中の電圧印加方向V1の電圧が印加される。また、電圧印加時点からカウントを開始する。このカウントは、制御部40の動作クロックに基づいて行う。
続くS202では、電流応答検出を行う。この処理は、電流検出部30からの測定結果を取得するものである(図2参照)。
次のS203では、電流閾値に到達したか否かを判断する。電流閾値は、予め定められるものであり、三相コイル11、12、13が磁気飽和する範囲で設定される。ここで電流閾値に到達したと判断された場合(S203:YES)、S205へ移行する。一方、電流閾値に到達していないと判断された場合(S203:NO)、S204へ移行する。
S204では、最大電圧印加時間が経過したか否かを判断する。ここで最大電圧印加時間が経過したと判断された場合(S204:YES)、S205へ移行する。一方、最大電圧印加時間が経過していないうちは(S204:NO)、S202からの処理を繰り返す。
電流閾値に到達したと判断された場合(S203:YES)または最大電圧印加時間が経過したと判断された場合(S204:YES)に移行するS205では、カウントを終了するとともに電圧の印加を終了する。電圧の印加の終了は、ドライバ回路50を経由してFET71〜76の各ゲートを所定の電位にすることで実現される。
次のS206では、カウント数を補正する。この処理は、S200にて検出された電源電圧に基づき行われるものであり、具体的には、電源電圧と基準電圧との比率をカウント数に乗じるものである。
続くS207では、電圧印加回数が「6」であるか否かを判断する。この処理は、電圧印加方向V1〜V6のすべての方向に対し電圧を印加したか否かを判断するものである。ここで電圧印加回数=「6」である場合(S207:YES)、S208へ移行する。一方、電圧印加回数≠「6」である場合(S207:NO)、S200からの処理を繰り返す。S200からの処理が繰り返されることによって、電圧印加方向毎に電源電圧が検出され、電圧印加方向V1→V2→V3→・・・→V6という順序で電圧が印加されることになる。
S208では、補正後のカウント数が最小となる電圧印加方向を探索する。この処理は、電圧印加方向V1〜V6の中からカウント数が最小となるものを探索する処理である。続くS209では、強制転流させる電圧印加方向を決定する。そして、次のS210ではモータ10を起動し、その後、本起動処理を終了する。
ここで、上述した起動処理についての理解を容易にするため、図8および図9に基づき、具体的な説明を加える。ここでは、最初に図8を用いて本実施形態におけるカウント数での処理について説明し、次に、図9を用いて、図7中のS107までの処理について説明する。
上記実施形態では、図8(a)に示すように、電圧印加時間が一定となっている。各方向へ一定時間だけ電圧を印加した場合、ロータ位置ではロータ14自身の発生する磁束によって磁気飽和しやすくなる。そこで、電流のピーク振幅値を比較するのである。
これに対し、本実施形態では、図8(b)に示すように、電流閾値Ithまで到達するまで電圧を印加する。そして、電圧印加開始から電圧印加終了まで、クロックに基づくカウントを行うようにした。三相コイル11、12、13が磁気飽和すると、コイルのインダクタンスが急激に小さくなることで、電流の増加度合いが大きくなる。例えば、図8(b)では、記号Aに示す点で電流の増加度合いが大きくなっている。したがって、クロックに基づくカウント数を最小にする電圧印加方向にロータ14のN極があるものと推定できる。
図9(a)および(b)は、電圧印加方向、電源電圧、印加電圧、巻線電流、および、カウント信号を対応させて示す説明図である。ここでは、ロータ14は、電圧印加方向V1にN極が向くようにして停止しているものとする。またここでは、電源電圧Vinが時間とともに増加し、これに伴い印加電圧も上昇しているものとして説明する。なお、図9(a)は、カウント数の補正を行わない比較例を示しており、図5(b)は、カウント数の補正を行う本実施形態の場合を示している。
図9(a)に示すように、最初に時刻s1で電圧を印加すると、三相コイル11、12、13の電流は右上がりに増加していく。そして、時刻s2において、電流閾値Ithに到達すると、電圧印加を終了する。本実施形態では、この電圧印加期間のカウント信号(例えば、その立ち上がり)をカウントすることでカウント数を取得する。このときは、まだ一方向にしか電圧を印加していないため、時刻s3において、別の方向となるよう電圧を印加する。このようにして、電圧印加方向V1〜V6(図4(a)参照)のすべてに電圧が印加される。その後、各電圧印加期間に基づくカウント数を比較することになる。
ところが、図9(a)では、電源電圧Vinが右上がりに増加しており、電源電圧Vinにともなって印加電圧も増加している。そのため、巻線電流が大きくなることから、カウント数を比較すると、電圧印加方向V1、V5、およびV6ではともに、カウント数「3」となっており、ロータ位置を正確に推定できない。
そこで、本実施形態では、電圧を印加するとともにカウントを開始するのであるが(図7中のS201)。このとき、電圧の印加に先立って時刻S1に、電源電圧を検出する(S200)。電圧が印加されると、三相コイル11、12、13の電流は右上がりに増加していく。そして、電流が所定の閾値に到達すると(S203:YES)、時刻S7においてカウントを終了するとともに電圧の印加を終了する(S205)。このとき、電源電圧Vinと基準電圧Vsとの比率(Vs/Vin)をカウント数に乗じて、カウント数を補正する(S206)。
このときは、まだ一方向(電圧印加方向V1)にしか電圧を印加していないため(図7中のS207:NO)、次に、時刻S2において、電圧印加方向V2となるよう電圧が印加される(S201)。このようにして、電圧印加方向V1〜V6(図4(a)参照)のすべてに電圧が印加されるように処理が繰り返される。
したがって、それぞれの方向におけるカウント数をTx(xは1〜6の整数、以下同様)とし、図9(b)中の時刻S1、S2、S3、S4、S5、S6にて検出される電源電圧をVinxとすれば、補正後のカウント数Tx’は、

Tx’=Tx・(Vs/Vinx)

として表される。
電圧印加方向V6の電圧の印加が行われて電圧印加回数が「6」になると(S207:YES)、補正後のカウント数が最小となる電圧印加方向が探索される(S208)。図9(b)では、最初の電圧印加方向V1におけるカウント数が「2」となり最小となっている。したがって、電圧印加方向V1に(厳密には当該方向を中心とする所定角度範囲に)ロータ14のN極があるものと推定される。
ロータ位置が推定されると、上述したように、転流電圧印加方向が決定され(図7中のS209)、電圧印加が行われてモータ10が起動される(S210)。具体的には、図6(c)に示すごとく、転流電圧印加方向へ磁束は、FET71〜76の切り換えにより電圧印加の態様を変えることによって発生させられる。
なお、本実施形態におけるモータ10が「ブラシレスモータ」を構成し、電流検出部30が「電流検出手段」を構成し、電圧印加部20が「電流印加手段」を構成し、制御部40が「電圧印加制御手段」、「印加期間取得手段(カウント手段)」、「期間補正手段」、「ロータ位置推定手段」および「モータ起動制御手段」を構成し、電圧検出部80が「電源電圧検出手段」を構成する。そして、図7中のS201、S203、S204、S205およびS207が「電流印加制御手段」としての処理に相当し、S201〜S205で実行されるカウント処理が「印加期間取得手段」としての処理に相当し、S206の処理が「期間補正手段」としての処理に相当し、S208が「ロータ位置推定手段」としての処理に相当し、S209およびS210の処理が「モータ起動制御手段」としての処理に相当する。また、図3中のS100の処理が「手順(1)」に相当し、S101の処理が「手順(2)」に相当し、S203の処理が「手順(3)」に相当し、S204およびS205の処理が「手順(4)」に相当し、S206の処理が「手順(5)」に相当し、S207の処理が「手順(6)」に相当し、S208の処理が「手順(7)」に相当し、S209およびS210の処理が「手順(8)」に相当する。
次に、本実施形態のブラシレスモータの起動制御システム1の発揮する効果について説明する。
本実施形態では、最初に電源電圧を検出し(図7中のS200)、電圧を印加するとともにカウントを開始し(S201)、電流応答を検出して(S202)、電流閾値に到達すると(S203:YES)、カウントを終了するとともに電圧の印加を終了する(S205)。そして、S200で検出された電源電圧と基準電圧との比率をカウント数に乗じ、カウント数を補正する(S206)。そして、カウント数が最小となる電圧印加方向が探索され(S208)、ロータ14の停止位置が推定される。このような方法によれば、電源電圧が変動したとしても、カウント数が基準電圧に基づいて補正されるため、ロータ位置を精度よく推定することが可能となる。その結果、モータ10の適切な起動が実現される。
また、本実施形態によれば、電源電圧の電圧降下があったとしても、電流閾値Ithに到達するまで電圧を印加し続けるため、三相コイル11、12、13を磁気飽和させることができ、ロータ位置の推定精度の低下を回避することができる。また、電源電圧の電圧上昇があったとしても、電流閾値Ithに到達した段階で電圧の印加が終了するため、回路素子などを大電流に耐え得るものとする必要がなく、コンパクトなシステム設計が可能となる。
さらにまた、本実施形態によれば、電圧印加(図7中のS201)に先立って電源電圧が検出されるため(S200)、電圧印加による電圧降下の影響を受けることなく、電源電圧を適切に検出することができる。
また、本実施形態では、電圧の印加が開始されてから(図7中のS201)最大電圧印加時間が経過すると(S204:YES)、カウントを終了して電圧の印加を終了するようにしている(S205)。これによって、例えば電源電圧の電圧降下が著しいときなど、三相コイル11、12、13を磁気飽和させるための電圧印加に要する時間があまりにも大きくなることを回避できる。
なお、上記第1および第2実施形態では、本発明を車両の燃料ポンプを駆動するブラシレスモータの起動制御システムに適当していた。これに限られず、駆動部にブラシレスモータを採用する場合には、本発明を適用することができる。
以上、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる形態で実施可能である。
本発明の第1および第2実施形態のブラシレスモータの起動制御システムを示すブロック図である。 本発明の第1および第2実施形態のブラシレスモータの起動制御システムを示す回路図である。 第1実施形態の制御部にて実行される起動処理を示すフローチャートである。 第1および第2実施形態における説明図であり、(a)は電圧印加方向を示す説明図であり、(b)は電圧印加方向に対応するFETの切り換えを示す説明図である。 第1実施形態における電圧印加方向、電源電圧、印加電圧、巻線電流の対応関係を示す説明図であり、(a)は電流検出値を補正しない比較例を示し、(b)は電流検出値を補正する第1実施形態の場合を示す。 第1および第2実施形態における説明図であり、(a)は転流電圧印加方向を示す説明図であり、(b)は電圧印加方向、推定ロータ位置範囲、および、転流電圧印加方向の対応関係を示す説明図であり、(c)は転流電圧印加方向に対応するFETの切り換えを示す説明図である。 第2実施形態の制御部にて実行される起動処理を示すフローチャートである。 (a)は比較例を示す説明図であり、(b)は第2実施形態の特徴的方法を示す説明図である。 第2実施形態における電圧印加方向、電源電圧、印加電圧、巻線電流、および、カウント信号の対応関係を示す説明図であり、(a)はカウント数を補正しない比較例を示し、(b)はカウント数を補正する第2実施形態の場合を示す。
符号の説明
1:ブラシレスモータの起動制御システム、10:モータ(ブラシレスモータ)、11:U相コイル、12:V相コイル、13:W相コイル、14:ロータ、15、16、17:一端部、18:他端部、20:電圧印加部(電圧印加手段)、30:電流検出部(電流検出手段)、40:制御部(電圧印加制御手段、電流補正手段、印加期間取得手段、期間補正手段、ロータ位置推定手段、および、モータ起動制御手段)、50:ドライバ回路、60:電源、70:インバータ、80:電圧検出部(電源電圧検出手段)

Claims (11)

  1. コイルが巻回されてなるステータ、および、当該ステータに回転可能に支持されるロータを有するブラシレスモータを備え、前記ロータの停止位置を推定するブラシレスモータのロータ位置推定装置であって、
    前記コイルに流れる電流である巻線電流を、直接的または間接的に検出する電流検出手段と、
    前記ロータの回転方向に対して垂直な複数の方向にそれぞれ磁束を発生させるよう前記コイルに対し電圧を印加可能な電圧印加手段と、
    前記電圧印加に使用される電源の電圧を検出する電源電圧検出手段と、
    前記複数の方向のうち予め定められた方向に対し順に磁束を発生させるよう前記電圧印加手段を制御すると共に、所定の電圧印加時間が経過すると、前記電圧印加手段による電圧の印加を終了する電圧印加制御手段と、
    前記電圧印加制御手段の制御により磁束が発生する方向毎に、前記電源電圧検出手段にて検出される電源電圧と予め設定される基準電圧との比率に基づき、電源電圧を一定時間印加したとき前記電流検出手段にて検出される巻線電流を補正する電流補正手段と、
    前記電流補正手段による補正後の巻線電流を比較することによって、巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向を特定し、当該特定される方向に基づき、前記ロータの停止位置を推定するロータ位置推定手段と、
    を備えることを特徴とするブラシレスモータのロータ位置推定装置。
  2. 請求項1に記載のブラシレスモータのロータ位置推定装置において、
    前記電源電圧検出手段は、前記予め定められた各方向への電圧の印加に先立って、電源の電圧を検出することを特徴とするブラシレスモータのロータ位置推定装置。
  3. 請求項1または2に記載のブラシレスモータのロータ位置推定装置において、
    前記電流補正手段は、前記巻線電流のピーク振幅値を補正することを特徴とするブラシレスモータのロータ位置推定装置。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載のブラシレスモータのロータ位置推定装置において、
    前記ロータ位置推定手段は、前記補正後の巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向に基づき、前記ロータの回転方向の所定角度範囲に前記ロータの磁極があるものとして、前記ロータの停止位置を推定することを特徴とするブラシレスモータのロータ位置推定装置。
  5. コイルが巻回されてなるステータ、および、当該ステータに回転可能に支持されるロータを有するブラシレスモータを備え、当該ブラシレスモータの起動制御を実行するブラシレスモータの起動制御システムであって、
    前記コイルに流れる電流である巻線電流を、直接的または間接的に検出する電流検出手段と、
    前記ロータの回転方向に対して垂直な複数の方向にそれぞれ磁束を発生させるよう前記コイルに対し電圧を印加可能な電圧印加手段と、
    前記電圧印加に使用される電源の電圧を検出する電源電圧検出手段と、
    前記複数の方向のうち予め定められた方向に対し順に磁束を発生させるよう前記電圧印加手段を制御すると共に、所定の電圧印加時間が経過すると、前記電圧印加手段による電圧の印加を終了する電圧印加制御手段と、
    前記電圧印加制御手段の制御により磁束が発生する方向毎に、前記電源電圧検出手段にて検出される電源電圧と予め設定される基準電圧との比率に基づき、電源電圧を一定時間印加したとき前記電流検出手段にて検出される巻線電流を補正する電流補正手段と、
    前記電流補正手段による補正後の巻線電流を比較することによって、当該巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向を特定し、当該特定される方向に基づき、前記ロータの停止位置を推定するロータ位置推定手段と、
    前記ロータ位置推定手段にて推定される前記ロータの停止位置に基づき、前記複数の方向の中から前記ロータを転流させるための磁束の方向を決定し、当該方向に磁束を発生させるよう前記電圧印加手段を制御して、前記ブラシレスモータを起動するモータ起動制御手段と、
    を備えることを特徴とするブラシレスモータの起動制御システム。
  6. 請求項5に記載のブラシレスモータの起動制御システムにおいて、
    前記電源電圧検出手段は、前記予め定められた各方向への電圧の印加に先立って、電源の電圧を検出することを特徴とするブラシレスモータの起動制御システム。
  7. 請求項5または6に記載のブラシレスモータの起動制御システムにおいて、
    前記電流補正手段は、前記巻線電流のピーク振幅値を補正することを特徴とするブラシレスモータの起動制御システム。
  8. 請求項5から7のいずれか一項に記載のブラシレスモータの起動制御システムにおいて、
    前記ロータ位置推定手段は、前記電流補正手段にて補正された巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向に基づき、前記ロータの回転方向の所定角度範囲に前記ロータの磁極があるものとして、前記ロータの停止位置を推定することを特徴とするブラシレスモータのロータ位置推定装置。
  9. コイルが巻回されてなるステータ、および、当該ステータに回転可能に支持されるロータを有するブラシレスモータを備え、当該ブラシレスモータの起動制御を実行するブラシレスモータの起動制御方法であって、
    前記コイルに電圧を印加するための電源の電圧を検出する手順(1)と、
    前記ロータの回転方向に対して垂直な複数の方向のうち予め定められた方向に対し磁束を発生させるよう前記コイルに対し電圧を印加する手順(2)と、
    前記手順(1)で検出される電源電圧を一定時間印加したとき前記コイルに流れる電流である巻線電流を検出する手順(3)と、
    電圧印加時間が経過すると、前記電圧の印加を終了する手順(4)と、
    前記手順(1)で検出される電源電圧と予め定められる基準電圧との比率に基づき、前記巻線電流を補正する手順(5)と、
    前記予め定められた方向のすべてに対し、上記手順(1)〜(5)を繰り返す手順(6)と、
    前記手順(5)にて補正された巻線電流を比較することによって、前記予め定められた方向のうち巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向を特定し、当該特定される方向に基づき、ロータの停止位置を推定する手順(7)と、
    前記推定される前記ロータの停止位置に基づき、前記複数の方向の中から前記ロータを転流させるための磁束の方向を決定し、当該方向に磁束を発生させるよう前記電圧印加手段を制御して、前記ブラシレスモータを起動する手順(8)と、
    を備えることを特徴とするブラシレスモータの起動制御方法。
  10. 請求項9に記載のブラシレスモータの起動制御方法において、
    前記手順(5)では、前記巻線電流のピーク振幅値を補正することを特徴とするブラシレスモータの起動制御方法。
  11. 請求項9または10に記載のブラシレスモータの起動制御方法において、
    前記手順(7)では、前記補正後の巻線電流のピーク振幅値が最大となる方向に基づき、前記ロータの回転方向の所定角度範囲に前記ロータの磁極があるものとして、前記ロータの停止位置を推定することを特徴とするブラシレスモータの起動制御方法。
JP2008134194A 2008-05-22 2008-05-22 ブラシレスモータのロータ位置推定装置、ブラシレスモータの起動制御システム、および、ブラシレスモータの起動制御方法 Active JP4722962B2 (ja)

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