JP5409422B2 - 同期電動機の磁極位置検出装置 - Google Patents
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Description
同期電動機の位置センサレス制御法として、例えば、特許文献1のような同期電動機の誘起電圧を利用した位置センサレス制御法や、例えば、特許文献2のような突極性を利用した位置センサレス制御法などがある。誘起電圧を利用した位置センサレス制御は、速度ゼロでは誘起電圧もゼロであるため、正しく回転子位置を推定することが出来ない。また、突極性を利用した位置センサレス制御は、磁極位置推定に利用する突極性が磁極位置の2倍の周期で変わるため、推定位置も磁極位置の2倍の周期となる。即ち、推定位置は同期電動機の磁極位置が0〜180度と180〜360度において、同じ値となって磁極位置を確実に検出するという点で十分とは言えない。
この方法は、互いに振幅が等しくかつ等間隔の位相の2n(nは相数で3以上の自然数)個の電圧ベクトルを同期電動機に印加したとき、位相が互いに180度異なる各一対の電圧ベクトル印加時に流れる電流検出値を互いに加算した加算電流値から磁極位置を検出するもので、この電圧ベクトルの印加により同期電動機が磁気飽和状態となることが前提となる。
更に、演算手段は、電圧ベクトル指令に基づく各電圧ベクトルを同期電動機に印加したとき、位相が互いに180度異なる各一対の電圧ベクトル印加時に流れる該電圧ベクトルと同相の電流検出値を互いに加算した3個の加算電流値を演算するとともに、電圧ベクトルの印加で同期電動機が磁気飽和するよう印加時間Tinを設定することにより、n個の加算電流値に基づき同期電動機の停止時における磁極位置を検出する同期電動機の磁極位置検出装置において、
3個の加算電流値Δiu、Δiv、Δiwの絶対値の真ん中の大きさの値ΔImidを加算電流評価値(第1の加算電流評価値)として設定し、加算電流評価値が電流検出系の誤差要因に基づき予め設定した加算電流基準値より大きい範囲で最小となるときの印加時間Tinを求め、磁極位置の検出を可能とする必要最低限の印加時間設定値Tinsとして設定する印加時間設定手段を備えたものである。
図1は、この発明の実施の形態1による同期電動機の磁極位置検出装置の構成図である。図1において、同期電動機1は、U相、V相、W相の3相巻線を備えた同期電動機で、回転子に永久磁石を配置した永久磁石同期電動機とする。同期電動機1は、電圧を印加する回路手段3に接続されており、回路手段3と同期電動機1との間には、同期電動機1に流れる巻線電流を検出する検出手段4が接続されている。更に、この検出手段4より検出した巻線電流を取り込んで同期電動機1の磁極位置θを演算するとともに、この発明の要部であり後段で詳述する、電圧ベクトル印加時間設定値Tinsを設定する印加時間設定手段101を有する演算手段2を備えている。また、演算手段2は電圧ベクトル指令Vrを回路手段3へ、トリガ信号Trを検出手段4へ出力する。
回路手段3は、同期電動機1が、例えば3相巻線の場合、図2のような半導体スイッチQ1〜Q6の6つを有し、Q1とQ4、Q2とQ5、Q3とQ6はそれぞれ直列接続され、また、Q1とQ4、Q2とQ5、Q3とQ6の各対は、直流電源Edに並列に接続されている。Q1とQ4の中点PUは、同期電動機1のU相巻線に、Q2とQ5の中点PVは、同期電動機1のV相巻線に、Q3とQ6の中点PWは、同期電動機1のW相巻線にそれぞれ接続される。
なお、図2の半導体スイッチQ1〜Q6は、IGBTの図記号で記載しているが、MOSFETなどの他の半導体素子でも良い。回路手段3は、演算手段2からの電圧ベクトル指令Vrに基づいて半導体スイッチQ1〜Q6をON、OFFさせる。
このとき回路手段3では、演算手段2から出力されるV0〜V6の電圧ベクトル指令Vrに基づいて、図6のように、半導体スイッチQ1〜Q6をON、OFFし、同期電動機1に電圧を印加する。
Δiw=iw5+iw2 ・・・(3)
そして、CPU6は、メモリ7に記憶されている電圧ベクトル印加時間Tinと電圧指令値V0、V1、V2、V3、V4、V5、V6を読み込んで、図8のフローチャートのように、電圧ベクトル指令VrとしてV0を一定時間出力した後に、V1を電圧ベクトル印加時間Tin間だけ出力する。その後、トリガ信号Trを出力し、トリガ信号Trに基づいて検出手段4より検出した巻線電流iu1、iv1、iw1を入力する。そして、電圧ベクトル指令VrとしてV0を一定時間出力する。以上のような動作を電圧ベクトルV1〜V6まで順次終えるまで、即ち、図中のnを1〜6まで繰返したのち、上述した(1)〜(3)式に基づいて、加算電流値Δiu、Δiv、Δiwを演算し、Δiu、Δiv、Δiwの絶対値の最大より、上述した(4)式に従って、60度間隔の精度で磁極位置θを推定出力する。
先ず、電圧ベクトル印加時間Tinに、メモリ7に記憶されている電圧ベクトル印加時間では無く、磁気飽和が確実に生じない任意の小さい値の時間T0を初期設定する。
例えば、同期電動機1に流れる電流が、同期電動機1の定格電流の50%くらいになるようにT0を設定する。この場合、下記(7)式のように、同期電動機1の定数を用いた近似式より求めたT0を電圧ベクトル印加時間の初期値としてTinに設定するとよい。
ここでは、磁極位置を30度、15度間隔、更には7.5度間隔の精度で推定検出する場合の、磁極位置の検出を可能とする必要最低限の電圧ベクトル印加時間設定値Tinsを自動調整で求める同期電動機の磁極位置検出装置について説明する。なお、回路構成は、実施の形態1の場合と同様であるので説明は省略する。
磁極位置を30度間隔で推定するために、電圧ベクトルV1〜V6に直交する成分の電流値を用いる。演算手段2からの電圧ベクトル指令Vrとして、同期電動機1のU相巻線と同位相方向の電圧ベクトルV1を印加したときに流れる電流において、電圧ベクトルV1と直交する電流成分iux1は、電圧ベクトルV1を印加した時にV相巻線に流れる電流iv1とW相巻線に流れる電流iw1を用いて下記(9)式により求めることが出来る。
ivx3=iw3−iu3 ・・・(11)
iux4=iv4−iw4 ・・・(12)
iwx5=iu5−iv5 ・・・(13)
ivx6=iw6−iu6 ・・・(14)
ivx=ivx3−ivx6 ・・・(16)
iwx=iwx2−iwx5 ・・・(17)
30度の間隔で磁極位置を推定するためには、先の(4)式により求めることができる、60度間隔で推定する磁極位置に対し、iux、ivx、iwxの大小関係を併用することにより、30度間隔の精度で磁極位置の推定を行う。
即ち、磁極位置を30度間隔の精度で推定するためには下記(19)式を用いる。
そして、CPU6は、メモリ7に記憶されている電圧ベクトル印加時間Tinと電圧指令値V0、V1、V2、V3、V4、V5、V6を読み込んで、図13(30度間隔で磁極位置推定)や図14(15度間隔で磁極位置推定)のフローチャートに示すように、電圧ベクトル指令VrとしてV0を一定時間出力した後に、V1を電圧ベクトル印加時間Tin間だけ出力する。その後、トリガ信号Trを出力し、トリガ信号Trに基づいて検出手段4より検出した巻線電流iu1、iv1、iw1を入力する。そして、電圧ベクトル指令VrとしてV0を一定時間出力する。以上のような動作を電圧ベクトルV1〜V6まで順次終えるまで繰返したのち、(1)〜(3)式に基づいて加算電流値Δiu、Δiv、Δiwを演算し、(15)〜(17)式に基づいて直交加算電流値iux、ivx、iwxを演算する。そして、Δiu、Δiv、Δiwの絶対値の最大とiux、ivx、iwxの大小関係より(19)、(20)式に従って、30度または15度間隔の精度で磁極位置θを出力する。
Ix_nd=|Ix|/2 ・・・(23)
印加時間設定手段101に基づきCPU6は、先ず、電圧ベクトル印加時間Tinに任意の時間を初期設定する。図15のフローチャートに示すように行う場合、Tinを増加させてゆくため、初期設定する電圧ベクトル印加時間の初期値T0は、磁気飽和が確実に生じない小さい値に設定する。例えば、実施の形態1の(7)式のように、同期電動機1の定数を用いた近似式より求めたT0を電圧ベクトル印加時間の初期値としてTinに設定するとよい。
本実施の形態3では、先の実施の形態1に示した自動調整法において、さらに精度よく電圧ベクトル印加時間Tinを求める方法について示す。
60度間隔で磁極位置検出を行う場合、図8のフローチャートに示すように、加算電流値Δiu、Δiv、Δiwの絶対値で最大のΔImaxより磁極位置検出を行う。よって、電圧ベクトル印加時間Tinを自動調整するためには、ΔImaxを利用すればよい。しかしながら、ΔImaxは、同期電動機1の磁極位置によって大きさが変化するため、ある磁極位置で自動調整行い、自動調整により求めた印加時間Tinを用いて、別の磁極位置で磁極位置検出を行ったときに、良好に磁極位置検出が出来るとは限らない。
そこで、実施の形態1では、加算電流値Δiu、Δiv、Δiwの絶対値のうち真ん中の大きさの値ΔImidを用いて電圧ベクトル印加時間Tinを自動調整していた。実施の形態1の方法では、自動調整するときの磁極位置によらず、すべての磁極位置において、良好に磁極位置検出を行うための電圧ベクトル印加時間Tinを得ることが出来る。
即ち、先の図9から判るように、30度、90度、150度、210度、270度、330度の磁極位置では、ΔImax=ΔImidであるため、磁極位置検出に必要最低限な電圧ベクトル印加時間Tinを求めることが出来るが、30度、90度、150度、210度、270度、330度以外の磁極位置ではΔImax≧ΔImidであるため、自動調整により求めた電圧ベクトル印加時間Tinは磁極位置検出に必要最低限な電圧ベクトル印加時間Tinより大きな値となる。
電流指令値Isdは、磁極位置を動かすに十分な吸引力が得られる電流値として、例えば、同期電動機1の定格電流値にするなど、ある程度大きな値に設定しておくことで、吸引力が強くなり、直流電圧ベクトル指令Vsdを印加した方向と磁極位置とを確実に一致させることが出来る。
但し、k=1、2、・・2nである。
6 CPU、7 メモリ、8 電圧ベクトル出力回路、9 トリガ出力回路、
10 磁極位置出力回路、101 印加時間設定手段。
Claims (7)
- u、v、w3相の巻線を有する同期電動機に電圧ベクトル指令に基づく電圧ベクトルを印加する回路手段、前記同期電動機の各相巻線に流れる電流をトリガ信号のタイミングで検出する検出手段、および前記電圧ベクトル指令として互いに振幅が等しくかつ1周期(360度)内に等間隔の位相でそれぞれの印加時間をTinとする6個の電圧ベクトルを演算して前記回路手段に出力するとともに前記各電圧ベクトルの印加終了時点で前記検出手段に前記トリガ信号を出力する演算手段を備え、
更に、前記演算手段は、前記電圧ベクトル指令に基づく各電圧ベクトルを前記同期電動機に印加したとき、位相が互いに180度異なる各一対の電圧ベクトル印加時に流れる該電圧ベクトルと同相の電流検出値を互いに加算した前記3個の加算電流値を演算するとともに、前記電圧ベクトルの印加で前記同期電動機が磁気飽和するよう前記印加時間Tinを設定することにより、前記3個の加算電流値に基づき前記同期電動機の停止時における磁極位置を検出する同期電動機の磁極位置検出装置において、
前記3個の加算電流値Δiu、Δiv、Δiwの絶対値の真ん中の大きさの値ΔImidを加算電流評価値(第1の加算電流評価値)として設定し、前記加算電流評価値が電流検出系の誤差要因に基づき予め設定した加算電流基準値より大きい範囲で最小となるときの前記印加時間Tinを求め、前記磁極位置の検出を可能とする必要最低限の印加時間設定値Tinsとして設定する印加時間設定手段を備えたことを特徴とする同期電動機の磁極位置検出装置。 - 前記印加時間設定手段は、前記印加時間Tinの初期値として、前記磁気飽和が確実に生じない小さい値に設定して前記加算電流評価値を求め前記加算電流基準値との大小を判定し、更に前記印加時間Tinを順次所定の時間ΔTinずつ増やして前記判定動作を繰り返し、前記判定結果が初めて(前記加算電流評価値>前記加算電流基準値)となったときの前記印加時間Tinを前記印加時間設定値Tinsとして設定することを特徴とする請求項1記載の同期電動機の磁極位置検出装置。
- 前記印加時間設定手段は、前記印加時間Tinの初期値として、前記磁気飽和が確実に生じる大きい値に設定して前記加算電流評価値を求め前記加算電流基準値との大小を判定し、更に前記印加時間Tinを順次所定の時間ΔTinずつ減らして前記判定動作を繰り返し、前記判定結果が初めて(前記加算電流評価値<前記加算電流基準値)となったときの前記印加時間Tinに前記時間ΔTinを加算した値を前記印加時間設定値Tinsとして設定することを特徴とする請求項1記載の同期電動機の磁極位置検出装置。
- 前記演算手段は、前記3個の加算電流値に加え、更に、前記電圧ベクトル指令に基づく各電圧ベクトルを前記同期電動機に印加したとき、位相が互いに180度異なる各一対の電圧ベクトル印加時に流れる該電圧ベクトルと直交する位相の電流検出値を互いに加算した前記3個の直交加算電流値を演算するとともに、前記電圧ベクトルの印加で前記同期電動機が磁気飽和するよう前記印加時間Tinを設定することにより、前記3個の加算電流値および直交加算電流値に基づき前記同期電動機の停止時における磁極位置を検出する同期電動機の磁極位置検出装置において、
前記加算電流評価値(第1の加算電流評価値)に加え、更に、前記3個の直交加算電流値iux、ivx、iwxの振幅|Ix|の1/2を直交加算電流評価値(第2の加算電流評価値)として設定し、
前記加算電流評価値が電流検出系の誤差要因に基づき予め設定した加算電流基準値より大きく、かつ、前記直交加算電流評価値が電流検出系の誤差要因に基づき予め設定した直交加算電流基準値より大きい範囲で最小となるときの前記印加時間Tinを求め、前記磁極位置の検出を可能とする必要最低限の印加時間設定値Tinsとして設定する印加時間設定手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の同期電動機の磁極位置検出装置。 - 前記印加時間設定手段は、前記印加時間Tinの初期値として、前記磁気飽和が確実に生じない小さい値に設定して前記加算電流評価値および前記直交加算電流評価値を求めそれぞれ前記加算電流基準値および前記直交加算電流基準値との大小を判定し、更に前記印加時間Tinを順次所定の時間ΔTinずつ増やして前記判定動作を繰り返し、(前記加算電流評価値>前記加算電流基準値)かつ(前記直交加算電流評価値>前記直交加算電流基準値)という判定が初めて成立したときの前記印加時間Tinを前記印加時間設定値Tinsとして設定することを特徴とする請求項4記載の同期電動機の磁極位置検出装置。
- 前記印加時間設定手段は、前記印加時間Tinの初期値として、前記磁気飽和が確実に生じる大きい値に設定して前記加算電流評価値および前記直交加算電流評価値を求めそれぞれ前記加算電流基準値および前記直交加算電流基準値との大小を判定し、更に前記印加時間Tinを順次所定の時間ΔTinずつ減らして前記判定動作を繰り返し、(前記加算電流評価値<前記加算電流基準値)または(前記直交加算電流評価値<前記直交加算電流基準値)という判定が初めて成立したときの前記印加時間Tinに前記時間ΔTinを加算した値を前記印加時間設定値Tinsとして設定することを特徴とする請求項4記載の同期電動機の磁極位置検出装置。
- 前記印加時間設定手段は、前記印加時間設定値Tinsの設定動作を開始する前に、前記同期電動機の巻線に所定の直流電圧を印加することにより、前記同期電動機の磁極位置が、下式が成立する30、90、150、210、270、330度のいずれかとなる位置まで前記同期電動機を回動させるようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の同期電動機の磁極位置検出装置。
ΔImax(前記加算電流値Δiu,Δiv、Δiwの絶対値の最大値)=前記第1の加算電流評価値ΔImid
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