JP2004254291A - 弾性表面波装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電極を覆うように絶縁膜が形成されており、絶縁膜の形成による共振特性やフィルタ特性などの劣化が生じ難く、かつ煩雑な成膜工程を必要としない弾性表面波装置を提供する。
【解決手段】 圧電基板2上に少なくとも1つのIDT3を構成している電極膜が形成されており、この電極膜を覆うように圧電基板2上にSiO2膜5が形成されており、電極膜の膜厚が、励振される表面波の波長の1〜3%の範囲とされている、弾性表面波装置。
【選択図】 図1

Description

本発明は、共振子や帯域フィルタとして用いられる弾性表面波装置に関し、より詳細には、IDT(インターデジタルトランスデューサ)を少なくとも構成している電極膜を覆うように絶縁膜が形成されている弾性表面波装置に関する。
従来、RF用弾性表面波フィルタなどにおいては、LiTaO3基板やLiNbO3基板が圧電基板として用いられている。そして、圧電基板の周波数温度係数TCFを改善するために、圧電基板上にIDTなどを構成するための電極膜を形成した後に、電極膜を被覆するようにSiO2膜を圧電基板上に形成した構造が種々提案されている(例えば、下記の特許文献1〜3)。
また、SiO2膜が形成されている場合、下方に電極が存在する部分と存在しない部分とでSiO2膜の表面に凹凸が生じる。このような凹凸をなくすように、SiO2膜の上面を平坦化した構造も提案されている(下記の特許文献4)。
特開平2−37815号 特開平8−265088号 特開平9−186542号 WO96/4713
上記のように周波数温度係数TCFを改善するためにSiO2膜が形成されている弾性表面波装置では、SiO2膜の上面が凹凸を有することとなるため、特性が劣化するという問題があった。
他方、上記特許文献4に示されているように、SiO2膜の上面を平坦化した場合には、電極指等による反射が軽減され、特性が一応改善される。しかしながら、SiO2膜の上面を平坦化するためのプロセスが必要であったり、上面が平坦なSiO2膜を形成するステップが必要であり、製造方法が煩雑となりがちであった。
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、圧電基板上において、電極膜を覆うように、絶縁膜が形成された弾性表面波装置であって、複雑なプロセスを必要とすることなく、良好な共振特性やフィルタ特性を得ることができ、さらに周波数温度係数TCFが良好な弾性表面波装置を提供することにある。
本発明に係る弾性表面波装置は、圧電基板と、圧電基板上に形成されており、少なくとも1つのIDTを構成している電極膜と、前記電極膜を覆うように圧電基板上にスパッタリングにより形成されており、かつ上面に凹凸を有する絶縁膜とを備え、前記電極膜の膜厚が、励振される表面波の波長の1〜3%の範囲とされている。
上記電極膜の膜厚が1%〜3%の範囲であるため、挿入損失の低減を図ることができるとともに、良好なフィルタ特性や共振特性を得ることができる。膜厚が3%を超えると、挿入損失が増大する。また、電極膜の膜厚が1%未満では、電極における導体損が大きくなる。
本発明では、絶縁膜の上面が凹凸を有する。すなわち、電極膜の上方の絶縁膜部分が、他の部分よりも凸状となる凹凸が存在している。
本発明のある特定の局面では、上記絶縁膜は、SiO2からなり、それによって弾性表面波装置の周波数温度係数TCFを効果的に改善することができる。
また、上記SiO2膜を絶縁膜として形成した構造においては、好ましくは、SiO2膜の膜厚が、表面波の波長の15〜40%の範囲、より好ましくは30%以上とされ、それによって周波数温度係数TCFをSiO2膜が形成されていない場合に比べて50%以上小さくすることができる。
また、本発明の別の特定の局面では、圧電基板が、周波数温度係数TCFが−100〜−10ppm/℃の範囲にある圧電基板により構成され、それによってSiO2膜などの絶縁膜との組み合わせにより、周波数温度係数TCFを効果的に改善することができる。
上記圧電基板としては、例えば、回転YカットX伝搬LiTaO3基板または、回転YカットX伝搬LiNbO3基板が用いられ、これらの圧電基板を用いた場合には、共振特性やフィルタ特性の劣化をさほど招くことなく、周波数温度係数TCFを効果的に改善することができる。好ましくは、LiTaO3基板またはLiNbO3基板として、カット角が0°〜160°の範囲のLiTaO3基板またはLiNbO3基板が用いられ、それによって周波数温度係数TCFをより効果的に改善することができる。
本発明のさらに別の特定の共振局面では、圧電基板が回転YカットX伝搬LiNbO3基板からなり、減衰の生じないラブ波が用いられる。この場合には、減衰が小さくかつ特性の良好な弾性表面波装置を提供することができる。
本発明に係る弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、上記電極膜により形成された反射器がさらに備えられる。このように、本発明に係る弾性表面波装置は、反射器を有する共振子や共振子型フィルタなどであってもよく、あるいは圧電基板の対向2端面の反射を利用した端面反射型の弾性表面波装置であってもよい。
本発明に係る弾性表面波装置では、上記電極膜は、様々な金属材料により構成されるが、本発明のある特定の局面では、AlまたはAlを主成分とする合金により構成される。この場合、反射係数が高められることになり、良好な共振特性を得ることができる。
また、本発明の別の特定の局面では、上記電極膜は、Alに比べて密度の大きな金属もしくは合金により構成され、その場合には、電極膜厚を薄くした場合であっても、大きな電気機械結合係数を得ることができる。また、反射係数が大きくなり、IDTの電極指の本数を少なくすることができ、小型化を図ることができる。さらに、ラブ波を利用した弾性表面波装置を容易に構成することができる。
本発明に係る弾性表面波装置のある特定の局面では、本発明に従って1ポート型表面波共振子が構成される。また、本発明に係る弾性表面波装置の他の特定の局面では、本発明に従って共振子型フィルタ、ラダー型フィルタまたはラチス型フィルタが構成される。
本発明に係る弾性表面波装置では、圧電基板と、圧電基板上に少なくとも1つのIDTを構成している電極膜と、電極膜を覆うように圧電基板上に形成された絶縁膜とを備える弾性表面波装置において、電極膜の膜厚が、励振される表面波の波長の1〜3%の範囲とされている。従って、絶縁膜の表面が凹凸を有していたとしても、共振特性やフィルタ特性の劣化を効果的に抑制し得ることができる。
よって、絶縁膜としてSiO2膜を形成することにより、周波数温度係数TCFを改善したり、あるいはTa25やZnOなどの圧電膜を形成することにより、圧電性を高めたり、あるいは他の絶縁材料からなる絶縁膜を形成して表面保護機能を高めたりした場合であっても、特性の劣化が生じ難い弾性表面波装置を提供することができる。しかも、絶縁膜表面が凹凸を有していてもよいため、絶縁膜形成に際しての煩雑なプロセスをも必要としない。
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施例に係る弾性表面波装置を示す平面図及び(a)中のA−A線に沿う断面図である。
本実施例の弾性表面波装置1は、反射器を備えた1ポート型表面波共振子である。矩形板状の圧電基板2上にIDT3及び反射器4,4が形成されている。このIDT3及び反射器4,4を構成している電極膜を覆うように圧電基板上にSiO2からなる絶縁膜5が形成されている。本実施例の特徴は、上記電極膜の膜厚が、励振される波長の1〜3%の範囲とされていることにあり、それによってSiO2膜5の表面5aが凹凸を有していたとしても、共振特性やフィルタ特性の劣化を効果的に抑制することができる。これを、以下において具体的な実験例に基づいて説明する。
従来、RF用表面波フィルタでは、LiTaO3基板またはLiNbO3基板からなる圧電基板上に、AlまたはAlを主成分とする合金からなる電極膜が形成されていた。しかしながら、圧電性が大きい回転YカットLiTaO3基板やLiNbO3基板では、周波数温度係数TCFが−40〜−100ppm/℃と大きいという問題があった。
そこで、周波数温度係数TCFを小さくするために、圧電基板上に形成された電極膜を被覆するようにSiO2膜を形成する方法が知られている(前述した特許文献1〜4)。
しかしながら、実際には、SiO2膜が形成された弾性表面波装置は、RF帯用表面波装置としては未だ製品化されていない。RF用表面波フィルタや、表面波DPXでは、一般に複数の1ポート型表面波共振子を梯子型回路を形成するように接続してなるラダー型フィルタが用いられている。この場合、電極は、通常、AlまたはAlを主成分とする合金により構成されており、電極膜の膜厚は表面波の波長の8〜10%程度と厚く設定されている。これは、十分な反射特性と電気機械結合係数を得るためである。
実際に、表面波の波長の8%の厚みのAlからなる電極を有する1ポート型表面波共振子において、電極膜を覆うようにSiO2膜を様々な膜厚で形成した場合の特性の変化を図2に示す。なお、図2に示す特性は、図3に模式的に断面構造を示す表面波共振子の特性である。すなわち、表面波共振子11は、36°YカットX伝搬LiTaO3からなる圧電基板12上に、AlからなるIDT13と、一対の反射器(図示せず)とを形成した構造を有する。そして、上記IDT13及び反射器を被覆するようにSiO2膜15が形成されている。
図2から明らかなように、SiO2膜15の形成により、共振特性が大幅に劣化していることがわかる。また、SiO2膜15の膜厚が厚くなるほど劣化の度合いも大きくなっていることがわかる。
さらに、図3から明らかなように、SiO2膜15の表面に大きな凹凸ができることがわかる。この凹凸は、IDTや反射器が形成されている部分の上方でSiO2膜がその他の部分に比べて隆起することにより生じている。
もっとも、実際には、図4(a),(b)に走査型電子顕微鏡写真で示すように、凹凸の形状が部分によって大きくばらついていることがわかる。これは、SiO2膜が形成される際に、圧電基板に向かって入射する成膜粒子が垂直方向だけでなく、斜め方向から入射する場合もあるためと考えられる。すなわち、斜め方向に入射した粒子によるSiO2膜の斜め方向の成長によりSiO2膜の表面形状がばらついていると考えられる。このような凹凸形状のばらつきを制御することは、通常、非常に困難であると考えられる。
上記のように、従来のSiO2膜15が形成されている表面波共振子11における特性の劣化は、SiO2膜15の表面の凹凸の存在、並びに凹凸のばらつきによるものと考えられる。凹凸の形状自体は、下地となる電極の形状や膜厚にも依存する。
そこで、電極の膜厚を表面波の波長の2〜8%の範囲で、かつSiO2膜の膜厚を10〜30%の範囲で種々変化させ、SiO2膜の形成前後の特性の変化を調べた。ここでは、図3に示した1ポート型の表面波共振子11と同様に構成された1ポート型表面波共振子と、ラダー型フィルタとを製作することにより評価を行った。なお、SiO2膜は、RFスパッタリングにより形成した。スパッタリング条件は、以下の通りである。到達真空度5×10-5〜5×10-4Pa、電力0.5〜1.5kW、ガス圧0.2〜0.4Pa、加熱温度100〜300℃。
Alからなる電極膜の膜厚が表面波の波長の2%である1ポート型表面波共振子においてSiO2膜を種々の膜厚で成膜した場合の特性の変化を図5に示す。この表面波共振子の断面形状を図6(a),(b)に走査型電子顕微鏡写真で示す。
図6を図4と比較すれば、Al膜の厚みが薄くなっている分だけ、SiO2膜表面の凹凸が小さくなっていることがわかる。しかしながら、この場合においても、図5から明らかなように、SiO2膜の形成により、共振特性が大きく変化していることがわかる。
もっとも、図5を図2と比較すれば明らかなように、Alからなる電極膜の膜厚が2%の場合には、共振周波数は変動しているものの、山谷比すなわち反共振抵抗と共振抵抗の比は劣化せず、共振特性自体は良好であることがわかる。これは、電極膜の膜厚が薄いためSiO2膜表面の凹凸が小さくなったためと考えられる。
加えて、Alからなる電極の膜厚が2%と薄い場合には、SiO2膜が形成されていないと、電極指による反射不足のために反共振点近傍に大きなリップルが生じているのに対し、SiO2膜が形成されていると、このようなリップルが抑圧されていることがわかる。これは、SiO2膜表面の凹凸により、反射量が高められているためと考えられる。
すなわち、図5から明らかなように、Alからなる電極膜の厚みが薄い場合には、SiO2膜表面の凹凸が小さくなり、それによって共振特性の劣化が生じ難いだけでなく、小さな凹凸が反共振点近傍におけるリップルを抑圧するようにも作用することがわかる。
なお、上記SiO2膜表面の凹凸とは、凹部と凸部との高さ方向寸法が電極膜の膜厚の70〜130%の範囲であるものをいうものとする。この範囲で絶縁膜表面が変動するのは、前述したスパッタリングでSiO2膜を形成したときの斜め入射粒子による成長のためであると考えられる。
上述した1ポート型表面波共振子についての実験に基づいて、複数の1ポート型表面波共振子を梯子型回路構成を有するように接続してなるラダー型フィルタを構成した。この場合の電極膜の厚みと、挿入損失の変化量を求めた。ここでは、3個の直列腕共振子と、2個の並列腕共振子をラダー型回路を構成するように接続したラダー型フィルタを作製した。
なお、IDT及び反射器はAlにより構成した。
また、上記直列腕共振子及び並列腕共振子を構成する1ポート型表面波共振子において、先の実験の場合と同様に、SiO2膜を表面波の波長の10%、25%及び45%の厚みとなるように成膜した複数種のラダー型フィルタを用意した。結果を図7に示す。
図7から明らかなように、電極膜の膜厚が4%を超えると、フィルタの挿入損失が急激に劣化することがわかる。従って、電極膜の膜厚は4%以下とすることが望ましい。すなわち、圧電基板上に電極を形成し、電極を被覆するようにSiO2膜を成膜すると、SiO2膜表面に上記のように凹凸が生じる。この場合、電極膜の膜厚を4%以下、より好ましくは3%以下にすれば、ラダー型フィルタの挿入損失の劣化を確実に抑制し得ることがわかる。
なお、ここでは、電極膜はAlで構成されていたが、Alに比べて重い金属、例えばAu、Cu、Ag、W、Ta、Pt、Mo、Ni、Co、Cr、Fe、Mn、Zn、Tiなどにより電極膜を形成した場合にも同様の結果が得られたことが本願発明者により確かめられている。
前述したように、SiO2膜を形成した構造において、SiO2膜の上面を平坦化した場合に特性改善が図られることが知られている(前述した特許文献4)。しかしながら、SiO2膜の上面を平坦化する場合には、成膜方法が煩雑となり、あるいは平坦化のための余分なプロセスを必要とする。これに対し、本発明では、上記のようにRFのスパッタリングなどにより、SiO2膜を容易に形成することができ、煩雑な工程を必要としない。
もっとも、本発明においても、SiO2膜などからなる絶縁膜の表面を平坦化する方法を施してもよく、それによってより一層良好な共振特性やフィルタ特性を得てもよい。
なお、電極膜が薄過ぎると、電極指1本当りの反射不足が生じたり、電極指の抵抗が急激に増加したりする。従って、電極膜の膜厚は表面波の波長の1%以下とすることが望ましい。
上述した結果は、電極の膜厚、電極を被覆するように形成されるSiO2膜の膜厚並びにSiO2膜の表面の形状によるものである。従って、本発明においては、36°YカットX伝搬LiTaO3基板を用いた場合にのみ上記のような効果が得られるものではなく、他のカット角や他の材料からなる圧電基板を用いた場合においても同様の効果を得ることができる。これを、図8を参照してより具体的に説明する。
種々のカット角のLiTaO3基板上に、SiO2膜を様々な膜厚で形成した場合のSiO2膜の厚みと周波数温度係数TCFとの関係を調べた。結果を図8に示す。また、LiNbO3基板上に、様々な膜厚でSiO2膜を形成した場合のSiO2膜の膜厚と周波数温度係数TCFの関係を求めた。結果を図9に示す。
図8及び図9から明らかなように、LiTaO3基板及びLiNbO3基板のいずれを用いた場合においても、SiO2膜の膜厚が増加するにつれて、直線的に周波数温度係数TCFが正の方向にシフトすることがわかる。また、図8及び図9から明らかなように、カット角を変更した場合においても、同様の傾向があることがわかる。
従って、図8及び図9から明らかなように、SiO2膜の膜厚を表面波の波長の15〜40%の範囲とすることにより、周波数温度係数TCFをSiO2膜の形成されていない場合に比べて1/2低減し得ることがわかる。また、好ましくは、SiO2膜の膜厚を表面波の波長の30%以上とすることにより、周波数温度係数TCFをほぼ0とし得ることがわかる。特に、カット角が0°〜160°の範囲のLiNbO3基板やLiTaO3基板を用いることにより、周波数温度係数TCFをほぼ0とすることができ、好ましい。
なお、電極膜の膜厚を変化させたとしても、周波数温度係数TCFはほとんど変化しない。従って、図7に示したように、電極膜の厚みを波長の1〜4%の範囲とした構造において、SiO2膜の膜厚を波長の15〜40%の範囲とすることにより、挿入損失や共振特性の劣化を招くことなく、さらに良好な周波数温度係数TCFを実現し得ることがわかる。
なお、本発明においては、使用する表面波は特に限定されないが、回転YカットX伝搬LiNbO3基板上を伝搬する表面波として知られている、ラブ波を用いることが好ましい。ラブ波では、伝搬に伴う減衰がほとんどないため、より一層良好な共振特性やフィルタ特性を得ることができる。なお、励振される表面波をラブ波とするには、一般には、質量付加が必要であるとされている。従って、Alよりも比重の大きな金属により電極を形成することが望ましい。
次に、回転YカットX伝搬LiNbO3基板上に各種金属からなる電極を形成し、さらにその表面にSiO2膜を形成した構造における電極膜厚と、電気機械結合係数との関係を求めた。結果を図10,図11に示す。
図10では、オイラー角(0,154,0)のLiNbO3基板を用い、薄い表面波として、漏洩弾性表面波(LSAW)を用いた。また、図11では、(0,131,0)のLiNbO3基板上を伝搬するレイリー波を利用した場合、並びに漏洩弾性表面波を利用した場合についての結果を示す。
図10及び図11から明らかなように、Alよりも重い金属からなる電極膜を形成した場合、膜厚が表面波の波長の6%よりも薄い領域、より具体的には4%より薄い場合に電気機械結合係数が極大値を有し、従来のAlからなる電極に比べて大きな電気機械結合係数を有し得ることがわかる。また、膜厚に対する電気機械結合係数の変化は、Alの場合に比べてAlよりも重い金属を用いた場合に大きいことがわかる。
一般に、電気機械結合係数は、所望とするフィルタ帯域幅に適した大きさを有することが望ましい。Alよりも重い金属を用いた場合、上記のように電気機械結合係数の調整可能な範囲が広いので、所望とする帯域幅に応じた電気機械結合係数を容易に得ることができる。
なお、絶縁膜としてSiO2膜を用いた場合を説明したが、温度特性改善のため圧電性を高めるため、あるいは表面の保護を図るために、Ta23やZnOなどからなる圧電膜を用いてもよい。その場合には、上記実施例と同様に、圧電性を高めたり、表面保護効果を高め得るとともに、上記と同様に共振特性やフィルタ特性などの劣化を本発明に従って抑制し得ることができる。この場合においても、電極膜の膜厚は1〜3%の範囲とすることにより、圧電膜などからなる絶縁膜の形成による特性の劣化を抑制し得ることができる。
図4(b)に示したように、圧電基板上にAlからなる電極を形成し、1ポート型表面波共振子を構成し、電極膜を覆うようにSiO2膜を形成した場合、IDTや反射器などの電極が形成されているため、SiO2膜表面に大きな凹凸が生じがちであった。ところで、このような凹凸は、SiO2膜の成膜方法を選択することにより小さくすることができる。図12〜図14を参照してこれを説明する。
図12は、36°YカットX伝搬LiTaO3基板上に、Alからなるインターデジタル電極を様々な厚みで形成し、その上に0.2λの厚みのSiO2膜をスパッタリングで形成した場合、及びCVDで形成した場合の反射係数の変化を示す図である。
図12から明らかなように、AlからなるIDTの厚みが増大した場合、すなわち、SiO2膜の表面に生じる凸部が高くなると、反射係数が大きくなる。もっとも、スパッタリングによりSiO2膜を形成した場合に比べて、CVDによりSiO2膜を形成した場合の方が反射係数が小さくなることがわかる。これは、スパッタリングによりSiO2膜を形成した場合には、SiO2膜の表面は、電極の存在により生じた凹凸にほぼ対応した凹凸を有するのに対し、CVDによりSiO2膜を形成した場合には、SiO2膜表面において、下方に電極が存在する部分が上方に突出する曲面状となり、SiO2膜表面における凸部と凸部の間でSiO2膜表面が曲面状に変化し、凹凸差が小さくなるためと考えられる。
図13(a)〜(c)は、LiTaO3基板上に、0.02λ、0.04λ及び0.08λの厚みのAlからなるIDTを形成し、0.3λの厚みのSiO2膜をスパッタリングにより形成した場合の表面波共振子の断面構造を示す電子顕微鏡写真であり、図14は、0.1λの厚みのAlによりIDTを形成し、さらに波長の0.3λの厚みのSiO2膜をCVDにより形成した場合の対応する弾性表面波共振子の断面構造を示す電子顕微鏡写真である。
図13(a)〜(c)と、図14とを比較すれば明らかなように、CVDによりSiO2膜を形成した場合には、電極厚みが厚くなった場合でも、SiO2膜表面における凹凸差が、スパッタリングによりSiO2膜を形成した場合に比べて小さくなることがわかる。
(a)及び(b)は、本発明の一実施例に係る表面波共振子を説明するための模式的平面図及び(a)中のA−A線に沿う断面図。 YカットX伝搬LiTaO3基板上に表面波の波長の8%の厚みのAlからなる電極を形成した後に、様々な膜厚でSiO2膜を形成した場合の共振特性の変化を示す図。 図2に示した結果が得られた表面波共振子を模式的に示す断面図。 (a),(b)は、それぞれ、図2に示した特性が得られた表面波共振子の一例の絶縁膜表面の状態を示す電子顕微鏡写真。 36°YカットX伝搬LiTaO3基板上に、表面波の波長の2%の厚みのAlからなる電極を形成した後に、様々な膜厚でSiO2膜を成膜した場合の表面波共振子の共振特性の変化を示す図。 (a),(b)は、それぞれ、図5に示した特性を有する表面波共振子のSiO2膜表面の凹凸を説明するための各電子顕微鏡写真。 電極膜及びSiO2膜の厚みを変化させた場合のラダー型フィルタの挿入損失の変化を示す図。 様々なカット角のLiTaO3基板上に、SiO2膜を様々な厚みで形成した場合の周波数温度係数TCFの変化を示す図。 様々なカット角のLiNbO3基板上に、SiO2膜を様々な膜で形成した場合の周波数温度係数TCFの変化を示す図。 オイラー角(0,154,0)のLiNbO3基板上に様々な膜厚でAlよりも重い金属からなる電極を形成した場合の電極の膜厚と漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図。 オイラー角(0,131,0)のLiNbO3基板上に様々な膜厚でAlよりも重い金属からなる電極を形成した場合の電極の膜厚とレイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図。 36°YカットX伝搬LiTaO3基板上に、様々な厚みでAlからなるIDTを形成し、波長の20%のSiO2膜をスパッタリング及びCVDで形成した場合のIDTの厚みと、反射係数との関係を示す図。 (a)〜(c)は、36°YカットX伝搬LiTaO3基板上に、0.02λ、0.04λ及び0.08λの厚みとなるようにAlからなるIDTを形成し、スパッタリングにより波長の30%の厚みのSiO2膜を形成した構造の断面を示す電子顕微鏡写真。 36°YカットX伝搬LiTaO3基板上に、0.1λの厚みのAlからなるIDTを形成し、波長の30%の厚みのSiO2膜をCVDにより形成した弾性表面波共振子の断面構造を示す電子顕微鏡写真。
符号の説明
1…表面波共振子
2…圧電基板
3…IDT
4…反射器
5…SiO2

Claims (14)

  1. 圧電基板と、圧電基板上に形成されており、少なくとも1つのIDTを構成している電極膜と、前記電極膜を覆うように圧電基板上にスパッタリングにより形成されており、かつ上面に凹凸を有する絶縁膜とを備え、
    前記電極膜の膜厚が、励振される表面波の波長の1〜3%の範囲とされていることを特徴とする、弾性表面波装置。
  2. 前記絶縁膜が、SiO2からなる、請求項1に記載の弾性表面波装置。
  3. 前記SiO2からなる絶縁膜の膜厚が、表面波の波長の15〜40%の範囲にある、請求項2に記載の弾性表面波装置。
  4. 前記SiO2からなる絶縁膜の膜厚が、表面波の波長の30%以上である、請求項3に記載の弾性表面波装置。
  5. 前記圧電基板が、周波数温度係数TCFが−100〜−10ppm/℃の範囲にある圧電基板である、請求項1〜4のいずれかに記載の弾性表面波装置。
  6. 前記圧電基板が、回転YカットX伝搬LiTaO3基板または、回転YカットX伝搬LiNbO3基板である、請求項1〜5のいずれかに記載の弾性表面波装置。
  7. 前記LiTaO3基板のカット角が0°〜160°の範囲にある、請求項6に記載の弾性表面波装置。
  8. 前記圧電基板が、回転YカットX伝搬LiNbO3基板であり、前記表面波がラブ波である、請求項1〜5のいずれかに記載の弾性表面波装置。
  9. 前記LiNbO3基板のカット角が0°〜160°の範囲にある、請求項8に記載の弾性表面波装置。
  10. 前記電極膜により形成された反射器をさらに備える、請求項1〜9のいずれかに記載の弾性表面波装置。
  11. 前記電極膜が、AlまたはAl合金からなる、請求項1〜10のいずれかに記載の弾性表面波装置。
  12. 前記電極膜が、Alよりも密度が大きな金属もしくは合金からなる、請求項1〜11のいずれかに記載の弾性表面波装置。
  13. 1ポート型表面波共振子である、請求項1〜12のいずれかに記載の弾性表面波装置。
  14. 共振子型フィルタ、ラダー型フィルタまたはラチス型フィルタである、請求項1〜12のいずれかに記載の弾性表面波装置。
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