JP3885824B2 - 弾性表面波装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば共振子や帯域フィルタなどに用いられる弾性表面波装置及びその製造方法に関し、より詳細には、IDT電極を被覆するように絶縁物層が形成されている構造を備えた弾性表面波装置に関する。
移動体通信システムに用いられるDPXやRFフィルタでは、広帯域かつ良好な温度特性の双方が満たされることが求められている。従来、DPXやRFフィルタに使用されてきた弾性表面波装置では、36°〜50°回転Y板X伝搬LiTaOからなる圧電性基板が用いられている。この圧電性基板は、周波数温度係数が−40〜−30ppm/℃程度であった。温度特性を改善するために、圧電性基板上においてIDT電極を被覆するように正の周波数温度係数を有するSiO膜を成膜する方法が知られている。図30にこの種の弾性表面波装置の製造方法の一例を示す。
図30(a)に示すように、圧電性基板51上に、IDT電極が形成される部分を除いてレジストパターン52が形成される。次に、図30(b)に示すように、全面にIDT電極を形成するための電極膜53が形成される。しかる後、レジスト剥離液を用いて、レジスト52及びレジスト52上に付着している金属膜が除去される。このようにして、図30(c)に示すように、IDT電極53Aが形成される。次に、図30(d)に示すように、IDT電極53Aを被覆するように、SiO膜54が成膜される。
他方、上記周波数温度特性の改善とは別の目的で、弾性表面波装置のIDT電極を被覆するように絶縁性または半導電性の保護膜が形成されている弾性表面波装置の製造方法が下記特許文献1に開示されている。図31は、この先行技術に記載の表面波装置を示す模式的断面図である。弾性表面波装置61では、圧電基板62上に、AlまたはAlを主成分とする合金からなるIDT電極63が形成されている。IDT電極63の設けられている領域以外の領域には、絶縁性または半導電性の電極指間膜64が形成されている。また、IDT電極63及び電極指間膜64を被覆するように、絶縁性または半導電性の保護膜65が形成されている。この先行技術に記載の弾性表面波装置61では、上記電極指間膜64及び保護膜65が、SiOなどの絶縁物やシリコンなどの半導電性材料により構成される旨が記載されている。ここでは、上記電極指間膜63の形成により、圧電基板61の有する焦電性に起因する電極指間の放電による特性の劣化が抑制されるとされている。
他方、下記の特許文献2には、水晶またはニオブ酸リチウムからなる圧電基板上に、アルミニウムや金などの金属からなる電極が形成されており、さらにSiO膜を形成した後、該SiO膜を平坦化してなる1ポート型弾性表面波伝共振子が開示されている。ここでは、平坦化により良好な共振特性が得られるとされている。
:特開平11−186866号公報 :特開昭61−136312号公報
図30に示したように、従来の周波数温度特性を改善するためにSiO膜を成膜してなる弾性表面波装置の製造方法では、IDT電極53Aが存在する部分と、存在しない部分とで、SiO膜54の表面の高さが異なることになる。従って、上記SiO膜54表面の凹凸の存在により、挿入損失が劣化するという問題があった。また、IDT電極の膜厚が大きくなるにつれて、この凹凸は大きくなる。従って、IDT電極の膜厚を厚くすることができなかった。
他方、文献1に記載の弾性表面波装置では、IDT電極63の電極指間に電極指間膜64が形成された後に、保護膜65が形成されている。従って、保護膜65の表面を平坦化することができる。
しかしながら、文献1に記載の構成では、IDT電極63はAlまたはAlを主成分とする合金により構成されていた。このIDT電極63に接するように電極指間膜64が形成されていたが、IDT電極63において十分な反射係数を得ることができなかった。そのため、例えば共振特性などにリップルが生じがちであるという問題があった。
さらに、文献1に記載の製造方法では、保護膜65を形成するに先だち、電極指間膜64上に形成されたレジストをレジスト剥離液を用いて除去しなければならないが、この際に、IDT電極63がレジスト剥離液で腐食される恐れがあった。従って、IDT電極を構成する金属として、腐食され易い金属を用いることができなかった。すなわち、IDT電極構成金属の種類に制約があった。
他方、前述した特許文献2に記載の1ポート型弾性表面波共振子では、圧電基板として水晶またはニオブ酸リチウムを用いること、電極がアルミニウムまたは金などからなることが示されているものの、具体的な実施例では、水晶基板上にAlからなる電極を形成した例のみが示されている。すなわち、他の基板材料や他の金属材料を用いた弾性表面波装置については特に言及されていない。
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、IDT電極の電極指間及びIDT電極上に絶縁物層が形成されている弾性表面波装置及びその製造方法であって、IDT電極の反射係数が十分に大きく、共振特性などに表れるリップルによる特性の劣化が生じ難く、従って、良好な共振特性やフィルタ特性を有する弾性表面波装置及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、IDT電極の反射係数が十分に大きく良好な特性を有するだけでなく、IDT電極を構成する金属材料の選択の制約が少なく、IDT電極の腐食による悪影響が生じ難い弾性表面波装置及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、IDT電極の反射係数が十分に大きく、良好な特性を有し、かつIDT電極の腐食による特性の劣化が生じ難いだけでなく、さらに周波数温度特性が良好な弾性表面波装置及びその製造方法を提供することにある。
第1の発明によれば、電気機械結合係数の2乗(k2)が0.025以上のLiNbO3からなる圧電性基板と、前記圧電性基板上に形成されており、Alよりも密度の大きい金属もしくは該金属を主成分とする合金、またはAlよりも密度の大きい金属もしくは該金属を主成分とする合金と他の金属とからなる積層膜からなる少なくとも1つの電極と、前記少なくとも1つの電極が形成されている領域を除いた残りの領域において、前記電極と略等しい膜厚に形成された第1絶縁物層と、前記電極及び第1絶縁物層を被覆するように形成された第2絶縁物層とを備え、前記電極の密度が、前記第1絶縁物層の1.5倍以上であり、前記第2の絶縁物層の厚みが、表面波の波長をλとしたときに、0.18λ〜0.34λの範囲にあり、前記第2の絶縁物層の表面の凸部の突出高さが、表面波の波長をλとしたときに、0.03λ以下である、弾性表面波装置が提供される。
第2の発明によれば、LiNbO3からなる圧電性基板と、前記圧電性基板上に形成さ
れた少なくとも1つの電極と、前記電極上に形成されており、かつ電極を構成する金属もしくは合金よりも耐腐食性に優れた金属もしくは合金からなる保護金属膜と、前記少なくとも1つの電極が形成されている領域を除いた残りの領域において、前記電極と保護金属膜との合計の膜厚と略等しい膜厚を有するように形成された第1絶縁物層と、前記保護金属膜及び第1絶縁物層を被覆するように形成された第2絶縁物層とを備え、前記第2の絶縁物層の厚みが、表面波の波長をλとしたときに、0.18λ〜0.34λの範囲にあり、前記第2の絶縁物層の表面の凸部の突出高さが、表面波の波長をλとしたときに、0.03λ以下である、弾性表面波装置が提供される。
第2の発明のある特定の局面では、前記電極及び保護金属膜の積層構造の全体の平均密度が、前記第1絶縁物層の密度の1.5倍以上である。
第1,第2の発明のある特定の局面では、前記第1,第2の絶縁物層がSiOにより形成されている。
第1,第2の発明の他の特定の局面では、弾性表面波の反射を利用した弾性表面波装置である。
第1,第2の発明の弾性表面波装置のさらに別の特定の局面では、前記第2の絶縁物層上の凸部の突出高さが、前記電極の厚みの1/2以下である。
より好ましくは、上記凸部の突出高さは、電極の厚みの1/3以下とされる。
第1,第2の発明の弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、上記電極は、Alよりも重い金属を主体とする。
第1,第2の発明に係る弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、前記電極が、Au、Pt、Cu、Ta、W、Ag、Ni、Mo、NiCr、Cr及びTiからなる群から選択した1種を主体とする。
本発明の弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、前記電極が、AuまたはPtからなり、その膜厚が、表面波の波長をλとしたときに、0.0017λ〜0.06λの範囲にある。
本発明に係る弾性表面波装置の別の特定の局面では、前記電極が、Au、Ag、Ni、Mo、Zn、Cu、Pt、Ta、W、Cr及びTiからなる群から選択した1種を主体とし、該電極の膜厚が、表面波の波長をλとしたときに、下記の表1に示す範囲とされている。
Figure 0003885824
本発明に係る弾性表面波装置のさらに別の特定の局面では、前記第2の絶縁物層の厚みが、波長をλときしたときに、0.18λ〜0.34λの範囲にある。
好ましくは、上記第1の絶縁物層の厚みは、波長をλとしたときに、0.2λ〜0.35λの範囲とされる。
また、本発明のさらに他の特定の局面では、LiNbOからなる圧電性基板のオイラー角が(0±5,80〜117,0±10)に示す範囲とされる。
本発明のさらに別の広い局面では、LiNbO 3 からなる圧電性基板と、前記圧電性基板上に形成された少なくとも1つの電極と、前記電極上に形成されており、かつ電極を構成する金属もしくは合金よりも耐腐食性に優れた金属もしくは合金からなる保護金属膜と、前記少なくとも1つの電極が形成されている領域を除いた残りの領域において、前記電極と保護金属膜との合計の膜厚と略等しい膜厚を有するように形成された第1絶縁物層と、前記保護金属膜及び第1絶縁物層を被覆するように形成された第2絶縁物層とを備え、前記電極及び保護金属膜の積層構造の全体の平均密度が、前記第1絶縁物層の密度の1.5倍以上であり、前記第2の絶縁物層の表面の凸部の突出高さが、表面波の波長をλとしたときに、0.03λ以下である。この弾性表面波装置においても、前述した第1,第2の発明の同様に、第1,第2の発明の様々な特定の局面の形状を有し得る。
本発明に係る弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、前記LiNbOからなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表2に示す範囲にある。
Figure 0003885824
本発明に係る弾性表面波装置のさらに別の特定の局面では、前記LiNbOからなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表3に示す範囲にある。
Figure 0003885824
本発明に係る弾性表面波装置のさらに別の特定の局面では、前記LiNbOからなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表4に示す範囲にある。
Figure 0003885824
本発明に係る弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、前記LiNbO基板からなる圧電基板のオイラー角が、下記の表5の範囲内とされている。
Figure 0003885824
また、本発明に係る弾性表面波装置のさらに別の特定の局面では、前記LiNbOからなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表6に示す範囲とされる。
Figure 0003885824
第1の発明に係る弾性表面波装置では、少なくとも1つの電極が形成されている領域を除いた残りの領域において、該電極と略等しい膜厚に形成された第1の絶縁物層が設けられており、電極及び第1絶縁物層を被覆するように第2絶縁物層が設けられている構成において、電極が第1絶縁物層の密度よりも高密度の金属または該金属を主成分とする合金からなるため、電極の反射係数を十分な大きさとすることができる。従って、所望でないリップルによる特性の劣化が生じ難い、周波数温度特性の良好な弾性表面波装置を提供することができる。
加えて、IDT電極と第1絶縁物層が略等しい膜厚とされており、IDT及び第1絶縁物層を被覆するように第2絶縁物層が積層されているため、第2絶縁物層の外表面を平坦化することができ、それによって第2絶縁物層表面の凹凸による特性の劣化も生じ難い。
また、第1の発明では、圧電性基板が、電気機械結合係数が0.025以上のLiNbOからなるため、帯域幅の拡大を図ることができる。
第2の発明に係る弾性表面波装置では、LiNbOからなる圧電性基板上において、電極が形成されている領域を除いた残りの領域に電極とほぼ等しい膜厚の第1絶縁物層が設けられており、電極上に、電極を構成する金属もしくは合金よりも耐腐食性に優れた金属もしくは合金からなる保護金属膜が設けられており、保護金属膜及び第1絶縁物層上を被覆するように第2絶縁物層が形成されている。従って、電極が保護金属層及び第1絶縁物層により覆われているため、フォトリソグラフィー技術によりレジストを剥離する際のレジスト剥離液による電極の腐食が生じ難い。よって、Cuなどのレジスト剥離液により腐食され易いが、密度がAlに比べて十分大きな金属もしくは合金を用いて、電極を構成することができ、弾性表面波装置の特性の劣化を効果的に抑制することができる。
第2の発明において、電極及び保護金属膜の積層構造の全体の平均密度が、第1の絶縁物層の密度の1.5倍以上である場合には、電極による反射係数を効果的に高めることができる。
第1,第2の発明において、第1,第2の絶縁物層がSiOにより構成されている場合には、本発明に従って、周波数温度特性TCFが改善された弾性表面波装置を提供することができる。
本発明において、第2の絶縁物層の表面の凸部の突出高さが、0.03λ以下の場合には、挿入損失の劣化を抑制することができる。
第2の絶縁物層上の凸部の突出高さが、電極の厚みの1/2以下である場合には、弾性表面波装置の挿入損失の劣化を効果的に抑制することができ、電極の厚みの1/3以下の場合には、より一層挿入損失の劣化を抑制することができる。
[図1]図1(a)〜(g)は、本発明の一実施例における弾性表面波装置の製造方法を説明するための各模式的部分切欠断面図である。
[図2]図2は、本発明の一実施例で得られた1ポート型弾性表面波共振子の模式的平面図である。
[図3]図3は、13°,30°,70°回転Y板X伝搬LiNbO基板上にSiO膜を形成した場合のSiO膜の膜厚H/λと、温度特性TCFとの関係を示す図である。
[図4]図4は、13°回転Y板X伝搬LiNbO基板上にインターデジタル電極及びSiO膜を形成した構造におけるSiO膜の規格化膜厚H/λと、電気機械結合係数kとの関係を示す図である。
[図5]図5は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図6]図6は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図7]図7は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図8]図8は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図9]図9は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図10]図10は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図11]図11は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図12]図12は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図13]図13は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図14]図14は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図15]図15は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図16]図16は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図17]図17は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図18]図18は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図19]図19は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図20]図20は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図21]図21は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図22]図22は、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のθと、レイリー波及び漏洩弾性表面波の電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図23]図23は、13°回転Y板X伝搬LiNbO基板上に様々な金属からなる電極を形成した場合の電極の膜厚と、電気機械結合係数kとの関係を示す図である。
[図24]図24は、13°回転Y板X伝搬LiNbO基板上に各種金属からなる電極を形成した場合の電極膜厚と、減衰定数αとの関係を示す図である。
[図25]図25は、SiO膜表面の凸部の突出高さと、挿入損失劣化量との関係を示す図である。
[図26]図26は、SiO膜表面の凸部の突出高さとインターデジタル電極の厚みとの比と、挿入損失劣化量との関係を示す図である。
[図27]図27(a)及び(b)は、本発明が適用される弾性表面波装置の一例としての1ポート型共振子及び2ポート型共振子を説明するための各模式的平面図である。
[図28]図28は、本発明が適用される弾性表面波装置としてのラダー型フィルタを説明するための模式的平面図である。
[図29]図29は、本発明が適用される弾性表面波装置としてのラチス型フィルタを説明するための模式的平面図である。
[図30]図30(a)〜(d)は、従来の弾性表面波装置の製造方法の一例を示すための模式的断面図である。
[図31]図31は、従来の弾性表面波装置の一例を説明するための模式的正面断面図である。
[図32]図32は、表面に凹凸のないSio/電極/13°回転Y板X伝搬LiNbO構造において、SiO膜厚0.3λのときの電極膜厚と反射係数の関係を示す図である。
[図33]図33(a)〜(e)は、IDT電極及び保護金属膜の平均密度の第1絶縁物層の密度に対する比を変化させた場合のインピーダンス特性の変化を示す図である。
[図34]図34は、本発明の実施例において、LiNbO基板上に、様々な金属からなる電極膜を形成し、膜厚が0.2λであり、かつ上面が平坦なSiO膜厚を形成した弾性表面波装置における、電極膜厚と反射係数との関係を示す図である。
[図35]図35は、本発明の実施例において、LiNbO基板上に、様々な金属からなる電極膜を形成し、膜厚が0.25λであり、かつ上面が平坦なSiO膜厚を形成した弾性表面波装置における、電極膜厚と反射係数との関係を示す図である。
[図36]図36は、本発明の実施例において、LiNbO基板上に、様々な金属からなる電極膜を形成し、膜厚が0.3λであり、かつ上面が平坦なSiO膜厚を形成した弾性表面波装置における、電極膜厚と反射係数との関係を示す図である。
[図37]図37は、本発明の実施例において、LiNbO基板上に、様々な金属からなる電極膜を形成し、膜厚が0.35λであり、かつ上面が平坦なSiO膜厚を形成した弾性表面波装置における、電極膜厚と反射係数との関係を示す図である。
[図38]図38は、本発明の実施例において、LiNbO基板上に、様々な金属からなる電極膜を形成し、膜厚が0.4λであり、かつ上面が平坦なSiO膜厚を形成した弾性表面波装置における、電極膜厚と反射係数との関係を示す図である。
[図39]図39は、本発明の実施例において、LiNbO基板上に、様々な金属からなる電極膜を形成し、膜厚が0.5λであり、かつ上面が平坦なSiO膜厚を形成した弾性表面波装置における、電極膜厚と反射係数との関係を示す図である。
[図40]図40は、IDT電極を覆うようにSiO膜が形成されており、SiO膜表面に凹凸を有する従来の弾性表面波装置において、オイラー角(0°,37.86°,0°)のLiNbO基板を用い、様々な金属からなる電極を様々な膜厚で形成した場合の電極膜厚と反射係数との関係を示す図である。
[図41]図41は、オイラー角(0°,89°,ψ)のLiNbO基板におけるψと、レイリー波及びLSAWの電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図42]図42は、オイラー角(30°,89°,ψ)のLiNbO基板におけるψと、レイリー波及びLSAWの電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図43]図43は、オイラー角(20°,100°,ψ)のLiNbO基板におけるψと、レイリー波及びLSAWの電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図44]図44は、オイラー角(30°,100°,ψ)のLiNbO基板におけるψと、レイリー波及びLSAWの電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図45]図45は、オイラー角(10°,110°,ψ)のLiNbO基板におけるψと、レイリー波及びLSAWの電気機械結合係数との関係を示す図である。
[図46]図46は、オイラー角(0°,130°,ψ)のLiNbO基板におけるψと、レイリー波及びLSAWの電気機械結合係数との関係を示す図である。
符号の説明
1…LiNbO基板
2…第1絶縁物層
3…レジストパターン
4…金属膜
4A…IDT電極
5…保護金属膜としてのTi膜
6…第2絶縁物層
11…弾性表面波共振子
12,13…反射器
21…弾性表面波装置
22…LiNbO基板
23a,23b…IDT
25…SiO
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施例に係る弾性表面波装置の製造方法を説明する。
図1(a)に示すように、まず、圧電性基板として、LiNbO基板1を用意する。
LiNbO基板1上に、全面に第1絶縁物層2を形成する。本実施例では、第1絶縁物層2は、SiO膜により形成されている。
第1絶縁物層2の形成方法は、印刷、蒸着、またはスパッタリングなどの適宜の方法により行われ得る。また、第1絶縁物層2の厚みは、後で形成されるIDT電極の厚みと等しくされている。
次に、図1(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術を用いて、レジストパターン3を形成する。レジストパターン3では、IDTが形成される領域を除いてレジストが位置するようにレジストパターン3が構成されている。
次に、図1(c)に矢印で示すようにイオンビームを照射する反応性イオンエッチング法(RIE)などにより、第1絶縁物層2の内、レジスト3の下方に位置している部分を除いた残りの部分を除去する。
フッ素系のガスによるリアクティブイオンエッチング装置(RIE)によってSiOをエッチングした場合、重合反応により残渣が生じる場合がある。この場合、RIEを行った後、BHF(バッファードフッ酸)等により処理することで対応できる。
しかる後、Cu膜とTi膜を、第1絶縁物層2と等しい厚みに成膜する。図1(d)に示すように、第1絶縁物層2が除去されている領域、すなわちIDTが形成される領域にCu膜4が付与され、同時にレジストパターン3上にもCu膜4が付与される。次に、全面保護金属膜としてTi膜5を形成する。図1(e)に示すように、Ti膜5は、IDT電極4Aの上面と、レジストパターン3上のCu膜4上に付与されることになる。従って、IDT電極4Aは、側面が第1絶縁物層2で被覆され、上面がTi膜5により被覆されている。このようにして、IDT電極4Aと保護金属膜とが形成され、IDT電極4Aの厚みと保護金属膜としてのTi膜5の厚みの合計の厚みと第1絶縁物層2の厚みとが同じ厚みを有するように構成される。
しかる後、レジスト剥離液を用い、レジストパターン3を除去する。このようにして、図1(f)に示すように、第1絶縁物層2が設けられている領域を除いた残りの領域にIDT電極4Aが形成されており、IDT電極4Aの上面がTi膜5により被覆されている構造が得られる。
しかる後、図1(g)に示すように、全面に第2絶縁物層6としてSiO膜を形成する。
このようにして、図2に示す1ポート型の弾性表面波共振子11を得た。
なお、図1(a)〜(g)では、IDT電極4Aが形成されている部分のみが抜き出されて説明された。しかしながら、図2に示されているように、弾性表面波共振子11は、IDT電極4Aの弾性表面波伝搬方向両側に反射器12,13を備えている。反射器12,13もまた、IDT電極4Aと同じ工程により形成される。
上記実施例では、1ポート型弾性表面波共振子11が構成されているため、LiNbO基板1上に、1個のIDT電極4Aが形成されていたが、弾性表面波装置の用途に応じて、複数のIDT電極が形成されてもよく、また上記のように反射器がIDTと同一工程により形成されてもよく、反射器が設けられずともよい。
上記IDT4Aの密度は、第1絶縁物層2の密度の1.5倍以上とされており、それによってIDT電極4Aによる反射係数が十分な大きさとされている。
すなわち、上記実施例と同様の製造方法に従って、但し、IDT電極4を構成する金属の密度を種々異ならせ、上記実施例と同様にして弾性表面波共振子を作製した。
このようにして得られた弾性表面波共振子のインピーダンス特性を図33(a)〜(e)に示す。図33(a)〜(e)は、それぞれ、IDT電極及び保護金属膜の積層構造の平均密度ρの第1絶縁物層の密度ρに対する比ρ/ρが、2.5、2.0、1.5、1.2及び1.0の場合の結果を示す。
図33(a)〜(e)から明らかなように、図33(a)〜(c)では、上記リップルAが帯域外にシフトされ、さらに図33(a)では、上記リップルAが著しく抑圧されていることがわかる。
従って、図33の結果から、IDT電極及び保護金属膜の積層構造の第1絶縁物層に対する密度比を1.5倍以上とすれば、上記リップルAを共振周波数−反共振周波数の帯域の外側にシフトさせ、良好な特性の得られることがわかる。また、より好ましくは、上記密度比を2.5倍以上とすれば、リップル自体を小さくし得ることがわかる。
図33(a)〜(e)では、上記実施例に従って、IDT電極4A上に、Ti膜が積層されていたため、上記平均密度が用いられたが、本発明においては、IDT電極4A上に、保護金属膜が設けられずともよい。その場合には、IDT電極4Aの厚みを第1の絶縁物層の厚みと同じにして、IDT電極の密度の第1絶縁物層の密度に対する比を1.5倍以上とすることが好ましく、より好ましくは2.5倍以上とすればよく、上記と同様の効果の得られることが確かめられた。
従って、SiO膜によりIDT電極を被覆してなる弾性表面波共振子において、IDT電極の密度あるいはIDT電極と保護金属膜との積層体の平均密度を、IDT電極の側方に位置する第1絶縁物層の密度よりも大きくすれば、IDT電極の反射係数を高めることができ、それによって共振点−反共振点間に表れる特性の劣化を抑制し得ることがわかる。
なお、Alより高密度の金属もしくは合金としては、Cuの他、Ag,Auなどやこれらを主体とする合金が挙げられる。
また、好ましくは、上記実施例のように、IDT電極上に、保護金属膜を積層した構造とすれば、図1(a)〜(g)に示した製造方法から明らかなように、レジストパターン3を剥離する際に、IDT電極4Aの側面が第1絶縁物層2により覆われており、かつ上面が保護金属膜6により覆われているため、IDT電極4Aの腐食を防止することができる。よって、より一層良好な特性を有する弾性表面波共振子を提供し得ることがわかる。
さらに、SiO以外のSiOなどの他の温度特性改善効果のある絶縁性材料により第1,第2の絶縁物層を形成してもよい。また、第1,第2の絶縁物層は異なる絶縁性材料で構成されてもよく、上記のように等しい材料で構成されてもよい。
上記実施形態において、好ましくは、圧電性基板としてのLiNbO基板1は、弾性表面波の電気機械結合係数kの2乗が0.025以上であるLiNbO基板で構成され、それによって、帯域幅の広い弾性表面波装置を提供することができる。
次に、本願発明者が、LiNbO基板のオイラー角を種々変更し、オイラー角と電気機械結合係数との関係を調べた。
LiNbOの周波数温度特性(TCF)は負であり、−80〜−110ppm/℃とあまり良好ではない。そのため、正のTCFを有するSiOをLiNbO基板上に形成することにより、弾性表面波装置においてTCFの改善を図る方法が従来より知られている。
図3に示すように、13°回転Y板X伝搬(オイラー角では(0°,103°,0°)のLiNbO基板上にSiO膜を成膜した場合のSiO膜の最適な膜厚は、波長をλとしたときに、0.27λである。すなわち、SiO膜の膜厚が波長の0.27λである場合、TCFが0となる。また、LiNbO基板の方位角が変わると、SiO膜の最適な膜厚は変動することとなる。しかしながら、図1から明らかなように、SiO膜の膜厚が、波長に対し0.18λ〜0.34λの範囲であれば、温度特性TCFをほぼ0とし得ることがわかる。
他方、図4は、13°回転Y板X伝搬のLiNbO基板上に、IDT電極及びSiO膜を形成した構造におけるSiO膜の規格化膜厚H/λと、電気機械結合係数kとの関係を示す図である。なお、図4においては、電極膜厚0.005λ〜0.01λからなるIDT電極を種々の金属材料で形成した結果が示されている。
図4から明らかなように、SiO膜の膜厚H/λを厚くすると、電気機械結合係数kは小さくなることがわかる。従って、SiO膜の膜厚はできる限り薄い方がよいことがわかる。
上記のように、図3及び図4から明らかなように、周波数温度特性TCFと、電気機械結合係数kの双方を考慮した場合、SiO膜の膜厚は、波長の0.2〜0.35の範囲とすることが望ましいことがわかる。
そこで、SiO膜の膜厚を波長の0.3とした場合に、様々なオイラー角のLiNbO基板のオイラー角のθと、レイリー波の電気機械結合係数との関係を調べた。結果を図5〜図22に示す。
オイラー角(0,θ,0)のθが20°〜40°の範囲では、LSAW波は殆ど発生しない範囲であることが一般的に知られている。そして、SiO薄膜をIDT電極等の上面に形成した場合には、図5の部分に示す点線部分のように、LSAW波の電気機械結合係数が小さい部分が、オイラー角(0,θ,0)のθが20°〜40°の周辺に大きく広がっている。
一般に、RFフィルタやデュプレクサに必要な電気機械結合係数kの値は、0.025以上である。また、そのときに、漏洩弾性表面波を利用する場合には、レイリー波によるスプリアスは小さいことが要求される。すなわち、レイリー波の電気機械結合係数k、漏洩弾性表面波の電気機械結合係数kLSAW としたときに、(k LSAW/4)≧k であることが望ましい。
このような範囲を満たすオイラー角の範囲を下記の表7に示す。なお、LiNbOは3方晶系の結晶であるため、オイラー角には次の関係がある。
(φ,θ,ψ)=(60+φ,−θ,ψ)
=(60−φ,−θ,180−ψ)
=(φ,180+θ,180−ψ)
=(φ,θ,180+ψ)
よって、例えばオイラー角(10,30,10)と、オイラー角(70,−30,10)、(50,−30,170)、(10,210,170)、(10,30,190)とは等価である。
Figure 0003885824
また、好ましくは、角の範囲は下記の表8に示す範囲であり、その場合には、レイリー波の電気機械結合係数k は0.01以下となる。
Figure 0003885824
Figure 0003885824
より好ましくは下記の表9に示す範囲であり、その場合には、k ≦0.0049となる。
Figure 0003885824
他方、図23は、13°回転Y板X伝搬のLiNbO基板上に、各種金属からなる電極を形成した場合の電気機械結合係数kを示す。図23から明らかなように、電極の厚みが異なった場合、電気機械結合係数kが変化することがわかる。電極が形成されていない場合のkに対し、1.25倍のkを示す電極膜厚は、波長に対し、Auの場合には0.0017〜0.03の範囲、Ptでは図示されていないが同じ範囲であることが確かめられている。また、Agの場合には0.0035〜0.05、Taが0.0025〜0.032、Wが0.0035〜0.03、Cuが0.0058〜0.055、Niが0.125〜0.08、Alが0.033〜0.12、Cr、Ti、MoまたはZnでは0.012〜0.12である。
なお、上記電極膜厚範囲の上限は、インターデジタル電極の形成精度により制限されるものである。すなわち、上記厚みよりも厚いインターデジタル電極を高精度に形成することが困難である。
また、LiNbO基板のオイラー角が異なると、電極膜厚の最適な大きさも多少変化するが、多くとも2倍程度である。
上記電極膜厚の上限は、Alの場合には0.12λであるため、電極最適膜厚は、Auでは0.0017λ〜0.06λ、Ptでは0.0017λ〜0.06λ、Agでは0.0035λ〜0.10λ、Taでは0.0025λ〜0.064λ、Wでは0.0035λ〜0.06λ、Cuでは0.0058λ〜0.11λ、Niでは0.012λ〜0.12λ、Alでは0.033λ〜0.12λである。
図24は、上記最適な電極膜厚となるように各電極材料を用いて弾性表面波装置を構成した場合の電極膜厚による伝搬定数の変化を示す。図24から明らかなように、これらの電極膜厚において、伝搬減衰はほぼ0であることがわかる。
なお、前述した図1及び図2に示すように、第1絶縁物層及び第2絶縁物層をSiOで構成し、言い換えればインターデジタル電極を覆うようにSiO膜を形成した場合、SiO膜の上面にはインターデジタル電極の形状に起因する凸部が生じる。この凸部の大きさ、すなわち第2絶縁物層6の表面の突出高さが大きいと、表面波装置の特性が劣化する。図25は、SiO表面の突出部の高さが変化した場合の挿入損失の変化を示す図である。図25から明らかなように、凸部の突出高さが0.03λ以下であれば、挿入損失の劣化を抑制でき、望ましいことがわかる。
なお、上記SiO膜表面の凸部の突出高さとは、突出していない部分から凸部の上端までの高さ方向寸法をいうものとする。
図26は、SiO膜表面の突出高さとインターデジタルの厚みとの比を変化させた場合の挿入損失の変化を示す図である。図26において、○は、IDTの規格化膜厚H/λが0.06λの場合を、△(黒塗りの△の記号)は0.03λの場合を、×は0.08λの場合の結果を示す。
図26から明らかなように、SiO膜の表面の凸部の突出高さが、インターデジタル電極の厚みの半分以下であり、かつ突出高さが0.04λ以下であること、より好ましくは、インターデジタル電極の厚みの1/3以下であり、突出高さが0.03λ以下であることがより一層望ましいことがわかる。さらに望ましくは、SiO膜表面はほとんど凹凸を有しないことが望ましい。
また、一般に弾性表面波装置では、反射係数が小さいと、十分なストップバンドが形成されない。そのため、反射係数が小さい弾性表面波装置は共振器として動作しない。よって、弾性表面波装置を共振器型表面波デバイスとして用いるには、該弾性表面波装置における反射係数は少なくとも0.03以上であることが要求されている。従って、反射係数と電極膜厚との関係を調べ、反射係数が0.03以上となるように、電極膜厚を設定する必要がある。図34〜図39は、上記のように、SiO膜表面が平坦化された構造における反射係数と、Au、Ag、Ta、Cu、W、Alからなる各電極の電極膜厚との関係を示す。ここで、基板としては、127.86°回転Y板X伝搬LiNbO基板を用いた。なお、この基板のオイラー角は、(0°,37.86°,0°)である。
図34〜図39から明らかなように、SiO膜の膜厚が0.2λ〜0.5λの範囲で変化したとしても、Alを除き、Au、Ag、Ta、CuまたはWを電極材料として用いた場合、反射係数が0.03以上とされ得ることがわかる。
なお、上記オイラー角(0°,37.86°,0°)付近の範囲は、レイリー波の電気機械結合係数が大きく、かつLSAWの電気機械結合係数が小さいオイラー角の範囲である。このオイラー角付近の範囲は反射係数が殆ど0になるオイラー角範囲である。そのため従来このオイラー角の基板は、反射係数が小さいことが望まれるトランスバーサル型のフィルタにしか利用されなかった。すなわち、図27〜図29に示すようなフィンガの反射を必要とするデバイスには利用できなかった。そして、SiO膜の表面が凹凸である従来構造の場合においては、IDT電極にCuやAgなどの重い金属を用いたとしても、Alを用いた場合と同じ程度の大きさの反射係数しか得られなかった。SiO膜表面が凹凸である従来の構造における反射係数と電極薄膜の関係を図40に示す。
図40では、オイラー角(0°,37.86°,0°)の上記LiNbO基板上に、様々な金属からなる電極が成形されており、電極を覆うように規格化膜厚0.4λのSiO膜が形成されている従来構造において、電極膜厚を変化させた場合の反射係数の変化を示す図である。図40から明らかなように、上記オイラー角のLiNbO基板を用いた場合、Cu等の重い金属により電極を構成したとしても、電極膜厚の如何に関わらず、Alからなる電極の場合と同等の小さな反射係数しか得られないことわかる。
レイリー波の電気機械結合係数が大きく、かつLSAWの電気機械結合係数が小さいオイラー角の範囲は、前述したオイラー角範囲以外にも複数存在する。下記表10、表11は、このような複数のオイラー角の範囲を示す。また、図41〜図46は、このようなオイラー角範囲を示す図である。
より具体的には、図41〜図46は、それぞれ、オイラー角が(0°,89°,ψ)、(30°,89°,ψ)、(20°,100°,ψ)、(30°,100°,ψ)、(10°,110°,ψ)及び(0°,130°,ψ)の各LiNbO基板を用いた場合のψと、レイリー波及びLSAWの電気機械結合係数との関係を示す図である。図41〜図46から明らかなように、様々なオイラー角のLiNbO基板を用いた場合、レイリー波の電気機械結合係数が大きく、LSAWの電気機械結合係数が小さい複数のオイラー角範囲が存在することがわかる。
表10は、KRAY ≧0.05、KLSAW ≦0.02となるLiNbO基板の複数のオイラー角範囲(φ,θ,ψ)のを示す。同様に、表11は、KRAY ≧0.05、KLSAW ≦0.01となるLiNbO基板の複数のオイラー角(φ,θ,ψ)の範囲を示す。
表10、表11に示すオイラー角範囲においては、図34〜図39に示した特性と同様の特性を得ることができる。なお、本明細書中の表に記載されているオイラー角の範囲における、±5や±10は、量産化された場合のオイラー角の加工精度、並びにCu等のやや小さい比重の電極材料を用いた場合と非常に比重が大きいAu等の電極材料を用いた場合との電極材料の比重差を考慮して求められた角度許容範囲である。
Figure 0003885824
Figure 0003885824
Figure 0003885824
図32にAl電極、W電極、Cu電極の電極指の1本当りの反射係数と電極厚みとの関係を示す。電極指間の間にはSiO膜が存在し、その上にもSiO膜が存在する。
基板からのSiO膜の厚みは0.3λでSiO表面には凹凸がない。基板は13°回転Y板X伝搬LiNbOである。図から明らかなように、Al電極指の場合には、反射係数が小さい上、Al膜厚を増やしても反射係数は大きくならない。一方、重い電極指のWやCuはAlに比べ反射係数が大きく、また厚みを厚くすることにより、反射係数も大きくなる。このようにAlに比べ密度の大きい電極指からなるIDTは、反射係数が大きく、共振子、共振子フィルタ、ラダー型フィルタに適している。
本発明は、様々な弾性表面波装置に適用することができる。このような弾性表面波装置の例を、図27(a),(b)〜図29に示す。図27(a)及び(b)は、それぞれ、1ポート型弾性表面波共振子47及び2ポート型弾性表面波共振子48の電極構造を示す模式的平面図である。また、図27(b)に示す2ポート型弾性表面波共振子48と同じ電極構造を用いて2ポート型弾性表面波共振子フィルタを構成してもよい。
さらに、図28及び図29は、それぞれ、ラダー型フィルタ及びラチス型フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。図28及び図29に示すラダー型フィルタ49a及びラチス型フィルタ49bのような電極構造を圧電性基板上に形成することにより、本発明に従ってラダー型フィルタ及びラチス型フィルタを構成することができる。
もっとも、本発明は、図27〜図29に示した電極構造を有する弾性表面波装置に限らず、様々な弾性表面波装置に適用することができる。

Claims (35)

  1. 電気機械結合係数の2乗(k2)が0.025以上のLiNbO3からなる圧電性基板と、
    前記圧電性基板上に形成されており、Alよりも密度の大きい金属もしくは該金属を主成分とする合金、またはAlよりも密度の大きい金属もしくは該金属を主成分とする合金と他の金属とからなる積層膜からなる少なくとも1つの電極と、
    前記少なくとも1つの電極が形成されている領域を除いた残りの領域において、前記電極と略等しい膜厚に形成された第1絶縁物層と、
    前記電極及び第1絶縁物層を被覆するように形成された第2絶縁物層とを備え、
    前記電極の密度が、前記第1絶縁物層の1.5倍以上であり、前記第2の絶縁物層の厚みが、表面波の波長をλとしたときに、0.18λ〜0.34λの範囲にあり、
    前記第2の絶縁物層の表面の凸部の突出高さが、表面波の波長をλとしたときに、0.03λ以下である、弾性表面波装置。
  2. LiNbO3からなる圧電性基板と、
    前記圧電性基板上に形成された少なくとも1つの電極と、
    前記電極上に形成されており、かつ電極を構成する金属もしくは合金よりも耐腐食性に優れた金属もしくは合金からなる保護金属膜と、
    前記少なくとも1つの電極が形成されている領域を除いた残りの領域において、前記電極と保護金属膜との合計の膜厚と略等しい膜厚を有するように形成された第1絶縁物層と、
    前記保護金属膜及び第1絶縁物層を被覆するように形成された第2絶縁物層とを備え、前記第2の絶縁物層の厚みが、表面波の波長をλとしたときに、0.18λ〜0.34λの範囲にあり、
    前記第2の絶縁物層の表面の凸部の突出高さが、表面波の波長をλとしたときに、0.03λ以下である、弾性表面波装置。
  3. 前記電極及び保護金属膜の積層構造の全体の平均密度が、前記第1絶縁物層の密度の1.5倍以上である、請求項2に記載の弾性表面波装置。
  4. 前記第1,第2の絶縁物層がSiO2により形成されている、請求項1〜3のいずれか
    に記載の弾性表面波装置。
  5. 弾性表面波の反射を利用した弾性表面波装置である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
  6. 前記第2の絶縁物層上の凸部の突出高さが、前記電極の厚みの1/2以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
  7. 前記第2の絶縁物層上の凸部の突出高さが、前記電極の厚みの1/3以下である、請求項6に記載の弾性表面波装置。
  8. 前記電極が、Alよりも重い金属を主体とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
  9. 前記電極が、Au、Pt、Cu、Ta、W、Ag、Ni、Mo、NiCr、Cr及びTiからなる群から選択した1種を主体とする、請求項8に記載の弾性表面波装置。
  10. 前記電極が、AuまたはPtからなり、その膜厚が、表面波の波長をλとしたときに、0.0017λ〜0.06λの範囲にある、請求項9に記載の弾性表面波装置。
  11. 前記電極が、Au、Ag、Ni、Mo、Zn、Cu、Pt、Ta、W、Cr及びTiからなる群から選択した1種を主体とし、該電極の膜厚が、表面波の波長をλとしたときに、下記の表1に示す範囲とされている、請求項9に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  12. 第2の絶縁物層の厚みが、波長をλとしたときに、0.2λ〜0.35λの範囲にある、請求項1〜11のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
  13. 前記LiNbO3からなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表2に示す何れかの範囲
    にある、請求項1〜1のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  14. 前記LiNbO3からなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表3に示す何れかの範囲
    にある、請求項1に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  15. 前記LiNbO3からなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表4に示す何れかの範囲
    にある、請求項1に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  16. 前記LiNbO3からなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表5に示す何れかの範囲
    にある、請求項1〜1のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  17. 前記LiNbO3からなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表6に示す何れかの範囲
    にある、請求項1に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  18. 前記LiNbOからなる圧電性基板のオイラー角が、(0±5,80〜117,0±10)に示す範囲にある、請求項1〜1のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
  19. LiNbO 3 からなる圧電性基板と、
    前記圧電性基板上に形成された少なくとも1つの電極と、
    前記電極上に形成されており、かつ電極を構成する金属もしくは合金よりも耐腐食性に優れた金属もしくは合金からなる保護金属膜と、
    前記少なくとも1つの電極が形成されている領域を除いた残りの領域において、前記電極と保護金属膜との合計の膜厚と略等しい膜厚を有するように形成された第1絶縁物層と、
    前記保護金属膜及び第1絶縁物層を被覆するように形成された第2絶縁物層とを備え、前記電極及び保護金属膜の積層構造の全体の平均密度が、前記第1絶縁物層の密度の1.5倍以上であり、
    前記第2の絶縁物層の表面の凸部の突出高さが、表面波の波長をλとしたときに、0.03λ以下である、弾性表面波装置。
  20. 前記第1,第2の絶縁物層がSiO 2 により形成されている、請求項19に記載の弾性表面波装置。
  21. 弾性表面波の反射を利用した弾性表面波装置である、請求項19または20に記載の弾性表面波装置。
  22. 前記第2の絶縁物層上の凸部の突出高さが、前記電極の厚みの1/2以下である、請求項19〜21のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
  23. 前記第2の絶縁物層上の凸部の突出高さが、前記電極の厚みの1/3以下である、請求項22に記載の弾性表面波装置。
  24. 前記電極が、Alよりも重い金属を主体とする、請求項19〜23のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
  25. 前記電極が、Au、Pt、Cu、Ta、W、Ag、Ni、Mo、NiCr、Cr及びTiからなる群から選択した1種を主体とする、請求項24に記載の弾性表面波装置。
  26. 前記電極が、AuまたはPtからなり、その膜厚が、表面波の波長をλとしたときに、0.0017λ〜0.06λの範囲にある、請求項25に記載の弾性表面波装置。
  27. 前記電極が、Au、Ag、Ni、Mo、Zn、Cu、Pt、Ta、W、Cr及びTiからなる群から選択した1種を主体とし、該電極の膜厚が、表面波の波長をλとしたときに、下記の表1に示す範囲とされている、請求項25に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  28. 前記第2の絶縁物層の厚みが、波長をλとしたときに、0.18λ〜0.34λの範囲にある、請求項19〜27のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
  29. 第2の絶縁物層の厚みが、波長をλとしたときに、0.2λ〜0.35λの範囲にある、請求項28に記載の弾性表面波装置。
  30. 前記LiNbO 3 からなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表2に示す何れかの範囲
    にある、請求項19〜29のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  31. 前記LiNbO 3 からなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表3に示す何れかの範囲
    にある、請求項30に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  32. 前記LiNbO 3 からなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表4に示す何れかの範囲
    にある、請求項31に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  33. 前記LiNbO 3 からなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表5に示す何れかの範囲
    にある、請求項19〜29のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  34. 前記LiNbO 3 からなる圧電性基板のオイラー角が、下記の表6に示す何れかの範囲
    にある、請求項33に記載の弾性表面波装置。
    Figure 0003885824
  35. 前記LiNbO からなる圧電性基板のオイラー角が、(0±5,80〜117,0±10)に示す範囲にある、請求項19〜29のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
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