JP4277489B2 - 表面波装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、LiNbO3基板を用いた表面波装置に関し、より詳細には、LiNbO3基板を伝搬するバルク波の内の「速い横波」及び「遅い横波」よりも位相速度が遅い縦波成分主体の表面波を利用した表面波装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、帯域フィルタや遅延線などに表面波装置が広く用いられている。表面波装置で利用される弾性表面波としては、レイリー波、BGS波、ラブ波、表面すべり波などが知られている。
【0003】
従来より広く用いられているレイリー波では、表面波伝搬方向と同じ方向に変位を有する縦波と、基板の深さ方向に変位を有する横波の2つの成分が共に優勢である。これに対して、ラブ波や表面すべり波では、横波成分が優勢である。
【0004】
これらの表面波とは別に、近年、基板の深さ方向にエネルギーを放射しつつ表面を伝搬する表面波が知られており、疑似弾性表面波あるいは漏洩弾性表面波と称されている。
【0005】
特開平8−288788号公報には、縦波成分が横波成分よりも優勢である縦波型表面波を利用した表面波装置が開示されている。ここでは、特定のオイラー角のLiTaO3基板やLiNbO3基板上に、縦波型表面波の波数Kと薄膜の厚みHとの積が所定の数値範囲となるように薄膜が形成されている表面波装置が開示されている。例えば、LiNbO3基板上に、AlまたはAl合金からなる薄膜を形成した構造では、オイラー角を(40°〜90°,40°〜90°,0°〜60°)及びこれと等価な範囲とすることにより、並びに表面波、疑似弾性表面波または表面すべり体積波の波数Kと薄膜の厚みHとの積KHを0.3以上に設定した構成が示されている。このような構成により、バルクの内の「遅い横波」及び「速い横波」よりも位相速度が遅い縦波型表面波が効果的に利用され、伝搬損失をほぼ0とすることができるとされている。
【0006】
なお、「遅い横波」及び「速い横波」は、圧電基板を伝搬するバルク波であり、圧電基板中を伝搬するバルク波としては、「遅い横波」、「速い横波」及び「縦波」の3種類のバルク波が存在する。上記先行技術に記載の表面波装置では、この「速い横波」及び「遅い横波」よりも位相速度が遅い縦波型表面波では、上記のように伝搬損失が0となることが示されている。
【0007】
また、LiNbO3基板のオイラー角を上記特定の範囲、好ましくは(90°,90°,37°)とし、Alからなる膜厚H/λを0.00〜0.32の範囲とすれば、電気機械結合係数を大きく、かつ周波数温度特性係数を小さくし得ることが示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本願発明者は、上記先行技術に記載の表面波装置では、実際には電気機械結合係数kS 2はさほど高くならず、7%程度に過ぎないことを見出した。また、自由表面における周波数温度特性係数TCFf及び短絡表面における周波数温度特性係数TCFmが、それぞれ、−46ppm/℃及び−50ppm/℃程度であり、周波数温度特性係数を十分に小さくすることができないことも見出した。すなわち、電気機械結合係数が十分でなく、かつ周波数温度特性係数TCFが大きいため、広帯域のフィルタ特性を得ることが困難であることがわかった。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の現状に鑑み、縦波を主成分とした表面波を利用しており、伝搬損失をほぼ0とすることができるだけでなく、電気機械結合係数kS 2が大きく、開放表面における周波数温度特性係数TCFf及び短絡表面における周波数温度特性係数TCFmのいずれもが小さい表面波装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願の第1の発明の広い局面によれば、縦波を主成分とする表面波を利用した表面波装置であって、LiNbO3基板と、前記LiNbO3基板上に形成されており、AuもしくはAuを主成分とする合金からなる電極膜とを備え、前記縦波を主成分とする表面波が前記LiNbO3基板を伝搬するバルク波の内の「速い横波」及び「遅い横波」より位相速度が遅い縦波成分主体の表面波であり、前記LiNbO3基板のオイラー角が、下記の表19〜表28に示されている各座標を結んだ線で囲まれた各領域A1〜A10に含まれるオイラー角、または該オイラー角と等価なオイラー角であり、前記電極膜の膜厚をH、表面波の波長をλとしたときに、規格化膜厚H/λが0.054〜0.2の範囲にあることを特徴とする、表面波装置が提供される。
【0011】
【表19】
【0012】
【表20】
【0013】
【表21】
【0014】
【表22】
【0015】
【表23】
【0016】
【表24】
【0017】
【表25】
【0018】
【表26】
【0019】
【表27】
【0020】
【表28】
【0021】
本願の第2の発明の別の広い局面によれば、縦波を主成分とする表面波を利用した表面波装置であって、LiNbO3基板と、前記LiNbO3基板上に形成されており、AuもしくはAuを主成分とする合金からなる電極膜とを備え、前記縦波を主成分とする表面波が前記LiNbO3基板を伝搬するバルク波の内の「速い横波」及び「遅い横波」より位相速度が遅い縦波成分主体の表面波であり、前記LiNbO3基板のオイラー角が、下記の表29〜32に示されている各座標を結んだ線で囲まれた各領域C1〜C4に含まれるオイラー角、または該オイラー角と等価なオイラー角であり、前記電極膜の膜厚をH、表面波の波長をλとしたときに、規格化膜厚H/λが0.054〜0.2の範囲にあることを特徴とする、表面波装置が提供される。
【0022】
【表29】
【0023】
【表30】
【0024】
【表31】
【0025】
【表32】
【0026】
第2の発明のより限定的な局面では、前記LiNbO3基板のオイラー角が、下記の表33〜表36に示されている座標を結んだ線で囲まれた各領域D1〜D4に含まれるオイラー角、または該オイラー角と等価なオイラー角とされる。
【0027】
【表33】
【0028】
【表34】
【0029】
【表35】
【0030】
【表36】
【0031】
第1,第2の発明(本発明)においては、好ましくは、上記LiNbO3基板のオイラー角は、(φ,60°〜120°,ψ)またはこれと等価なオイラー角とされ、それによって短絡表面における周波数温度特性係数TCFmをより一層小さくすることができる。
【0033】
本発明においては、上記電極膜は、少なくともインターデジタルトランスデューサを構成するが、インターデジタルトランスデューサ以外に反射器等が構成されていてもよい。すなわち、電極膜は、インターデジタルトランスデューサ及び反射器であってもよい。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施例を説明することにより本発明を明らかにするが、実施例の説明に先立ち、特開平8−288788号公報に記載の先行技術において、大きな電気機械結合係数kS 2を得ることができないこと、並びに周波数温度特性係数が良好でないことを説明する。
【0035】
本願発明者らは、特開平8−288788号公報に記載の技術を確認するため、文献「A method for estimating optimal cuts and propagation directions for excitation and propagation directions for excitation of piezoelectric surface waves」(J.J.Campbell and W.R.Jones,IEEE Trans.Sonics and Ultrason.,Vol.SU-15(1968)pp.209-217)、文献「疑似弾性表面波解析における放射条件の取り扱いについて」(橋本、遠藤、山口、信学技報,US95-46,1995-09,pp.25-30)などで報告されている一般的な表面波の伝搬特性を解析する手法を用いて、短絡表面及び開放表面における縦波型疑似表面波及び縦波型表面波の伝搬特性をまとめた。なお、基板としては、上記先行技術において最も望ましいオイラー角とされている(90°,90°,37°)のLiNbO3基板を用い、該基板上にAu膜を形成した。
【0036】
なお、開放表面の伝搬特性は、Au膜の導電率を0、比誘電率を1とすることにより求めた。また、LiNbO3基板の定数は、文献「Improved Material Constant for LiNbO3 and LiTaO3」(G.Kovacs等,1990 US Symp,pp435-438)に記載のものを用いた。
【0037】
結果を図13〜図16に示す。
図13は、Au膜の膜厚H/λ(λは表面波の波長)を変化させた場合の、短絡表面における位相速度Vm及び開放表面における位相速度Vfの変化を示す図である。
【0038】
図14は、Au膜の膜厚H/λを変化させた場合の、電気機械結合係数kS 2の変化、並びに短絡表面における伝搬損失αm及び開放表面における伝搬損失αfの変化を示す図である。
【0039】
図15は、Au膜の膜厚H/λを変化させた場合の、開放表面における周波数温度特性係数TCFf及び短絡表面における周波数温度特性係数TCFmの変化を示す図である。
【0040】
図16は、Au膜の膜厚H/λを変化させた場合の、短絡表面におけるパワーフロー角PFAm及び開放表面におけるパワーフローPFAfの変化を示す図である。
【0041】
なお、特開平8−288788号公報に記載のパラメータKHにおいて、Kは波数であり、K=2π/λ、Hは膜厚である。従って、上記H/λは、H/λ=KH/2πの関係となる。
【0042】
ここで、任意のオイラー角(φ,θ,ψ)における周波数温度特性係数TCFは、20℃、25℃及び30℃における位相速度、V(20℃)、V(25℃)及びV(30℃)から下記の式(1)により求めた。なお、開放表面におけるTCFfは、V=Vf、短絡表面におけるTCFmは、V=Vmとして求めた。
【0043】
TCF=V(25℃)-1×{(V(30℃)−V(20℃))÷10℃}−αS…式(1)
なお、αSは表面波伝搬方向における基板の線膨張係数である。
【0044】
また、任意のオイラー角(φ,θ,ψ)におけるパワーフロー角PFAは、ψ−0.5°、ψ、及びψ+0.5°における位相速度V(ψ−0.5°)、V(ψ)及びV(ψ+0.5°)から下記の式(2)により求めた。なお、開放表面のPFAfは、V=Vf、短絡表面におけるPFAmは、V=Vmとして求めた。
【0045】
PFA=tan-1{V(ψ)-1×(V(ψ+0.5°)−V(ψ−0.5°))}…(2)
オイラー角(90°,90°,37°)における遅い横波、速い横波及び縦波の位相速度は、それぞれ、4019m/秒、4026m/秒及び7316m/秒である。
【0046】
従って、図13から明らかなように、H/λ>0.054において、短絡表面の位相速度Vmが遅い横波よりも低速になり、H/λ>0.060の場合、開放表面の位相速度Vfが遅い横波よりも低速となる。図14から、この時の伝搬損失は0となることがわかる。
【0047】
しかしながら、図14に示す電気機械結合係数kS 2と膜厚H/λとの関係は、特開平8−288788号公報に記載の図7における電気機械結合係数とKHとの関係とは異なっている。H/λ=KH=0では、図14の結果と特開平8−288788号公報の図7の結果とはほぼ同等であるが、特開平8−288788号公報の図7では、KHが増加するにつれて、電気機械結合係数が増加し、KH=0.4すなわちH/λ=0.0637の場合に、電気機械結合係数が100%近い値となることが示されている。
【0048】
しかしながら、本願発明者らが検討した結果、実際には、H/λ=0.008で、電気機械結合係数kS 2がピーク値を示し、その場合であってもkS 2=0.19であり、H/λがさらに増加するとともに電気機械結合係数kS 2が減少することが計算により確かめられた。
【0049】
また、本願発明者らが行った具体的な実験においても、H/λが増加するとともに、電気機械結合係数kS 2は減少する傾向を示していることが確かめられ、上記解析結果と一致した。
【0050】
図14から明らかなように、短絡表面における伝搬損失αm=開放表面における伝搬損失αf=0となる条件であるH/λ=0.06における電気機械結合係数kS 2は8.4%である。実際に利用する場合には、H/λに若干の余裕を持たせるため、H/λ=0.08程度で設計するのが相当である。この場合には、電気機械結合係数kS 2は7.2%となり、開放表面における周波数温度特性係数TCFf及び短絡表面における周波数温度特性係数TCFmは、それぞれ、−46ppm/℃及び−55ppm/℃であることがわかる。
【0051】
すなわち、上記先行技術の記載に従って、該先行技術で最適とされている上記(90°,90°,37°)のオイラー角のLiNbO3基板上に、Au膜を上記先行技術に記載の膜厚で形成し、短絡表面及び開放表面における伝搬損失がいずれも0とするように表面波装置を構成したとしても、電気機械結合係数は7%程度と小さく、かつ周波数温度特性係数TCFも大きくならざるを得ないことがわかる。
【0052】
これに対して、本発明によれば、縦波を主成分とした表面波を利用した表面波装置において、伝搬損失を0とし得るだけでなく、電気機械結合係数kS 2を大きくすることができ、かつ周波数温度特性係数TCFを効果的に低減することができる。これを以下において説明する。
【0053】
(用語の定義)
なお、本願明細書では、下記の用語については、以下の意味を有するものとする。
【0054】
縦波を主成分とする表面波…本明細書において、「縦波を主成分とする表面波」とは、特開平8−288788号公報に記載の縦波成分が横波成分よりも優勢である縦波型疑似弾性表面波、縦波型表面すべり波などを含み、位相速度が「遅い横波」及び「速い横波」よりも遅い縦波を主成分とする表面波を広く含むものとする。
【0055】
オイラー角…本明細書では、基板の切断面と表面波の伝搬方向を表現するオイラー角(φ,θ,ψ)は、「弾性波素子技術ハンドブック」(日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会、第1版第1刷、平成3年11月30日発行、549頁)記載の右手系オイラー角を用いた。
【0056】
結晶軸…オイラー角の初期値として与えられるLiNbO3の結晶軸X,Y,Zは、Z軸をc軸と平行とし、X軸を等価な3方向のa軸のうちの任意の1つと平行とし、Y軸はX軸及びZ軸を含む面の法線方向とした。
【0057】
変位成分…本明細書においては、u1,u2,u3と表記した。u1は、X軸方向の変位であり、u2はY軸方向の変位であり、u3はZ軸方向の変位である。上記第2漏洩表面波は、u1成分が主体の場合の縦波型漏洩表面波と呼ばれている。
【0058】
等価なオイラー角…本明細書においては、等価なオイラー角なる表現が用いられているが、これは、LiNbO3基板のオイラー角(φ,θ,ψ)が概して結晶学的に等価なオイラー角をいうものとする。例えば、日本音響学会誌36巻3号、1980年、140〜145頁)によれば、LiNbO3は、三方晶系3m点群に属する結晶であるため、以下の式(3)が成り立つ。
【0059】
F(φ,θ,ψ)=F(60°−φ,−θ,ψ)
=F(60°+φ,−θ,180°−ψ)
=F(φ,180°+θ,180°−ψ)
=F(φ,θ,180°+ψ) … (3)
なお、Fは、電気機械結合係数、伝搬損失、周波数温度特性係数TCF、パワーフロ角PFA及びナチュラル一方向性などの、オイラー角依存性を有する任意の表面波特性を示す。なお、PFAやナチュラル一方向性は、伝搬方向を正負反転した場合、符号は変わるものの絶対量は等しくなる。従って、例えば、オイラー角(30°,θ,ψ)の表面波伝搬特性は、オイラー角(90°,180°−θ,180°−ψ)の表面波伝搬特性と等価であることになる。また、例えば、オイラー角(30°,90°,45°)の表面波伝搬特性は、下記の表3に示すオイラー角の表面波伝搬特性と等価である。
【0060】
【表37】
【0061】
なお、本発明において計算に用いたAuの材料定数は、多結晶体の値であるが、エピタキシャル膜などの結晶体においても、膜自体の結晶方位依存性により基板の結晶方位依存性が表面波特性に対して支配的であるため、式(1)により、実用上問題ない程度の表面波伝搬特性が得られる。
【0062】
(第1の実施例)
図1〜図4は、オイラー角(0°,θ,ψ)、(10°,θ,ψ)、(20°,θ,ψ)及び(30°,θ,ψ)のLiNbO3基板の表面に、Au膜をH/λ=0.08の厚みで形成した構造の基板表面を伝搬する縦波を主成分とする、すなわちu1成分主体の表面波の電気機械結合係数kS 2の結果を示す図である。
【0063】
図1〜図4において、ψ及びθは、それぞれ、0°〜180°の範囲でそれぞれ5°間隔で変化させた。
図1〜図4から明らかなように、下記の表38〜表44に示す座標を線で結んだ各領域A1〜A7において、電気機械結合係数kS 2が8%以上と大きいことがわかる。なお、図に示す座標を線で結んだ領域とは、例えば領域A1を例にとると、下記の表38において示す番号1〜35の座標を結んだ線で囲まれた領域であり、図1において斜線のハッチングを付した領域に相当する。以下、領域A2〜A10、並びに後述する領域C1〜C4及びD1〜D4についても同様にして定められる。すなわち、領域A1〜A10、C1〜C4及びD1〜D4は、それぞれ、表に示す各領域に対応した座標1〜N(Nは各表の最後の座標番号)を座標1,2,3…N,1の順に結んだ線で囲まれた領域を示すものとする。
【0064】
【表38】
【0065】
【表39】
【0066】
【表40】
【0067】
【表41】
【0068】
【表42】
【0069】
【表43】
【0070】
【表44】
【0071】
(第2の実施例)
図5〜図8は、オイラー角(0°,θ,ψ)、(10°,θ,ψ)、(20°,θ,ψ)及び(30°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜を第1の実施例と同様にしてH/λ=0.08の厚みで形成した構造の表面を伝搬するu1成分主体の表面波の短絡表面における周波数温度係数TCFmの変化を示す図である。図5〜図8から明らかなように、θが60°以上、120°以下の場合に、TCFmが−55ppm/℃よりも大きく、すなわちTCFmの絶対値が小さくなることがわかる。
【0072】
図9〜図12は、オイラー角(0°,θ,ψ)、(10°,θ,ψ)、(20°,θ,ψ)及び(30°,θ,ψ)の各オイラー角のLiNbO3基板上に、上記と同様にAuをH/λ=0.08の厚さで形成した構造の表面を伝搬するu1成分主体の表面波の開放表面の周波数温度係数TCFfの変化を示す図である。
【0073】
図9〜図12から明らかなように、下記の表45〜表48に示す座標を結んだ線で囲まれた各領域C1〜C4内のオイラー角において、TCFf>−45ppm/℃となることがわかる。さらに、下記の表49〜表52に示す座標を結んだ線で囲まれた各領域D1〜D4内のオイラー角であれば、TCFf>−40ppm/℃とさらに好ましいことがわかる。
【0074】
【表45】
【0075】
【表46】
【0076】
【表47】
【0077】
【表48】
【0078】
【表49】
【0079】
【表50】
【0080】
【表51】
【0081】
【表52】
【0082】
上記実施例では、φ=0°、10°、20°及び30°の場合の結果を示したが、本願発明者の実験によれば、各φの値に対して±5°の範囲でほぼ同等の結果が得られることが確かめられている。
【0083】
本発明に係る表面波装置は、上記特定のオイラー角のLiNbO3基板と電極膜とを備える限り、その具体的な構造については特に限定されない。一例として図17に、本発明が適用される1ポート型表面波共振子を模式的平面図で示す。1ポート型表面波共振子である表面波装置1は、上記特定のオイラー角LiNbO3基板2を有する。LiNbO3基板2上に、IDT3及び反射器4,5が設けられている。もっとも、上記1ポート型表面波共振子だけでなく、複数の表面波共振子を直列及び並列に接続してなるラダー型フィルタや、各種共振器型フィルタ、あるいはトランスバーサル型の表面波フィルタにも本発明を適用することができる。
【0084】
さらに、電極膜は、Au以外の金属、例えばAg、Cu、Ta、W、Ti、PtまたはAlなどの他の金属やこれらの金属の合金で構成されていてもよく、金属膜中を伝搬するバルク波の位相速度がLiNbO3基板を伝搬する表面波の位相速度よりも遅くなるため、上記と同様の効果が得られる。
【0085】
【発明の効果】
第1,第2の発明に係る表面波装置によれば、LiNbO3基板のオイラー角が上記特定の範囲とされているため、縦波を主成分とする表面波の伝搬損失をほぼ0とし得るだけでなく、電気機械結合係数が大きく、かつ周波数温度特性係数に優れた表面波装置を確実に提供することが可能となる。従って、例えば広帯域のフィルタなど、特性に優れた表面波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】オイラー角(0°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の電気機械結合係数kS 2とオイラー角との関係を示す図。
【図2】オイラー角(10°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の電気機械結合係数kS 2とオイラー角との関係を示す図。
【図3】オイラー角(20°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の電気機械結合係数kS 2とオイラー角との関係を示す図。
【図4】オイラー角(30°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の電気機械結合係数kS 2とオイラー角との関係を示す図。
【図5】オイラー角(0°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の短絡表面における周波数温度係数TCFmとオイラー角との関係を示す図。
【図6】オイラー角(10°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の短絡表面における周波数温度係数TCFmとオイラー角との関係を示す図。
【図7】オイラー角(20°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の短絡表面における周波数温度係数TCFmとオイラー角との関係を示す図。
【図8】オイラー角(30°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の短絡表面における周波数温度係数TCFmとオイラー角との関係を示す図。
【図9】オイラー角(0°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の開放表面における周波数温度係数TCFfとオイラー角との関係を示す図。
【図10】オイラー角(10°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の開放表面における周波数温度係数TCFfとオイラー角との関係を示す図。
【図11】オイラー角(20°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の開放表面における周波数温度係数TCFfとオイラー角との関係を示す図。
【図12】オイラー角(30°,θ,ψ)のLiNbO3基板上に、Au膜をH/λ=0.08の厚みに形成してなる構造においてu1成分主体の表面波の開放表面における周波数温度係数TCFfとオイラー角との関係を示す図。
【図13】先行技術に記載の表面波装置におけるAu膜の膜厚H/λを変化させた場合の短絡表面における位相速度Vm及び開放表面における位相速度Vfの変化を示す図。
【図14】先行技術に記載の表面波装置においてAu膜の膜厚H/λを変化させた場合の電気機械結合係数kS 2の変化、並びに開放表面及び短絡表面における伝搬損失αf,αmの変化を示す図。
【図15】先行技術における表面波装置においてAu膜の膜厚H/λを変化させた場合の短絡表面及び開放表面における温度係数TCFm及びTCFfの変化を示す図。
【図16】先行技術の表面波装置において、Au膜の膜厚H/λを変化させた場合の、開放表面におけるパワーフロー角PFAf及び短絡表面におけるパワーフロー角PFAmの変化を示す図。
【図17】本発明が適用される表面波装置の一例としての1ポート型表面波共振子を示す平面図。
【符号の説明】
1…表面波装置
2…LiNbO3基板
3…IDT
4,5…反射器
Claims (5)
- 縦波を主成分とする表面波を利用した表面波装置であって、LiNbO3基板と、
前記LiNbO3基板上に形成されており、AuもしくはAuを主成分とする合金からなる電極膜とを備え、
前記縦波を主成分とする表面波が前記LiNbO3基板を伝搬するバルク波の内の「速い横波」及び「遅い横波」より位相速度が遅い縦波成分主体の表面波であり、
前記LiNbO3基板のオイラー角が、下記の表1〜表10に示されている各座標を結んだ線で囲まれた各領域A1〜A10に含まれるオイラー角、または該オイラー角と等価なオイラー角であり、
前記電極膜の膜厚をH、表面波の波長をλとしたときに、規格化膜厚H/λが0.054〜0.2の範囲にあることを特徴とする、表面波装置。
- 縦波を主成分とする表面波を利用した表面波装置であって、LiNbO3基板と、
前記LiNbO3基板上に形成されており、AuもしくはAuを主成分とする合金からなる電極膜とを備え、
前記縦波を主成分とする表面波が前記LiNbO3基板を伝搬するバルク波の内の「速い横波」及び「遅い横波」より位相速度が遅い縦波成分主体の表面波であり、
前記LiNbO3基板のオイラー角が、下記の表11〜14に示されている各座標を結んだ線で囲まれた各領域C1〜C4に含まれるオイラー角、または該オイラー角と等価なオイラー角であり、
前記電極膜の膜厚をH、表面波の波長をλとしたときに、規格化膜厚H/λが0.054〜0.2の範囲にあることを特徴とする、表面波装置。
- 前記LiNbO3基板のオイラー角が、(φ,60°〜120°,ψ)またはこれと等価なオイラー角である、請求項1〜3のいずれかに記載の表面波装置。
- 前記電極膜が、インターデジタルトランスデューサ及び反射器である、請求項1〜4のいずれかに記載の表面波装置。
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