JPWO2008093532A1 - 弾性境界波装置 - Google Patents

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Abstract

SH型弾性境界波を利用しており、煩雑な工法を採用せずとも、狭帯域のフィルタや共振子に適した電気機械結合係数を得ることができる弾性境界波装置を得る。ほう酸リチウム系圧電単結晶基板2を用いており、該ほう酸リチウム系圧電単結晶基板2上にIDT4が形成されており、IDT4を覆うように誘電体3が形成されており、ほう酸リチウム系単結晶基板2と誘電体3との境界を伝搬するP+SV型の弾性境界波としてのストンリー波を利用しており、ほう酸リチウム系圧電単結晶基板2のオイラー角(φ,θ,ψ)が、図2、図6、図10、図14、図18、図22、図26、図30、図34、図38、図42、図46、図50、図54、図58、図62、図66、図70または図74のそれぞれにおいて、電気機械結合係数K2が0.4%であることを示す線及び該線よりも電気機械結合係数K2が高い領域内のいずれかにある、弾性境界波装置1。

Description

本発明は、圧電単結晶基板と誘電体との境界を伝搬する弾性境界波を利用した弾性境界波装置に関し、より詳細には、圧電単結晶基板としてほう酸リチウム系圧電単結晶基板を用い、かつP+SV型の弾性境界波を用いた弾性境界波装置に関する。
近年、携帯電話機などの様々な電子機器において、発振子や帯域フィルタを構成するために弾性表面波装置が広く用いられている。また、弾性表面波装置に代えて、パッケージ構造の簡略化を図ることができるため、弾性境界波装置が注目されている。
下記の非特許文献1では、128°回転Y板X伝搬のLiNbO基板上に、SiOからなる誘電体層が積層されており、両者の界面をストンリー波と呼ばれる弾性境界波が伝搬する構造が開示されている。非特許文献1における理論的な解析によれば、SiO本来の状態では、LiNbO基板とSiO層との境界に変位が集中しないため、発生される波は境界波とはならない。そこで、非特許文献1では、SiOの弾性的性質を表わすラメ定数μを、SiO本来の0.3119×1011N/mから、0.4679×1011N/mに変更することにより、変位を境界に集中させ、境界波を伝搬させ得ることが示されている。
他方、非特許文献1における実験結果によれば、SiOの形成条件を種々変更したとしても、境界波が伝搬可能なSiO膜を形成することはできないことが示されている。
また、下記の特許文献1には、Si基板と、LiNbO基板とを貼り合わせてなる弾性境界波装置が開示されている。
他方、下記の特許文献2には、第1の媒質と第2の媒質とを積層してなり、第1,第2の媒質間の境界にIDT電極を配置してなる弾性境界波装置が開示されている。ここでは、IDT電極として、低音速であり、密度が大きい金属を用いることにより、IDT電極に振動エネルギーを集中させ、弾性境界波を励振し得るとされている。特許文献2に記載の実施例では、具体的には、LiNbO基板とSiO膜との境界にAuからなるIDT電極が配置されている。
中条、山之内、柴山:″層状構造基板における圧電性境界波″,信学技報、US80−4、1980 特開1998−084247号公報 WO2004/070946
例えば高周波帯などで用いられる帯域フィルタや共振子として弾性境界波装置を利用する場合、電気機械結合係数が適切な値であり、伝搬損失、パワーフロー角PFA及び周波数温度係数TCFが小さいことが求められる。
伝搬損失、すなわち弾性境界波の伝搬に伴う損失が大きいと、弾性境界波フィルタでは挿入損失が劣化し、弾性境界波共振子では、共振抵抗が小さくなったり、反共振周波数におけるインピーダンスと共振周波数におけるインピーダンスとの比であるインピーダンス比が小さくなったりする。従って、伝搬損失は小さいことが望ましい。
パワーフロー角PFAとは、弾性境界波の位相速度の方向と、弾性境界波のエネルギーが進む群速度の方向との違いを表わす角度である。パワーフロー角PFAが大きいと、IDT電極をパワーフロー角に合わせて傾けて配置する必要がある。そのため、電極設計が複雑となる。また、角度ずれによる損失も生じやすくなる。従って、パワーフロー角PFAは小さいことが望ましい。
他方、温度により弾性境界波装置の動作周波数が大きく変化すると、弾性境界波フィルタの場合には、実用可能な通過帯域幅や阻止帯域幅が狭くなり、弾性境界波共振子の場合には発振回路を構成したときの異常発振の原因となるおそれがある。従って、周波数温度係数TCF、すなわち温度1℃あたりの周波数変化量が小さいことが望ましい。
例えば、弾性境界波を送受信する送信用IDT及び受信用IDTの両外側に反射器を配置することにより、低損失な共振器型フィルタを構成することができる。この共振器型フィルタの通過帯域幅は、弾性境界波の電気機械結合係数Kに依存する。電気機械結合係数Kが大きいと、広い通過帯域を有する弾性境界波フィルタを得ることができる。電気機械結合係数Kが小さいと、通過帯域は狭くなる。従って、弾性境界波装置に用いる弾性境界波の電気機械結合係数Kは、用途に応じて適切な値とすることが必要である。
弾性境界波装置が用いられるシステムにおける要求帯域幅を中心周波数で除算して得られた値である比帯域幅が0.5%以下であるような狭帯域のIFフィルタや比帯域幅が1%以下であるような帯域幅の狭い一部のRFフィルタの場合には、電気機械結合係数Kの適切な範囲は0.1〜2%である。
上述した非特許文献1に記載のSiO/LiNbO構造の境界を伝搬する弾性境界波としてストンリー波を用いた場合には、ストンリー波が伝搬可能となるようなSiO膜を実現することは極めて難しく、従って実測には至っていないのが現状である。
他方、特許文献1に記載の弾性境界波装置では、Si基板とLiNbO基板とが貼り合わされているが、このような貼り合わせ技術により弾性境界波装置を構成し、境界において弾性境界波を実際に伝搬させることは非常に困難であった。
すなわち、従来の弾性境界波装置では、結晶の異方性を利用して境界部に境界波の振動エネルギーを集中させたり、SiO膜の変位を調整したり、上記のような困難な基板貼り合わせ技術を用いねばならなかった。
上記特許文献2に開示されている弾性境界波装置では、LiNbOとSiOとの境界に、低音速の金属によりIDT電極を形成した構造を有するため、簡単な工法で製造可能である。
しかしながら、LiNbO自体の群遅延時間温度係数TCDが大きいため、SiOと組み合わせて弾性境界波装置を構成した場合、弾性境界波装置のTCFの絶対値が大きかった。例えば、特許文献2の図5に示されているように、AuからなるIDT電極の厚みが0.05λ、LiNbOのオイラー角が(0°,90°,0°)である場合、TCF−37ppm/℃であり、その絶対値がかなり大きかった。従って、広帯域のRFフィルタに上記弾性境界波装置を利用することは可能であるが、逆に、温度変化による周波数特性の変動が大きいので狭帯域なフィルタには用いることができなかった。
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、複雑かつ困難な工法を用いずとも得ることができ、しかも、狭帯域のフィルタや共振子用途に適した電気機械結合係数を有し、さらに伝搬損失、パワーフロー角及び周波数温度係数が小さい、弾性境界波装置を提供することにある。
本願の第1の発明によれば、オイラー角(φ,θ,ψ)のほう酸リチウム系圧電単結晶基板と、前記圧電単結晶基板上に形成されたIDTと、前記IDTを覆うように前記圧電単結晶基板上に形成された誘電体とを備え、前記圧電単結晶基板と前記誘電体との境界においてP+SV型弾性境界波であるストンリー波が伝搬される弾性境界波装置であって、オイラー角のφが0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合をそれぞれ示す図2、図6、図10、図14、図18、図22、図26、図30、図34、図38、図42、図46、図50、図54、図58、図62、図66、図70または図74において電気機械結合係数Kが0.4%であることを示す線及び該線よりも電気機械結合係数Kが高い領域内のいずれかに前記ほう酸リチウム系結晶のオイラー角があり、かつ図2、図6、図10、図14、図18、図22、図26、図30、図34、図38、図42、図46、図50、図54、図58、図62、図66、図70及び図74のそれぞれにおけるφの値をX°としたときに、φがX−5>φ≧X+5の範囲とされていることを特徴とする、弾性境界波装置が提供される。
第2の発明によれば、オイラー角(φ,θ,ψ)のほう酸リチウム系圧電単結晶基板と、前記圧電単結晶基板上に形成されたIDTと、前記IDTを覆うように前記圧電単結晶基板上に形成された誘電体とを備え、前記圧電単結晶基板と前記誘電体との境界においてP+SV型弾性境界波であるストンリー波が伝搬される弾性境界波装置であって、オイラー角のφが0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合をそれぞれ示す図4、図8、図12、図16、図20、図24、図28、図32、図36、図40、図44、図48、図52、図56、図60、図64、図68、図72または図76において周波数温度係数TCFの絶対値が28ppmであることを示す線及び該線よりもTCFの絶対値が小さい領域内のいずれかに前記ほう酸リチウム系結晶のオイラー角があり、かつφが図4、図8、図12、図16、図20、図24、図28、図32、図36、図40、図44、図48、図52、図56、図60、図64、図68、図72及び図76のそれぞれにおけるφの値をX°としたときに、φがX−5>φ≧X+5とされていることを特徴とする、弾性境界波装置が提供される。
第3の発明によれば、オイラー角(φ,θ,ψ)のほう酸リチウム系圧電単結晶基板と、前記圧電単結晶基板上に形成されたIDTと、前記IDTを覆うように前記圧電単結晶基板上に形成された誘電体とを備え、前記圧電単結晶基板と前記誘電体との境界においてP+SV型弾性境界波であるストンリー波が伝搬される弾性境界波装置であって、オイラー角のφが0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合をそれぞれ示す図5、図9、図13、図17、図21、図25、図29、図33、図37、図41、図45、図49、図53、図57、図61、図65、図69、図73または図77においてパワーフロー角PFAの絶対値が5°であることを示す線及び該線よりもPFAの絶対値が小さい領域内のいずれかに前記ほう酸リチウム系結晶のオイラー角があり、かつ図5、図9、図13、図17、図21、図25、図29、図33、図37、図41、図45、図49、図53、図57、図61、図65、図69、図73及び図77のそれぞれにおけるφの値をX°としたときに、φがX−5>φ≧X+5の範囲とされていることを特徴とする、弾性境界波装置が提供される。
第1,第2の発明では、好ましくは、前記ほう酸リチウム系結晶のオイラー角が、φが0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合をそれぞれ示す図5、図9、図13、図17、図21、図25、図29、図33、図37、図41、図45、図49、図53、図57、図61、図65、図69、図73または図77においてパワーフロー角PFAの絶対値が5°であることを示す線及び該線よりもPFAの絶対値が小さい領域内のいずれかにあり、その場合には、パワーフロー角の絶対値を5°以下と小さくすることができる。
また、第1,第3の発明では、好ましくは、前記ほう酸リチウム系結晶のオイラー角が、φが0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合をそれぞれ示す図4、図8、図12、図16、図20、図24、図28、図32、図36、図40、図44、図48、図52、図56、図60、図64、図68、図72、図76において周波数温度係数TCFの絶対値が28ppmであることを示す線及び該線よりもTCFの絶対値が小さい領域内のいずれかにあり、その場合には、周波数温度係数TCFを小さくすることができる。
上記ほう酸リチウム系結晶としては、好ましくは、Liが用いられる。
(発明の効果)
第1の発明に係る弾性境界波装置では、圧電単結晶基板として、ほう酸リチウム系圧電単結晶基板が用いられ、そのオイラー角(φ,θ,ψ)が上記図2、図6、図10、図14、図18、図22、図26、図30、図34、図38、図42、図46、図50、図54、図58、図62、図66、図70または図74において電気機械結合係数Kが0.4%であることを示す線及び該線よりも電気機械結合係数Kが高い領域内のいずれかにあるため、P+SV型弾性境界波としてのストンリー波の電気機械結合係数Kを0.4%以上とすることができる。従って、狭帯域のフィルタを形成することが容易となる。よって、第1の発明によれば、弾性境界波フィルタで従来実現困難であった比帯域が例えば0.5%以下であるIDTフィルタや、1%以下であるようなRFフィルタを容易に提供することが可能となる。
第2の発明によれば、圧電単結晶基板としてほう酸リチウム系圧電単結晶基板が用いられ、そのオイラー角が、図4、図8、図12、図16、図20、図24、図28、図32、図36、図40、図44、図48、図52、図56、図60、図64、図68、図72及び図76において周波数温度係数TCFの絶対値が28ppmであることを示す線及び該線よりもTCFの絶対値が小さい領域内のいずれかにあるため、P+SV型弾性境界波としてのストンリー波を利用した場合の周波数温度係数TCFの絶対値を28ppm以下とすることができる。それによって、温度変化による特性の変化が少ない弾性境界波装置を提供することが可能となる。
第3の発明によれば、圧電単結晶基板としてほう酸リチウム系圧電単結晶基板を用いており、そのオイラー角が、図5、図9、図13、図17、図21、図25、図29、図33、図37、図41、図45、図49、図53、図57、図61、図65、図69、図73または図77においてパワーフロー角PFAの絶対値が5°であることを示す線及び該線よりもPFAの絶対値が小さい領域内のいずれかにあるため、P+SV型弾性境界波としてのストンリー波を利用した場合のパワーフロー角の絶対値を5°以下とすることができる。従って、パワーフロー角が大きい場合のような電極設計の煩雑さを回避することができる。また、弾性境界波の位相速度の方向と、弾性境界波のエネルギーが進む群速度の方向とのずれによる損失も生じ難くなる。
図1(a),(b)は、本発明の一実施形態の弾性境界波装置の模式的正面断面図及び模式的平面断面図である。 図2は、実施形態において、オイラー角(0°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図3は、実施形態において、オイラー角(0°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図4は、実施形態において、オイラー角(0°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図5は、実施形態において、オイラー角(0°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図6は、実施形態において、オイラー角(10°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図7は、実施形態において、オイラー角(10°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図8は、実施形態において、オイラー角(10°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図9は、実施形態において、オイラー角(10°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図10は、実施形態において、オイラー角(20°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図11は、実施形態において、オイラー角(20°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図12は、実施形態において、オイラー角(20°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図13は、実施形態において、オイラー角(20°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図14は、実施形態において、オイラー角(30°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図15は、実施形態において、オイラー角(30°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図16は、実施形態において、オイラー角(30°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図17は、実施形態において、オイラー角(30°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図18は、実施形態において、オイラー角(40°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図19は、実施形態において、オイラー角(40°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図20は、実施形態において、オイラー角(40°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図21は、実施形態において、オイラー角(40°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図22は、実施形態において、オイラー角(50°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図23は、実施形態において、オイラー角(50°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図24は、実施形態において、オイラー角(50°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図25は、実施形態において、オイラー角(50°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図26は、実施形態において、オイラー角(60°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図27は、実施形態において、オイラー角(60°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図28は、実施形態において、オイラー角(60°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図29は、実施形態において、オイラー角(60°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図30は、実施形態において、オイラー角(70°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図31は、実施形態において、オイラー角(70°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図32は、実施形態において、オイラー角(70°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図33は、実施形態において、オイラー角(70°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図34は、実施形態において、オイラー角(80°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図35は、実施形態において、オイラー角(80°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図36は、実施形態において、オイラー角(80°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図37は、実施形態において、オイラー角(80°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図38は、実施形態において、オイラー角(90°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図39は、実施形態において、オイラー角(90°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図40は、実施形態において、オイラー角(90°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図41は、実施形態において、オイラー角(90°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図42は、実施形態において、オイラー角(100°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図43は、実施形態において、オイラー角(100°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図44は、実施形態において、オイラー角(100°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図45は、実施形態において、オイラー角(100°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図46は、実施形態において、オイラー角(110°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図47は、実施形態において、オイラー角(110°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図48は、実施形態において、オイラー角(110°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図49は、実施形態において、オイラー角(110°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図50は、実施形態において、オイラー角(120°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図51は、実施形態において、オイラー角(120°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図52は、実施形態において、オイラー角(120°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図53は、実施形態において、オイラー角(120°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図54は、実施形態において、オイラー角(130°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図55は、実施形態において、オイラー角(130°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図56は、実施形態において、オイラー角(130°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図57は、実施形態において、オイラー角(130°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図58は、実施形態において、オイラー角(140°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図59は、実施形態において、オイラー角(140°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図60は、実施形態において、オイラー角(140°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図61は、実施形態において、オイラー角(140°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図62は、実施形態において、オイラー角(150°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図63は、実施形態において、オイラー角(150°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図64は、実施形態において、オイラー角(150°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図65は、実施形態において、オイラー角(150°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図66は、実施形態において、オイラー角(160°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図67は、実施形態において、オイラー角(160°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図68は、実施形態において、オイラー角(160°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図69は、実施形態において、オイラー角(160°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図70は、実施形態において、オイラー角(170°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図71は、実施形態において、オイラー角(170°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図72は、実施形態において、オイラー角(170°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図73は、実施形態において、オイラー角(170°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。 図74は、実施形態において、オイラー角(180°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと電気機械結合係数Kとの関係を示す図である。 図75は、実施形態において、オイラー角(180°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとストンリー波の音速Vとの関係を示す図である。 図76は、実施形態において、オイラー角(180°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψと周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図77は、実施形態において、オイラー角(180°,θ,ψ)のLi単結晶基板を用いた場合のθ及びψとパワーフロー角PFAとの関係を示す図である。
符号の説明
1…弾性境界波装置
2…ほう酸リチウム系単結晶基板
3…誘電体
4…IDT
5,6…反射器
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る弾性境界波装置の模式的正面断面図及び模式的平面断面図である。
本実施形態の弾性境界波装置1は、Li単結晶基板2と、Li単結晶基板2に積層されたSiOからなる誘電体3とを有する。Li単結晶基板2と誘電体3との間には、図1(b)に模式的に示されている電極構造が形成されている。この電極構造は、IDT4と、IDT4の弾性境界波伝搬方向両側に配置された反射器5,6とを有する。IDT4及び反射器5,6は、後述する金属により構成されている。IDT4には、図示のように、交差幅重み付けが施されている。なお、IDT4は重み付けされていなくてもよい。
本実施形態の弾性境界波装置1は、上記電極構造を有する1ポート型の弾性境界波共振子である。
また、弾性境界波装置1では、Li単結晶基板2を伝搬する遅い横波よりもSH型弾性境界波の音速が低音速となるように、かつ誘電体3を伝搬する遅い横波よりもP+SV型弾性境界波としてのストンリー波の音速が低音速となるように、IDT4の厚みが設定されている。そのため、ストンリー波を利用した弾性境界波装置1が構成されている。
Li単結晶基板2のような圧電体と、誘電体3との界面にIDTを形成した構造において、圧電体及び誘電体を伝搬する各遅い横波の音速よりも、ストンリー波の音速を低くすることにより、ストンリー波を界面に伝搬させ得ることは、例えば、前述した非特許文献1や特許文献1,2などに開示されている。これをより具体的に説明する。
一般に、高速な領域と低速な領域が存在する場合、波動は、音速の遅い部分に集中して伝搬する。特許文献2によると、2つの固体層間に配置した電極材料に、密度が大きく低音速なAuやCuなどの材料を利用し、電極の厚さを増やすことで、固体層間を伝搬する境界波の音速を低音速化することにより、固体層間へエネルギーを集中する条件を満たす手法が開示されている。
文献「弾性表面波(SAW)デバイスシミュレーション技術入門」橋本研也、リアライズ社、第9頁によれば、固体内を伝搬するバルク波には、縦波と、速い横波と、遅い横波との3種類の波があることが知られており、それぞれP波、SH波、SV波と呼ばれている。なお、SH波とSV波のいずれが遅い横波になるかは基本の異方性により変わる。これらの3種類のバルク波で最も低音速なバルク波が、遅い横波である。
一方、圧電基板などの異方性基本を伝搬する弾性境界波は、大抵の場合、P波、SH波、SV波の3つの変位成分が結合しながら伝搬し、主要となる成分により弾性境界波の種類が分類される。例えば、ストンリー波はPとSV成分が主体の弾性境界波であり、SH型境界波は、SH成分が主体の弾性境界波である。
なお、条件によっては、SH波成分や、P波、SV波成分が結合せずに伝搬することもある。
弾性境界波は、前記3つの変位成分が結合しながら伝搬するため、例えば、SH波よりも高音速な弾性境界波はSH成分とSV成分が漏洩し、SV波より音速な弾性境界波は、SV成分が漏洩することとなる。この漏洩した成分が弾性境界波の伝搬損失の原因となる。従って、前記2つの固体層両方における遅い横波の音速より、ストンリー波やSH型境界波の音速を低速化することにより、境界波のエネルギーを、2つの固体層間に配置した電極付近に集中させ、伝搬損失ゼロの条件を得ることができる。密度の大きな電極材料は音速か遅いので、境界波を低速化するには、密度の大きな電極を用いることが望ましい。
そして、少なくとも一方の固体を圧電体、もう一方の固体を圧電体を含む誘電体とすることで、固体間に配置した電極により境界波を励振できる。電極としては、くし型電極またはすだれ状電極(インターディジタルトランスデューサ、IDT)を用いることが出来る。
前記構成は、誘電体と圧電体の間に電極配置した簡潔な構成であり、非常に多くの材料の組み合わせでSH型境界波やストンリー波を得ることができる。例えば、非特許文献1に示したように、SiO/IDT電極/128°Y−Z LiNbOの構造ではストンリー波は確認されていないが、電極の厚さが薄い場合ではストンリー波を形成できなくても、電極の厚さを厚くすることでストンリー波を存在させることができる。また、IDTやグレーティング反射器の場合は、電極の厚さを厚くして遅い横波の音速と境界波の音速を近接させた状態で、IDTやグレーティング反射器を構成するストリップの配置周期に対するストリップ線幅の比(デューティ比)を増加させて、遅い横波の音速より低音速化する手段をとることも可能である。
一方、ほう酸リチウム系結晶は、境界波の伝搬方向により、様々な伝搬特性(K、TCF、,PFA)を示す。そこで、本願発明者は、境界波装置として優れた性能が得られる基板の方向角(オイラー角)を特定した。
上記弾性境界波装置1において、IDT4及び反射器5,6を構成する電極材料として、Ni、Mo、Fe、Cu、W、Ag、Ta、AuまたはPtを用いた場合の、電極の厚みと、ストンリー波の音速、電気機械結合係数K2、伝搬損失α及び周波数温度係数TCFとの関係を求めた。なお、計算は、以下の条件に従って文献「A method for estimating optimal cuts and propagation directions for
excitation and propagation direction for excitation of piezoelectric surface
waves」(J.J.Campbell and W.R.Jones,IEEE Trans.Sonics and
Ultrason.,bol.SU-15(1968)pp.209-217)に開示されている方法により行った。
なお、開放境界の場合には、SiOとAuからなる電極、Auからなる電極とLiとの境界における変位、電位、電束密度の法線成分及び上下方向の応力が連続で、LiとSiOの厚さを無限とし、Auからなる電極の比誘電率を1として音速と伝搬損失を求めた。また、短絡境界の場合には、SiOとAuからなる電極、Auからなる電極とLiとの各境界における電位を0とした。また、電気機械結合係数K2は、下記の式(1)により求めた。なお、式(1)においてVfは開放境界の音速、Vmは短絡境界の音速である。
2=2|Vf−Vm|/Vf …式(1)
周波数温度係数TCFについては、20℃、25℃及び30℃における境界波の音速V〔25℃〕、V〔25℃〕及びV〔30℃〕により、下記の式(2)により求めた。
TCF=V〔25℃〕-1×{(V〔30℃〕−V〔20℃〕)÷10℃}−αs …式(2)
なお、式(2)において、αsは境界波伝搬方向におけるLi基板の線膨張係数である。
また、Liの任意のオイラー角(φ,θ,ψ)におけるパワーフロー角PFAは、ψ−0.5°、ψ及びψ+0.5°における境界波の音速Vに基づき式(3)により求めた。
PFA=tan-1{V〔ψ〕-1×(V〔ψ+0.5°〕−V〔ψ−0.5°〕)} …式(3)
上記Li単結晶基板2のオイラー角を種々変更し、弾性境界波共振子としての弾性境界波装置1を作製した場合の電気機械結合係数K、周波数温度係数TCF、パワーフロー角PFA及びストンリー波の音速Vの変化を計算した。結果を図2〜図76に示す。なお、図2〜図76において、図2、図6、図10、図14、図18、図22、図26、図30、図34、図38、図42、図46、図50、図54、図58、図62、図66、図70または図74は、Liのオイラー角のφが、それぞれ、0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合の結果を示し、各図において、電気機械結合係数Kと、オイラー角のθ及びψとの関係が示されている。
同様に、図4、図8、図12、図16、図20、図24、図28、図32、図36、図40、図44、図48、図52、図56、図60、図64、図68、図72または図76は、それぞれ、Liのオイラー角のφが、0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合の結果をそれぞれ示し、各図においては、周波数温度係数TCFと、オイラー角のθ及びψとの関係が示されている。
同様に、図5、図9、図13、図17、図21、図25、図29、図33、図37、図41、図45、図49、図53、図57、図61、図65、図69、図73または図77は、それぞれ、Liのオイラー角のφが0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合の結果をそれぞれ示し、各図においては、パワーフロー各PFAと、オイラー角のθ及びψとの関係が示されている。
また、図3、図7、図11、図15、図19、図23、図27、図31、図35、図39、図43、図47、図51、図55、図59、図63、図67、図71、図75は、それぞれ、オイラー角のφが、0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合の結果をそれぞれ示し、各図においては、ストンリー波の音速Vと、オイラー角のθ及びψとの関係が示されている。
なお、条件は以下の通りである。
構造:Li単結晶基板については、オイラー角を種々変更し、その厚みは無限大とした。SiOについても厚みは無限大とした。IDT電極はAuからなり、その厚みは0.09λとした。
図2、図6、図10、図14、図18、図22、図26、図30、図34、図38、図42、図46、図50、図54、図58、図62、図66、図70または図74において、電気機械結合係数Kが0.4%であることを示す線及び該線よりも電気機械結合係数Kが大きい領域にオイラー角がある場合には、電気機械結合係数Kが0.4%以上となり、例えば比帯域幅が1%以下のような狭帯域のフィルタや共振子を構成し得ることがわかる。
また、オイラー角を電気機械結合係数が0.8%であることを示す線及び該線よりも電気機械結合係数Kが大きい領域内とした場合には、電気機械結合係数Kを0.8%以上とすることができ、やや広い帯域幅のフィルタや共振子を構成し得ることがわかる。さらに、オイラー角を電気機械結合係数Kが1.6%であることを示す線及び該線よりも電気機械結合係数Kが大きい領域内とすれば、電気機械結合係数Kを1.6%以上とすることができ、より一層広帯域のフィルタや共振子を形成できる。オイラー角を電気機械結合係数Kが2.4%以上であることを示す線及び該線よりも電気機械結合係数Kが大きい領域内とすれば、電気機械結合係数Kが2.4%以上となり、ほう酸リチウム系圧電単結晶基板を用いた弾性境界波装置としては最大の帯域幅を得ることができる。
また、図4、図8、図12、図16、図20、図24、図28、図32、図36、図40、図44、図48、図52、図56、図60、図64、図68、図72、図76の周波数温度係数TCFの絶対値が28ppmであることを示す線及び該線よりもTCFの絶対値が小さい領域内とすれば、周波数温度係数TCFの絶対値を28ppm以下とし得ることがわかる。従って、周波数温度係数TCFが小さいフィルタや共振子を得ることができる。
さらに、好ましくは、オイラー角をTCFの絶対値が20ppmであることを示す線及び該線よりもTCFの絶対値が小さい領域内とすれば、TCFの絶対値を20ppm以下とすることができる。より好ましくは、オイラー角をTCFの絶対値が12ppmであることを示す線及び該線よりもTCFの絶対値が小さい領域内とすれば、TCFの絶対値を12ppm以下とすることができる。さらに好ましくは、オイラー角をTCFの絶対値が4ppmである線及び該線よりもTCFの絶対値が小さい領域内とすれば、TCFの絶対値を4ppm以下とすることができる。よって、より一層温度変化による特性の変動を小さくすることができ、従って、例えば狭帯域のフィルタや共振子を構成した場合においても、温度変化による周波数特性の変化を小さくすることが可能となる。
さらに、図5、図9、図13、図17、図21、図25、図29、図33、図37、図41、図45、図49、図53、図57、図61、図65、図69、図73または図77から、Li単結晶基板のオイラー角をパワーフロー角PFAの絶対値が5°であることを示す線及び該線よりもPFAの絶対値が小さい領域内とすれば、パワーフロー角PFAの絶対値を5°以下とすることができ、パワーフロー角の小さいフィルタや共振子を構成し得ることがわかる。
より好ましくは、オイラー角を、パワーフロー角PFAの絶対値が3°であることを示す線及び該線よりもPFAの絶対値が小さい領域内とすることにより、パワーフロー角PFAの絶対値を3°以下とすることができる。さらに好ましくは、オイラー角を、パワーフロー角の絶対値が1°であることを示す線及び該線よりもPFAの絶対値が小さい領域内とすることにより、パワーフロー角の絶対値を1°以下とすることができる。そのため、パワーフロー角に起因する伝搬損失がより一層小さいフィルタや共振子を提供することができる。
なお、上記実験例では、圧電単結晶基板としてLi単結晶を用いたが、他のほう酸リチウム系圧電単結晶を用いてもよい。
なお、IDT電極を構成する金属材料は特に限定されず、Au以外に、上記計算例において例示したNi、Mo、Fe、Cu、W、Ta、AuまたはPtあるいはこれらを主体とする合金を用いてもよい。
さらに、誘電体として、SiOを用いたが、他の誘電体、例えばSi、ガラス、SiC、ZnO、Ta、AlN、Alまたはダイヤモンドライクカーボンなどを用いてもよい。また、これらの誘電体を構成する材料を積層してもよい。このような他の誘電体を用いた場合においても、図2〜図76を参照して説明したオイラー角範囲を採用することにより、上記実験例と同様に、電気機械結合係数Kを適切な範囲とし、周波数温度係数TCFやパワーフロー角PFAの絶対値を小さくすることができる。
また、SiOは周波数温度係数TCFを正にシフトさせる材料である。従って、図4、図8、図12、図16、図20、図24、図28、図32、図36、図40、図44、図48、図52、図56、図60、図64、図68、図72または図76において周波数温度係数TCFが大きくなっている条件は、SiOによるTCFを正にシフトする傾向が強い場合と考えられる。従って、SiNのように、周波数温度係数TCFを負にシフトさせる材料とSiOに代えて用いられ、周波数温度係数TCFの絶対値を小さくすることができる。よって、上記オイラー角として実線Aで囲まれた電気機械結合係数Kが十分大きな範囲を採用し、誘電体としてSiNを用いれば、電気機械結合係数Kが大きく、しかも周波数温度係数TCFの絶対値が小さい、弾性境界波装置を得ることができる。
また、本発明に係る弾性境界波装置では、上記誘電体のほう酸リチウム系圧電単結晶基板とは反対側の面にさらに上記誘電体とは異なる誘電体が積層されていてもよい。
また、ほう酸リチウム系圧電単結晶基板/IDT/誘電体からなる構造の外側に、弾性境界波装置の強度を高めるために、あるいは腐食性ガスの進入を防止するために保護層を形成してもよい。保護層としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、酸化チタン、窒化アルミ、酸化アルミニウムなどの適宜の絶縁性材料、あるいはAu、AlまたはWなどの金属膜を用いることができる。また、場合によっては、本発明に係る弾性境界波装置は、パッケージに封入されていてもよい。
なお、本明細書において、ストンリー波、オイラー角、結晶軸及び等価なオイラー角とは以下の内容を意味するものとする。
ストンリー波
ストンリー波はU1成分(P波成分)とU3成分(SV波成分)が結合して伝搬する境界波である。本発明では、U3成分が主体であるが、U2成分(SH波成分)も含むストンリー波に類似した境界波も、ストンリー波と総称している。
オイラー角
本明細書において、基板の切断面と、境界波の鉄板方向を表現するオイラー角(φ,θ,ψ)は、文献「弾性波素子技術ハンドブック」(日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会、第1版第1刷、平成3年11月30日発行、549頁)記載の右手系オイラー角を用いた。すなわち、ほう酸リチウム系圧電単結晶の結晶軸X、Y、Zに対し、Z軸を軸としてX軸を反時計廻りにφ回転しXa軸を得る。次に、Xa軸を軸としてZ軸を反時計廻りにθ回転しZ′軸を得る。Xa軸を含み、Z′軸を法線とする面を基板の切断面とした。そして、Z′軸を軸としてXa軸を反時計廻りにψ回転した軸X′方向を表面波の伝搬方向とした。また、Y軸が上記回転により移動して得られるX′軸とZ′軸と垂直な軸をY′軸とした。
結晶軸
また、オイラー角の初期値として与える水晶の結晶軸X、Y、Zは、Z軸をc軸と平行とし、X軸を等価な3方向のa軸のうち任意の一つと平行とし、Y軸はX軸とZ軸を含む面の法線方向とした。
等価なオイラー角
なお、本発明におけるほう酸リチウム系圧電単結晶基板のオイラー角(φ,θ,ψ)は結晶学的に等価であればよい。例えば、文献(日本音響学会誌36巻3号、1980年、140〜145頁)によれば、三方晶系3m点群に属する結晶であるので、下記の式〔100〕が成り立つ。
F(φ,θ,ψ)=F(60°−φ,−θ,ψ)
=F(60°+φ,−θ,180°−ψ)
=F(φ,180°+θ,180°−ψ)
=F(φ,θ,180°+ψ) …式〔100〕
ここで、Fは、電気機械結合係数Ks2、伝搬損失、TCF、PFA、ナチュラル一方向性などの任意の表面波特性である。PFAのナチュラル一方向性は、例えば伝搬方向を正負反転してみた場合、符号は変わるものの絶対量は等しいので実用上等価であると考えられる。
例えば、オイラー角(30°,θ,ψ)の表面波伝搬特性は、オイラー角(90°,180°−θ,180°−ψ)の表面波伝搬特性と等価である。また、例えば、オイラー角(30°,90°,45°)の表面波伝搬特性は、表1に示すオイラー角の表面波伝搬特性と等価である。
基板表面に圧電膜を形成した場合、厳密には式〔100〕の通りとはならないが、実用上問題ない程度に同等の表面波伝搬特性が得られる。
Figure 2008093532

Claims (6)

  1. オイラー角(φ,θ,ψ)のほう酸リチウム系圧電単結晶基板と、
    前記圧電単結晶基板上に形成されたIDTと、
    前記IDTを覆うように前記圧電単結晶基板上に形成された誘電体とを備え、
    前記圧電単結晶基板と前記誘電体との境界においてP+SV型弾性境界波であるストンリー波が伝搬される弾性境界波装置であって、
    オイラー角のφが0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合をそれぞれ示す図2、図6、図10、図14、図18、図22、図26、図30、図34、図38、図42、図46、図50、図54、図58、図62、図66、図70または図74において電気機械結合係数Kが0.4%であることを示す線及び該線よりも電気機械結合係数Kが高い領域内のいずれかに前記ほう酸リチウム系結晶のオイラー角があり、かつ図2、図6、図10、図14、図18、図22、図26、図30、図34、図38、図42、図46、図50、図54、図58、図62、図66、図70及び図74のそれぞれにおけるφの値をX°としたときに、φがX−5>φ≧X+5の範囲とされていることを特徴とする、弾性境界波装置。
  2. オイラー角(φ,θ,ψ)のほう酸リチウム系圧電単結晶基板と、
    前記圧電単結晶基板上に形成されたIDTと、
    前記IDTを覆うように前記圧電単結晶基板上に形成された誘電体とを備え、
    前記圧電単結晶基板と前記誘電体との境界においてP+SV型弾性境界波であるストンリー波が伝搬される弾性境界波装置であって、
    オイラー角のφが0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合をそれぞれ示す図4、図8、図12、図16、図20、図24、図28、図32、図36、図40、図44、図48、図52、図56、図60、図64、図68、図72または図76において周波数温度係数TCFの絶対値が28ppmであることを示す線及び該線よりもTCFの絶対値が小さい領域内のいずれかに前記ほう酸リチウム系結晶のオイラー角があり、かつφが図4、図8、図12、図16、図20、図24、図28、図32、図36、図40、図44、図48、図52、図56、図60、図64、図68、図72及び図76のそれぞれにおけるφの値をX°としたときに、φがX−5>φ≧X+5とされていることを特徴とする、弾性境界波装置。
  3. オイラー角(φ,θ,ψ)のほう酸リチウム系圧電単結晶基板と、
    前記圧電単結晶基板上に形成されたIDTと、
    前記IDTを覆うように前記圧電単結晶基板上に形成された誘電体とを備え、
    前記圧電単結晶基板と前記誘電体との境界においてP+SV型弾性境界波であるストンリー波が伝搬される弾性境界波装置であって、
    オイラー角のφが0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°の場合をそれぞれ示す図5、図9、図13、図17、図21、図25、図29、図33、図37、図41、図45、図49、図53、図57、図61、図65、図69、図73または図77においてパワーフロー角PFAの絶対値が5°であることを示す線及び該線よりもPFAの絶対値が小さい領域内のいずれかに前記ほう酸リチウム系結晶のオイラー角があり、かつ図5、図9、図13、図17、図21、図25、図29、図33、図37、図41、図45、図49、図53、図57、図61、図65、図69、図73及び図77のそれぞれにおけるφの値をX°としたときに、φがX−5>φ≧X+5の範囲とされていることを特徴とする、弾性境界波装置。
  4. 前記オイラー角が、図5、図9、図13、図17、図21、図25、図29、図33、図37、図41、図45、図49、図53、図57、図61、図65、図69、図73または図77においてパワーフロー角PFAの絶対値が5°であることを示す線及び該線よりもPFAの絶対値が小さい領域内のいずれかにある請求項1または2に記載の弾性境界波装置。
  5. 前記オイラー角が、図4、図8、図12、図16、図20、図24、図28、図32、図36、図40、図44、図48、図52、図56、図60、図64、図68、図72または図76において周波数温度係数TCFの絶対値が28ppmであることを示す線及び該線よりもTCFの絶対値が小さい領域にある、請求項1または3に記載の弾性境界波装置。
  6. 前記ほう酸リチウム系結晶が、Liである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性境界波装置。
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