JP2004137444A - 新規な芳香族スルホン酸エステル誘導体、ポリアリーレン、スルホン酸基を有するポリアリーレンおよびその製造方法、ならびにプロトン伝導膜およびその製造方法 - Google Patents
新規な芳香族スルホン酸エステル誘導体、ポリアリーレン、スルホン酸基を有するポリアリーレンおよびその製造方法、ならびにプロトン伝導膜およびその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】芳香族スルホン酸エステル誘導体は下記式(1)で表される;
【化1】
(式中、Xはフッ素を除くハロゲン原子、−OSO3CH3、−OSO3CF3から選ばれる原子または基、Yは2価の有機基、Rは炭素原子数4〜20の炭化水素基)
スルホン酸基を有するポリアリーレン重合体の製造方法は、式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体を少なくとも含む芳香族化合物をカップリング重合し、得られたポリアリーレンを加水分解する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な芳香族スルホン酸エステル誘導体、該化合物から導かれる構成単位を含むポリアリーレン、該重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するポリアリーレンおよびその製造方法、ならびに前記スルホン酸基を有するポリアリーレンからなるプロトン伝導膜およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解質は、通常、(水)溶液で用いられることが多い。しかし、近年、これが固体系に置き替えられている。その第1の理由としては、例えば、電気・電子材料に応用する場合のプロセッシングの容易さであり、第2の理由としては、軽薄短小・高電力化への移行である。
【0003】
従来、プロトン伝導性材料としては、無機物、有機物の両方が知られている。無機物の例としては、例えば水和化合物であるリン酸ウラニルが挙げられるが、これら無機化合物は界面での接触が充分でなく、伝導層を基板あるいは電極上に形成するには問題が多い。
一方、有機化合物の例としては、いわゆる陽イオン交換樹脂に属するポリマー、例えばポリスチレンスルホン酸などのビニル系ポリマーのスルホン化物、ナフィオン(商品名、デュポン社製)を代表とするパーフルオロアルキルスルホン酸ポリマー、パーフルオロアルキルカルボン酸ポリマーや、ポリベンズイミダゾールやポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱性高分子にスルホン酸基やリン酸基を導入したポリマー(Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.7,p.2490〜2492(1993)、Polymer Preprints,Japan,Vol.43,No.3,p.735〜736(1994)、Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.3,p730(1993))などの有機系ポリマーが挙げられる。
【0004】
また、プロトン伝導性材料としては、スルホン化されたポリアリーレンが知られており、このスルホン化ポリマーは、通常芳香族化合物を重合してポリマーを製造し、次いでこのポリマーとスルホン化剤とを反応させてポリマーにスルホン酸基を導入することにより得られる。
しかしながら、従来の方法では、スルホン酸を導入する際に濃硫酸、発煙硫酸、クロル硫酸などのスルホン化剤が大量に用いるため製造上の危険性が大きいこと、プラントの材質に制限があること、ポリマーを回収する際の廃液処理の負荷が大きいことなどの問題がある。また、ポリマーへのスルホン酸基の導入量、および導入位置を制御することが容易ではないという問題もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来技術における問題点を解決するものであって、多量のスルホン化剤を使用することなくスルホン酸基を有するポリアリーレンが製造でき、ポリマーを回収時の処理の負荷が小さく、ポリマーへのスルホン酸基の導入量、および導入位置を制御することが容易であるスルホン酸基を有するポリアリーレンの製造方法およびそれにより得られるスルホン酸基を有するポリアリーレン、該スルホン酸基を有するポリアリーレンの製造に好適に用いられる新規な芳香族スルホン酸エステル誘導体およびポリアリーレンを提供することを目的としている。
【0006】
また、本発明は上記スルホン酸基を有するポリアリーレンからなるプロトン伝導膜およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記の新規な芳香族スルホン酸エステル誘導体、ポリアリーレン、スルホン酸基を有するポリアリーレンおよびその製造方法、ならびにプロトン伝導膜およびその製造方法が提供されて、本発明の上記目的が達成される。
(1) 下記一般式(1)で表されることを特徴とする芳香族スルホン酸エステル誘導体;
【0008】
【化4】
【0009】
(式中、Xはフッ素を除くハロゲン原子、−OSO3CH3、−OSO3CF3から選ばれる原子または基を示し、Yは2価の有機基を示し、Rは炭素原子数4〜20の炭化水素基を示す。)
(2) 芳香族化合物から導かれる構成単位からなり、少なくとも下記一般式(1’)で表される構成単位を含むことを特徴とするポリアリーレン;
【0010】
【化5】
【0011】
(式中、Yは2価の有機基を示し、Rは炭素原子数4〜20の炭化水素基を示す。)
(3) 上記一般式(1’)で表される構成単位0.5〜100モル%と、下記一般式(A’)で表される構成単位0〜99.5モル%とからなることを特徴とする(2)に記載のポリアリーレン;
【0012】
【化6】
【0013】
(式中、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Wは2価の電子吸引性基を示し、Tは2価の有機基を示す。)
(4) (2)または(3)に記載のポリアリーレンを加水分解して得られることを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレン。
(5) (1)に記載の芳香族スルホン酸エステル誘導体を少なくとも含む芳香族化合物をカップリング重合し、得られたポリアリーレンを加水分解することを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレンの製造方法。
(6) (4)に記載のスルホン酸基を有するポリアリーレンからなることを特徴とするプロトン伝導膜。
【0014】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る芳香族スルホン酸エステル誘導体、ポリアリーレン、スルホン酸基を有するポリアリーレンおよびその製造方法、ならびにプロトン伝導膜およびその製造方法について具体的に説明する。
(芳香族スルホン酸エステル誘導体)
本発明に係る芳香族スルホン酸エステル誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【0015】
【化7】
【0016】
式中、Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO3CH3、−OSO3CF3から選ばれる原子または基を示す。
Yは2価の有機基を示し、例えば−CO−、−CONH−、−(CF2)p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−、−COO−、−SO−、−SO2−などの電子吸引性基、
−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−および下記式
【0017】
【化8】
【0018】
で表される基などの電子供与性基などが挙げられる。
Yとしては、スルホン酸基を有するポリアリーレンとしたときに酸強度を上げることができる、スルホン酸の脱離温度を上げられることから電子吸引性基が好ましく、特に−CO−、−SO2−が好ましい。
なお、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基常数がフェニル基のm位の場合、0.06以上、p位の場合、0.01以上の値となる基をいう。
【0019】
Rは炭素原子数4〜20の炭化水素基を示し、具体的にはtert−ブチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、2−エチルヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メチルブチル基、3,3−ジメチル−2,4−ジオキソランメチル基などの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基、5員の複素環を有する炭化水素基などが挙げられる。これらのうちネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、さらにはネオペンチル基がより好ましい。
【0020】
上記一般式(1)で表される本発明に係る芳香族スルホン酸エステルとしては、以下のような化合物が挙げられる。
【0021】
【化9】
【0022】
【化10】
【0023】
また、上記一般式(1)で表される本発明に係る芳香族スルホン酸エステルとして、上記化合物において塩素原子が臭素原子に置き換わった化合物、上記化合物において−CO−が−SO2−に置き換わった化合物、上記化合物において塩素原子が臭素原子に置き換わり、かつ−CO−が−SO2−に置き換わった化合物なども挙げられる。
【0024】
これらのエステル基は1級のアルコール由来で、β炭素が3級または4級炭素であることが、重合工程中の安定性に優れ、脱エステル化によるスルホン酸の生成に起因する重合阻害や架橋を引き起こさない点で好ましく、さらには、これらのエステル基は1級アルコール由来でβ位が4級炭素であることが好ましい。
(芳香族スルホン酸エステル誘導体の合成法)
本発明に係る芳香族スルホン酸エステル誘導体は、例えば以下のような方法で合成することができる。
【0025】
【化11】
【0026】
(1)スルホン化 スルホン酸ナトリウム塩化(例えば、アセチル硫酸、苛性ソーダ)
例えば、2,5−ジクロロベンゾフェノンの1,2−ジクロロメタン溶液に、5倍モルのアセチル硫酸の1,2−ジクロロメタン溶液を60℃で3〜5時間反応させる。反応後、1−プロパノールで反応を終結させ、3倍モルのNaOH水溶液に注ぐ。得られた溶液を濃縮していくと微粉のスルホン酸ナトリウム塩が得られる。
(2)スルホン酸クロライド化(例えば、塩化ホスホリル)
例えば、2,5−ジクロロベンゾフェノン−3’−スルホン酸ナトリウムに対し、約3〜4倍(重量/容積)の溶媒(スルホラン/アセトニトリル=4/6(容積比)の混合溶媒)に溶解させ、70℃に加温し、塩化ホスホリルを10℃付近で、5時間程度反応させる。反応後、大過剰の冷水で希釈し、生成物を沈殿させる。濾過後、トルエンで再結晶し、精製結晶を得る。
【0027】
なお、(1)で用いたアセチル硫酸の代わりに5〜10倍モル量のクロロスルホン酸を用いれば、一挙にスルホン化クロリドに転換できる。
(3)スルホン酸エステル化(例えば、i−ブチルアルコール)
例えば、2,5−ジクロロベンゾフェノン−3’−スルホン酸クロライドに対し、等量以上(通常1〜3倍モル)のi−ブチルアルコールとピリジンを冷却した混合溶液に、スルホン酸クロライドを滴下して反応させる。反応は〜20℃までに抑える。反応時間は反応スケールにもよるが10分〜5時間程度である。反応混合液を希塩酸処理、水洗した後、酢酸エチルで目的物を抽出する。抽出液を濃縮分離後、メタノールで再結晶する。
【0028】
(スルホン酸基を有するポリアリーレン)
本発明に係るスルホン酸基を有するポリアリーレンは、上記一般式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体から選ばれる少なくとも1種のモノマーを単独で重合するか、または上記一般式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体から選ばれる少なくとも1種のモノマーと、他の芳香族モノマー、好ましくは下記一般式(A)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマーとを共重合して得られるポリアリーレンを加水分解したものである。
【0029】
【化12】
【0030】
上記一般式(A)中、R’およびR’’は互いに同一でも異なっていてもよく、フッ素原子を除くハロゲン原子または−OSO2Z(ここで、Zはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を示す。)で表される基を示す。
Zが示すアルキル基としてはメチル基、エチル基などが挙げられ、フッ素置換アルキル基としてはトリフルオロメチル基などが挙げられ、アリール基としてはフェニル基、p−トリル基などが挙げられる。
【0031】
R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。
【0032】
フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが好ましい。
アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、
アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0033】
Wは2価の電子吸引性基を示し、電子吸引性基としては、例えば−CO−、−CONH−、−(CF2)p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−、−COO−、−SO−、−SO2−などが挙げられる。
なお、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基常数がフェニル基のm位の場合、0.06以上、p位の場合、0.01以上の値となる基をいう。
【0034】
Tは2価の有機基であって、前記で示した電子吸引性基であっても電子供与性基であってもよい。電子供与性基としては、例えば−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−および下記式
【0035】
【化13】
【0036】
で表される基などが挙げられる。
nは0または正の整数であり、上限は通常100、好ましくは80である。
上記一般式(A)で表される化合物として具体的には、n=0の場合、例えば4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンズアニリド、ビス(クロロフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−クロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−クロロ安息香酸−4−クロロフェニル、ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物、さらにこれらの化合物において4位に置換したハロゲン原子の少なくとも1つ以上が3位に置換した化合物などが挙げられる。
【0037】
また n=1の場合、上記一般式(A)で表される具体的な化合物には、例えば4,4’−ビス(4−クロロベンゾイル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−クロロベンゾイルアミノ)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−クロロフェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、4,4’−ビス〔(4−クロロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔(4−クロロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔(4−クロロフェニル)テトラフルオロエチル〕ジフェニルエーテル、これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物、さらにこれらの化合物において4位に置換したハロゲン原子が3位に置換した化合物、さらにこれらの化合物においてジフェニルエーテルの4位に置換した基の少なくとも1つが3位に置換した化合物などが挙げられる。
【0038】
さらに上記一般式(A)で表される化合物としては、2,2−ビス[4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル]スルホン、および下記式で表される化合物が挙げられる。
【0039】
【化14】
【0040】
上記一般式(A)で表される化合物は、例えば以下に示す方法で合成することができる。
まず電子吸引性基で連結されたビスフェノールを対応するビスフェノールのアルカリ金属塩とするために、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイドなどの誘電率の高い極性溶媒中でリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩などを加える。
【0041】
通常、アルカリ金属はフェノールの水酸基に対し、過剰気味で反応させ、通常、1.1〜2倍当量を使用する。好ましくは、1.2〜1.5倍当量の使用である。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどの水と共沸する溶媒を共存させて、電子吸引性基で活性化されたフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された芳香族ジハライド化合物、例えば、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−クロロフルオロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、4−フルオロフェニル−4’−クロロフェニルスルホン、ビス(3−ニトロ−4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、ヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロビフェニル、2,5−ジフルオロベンゾフェノン、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンなどを反応させる。反応性から言えば、フッ素化合物が好ましいが、次の芳香族カップリング反応を考慮した場合、末端が塩素原子となるように芳香族求核置換反応を組み立てる必要がある。活性芳香族ジハライドはビスフェノールに対し、2〜4倍モル、好ましくは2.2〜2.8倍モルの使用である。芳香族求核置換反応の前に予め、ビスフェノールのアルカリ金属塩としていてもよい。反応温度は60℃〜300℃で、好ましくは80℃〜250℃の範囲である。反応時間は15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間の範囲である。最も好ましい方法としては、下記式で示される活性芳香族ジハライドとして反応性の異なるハロゲン原子を一個づつ有するクロロフルオロ体を用いることであり、フッ素原子が優先してフェノキシドと求核置換反応が起きるので、目的の活性化された末端クロロ体を得るのに好都合である。
【0042】
【化15】
【0043】
(式中、Wは一般式(A)に関して定義した通りである。)
または特開平2−159号公報に記載のように求核置換反応と親電子置換反応を組み合わせ、目的の電子吸引性基、電子供与性基からなる屈曲性化合物の合成方法がある。
具体的には電子吸引性基で活性化された芳香族ビスハライド、例えば、ビス(4−クロロフェニル)スルホンをフェノールとで求核置換反応させてビスフェノキシ置換体とする。次いで、この置換体を例えば、4−クロロ安息香酸クロリドとのフリーデルクラフト反応から目的の化合物を得る。ここで用いる電子吸引性基で活性化された芳香族ビスハライドは上記で例示した化合物が適用できる。フェノール化合物は置換されていてもよいが、耐熱性や屈曲性の観点から、無置換化合物が好ましい。なお、フェノールの置換反応にはアルカリ金属塩とするのが、好ましく、使用可能なアルカリ金属化合物は上記に例示した化合物を使用できる。使用量はフェノール1モルに対し、1.2〜2倍モルである。反応に際し、上述した極性溶媒や水との共沸溶媒を用いることができる。ビスフェノキシ化合物を塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛などのルイス酸のフリーデルクラフト反応の活性化剤存在下に、アシル化剤として、クロロ安息香酸クロライドを反応させる。クロロ安息香酸クロライドはビスフェノキシ化合物に対し、2〜4倍モル、好ましくは2.2〜3倍モルの使用である。フリーデルクラフト活性化剤は、アシル化剤のクロロ安息香酸などの活性ハライド化合物1モルに対し、1.1〜2倍当量使用する。反応時間は15分〜10時間の範囲で、反応温度は−20℃から80℃の範囲である。使用溶媒は、フリーデルクラフト反応に不活性な、クロロベンゼンやニトロベンゼンなどを用いることができる。
【0044】
また、一般式(A)において、nが2以上である重合体は、例えば、一般式(A)において電子供与性基Tであるエーテル性酸素の供給源となるビスフェノールと、電子吸引性基Wである、>C=O、−SO2−、および/または>C(CF3)2とを組み合わせた化合物、具体的には2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスフェノールのアルカリ金属塩と過剰の4,4−ジクロロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホンなどの活性芳香族ハロゲン化合物との置換反応をN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホランなどの極性溶媒存在下で前記単量体の合成手法に順次重合して得られる。
【0045】
このような化合物の例示としては、下記式で表される化合物などを挙げることができる。
【0046】
【化16】
【0047】
【化17】
【0048】
【化18】
【0049】
上記において、nは2以上、好ましくは2〜100である。
本発明に係るポリアリーレンは、芳香族化合物から導かれる構成単位からなり、少なくとも下記一般式(1’)で表される構成単位を含んでいる。
【0050】
【化19】
【0051】
式中、YおよびRは、上記一般式(1)中のYおよびRと同様の基である。
本発明に係るポリアリーレンを構成する上記一般式(1’)以外の構成単位は例えば下記一般式(A’)で表される。
【0052】
【化20】
【0053】
式中、R’、R’’、R1〜R8、WおよびTは、上記一般式(A)中のR’、R’’、R1〜R8、WおよびTと同様の原子または基であり、nは上記一般式(A)中のnと同義である。
本発明に係るポリアリーレン中の上記一般式(1’)で表される構成単位の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜100モル%、より好ましくは10〜99.999モル%である。また、本発明に係るポリアリーレン中の上記一般式(A’)で表される構成単位の含有割合は、好ましくは0〜99.5モル%、より好ましくは0.001〜90モル%である。
【0054】
(ポリアリーレンの合成)
本発明に係るポリアリーレンは、上記一般式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体から選ばれる少なくとも1種のモノマーを触媒の存在下に反応させるか、または上記一般式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体から選ばれる少なくとも1種のモノマー0.5〜100モル%、より好ましくは10〜99.999モル%と、他の芳香族モノマー、好ましくは上記一般式(A)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマー0〜99.5モル%、好ましくは0.001〜90モル%とを触媒の存在下に反応させることにより得られるが、使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、▲1▼遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに▲2▼還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、「塩」を添加してもよい。
【0055】
ここで、遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物;塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウムなどのパラジウム化合物;塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄などの鉄化合物;塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルトなどのコバルト化合物などが挙げられる。これらのうち特に、塩化ニッケル、臭化ニッケルなどが好ましい。
【0056】
また、配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどが挙げられる。これらのうち、トリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジンが好ましい。上記配位子成分である化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0057】
さらに、配位子が配位された遷移金属錯体としては、例えば、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2’−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2’−ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,2’−ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2’−ビピリジン)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられる。これらのうち、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2’−ビピリジン)が好ましい。
【0058】
上記触媒系に使用することができる還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、亜鉛、マグネシウム、マンガンが好ましい。これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることにより、より活性化して用いることができる。
【0059】
また、上記触媒系において使用することのできる「塩」としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム化合物;フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム化合物などが挙げられる。これらのうち、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
【0060】
各成分の使用割合は、遷移金属塩または遷移金属錯体が、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。0.0001モル未満では、重合反応が十分に進行しないことがあり、一方、10モルを超えると、分子量が低下することがある。
触媒系において、遷移金属塩および配位子成分を用いる場合、この配位子成分の使用割合は、遷移金属塩1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒活性が不十分となることがあり、一方、100モルを超えると、分子量が低下することがある。
【0061】
また、還元剤の使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、重合が十分進行しないことがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
さらに、「塩」を使用する場合、その使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不十分であることがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難となることがある。
【0062】
使用することのできる重合溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、γ−ブチロラクタム、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素などが挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらの重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
【0063】
重合溶媒中における上記モノマーの総計の濃度は、通常、1〜90重量%、好ましくは5〜40重量%である。
また、重合する際の重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜120℃である。また、重合時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
【0064】
このようにして上記一般式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体から選ばれる少なくとも1種のモノマーを(共)重合させるか、または上記一般式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体から選ばれる少なくとも1種のモノマーと、上記一般式(A)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマーとを共重合させることにより、ポリアリーレンを含む重合溶液が得られる。
【0065】
このようにして得られるポリアリーレンの分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。
(スルホン酸基を有するポリアリーレン)
本発明に係るスルホン酸基を有するポリアリーレンは、上記ポリアリーレンを加水分解して、上記一般式(1’)で表される構成単位中のスルホン酸エステル基(−SO3R)をスルホン酸基(−SO3H)に転換することにより得ることができる。
【0066】
加水分解は、
(1)少量の塩酸を含む過剰量の水またはアルコールに、上記ポリアリーレンを投入し、5分間以上撹拌する方法
(2)トリフルオロ酢酸中で上記ポリアリーレンを80〜120℃程度の温度で5〜10時間程度反応させる方法
(3)ポリアリーレン中のスルホン酸エステル基(−SO3R)1モルに対して1〜3倍モルのリチウムブロマイドを含む溶液、例えばN−メチルピロリドンなどの溶液中で上記ポリアリーレンを80〜150℃程度の温度で3〜10時間程度反応させた後、塩酸を添加する方法
などを挙げることができる。
【0067】
このようにして得られる、スルホン酸基を有するポリアリーレン中の、スルホン酸基量は、0.5〜3meq/g、好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.5meq/g未満では、プロトン伝導性が上がらず、一方3meq/gを超えると、親水性が向上し、水溶性ポリマー、もしくは、水溶性でなくとも熱水に可溶となってしまうか、また水溶性に至らずとも耐久性が低下する。
【0068】
上記のスルホン酸基量は、芳香族スルホン酸エステル誘導体と化合物(A)の使用割合、さらにモノマーの種類、組合せを変えることにより、容易に調整することができる。
また、スルホン酸基を有するポリアリーレンの構造は、例えば、赤外線吸収スペクトルによって、1,230〜1,250cm−1のC−O−C吸収、1,640〜1,660cm−1のC=O吸収などにより確認でき、また、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)により、6.8〜8.0ppmの芳香族プロトンのピークから、その構造を確認することができる。
【0069】
本発明においては、ポリアリーレン中のスルホン酸エステル基(−SO3R)の90%以上が、スルホン酸基(−SO3H)に転換していることが好ましい。
(プロトン伝導膜)
本発明のプロトン伝導膜は、上記スルホン酸基を有するポリアリーレンからなり、スルホン酸基を有するポリアリーレンからプロトン伝導膜を調製する際には、上記スルホン酸基を有するポリアリーレン以外に、硫酸、リン酸などの無機酸、カルボン酸を含む有機酸、適量の水などを併用してもよい。
【0070】
本発明では、スルホン酸基を有するポリアリーレンを、溶剤に溶解して溶液とした後、キャスティングにより、基体上に流延し、フィルム状に成形するキャスティング法などにより、フィルム状に成形することによりプロトン伝導膜を製造することができる。ここで、上記基体としては、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば特に限定されず、例えばプラスチック製、金属製などの基体が用いられ、好ましくは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの熱可塑性樹脂からなる基体が用いられる。
【0071】
スルホン酸基を有するポリアリーレンを溶解する溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノンなどの非プロトン系極性溶剤が挙げられ、特に溶解性、溶液粘度の面から、N−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」ともいう。)が好ましい。非プロトン系極性溶剤は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0072】
またスルホン酸基を有するポリアリーレンを溶解させる溶媒として上記非プロトン系極性溶剤とアルコールとの混合物も用いることができる。アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどが挙げられ、特にメタノールが幅広い組成範囲で溶液粘度を下げる効果があり好ましい。アルコールは、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0073】
溶媒として非プロトン系極性溶剤とアルコールとの混合物を用いる場合には、非プロトン系極性溶剤が95〜25重量%、好ましくは90〜25重量%、アルコールが5〜75重量%、好ましくは10〜75重量%(但し、合計は100重量%)からなる。アルコールの量が上記範囲内にあると、溶液粘度を下げる効果に優れる。
【0074】
スルホン酸基を有するポリアリーレンを溶解させた溶液のポリマー濃度は、スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量にもよるが、通常、5〜40重量%、好ましくは7〜25重量%である。5重量%未満では、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい。一方、40重量%を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、表面平滑性に欠けることがある。
【0075】
なお、溶液粘度は、スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量や、ポリマー濃度にもよるが、通常、2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。2,000mPa・s未満では、成膜中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがある。一方、100,000mPa・sを超えると、粘度が高過ぎて、ダイからの押し出しができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
【0076】
上記のようにして成膜した後、得られた未乾燥フィルムを水に浸漬すると、未乾燥フィルム中の有機溶剤を水と置換することができ、得られるプロトン伝導膜の残留溶媒量を低減することができる。
なお、成膜後、未乾燥フィルムを水に浸漬する前に、未乾燥フィルムを予備乾燥してもよい。予備乾燥は、未乾燥フィルムを通常50〜150℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行われる。
【0077】
未乾燥フィルムを水に浸漬する際は、枚葉を水に浸漬するバッチ方式であっても良いし、通常得られる基板フィルム(例えば、PET)上に成膜された状態の積層フィルムのまま、または基板から分離した膜を水に浸漬させて、巻き取っていく連続方法でも適用できる。
バッチ方式の場合は、処理フィルムを枠にはめるなどの方式が処理されたフィルムの表面の皺形成が抑制されるので好都合である。
【0078】
未乾燥フィルムを水に浸漬する際には、未乾燥フィルム1重量部に対し、水が10重量部以上、好ましくは30重量部以上の接触比となるようにすることがよい。得られるプロトン伝導膜の残存溶媒量をできるだけ少なくするためには、できるだけ大きな接触比を維持するのがよい。また、浸漬に使用する水を交換したり、オーバーフローさせたりして、常に水中の有機溶媒濃度を一定濃度以下に維持しておくことも、得られるプロトン伝導膜の残存溶媒量の低減に有効である。プロトン伝導膜中に残存する有機溶媒量の面内分布を小さく抑えるためには、水中の有機溶媒濃度を撹拌等によって均質化させることは効果がある。
【0079】
未乾燥フィルムを水に浸漬する際の水の温度は、好ましくは5〜80℃の範囲である。高温ほど、有機溶媒と水との置換速度は速くなるが、フィルムの吸水量も大きくなるので、乾燥後に得られるプロトン伝導膜の表面状態が荒れる懸念がある。通常、置換速度と取り扱いやすさから10〜60℃の温度範囲が好都合である。
【0080】
浸漬時間は、初期の残存溶媒量や接触比、処理温度にもよるが、通常10分〜240時間の範囲である。好ましくは30分〜100時間の範囲である。
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後乾燥すると、残存溶媒量が低減されたプロトン伝導膜が得られるが、このようにして得られるプロトン伝導膜の残存溶媒量は通常5重量%以下である。
【0081】
また、浸漬条件によっては、得られるプロトン伝導膜の残存溶媒量を1重量%以下とすることができる。このような条件としては、例えば未乾燥フィルムと水との接触比を、未乾燥フィルム1重量部に対し、水が50重量部以上、浸漬する際の水の温度を10〜60℃、浸漬時間を10分〜10時間とする方法がある。
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後、フィルムを30〜100℃、好ましくは50〜80℃で、10〜180分、好ましくは15〜60分乾燥し、次いで、50〜150℃で、好ましくは500mmHg〜0.1mmHgの減圧下、0.5〜24時間、真空乾燥することにより、プロトン伝導膜を得ることができる。
【0082】
本発明の方法により得られるプロトン伝導膜は、その乾燥膜厚が、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
また、本発明においては、上記ポリアリーレンを加水分解することなく、上述したような方法でフィルム状に成形した後、上記と同様の方法で加水分解することによりスルホン酸基を有するポリアリーレンからなるプロトン伝導膜を製造することもできる。
【0083】
本発明のプロトン伝導膜中は老化防止剤、好ましくは分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物を含有してもよく、老化防止剤を含有することでプロトン伝導膜としての耐久性をより向上させることができる。
本発明で使用することのできる分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロオネート](商品名:IRGANOX 245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 259)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン(商品名:IRGANOX 565)、ペンタエリスリチルーテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(商品名:IRGANOX 1076)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(IRGAONOX 1098)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト(商品名:IRGANOX 3114)、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:Sumilizer GA−80)などを挙げることができる。
【0084】
本発明において、スルホン酸基を有するポリアリーレン100重量部に対して分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物は0.01〜10重量部の量で使用することが好ましい。
本発明のプロトン伝導膜は、例えば一次電池用電解質、二次電池用電解質、燃料電池用高分子固体電解質、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜などに利用可能なプロトン伝導性の伝導膜に利用可能である。
【0085】
【発明の効果】
本発明に係るスルホン酸基を有するポリアリーレンおよびその製造方法は、ポリアリーレンをスルホン酸基を有するポリアリーレンとする際にスルホン化剤が用いられないため安全性が高く、ポリマーを回収する際の処理の負荷が小さい。また、ポリマーへのスルホン酸基の導入量、および導入位置を制御することが容易である。
【0086】
本発明に係る芳香族スルホン酸エステル誘導体およびポリアリーレンは、上記のようなスルホン酸基を有するポリアリーレンおよびその製造方法に用いられる。
本発明に係るプロトン伝導膜は、プロトン伝導性に優れる。
【0087】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例において、スルホン酸等量、分子量、プロトン伝導度は以下のようにして求めた。
1.スルホン酸当量
得られたスルホン酸基を有するポリアリーレンの水洗水が中性になるまで洗浄し、フリーの残存している酸を除いて充分に水洗し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解し、フェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点から、スルホン酸当量を求めた。
2.分子量の測定
加水分解前のポリアリーレン重量平均分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、GPCによって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。加水分解後のスルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、溶剤として臭化リチウムと燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、GPCによって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
3.プロトン伝導度の測定
交流抵抗は、5mm幅の短冊状のプロトン伝導膜試料の表面に、白金線(φ=0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から求めた。すなわち、85℃、相対湿度90%、70%、30%の環境下で交流10kHzにおけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置として、(株)NF回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを用い、恒温恒湿装置には、(株)ヤマト科学製のJW241を使用した。白金線は、5mm間隔に5本押し当てて、線間距離を5〜20mmに変化させ、交流抵抗を測定した。線間距離と抵抗の勾配から、膜の比抵抗を算出し、比抵抗の逆数から交流インピーダンスを算出し、このインピーダンスから、プロトン伝導率を算出た。
【0088】
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
[スルホン酸誘導体エステル誘導体の合成]
【0089】
【実施例1】
(1) 4−[4−(2,5−ジクロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸のナトリウム塩(A−SO3Na)の調製
【0090】
【化21】
【0091】
攪拌機、冷却管を備えた3Lの三口フラスコに、2,5−ジクロロ−4’−フェノキシベンゾフェノン(A、137.3g、400ミリモル)を加え、続いて1,2−ジクロロエタン(1,2−DCE)500mLを加え、溶解させた。さらに濃硫酸 56mL、無水酢酸 152mLと1,2−DCE 400mLから新しく調製した2Mのアセチル硫酸溶液を攪拌下に加え、60℃のオイルバスで3時間反応させた。所定時間後、1−プロパノール 300mLの添加で反応を停止した。次いで、反応系を400mLの容積まで濃縮し、さらにNaOH水溶液(120g(3モル)/水400mL)を加えた。系中の残存1,2−DCEを共沸で溜去して得られた透明な淡黄色溶液を冷却し、析出した沈殿物を濾過した。70℃での真空乾燥で目的の4−[4−(2,5−ジクロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸のナトリウム塩(A−SO3Na)を微粉状の白色粉末で得た。粗結晶は精製することなく、そのまま次工程に用いた。得られた白色粉末のIRスペクトルを図1に、NMRスペクトルを図2、3に示す。
(2) 4−[4−(2,5−ジクロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸クロライド(A−SO2Cl)の調製
【0092】
【化22】
【0093】
A−SO3Naの粗結晶215g(約400ミリモル)にアセトニトリル300mL、スルホラン200mLの溶媒を加え、さらに三塩化ホスホリル(245.3g、1.6モル)を加え、70℃で反応させた。さらにN,N−ジメチルアセトアミド5mLを加えて、黄色の懸濁物を71〜73℃で40分撹拌し、3℃まで冷却した。1Lの冷水を反応系の温度が10℃を越えない速度で加えた。沈殿物を濾集し、冷水で洗浄、トルエン350mLで再結晶し、目的のA−SO2Clを収量153gの(収率87%(Aを基準にして))白色結晶として得た。融点130.5〜131.5℃。IRスペクトルを図4に、NMRスペクトルを図5、6に示す。
(3) 4−[4−(2,5−ジクロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸iso−ブチル(A−SO3 iso−Bu)の調製
【0094】
【化23】
【0095】
A−SO2Cl 22.09g(50ミリモル)を2−メチル−1−プロパノール4.0g(55ミリモル)とピリジン(30mL)溶媒中に、冷却しながら、機械的撹拌下に40分かけて滴下した。濃厚な懸濁液が得られ、12〜15℃でさらに1時間撹拌を継続した。濃塩酸30mLと氷100gを一度に反応系に加えた。懸濁液が徐々に均一になるまで撹拌した。次いで、素早く冷却したブフナーロートで濾過した。白色の粘着性のある沈殿物を回収した。沈殿物は酢酸エチル300mLに再溶解し、分液ロートで水洗し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を溜去した。濃縮後の淡黄色の油状の液体を熱ヘキサン30mLに溶解し、数日間フリーザー中で放置し、目的とするA−SO3 i−Buの白色結晶(融点:73〜74℃)16.67gを収率70%で得た。IRスペクトルを図7に、NMRスペクトルを図8、9に示す。
【0096】
【実施例2】
4−[4−(2,5−ジクロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸neo−ペンチル(A−SO3 neo−Pe)の調製
【0097】
【化24】
【0098】
実施例1(2)で得られたものと同様のA−SO2Cl(22.09g、50ミリモル)を2,2−ジメチル−1−プロパノール(4.85g、55ミリモル)とピリジン30mLとを含む溶液中に冷却しながら機械的攪拌下に40分かけて滴下した。濃厚な懸濁液が得られ、12〜15℃でさらに1時間攪拌を継続した。
【0099】
濃塩酸30mLと氷100gを反応させて、沈殿物が生成した。沈殿物を濾集後、冷水で洗浄、乾燥し、次いで沸騰トルエン150mLと接触させた。不溶分(大部分はA−SO3Hのピリジニウム塩)を濾過で除去し、濾液を40mLまで濃縮した。濃縮物をフリーザーで放置し、A−SO3 neo−Peの白色結晶(融点:112.0〜112.5℃)を析出させた。収量16.92g、収率69%であった。IRスペクトルを図10に、NMRスペクトルを図11、12に示す。
【0100】
【合成例1】
[BCPAFオリゴマーの調製]
撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)67.3g(0.20モル)、4,4’−ジクロロベンゾフェノン(4,4’−DCBP)60.3g(0.24モル)、炭酸カリウム71.9g(0.52モル)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)300mL、トルエン150mLをとり、オイルバス中、窒素雰囲気下で加熱し撹拌下130℃で反応させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean−Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を130℃から徐々に150℃まで上げた。その後、反応温度を徐々に150℃まで上げながら大部分のトルエンを除去し、150℃で10時間反応を続けた後、4,4’−DCBP10.0g(0.040モル)を加え、さらに5時間反応した。得られた反応液を放冷後、副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を4Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、テトラヒドロフラン300mLに溶解した。これをメタノール4Lに再沈殿し、目的の化合物95g(収率85%)を得た。
【0101】
得られた重合体のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量は12,500であった。また、得られた重合体はTHF、NMP、DMAc、スルホランなどに可溶で、Tgは110℃、熱分解温度は498℃であった。
得られた化合物は式(I)で表されるオリゴマー(以下、「BCPAFオリゴマー」という)であった。
【0102】
【化25】
【0103】
【合成例2】
上記合成例1で用いた、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)67.3g(0.20モル)の代わりに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(FLBP)80.6g(0.23モル)、溶媒をDMAcの代わりにNMPを用いた。その他は、合成例1同様に反応、後処理を行った。目的の化合物103g(収率83%)を得た。
【0104】
得られた重合体のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量は12,300であった。また、得られた重合体はTHF、NMP、DMIなどに可溶で、Tgは175℃、熱分解温度は524℃であった。
得られた化合物は式(II)で表されるオリゴマー(以下、「BCPFLオリゴマー」という)であった。
【0105】
【化26】
【0106】
[ポリアリーレンの重合]
【0107】
【実施例3】
i−ブチル基を保護基としたポリアリーレン共重合体(PolyAB−SO3 i−Bu)の製造
乾燥したN−メチルピロリドン(NMP)60mLを実施例1で得られたA−SO3 i−ブチル 15.34g(32ミリモル)とBCPAFオリゴマー(Mn=7,940)10.52g(1.33ミリモル)、Ni(PPh3)2Cl2 0.65g(1ミリモル)、PPh 33.50g(13.33ミリモル)、NaI 0.65g(4.83ミリモル)、亜鉛末5.45g(83.33ミリモル)の混合物中に窒素下で加えた。
【0108】
反応系を撹拌下に加熱し(最終的には74℃まで加温)、3時間反応させた。反応途中で系中の粘度上昇は観察された。重合反応溶液をTHF 250mLで希釈し、30分撹拌し、セライトを濾過助剤に用い、濾過し、濾液を大過剰のメタノール1500mLに注ぎ、凝固した。凝固物を濾集、風乾し、さらにTHF/NMP(それぞれ200/30mL)に再溶解し、大過剰のメタノール1500mLで凝固析出させた。風乾後、加熱乾燥で目的の黄色フレーク状のi−ブチル基で保護されたスルホン酸誘導体からなる共重合体(PolyAB−SO3 i−Bu)20.54g(収率78%)を得た。GPCによる分子量は、Mn=13,200、Mw=33,300であった。IRスペクトルを図13に、NMRスペクトルを図14に示す。
【0109】
【実施例4】
ネオペンチル基を保護基としたポリアリーレン共重合体(PolyAB−SO3 neo−Pe)の調製
実施例2で得られたA−SO3 neo−Pe39.46g(98.33ミリモル)とBCPAFオリゴマー(Mn=11200)18.70g(0.167ミリモル)、Ni(PPh3)2Cl21.96g(0.30ミリモル)、PPh3 10.49g(4.00ミリモル)、NaI 0.45g(0.30ミリモル)、亜鉛末 15.69g(24.0ミリモル)、乾燥NMP 129mLを用い、実施例3に準じて重合反応を行った。重合反応開始後60分で系中の粘度の上昇が観察された。撹拌しながら重合反応を3時間継続後、実施例3と同様にTHFで希釈し、後処理操作を行った。目的の黄色繊維状のネオペンチル基で保護されたスルホン酸誘導体からなる共重合体(PolyAB−SO3 neo−Pe)47.0g(収率92%)を得た。GPCによる分子量は、Mn=53,700、Mw=187,000であった。IRスペクトルを図15に、NMRスペクトルを図16、17に示す。
【0110】
【実施例5】
ネオペンチル基を保護基としたポリアリーレン共重合体(PolyAB−SO3 neo−Pe)の調製
実施例4で用いたBCPAFオリゴマー(Mn=7940)4.88g(0.62ミリモル)の代わりにBCPFLオリゴマー(Mn=12,300)7.62g(0.62ミリモル)、実施例2で得られたA−SO3 neo−Pe 17.81g(44.38ミリモル)、Ni(PPh3)2Cl2 0.88g(1.35ミリモル)、PPh3 4.72g(18.00ミリモル)、NaI 0.20g(1.35ミリモル)、亜鉛末 7.06g(108.00ミリモル)、乾燥NMP 60mLを用いた。その他は、実施例4同様に重合、後処理を行った。
【0111】
目的の黄色繊維状のネオペンチル基で保護されたスルホン酸誘導体からなる共重合体(PolyAB−SO3 neo−Pe)21.00g(収率77%)を得た。GPCによる分子量は、Mn=22,100、Mw=90,800であった。IRスペクトルを図18に示す。
[加水分解によるスルホン酸基を有するポリアリーレンへの転換]
【0112】
【実施例6】
i−ブチル基をスルホン酸の保護基として有するポリアリーレン(PolyAB−SO3 i−Bu)から、スルホン酸基を有するポリアリーレン(PolyAB−SO3H)の転換
実施例3で得られたPolyAB−SO3 i−Bu 5.08g(SO3 i−Buに対し、2.7ミリモル)をNMP 60mLに溶解し、90℃に加温した。反応系にメタノール50mLと濃塩酸8mLの混合物を一時に加えた。懸濁状態となりながら、温和の還流条件で10時間反応させた。蒸留装置を設置し、過剰のメタノールを溜去させ、淡緑色の透明溶液を得た。この溶液からガラス板上にキャストし、製膜した。製膜後、水中に3日間浸漬し、風乾、真空乾燥し、乾燥膜厚50μmのフィルムを得た。IRスペクトルおよびイオン交換容量の定量分析から、スルホン酸エステル基(−SO3R)は定量的にスルホン酸基(−SO3H)に転換していることがわかった。
【0113】
IRスペクトルを図19に、NMRスペクトルを図20に示す。ポリマー中のスルホン酸基量は1.46meq/g (重合時のモノマー仕込みモルからは1.47meq/g )であった。
【0114】
【実施例7】
ネオペンチル基をスルホン酸の保護基として有するポリアリーレン(PolyAB−SO3 neo−Pe)から、スルホン酸基を有するポリアリーレン(PolyAB−SO3H)の転換
PolyAB−SO3 neo−Pe 4.50g(SO3 neo−Peに対し、8ミリモル)をトリフルオロ酢酸35mLに徐々に加えた。粘ちょうな溶液を温和な還流状況まで加温した。反応中、さらにトリフルオロ酢酸5mLを加えた。2時間後に、ポリマーは沈殿してきたが、撹拌を継続し、合計4時間反応させた。反応後、室温まで放冷した。沈殿物を濾集し、濾集物をTHF 400mLに懸濁撹拌し洗浄した。さらに濾集し、風乾し、粗生成物を得た。粗生成物を水で2回洗浄し、最終的に淡褐色の粉状ポリマーを得た。
【0115】
得られたポリマーの8重量%NMP溶液から、ガラス板上にキャストして製膜した。風乾、真空乾燥し、乾燥膜厚40μmのフィルムを得た。IRスペクトルおよびイオン交換容量の定量分析から、スルホン酸エステル基(−SO3R)は定量的にスルホン酸基(−SO3H)に転換していることがわかった。
IRスペクトルを図21に、NMRスペクトルを図22に示す。ポリマー中のスルホン酸基量は2.0meq/g (重合時のモノマー仕込みモルからは2.0meq/g )であった。
【0116】
得られたスルホン酸フィルムの特性を示す。
▲1▼プロトン伝導度
・85℃・95%RH:0.268S/cm
・85℃・70%RH:0.100S/cm
・85℃・30%RH:0.018S/cm
▲2▼引っ張り特性
・室温:弾性率 4.4GPa,引張強度153MPa、降伏強度98MPa、伸び52%
・120℃:弾性率 4.4GPa,引張強度131MPa、伸び38%
▲3▼含水率
・95℃・48時間:65%
・95℃・500時間浸漬しても、スルホン酸当量の変化もなく、安定であった。
▲4▼熱安定性
・120℃・500時間熱処理条件でも不溶分は生成せず、スルホン酸当量の変化もなく、安定であった。
・熱変形温度:162℃
【0117】
【実施例8】
ネオペンチル基をスルホン酸の保護基として有するポリアリーレン(PolyAB−SO3 neo−Pe)から、スルホン酸基を有するポリアリーレン(PolyAB−SO3H)の転換
実施例4で用いたPolyAB−SO3 neo−Peの代わりに実施例5で得られたPolyAB−SO3 neo−Pe 4.90g、トリフルオロ酢酸40mLを用いたこと以外は実施例7と同様の方法で操作を行い、最終的に淡褐色の粉状ポリマーを得た。
【0118】
得られたポリマーの8重量%NMP溶液から、ガラス板上にキャストして製膜した。風乾、真空乾燥し、乾燥膜厚40μmのフィルムを得た。IRスペクトルおよびイオン交換容量の定量分析から、スルホン酸エステル基(−SO3R)はスルホン酸基(−SO3H)に転換していることがわかった。
IRスペクトルを図23に示す。ポリマー中のスルホン酸基量は1.8meq/g (重合時のモノマー仕込みモルからは2.2meq/g )であった。
【0119】
得られたスルホン酸フィルムの特性を示す。
▲1▼プロトン伝導度
・85℃・95%RH:0.250S/cm
・85℃・70%RH:0.095S/cm
・85℃・30%RH:0.018S/cm
▲2▼引っ張り特性
・室温:弾性率 4.6GPa,引張強度136MPa、伸び44%
・120℃:弾性率 4.6GPa,引張強度117MPa、伸び30%
▲3▼含水率
・95℃・48時間:70%
・95℃・500時間浸漬しても、スルホン酸当量の変化もなく、安定であった。
▲4▼熱安定性
・120℃・500時間熱処理条件でも不溶分は生成せず、スルホン酸当量の変化もなく、安定であった。
・熱変形温度:170℃
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1(1)で得られた白色粉末のIRスペクトルである。
【図2】実施例1(1)で得られた白色粉末のNMRスペクトルである。
【図3】実施例1(1)で得られた白色粉末のNMRスペクトルである。
【図4】実施例1(2)で得られた白色結晶のIRスペクトルである。
【図5】実施例1(2)で得られた白色結晶のNMRスペクトルである。
【図6】実施例1(2)で得られた白色結晶のNMRスペクトルである。
【図7】実施例1(3)で得られた白色結晶のIRスペクトルである。
【図8】実施例1(3)で得られた白色結晶のNMRスペクトルである。
【図9】実施例1(3)で得られた白色結晶のNMRスペクトルである。
【図10】実施例2で得られた白色結晶のIRスペクトルである。
【図11】実施例2で得られた白色結晶のNMRスペクトルである。
【図12】実施例2で得られた白色結晶のNMRスペクトルである。
【図13】実施例3で得られたポリアリーレンのIRスペクトルである。
【図14】実施例3で得られたポリアリーレンのNMRスペクトルである。
【図15】実施例4で得られたポリアリーレンのIRスペクトルである。
【図16】実施例4で得られたポリアリーレンのNMRスペクトルである。
【図17】実施例4で得られたポリアリーレンのNMRスペクトルである。
【図18】実施例5で得られたポリアリーレンのNMRスペクトルである。
【図19】実施例6で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレンのIRスペクトルである。
【図20】実施例6で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレンのNMRスペクトルである。
【図21】実施例7で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレンのIRスペクトルである。
【図22】実施例7で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレンのNMRスペクトルである。
【図23】実施例8で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレンのIRスペクトルである。
Claims (6)
- 請求項2または3に記載のポリアリーレンを加水分解して得られることを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレン。
- 請求項1に記載の芳香族スルホン酸エステル誘導体を少なくとも含む芳香族化合物をカップリング重合し、得られたポリアリーレンを加水分解することを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレンの製造方法。
- 請求項4に記載のスルホン酸基を有するポリアリーレンからなることを特徴とするプロトン伝導膜。
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