JP6797751B2 - 低塩素充填溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物 - Google Patents

低塩素充填溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物 Download PDF

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Description

[0001]本出願は、2011年9月20日の出願日を有する米国仮特許出願61/536,721(参照として本明細書中に包含する)の出願日の利益を主張する。
[0002]ポリアリーレンスルフィドは、高い熱的、化学的、及び機械的応力に耐えることができ、広範囲の用途において有益に用いられている高性能ポリマーである。ポリアリーレンスルフィドは、一般に、アルカリ金属硫化物又はアルカリ金属水硫化物を用いてp−ジクロロベンゼンを重合して、末端基に塩素を含むポリマーを形成することによって形成される。環境的な懸念のために低ハロゲン含量のポリマー材料が益々望まれるようになるに伴って、低塩素含量のポリアリーレンスルフィド組成物を製造する試みが行われている。一般に、より高い分子量のポリアリーレンスルフィドはより少ない末端基を含み、したがってより低い塩素原料を有するので、これは組成物中においてより高い分子量のポリマーを用いることを伴っていた。
[0003]残念なことに、高分子量のポリアリーレンスルフィドは高い溶融粘度を有し、これにより加工性の問題が提起され、これは形成技術を複雑にする可能性がある。この問題はポリアリーレンスルフィド組成物中に充填剤を含ませる(これは、形成される複合体の所望の特性を向上させるが、同時に組成物の溶融粘度を更に増加させる可能性がある)ことによって悪化する可能性がある。
[0004]より低い分子量のポリアリーレンスルフィドを用いることによって組成物の加工性を向上させることができるが、高い塩素含量はなお問題であり、低分子量のポリアリーレンスルフィドを含ませた組成物が所望の物理特性を示すようにするためには添加剤に関する添加レベルは非常に高い可能性があるので、組成物の物理特性を向上させるために添加剤を含ませることは加工性の問題に戻る可能性がある。
[0005]当該技術において必要なものは、所望の物理特性及び低い塩素含量をなお与えながら良好な加工性のための比較的低い溶融粘度を有する溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物である。更に、必要なものは、複雑か又は大規模な加工工程を必要としない、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成するための手軽で簡単な方法である。
[0006]一態様においては、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する方法を開示する。この方法には、混合物を溶融加工して溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成することを含ませることができる。混合物には、出発ポリアリーレンスルフィド、充填剤、及びジスルフィド化合物を含ませることができる。溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、ISO試験No.11443にしたがって1200秒−1の剪断速度及び310℃の温度において測定して約2000ポイズ未満の溶融粘度を有することができる。溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の溶融粘度に対する出発ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度の比は、約1.25より大きくすることができる。更に、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は約1000ppm未満の塩素含量を有することができる。
[0007]また、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物も開示する。例えば、溶融加工
ポリアリーレンスルフィド組成物には、ポリアリーレンスルフィド及び充填剤を含ませることができる。溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、ISO試験No.11443にしたがって1200秒−1の剪断速度及び310℃の温度において測定して約2000ポイズ未満の溶融粘度を有することができる。溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は約1000ppm未満の塩素含量を有することができ、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、ISO試験No.75−2にしたがって1.8MPaの荷重で測定して約200℃より高い荷重撓み温度を有することができる。
[0008]また、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を含む生成物も開示する。生成物としては、電気コネクター及びオーバーモールドを挙げることができるが、これらに限定されない。
[0009]本発明は以下の図面を参照してより良好に理解することができる。
[0010]図1は、本明細書に記載する溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を含ませることができる電気コネクターの拡大図を示す。 [0011]図2は、形成された状態の図1の電気コネクターである。 [0012]図3は、本発明の一態様による溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を含むオーバーモールドを含む電子機器の斜視図である。 [0013]図4は、閉止した形態で示す図3の電子機器の斜視図である。
[0014]本発明は、概して、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物、及び溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する方法に関する。溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、ジスルフィド化合物及び出発ポリアリーレンスルフィドを混合して混合物を形成することを含む方法にしたがって形成することができる。更に、例えば押出機内で充填剤を混合物中に含ませることができ、混合物を溶融加工して溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成することができる。充填溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、低い塩素含量を有することができ、優れた加工性及び機械特性を示すことができる。いかなる特定の理論にも縛られることは望まないが、混合物中におけるジスルフィド化合物と出発ポリアリーレンスルフィドとの間のポリマー切断反応によってより低い溶融粘度の生成物がもたらされると考えられる。更に、出発ポリアリーレンスルフィド、ジスルフィド化合物、及び充填剤を含む混合物を溶融加工することによって、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物中における充填剤の利益を向上させることができると考えられる。例えば、溶融加工中にジスルフィド化合物を加えることによって溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の全体的な溶融粘度が低下し、それによって減少した充填剤の摩滅及び充填剤の完全性による向上した機械特性がもたらされると考えられる。形成プロセスは、出発ポリアリーレンスルフィド、ジスルフィド化合物、及び充填剤を含む混合物を、溶融押出機内で溶融加工して溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成することによって行うことができる。而して、プロセスは比較的簡単な形成プロセスにすることができ、これによりコスト削減をもたらすことができる。
I.溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物:
[0015]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物には、ポリアリーレンスルフィド及び充填剤を含ませることができる。溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、溶融加工用に設計されたシステム内において、出発ポリアリーレンスルフィド、充填剤、及びジスルフィド化合物を含む混合物を溶融加工することによって形成することができる。例えば、混合物は押出機内で溶融加工することができる。
[0016]押出機内において、ジスルフィド化合物と出発ポリアリーレンスルフィドとの間の相互作用によって、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の溶融粘度を低下させることができ、特に溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物中のポリアリーレンスルフィドの溶融粘度を低下させることができる。例えば、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、ISO試験No.11443にしたがって1200秒−1の剪断速度及び310℃の温度において測定して約2000ポイズ未満、約1500ポイズ未満、又は約1200ポイズ未満の溶融粘度を有することができる。
[0017]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の溶融粘度とは異なり、混合物中に含ませる出発ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度は非常に高くてよい。形成プロセスは、出発ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度よりも低い溶融粘度を有する溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成することができ、而して溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は出発ポリアリーレンスルフィドと比べて向上した加工性を示すことができる。例えば、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の溶融粘度に対する出発ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度の比は、約1.25より高く、約2より高く、又は約3より高くすることができる。
[0018]更に、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、均一組成物にすることができ、優れた機械特性を示すことができる。混合物中の出発ポリアリーレンスルフィド、ジスルフィド化合物、及び充填剤の添加効果によって、優れた加工性及び生成物特性を有する溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を与えることができると考えられる。
[0019]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、ISO試験No.527(ASTM−D638と技術的に同等である)にしたがって23℃の温度及び5mm/分の試験速度において測定して約120MPaより大きく、又は約125MPaより大きい引張応力を有することができる。
[0020]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、ISO試験No.178(ASTM−D790と技術的に同等である)にしたがって23℃の試験温度及び2mm/分の試験速度において測定して約190MPaより大きく、又は約192MPaより大きい曲げ応力を有することができる。
[0021]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、ISO試験No.75−2(ASTM−D648−07と技術的に同等である)にしたがって1.8MPaの荷重で測定して約200℃より高く、約230℃より高く、又は約260℃より高い荷重撓み温度(DTUL)を有することができる。
[0022]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、ISO試験No.80(ASTM−D256と技術的に同等である)にしたがって測定して良好なノッチ付きアイゾッド衝撃強さ(ノッチ付きアイゾッド)を有することができる。例えば、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物のアイゾッド衝撃強さは、23℃において測定して約4.0kJ/mより大きく、又は約4.2kJ/mより大きくすることができる。
[0023]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は他の有益な特性を更に示すことができる。例えば、この組成物は良好な耐熱及び難燃特性を示すことができる。例えば、この組成物は0.8mmの厚さにおいてV−0燃焼性標準規格を満足することができる。難燃性は"Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances", 5版, 1996年10月29日のUL94垂直燃焼試験手順にしたがって測定することがで
きる。UL94試験による等級を下表に示す。
Figure 0006797751
[0024]「残炎時間」は、総残炎時間(試験した全ての試料の総計値)を試料の数で割ることによって求められる平均値である。総残炎時間は、UL−94VTM試験において記載されているように炎の2回の別々の適用後に全ての試料が発火状態を維持する時間(秒)の合計である。より短い時間は、より良好な難燃性、即ち炎がより速く消失したことを示す。V−0の等級に関しては、5つの試料(それぞれに炎の2回の適用を与える)に関する総残炎時間は50秒間を超えてはならない。本発明の難燃剤を用いると、物品は0.8mmの厚さを有する試験片に関して少なくともV−1の等級、通常はV−0の等級を達成することができる。
[0025]出発ポリアリーレンスルフィドは、低い塩素含量を有することができる高分子量で高溶融粘度のポリアリーレンスルフィドであってよい。したがって溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物もまた低い塩素含量を有することができる。例えば、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、約1000ppm未満、約900ppm未満、約600ppm未満、又は約400ppm未満の塩素含量を有することができる。
II.成分:
[0026]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、複数の成分の混合物を溶融加工することを含むプロセスにしたがって形成することができる。混合物には、出発ポリアリーレンスルフィド、ジスルフィド化合物、及び充填剤、並びに1種類以上の随意的な成分を成分として含ませることができる。
A.出発ポリアリーレンスルフィド:
[0027]一般に、出発ポリアリーレンスルフィドは、式(I):
Figure 0006797751
(式中、Ar、Ar、Ar、及びArは、同一か又は異なり、6〜18個の炭素原子のアリーレン単位であり;W、X、Y、及びZは、同一か又は異なり、−SO−、−S−、−SO−、−CO−、−O−、−COO−、又は1〜6個の炭素原子のアルキレン若しくはアルキリデン基から選択される二価の連結基であり、連結基の少なくとも1つは−S−であり;n、m、i、j、k、l、o、及びpは、独立して、0、又は1、2、3、若しくは4であり、但しこれらの合計は2以上である)
の繰り返し単位を含むポリアリーレンチオエーテルであってよい。アリーレン単位のAr
、Ar、Ar、及びArは、選択的に置換又は非置換であってよい。有利なアリーレン系は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセン、及びフェナントレンである。出発ポリアリーレンスルフィドは、通常は約30モル%より多く、約50モル%より多く、又は約70モル%より多いアリーレンスルフィド(−S−)単位を含む。一態様においては、出発ポリアリーレンスルフィドは、少なくとも約85モル%の、2つの芳香環に直接結合しているスルフィド連結基を含む。
[0028]一態様においては、出発ポリアリーレンスルフィドは、本発明においてその成分としてフェニレンスルフィド構造:−(C−S)−(式中、nは1以上の整数である)を含むものとして定義されるポリフェニレンスルフィドである。
[0029]出発ポリアリーレンスルフィドは溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成するプロセス中に合成することができるが、これは必須要件ではなく、出発ポリアリーレンスルフィドは公知の供給業者から購入することもできる。例えば、Florence, Kentucky,米国のTiconaから入手できるFortron(登録商標)ポリフェニレンスルフィドを購入して出発ポリアリーレンスルフィドとして用いることができる。
[0030]出発ポリアリーレンスルフィドの製造において用いることができる合成技術は当該技術において一般的に知られている。一例として、出発ポリアリーレンスルフィドを製造する方法には、ヒドロスルフィドイオンを与える材料、例えばアルカリ金属硫化物を有機アミド溶媒中でジハロ芳香族化合物と反応させることを含ませることができる。
[0031]アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、又はこれらの混合物であってよい。アルカリ金属硫化物が水和物又は水性混合物である場合には、アルカリ金属硫化物を、重合反応の前に脱水操作によって処理することができる。アルカリ金属硫化物はまた、その場で生成させることもできる。更に、少量のアルカリ金属水酸化物を反応中に含ませて、アルカリ金属硫化物と共に非常に少量で存在する可能性があるアルカリ金属ポリスルフィド又はアルカリ金属チオスルフェートのような不純物を除去するか又は(例えばかかる不純物を無害の材料に変化させるために)反応させることができる。
[0032]ジハロ芳香族化合物は、限定なしに、o−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、又はジハロジフェニルケトンであってよい。ジハロ芳香族化合物は、単独か又はその任意の組合せのいずれかで用いることができる。具体的な代表的ジハロ芳香族化合物としては、限定なしに、p−ジクロロベンゼン;m−ジクロロベンゼン;o−ジクロロベンゼン;2,5−ジクロロトルエン;1,4−ジブロモベンゼン;1,4−ジクロロナフタレン;1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン;4,4’−ジクロロビフェニル;3,5−ジクロロ安息香酸;4,4’−ジクロロジフェニルエーテル;4,4’−ジクロロジフェニルスルホン;4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド;及び4,4’−ジクロロジフェニルケトン;を挙げることができる。
[0033]ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であってよく、同じジハロ芳香族化合物中の2つのハロゲン原子は、同一か又は互いと異なっていてよい。一態様においては、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、又はこれらの2以上の化合物の混合物をジハロ芳香族化合物として用いる。
[0034]当該技術において公知なように、出発ポリアリーレンスルフィドの末端基を形成するか、或いは重合反応及び/又は出発ポリアリーレンスルフィドの分子量を調節するた
めに、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物ではない)をジハロ芳香族化合物と組み合わせて用いることもできる。
[0035]出発ポリアリーレンスルフィドはホモポリマーであってよく、或いはコポリマーであってよい。ジハロ芳香族化合物の好適な選択的組み合わせによって、2以上の異なる単位を含む出発ポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。例えば、p−ジクロロベンゼンをm−ジクロロベンゼン又は4,4’−ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて用いる場合には、式(II):
Figure 0006797751
の構造を有するセグメント、及び式(III):
Figure 0006797751
の構造を有するセグメント、又は式(IV):
Figure 0006797751
の構造を有するセグメントを含む出発ポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。
[0036]一般に、充填したアルカリ金属硫化物の有効量1モルあたりの1種類又は複数のジハロ芳香族化合物の量は、一般に1.0〜2.0モル、1.05〜2.0モル、又は1.1〜1.7モルであってよい。これにより、出発ポリアリーレンスルフィドにハロゲン化アルキル(一般に塩化アルキル)末端基を含ませることができる。
[0037]他の態様においては、出発ポリアリーレンスルフィドコポリマーには、式(V):
Figure 0006797751
(式中、基R及びRは、互いに独立して、水素、フッ素、塩素、又は臭素原子、或いは1〜6個の炭素原子を有する分岐若しくは非分岐のアルキル又はアルコキシ基である)の構造から誘導される第1の単位;及び/又は式(VI):
Figure 0006797751
の構造から誘導される第2の単位を含む、1000〜20,000g/モルの数平均モル質量Mnを有する第1のセグメントを含ませることができる。第1の単位はp−ヒドロキシ安息香酸又はその誘導体の1つであってよく、第2の単位は2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸から構成することができる。
[0038]出発ポリアリーレンスルフィドコポリマーには、式(VII):
Figure 0006797751
(式中、Arは芳香族基、或いは1つより多い縮合芳香族基であり、qは2〜100、特に5〜20の数である)
のポリアリーレンスルフィド構造から誘導される第2のセグメントを含ませることができる。式(VII)における基Arはフェニレン又はナフチレン基であってよい。一態様においては、第2のセグメントは、ポリ(m−チオフェニレン)、ポリ(o−チオフェニレン)、又はポリ(p−チオフェニレン)から誘導することができる。
[0039]出発ポリアリーレンスルフィドコポリマーの第1のセグメントには、第1及び第2の単位の両方を含ませることができる。第1及び第2の単位は、第1のセグメント内にランダムの分布か又は交互配列で配置することができる。第1のセグメントにおける第1の単位と第2の単位とのモル比は1:9〜9:1であってよい。
[0040]上述したように、出発ポリアリーレンスルフィドを製造する方法には、有機アミド溶媒中で重合反応を行うことを含ませることができる。重合反応において用いる代表的な有機アミド溶媒としては、限定なしに、N−メチル−2−ピロリドン;N−エチル−2−ピロリドン;N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;N−メチルカプロラクタム;テトラメチル尿素;ジメチルイミダゾリジノン;ヘキサメチルリン
酸トリアミド、及びこれらの混合物を挙げることができる。反応において用いる有機アミド溶媒の量は、例えばアルカリ金属硫化物の有効量1モルあたり0.2〜5kg(kg/モル)であってよい。
[0041]重合は段階的重合プロセスによって行うことができる。第1重合段階には、ジハロ芳香族化合物を反応器に導入し、そしてジハロ芳香族化合物を、水の存在下、約180℃〜約235℃、又は約200℃〜約230℃の温度において重合反応にかけ、ジハロ芳香族化合物の転化率が理論的に必要な量の約50モル%以上に達するまで重合を継続することを含ませることができる。
[0042]第1重合段階を行う際には、通常は水を含むアルカリ金属硫化物を有機アミド溶媒中に充填することができ、混合物を加熱して過剰の水を反応系から留去することができる。この時点において、アルカリ金属硫化物の一部が分解してアルカリ及び硫化水素(HS)が形成される。HSの生成量から、充填したアルカリ金属硫化物の有効量を算出する。その後、充填したアルカリ金属硫化物の有効量から算出される量のジハロ芳香族化合物を反応系中に充填することができ、混合物を、不活性雰囲気中において約180℃〜約235℃の温度に加熱して重合反応を起こすことができる。
[0043]第1の重合の終了点は、反応系中のジハロ芳香族化合物の転化率が、理論転化率の約50モル%以上、約70モル%以上、又は約90モル%以上の値に達した時点である。ジハロ芳香族化合物の理論転化率は次の式の1つから算出することができる。
(a)アルカリ金属硫化物よりも(モル比で)多いジハロ芳香族化合物(以下、DHAと呼ぶ)を加えた場合:
Figure 0006797751
(b)(a)以外の場合:
Figure 0006797751
ここで、Xは充填したジハロ芳香族化合物の量であり;Yはジハロ芳香族化合物の残留量であり;Zはジハロ芳香族化合物の過剰量であり;これらはモル数である。
[0044]第2の重合段階においては、水を反応スラリーに加えて、重合系中の水の全量が充填したアルカリ金属硫化物の有効量1モルあたり約7モル、又は約5モルまで増加するようにする。次に、重合系の反応混合物を、約250℃〜約290℃、約255℃〜約280℃、又は約260℃〜約270℃の温度に加熱することができ、かくして形成されるポリマーの溶融粘度が出発ポリアリーレンスルフィドの所望の最終レベルに上昇するまで重合を継続することができる。第2の重合段階の継続時間は、例えば約0.5〜約20時間、又は約1〜約10時間であってよい。
[0045]出発ポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状、分岐、又は架橋型であってよい。線状出発ポリアリーレンスルフィドは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主構成単
位として含む。一般に、線状出発ポリアリーレンスルフィドは約80モル%以上のこの繰り返し単位を含んでいてよい。線状出発ポリアリーレンスルフィドは少量の分岐単位又は架橋単位を含んでいてよいが、分岐又は架橋単位の量は出発ポリアリーレンスルフィドの全モノマー単位の約1モル%未満であってよい。線状出発ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上記に記載の繰り返し単位を含むランダムコポリマー又はブロックコポリマーであってよい。
[0046]3つ以上の反応性官能基を有する少量の1種類以上のモノマーをポリマー中に導入することによって与えられる架橋構造又は分岐構造を有していてよい半線状出発ポリアリーレンスルフィドを用いることができる。例えば、3つ以上の反応性官能基を有するモノマーから、ポリマーの約1モル%〜約10モル%の間を形成することができる。半線状出発ポリアリーレンスルフィドの製造において用いることができる方法は、当該技術において一般的に知られている。一例として、半線状出発ポリアリーレンスルフィドを形成する際に用いるモノマー成分に、分岐ポリマーの製造において用いることができる分子あたり2以上のハロゲン置換基を有する一定量のポリハロ芳香族化合物を含ませることができる。かかるモノマーは、式:R’X(式中、それぞれのXは、塩素、臭素、及びヨウ素から選択され、nは3〜6の整数であり、R’は、約4個以下のメチル置換基を有していてよい価数nの多価芳香族基であり、R’中の炭素原子の総数は6〜約16の範囲内である)によって表すことができる。半線状出発ポリアリーレンスルフィドを形成する際に用いることができる分子あたり2個より多いハロゲンで置換されている幾つかのポリハロ芳香族化合物の例としては、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼン、1,2,4−トリヨードベンゼン、1,2,3,5−テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロ−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’−テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’−テトラヨードビフェニル、2,2’,6,6’−テトラブロモ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,2,3,4−テトラクロロナフタレン、1,2,4−トリブロモ−6−メチルナフタレンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。
[0047]重合の後、出発ポリアリーレンスルフィドを液体媒体で洗浄することができる。例えば、出発ポリアリーレンスルフィドを、混合物を形成する間に、他の成分と混合する前に、水、アセトン、N−メチル−ピロリドン、塩溶液、及び/又は酢酸若しくは塩酸のような酸性媒体で洗浄することができる。出発ポリアリーレンスルフィドは、当業者に一般に知られている逐次的方法で洗浄することができる。酸性溶液又は塩溶液による洗浄によって、ナトリウム、リチウム、又はカルシウム金属イオン末端基濃度を約2000ppmから約100ppmに減少させることができる。
[0048]出発ポリアリーレンスルフィドは、熱水洗浄プロセスにかけることができる。熱水洗浄の温度は、約100℃以上、例えば約120℃より高く、約150℃より高く、又は約170℃より高くてよい。一般に、熱水洗浄のために蒸留水又は脱イオン水を用いることができる。一態様においては、熱水洗浄は、所定量の出発ポリアリーレンスルフィドを所定量の水に加え、混合物を圧力容器内において撹拌下で加熱することによって行うことができる。一例として、水1Lあたり約200g以下の出発ポリアリーレンスルフィドの浴比を用いることができる。熱水洗浄に続いて、出発ポリアリーレンスルフィドを、約10℃〜約100℃の温度に維持した温水を用いて数回洗浄することができる。洗浄は、ポリマーの分解を回避するために不活性雰囲気中で行うことができる。
[0049]出発ポリアリーレンスルフィドを分解しない有機溶媒を、出発ポリアリーレンスルフィドを洗浄するために用いることができる。有機溶媒としては、限定なしに、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミ
ダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルアミド、及びピペラジノンのような窒素含有極性溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、及びスルホランのようなスルホキシド及びスルホン溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、及びアセトフェノンのようなケトン溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、及びテトラヒドロフランのようなエーテル溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、二塩化エチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、モノクロロエタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、ペルクロロエタン、及びクロロベンゼンのようなハロゲン含有炭化水素溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールのようなアルコール及びフェノール溶媒;並びに、ベンゼン、トルエン、及びキシレンのような芳香族炭化水素溶媒;を挙げることができる。更に、溶媒は、単独か又はその2以上の混合物として用いることができる。
[0050]有機溶媒による洗浄は、出発ポリアリーレンスルフィドを有機溶媒中に浸漬し、必要に応じて加熱又は撹拌することによって行うことができる。有機溶媒洗浄に関する洗浄温度は特に重要でなく、温度は一般に約20℃〜約300℃であってよい。洗浄温度を上昇させることによって洗浄効率を増加させることができるが、一般に、満足できる効果は約20℃〜約150℃の洗浄温度において得られる。
[0051]一態様においては、洗浄は、圧力容器内において、有機溶媒の沸点よりも高い温度において加圧下で行うことができる。洗浄時間は重要ではなく、バッチ式洗浄に関しては洗浄は一般に約5分間以上行うことができる。しかしながらバッチ式洗浄は必須要件ではなく、洗浄は連続法で行うことができる。
[0052]一態様においては、有機溶媒洗浄を熱水洗浄及び/又は温水洗浄と組み合わせることができる。N−メチルピロリドンのような高沸点の有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒洗浄の後に水又は温水で洗浄することによって残留有機溶媒を除去することができ、この洗浄のためには蒸留水又は脱イオン水を用いることができる。
[0053]重合反応装置は特に限定されないが、高粘度流体の形成において通常的に用いられている装置を用いることが通常は望ましい。かかる反応装置の例としては、アンカータイプ、多段式タイプ、螺旋リボンタイプ、スクリューシャフトタイプなど、或いはこれらの変形形状のような種々の形状の撹拌ブレードを有する撹拌装置を有する撹拌タンクタイプの重合反応装置を挙げることができる。かかる反応装置の更なる例としては、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー等のような混練において通常的に用いられている混合装置が挙げられる。重合の後、溶融した出発ポリアリーレンスルフィドを、通常は所望の構造のダイを取り付けた押出オリフィスを通して反応器から排出し、冷却し、回収することができる。通常は、有孔ダイを通して出発ポリアリーレンスルフィドを排出してストランドを形成し、これを水浴中で巻き取り、ペレット化し、乾燥することができる。出発ポリアリーレンスルフィドはまた、ストランド、顆粒、又は粉末の形態であってもよい。
[0054]溶融加工して溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する混合物には、混合物の重量基準で約40重量%〜約90重量%、例えば混合物の重量基準で約45重量%〜約80重量%の量の出発ポリアリーレンスルフィド(又は複数の出発ポリアリーレンスルフィドのブレンド)を含ませることができる。
[0055]混合物中に含ませる出発ポリアリーレンスルフィドポリマー又はコポリマー(1種類以上の出発ポリアリーレンスルフィドポリマー及び/又はコポリマーのブレンドを包含することもできる)は、比較的高い分子量を有していてよい。例えば、出発ポリアリーレンスルフィドは、約25,000g/モルより大きく、又は約30,000g/モルよ
り大きい数平均分子量、及び約60,000g/モルより大きく、又は約65,000g/モルより大きい重量平均分子量を有していてよい。高分子量の出発ポリアリーレンスルフィドは、例えば約1000ppm未満、約900ppm未満、約600ppm未満、又は約400ppm未満の低い塩素含量を有することができる。
[0056]一態様においては、出発ポリアリーレンスルフィドは高い分子量及び高い溶融粘度を有していてよい。例えば、出発ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度は、ISO試験No.11443にしたがって1200秒−1の剪断速度及び310℃の温度において測定して約2,500ポイズより高く、約3,000ポイズより高く、又は約3,500ポイズより高くてよい。
B.ジスルフィド化合物:
[0057]溶融加工して溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する混合物には、ジスルフィド化合物を含ませることができる。一般に、ジスルフィド化合物は式(VIII):
−S−S−R (VIII)
(式中、R及びRは、同一か又は異なっていてよく、独立して1〜約20個の炭素原子を含む炭化水素基である)
の構造を有していてよい。例えば、R及びRは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又は複素環式基であってよい。
[0058]R及びRは、ジスルフィド化合物の1つ又は複数の末端における反応性官能基を含んでいてよい。例えば、R及びRの少なくとも1つは、末端カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換又は非置換アミノ基、ニトロ基などを含んでいてよい。溶融加工のための混合物の形成において出発ポリアリーレンスルフィドと混合することができるような反応性末端基を含むジスルフィド化合物の例としては、限定なしに、2,2’−ジアミノジフェニルジスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルジスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジチオサリチル酸、ジチオグリコール酸、α,α’−ジチオジ乳酸、β,β’−ジチオジ乳酸、3,3’−ジチオジピリジン、4,4’−ジチオモルホリン、2,2’−ジチオビス(ベンゾチアゾール)、2,2’−ジチオビス(ベンズイミダゾール)、2,2’−ジチオビス(ベンゾオキサゾール)、及び2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを挙げることができる。
[0059]一態様においては、ジスルフィド化合物は1つ又は複数の末端に非反応性官能基を含んでいてよい。例えば、R及びR基は、同一か又は異なっていてよく、1〜約20個の炭素原子のアルキル、シクロアルキル、アリール、及び複素環式基からなる群から独立して選択される非反応性基であってよい。溶融加工のための混合物の形成において出発ポリアリーレンスルフィドと混合することができるような非反応性末端基を含むジスルフィド化合物の例としては、限定なしに、ジフェニルジスルフィド、ジナフチルジスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、及びジプロピルジスルフィドを挙げることができる。
[0060]溶融加工して溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する混合物には、混合物の重量基準で約0.1重量%〜約3重量%、例えば混合物の重量基準で約0.1重量%〜約1重量%の量のジスルフィド化合物を含ませることができる。
[0061]混合物の形成において用いる出発ポリアリーレンスルフィドの量とジスルフィド化合物の量との比は、約1000:1〜約10:1、約500:1〜約20:1、又は約400:1〜約30:1であってよい。一般に、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の所望の溶融粘度を発現させるのに十分なジスルフィド化合物を混合物に加えなければ
ならない。しかしながら過度に多いジスルフィド化合物を混合物に加えると、溶融加工中にジスルフィド化合物と混合物の他の成分との間に望ましくない相互作用が引き起こされる可能性がある。
C.充填剤:
[0062]出発ポリアリーレンスルフィド及びジスルフィド成分に加えて、充填剤を溶融加工する混合物の一成分とすることができる。充填剤は、一般に混合物の重量基準で約5重量%〜約70重量%、又は約20重量%〜約65重量%の量で混合物中に含ませることができる。
[0063]有益には、充填剤は、従来公知のポリアリーレンスルフィド組成物形成技術においてしばしば見られるような溶融加工後の工程中ではなく、混合物の他の成分と混合することができる。更に、ジスルフィド化合物と出発ポリアリーレンスルフィドとの間の相互作用によって得られる溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物のより低い溶融粘度によって、溶融加工中の充填剤の分解を抑止し、充填剤の寸法を維持して、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物に優れた強度特性を与えることができると考えられる。
[0064]一態様においては、充填剤は繊維充填剤であってよい。繊維は、通常は約0.5mm〜約5.0mmの長さのものである。繊維充填剤としては、限定なしにポリマー繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維など、又は複数の繊維タイプの組み合わせなどの1以上の繊維タイプを挙げることができる。一態様においては、繊維はガラス短繊維又はガラス繊維粗紡糸(トウ)であってよい。
[0065]繊維の直径は、用いる特定の繊維によって変化してよく、短繊維形態又は連続形態のいずれかで入手できる。繊維は、例えば、約100μm未満、例えば約50μm未満の直径を有していてよい。例えば、繊維は短繊維又は連続繊維であってよく、約5μm〜約50μm、例えば約5μm〜約15μmの繊維径を有していてよい。
[0066]繊維長さは変化してよい。一態様においては、繊維は約3mm〜約5mmの初期長さを有していてよい。混合物中のジスルフィド化合物と出発ポリアリーレンスルフィドとの組み合わせによる溶融加工条件によって、加える繊維の過度の分解を抑止することができ、その結果、繊維は混合物の溶融加工中においてより少ない摩滅を示すことができる。例えば、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物における最終繊維長さは、約200μm〜約1500μm、又は約250μm〜約1000μmの範囲にすることができる。
[0067]繊維は、混合物の溶融加工中において出発ポリアリーレンスルフィドとの混合を促進させることもできるサイジング剤で予め処理することができる。
[0068]一態様においては、繊維は高いイールド又は小さいK値を有していてよい。トウはイールド又はK値によって示される。例えば、ガラス繊維トウは、50イールド以上、例えば約115イールド〜約1200イールドを有することができる。
[0069]他の充填剤を代わりに用いるか、或いは繊維充填剤と組み合わせて用いることができる。例えば、ポリアリーレンスルフィド組成物中に粒子状充填剤を含ませることができる。一般に、粒子状充填剤は、約750μm未満、例えば約500μm未満、又は約100μm未満の中央粒径を有する任意の粒子状材料を包含することができる。一態様においては、粒子状充填剤は約3μm〜約20μmの範囲の中央粒径を有していてよい。更に、粒子状充填剤は公知なように中実又は中空であってよい。粒子状充填剤にはまた、当該技術において公知なように表面処理を含ませることもできる。
[0070]複数の充填剤、例えば粒子状充填剤及び繊維充填剤を含ませる場合には、充填剤は溶融加工ユニットに一緒か又は別々に加えることができる。例えば、粒子状充填剤を、繊維充填剤を加える前に、ポリアリーレンスルフィドと共にか又はその下流で主供給材料に加えることができ、繊維充填剤は粒子状充填剤の添加位置の更に下流で加えることができる。一般に、繊維充填剤は粒子状充填剤のような任意の他の充填剤の下流で加えることができるが、これは必須要件ではない。
[0071]用いる場合には、かかる無機充填剤は、通常は、繊維の約5重量%〜約60重量%、幾つかの態様においては約10重量%〜約50重量%、幾つかの態様においては約15重量%〜約45重量%を構成する。クレイ鉱物は本発明において用いるのに特に好適な可能性がある。かかるクレイ鉱物の例としては、例えば、タルク(MgSi10(OH))、ハロイサイト(AlSi(OH))、カオリナイト(AlSi(OH))、イライト((K,HO)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10[(OH),(HO)])、モンモリロナイト(Na,Ca)0.33(Al,Mg)Si10(OH)・nHO)、バーミキュライト((MgFe,Al)(Al,Si)10(OH)・4HO)、パリゴルスカイト((Mg,Al)Si10(OH)・4(HO))、パイロフィライト(AlSi10(OH))等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。クレイ鉱物の代わりか又はそれに加えて、更に他の無機充填剤を用いることもできる。例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、マイカ、珪藻土、珪灰石などのような他の好適なシリケート充填剤を用いることもできる。例えば、マイカは本発明において用いるのに特に好適な鉱物である可能性がある。地質学的存在状態における相当な相違を有する幾つかの化学的に異なるマイカ種が存在するが、全て実質的に同じ結晶構造を有する。本明細書において用いる「マイカ」という用語は、モスコバイト(KAl(AlSi)O10(OH))、バイオタイト(K(Mg,Fe)(AlSi)O10(OH))、フロゴパイト(KMg(AlSi)O10(OH))、レピドライト(K(Li,Al)2〜3(AlSi)O10(OH))、グローコナイト(K,Na)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10(OH))等、並びにこれらの組み合わせのような任意のこれらの種を総称的に包含すると意図される。
D.他の添加剤:
[0072]出発ポリアリーレンスルフィド、ジスルフィド化合物、及び充填剤に加えて、当該技術において一般的に知られているような他の添加剤を混合物中に含ませることができる。
[0073]一態様においては、混合物に有機シランカップリング剤を含ませることができる。いかなる特定の理論にも縛られることは望まないが、ジスルフィド化合物と有機シランカップリング剤との間の相互作用によって、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物中における充填剤の利益を向上させることができると考えられる。
[0074]有機シランカップリング剤は、当該技術において公知のアルコキシシランカップリング剤であってよい。アルコキシシラン化合物は、ビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるシラン化合物であってよい。用いることができるビニルアルコキシシランの例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランが挙げられる。用いることができるエポキシアルコキシシランの例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及びγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。用いることができるメルカプトアルコキシシランの例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びγ−
メルカプトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
[0075]混合物中に含ませることができるアミノシラン化合物は、通常は、式:R−Si−(R(式中、Rは、NHのようなアミノ基;約1〜約10個の炭素原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアミノアルキル、例えばアミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルなど;約2〜約10個の炭素原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアルケン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなど;及び約2〜約10個の炭素原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアルキン、例えばエチン、プロピン、ブチンなどからなる群から選択され;Rは、約1〜約10原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシなどである)
のものである。
[0076]一態様においては、Rは、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、エチレン、エチン、プロピレン、及びプロピンからなる群から選択され、Rは、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基からなる群から選択される。他の態様においては、Rは、約2〜約10個の炭素原子のアルケン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなど、並びに約2〜約10個の炭素原子のアルキン、例えばエチン、プロピン、ブチンなどからなる群から選択され、Rは、約1〜約10原子のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などである。また、種々のアミノシランの組み合わせを混合物中に含ませることもできる。
[0077]混合物中に含ませることができるアミノシランカップリング剤の幾つかの代表例としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、エチレントリメトキシシラン、エチレントリエトキシシラン、エチントリメトキシシラン、エチントリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン又は3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−アミノプロピル)テトラメトキシシラン、ビス(3−アミノプロピル)テトラエトキシジシロキサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アミノシランはまた、アミノアルコキシシラン、例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシランであってもよい。1つの好適なアミノシランは、Degussa、Sigma Chemical Company、及びAldrich Chemical Companyから入手できる3−アミノプロピルトリエトキシシランである。
[0078]含ませる場合には、混合物に、混合物の重量基準で約0.1重量%〜約5重量%、混合物の重量基準で約0.3重量%〜約2重量%、又は混合物の重量基準で約0.2重量%〜約1重量%の量の有機シランカップリング剤を含ませることができる。
[0079]溶融加工する混合物中に耐衝撃性改良剤を含ませることができる。一態様においては、耐衝撃性改良剤にはポリエチレン及びグリシジルメタクリレートのランダムコポリマーを含ませることができる。ランダムコポリマー中に含ませるグリシジルメタクリレートの量は変化させることができる。1つの特定の態様においては、ランダムコポリマーは、コポリマーの約6重量%〜約10重量%の量のグリシジルメタクリレートを含む。
[0080]用いることができる他の耐衝撃性改良剤としては、ポリウレタン、ポリブタジエンとスチレン−アクリロニトリルの2相混合物(ABS)、変性ポリシロキサン又はシリコーンラバー、或いはポリジエンベースのエラストマー性単一相コア及び硬質グラフトシェルのグラフトコポリマー(コア−シェル構造)が挙げられる。
[0081]グラフトコポリマー耐衝撃性改良剤を考えると、耐衝撃性改良剤は、その大部分、例えばその70%超がコア及び1以上のシェルから構成される構造を有する粒子から構成される。コアは、2以上の層から構成することができる硬質シェルをその上にグラフトしたエラストマー性ポリマー相から形成することができる。コアは、一般にエラストマー性軟質相の単一相であり、存在する場合であってもシェルの硬質ポリマー成分は少量しか含まない。グラフトコポリマーは、40〜95重量%、60〜90重量%、又は70〜80重量%のエラストマー性コアから構成することができる。シェルの割合は、5〜60重量%、10〜40重量%、又は20〜30重量%であってよい。
[0082]本発明に包含される他の耐衝撃性改良剤としては、ポリウレタン、例えば熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。ポリウレタン耐衝撃性改良剤は、公知の方法で、ポリイソシアネート、特にジイソシアネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリアセタール、又は他の好適なヒドロキシ若しくはアミノ化合物、例えばヒドロキシル化ポリブタジエン、或いは上述の化合物の混合物の重付加によって製造される。適当な場合には、低分子量ポリオール、特にジオール、ポリアミン、特にジアミン、又は水のような連鎖延長剤も使用される。
[0083]混合物中に含ませることができる更に他の添加剤は、限定なしに、抗菌剤、顔料、潤滑剤、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、流動促進剤、固体溶媒、並びに特性及び加工性を向上させるために加える他の材料を包含することができる。かかる随意的な材料は混合物中において通常の量で用いることができる。
III.技術:
[0084]出発ポリアリーレンスルフィド、ジスルフィド化合物、及び充填剤を含む混合物は、混合物を溶融加工装置又はシステムに加える前に形成することができる。或いは、個々の成分を溶融加工装置又はシステムに加えて、それによって溶融加工と同時に混合物を形成することができる。
[0085]混合物は、当該技術において公知の技術にしたがって溶融加工することができる。例えば、混合物は、一軸又は多軸押出機内において、約250℃〜約320℃の温度で溶融混練することができる。一態様においては、混合物は、複数の温度区域を含む押出機内で溶融加工することができる。例えば、約250℃〜約320℃の間の温度に維持した温度区域を含む押出機内で混合物を溶融加工することができる。
[0086]一例として、Leistritz18mm同時回転完全噛み合い二軸押出機のような二軸
押出機を用いて、出発ポリアリーレンスルフィド、ジスルフィド化合物、及び充填剤を含む混合物を溶融混合することができる。押出機は、複数の温度制御区域、例えば約6個の温度制御区域(押出ダイにおけるものを含む)、及び30の全L/Dを有していてよい。一般目的のスクリューデザインを用いて混合物を溶融加工することができる。一態様においては、定量供給機を用いて全ての成分を含む混合物を第1のバレル内の供給口に供給することができる。他の態様においては、公知なように、異なる成分を押出機内の異なる添加位置において加えることができる。混合物を溶融及び混合し、次にダイを通して押出すことができる。押出された溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、次に水浴中で急冷して固化させ、ペレット化機内で粒状にし、次に乾燥、例えば約120℃において乾燥することができる。
IV.生成物:
[0087]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物から物品を形成するための通常の成形プロセスとしては、限定なしに、押出、射出成形、ブロー成形、熱成形、発泡、圧縮成形、熱間鍛造、繊維紡糸などが挙げられる。形成することができる成形物品としては、例えば電気器具、電気材料、電子製品、繊維ウエブ、及び自動車工学熱可塑性材料アセンブリのための構造及び非構造成形部品を挙げることができる。代表的な自動車成形プラスチック部品は、ボンネット内部用途、例えば幾つか例を挙げると、ファンカバー、支持部材、配線及びケーブル外被材、カバー、ハウジング、バッテリー皿、バッテリーケース、ダクト、電気ハウジング、ヒューズバスハウジング、ブロー成形容器、不織又は織成ジオテキスタイル、バグハウスフィルター、膜、及びポンドライナーのために好適である。成形品、押出品、及び繊維に加えて、他の有用な物品としては、壁パネル、頭上収納ロッカー、配膳用トレイ、シートバック、客室パーティション、窓カバー、及び集積回路トレイのような電子実装ハンドリングシステムが挙げられる。
[0088]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、低い塩素含量が望ましい種々の電気及び電子用途において用いることができる。例えば、コネクター及びオーバーモールド(インサートモールド)部品の形成における溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の使用が包含される。低溶融粘度で低塩素含量の溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は種々のコネクター用途において有益である。
[0089]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物はまた、それを高温用途のために優れた材料にする良好な熱特性も示す。例えば、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の高いDTULのために、それらは無鉛ハンダ加工のための優れた候補物質であり、またインサートモールド部品、例えば高温塗装プロセスにかけられる可能性があるもののためにも有益である。
[0090]一態様によれば、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、電気コネクターの形成において用いることができる。図1〜2を参照すると、例えば印刷回路基板(図示せず)に実装するためか又はコンピューターに外部部品を接続するために用いることができる電気コネクター200を形成することができる。電気コネクター200は、絶縁性のハウジング210、絶縁性のハウジング210中に挿入されている複数の接点モジュール230、及び絶縁性のハウジング210を被包するシールド220を含む。電気コネクター200は直列状で、実装面201、及び実装面201の反対側の嵌合面202を画定する。しかしながら、本明細書に記載する溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を含む電気コネクターの具体的な形状は、いかなるようにも図1の態様に限定されないことを理解すべきである。
[0091]絶縁性のハウジング210及びシールド220は、それぞれ溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物で一体成形されている1ピース構造体であってよく、これは同一であっても互いと異なっていてもよい。シールド220は第1のシェル221及び第2のシェル222を含む2ピース構造体であってよく、それぞれのシェルは本明細書に記載する同じか又は異なる溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物で形成することができる。絶縁性のハウジング210は、基部211、及び基部211から上向きに伸長しており、相補プラグ(図示せず)と上下方向に嵌合させるための長方形の嵌合ポート212を有する。基部211は、その中に複数の接点モジュール230を受容するための下向きの縦方向の空洞部を画定する。絶縁性のハウジング210の嵌合ポート212は、前壁321、前壁321に平行な後壁322、及び前壁321と後壁322を接続する一対の側壁323を有する。嵌合ポート212は、前壁321及び後壁322に平行でその間を伸長している舌状プレート224を含む。通路225によって、接点モジュール230とそれに電気
コネクターを接続することができるデバイスとの間の接触が可能になる。
[0092]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、金属体の上に溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の被覆を含むオーバーモールドを形成するために有用である。金属体は、種々の金属基部、或いは無機材料及び/又は有機材料を用いて前もって形成された下塗り層を有する金属基部のいずれかであってよい。
[0093]金属基部材料としては、限定なしに、アルミニウム、鉄、チタン、クロム、ニッケル、及びこれらの金属の少なくとも1つを含む合金、例えばジュラルミン、炭素鋼、及びステンレススチールを挙げることができ、これらは耐熱性、耐腐食性、接着特性、機械特性、経済性などを与えることができる。
[0094]オーバーモールドは、金属基部上に溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の少なくとも1つの被覆層を与えることによって形成することができる。一例として、被覆プロセスには金属基部の予備処理を含ませることができ、これは被覆層を形成する前に行う。予備処理によって、金属基部と被覆層との間の接着を向上させることができる。予備処理としては、一般に、洗浄、表面粗化、又は表面変性、或いはこれらの組み合わせが挙げられる。
[0095]洗浄は、洗浄剤、溶媒、酸又はアルカリ、或いは脱錆剤を用いるか、物理的方法(サンドブラスト、ホーニングなど)によるか、又は高温加熱処理による錆又はバリの除去処理によって行うことができる。表面粗化は、例えば、酸化剤、電解酸化による化学的粗化処理、或いはサンドブラストのような物理的方法であってよい。表面変性によって、被覆層に対する金属基部の接着を向上させることができる。これとしては、(例えば酸化剤を用いるか、又は電解酸化若しくは高温酸化による)表面酸化処理、表面窒化処理、或いは(水蒸気処理による)表面ヒドロキシル化処理を挙げることができる。
[0096]場合によっては、例えば金属基部と被覆層との間の線膨張率の差を減少させ、金属基部と被覆層との間の接着を向上させ、及びその被覆処理による金属基部の腐食を抑止するために、下塗りを施すことができる。含ませる場合には、下塗りとしては、セラミック層、ガラス層、及びサーメット層のような無機材料の層、並びに被覆層と同じ種類又は被覆層と異なる種類の層を挙げることができる。被覆方法としては、限定なしに、スラリー被覆、粉末被覆、流動床被覆、及び静電被覆を挙げることができる。
[0097]予備処理及び任意の1つ又は複数の下塗り層の形成の後、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を金属基部の上に被覆して被覆層を形成することができる。被覆層は、限定なしにスラリー被覆、粉末被覆、流動床被覆、及び静電被覆などの当該技術において一般的に知られている任意の標準的な被覆方法にしたがって形成することができる。
[0098]オーバーモールドの適用目的に応じて、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物の層及び下塗りと異なる種類の被覆層を、中間被覆層又は上塗りとして更に施すことができる。例えば、フルオロプラスチック又はフッ素化ポリマー組成物の上塗りを溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物被覆層の上に形成することができる。
[0099]オーバーモールドは、自動車、トラック、民間航空機、航空宇宙、鉄道、家庭用電気機器、コンピューターハードウエア、携帯機器、娯楽及びスポーツ用の部品、機械用の構造部品、建築物用の構造部品等のような広範囲の用途において用いることができる。
[00100]無線電子機器は、本明細書において開示する溶融加工ポリアリーレンスルフィ
ド組成物を含ませるのに特に好適である。例えば、オーバーモールドは、無線電子機器用
のハウジングとして機能させることができる。かかる態様においては、オーバーモールド成形の前にアンテナを金属部品の上及び/又はその中に配置することができる。金属部品それ自体をアンテナの一部として用いることもできる。例えば、金属部品の一部を一緒に短絡させて、その中にグランドプレーンを形成するか、或いは印刷回路基板構造(例えばアンテナ構造を形成するのに用いられる印刷回路基板構造)のような平面状の回路構造から形成されるグランドプレーン構造を拡大することができる。或いは、成形プロセス中に溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物内にアンテナを埋封することもできる。金属スタンピング、ブッシング、電気機械パーツ、濾波材料、金属強化材、並びに注意深く配置されたパーツの周りに熱可塑性材料を射出することによって単一の一体部品に結合させた他の別個のパーツのような他の別個の部品を、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物内に埋封することもできる。
[00101]好適な無線電子機器の例としては、デスクトップコンピューター又は他のコン
ピューター機器、ポータブル電子機器、例えばラップトップコンピューター、又は時には「超軽量型」と呼ばれるタイプの小型のポータブルコンピューターを挙げることができる。1つの好適な配置においては、ポータブル電子機器は携帯型の電子機器であってよい。ポータブル及び携帯型の電子機器の例としては、携帯電話、無線通信機能を有するメディアプレイヤー、ハンドヘルドコンピューター(時には携帯情報端末とも呼ばれる)、リモートコントロール、全地球測位システム(GPS)機器、及び携帯型ゲーム機器を挙げることができる。この機器はまた、複数の従来の機器の機能を合わせた複合型機器であってもよい。複合型機器の例としては、メディアプレイヤーの機能を含む携帯電話、無線通信機能を含むゲーム機器、ゲーム及びeメール機能を含む携帯電話、並びに、eメールを受信し、携帯電話の呼び出しをサポートし、音楽プレイヤーの機能を有し、ウエブ閲覧をサポートする携帯機器が挙げられる。
[00102]図3〜4を参照すると、無線電子機器100の1つの特定の態様をラップトッ
プコンピューターとして示す。電子機器100は、基部部材106に回転可能に接続されているディスプレイ部材103を含む。ディスプレイ部材103は、液晶ダイオード(LCD)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は任意の他の好適なディスプレイであってよい。ディスプレイ部材103及び基部部材106は、それぞれ電子機器100の1以上の部品を保護及び/又は支持するためのハウジング(それぞれ86及び88)を含む。ハウジング86は例えばディスプレイスクリーン120を支持することができ、基部部材106には、種々のユーザーインターフェース部品のための空洞部及びインターフェース(例えばキーボード、マウス、及び他の周辺機器への接続手段)を含ませることができる。
[00103]オーバーモールドは、一般に電子機器100の任意の部分を形成するために用
いることができる。しかしながら殆どの態様においては、オーバーモールドはハウジング86及び/又は88の全部又は一部を形成するために用いる。例えば、図3に示すハウジング86はオーバーモールドから形成され、金属部品162の内表面(図示せず)に付着されている溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物160を含む。この特定の態様においては、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物160はストリップの形態であり、これは場合によってはハウジング86内に配されているアンテナ(図示せず)を覆うことができる。勿論、アンテナ及び/又は溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物160は、角部に隣接するか、端部に沿うか、又は任意の他の好適な位置のようなハウジング86の他の位置に配することができる。しかしながら、溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物160及び金属部品162によって形成される得られるオーバーモールドは、ハウジング86の外表面163を画定する。外表面163は一般に平滑であり、上記に示す通りであり、同様の色及び外観を有する。
[00104]明白に示してはいないが、機器100にはまた、記憶装置、処理回路、及び入
力−出力コンポーネントのような当該技術において公知の回路を含ませることもできる。回路内の無線送受信機回路を用いて、高周波(RF)信号を送信及び受信することができる。同軸通信路及びマイクロストリップ通信路のような通信路を用いて、送受信機回路とアンテナ構造体との間で高周波信号を伝達することができる。通信路を用いて、アンテナ構造体と回路との間で信号を伝達することができる。通信路は、例えばRF送受信機(時にはラジオと呼ばれる)と多周波帯アンテナとの間を接続する同軸ケーブルであってよい。
[00105]本発明の幾つかの態様を以下の実施例によって示すが、これらは単に幾つかの
態様の例示の目的のものであり、本発明の範囲又は本発明を実施することができる方法を限定するものとはみなされない。他に具体的に示さない限りにおいて、部及びパーセントは重量基準で与える。
試験方法:
[00106]溶融粘度:溶融粘度は走査剪断速度粘度として報告する。ここで報告する走査
剪断速度粘度は、ISO試験No.11443(ASTM−D3835と技術的に同等である)にしたがって、1200秒−1の剪断速度及び310℃の温度において、Dynisco 7001毛細管流量計を用いて測定した。流量計オリフィス(ダイ)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、及び180°の入口角を有していた。バレルの直径は9.55mm±0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
[00107]引張弾性率、引張応力、及び引張伸び:ISO試験No.527(ASTM−
D638と技術的に同等である)にしたがって引張特性を試験した。80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する同じ試験片試料について、弾性率及び強度の測定を行った。試験温度は23℃であり、試験速度は5mm/分であった。
[00108]曲げ弾性率、曲げ応力、及び曲げ歪み:ISO試験No.178(ASTM−
D790と技術的に同等である)にしたがって曲げ特性を試験した。この試験は64mmの支持スパンに関して行った。試験は、未切断のISO−3167多目的棒材の中央部分について行った。試験温度は23℃であり、試験速度は2mm/分であった。
[00109]ノッチ付きアイゾッド衝撃強さ:ISO試験No.80(ASTM−D256
と技術的に同等である)にしたがってノッチ付きアイゾッド特性を試験した。この試験は、タイプAのノッチを用いて行った。試験片は、一枚歯フライス盤を用いて多目的棒材の中央部分から切り出した。試験温度は23℃であった。
[00110]荷重撓み温度(DTUL):ISO試験No.75−2(ASTM−D648
−07と技術的に同等である)にしたがって荷重撓み温度を測定した。80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する試験片試料を、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8MPaである沿層方向3点曲げ試験にかけた。試験片をシリコーン油浴中に降下させ、0.25mm(ISO試験No.75−2に関しては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させた。
[00111]塩素含量:塩素含量は、Parr Bomb燃焼を用いる元素分析、次にイオンクロマトグラフィーにしたがって測定した。
[00112]繊維長さ:出発繊維長さは繊維の供給源から報告された通りであった。最終繊
維長さは平均繊維長さとして報告し、走査電子顕微鏡を用いて測定した。
実施例1:
[00113]以下のような押出プロセスで試料を形成した。
[00114]25mmの直径を有するWerner Pfleiderer ZSK-25同時回転噛み合い二軸押出
機内で下記に記載する成分を混合した。Mannesmann Demag D100 NCIII射出成形機上で試
料を成形した。
[00115]用いた材料は以下のものを含んでいた。
潤滑剤:Allendale, New JerseyのLonza, Inc.から入手できるGlycolube(登録商標)P(ペンタエリトリトールテトラステアレート);
非官能性ジスルフィド:ジフェニルジスルフィド;
官能性ジスルフィド:2,2’−ジチオ安息香酸;
アミノシランカップリング剤:Shin-etsu Siliconeから入手できる3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903);
メルカプトシランカップリング剤:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン:Evonik-Silanesから入手できるDynasylan(登録商標)MTMO;
無機充填剤:Imerys Performance Mineralsから入手できるSuzorite(登録商標)200-HK;
ガラス繊維:Owens Corning, Inc.から入手できるFiber glass 910A-10C 4mm;
ポリアリーレンスルフィド:Ticona Engineering Polymersから入手できるFortron(登録商標)0214ポリフェニレンスルフィド。
[00116]それぞれの試験した材料の具体的な配合量を下表1に与える。
Figure 0006797751
[00117]押出したペレットを灰分含量及び粘度に関して試験し、結果を下表2に記載す
る。
Figure 0006797751
[00118]ペレットを射出成形し、下表3に記載するような幾つかの物理特性に関して試
験した。
Figure 0006797751
[00119]全ての配合物において高分子量の出発ポリフェニレンスルフィド(Mn=29
989、Mw=65245、多分散度(PDI)=2.18)を用いて低塩素化合物を得た。ジスルフィド添加剤又はシラン添加剤のいずれも含ませなかった試料(試料001)においては、引張弾性率及び曲げ弾性率などの機械特性、並びに熱特性(荷重撓み温度)は劣っていた。
[00120]ジスルフィド添加剤を用いないでシラン添加剤を含ませた場合(試料002)
は、機械特性が多少向上した。しかしながら、試料の溶融粘度が高く、これによってガラス繊維の摩滅が引き起こされた(より短いガラス繊維長さ)ために、荷重撓み温度はなお劣っていた。かかる高い溶融粘度は幾つかの用途に関して加工の問題を引き起こす可能性がある。
[00121]シラン添加剤を用いないでジスルフィド化合物のみを加えた場合(試料003
)は、荷重撓み温度は向上したが、機械特性はなお劣っていた。
[00122]ジスルフィド及びシラン添加剤の両方を含ませた試料(試料004)の特性は
、加工のために良好な溶融粘度をなお維持しながら、向上した機械特性及び荷重撓み温度によって測定される熱特性の両方を有することが分かる。
[00123]メルカプトシランカップリング剤を用いると(試料005)、加工のために良
好な溶融粘度をなお維持しながら、より高いノッチ付きアイゾッド強さ及び荷重撓み温度を有する試料を与えた。
[00124]官能性ジスルフィド化合物を含ませた試料(試料006)は、有機シランとジ
スルフィド化合物の官能基との間のカップリング反応のために僅かにより高い溶融粘度を有しているが、この溶融粘度は未だ加工可能なものであり、良好な強度及び熱特性を有していた。
実施例2:
[00125]実施例1に記載した押出プロセスで試料を形成した。
[00126]それぞれの試験した材料に関する具体的な配合を下表4に与える。高分子量出
発ポリアリーレンスルフィドは、実施例1に記載したTicona Engineering Polymersから
入手できるFortron(登録商標)0214ポリフェニレンスルフィドであった。低分子量出発
ポリアリーレンスルフィドは、Ticona Engineering Polymersから入手できるFortron(登録商標)0205ポリフェニレンスルフィド(Mn=23944、Mw=50945、PDI=2.13)であった。他の成分は実施例1に記載の通りであった。
Figure 0006797751
[00127]押出したペレットを灰分含量及び溶融粘度に関して試験し、結果を表5にまと
める。
Figure 0006797751
[00128]試料を射出成形し、表6にまとめるような幾つかの特性に関して試験した。
Figure 0006797751
[00129]表6を参照して分かるように、ジスルフィドを含ませると、良好な機械特性、
及び低分子量出発ポリアリーレンスルフィドから形成された試料よりも低い塩素含量を有する試料が与えられた。
実施例3:
[00130]実施例1に記載した押出プロセスで試料を形成した。
[00131]それぞれの試験した材料に関する具体的な配合を下表7に与える。高分子量出
発ポリアリーレンスルフィドは、実施例1に記載したTicona Engineering Polymersから
入手できるFortron(登録商標)0214ポリフェニレンスルフィドであった。低分子量出発
ポリアリーレンスルフィドは、Ticona Engineering Polymersから入手できるFortron(登録商標)0202ポリフェニレンスルフィド(Mn=16090、Mw=35870、PDI=2.23)であった。耐衝撃性改良剤は、Arkema, Inc.から入手できるLotador(登録
商標)AX-8840EGMAコポリマーであった。ジスルフィド化合物は2,2’−ジチオ安息香
酸であった。他の成分は実施例1に記載の通りであった。
Figure 0006797751
[00132]押出したペレットを灰分含量及び溶融粘度に関して試験し、結果を表8にまと
める。
Figure 0006797751
[00133]試料を射出成形して幾つかの特性に関して試験し、結果を表9にまとめる。
Figure 0006797751
[00134]官能性ジスルフィド添加剤をガラス充填配合物中に加えると、衝撃強さ及び引
張伸びの両方において向上が示された。官能性ジスルフィドとEGMA−タイプの耐衝撃性改良剤との間の架橋反応が溶融粘度の上昇の一因となったが、溶融粘度はなお溶融加工のために好適であった。
[00135]本発明を例示する目的のために幾つかの代表的な態様及び詳細を示したが、本
発明の範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正を本発明において行うことができる
ことは当業者に明らかであろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
溶融加工に使用するためのポリアリーレンスルフィド組成物であって、出発ポリアリー
レンスルフィド、充填剤、及びジスルフィド化合物を含み、該ジスルフィド化合物が、次
の構造:
−S−S−R
(式中、R及びRは、同一か又は異なっていてよく、独立して20個までの炭素原子
を含み、末端カルボキシル基を含むシクロアルキル、アリール、又は複素環式基炭化水素
基である)
を有する組成物。
[請求項2]
請求項1に記載の組成物であって、有機シランカップリング剤を更に含む組成物。
[請求項3]
請求項1又は2に記載の組成物であって、耐衝撃性改良剤を更に含む組成物。
[請求項4]
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物であって、該充填剤が、ガラス繊維、ポリ
マー繊維、炭素繊維、金属繊維、又はこれらの組み合わせから選択される繊維充填剤を含
む組成物。
[請求項5]
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、該充填剤が粒子状充填剤を含む
組成物。
[請求項6]
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物であって、該出発ポリアリーレンスルフィ
ドが、ポリフェニレンスルフィド及び/又は線状ポリアリーレンスルフィドである組成物

[請求項7]
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物が、該組成物の重量基
準で40重量%〜90重量%の出発ポリアリーレンスルフィド、0.1重量%〜3重量%
のジスルフィド化合物、及び5重量%〜70重量%の充填剤を含む組成物。
[請求項8]
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物であって、該出発ポリアリーレンスルフィ
ドの量と該ジスルフィド化合物の量との比が1000:1〜10:1である組成物。
[請求項9]
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物であって、該溶融加工を押出機内で行い、
該押出機が約250℃〜約320℃の温度に維持されている温度区域を含む組成物。
[請求項10]
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物から形成される溶融加工ポリアリーレンス
ルフィド組成物であって、該溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物が、ISO試験N
o.75−2にしたがって1.8MPaの荷重で測定して約200℃より高い荷重撓み温
度を有する組成物。
[請求項11]
請求項10に記載の溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物であって、該溶融加工ポ
リアリーレンスルフィド組成物が、ISO試験No.527にしたがって23℃の温度及
び5mm/分の試験速度で測定して約120MPaより大きい引張応力、及びISO試験
No.75−2にしたがって1.8MPaの荷重で測定して約230℃より高い荷重撓み
温度を有する組成物。
[請求項12]
請求項10に記載の溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を含む電気コネクター又
はオーバーモールド。
[請求項13]
請求項12に記載のオーバーモールドであって、該オーバーモールドが電子機器の部品
であるオーバーモールド。

Claims (15)

  1. 溶融加工に使用するためのポリアリーレンスルフィド組成物であって、出発ポリアリー
    レンスルフィド、充填剤、及びジスルフィド化合物を含み、該ジスルフィド化合物が2,
    2’−ジチオ安息香酸を含み、当該組成物から形成される溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物が、ISO試験No.11443にしたがって1200秒 −1 の剪断速度及び310℃の温度において測定して2747ポイズ未満の溶融粘度を有し、当該溶融加工されたポリアリーレンスルフィド組成物が、1000ppm未満の塩素含量を有する、前記溶融加工に使用するためのポリアリーレンスルフィド組成物。
  2. 請求項1に記載の溶融加工に使用するためのポリアリーレンスルフィド組成物であって、当該組成物から形成される溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物が、ISO試験No.11443にしたがって1200秒 −1 の剪断速度及び310℃の温度において測定して2434ポイズ以下の溶融粘度を有する、前記組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の組成物であって、有機シランカップリング剤を更に含む組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物であって、耐衝撃性改良剤を更に含む組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、該充填剤が、ガラス繊維、ポリ
    マー繊維、炭素繊維、金属繊維、又はこれらの組み合わせから選択される繊維充填剤を含
    む組成物。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、該充填剤が粒子状充填剤を含む
    組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、該出発ポリアリーレンスルフィ
    ドが、ポリフェニレンスルフィド及び/又は線状ポリアリーレンスルフィドである組成物
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物が、該組成物の重量基
    準で40重量%〜90重量%の出発ポリアリーレンスルフィド、0.1重量%〜3重量%
    のジスルフィド化合物、及び5重量%〜70重量%の充填剤を含み、当該組成物中の全成分の合計量が100重量%である、前記組成物。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、該出発ポリアリーレンスルフィ
    ドの量と該ジスルフィド化合物の量との比が1000:1〜10:1である組成物。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、該溶融加工を押出機内で行い、
    該押出機が250℃〜320℃の温度に維持されている温度区域を含む組成物。
  11. 当該出発ポリアリーレンスルフィドが、25,000g/モルより大きい数平均分子量、及び60,000g/モルより大きい重量平均分子量を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物から形成される溶融加工ポリアリーレン
    スルフィド組成物であって、該溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物が、ISO試験
    No.75−2にしたがって1.8MPaの荷重で測定して200℃より高い荷重撓み温
    度を有する組成物。
  13. 請求項12に記載の溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物であって、該溶融加工ポ
    リアリーレンスルフィド組成物が、ISO試験No.527にしたがって23℃の温度及
    び5mm/分の試験速度で測定して120MPaより大きい引張応力、及びISO試験
    No.75−2にしたがって1.8MPaの荷重で測定して230℃より高い荷重撓み
    温度を有する組成物。
  14. 請求項12に記載の溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を含む電気コネクター又
    はオーバーモールド。
  15. 請求項14に記載のオーバーモールドであって、該オーバーモールドが電子機器の部品
    であるオーバーモールド。
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