JP2006316207A - 液晶性樹脂組成物およびそれからなるフィルム - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は高い熱滞留安定性を有し、製品のリサイクルにおける再使用時の特性低下が小さく、優れた高周波特性、耐湿熱特性、寸法安定性を有する液晶性樹脂組成物およびそれからなるフィルムに関するものである。
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発され市場に供されているが、中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリエステルなどの液晶性樹脂が優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、電気・電子部品用途を中心とした射出成形品用途で需要が拡大している。
また、液晶性樹脂からなるフィルムは高耐熱性、高寸法安定性、高ガスバリア性、機械特性などに優れた樹脂フィルムであり、回路基板用途などにおいて実用化が検討されている(例えば、特許文献1〜5)。
特開2002−179934号公報(第1〜2頁)
特開平10−130389号公報(第1〜2頁)
特開2004−96040号公報(第1〜2頁)
特開2004−142180号公報(第1〜2頁)
特開2004−175995号公報(第1〜2頁)
しかしながら、これら特許文献に記載されたフィルムは、耐湿熱特性、寸法安定性、摺動特性、制振性、機械特性などの向上を特徴としたものであるが、製品リサイクルにおける再使用時の特性低下が大きいため、近年の資源リサイクルの要求から熱滞留安定性の向上が課題となっている。
本発明は高い熱滞留安定性を有し、製品のリサイクルにおいて、特性の低下が小さく、優れた高周波特性、耐湿熱特性、寸法安定性を有する液晶性樹脂組成物およびそれからなるフィルムの取得を課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、液晶性樹脂とポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂の混合体に特定構造のリン酸エステルを添加することで高い熱滞留安定性を付与することができることを見出し、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は下記に示す通りである。
(1)液晶性樹脂(A)90〜10重量%とポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂(B)10〜90重量%からなる混合体100重量部に対して、下式で示すリン酸エステル(C)を0.01〜0.5重量部添加してなることを特徴とする液晶性樹脂組成物。
(2)混合体中の液晶性樹脂(A)が50重量%以上であり、液晶性樹脂(A)が島成分、PPS樹脂(B)が海成分であることを特徴とする(1)記載の液晶性樹脂組成物。
(3)液晶性樹脂(A)が下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成されることを特徴とする(1)または(2)記載の液晶性樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物からなるフィルム。
(5)フィルムの厚み方向に対して垂直な切断面において観測される島成分のアスペクト比が3以上である(4)記載のフィルム。
本発明は高い熱滞留安定性を有し、製品のリサイクルにおいて、特性を低下させることなく、優れた高周波特性、耐湿熱特性、寸法安定性を有する液晶性樹脂組成物およびそれからなるフィルムを提供することが可能である。
以下、本発明の液晶性樹脂組成物およびそれからなるフィルムについて具体的に説明する。
本発明は液晶性樹脂(A)90〜10wt%とポリフェニレンスルフィド(B)10〜90wt%とが混合された混合体100重量部に対して、下式で表す特定構造のリン酸エステル(C)を0.01〜0.5重量部添加することで該混合体の熱滞留安定性を著しく向上することを見出したものである。ここでいう熱滞留安定性とは、リサイクル時の再溶融混練や再加工の工程において、構成した相構造や両成分の分子量、粘度比、分散状態および、それにより発現する高周波特性、寸法安定性、耐湿熱特性などがリサイクル前と比べて大きく低下しないことである。
本発明で用いられる液晶性樹脂(A)は、異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、エステル結合を有するものが好ましい。例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドなどである。
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族ジオキシ単位としては、例えば、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などから生成した構造単位、アルキレンジオキシ単位としてはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等から生成した構造単位(なかでもエチレングリコールから生成した構造単位が好ましい。)、芳香族イミノカルボニル単位としては、例えば、p−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族ジイミノ単位としては、例えば、1,4−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミノナフタレンなどから生成した構造単位、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールなどから生成した構造単位が挙げられる。
液晶性樹脂(A)の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジカルボン酸および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボンから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−アミノ安息香酸および6−アミノ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミド、p−アミノ安息香酸から生成した構造単位、6−アミノ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジイミノ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミド、p−アミノ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジアミノビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミド、p−アミノ安息香酸から生成した構造単位、エチレンジアミンから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミド、p−アミノ安息香酸から生成した構造単位、エチレンジアミンから生成した構造単位、4,4’−ジアミノビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボンから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミド、p−アミノ安息香酸から生成した構造単位、エチレンジアミンから生成した構造単位、芳香族ジイミノ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられる。
液晶性樹脂(A)の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジカルボン酸および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボンから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−アミノ安息香酸および6−アミノ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミド、p−アミノ安息香酸から生成した構造単位、6−アミノ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジイミノ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミド、p−アミノ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジアミノビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミド、p−アミノ安息香酸から生成した構造単位、エチレンジアミンから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミド、p−アミノ安息香酸から生成した構造単位、エチレンジアミンから生成した構造単位、4,4’−ジアミノビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボンから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミド、p−アミノ安息香酸から生成した構造単位、エチレンジアミンから生成した構造単位、芳香族ジイミノ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられる。
液晶性樹脂(A)の好ましい例としては、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成される液晶性ポリエステルが挙げられる。
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位を、構造単位(III)はハイドロキノンから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸から生成した構造単位を、構造単位(V)はイソフタル酸から生成した構造単位を各々示す。
構造単位(I)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%が好ましく、より好ましくは68〜75モル%である。また、構造単位(II)は構造単位(II)および(III)の合計に対して60〜75モル%が好ましく、より好ましくは65〜73モル%である。また、構造単位(IV)は構造単位(IV)および(V)の合計に対して60〜70モル%が好ましく、より好ましくは62〜68モル%である。
特に、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して62〜68モル%である場合には、本発明の特性である成形加工性がバランス良く発現するため好ましい。
構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計は実質的に等モルであるが、ポリマーの末端基を調節するために芳香族ジカルボン酸成分または芳香族ジヒドロキシ成分を過剰に加えてもよい。すなわち「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットとしては等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
本発明の液晶性樹脂(A)は、上記構造単位(I)〜(V)を構成する成分以外に2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、4,4´ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,3´−ジフェニルジカルボン酸、2,2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、クロロハイドロキノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂肪族、脂環式ジオール、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、m−ヒドロキシ安息香酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸、p−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸などの芳香族アミノカルボン酸、1,4−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミノナフタレンなどの芳香族ジアミン、p−アミノフェノールなどの芳香族ヒドロキシルアミンなどを本発明の特徴を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
本発明において使用する上記液晶性樹脂(A)の製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
例えば、上記の好ましい液晶性樹脂(A)の製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4´−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンとテレフタル酸、イソフタル酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸およびテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
なかでもp−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法が好ましい。
さらに、4,4´−ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノンの合計使用量とテレフタル酸およびイソフタル酸の合計使用量は、実質的に等モルである。無水酢酸の使用量は、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4´−ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノンのフェノール性水酸基の合計の1.15当量以下であることが好ましく、1.10当量以下であることがより好ましく、下限については1.0当量以上であることが好ましい。
本発明の液晶性樹脂(A)を脱酢酸重縮合反応により製造する際に、液晶性樹脂が溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合反応を完了させる溶融重合法が好ましい。例えば、所定量のp−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸、無水酢酸を攪拌翼、留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱し水酸基をアセチル化させた後、液晶性樹脂の溶融温度まで昇温し、減圧により重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。アセチル化させる条件は、通常130〜300℃の範囲、好ましくは135〜200℃の範囲で通常1〜6時間、好ましくは140〜180℃の範囲で2〜4時間反応させる。重縮合させる温度は、液晶性樹脂の溶融温度、例えば、250〜350℃の範囲であり、好ましくは液晶性樹脂の融点+10℃以上の温度である。重縮合させるときの減圧度は通常0.1mmHg(13.3Pa)〜20mmHg(2660Pa)であり、好ましくは10mmHg(1330Pa)以下、より好ましくは5mmHg(665Pa)以下である。なお、アセチル化と重縮合は同一の反応容器で連続して行っても良いが、アセチル化と重縮合を異なる反応容器で行っても良い。
得られたポリマーは、それが溶融する温度で反応容器内を例えば、およそ1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出することができる。溶融重合法は均一なポリマーを製造するために有利な方法であり、ガス発生量がより少ない優れたポリマーを得ることができ、好ましい。
本発明の液晶性樹脂を製造する際に、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。例えば、本発明の液晶性樹脂のポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕し、窒素気流下、または、減圧下、液晶性樹脂の融点−5℃〜融点−50℃(例えば、200〜300℃)の範囲で1〜50時間加熱し、所望の重合度まで重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。固相重合法は高重合度のポリマーを製造するための有利な方法である。
液晶性樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
また、液晶性樹脂の融点は、PPS樹脂への分散性、溶融混練時の熱分解による物性低下の抑制、耐熱性付与の点から280〜360℃が好ましく、より好ましくは285〜350℃、さらに好ましくは290〜335℃である。
ここで融点とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持し、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点とする。
本発明の液晶性樹脂は、数平均分子量は3,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜80,000、より好ましくは8,000〜40,000の範囲である。
なお、この数平均分子量は液晶性ポリエステルが可溶な溶媒を使用してGPC−LS(ゲル浸透クロマトグラフ−光散乱)法により測定することが可能である。
また、本発明における液晶性樹脂の溶融粘度は1〜200Pa・sが好ましく、5〜200Pa・sがより好ましく、さらには10〜150Pa・sが特に好ましい。
なお、この溶融粘度は液晶性ポリエステルの融点+10℃の条件で、ずり速度1,000/sの条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
本発明で用いられるポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂(B)は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。
またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満が、下記の構造のいずれかを有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
本発明で用いるPPS樹脂(B)は、本発明の相構造の形成が可能であれば、リニアタイプであっても、架橋タイプであっても特に限定されない。
かかるPPS樹脂は通常公知の方法即ち特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造できる。本発明において上記の様に得られたPPS樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃である。また、加熱処理時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この両者をコントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明に用いるPPS樹脂は脱イオン処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。
かかる脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶媒洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いても良い。
PPS樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド、スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール、フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上を混合して使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。また有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂を熱水で洗浄処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
PPS樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はPPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するために、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
本発明における液晶性樹脂(A)とPPS樹脂(B)との混合比は、混合体の全体量(液晶性樹脂(A)とPPS樹脂(B)の合計量)を100重量%とした場合に、液晶性樹脂(A)が90〜10重量%すなわちPPS樹脂は10〜90重量%であり、より好ましくは、PPS樹脂が50重量%以下であり、更に好ましくは40重量%以下である。液晶性樹脂の混合割合が多くなる程、本発明の効果である、熱滞留時の物性低下の割合が少なくなるとともに、高周波特性、寸法安定性等の効果が得られやすく好ましい。しかし、PPS樹脂の配合量が10重量%未満では、湿熱特性が十分に得られないため、PPS樹脂の混合量の下限は10重量%であり、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上、最も好ましくは30重量%以上である。
本発明で用いられるリン酸エステル(C)は下式で表される。本発明は特定構造のリン酸エステルの少なくとも一種を液晶性樹脂(A)とPPS樹脂(B)からなる混合体100重量部に対して0.01〜0.5重量部を配合することを特徴とするものである。
上式中のアルキル基は、直鎖または分岐を有する脂肪族アルキル基であり、アルキル基の炭素数は1から20が好ましく、さらに好ましくは10から20,特に好ましくは18から20である。アルキル基の具体例はメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、ペンチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、オクタデシル、ノナドデシルなどが挙げられ、好ましくはデシル、ドデシル、オクタデシル、ノナデシルであり、より好ましくはオクタデシル、ノナデシルである。
アルキル基がオクタデシル、ノナデシルの場合には、本発明の効果である熱滞留時のモルフォロジー保持、特性保持が顕著に得られ好ましい。
また、上式のnは1または2である。水酸基を有するリン酸エステルを用いることで、本発明の効果を得ることができる。
本発明においてリン酸エステル(C)の添加量が液晶性樹脂(A)とPPS樹脂(B)の混合体100重量部に対して0.01重量部未満であるとリサイクル性が低下し、また0.5重量部より多いと同様にリサイクル性が低下し、またフィルムの機械特性が低下することから、リン酸エステル(C)の添加量は液晶性樹脂(A)とPPS樹脂(B)の混合体100重量部に対して0.01〜0.5重量部であり、好ましくは0.05〜0.4重量部、特に好ましくは0.1〜0.3重量部である。
本発明で使用するリン酸エステルは、優れた熱滞留安定性を付与すると同時に、液晶性樹脂とPPS樹脂の混合における相溶性の基点となる末端基間反応をも阻害する能力を有しているために、その混合量が過剰になると、相構造が安定化せず、フィルム特性や熱滞留安定性は逆に低下する。
本発明で用いる前記一般式で表されるリン酸エステル(C)の好ましい化合物としては、脂肪族リン酸エステルが挙げられ具体的にはリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリイソブチル、リン酸トリデシル、リン酸トリドデシル、リン酸トリオクタデシル、リン酸トリノナドデシルなどのリン酸トリC1−20アルキルエステル;前記リン酸トリエステルに対応するリン酸ジC1−20アルキルエステル及びリン酸モノC1−20アルキルエステルなどが挙げられ,、より好ましくはリン酸トリデシル、リン酸トリドデシル、リン酸トリオクタデシル、リン酸トリノナドデシルなどのリン酸トリC10−20アルキルエステル;前記リン酸トリエステルに対応するリン酸ジC10−20アルキルエステル及びリン酸モノC10−20アルキルエステルなどが挙げられ、特に好ましくはリン酸トリオクタデシル、リン酸トリノナドデシルなどのリン酸トリC18−20アルキルエステル;前記リン酸トリエステルに対応するリン酸ジC18−20アルキルエステル及びリン酸モノC18−20アルキルエステルであり、その中でも、リン酸ジオクタデシルとリン酸モノオクタデシルもしくは、その混合物が特に好ましい。
これら、特定のアルキル鎖を有したリン酸ジオクタデシルおよび/またはリン酸モノオクタデシルおよびその混合物を用いることで、本発明の効果である熱滞留安定性が顕著に発揮され好ましい。
また本発明においては、液晶性樹脂(A)とPPS樹脂(B)の相溶性の向上を目的として従来公知の相溶化剤を配合することもできる。これら相溶化剤の具体的な例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランなどの有機シラン化合物、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸などのα,β−不飽和カルボン酸、これらのエステル、無水物、ハロゲン化物、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛などとの塩などの誘導体から選ばれた少なくとも1種の化合物とのランダム、ブロック、グラフト共重合体などの変性ポリオレフィン類、α−オレフィンおよびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体などのエポキシ基含有オレフィン系共重合体および多官能エポキシ化合物、エチレン、メタクリル酸共重合体のナトリウム塩、芳香環にスルホン酸ナトリウム等のペンダントを芳香環に有するスチレン系の共重合体などのアイオノマーなどが挙げられ、これらは2種以上同時に使用することもできる。
また本発明においては、液晶性樹脂(A)とPPS樹脂(B)の相溶性の向上を目的として従来公知の相溶化剤を配合することもできる。これら相溶化剤の具体的な例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランなどの有機シラン化合物、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸などのα,β−不飽和カルボン酸、これらのエステル、無水物、ハロゲン化物、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛などとの塩などの誘導体から選ばれた少なくとも1種の化合物とのランダム、ブロック、グラフト共重合体などの変性ポリオレフィン類、α−オレフィンおよびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体などのエポキシ基含有オレフィン系共重合体および多官能エポキシ化合物、エチレン、メタクリル酸共重合体のナトリウム塩、芳香環にスルホン酸ナトリウム等のペンダントを芳香環に有するスチレン系の共重合体などのアイオノマーなどが挙げられ、これらは2種以上同時に使用することもできる。
本発明の液晶性樹脂組成物は、PPS樹脂(B)成分が連続相(マトリックス、海)、液晶性樹脂(A)成分が分散相(ドメイン、島)となる海島構造を形成した場合には、より高い長期耐湿熱安定性が得られるため好ましい。
PPSが分散相となる場合にも、本発明の効果は得られるが、上記ような相構造を形成することで、湿熱耐性などが顕著に発揮され好ましい。
本発明の液晶性樹脂組成物は、分散相の形状は特に限定されるものではない。
本発明の液晶性樹脂組成物にさらに機械強度その他の特性を付与するために充填材を使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられる。上記充填剤中、ガラス繊維および導電性が必要な場合にはPAN系の炭素繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものであれば特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
充填材の粒子径は、本発明の液晶性樹脂組成物をフィルムとして使用する場合にフィルムの表面性や厚みムラを抑制するために、繊維状の充填材では、繊維径が12μm以下が好ましく、繊維長は250μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以下である。
板状、粒状の充填材では、平均粒子径が14μm以下が好ましく、より好ましくは12μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。
充填材の配合量は特に限定されるものではないが、本発明の液晶性樹脂組成物をフィルムとして使用する場合は、フィルムの表面性や柔軟性の点から液晶性樹脂とPPS樹脂の混合体100重量部に対して、0.5〜30重量、より好ましくは1〜20重量部、更に好ましくは2〜10重量部である。
本発明の液晶性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤リン、リン酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化PPO、臭素化PC、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体(ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、エラストマー、ゴム等)を添加することができる。
本発明においては、通常、押出機を用いて液晶性樹脂(A)およびPPS樹脂(B)成分、を溶融混合し、混合体とすることが好ましい。押出機については本発明の特性が発現する限り特に限定されず、単軸、2軸、ニーダー等を用いることができるが、液晶性樹脂の分散状態を制御するために2軸押出機で混練することが好ましい。
また、リン酸エステル(C)を添加する際、液晶性樹脂、PPS樹脂との好ましい混合方法におけるいずれの段階で添加してもよく、マスターペレット法なども用いることができる。
また、その他の充填材および添加剤を添加する際、液晶性樹脂、PPS樹脂との好ましい混合方法におけるいずれの段階で添加してもよく、マスターペレット法なども用いることができる。
こうして得られる本発明の液晶性樹脂組成物は、公知の方法によってフィルムに加工することができる。なお本発明でいうフィルムは、シートやパイプなどフィルム形態のものを包含するものである。フィルムとしては、単層であっても多層であってもよい。
押出成形やブロー(吹込)成形、インフレーション成形、プレス成形などの公知のフィルム加工法の中でも、フィルムの表面性や厚みムラの点から押出成形が好ましい。
押出成形は例えば、真空ベント機構を有する二軸押出機に、Iダイ、Tダイなどの製膜用のダイを取付、場合によっては押出機のダイヘッドとTダイの間に異物を取り除くポリマーフィルター、供給樹脂量を調節するギアポンプなどを介し、Tダイから吐出したフィルムを、成形ロールで成形し、巻き取り装置で巻き取ることにより、フィルムを得ることができる。
特に厚みムラの少ない幅広のフィルムを得るためには、Tダイはコートハンガー型、フィッシュテール型のダイを用いることが好ましく、特にコートハンガー型が好ましい。
製膜性を向上させるために、ランド長を長くすることが好ましく、ダイ圧を安定化させ厚みムラを低減するためにリップ開度を狭めたものを用いることが好ましく、リップ開度としては0.5mm以下が好ましく、より好ましくは0.3mm未満、更に好ましくは0.1mm以下である。
製膜性を向上させるために、ランド長を長くすることが好ましく、ダイ圧を安定化させ厚みムラを低減するためにリップ開度を狭めたものを用いることが好ましく、リップ開度としては0.5mm以下が好ましく、より好ましくは0.3mm未満、更に好ましくは0.1mm以下である。
Tダイは成形ロールの真上に設置することが好ましく、リップと成形ロールの間の距離(W)は可能な限り短くすることが好ましく、好ましくは50cm以下、より好ましくは30cm以下、更に好ましくは20cm以下、最も好ましくは10cm以下である。
(W)が短い方が、ドラフトを任意で制御することができ、固化前に成形ロールに到達するために表面をより平滑にすることができ好ましい。
成形ロールは、液晶性樹脂の冷却固化が早いために、120℃以上の温度とすることが好ましく、より好ましくは液晶性樹脂の融点−150℃の温度、さらに好ましくは液晶性樹脂の融点−50℃の温度より高い温度にすることが好ましく、より好ましくは融点−40℃の温度より高い温度である。
成形ロールで成形したフィルムは、雰囲気温度を高く保ったままライン上に設けられた延伸装置に導き、一軸または逐次もしくは同時の二軸延伸を行うことで異方性の制御を行うことができる。
一度冷却ロールを介して、巻き取り装置でロールに巻き取り、改めて延伸装置にかけることも可能である。
延伸する温度としては、特に限定されるものではないが、90〜250℃程度が好ましい。
本発明のフィルムの分散相の形状は特に限定されるものではないが、該フィルムの厚み方向に対して垂直な任意切断面において観測される島成分のアスペクト比が3以上である場合にさらに優れた寸法安定性が得られるため好ましい。さらに好ましくはアスペクト比が4以上であり、特に好ましくは5以上である。ここでアスペクト比は島成分の平均長径/平均短径の比を意味するものであり、平均短径の好ましい範囲は1〜50μmであり、さらに好ましくは1〜30μmであり、特に好ましくは1〜10μmである。
ここで、長径、短径とは、観測される島成分の分散相が粒子形態をとっている場合には、その断面が楕円状である場合には、楕円の長軸方向の径を長径、短軸方向の径を短径とし、それぞれ粒子100個の数平均をとったものを平均長径、平均短径とする。
また粒子断面が楕円状ではなく、不定形の形をしている場合には、粒子断面の外接円の中心を通る線を引いた際に、粒子の外縁間の距離が最も長くなるものを長径とし、長径と垂直な粒子の外接円の中心線を通る粒子の外縁間の長さを短径とする。
また、粒子が2個以上部分的に連続した連続構造をしている場合には、連続した全ての粒子について、外接円の中心線を通る粒子の外縁間の長さを長径、長径と垂直な粒子の外接円の中心線を通る粒子の外縁間の長さを短径とする。
観察された全ての分散相が連続している場合には、フィルムの長手方向の長さを長径、厚みを短径としてアスペクト比を擬似的に算出する。
アスペクト比の測定は、例えばフィルムの厚み方向に対して垂直に切削し透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の島成分をの長径、短径の平均値から算出することができる。
こうして得られた本発明のフィルムは、高周波特性、湿熱耐性、寸法安定性に優れ、特に、熱滞留安定性に優れているのでリサイクル後もこれらのフィルム特性や機械物性が低下しない。
本発明における熱滞留安定性の評価方法としては(二度目の押出混練の強度)/(一度目の押出混練の強度)×100(%)が90%以上のものを熱滞留安定性が良いとする。(二度目の押出混練の強度)/(一度目の押出混練の強度)×100(%)が95%以上のものがより好ましく、98%以上のものは特に好ましい。
また、得られたフィルムは、多層積層する際に積層押出以外に振動溶着、超音波溶着、熱溶着等によりフィルム同士、フィルムと樹脂成形品、フィルムと金属箔間で積層することが可能である。
また、得られたフィルムは、多層積層する際に積層押出以外に振動溶着、超音波溶着、熱溶着等によりフィルム同士、フィルムと樹脂成形品、フィルムと金属箔間で積層することが可能である。
金属箔を積層する場合には、海相(マトリックス)がPPS樹脂である場合には、熱圧着法によりラミネートすることが好ましく、液晶性樹脂がマトリックスである場合には、金属箔のラミネートよりも、めっき法が好ましい。
めっき法においては、フィルムをあらかじめエッチング液により表面処理をすることで、液晶性樹脂マトリックスのミクロドメイン構造に起因するアンダーミクロンオーダーの凹凸を生じさせることで、剥離強度を上げることができ好ましい。
本発明の液晶性樹脂組成物から得られた成形体は機械的強度はもちろんのこと耐湿熱特性、寸法安定性、制振性に優れていることなどの特性を生かし、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、光ピックアップスライドベース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、タンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、イグニッションコイル用部品、パワーシートギアハウジング、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、パソコンハウジング、携帯電話ハウジングなどの筐体用途、便座、手洗い器・カウンターなどのトイレタリー用途、玩具、パチンコ台部品などの娯楽用途、その他各種用途に有用であり、本発明の液晶性樹脂組成物からなるフィルムは磁気記録媒体用フィルム、回路基板基材フィルム、回路基板補強用フィルム、半導体カバーレイ、写真用フィルム、コンデンサー用フィルム、電気絶縁用フィルム、包装用フィルム、製図用フィルム、リボン用フィルム、シート用途としては自動車内部天井、ドアトリム、インストロメントパネルのパッド材、バンパーやサイドフレームの緩衝材、ボンネット裏等の吸音パット、座席用材、ピラー、燃料タンク、ブレーキホース、ウインドウオッシャー液用ノズル、エアコン冷媒用チューブおよびそれらの周辺部品に有用である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[液晶性樹脂(A)]
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g(6.300モル)、4,4´−ジヒドロキシビフェニル327g(1.890モル)、ハイドロキノン89g(0.810モル)、テレフタル酸292g(1.755モル)、イソフタル酸157g(0.945モル)および無水酢酸1367g(フェノール性水酸基合計の1.03当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら145℃で2時間反応させた後、320℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に90分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。これにより融点314℃、数平均分子量12000、溶融粘度25Pa・s(L/D=10mm/0.5mmのダイで温度324℃、せん断速度1000/s)の液晶性樹脂(LCP−2)を得た。
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g(6.300モル)、4,4´−ジヒドロキシビフェニル327g(1.890モル)、ハイドロキノン89g(0.810モル)、テレフタル酸292g(1.755モル)、イソフタル酸157g(0.945モル)および無水酢酸1367g(フェノール性水酸基合計の1.03当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら145℃で2時間反応させた後、320℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に90分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。これにより融点314℃、数平均分子量12000、溶融粘度25Pa・s(L/D=10mm/0.5mmのダイで温度324℃、せん断速度1000/s)の液晶性樹脂(LCP−2)を得た。
該ペレットを棚段式固相重合装置に5kgを充填し、270℃に加熱した窒素を5Nm3/時間流通し、48時間保持した。4時間の冷却ののち重合体を得た。これにより融点320℃、数平均分子量32000、溶融粘度80Pa・s(L/D=10mm/0.5mmのダイで温度330℃、せん断速度1000/s)の液晶性樹脂(LCP−1)を得た。
[PPS樹脂(B)]
M2588(東レ社製)を用いた。
M2588(東レ社製)を用いた。
[リン酸エステル(C)]
C1:旭電化(株)製の“AX−71”(R=C18H37、n=1〜2)と、C2:大八化学工業(株)製の“PX−200”((H3C)2H3C6O)2P(O)OC6H4OP(O)(OC6H3(CH3)2)2)を用いた。
C1:旭電化(株)製の“AX−71”(R=C18H37、n=1〜2)と、C2:大八化学工業(株)製の“PX−200”((H3C)2H3C6O)2P(O)OC6H4OP(O)(OC6H3(CH3)2)2)を用いた。
実施例1〜5、比較例1〜3
TEX−30型2軸押出機(日本製鋼所製)を用いて液晶性樹脂(A)、PPS樹脂(B)、リン酸エステル(C)を表1に示した割合で、ドライブレンドし、樹脂フィーダーより供給し、樹脂温度325℃の温度で溶融混練し、ペレットとした。該混合体をフルフライトスクリュー(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径の比=22)の250mm単軸押出機に供給し、310℃で、剪断速度100/sで溶融混合計量させた後、Tダイ口金(スリット幅0.4mm、幅250mm)からドラフト比2でシート状に押出成形し、180℃に保たれたキャスティングドラムに静電荷を印加させながら密着させ、冷却ロールを介して巻き取り装置でロールに巻き取り、厚さ200μmのキャストフィルムを得た(吐出量20kg/hr)。
TEX−30型2軸押出機(日本製鋼所製)を用いて液晶性樹脂(A)、PPS樹脂(B)、リン酸エステル(C)を表1に示した割合で、ドライブレンドし、樹脂フィーダーより供給し、樹脂温度325℃の温度で溶融混練し、ペレットとした。該混合体をフルフライトスクリュー(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径の比=22)の250mm単軸押出機に供給し、310℃で、剪断速度100/sで溶融混合計量させた後、Tダイ口金(スリット幅0.4mm、幅250mm)からドラフト比2でシート状に押出成形し、180℃に保たれたキャスティングドラムに静電荷を印加させながら密着させ、冷却ロールを介して巻き取り装置でロールに巻き取り、厚さ200μmのキャストフィルムを得た(吐出量20kg/hr)。
各評価については、次に述べる方法にしたがって測定した。
(1)熱滞留安定性評価
一度製膜したフィルムを回収し、粉砕した後、一度目と同条件で二度目の溶融混練、製膜を行い、得られたフィルムの引張強度をJIS K7127に規定された方法でインストロンタイプの引張試験機を用いて23℃、50%RH雰囲気で測定し、一度目のものと二度目のものとを比較した。
(評価は、リサイクル性(%)=(二度目の強度)/(一度目の強度)×100 とした。)
一度製膜したフィルムを回収し、粉砕した後、一度目と同条件で二度目の溶融混練、製膜を行い、得られたフィルムの引張強度をJIS K7127に規定された方法でインストロンタイプの引張試験機を用いて23℃、50%RH雰囲気で測定し、一度目のものと二度目のものとを比較した。
(評価は、リサイクル性(%)=(二度目の強度)/(一度目の強度)×100 とした。)
(2)相構造の観察
フィルムの任意断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察を行った。
フィルムの任意断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察を行った。
(3)アスペクト比
フィルム を厚み方向に垂直な任意断面で切削し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、4000倍で写真を撮影した。得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の島成分を選択し、画像処理を行い、粒子一つについて、長径および短径を求め、100個の粒子について数平均長径(L)および数平均短径(l)を算出した。アスペクト比 をL/lとした。
フィルム を厚み方向に垂直な任意断面で切削し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、4000倍で写真を撮影した。得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の島成分を選択し、画像処理を行い、粒子一つについて、長径および短径を求め、100個の粒子について数平均長径(L)および数平均短径(l)を算出した。アスペクト比 をL/lとした。
(4)耐湿熱特性
該フィルムを水の入ったオートクレーブ中120℃、0.2MPaで150時間処理した後、引張強度をJIS K7127に規定された方法でインストロンタイプの引張試験機を用いて23℃、50%RH雰囲気で測定し、下式により強度保持率を求めた。
強度保持率(%)=処理品引張強度/未処理品引張強度×100
該フィルムを水の入ったオートクレーブ中120℃、0.2MPaで150時間処理した後、引張強度をJIS K7127に規定された方法でインストロンタイプの引張試験機を用いて23℃、50%RH雰囲気で測定し、下式により強度保持率を求めた。
強度保持率(%)=処理品引張強度/未処理品引張強度×100
(5)寸法安定性
寸法安定性は熱膨張係数α(×10−6/%RH)を測定することで評価した。熱膨張係数α(×10−6/%RH)は幅5mmにサンプルを切り出し、恒温恒湿槽(大栄化学製PKL−50D)にセットされた定荷重伸び試験機(日本自動制御(株)定荷重伸び試験機)でチャック間距離を150mmになるようにサンプルを挟み込み、65RH%中で昇温速度2℃/minで30〜250℃まで昇温したときの、30℃〜250℃(デルタ=220℃)までの変形量の平均傾きから求めた。ASTM D696に準じる。単位は10−6/℃のppmである。
寸法安定性は熱膨張係数α(×10−6/%RH)を測定することで評価した。熱膨張係数α(×10−6/%RH)は幅5mmにサンプルを切り出し、恒温恒湿槽(大栄化学製PKL−50D)にセットされた定荷重伸び試験機(日本自動制御(株)定荷重伸び試験機)でチャック間距離を150mmになるようにサンプルを挟み込み、65RH%中で昇温速度2℃/minで30〜250℃まで昇温したときの、30℃〜250℃(デルタ=220℃)までの変形量の平均傾きから求めた。ASTM D696に準じる。単位は10−6/℃のppmである。
表1からも明らかなように本発明の液晶性樹脂が90〜10重量%、PPS樹脂が10〜90重量%、特定のリン酸エステルからなる液晶性樹脂組成物のフィルムは、熱滞留安定性が良好であり、湿熱耐性、寸法安定性に優れていることが分かる。
これらの効果は、比較例からわかるように、リン酸エステルの配合量、リン酸エステルの種類によっては全く発現されず、特性が低下する場合もある。
よって、本発明の液晶性樹脂組成物からなるフィルムの特徴である熱滞留安定性、湿熱耐性、寸法安定性は液晶性樹脂に、特定構造のリン酸エステルを特定量混合して初めて得られる特異的な効果であることがわかる。
Claims (5)
- 混合体中の液晶性樹脂(A)が50重量%以上であり、液晶性樹脂(A)が島成分、PPS樹脂(B)が海成分であることを特徴とする請求項1記載の液晶性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の液晶性樹脂組成物からなるフィルム。
- フィルムの厚み方向に対して垂直な切断面において観測される島成分のアスペクト比が3以上である請求項4記載のフィルム。
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- 2005-05-16 JP JP2005142222A patent/JP2006316207A/ja active Pending
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