JP4048591B2 - 液晶性樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱時あるいは溶融時に発生する低沸点ガス発生を抑制し、ガスによる腐食が少なく、成形品の表面耐やけ性に優れた液晶性樹脂組成物および成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマが数多く開発され、市場に供されているが、中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶ポリエステルが優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、機械部品、電気・電子部品などに用途が拡大されつつある。これらの液晶ポリエステルの製造は現在、芳香族フェノールを無水酢酸によりアセチル化させた後、あるいは芳香族フェノール類と酢酸とのエステル化合物を芳香族カルボン酸とエステル交換反応させ、生成する酢酸を除去しながら溶融重合する方法が一般的である。しかしながら、これらの方法は分子鎖末端に必ず反応性基が残るため、加熱時あるいは溶融時に重合が進行し酢酸が発生するなどの問題がある。また、高温での使用において各種安定剤等に由来するガス発生などの問題がある。
【0003】
この酢酸や各種安定剤などに由来する低沸点ガスが多量に発生するという問題が起こった場合、特に成形時にトラブルが発生し長時間成形機内で滞留させた場合などに成形品表面にやけが生じたり、コンパウンドに使用した押出機のスクリューや射出成形機のスクリューや金型などの腐食の原因になる。また、電気・電子部品などに用いられる成形品では金属製接点を腐食する原因となる。
【0004】
この低沸点ガスの発生を抑制する方法としてゼオライトを添加する方法(特開平2−194065号公報、特開平6−57117号公報)、ハイドロタルサイトを添加する方法(特開平8−333505号公報)などが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法では、確かに発生ガスの低減効果はあるものの十分とは言えず、特に高温下での吸着性が低く、成形品とした場合、成形品表面のガス焼けなどの不良の抑制効果が低かった。よって本発明は、特定の合成シリカを用いることで加熱時あるいは溶融時に発生する低沸点ガス発生を抑制し、成形品表面のガス焼けなどの不良を抑制した液晶性樹脂組成物および成形品の取得を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は(1)液晶ポリエステルおよび/または液晶ポリエステルアミドからなる液晶性樹脂100重量部に対して、吸油量が150ml/g以上かつpHが7.0〜9.0のシリカ、スメクタイト、ベントナイト、セピオライト、ゼオライトから選ばれるケイ素化合物を0.001〜10重量部含有することを特徴とする液晶性樹脂組成物、
(2)ケイ素化合物がケイ酸ソーダと硫酸との反応からなる生成物であることを特徴とする上記(1)記載の液晶性樹脂組成物、(3)ケイ素化合物の平均粒子径が1〜15μmであることを特徴とする上記(1)または(2)記載の液晶性樹脂組成物、
(4)ケイ素化合物の平均細孔径が50〜300オングストロームであることを特徴とする上記(1)〜(3)いずれか記載の液晶性樹脂組成物、
(5)上記(1)〜(4)いずれか記載の液晶性樹脂組成物100重量部に充填材を0.5〜300重量部を添加してなる強化液晶性樹脂組成物、
(6)液晶性樹脂がエチレンジオキシド単位を必須成分として含有する上記(1)〜(5)いずれか記載の液晶性樹脂組成物、
(7)液晶性樹脂が下記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる液晶ポリエステルである上記(1)〜(6)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物、
【化4】
(ただし式中のR1は
【化5】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【化6】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
(8)液晶性樹脂組成物が150℃以上の環境下にさらして用いられるものであることを特徴とする上記(1)〜(7)いずれか記載の液晶性樹脂組成物。
(9)上記(1)〜(8)いずれか記載の液晶性樹脂組成物を成形してなる液晶性樹脂組成物成形品。
(10)成形品を二次的に加工する時および/またはこれを使用する時に150℃以上の環境にさらして用いられることを特徴とする上記(9)記載の液晶性樹脂組成物成形品を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0009】
本発明で用いる液晶性樹脂は液晶ポリエステルおよび/または液晶ポリエステルアミドである。
【0010】
本発明でいう液晶性ポリエステル樹脂とは、異方性溶融相を形成するポリエステルであり、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルであり、液晶性ポリエステルアミド樹脂とは異方性溶融相を形成するポリエステルアミドであり、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなるポリエステルアミドである。
【0011】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族ジオキシ単位としては、例えば、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位、芳香族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸などから生成した構造単位、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールなどから生成した構造単位が挙げられる。
【0012】
液晶性ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸およびアジピン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはセバシン酸から生成した構造単位から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0013】
異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルの好ましい例としては、エチレンジオキシ単位を含む液晶性樹脂であり、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶ポリエステル、または、(I)、(III) および(IV)の構造単位からなる異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルなどがより好ましく挙げられる。なかでも特に(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルが好ましい。
【0014】
【化7】
(ただし式中のR1は
【化8】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【化9】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【化10】
であり、R2が
【化11】
であるものが特に好ましい。
【0015】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体および上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0016】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜15モル%がより好ましい。また、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0017】
一方、上記構造単位(III) を含まない場合は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(II)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(II)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0018】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0019】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0020】
本発明において使用する上記液晶性樹脂の製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0021】
例えば、上記液晶ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
【0022】
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって製造する方法。
【0023】
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0024】
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0025】
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0026】
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により製造する方法。
【0027】
液晶性樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0028】
本発明に好ましく使用できる上記液晶性樹脂は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能であり、その際には0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.3以上が好ましく、構造単位(III) を含む場合は0.5〜3.0dl/g、構造単位(III) を含まない場合は1.0〜15.0dl/gが特に好ましい。
【0029】
また、本発明における液晶性樹脂の溶融粘度は0.5〜2000Pa・sが好ましく、特に1〜1000Pa・sがより好ましい。
【0030】
なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0031】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0032】
本発明に用いるケイ素化合物は吸油量が150ml/g以上、かつpHが7.0〜9.0が必須であり、吸油量が180ml/g以上のものが好ましく、200ml/g以上のものが特に好ましい。吸油量が150ml/g未満の場合、ガス吸着効果が発現されず、また、pHが7.0未満の場合は酸性ガス(例えば酢酸)などの吸着効果が弱く、逆に9.0より大きい場合には機械的特性の低下を招くので好ましくない。
【0033】
ケイ素化合物の吸油量はJIS K5101に従い行う。また、pHについては23℃でpH7の標準水中にケイ素化合物を5%添加し、スラリー化して測定する。
【0034】
本発明に用いるケイ素化合物の具体例としてはシリカ、スメクタイト、ベントナイト、セピオライト、ゼオライトなどが挙げられ、特にケイ酸ソーダと硫酸を反応させて得られる合成シリカが好ましく用いられる。また、平均粒子径および平均細孔径については特に規定されないが、低沸点ガスの吸着性および得られた成形品の特性を損なわないものとして平均粒子径が1〜15μmが好ましく、1.5〜10μmがより好ましく、平均細孔径については50〜300オングストロームが好ましく、100〜250オングストロームがより好ましい。
【0035】
ここで平均粒子径および平均細孔径の測定方法は特に限定されないが、平均粒子径はコールターカウンター法で、平均細孔径は窒素圧入法を用いて測定する。
【0036】
ケイ素化合物の添加量は液晶性樹脂100重量部に対して0.001〜10重量部であり、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.03〜3重量部である。
【0037】
ケイ素化合物の量が0.001重量部より少ないと低沸点ガスを吸着する効果が著しく小さくなり、10重量部より多いと機械物性が低下、もしくは場合によってはガス発生量が増加するので好ましくない。
【0038】
本発明において液晶性樹脂組成物の機械強度その他の特性を付与するために充填剤を使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填剤を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられる。上記充填剤中、ガラス繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0039】
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0040】
上記の充填剤の添加量は液晶性樹脂組成物100重量部に対し通常、0.5〜300重量部であり、好ましくは10〜250重量部、より好ましくは20〜150重量部である。
【0041】
さらに、本発明の液晶性樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤(例えばブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、赤燐、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩など)、難燃助剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0042】
また、更なる特性改良の必要性に応じてポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系重合体および無水マレイン酸などによる酸変性オレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物を添加して所定の特性をさらに付与することができる。
【0043】
これらを添加する方法は溶融混練することが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜380℃の温度で溶融混練して組成物とすることができる。その際、液晶性樹脂と熱可塑性樹脂、充填材との一括混練法でも一度ポリアミド樹脂と液晶性樹脂とを混練した後に充填材およびその他の添加剤を混練する方法のどちらでもかまわない。
【0044】
かくしてなる本発明の液晶性樹脂組成物は、加熱時あるいは溶融時に発生する低沸点ガスが抑制されるために、150℃以上特に200℃以上の環境下にさらして用いる場合、例えば、液晶性樹脂組成物を少量アロイとして他の溶融熱可塑性樹脂に添加し、液晶性樹脂組成物を溶融状態あるいは非溶融状態で配合する場合など、あるいは液晶性樹脂組成物を成形して得られた成形品のアニール処理などの2次加工する場合にその効果が極めて発揮される。また、本発明の液晶性樹脂組成物は、優れた溶融流動性、成形性、光学異方性を有し、通常の成形方法により優れた耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性、および機械的性質を有する三次元成形品、シート、容器、パイプ、フィルム、繊維などに加工することが可能である。
【0045】
例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケーススイッチコイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、その他各種用途に有用である。
【0046】
これらの中でも特に、成形品を二次的に加工する時および/またはこれを使用する時に150℃以上、特に200℃以上の環境にさらされるものおよび/または成形品が絶縁部をなし、それに導電部である金属を組み合わせて用いるものに有用である。これらの例としてははんだ付けや赤外線、熱風による加熱などの二次的加工を施し製造される各種ケース、スイッチ、ボビン、コネクター、ソケット類や使用時に高温にさらされる耐熱容器、電子レンジ部品などが挙げられる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。
【0048】
参考例
A−1
p−ヒドロキシ安息香酸901重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト346重量部及び無水酢酸884重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位72.5モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位20モル当量、芳香族ジカルボン酸単位27.5モル当量からなる、対数粘度1.2dl/g(ペンタフロロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)を溶媒として測定した)、数平均分子量が約17000の液晶性樹脂が得られた。
【0049】
A−2
p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部及び無水酢酸873重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位100モル等量からなる融点283℃、対数粘度4.25dl/g(ペンタフロロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)を溶媒として測定した)、数平均分子量が約21000の液晶性樹脂を得た。
【0050】
A−3
アセトキシ安息香酸1297重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト346重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、エチレンジオキシ単位20モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点283℃、対数粘度1.2dl/g(ペンタフロロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)を溶媒として測定した)、数平均分子量が約12000の液晶性樹脂が得られた。
【0051】
A−4
p−ヒドロキシ安息香酸746重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル168重量部、ヒドロキノン99重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸117重量部、テレフタル酸209重量部及び無水酢酸1011重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位60モル当量、芳香族ジオキシ単位20モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点337℃、対数粘度6.12dl/g、重量平均分子量約30,000の樹脂を得た。
【0052】
実施例1〜4、比較例1〜8
参考例で得た液晶性樹脂(A-1〜A-4)に表1に示すケイ素化合物(富士シリシア製)およびハイドロタルサイトを所定量秤量し、ドライブレンドした。日本製鋼所製TEX30型2軸押出機でシリンダー温度は液晶性樹脂の融点+10℃に設定し、スクリュー回転を30〜100r.p.mの条件で溶融混練してペレットとした。また、下記(2)測定用試験片として熱風乾燥後、ペレットを住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダ−温度液晶性樹脂の融点+30℃に設定し、金型温度90℃に設定し、1速1圧の条件で以下に示す
(2)測定用テストピースを射出成形して得た。
【0053】
(1)発生ガス量
試験管に0.3gポリマーをはかりとり、融点+30℃で真空下30分放置した後、窒素雰囲気下にし、(株)ガステック社製吸引管No.81およびNo.60にてポリマー1gあたりの低沸点ガス発生量を測定した。
【0054】
(2)表面焼け性
12.7×127×0.5mmの棒状成形品をシリンダー内で15分滞留させた後、成形品を射出時間0.1秒で20個成形し、ガスやけの有無を調べた。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
加熱時あるいは溶融時に発生する低沸点ガス発生を抑制し、ガスによる腐食および成形品の焼け抑制に優れた液晶性樹脂組成物および成形品を得ることができ、電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品など、その他各種用途に好適である。
Claims (10)
- 液晶ポリエステルおよび/または液晶ポリエステルアミドからなる液晶性樹脂100重量部に対して、吸油量が150ml/g以上かつpHが7.0〜9.0のシリカ、スメクタイト、ベントナイト、セピオライト、ゼオライトから選ばれるケイ素化合物を0.001〜10重量部含有することを特徴とする液晶性樹脂組成物。
- ケイ素化合物がケイ酸ソーダと硫酸との反応からなる生成物であることを特徴とする請求項1記載の液晶性樹脂組成物。
- ケイ素化合物の平均粒子径が1〜15μmであることを特徴とする請求項1または2記載の液晶性樹脂組成物。
- ケイ素化合物の平均細孔径が50〜300オングストロームであることを特徴とする請求項請求項1〜3いずれか記載の液晶性樹脂組成物。
- 請求項1〜4いずれか記載の液晶性樹脂組成物100重量部に充填材を0.5〜300重量部を添加してなる強化液晶性樹脂組成物。
- 液晶性樹脂がエチレンジオキシド単位を必須成分として含有する請求項1〜5いずれか記載の液晶性樹脂組成物。
- 液晶性樹脂組成物が150℃以上の環境下にさらして用いられるものであることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の液晶性樹脂組成物。
- 請求項1〜8いずれか記載の液晶性樹脂組成物を成形してなる液晶性樹脂組成物成形品。
- 成形品を二次的に加工する時および/またはこれを使用する時に150℃以上の環境にさらして用いられることを特徴とする請求項9記載の液晶性樹脂組成物成形品。
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