JP3632341B2 - 液晶性樹脂組成物および成形品 - Google Patents

液晶性樹脂組成物および成形品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動性、および機械的特性に優れ、とりわけ剛性と靭性が改良された液晶性樹脂組成物およびその成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発され、市場に供されているが、中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリマーが優れた流動性と機械的性質を有する点で注目され、特に高い剛性を有することから電気・電子分野や事務機器分野などでハウジング等の薄物成形品の需要が大きくなってきている。
【0003】
これら異方性溶融相を形成するポリマーとしては、例えばp−ヒドロキシ安息香酸にポリエチレンテレフタレートを共重合した液晶性ポリマー(特開昭49−72393号公報)、p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を共重合した液晶性ポリマー(特開昭54−77691号公報)、p−ヒドロキシ安息香酸に4,4´−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸、イソフタル酸を共重合した液晶性ポリマー(特公昭57−24407号公報)などが知られている。しかしながら、液晶性ポリマーは分子鎖の配向方向と垂直方向で成形収縮率や機械物性が異なり、液晶性ポリマーの機械的強度と成形品寸法の異方性改良する目的でガラス繊維などの充填材を配合することが知られている。
【0004】
また、液晶性ポリマーの物性をさらに向上させる方法として、分子構造の異なる2種の液晶性ポリマーをブレンドする方法(特開昭57−40550号公報、特開昭62−220556号公報、特開昭63−132967号公報、特開平2−88667号公報、特開平2−145643号公報)が知られており、この方法によると単独で用いた場合の弾性率よりもブレンド物の弾性率の方が高くなることが開示されている。しかし、2種の液晶性ポリマーを単にブレンドしただけでは異方性が大きく実用化は困難であった。さらに異方性を低減するためにガラス繊維を添加する方法として特公平2−173157号公報および特公平3−95260号公報、特公平3−54250号公報に開示されているが、これらの方法では2種の液晶性ポリマーにおいて形成されたモルホロジーが壊れて確かに異方性は低減するが、機械物性はそれほど向上しなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、液晶性ポリマーに特定のアスペクト比の充填材を配合することにより特異的なモルホロジーを形成させ、良流動性および高機械物性、とりわけ剛性と靭性が均衡して優れ、なおかつ異方性も低減した液晶性樹脂組成物を得ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)下記構造単位 (I) (II) (III) (IV) を有する共重合体からなる半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)99.5〜50重量%と全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)0.5〜50重量%とからなる液晶性樹脂(C)100重量部に、組成物中の平均アスペクト比5以上20未満となる無機充填材(D)を5〜200重量部含むことを特徴とする液晶性樹脂組成物、
【化7】
Figure 0003632341
(ただし式中のR 1
【化8】
Figure 0003632341
から選ばれた一種以上の基を示し、R 2
【化9】
Figure 0003632341
から選ばれた一種以上の基を示し、R 3
【化10】
Figure 0003632341
から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
(2)半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)が95〜55重量%であって、全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)が5〜45重量%である上記(1)記載の液晶性樹脂組成物、
(3)ASTM法D790(厚み1/8インチ)にて測定した曲げ弾性率が、その組成物中の全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)を半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)に全量置き換えた場合より15%以上向上することを特徴とする上記(1)または(2)記載の液晶性樹脂組成物、
(4)ASTM法D790(厚み1/8インチ)にて測定した曲げたわみ量が3mm以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物
【0008】
)半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)構造単位 (I) (II) (III) (IV) からなり、構造単位 (I) および (II) の合計が構造単位 (I) (II) および (III) の合計に対して60〜95モル%であり、構造単位 (III) が構造単位 (I) (II) および (III) の合計に対して40〜5モル%であり、構造単位 (I) (II) のモル比[ (I) (II) ]が75/25〜95/5であり、また、構造単位 (IV) が構造単位 (II) および (III) の合計と実質的に等モルである上記(1)〜(4)記載の液晶性樹脂組成物、
全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)が(1)における (I) の構造単位を有する共重合体、および/または (I) (II) (IV) の構造単位を有する共重合体からなることを特徴とする(1)〜(5)請求項1〜5のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)が (I) の構造単位を有する共重合体からなることを特徴とする(6)記載の液晶性樹脂組成物、
全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)が構造単位 (I) (II) (IV) からなり、構造単位 (I) が構造単位 (I) および (II) の合計に対して15〜90モル%であり、構造単位 (II) が構造単位 (I) および (II) の合計に対して85〜10モル%であり、構造単位 (II) が構造単位 (IV) と実質的に等モルであることを特徴とする(8)記載の液晶性樹脂組成物、(9)構造単位 (IV) の5〜100モル%が下記構造単位 (V) であることを特徴とする(8)記載の液晶性樹脂組成物、
【化11】
Figure 0003632341
10無機充填材(D)が繊維状充填剤を含み、かつ組成物中の繊維状充填材の重量平均繊維長が0.15mm以下であることを特徴とする(1)〜(9)いずれか記載の液晶性樹脂組成物、
(11)無機充填材(D)が繊維状充填材を含み、かつ繊維状充填材がシラン系カップリング剤で表面処理を施していることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物、
(12)液晶性樹脂(C)100重量部に対して、さらに有機臭素化物0.5〜60重量部を含有せしめてなる(1)〜(11)のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)は分子鎖にエチレン、プロピレン、ブチレン、シクロヘキサンジメチレンなどの脂肪族鎖を有し、異方性溶融相を形成するものであり、好ましくはエチレンジオキシ単位を含有するものである。具体的な好ましい例としては、下記構造単位(I) 、(III) 、(IV)の構造単位を有する共重合体、および/または(I) 、(II)、(III) 、(IV)の構造単位を有する共重合体からなることを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0011】
【化13】
Figure 0003632341
(ただし式中のR
【化14】
Figure 0003632341
から選ばれた一種以上の基を示し、R
【化15】
Figure 0003632341
から選ばれた一種以上の基を示し、R
【化16】
Figure 0003632341
から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
なお、構造単位(II)および(III) の合計と構造単位(IV)は実質的に等モルであることが好ましい。
【0012】
本発明で好ましく用いられる半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)の上記構造単位(I) はp−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸から選ばれたヒドロキシ芳香族カルボン酸から生成した構造単位を、構造単位(II)は4,4´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III) はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸から選ばれた芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうち構造単位(II)のRが、
【化17】
Figure 0003632341
であり、構造単位(I) のRと構造単位(IV) のRが、
【化18】
Figure 0003632341
であるものが特に好ましい。
【0013】
本発明に使用できる半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)は上記構造単位(I) 、(III) 、(IV)、および/または(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体が好ましく、上記構造単位(I) 〜(IV)の共重合量は任意である。しかし、流動性、機械的特性の点から次の共重合量であることが好ましい。
【0014】
すなわち、上記構造単位(I) および(II)の合計は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して60〜95モル%が好ましく、75〜93モル%がより好ましい。また、構造単位(III) は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して40〜5モル%が好ましく、25〜7モル%がより好ましい。また、構造単位(I) と(II)のモル比[(I) /(II)]は耐熱性と流動性のバランスの点から好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III) の合計と実質的に等モルである。
【0015】
また、本発明で好ましく用いられる半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量は機械的強度、成形性、流動性の点から10,000〜200,000であることが好ましく、特に11,000〜150,000、さらに12,000〜100,000であることが好ましい。かかる分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーならびにその他のポリマの溶液形成を伴わない標準的測定法、例えば圧縮成形フィルムについて赤外線分光法により末端基を定量することにより実施できる。また、ペンタフルオロフェノール溶液にして光散乱法を用いて分子量を測定することもできる。上記測定法は測定するポリマーの種類に応じて適宜選択することができる。
【0016】
本発明に用いる全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)は、溶融時に異方性溶融相を形成する全芳香族ポリエステルで、好ましくは上記(I) および/または(I) 、(II)、(IV)の構造単位を有する共重合体からなることを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂である。なお、構造単位(II) および(IV) を含有する場合は、構造単位(II)および(IV)は実質的に等モルであることが好ましい。
【0017】
本発明で好ましく用いられる全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)において、上記構造単位(I) はp−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸から選ばれたヒドロキシ芳香族カルボン酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した一種以上の構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
【0018】
本発明に用いる全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)が(I) の組成の場合、下記構造単位(VI)および(VII) からなる共重合体であり、流動性の点から下記構造単位(VI)は構造単位(VI)および(VII) の合計に対して90〜10モル%であることが好ましく、より好ましくは85〜65モル%である。
【0019】
【化19】
Figure 0003632341
【0020】
(I) 、(II)、(IV)の組成の場合、流動性の点から上記構造単位(I) は[(I) +(II)]の15〜90モル%であることが好ましく、より好ましくは40〜90モル%であり、構造単位(IV)は構造単位(II)と実質的に等モルである。これらのうち構造単位(IV)の5〜100モル%が下記構造単位(V) であるものが特に好ましい。
【0021】
【化20】
Figure 0003632341
【0022】
また、本発明で好ましく用いられる全芳香族液晶性ポリエステル(B)の重量平均分子量は機械的強度、流動性の点から10,000〜200,000であることが好ましく、特に12,000〜150,000、さらに15,000〜100,000であることが好ましい。かかる分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーならびにその他のポリマの溶液形成を伴わない標準的測定法、例えば圧縮成形フィルムについて赤外線分光法により末端基を定量することにより実施できる。また、ペンタフルオロフェノール溶液にして光散乱法を用いて分子量を測定することもできる。上記測定法は測定するポリマーの種類に応じて適宜選択することができる。
【0023】
本発明の液晶性樹脂組成物は、半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)と、全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)からなる液晶性樹脂(C)に特定のアスペクト比を有する充填材を配合したときのみ効果が発現するものである。
【0024】
なお、本発明で好ましく使用できる(A)成分あるいは(B)成分を重縮合する際には、上記好ましく用いられる各構成成分以外に3,3´−ジフェニルジカルボン酸、2,2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0025】
本発明における液晶性樹脂の製造方法は、特に制限がなく、公知の液晶性ポリエステル樹脂の重縮合法に準じて製造できる。例えば、全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)は(1)〜(4)が好ましく、半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)は(5)の製造法が好ましい。
【0026】
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4´−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって製造する方法。
【0027】
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0028】
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0029】
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0030】
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在化で(1)または(2)の方法により製造する方法。
【0031】
これらの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0032】
本発明で使用する半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)および全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能である。その際、半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)は0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.5〜15.0dl/gが好ましく、1.0〜3.0dl/gが特に好ましい。全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)は0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で1.0〜15.0dl/gが好ましく、2.5〜10.0dl/gが特に好ましい。
【0033】
本発明で用いる半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)と全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)の配合比は99.5/0.5〜50/50重量%、好ましくは95/5〜55/45重量%、より好ましくは90/10〜60/40重量%である。半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)に対して全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)の配合量が0.5重量%未満では特異な効果が発現されず、50重量%を越えると流動性、剛性が低下してしまうので本組成物の特性を生かせない。
【0034】
本発明で用いる充填材(D)としては、繊維状のものとしてガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、チタン酸カリウム繊維、石コウ繊維、ほう酸アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、ボロンウイスカ繊維、アスベスト繊維などの繊維充填材が好ましく用いられる。より好ましいものとしてガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維などが用いられる。特に好ましいものとしてガラス繊維が用いられる。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いられているものならば特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョプドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、粉状、粒状あるいは板状の充填材としてはマイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、ベントナイト、クレー、ワラステナイト、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、グラファイト等が用いられる。また、上記充填材(D)はエポキシ系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマーで被覆あるいは集束剤で処理して使用してもよく、エポキシ系ポリマーが特に好ましい。また、2種以上の充填材を併用することもできるが、充填材(D)のうちでは繊維状のものが特に好ましく、少なくとも50%以上は繊維状のものであれば好ましい。更に好ましくは充填材(D)としてガラス繊維を用いることが好ましく、少なくとも50%以上はガラス繊維であれば好ましい。
【0035】
本発明に用いられる充填材(D)は組成物中の平均アスペクト比は5以上20未満である。アスペクト比が2以上の場合、剛性は改善されるが靭性の向上効果がない。また、未満の時は剛性の改善効果、異方性の改善効果がない。
【0036】
本発明に用いる充填材(D)の充填量は半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)と全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)の合計量100重量部に対して5〜200重量部であり、好ましくは10〜150重量部である。充填量が200重量部を越えると機械的特性、流動性の低下が著しく好ましくない。
【0037】
本発明で用いる充填材(D)のうち、繊維状充填材の組成物中の重量平均繊維長は剛性、靱性の高レベルでのバランスの点から、好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.20mm以下、さらに好ましくは0.15mm以下である。
【0038】
本発明で用いる充填材(D)のうち、繊維状充填材の繊維径は好ましくは直径が5〜15μmであり、より好ましくは、直径が6〜13μmのものが用いられる。
【0039】
また、繊維状充填材以外の充填材の組成物中の粒子径は、靱性の点から100μm以下であることが好ましく、特に好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。
【0040】
本発明の組成物中の繊維状充填材の平均アスペクト比、重量平均繊維長、平均繊維径は、例えば次の方法で測定することができる。まず、組成物約5gをるつぼ中で灰化した後、残存した充填材のうちから100mgを採取し、100ccの石鹸水中に分散させる。ついで、分散液をスポイトを用いて1〜2滴スライドガラス上に置き、顕微鏡下に観察して、写真撮影する。写真に撮影された繊維状充填材の繊維長と繊維径を測定する。測定は500本以上行い、重量平均繊維長および平均繊維径を求め、平均アスペクト比は重量平均繊維長/平均繊維径で表す。
【0041】
本発明の組成物中の粉状、粒状あるいは板状充填材の平均アスペクト比、平均長径、平均厚みは、例えば次の方法で測定することができる。まず、組成物約5gをるつぼ中で灰化した後、残存した充填材のうちから100mgを採取し、100ccの石鹸水中に分散させる。ついで、分散液をスポイトを用いて1〜2滴スライドガラス上に置き、顕微鏡下に観察して、写真撮影する。写真に撮影された粉状、粒状あるいは板状充填材の長径(最も長い部分)を測定する。また、同様に灰化した後残存した充填材を走査型電子顕微鏡下に観察して写真撮影する。写真に撮影された板状充填材の厚みを測定する。測定は500個以上行い、平均長径および平均厚みを求め、平均アスペクト比は平均長径/平均厚みで表す。
【0042】
なお、2種以上の充填材を併用するときは、それぞれの平均アスペクト比の加重平均により組成物中の充填材の平均アスペクト比を求めることができる。
【0043】
本発明に用いられる充填材をアミノシラン、エポキシシランなどのシラン系カップリング剤で表面処理することによってさらに機械物性が向上する。特にエポキシシラン系カップリング剤が好ましく用いられる。また、チタネート系のカップリング剤、その他の表面処理剤で処理して使用してもよい。
【0044】
本発明に用いる有機臭素化物としては通常難燃剤として使用される有機臭素化合物を含み、特に臭素含量20重量%以上のものが好ましい。具体例としてはヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールAなどの低分子量有機臭素化合物、臭素化ポリカーボネート(例えば臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマーあるいはそのビスフェノールAとの共重合物)、臭素化エポキシ化合物(例えば臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物や臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるものエポキシ化合物)、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌルおよび臭素化フェノールの縮合物、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリα−メチルスチレンなどのハロゲン化されたポリマーやオリゴマーあるいは、これらの混合物が挙げられ、なかでもエチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、臭素化エポキシオリゴマーまたはポリマー、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルおよび臭素化ポリカーボネートが好ましく、臭素化ポリスチレンが最も好ましく使用できる。
【0045】
上記の好ましい有機臭素化物についてさらに詳しく述べると、臭素化エポキシポリマーとしては下記一般式(i)で表わされるものが好ましい。
【0046】
【化21】
Figure 0003632341
上記一般式(i)中の重合度nは好ましくは15以上、さらに好ましくは50〜80である。
【0047】
本発明に用いる臭素化ポリスチレンとしてはラジカル重合またはアニオン重合によって得られたポリスチレンを臭素化することによって製造された臭素化ポリスチレンおよび架橋臭素化ポリスチレン、あるいは臭素化スチレンモノマをラジカル重合またはアニオン重合、好ましくはラジカル重合によって製造された(ii)および/又は(iii)式で表わされる臭素化スチレン単位を有するポリ臭素化スチレンなどが挙げられるが、とりわけ臭素化スチレンモノマーから製造した下記(ii)および/又は(iii)式で示される構造単位を主要構成成分とする重量平均分子量が1×10〜120×10のポリ臭素化スチレンが好ましい。
【0048】
【化22】
Figure 0003632341
ここでいう臭素化スチレンモノマーとはスチレンモノマー1個あたり、その芳香環に2〜3個の臭素原子が置換反応により導入されたものが好ましく、二臭素化スチレンおよび/又は三臭素化スチレンの他に一臭素化スチレンなどを含んでいてもよい。
【0049】
上記ポリ臭素化スチレンは二臭素化スチレンおよび/又は三臭素化スチレン単位を60重量%以上含有しているものが好ましく、70重量%以上含有しているものがより好ましい。二臭素化スチレンおよび/又三臭素化スチレン以外に一臭素化スチレンを40重量%以下、好ましくは30重量%以下共重合したポリ臭素化スチレンであってもよい。このポリ臭素化スチレンの重量平均分子量は1×10〜15×10がより好ましい。なお、この重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフを用いて測定した値であり、ポリスチレン分子量基準の相対値である。
【0050】
架橋臭素化ポリスチレンとしては、ジビニルベンゼンで架橋された多孔質ポリスチレンを臭素化したポリスチレンが好ましい。
【0051】
臭素化ポリカーボネートとしては、下記一般式(iv)で表わされるものが好ましい。
【0052】
【化23】
Figure 0003632341
(R、Rは置換あるいは無置換のアリール基を示し、p−t−ブチルフェニル基が最も好ましい。)
上記一般式(iv)中の重合度nとしては4以上のものが好ましく、8以上のもの、とりわけ8〜25がより好ましく使用できる。
【0053】
これらの有機臭素化物の配合量は、液晶性樹脂100重量部当り、0.5〜60重量部、特に1〜30重量部が好適である。
【0054】
また、本発明の液晶性樹脂組成物において有機臭素化物は組成物中に平均径25μm以下で分散していることが好ましく、2.0μm以下で分散していることがより好ましい。
【0055】
本発明においては、さらにオレフィン系重合体を配合することができる。
【0056】
本発明で用いるオレフィン系重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンからなる共重合体、プロピレンおよび炭素数が4以上のα−オレフィンからなる共重合体、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンおよび非共役ジエンからなる共重合体などが挙げられ、これらは1種または2種以上で用いることができる。
【0057】
炭素数が3以上のα−オレフィンとしては、好ましくはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクタセン−1などであり、プロピレンおよびブテン−1がさらに好ましく、これらは2種以上併用して使用できる。
【0058】
炭素数が4以上のα−オレフィンとしては上記炭素数が3以上のα−オレフィンのうちプロピレンを除いたものが挙げられ、これらは2種以上併用して使用できる。
【0059】
非共役ジエンとしては、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が使用できる。
【0060】
エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンからなる共重合体におけるエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンの共重合比は、通常、40/60〜99/1(モル比)、好ましくは70/30〜95/5(モル比)である。
【0061】
エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンおよび非共役ジエンからなる共重合体におけるエチレンの共重合量は、通常、5〜96.9モル%、好ましくは30〜84.5モル%であり、炭素数が3以上のα−オレフィンの共重合量は、通常、3〜80モル%、好ましくは15〜60モル%であり、非共役ジエンの共重合量は、通常、0.1〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%である。また、プロピレンと炭素数が4以上のα−オレフィンおよび非共役ジエンからなる共重合体におけるプロピレンの共重合量は、通常5〜96.9モル%、好ましくは30〜84.5モル%であり、炭素数が3以上のα−オレフィンの共重合量は、通常、3〜80モル%、好ましくは15〜60モル%であり、非共役ジエンの共重合量は、通常、0.1〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%である。
【0062】
これらの共重合体の具体例としてはエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ペンテン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン−1共重合体、プロピレン/ペンテン−1共重合体、プロピレン/ブテン−1共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2ーノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン共重合体、プロピレン/ブテン−1/1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体などであり、なかでもエチレン/プロピレン共重合体およびエチレン/ブテン−1共重合体が耐熱性に優れより好ましい。
【0063】
上記オレフィン系重合体は2種以上併用することもできる。
【0064】
また、これらのオレフィン系重合体は、得られる組成物に対し、優れた流動性を期待する場合は、エポキシ基、カルボン酸基などを含有する単量体が共重合されていないほうが好ましい。
【0065】
上記オレフィン系重合体の重量平均分子量は、特に制限はないが、離型効果、ウエルド強度、成形品外観および流動性の点から10,000〜600,000、好ましくは30,000〜500,000、さらに好ましくは100,000〜450,000の範囲にあることが望ましい。
【0066】
上記オレフィン系重合体の添加量は、特に制限はないが、離型性、ウエルド強度の点から液晶性樹脂(C)100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がとくに好ましい。
【0067】
本発明の液晶性樹脂組成物は物性向上のためにさらにエポキシ化合物を配合することができる。その構造は必ずしも限定されるものではない。これらエポキシ化合物のエポキシ基の数は2つ以上であることが好ましく、2つであることが最も好ましい。このエポキシ化合物とは、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル・エーテル類、グリシジルエステル類、エポキシ化イミド化合物、エポキシ基含有共重合体、エポキシシラン類などであり、これらのエポキシ化合物は、一種だけでなく二種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明の液晶性樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドなど)、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、結晶核剤、可塑剤、難燃助剤、帯電防止剤などの通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂(フッ素樹脂など)を添加して、所定の特性を付与することができる。
【0069】
本発明の液晶性樹脂組成物の調整は溶融混練が好ましく、混合する方法としては、各種の方法が適用可能である。溶融混合する装置としては混合ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などが挙げられるが、なかでも押出機が好ましい。押出機としては単軸、または2軸以上のスクリューを有するものいずれも使用可能であるが、特に充填材のアスペクト比を効率よく制御するために2軸押出機を使用するのが好ましい。
【0070】
本発明の液晶性樹脂組成物から成形品を得るには、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形などの通常の方法で成形可能であり、特に射出成形が好ましい。
【0071】
本発明の液晶性樹脂組成物は、多くの場合、曲げ弾性率が、その液晶性樹脂組成物のうち全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)を半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)に全量置き換えた場合より15%以上向上する性能を有する。 かかる液晶性樹脂組成物からなる成形品は、優れた曲げ特性を有するものとなる。
【0072】
また、本発明の液晶性樹脂組成物は、多くの場合、曲げたわみ量が3mm以上である性能を有する。かかる液晶性樹脂組成物からなる成形品は、優れた靱性を有するものとなる。さらに、本発明における液晶性樹脂組成物は、多くの場合、曲げ弾性率および曲げたわみ量の双方とも上記特性を有し、それから得られる成形品は剛性および靱性に特に優れるものとなる。
【0073】
ここで、曲げ弾性率および曲げたわみ量の算出方法はASTM D790に従い、127mm×12.7mm×厚み1/8インチ(3.17mm)の成形品をサンプルスパン50mm、歪み速度1mmで測定した値である。
【0074】
かくしてなる本発明の成形品は、優れた流動性、機械的特性を有し、とくに靭性と剛性が均衡して優れたものであり、これらの特徴を有する三次元成形品、シート、容器パイプなどの用途に使用可能である。例えば、各種ギヤー、各種ケース、各種基板、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケーススイッチコイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、ポケベル、携帯電話、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、その他各種用途に有用である。
【0075】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0076】
参考例1(A−1)
p−ヒドロキシ安息香酸995重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216重量部及び無水酢酸960重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った。液晶開始温度293℃、対数粘度は1.49dl/g、重量平均分子量は約21,000の樹脂が得られた。
【0077】
参考例2(A−2)
p−ヒドロキシ安息香酸907重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル117重量部、ハイドロキノン30重量部、テレフタル酸150重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート294重量部及び無水酢酸940重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った。液晶開始温度291℃、対数粘度は1.28dl/g、重量平均分子量は約18,000の樹脂を得た。
【0078】
参考例3(A−3)
p−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル251重量部、ヒドロキノン149重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸195重量部、テレフタル酸299重量部及び無水酢酸1314重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った。液晶開始温度317℃、対数粘度6.12dl/g、重量平均分子量約30,000の樹脂を得た。
【0079】
参考例4(A−4)
特開昭54−77691号公報に従って、p−アセトキシ安息香酸1265重量部と6−アセトキシ−2−ナフトエ酸456重量部を留出管を備えた反応容器に仕込み重縮合を行った。液晶開始温度293℃、対数粘度5.24dl/g、重量平均分子量約35,000の樹脂を得た。
【0080】
本発明に用いた有機臭素化物の構造を表1に示す。
【0081】
【表1】
Figure 0003632341
【0082】
実施例1〜、比較例1〜10
参考例で得た液晶性ポリエステル樹脂と平均繊維長40μm、140μmのガラスミルドファイバーおよび平均繊維長3mmのガラスファイバーを表2に示すようにそれぞれ所定量秤量し、ドライブレンドした。30mmφの2軸押出機を用いて290〜330℃で種々の条件で溶融混練してペレットとした。熱風乾燥後、このペレットを住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダー温度290〜350℃、金型温度90℃に設定し、以下に示す測定用テストピースを射出成形して得た。測定方法を以下に示す。
【0083】
(1)曲げ特性
上記の成形機を用いて、1/8インチ(3.17mm)厚×12.7mm巾×127mm長のテストピースを成形し、ASTM D790に従って測定し、曲げ弾性率および曲げたわみ量を求めた。
【0084】
(2)流動性
上記の成形機を用いて、シリンダー温度を融点+10℃、金型温度90℃、射出速度99%、射出圧力500kgf/cm2の条件で0.5mm厚×12.7mm巾の試験片の流動長(棒流動長)を測定した。
【0085】
(3)嵌合テスト
内径縦50×横80×高さ5×厚み4mmの箱形で上部横内側に厚さ0.8mm×長さ2mmの爪のついた成形品と50×80×1mm厚の角板を上記成形機を用いて成形し、角板の中心を押してはめ込みテストを行った。箱形成形品の爪が折れた場合は×、爪は破壊しないが角板がはまらない場合は△、破壊しなかった場合を○とし、靭性と剛性のバランスを評価した。
結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
Figure 0003632341
表2の結果から半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)と全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)が特定の組成比でかつ、組成物中の配合した充填材のアスペクト比が特定の液晶性樹脂組成物の場合に限って流動性に優れ、靭性と剛性のバランスが優れていることがわかる。
【0087】
実施例10
実施例8において更に表1に示した有機臭素化物を液晶性樹脂組成物100重量部に対し表3に示した割合に配合した以外は実施例8と同様にして組成物のペレットを製造した。このペレットを住友ネスタール射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダー温度を融点+10℃、金型温度を90℃の条件にて0.5mm(厚み)×12.7mm×127mmの燃焼試験片を成形し、該燃焼試験片を用いてUL94規格に従い垂直型燃焼テストを実施し、難燃性を評価した以外は実施例8と同様に行った。これらの結果を表3に示した。
【0088】
【表3】
Figure 0003632341
液晶性樹脂組成物の流動性や機械特性を低下させることなく、難燃性を付与した。
【0089】
実施例1115 実施例8において更に表4に示したオレフィン系重合体を液晶性樹脂組成物100重量部に対し表4に示した割合に配合した以外は実施例8と同様にして組成物のペレットを製造した。このペレットを東芝IS55EPN射出成形機(東芝機械プラスチックエンジニアリング(株)製)に供し、シリンダー温度を融点+10℃、金型温度90℃の条件で、サイズが幅8mm×高さ10mm×長さ100mmで厚さが1mmの箱型であって、厚さ0.8mmの隔壁を等間隔に4か所設けた成形品を成形し、成形品を金型から突き出すときの突き出し力を測定し、離型性の評価を行った。また成形品の外観を観察し、ガス焼けの有無についても評価した。
【0090】
【表4】
Figure 0003632341
液晶性樹脂組成物の流動性や機械特性を低下させることなく、また表面外観を損なうことなく金型離型性を付与した。
【0091】
【発明の効果】
本発明の液晶性樹脂組成物は、流動性および機械的特性に優れ、とりわけ剛性と靭性とが改良されることから、これらの特徴を有する電機・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車などその他各種用途に好適な材料である。

Claims (12)

  1. 下記構造単位 (I) (II) (III) (IV) を有する共重合体からなる半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)99.5〜50重量%と全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)0.5〜50重量%とからなる液晶性樹脂(C)100重量部に、組成物中の平均アスペクト比5以上20未満となる無機充填材(D)を5〜200重量部含むことを特徴とする液晶性樹脂組成物。
    Figure 0003632341
    (ただし式中のR 1
    Figure 0003632341
    から選ばれた一種以上の基を示し、R 2
    Figure 0003632341
    から選ばれた一種以上の基を示し、R 3
    Figure 0003632341
    から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
  2. 半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)が95〜55重量%であって、全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)が5〜45重量%である請求項1記載の液晶性樹脂組成物。
  3. ASTM法D790(厚み1/8インチ)にて測定した曲げ弾性率が、その組成物中の全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)を半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)に全量置き換えた場合より15%以上向上することを特徴とする請求項1または2記載の液晶性樹脂組成物。
  4. ASTM法D790(厚み1/8インチ)にて測定した曲げたわみ量が3mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
  5. 半芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A)が構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなり、構造単位(I) および(II)の合計が構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して60〜95モル%であり、構造単位(III) が構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して40〜5モル%であり、構造単位(I) と(II)のモル比[(I) /(II)]が75/25〜95/5であり、また、構造単位(IV)が構造単位(II)および(III) の合計と実質的に等モルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
  6. 全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)が請求項1における (I) の構造単位を有する共重合体、および/または (I) (II) (IV) の構造単位を有する共重合体からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
  7. 全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)が (I) の構造単位を有する共重合体からなることを特徴とする請求項6記載の液晶性樹脂組成物。
  8. 全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(B)が構造単位 (I) (II) (IV) からなり、構造単位 (I) が構造単位 (I) および (II) の合計に対して15〜90モル%であり、構造単位 (II) が構造単位 (I) および (II) の合計に対して85〜10モル%であり、構造単位 (II) が構造単位 (IV) と実質的に等モルであることを特徴とする請求項6記載の液晶性樹脂組成物。
  9. 構造単位 (IV) の5〜100モル%が下記構造単位 (V) であることを特徴とする請求項8記載の液晶性樹脂組成物。
    Figure 0003632341
  10. 無機充填材(D)が繊維状充填剤を含み、かつ組成物中の繊維状充填材の重量平均繊維長が0.15mm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
  11. 無機充填材(D)が繊維状充填材を含み、かつ繊維状充填材がシラン系カップリング剤で表面処理を施していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
  12. 液晶性樹脂(C)100重量部に対して、さらに有機臭素化物0.5〜60重量部を含有せしめてなる請求項1〜11のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
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