JP4696351B2 - 精密成形品用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファインピッチコネクタなどの精密成形品を製造する際に、成形品の金型残りや、金型デポジットによる成形品の不良が改良され、ハイサイクルで信頼性の高いファインピッチコネクタなどの精密成形品が得られる樹脂組成物とその成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマが数多く開発され、市場に供されているが、中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶ポリエステルなどの液晶性樹脂が優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、機械部品、電気・電子部品などに用途が拡大されつつある。中でも良流動性を必要とするコネクターなどの電気・電子部品に用いられる。
【0003】
このような液晶性樹脂の良流動性を生かした薄肉成形品や複雑な形状の成形品では、近年、機器の小型化や軽量化に伴い、さらなる薄肉化や形状の複雑化が進みつつある。その結果、成形加工時における離型不良による変形が生じたり、金型などから成形品を取り除く作業が必要となり、生産性が低下するなど種々の問題が指摘されるようになってきている。
【0004】
一般に離型性を改良する方法としては、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルを添加する方法(特開平2−208353号公報)、結晶核剤およびビスフェノール類のエチレンオキシド付加物のジエステルを添加する方法(特開平5−311056号公報)、オレフィン系化合物を添加する方法(特開平7−233310号公報)、脂肪酸エステルを添加する方法(特開平9−188804号公報)、オレフィン系共重合体と脂肪酸エステル化合物を添加する方法(特開平11−349794号公報)などが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法では、離型性は確かに向上するが、0.8mm以下の狭ピッチのファインピッチコネクタのような薄肉の精密成形品を成形する際には、まだ十分ではなく、ガスの発生による未充填や流動変動を引き起こすことによるバリの発生、また長時間の連続成形によって金型キャビティー内に金型デポジットが発生する可能性があることがわかった。
【0006】
よって本発明は、上述の問題を解決し、成形品の金型残りや、金型付着物による成形品の不良を改良し、ハイサイクルで信頼性の高い成形安定性に優れたファインピッチコネクタなどの精密成形品用樹脂組成物およびその成形品を得ることを課題とする。
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は(1)(A)液晶ポリエステルおよび/または液晶ポリエステルアミドからなる1種以上の液晶性樹脂100重量部に対して、(B)充填材5〜200重量部および(C)密度が0.94〜0.97g/cm3であり、かつASTM D1238で規定されるメルトフローレート(190℃、2160g)が11〜14(g/10分)であり、さらに窒素気流下において室温から100℃/分で350℃まで昇温し、350℃で30分保持した際の減量が1%以下であるポリエチレン樹脂0.01〜0.8重量部を配合してなる精密成形品用樹脂組成物、
(2)(A)液晶性樹脂と(B)充填材からなる組成物と(C)ポリエチレン樹脂のせん断速度100(1/秒)における溶融粘度比が1になる温度が、(A)液晶性樹脂の液晶開始温度以上融点+20℃以下の温度範囲内に存在するように(A)、(B)および(C)成分を用いることを特徴とする上記(1)記載の精密成形品用樹脂組成物、
(3)液晶性樹脂の少なくとも1種が下記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる液晶ポリエステルである上記(1)または(2)記載の精密成形品用樹脂組成物、
【0008】
【化4】
【0009】
(ただし式中のR1は
【0010】
【化5】
【0011】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0012】
【化6】
【0013】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
(4)(C)ポリエチレン樹脂が(A)液晶性樹脂のマトリックス中で最大粒子径が10μm以下の分散粒子として存在することを特徴とする上記(1)〜(3)いずれか記載の精密成形品用樹脂組成物、
(5)(B)充填材がガラス繊維であって、組成物中の重量平均繊維長が0.15mm以上0.4mm以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)いずれか記載の精密成形品用樹脂組成物、
(6)上記(1)〜(5)いずれか記載の精密成形品用樹脂組成物を射出成形してなるファインピッチコネクタ用成形品を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0015】
本発明で用いる液晶性樹脂(A)とは、液晶ポリエステルおよび/または液晶ポリエステルアミドである。液晶ポリエステルとは、異方性溶融相を形成するポリエステルであり、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルが挙げられる。また、液晶ポリエステルアミドとは異方性溶融相を形成するポリエステルアミドであり、例えば上記液晶ポリエステル構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなるポリエステルアミドが挙げられる。
【0016】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族ジオキシ単位としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位、芳香族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などから生成した構造単位、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールなどから生成した構造単位が挙げられる。
【0017】
液晶ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステルなどが挙げられる。
【0018】
異方性溶融相を形成する液晶ポリエステルの好ましい例としては、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶ポリエステル、または、(I)、(II) および(IV)の構造単位からなる異方性溶融相を形成する液晶ポリエステルなどがより好ましく挙げられる。なかでも特に(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶ポリエステルが好ましい。
【0019】
【化7】
【0020】
(ただし式中のR1は
【0021】
【化8】
【0022】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0023】
【化9】
【0024】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【0025】
【化10】
【0026】
であり、R2が
【0027】
【化11】
【0028】
であるものが特に好ましい。
【0029】
本発明に好ましく使用できる液晶ポリエステルは、上記構造単位(I)、(II)、(IV)からなる共重合体および上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0030】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜92モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜8モル%がより好ましい。また、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0031】
一方、上記構造単位(III) を含まない場合は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(II)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(II)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0032】
また液晶ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外に4−アミノフェノールから生成した4−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0033】
上記好ましく用いることができる液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0034】
本発明において使用する液晶性樹脂の製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステル或いはポリエステルアミドの重縮合法に準じて製造できる。
【0035】
例えば、上記液晶ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶ポリエステルを製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により液晶ポリエステルを製造する方法。
【0036】
液晶性樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0037】
本発明に好ましく使用できる上記液晶性樹脂は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能であり、その際には0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.3以上が好ましく、構造単位(III) を含む場合は0.5〜3.0dl/g、構造単位(III) を含まない場合は1.0〜15.0dl/gが特に好ましい。
【0038】
また、本発明における液晶性樹脂の溶融粘度は0.5〜200Pa・sが好ましく、特に1〜100Pa・sがより好ましい。
【0039】
なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0040】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を指す。
【0041】
本発明で用いる充填材(B)としては、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられる。上記充填材中、ガラス繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。組成物中のガラス繊維の重量平均繊維長は0.15mm以上0.4mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.25mm以上0.35mm以下である。
【0042】
ガラス繊維長は、例えば組成物もしくは成形品を灰化し、デジタイザーを用いて500本について繊維長を測定し、重量平均繊維長を算出することができる。また、上記の充填材は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填材はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0043】
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0044】
上記の充填剤の添加量は(A)成分100重量部に対し、通常5〜200重量部であり、好ましくは10〜150重量部、より好ましくは20〜100重量部である。
【0045】
本発明で用いられるポリエチレン樹脂(C)は、エチレンの重合体であり、基本骨格(-CH2-CH2-)nで表される。ポリエチレン樹脂は分岐の程度(密度に反映)や分子量で大きく特性が異なり、一般的に密度によって分類される。本発明で用いるポリエチレン樹脂(C)は、まず密度が0.94〜0.97g/cm3であることが必須であり、このような密度のポリエチレン樹脂は一般に高密度ポリエチレン樹脂と称される。本発明に用いるポリエチレン樹脂(C)の密度としては、より好ましくは0.95〜0.96g/cm3である。このような高密度ポリエチレンを用いた場合には、液晶性樹脂と混合した際に良好な分散状態をとり、金型デポジットを抑制することができるために好ましい。
【0046】
それ以外のポリエチレン樹脂として、密度が0.93〜0.94g/cm3である中密度ポリエチレンや、0.91〜0.93g/cm3である低密度ポリエチレンがあるが、これらのポリエチレン樹脂は液晶性樹脂に対して密度差が大きすぎ、離型剤としての効果はある程度得られても、高密度ポリエチレンに比べて分散性に劣るために、精密成形品などの薄肉で複雑な形状の成形品を成形する際には、金型デポジットが発生してしまう。
【0047】
また、高密度ポリエチレンであっても、溶融混練時に粘度差が大きすぎる場合には分散不良を起こし、金型デポジットを発生してしまう。そのため、本発明に用いるポリエチレン樹脂(C)は高密度ポリエチレンであり、かつその溶融粘度が、ASTM D1238(190℃、2160g)で規定されるメルトフローレートが11〜14(g/10分)であることが必須である。このような溶融粘度のものを用いた場合に、金型デポジットの抑制効果が十分に発揮され、さらに成形安定性の向上効果なども得られるため好ましい。
【0048】
このような特定の溶融粘度を有する高密度ポリエチレンを用いれば、本発明の効果は得られるが、本発明に用いるポリエチレン樹脂(C)は、窒素気流下において、室温から100℃/分で350℃まで昇温し、350℃で30分保持した際の減量が1%以下であることが必須であり、かかる減量が0.8%以下であることがより好ましく、さらには0.5%以下であることが好ましい。
【0049】
このような加熱減量の差はポリエチレンの製造の後処理工程に起因しており、一般的に粉末形状のポリエチレン樹脂よりもペレット形状のポリエチレン樹脂の方が加熱減量が少ない。また、製造方法によっても加熱減量は異なる。高密度ポリエチレン樹脂の製造方法は、一般的には、中圧法もしくは低圧法と呼ばれる重合時の缶圧が100atm以下の重合法によって、主に配位重合法により製造される。重合触媒としては、Ti系触媒やCr系触媒が用いられ、中圧法ではフィリップス触媒(Cr系)やスタンダード触媒を、低圧法ではチーグラー触媒(Ti系)やメタロセン触媒を用いることができる。重合相としては、溶液重合、スラリー重合、気相重合などを触媒によって選択し、重合相によって、オートクレーブ型、ループ型、流動床型、撹拌床型などの重合容器を用いることができる。 また、配位重合法の他にラジカル重合やアニオン重合によっても製造することができる。本発明に用いるポリエチレン樹脂(C)は、フィリップス触媒やTi併用フィリップス触媒を用いた中圧法スラリー重合やチーグラー触媒を用いた配位重合法によって製造した低圧法溶液重合が好ましい。特に脱触媒工程を容易に行え、低沸点成分の少ないフィリップス触媒を用いた中圧スラリー法によって製造された高密度ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0050】
このようなポリエチレンを用いた場合には、成形時にガスの発生が少なく、未充填やガス焼けによる不良が抑制され、成形安定性に優れた液晶性樹脂組成物が得られるため好ましい。
【0051】
また、中圧法ポリエチレンは、コモノマーとして微量のα−オレフィンやエポキシ基、カルボン酸基などを含有する単量体を共重合することがあるが、本発明で用いるポリエチレン樹脂は(C)は、これらの共重合成分を多量に共重合すると、密度が低下したり、金型への接着性が増したりして、金型デポジットの原因となるため、共重合していないことが好ましい。
【0052】
ポリエチレン樹脂(C)の添加量は、液晶性樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜0.8重量部であることが必須であり、好ましくは0.05〜0.5重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。添加量がこの範囲にある場合には、十分な離型効果を発揮し、かつ金型デポジットなどの問題を引き起こしにくいので好ましい。
【0053】
さらに、本発明の精密成形品用樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤およびポリエチレン樹脂以外の離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニン、など)を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリンなど)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミドなど)、難燃剤(赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれら臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせなど)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤など)などの通常の添加剤を添加して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0054】
また、更なる特性改良の必要性に応じてポリプロピレン、ポリスチレンなどのオレフィン系重合体および無水マレイン酸などによる酸変性オレフィン系重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物を添加して所定の特性をさらに付与することができる。
【0055】
これらを添加する方法は溶融混練することが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜400℃の温度で溶融混練して組成物とすることができ、好ましくは、液晶性樹脂(A)の液晶開始温度〜融点+20℃の温度範囲で溶融混練することであり、より好ましくは、液晶性樹脂(A)の融点±10℃の温度範囲で溶融混練することである。その際、液晶ポリエステルおよび/または液晶ポリエステルアミド、充填材、ポリエチレン樹脂およびその他添加剤との一括混練法でも一度高濃度のポリエチレン樹脂入り液晶性樹脂組成物を作成し、次いで規定の濃度になるように液晶性樹脂、充填材およびその他の添加剤を添加する方法(マスターペレット法)、液晶ポリエステルおよび/または液晶ポリエステルアミドとポリエチレン樹脂を一度混練し、ついで充填材およびその他の添加剤を添加する方法のどの方法を用いてもかまわない。
【0056】
本発明の効果である金型デポジットの抑制効果をさらに発揮させるために、本発明で用いる液晶性樹脂(A)に充填材(B)を添加した組成物に対するポリエチレン樹脂(C)の溶融粘度比が1になる温度が、液晶性樹脂(A)の液晶開始温度以上融点+20℃以下の温度範囲内に存在するように(A)、(B)および(C)成分を用いること、より具体的には上記条件を満たすように(A)、(B)および(C)成分の種類や(A)および(B)成分の配合割合等を選択して用いることが好ましく、より好ましくは液晶開始温度+10℃以上融点+15℃以下の温度範囲内に存在することであり、さらに好ましくは融点±10℃の温度範囲内に存在することが好ましい。
【0057】
このような溶融粘度比を有する場合には、液晶性樹脂(A)マトリックス中でポリエチレン樹脂(C)が、良好な分散形態をとっており、金型デポジットの抑制効果がより顕著に発揮されるために好ましい。
【0058】
液晶性樹脂(A)中でのポリエチレン樹脂(C)の好ましい分散形態としては、最大粒子径が10μm以下であることであり、より好ましくは、最大粒子径が8μm以下であり、さらに好ましくは、最大粒子径が5μm以下である。また、分散粒子径の分布については、流動方向の粒子径が5μm以下のものが10%以上、より好ましくは15%以上であることである。
【0059】
前記した好ましい液晶性樹脂(A)に好ましいメルトフローレート11〜14(g/10分)のポリエチレン樹脂(C)を用い好ましい溶融混練温度範囲である液晶性樹脂(A)の液晶開始温度以上融点+20℃以下の温度範囲でかつ液晶性樹脂(A)と充填材(B)からなる組成物とポリエチレン樹脂(C)の溶融粘度比が1になるような温度で溶融混練した場合に、特に好ましい分散形態が得られ、金型デポジットの抑制効果が最大限発揮され、従来金型デポジットが出やすいような、薄肉、複雑な形状の精密成形品を様々な条件下で長期連続成形しても金型デポジットの発生しない、良成形性の液晶性樹脂組成物が得られる。
【0060】
分散粒子径は、組成物の任意断面を走査型電子顕微鏡で観察したり、断面より切り出した切片を透過型電子顕微鏡により観察することで測定できる。その際に、観察された粒子の長径の内最も大きなものを最大粒子径とした。
【0061】
かくしてなる本発明により得られた、成形品の金型残りや、金型付着物による成形品の不良を改良した精密成形品用樹脂組成物は、優れた溶融流動性、成形性、光学異方性を有しており、通常の成形方法によって、優れた低ガス性、表面外観(色調)および機械的性質を有する三次元成形品、シート、容器、パイプ、フィルムおよび繊維などに加工することが可能である。そして、これらの成形品は、極めて優秀な成形安定性を有していることから、機械機構部品や自動車部品、電気・電子部品などに用いられる精密成形品成形材料として最適である。
【0062】
本発明の液晶性樹脂組成物からなる成形品の具体的用途としては、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などが挙げられ、これらの各用途において有用な効果を発揮する。その中でもコネクタやソケット、リレーケースなどの精密成形品用途、特に0.8mm以下の狭ピッチや0.5mm以下の薄壁部を有するファインピッチコネクタなどの精密成形品用途に有用である。
【0063】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。
参考例
ポリエチレン樹脂(C)
三井化学製高密度ポリエチレン“ハイゼックス”1300J(密度0.965、平均分子量25000、メルトフローレート14g/10分、融点131℃、窒素気流下で室温から350℃まで100℃/分で昇温し、350℃で30分間保持した際の減量0.82%)(C-1)を使用した。
【0064】
また、比較として三井化学製高密度ポリエチレン“ハイゼックス”8200BP(密度0.956、平均分子量120000、メルトフローレート0.03g/10分、融点132℃、窒素気流下で室温から350℃まで100℃/分で昇温し、350℃で30分間保持した際の減量1.8%)(C-2)、三井化学製低密度ポリエチレン“ウルトゼックス”2005HC(密度0.923、平均分子量65000、メルトフローレート0.5g/10分、融点123℃、窒素気流下で室温から350℃まで100℃/分で昇温し、350℃で30分間保持した際の減量1.12%)(C-3)、“ウルトゼックス”15150J(密度0.915、平均分子量21000、メルトフローレート15g/10分、融点115℃、窒素気流下で室温から350℃まで100℃/分で昇温し、350℃で30分間保持した際の減量2.21%)(C-4)を使用した。但し、平均分子量は粘度法による。
【0065】
液晶性樹脂(A)
A−1
p−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部及び無水酢酸960重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、100〜250℃で5時間、250〜330℃で1.5時間反応させた後、325℃、1.5時間で0.5mmHgに減圧し、さらに10分間反応させ重縮合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位12.5モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点314℃、液晶開始温度297℃、324℃の溶融粘度25Pa・s(オリフィス直径0.5mm×10mm、せん断速度1,000(1/秒))の液晶性樹脂を得た。液晶開始温度の測定は、剪断応力加熱装置(CSS−450)により剪断速度1,000(1/秒)、昇温速度5.0℃/分、対物レンズ60倍において測定し、視野全体が流動開始する温度を液晶開始温度とした。
A−2
p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部及び無水酢酸873重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、A−1と同じ条件で重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位100モル等量からなる融点283℃、液晶開始温度240℃、293℃の溶融粘度42Pa・s(オリフィス直径0.5mm×10mm、せん断速度1,000(1/秒))の液晶性樹脂を得た。
【0066】
実施例1〜6、比較例1〜8
参考例で得た液晶性樹脂(A-1、A-2)に表1に示すポリエチレン樹脂および充填材としてガラス繊維(日本電気ガラス製チョップドストランド790DE(直径6μm×3mm長)を所定量秤量し、ドライブレンドした。池貝鉄工製PCM−30型2軸押出機でシリンダー温度を表1に示す温度に設定し、スクリュー回転数100r.p.mの条件で溶融混練してペレットとした。熱風乾燥後、ペレットを下記成形機に供し、シリンダー温度を液晶性樹脂の融点+10℃に設定し、金型温度150℃に設定し、1速1圧の条件で以下に示す測定用テストピースを射出成形して得た。
【0067】
(1)溶融粘度比
液晶性樹脂(A-1、A-2)に表1に示す充填材を所定量秤量し、ドライブレンドし、上記押出機で上記と同じ条件で溶融混練してペレットとした。キャピログラフ1C(東洋精機(株))を用い、オリフィス直径0.5mm×10mm、せん断速度100/秒、滞留時間は5分で、各温度における溶融粘度を測定した。また、同様にポリエチレン樹脂の溶融粘度も測定した。両者の溶融粘度比が1になる温度が液晶性樹脂の液晶開始温度以上融点+20℃以下の範囲外である場合、もしくは溶融粘度比が1になる温度が液晶性樹脂の液晶開始温度以上融点+20℃以下の範囲に存在しない場合には×、液晶性樹脂の液晶開始温度以上融点+20℃以下の範囲にある場合には○で示し、更に溶融粘度比が1になる温度を示した。
【0068】
(2)金型デポジット評価
ファナック製ロボショットα30c型射出成形機で、図1に示す0.8mmピッチ100芯ファインピッチコネクター(インシュレーター)用金型を用いて5000ショット成形を行い、金型表面を目視観察した。金型表面の状態を下記3つの状態に分類し評価するとともに、金型デポジットの目視され始めたショット数を評価した。
図1は上記ファインピッチコネクター(レセプタクル)のインシュレーターの上面図(a)、側面図(b)および下面図(c)であり、インシュレーターには、1.側壁、2.ゲート、3.コンタクト圧入穴、4.コンタクトピッチが設けられており、4.コンタクトピッチは0.8mm、側壁は2mm厚である。
◎:全く金型デポジットがつかず、成形品にも異常がない。
○:若干の金型デポジットが見られるが、成形品には異常がない。
×:金型デポジットがはっきりと目視され、成形品に異常がある。
【0069】
(3)分散粒子径
(2)において成形したインシュレーターの側壁部(0.2mm厚)を流動方向に平行に切削して断面を走査型電子顕微鏡によって観察した。観察されるポリエチレン粒子50個の長径を測定し、その内最大のものを最大分散粒子径とした。
【0070】
(4)成形安定性
(2)と同じ成形機、金型、成形条件で5000ショット成形を行い、未充填およびバリ、過充填による離型不良などの充填ばらつきに起因する成形不良およびの発生件数を評価した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、本発明で規定した高密度ポリエチレンを添加した液晶性樹脂組成物(実施例1〜6)は、離型不良が抑制され、金型デポジットも発生せず、成形安定性にも優れている。また、その中でも液晶性樹脂と充填材の組成物とポリエチレン樹脂の溶融粘度比が1になる温度が好ましい範囲にある場合には(実施例1〜3、5、6)、分散粒子径が好ましい範囲になり、離型性と成形性、金型デポジットの抑制効果に特に優れた精密成形品用樹脂組成物が得られることがわかる。それに対して、ポリエチレン樹脂を添加しない場合には(比較例1、2)、離型不良が起こり、場合によっては成形サイクルを止めて処理する必要がある成形品の金型残りが起こることもあり好ましくない。また、ポリエチレン樹脂の添加量が多すぎる場合には(比較例3)、金型デポジットが発生したり、成形安定性が低下するため好ましくない。また、高密度ポリエチレンでも、高粘度の場合には、(比較例4)金型デポジットの改善効果が見られない。また、更にこれを溶融粘度比のずれの大きくなる温度で混練した場合には(比較例5)、更に金型デポジットが出やすくなり、成形安定性も悪くなる。また、ポリエチレン樹脂が低密度ポリエチレン樹脂である場合には、メルトフローレートが大きくても、小さくても(比較例7、8)、金型デポジットが発生しやすく、成形不良も発生しやすいため好ましくないことがわかる。
【0073】
また、充填材として用いたガラス繊維の重量平均繊維長が本発明において好ましい範囲にない場合にも、ポリエチレン樹脂が本発明で規定した範囲内あれば(実施例6)、金型デポジットが抑制され、成形安定性が向上するが、その効果はガラス繊維の繊維長が好ましい範囲にあるものに比べて若干劣る。
【0074】
【発明の効果】
本発明は、ファインピッチコネクタなどの精密成形品を製造する際に、成形品の金型残りや、金型デポジットによる成形品の不良を改良し、ハイサイクルで信頼性の高いファインピッチコネクタなどの精密成形品が得られる液晶性樹脂組成物を得ることができ、その樹脂組成物およびそれからなる成形品は電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品など、その他各種用途に用いられる精密成形品として好適であり、特にファインピッチコネクタ用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1aは実施例で製造した0.8mmピッチ、100穴のファインピッチコネクター(レセプタクル)のインシュレーターの上面図、図1bは同側面図、図1cは同下面図をそれぞれ示す。
【符号の説明】
1.側壁
2.ゲート
3.コンタクト圧入穴
4.コンタクトピッチ
Claims (6)
- (A)液晶ポリエステルおよび/または液晶ポリエステルアミドからなる1種以上の液晶性樹脂100重量部に対して、(B)充填材5〜200重量部および(C)密度が0.94〜0.97g/cm3であり、かつASTM D1238で規定されるメルトフローレート(190℃、2160g)が11〜14(g/10分)であり、さらに窒素気流下において室温から100℃/分で350℃まで昇温し、350℃で30分保持した際の減量が1%以下であるポリエチレン樹脂0.01〜0.8重量部を配合してなる精密成形品用樹脂組成物。
- (A)液晶性樹脂と(B)充填材からなる組成物と(C)ポリエチレン樹脂のせん断速度100(1/秒)における溶融粘度比が1になる温度が、(A)液晶性樹脂の液晶開始温度以上融点+20℃以下の温度範囲内に存在するように(A)、(B)および(C)成分を用いることを特徴とする請求項1記載の精密成形品用樹脂組成物。
- (C)ポリエチレン樹脂が(A)液晶性樹脂のマトリックス中で最大粒子径が10μm以下の分散粒子として存在することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の精密成形品用樹脂組成物。
- (B)充填材がガラス繊維であって、組成物中の重量平均繊維長が0.15mm以上0.4mm以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の精密成形品用樹脂組成物。
- 請求項1〜5いずれか記載の精密成形品用樹脂組成物を射出成形してなるファインピッチコネクタ用成形品。
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