JP3911844B2 - 液晶性樹脂ペレット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶性樹脂を含有するペレットに関する。さらに詳しくは計量安定性に代表される供給性、定量性に優れた形状を持つ液晶性樹脂を含有するペレットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発されているが、中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性樹脂が優れた流動性と機械物性を有する点で注目されている。
【0003】
液晶性樹脂の製造方法としては溶融重合法(特開昭62−277427号公報)、塊状重合法(特開昭57−151619号公報)、固相重合法(特開昭60−190449号公報)等が知られ、機械強度等の機能向上を目的とした無機フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、着色剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤など通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂の充填方法としては、押出機を使用した溶融混練法が一般に知られている。
【0004】
また、熱可塑性樹脂あるいは熱可塑性樹脂組成物のペレットの製造方法としては、吐出口に設けられた吐出口を通した溶融ポリマーを紐状に押出し、冷却水により冷却後、回転刃と固定刃を有するカッターを用いペレット状に切断する方法(コールドカット法)が最も一般的に用いられている。また、上記方法におけるペレットの収率をさらに向上させるためにトラフ内に溶融ポリマーを紐状に流し、冷却水の存在下でカッターで切断する方法などがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、液晶性樹脂は他の熱可塑性樹脂に比べ冷却固化した時の弾性率が高いこと、強靱な繊維質を有しているため単に上記の方法を用いただけでは紐状物の断面長さが一定しなかったり、あるいは切断時にペレットの割れを生じ、破片・粉末の混入などによりペレットの形状が不揃いになり、ペレット化収率が悪くなり、しかも得られたペレットは成形機の原料投入口でのつまり、計量値のバラツキなどのトラブルが発生しやすくなり、さらには成形品の不良率の増加、金型内過充填による金型破損を招く可能性があることがわかった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決し、計量安定性に代表される供給性、定量性に優れた形状をもつペレットを得ることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は
(1)流動可能な状態の液晶性樹脂を吐出口を通して吐出したのち、切断することにより得られる液晶性樹脂ペレットであってペレットの切断面と垂直な方向の平均長さをM、ペレット切断面のうち最も長い径(長径)の平均長さをT、最も短い径(短径)の平均長さをZ、ペレットの切断面と垂直な方向の平均長さMの標準偏差を(Mσ)としたとき、1mm≦M≦2.0mm、1mm≦T≦1.99mm、1mm≦Z≦1.69mmかつMσ≦0.15、(M+T+Z)≦5.68mm、(M−Z)≦0.5mm、(T−M)≧−0.1mmを満足することを特徴とする液晶性樹脂ペレット、
(2)液晶性樹脂がその配合成分として充填剤をさらに含有するものである(1)記載の液晶性樹脂ペレット、
(3)充填剤の含有量が液晶性樹脂100重量部に対して充填剤0.01〜200重量部である上記(2)記載の液晶性樹脂ペレット、
(4)液晶性樹脂がp−ヒドロキシ安息香酸残基をその構造単位として含有する液晶性樹脂である上記(1)〜(3)のいずれか1項記載の液晶性樹脂ペレット、
(5)液晶性樹脂がエチレンジオキシ単位をその構造単位として含有する液晶性樹脂である上記(1)〜(4)いずれか1項記載の液晶性樹脂ペレット、
(6)液晶性樹脂が下記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)からなる液晶性ポリエステルである上記(5)項記載の液晶性樹脂ペレット、
【化4】
(ただし式中のR1 は
【化5】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2 は
【化6】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
(7)液晶性ポリエステルの各構造単位の存在比率が、構造単位(I) および(II)の合計が構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して30〜95モル%、構造単位(III) が構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して70〜5モル%であり、構造単位(I) と(II)のモル比[(I)/(II)]が75/25〜95/5であり、構造単位(IV)と構造単位(II)および(III) の合計とが実質的に等モルである上記(6)記載の液晶性樹脂ペレット、
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶性樹脂とは、溶融時に異方性を形成し得るポリマーであり、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミド、液晶ポリカーボネート、液晶ポリエステルエラストマーなどが挙げられ、なかでも液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミドなどが好ましく用いられる。
【0010】
上記液晶性ポリエステルとしては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルを挙げることができ、液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルアミドを挙げることができる。
【0011】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリマーは芳香族オキシカルボニル単位としてp−ヒドロキシ安息香酸からなる構造単位を含む液晶性ポリマーであり、また、エチレンジオキシ単位を必須成分とする液晶性ポリマーも好ましく使用できる。さらに好ましくは下記構造単位(I) 、(III) 、(IV)あるいは(I) 、(II)、(III) 、(IV)の構造単位からなるポリエステルであり、最も好ましいのは(I) 、(II)、(III) 、(IV)の構造単位からなるポリエステルである。
【0012】
【化7】
(ただし式中のR1 は
【化8】
から選ばれた一種以上の基を示し、R2 は
【化9】
から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
【0013】
なお、構造単位(II)および(III) の合計と構造単位(IV)は実質的に等モルであることが望ましい。
【0014】
上記構造単位(I) はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた1種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III) はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた1種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1
【化10】
であり、R2 が
【化11】
であるものが特に好ましい。
【0015】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I) 、(III) 、(IV)または(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体であり、上記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)の共重合量は任意である。しかし、流動性の点から次の共重合量であることが好ましい。
【0016】
すなわち、上記構造単位(I) 、(III) 、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I) は構造単位(I) および(III) の合計に対して30〜85モル%が好ましく、40〜80モル%がより好ましい。また、構造単位(IV)は構造単位(III) と実質的に等モルであることが好ましい。
【0017】
一方、上記構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I) および(II)の合計は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計の30〜95モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましい。また、構造単位(III) は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜15モル%がより好ましい。また、構造単位(I) と(II)のモル比[(I) /(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III) の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0018】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I) 〜(IV)以外にp−アミノフェノ−ルから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0019】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I) 〜(IV)を構成する成分以外に3,3´−ジフェニルジカルボン酸、2,2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0020】
本発明のペレットにおける液晶性ポリマーの重合方法は特に制限はなく、例えば液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドの製造方法は、公知のポリエステルあるいはポリエステルアミドの重縮合法に準じて製造できる。
【0021】
例えば、上記好ましく用いられる液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
【0022】
(1)p−アセトキシ安息香酸、4,4´−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸およびポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルから脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0023】
(2)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、無水酢酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、ポリエチレンテレフタレ―トなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルとを脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0024】
(3)(1)または(2)の製造方法において出発原料の一部に特開平3−59024号公報のように1,2−ビス(4−ヒドロキシベンゾイル)エタンを用いる方法。
【0025】
重縮合反応に使用する触媒としては、液晶性樹脂の重縮合触媒として公知のものを使用することができる。
【0026】
また、本発明の液晶性樹脂ペレットの溶融粘度は特に限定されないが、本発明の効果をより発揮するために15〜500Pa・sであることが好ましく、20〜300Pa・sであることがより好ましい。
【0027】
なお、ここで溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下でノズル径0.5mm φ、ノズル長10mmのノズルを用い高化式フローテスターによって測定した値である。また、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から40℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )のピークを指す。
【0028】
また、本発明で用いる液晶性樹脂にはさらに充填剤を含有せしめることができる。かかる充填剤としては、液晶性樹脂に含有せしめうるものであれば特に制限はなく、無機フィラー、有機フィラー、添加剤、他の熱可塑性樹脂から選ばれた1種以上の充填剤が挙げられる。
【0029】
また、かかる充填剤の配合量は特に制限はないが、液晶性樹脂100重量部に対して充填剤0.01〜200重量部を、好ましくは0.1〜150重量部を含有せしめることができる。液晶性ポリマーの優れた成形性、機械的性質を損なわないためには無機フィラーおよび/または有機フィラーの充填量は40〜150重量部が好ましく、更に好ましくは50〜100重量部である。また、添加剤の充填量は0.01〜20重量部が好ましく、更に好ましく0.1〜10重量部以下である。そして、熱可塑性樹脂の充填量は0.01〜150重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜100重量部である。
【0030】
本発明に用いる無機フィラー、有機フィラーとしては具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状フィラー、マイカ、タルク、カオリン、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの繊維状、粉状、粒状あるいは板状の無機フィラー、有機フィラーが挙げられる。本発明に用いるガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができるが、ガラス繊維の平均繊維径は3〜15μmが好ましい。また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0031】
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0032】
添加剤としては、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、ベンゾフェノンなど)、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなど)を含む着色剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤などの通常の添加剤が挙げられる。
【0033】
また、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系樹脂、、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリアリレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイドなどのポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリオキシメチレンなどの通常の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0034】
充填材等を添加した場合の溶融粘度も本発明の効果をより発揮するために未充填系と同様に15〜500Pa・sであることが好ましく、20〜300Pa・sであることがより好ましいが、ここで溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下でノズル径1.0mm φ、ノズル長10mmのノズルを用い高化式フローテスターによって測定した値である。
【0035】
液晶性樹脂と充填剤を溶融混練する際には、2軸押出機を使用することが好ましい。なかでも液晶性樹脂、充填剤を一括あるいは逐次連続的に該押出機に供給する溶融混練法が推奨される。
【0036】
本発明のペレットの特徴はペレットのそれぞれの長さを切断面方向の平均長さをM、ペレット断面の長い方の平均長さをT、短い方の平均長さをZ、ペレットの切断面と垂直方向の平均長さMの標準偏差をMσとしたとき、1mm≦M≦2.0mm、1mm≦T≦1.99mm、1mm≦Z≦1.69mmかつMσ≦0.15、(M+T+Z)≦5.68mm、(M−Z)≦0.5mm、(T−M)≧−0.1mmの全項目を満たすことに特徴があり、好ましくは(M−Z)≦0.4mmより好ましくは上記記載のものにさらに(M−Z)≦0.3mm、最も好ましいものは上記記載のものにさらに200個のペレット断面の短い方の平均長さZの標準偏差をZσとしたとき、Zσ≦0.10を満足するものである。本発明の目的達成はペレットのそれぞれの寸法の微妙なバランスから成り立っており、上記範囲からいずれかの項目がはずれた場合、押出時あるいは成形時の供給性、定量性が悪くなり本発明の目的を達成することができない。なお、ペレットの寸法の測定はペレット200粒無作為に抽出し、ノギスを用いて測定し、その平均値およびその標準偏差をそれぞれの値とする。
【0037】
上記液晶性樹脂ペレットは、流動可能な状態の液晶性樹脂を吐出口を通して吐出したのち、切断することにより得られるものであり、例えば液晶性樹脂の重合終了後、溶融状態の液晶性樹脂を重合反応槽から吐出口を通し、紐状に吐出、あるいは溶融状態の液晶性樹脂を押出機の吐出口から紐状に吐出するなどの方法により紐状物とし、切断することにより得られる。
【0038】
本発明の液晶樹脂ペレットの製造方法は、本発明に規定されたペレットが得られる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば流動可能な状態の液晶性樹脂を吐出口を通して吐出した紐状物を、引き取りローラーと移動刃、固定刃を有するカッターでかつ引き取りローラーの速度に対して移動刃の速度を速くする方法が挙げられる。より具体的には、重合終了後の溶融状態の液晶性樹脂を反応缶より吐出口を介して、あるいは溶融状態の液晶性樹脂を押出機より先端部に設けられている吐出口を介して、紐状に吐出し、吐出された紐状物を引き取りローラーと移動刃、固定刃を有するカッターでかつ引き取りローラーの速度に対して移動刃の速度を速くする方法、あるいは、液晶性樹脂と充填剤を押出機などの溶融混練機を使用して溶融混練した後、先端部の吐出口を介して紐状に吐出し、吐出された紐状物を引き取りローラーと移動刃、固定刃を有するカッターでかつ引き取りローラーの速度に対して移動刃の速度を速くする方法などが推奨される。
【0039】
また、液晶性樹脂からなる紐状物をカッティングする工程は特に限定はないが、溶融状態の液晶性樹脂を吐出口から紐状に吐出された紐状物を冷却水により冷却した後、空気層などの気層を経由後、カッターにより切断する方法などが挙げられる。これらの冷却水の温度は10〜90℃が好ましく、20〜70℃が好ましい。また、吐出口の径は1〜10mmが好ましく2〜7mmがより好ましい。
【0040】
吐出口を介して吐出された紐状物をペレット状にカッティングする際には、通常、引き取りローラーと移動刃、固定刃を有するカッターにより切断しペレットとされるが、引き取りローラーの速度に対して移動刃の速度が、例えば1.1倍以上2倍以下とすることが好ましい。より好ましくは1.3倍以上1.8倍以下、さらに好ましくは1.3倍以上1.7倍以下であり、移動刃は回転する回転刃を用いるものが好ましく用いられる。引き取りローラー速度に対して移動刃の速度が小さすぎる場合、ペレットが大型化するためにペレット内部まで十分に冷却されず、ペレット内部の半溶融物が流れ出てきたり、ペレットの縦ワレ等が起こり、得られるペレット形状が不揃いとなる傾向にあり、また逆に引き取り速度に対して移動刃の速度が大きすぎるとペレットが細かくなりすぎ本発明の目的を達成できない。さらに、固定刃、移動刃はジルコニア、ステライト(コバルトをベースにクロムとタングステンを加えた合金)、タングステンカーバイトなどの材質を用いたものが好ましく用いられる。
【0041】
かくして得られる本発明のペレットは、供給性、定量性に優れるため、射出成形、押出成形などの成形において、安定して成形できる。例えば、射出成形などの成形においてはショット間のバラツキがなく、安定して成形できるため、成形品の品質(例えば寸法精度など)のバラツキが小さくなるため、信頼性の高い成形品が得られる。かくして得られる成形品は、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケーススイッチコイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、その他各種用途に有用である。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。
【0043】
参考例1
p−ヒドロキシ安息香酸11.05kg、4,4’−ジヒドロキシビフェニル1.40kg、テレフタル酸1.25kg、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート2.40kgおよび無水酢酸10.67kgを圧力容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下に100〜250℃で1.5時間反応させた後、315℃、1時間で66Paに減圧し、さらに1.25時間反応させ、重縮合を完結させた。次に反応容器内を2.0kg/cm2に加圧し、直径5mmの円形吐出口を5ケ持つ吐出口を経由して320℃のポリマーを紐状に吐出した。これを以下に記載の方法で、ペレタイズした。この液晶ポリエステル樹脂の融点は315℃であった。このペレットの切断面と垂直方向の平均長さ(M)、ペレット切断面の長径の平均長さ(T)、短径の平均長さ(Z)、Mの標準偏差(Mσ)、Zの標準偏差(Zσ)および成形安定性の結果を表1に示す。なお、測定方法については次のとおりである。
【0044】
(1)ペレットの平均長さ(M、T、Z)と標準偏差(σ) :
200個のペレットの切断面方向の平均長さ(M)、ペレット断面の長い方の平均長さ(T)、短い方の平均長さ(Z)をノギスを用いて0.01mmの単位まで測定し、各長さの平均とMとZの標準偏差(σ)を求めた。
【0045】
(2)計量安定性
シリンダ温度325℃、金型温度90℃に設定した射出成形機(住友ネスタール射出成形機プロマット(住友重機械工業(株)製)に供し、0.5mm厚×12.7mm×150mmの棒状成形品を50ショット成形し、その際の各ショット計量時間の平均値とそのそのばらつき幅(最大値−最小値)を測定した。
【0046】
(3)成形時のクッション量:
シリンダ温度325℃、金型温度90℃に設定した射出成形機(住友ネスタール射出成形機プロマット(住友重機械工業(株)製)に供し、3.2mm 厚×12.7mm×127mmの棒状成形品を50ショット成形し、その際の各ショットのシリンダーのクッション量の平均値とそのばらつき幅(最大値−最小値)を測定した。
【0047】
比較例1
参考例1と同一組成、同一条件で重縮合反応を完了させた後、水温40℃の水浴に2秒くぐらせた後、空気層を経て引き取り速度40m/minで引き取りローラーを経て回転刃を40m/minに調整されたストランドカッター(田辺プラスチック機械(株)製)にてペレタイズした。結果を表1に示す。
【0048】
実施例1
スクリュ−径44mmφの2軸押出機(日本製鋼所(株)製)に参考例1と同様の方法で得た液晶ポリエステル100重量部と、直径10μm、長さ3mmのガラス繊維50重量部を連続供給し、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した後、直径5mmの円形吐出口を水平に3ヶ配置した吐出口を経由して紐状に吐出し、水温45℃の水浴に1.5秒くぐらせた後、引き取り速度40m/minで引き取りローラーを経て回転刃を60m/minに調整されたストランドカッター(田辺プラスチック機械(株)製)にてペレタイズした。結果を表1に示す。
【0049】
比較例2
実施例1と同一組成、同一条件で溶融混練した後、引き取り速度40m/minで引き取りローラーを経て回転刃を42m/minに調整されたストランドカッターを用いた以外は実施例2と同じ条件でペレタイズした。結果を表1に示す。
【0050】
実施例2
スクリュ−径44mmφの2軸押出機(日本製鋼所(株)製)に参考例1と同様の方法で得た液晶ポリエステル100重量部と、直径10μm、長さ3mmのガラス繊維50重量部を連続供給し、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した後、直径5mmの円形吐出口を水平に3ヶ配置した吐出口を経由して紐状に吐出し、水温55℃の水浴に1.8秒くぐらせた後、引き取り速度40m/minで引き取りローラーを経て回転刃を65m/minに調整されたストランドカッター(田辺プラスチック機械(株)製)にてペレタイズした。結果を表1に示す。
【0051】
比較例3
実施例2と同一組成、同一条件で溶融混練した後、引き取り速度30m/minで引き取りローラーを経て回転刃を70m/minに調整されたストランドカッターを用いた以外は実施例3と同じ条件でペレタイズした。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1からも明らかなように本発明のペレットは比較例に比べ、計量時間が短くかつ安定にシリンダー内に樹脂が供給され、また十分なクッション量およびクッション量にばらつきが少ないことから成形安定性に優れていることがわかる。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、供給性、定量性などの成形安定性に優れた液晶性樹脂または液晶性樹脂組成物のペレットを得ることができる。
Claims (7)
- 流動可能な状態の液晶性樹脂を吐出口を通して吐出したのち、切断することにより得られる液晶性樹脂ペレットであってペレットの切断面と垂直な方向の平均長さをM、ペレット切断面のうち最も長い径(長径)の平均長さをT、最も短い径(短径)の平均長さをZ、ペレットの切断面と垂直な方向の平均長さMの標準偏差を(Mσ)としたとき、1mm≦M≦2.0mm、1mm≦T≦1.99mm、1mm≦Z≦1.69mmかつMσ≦0.15、(M+T+Z)≦5.68mm、(M−Z)≦0.5mm、(T−M)≧−0.1mmを満足することを特徴とする液晶性樹脂ペレット。
- 液晶性樹脂がその配合成分として充填剤をさらに含有するものである請求項1記載の液晶性樹脂ペレット。
- 充填剤の含有量が液晶性樹脂100重量部に対して充填剤0.01〜200重量部である請求項2記載の液晶性樹脂ペレット。
- 液晶性樹脂がp−ヒドロキシ安息香酸残基をその構造単位として含有する液晶性樹脂である請求項1〜3のいずれか1項記載の液晶性樹脂ペレット。
- 液晶性樹脂がエチレンジオキシ単位をその構造単位として含有する液晶性樹脂である請求項1〜4いずれか1項記載の液晶性樹脂ペレット。
- 液晶性ポリエステルの各構造単位の存在比率が、構造単位(I) および(II)の合計が構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して30〜95モル%、構造単位(III) が構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して70〜5モル%であり、構造単位(I) と(II)のモル比[(I)/(II)]が75/25〜95/5であり、構造単位(IV)と構造単位(II)および(III) の合計とが実質的に等モルである請求項6記載の液晶性樹脂ペレット。
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