JP4281377B2 - 液晶性ポリエステルおよびその組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融加工時の薄肉流動性、滞留安定性と高温金型での離型性に優れた液晶性ポリエステルおよびその組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発され市場に供されているが、中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリエステルなどの液晶性ポリマーが優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、電気・電子部品用途を中心とした射出成形品用途で需要が拡大している。
【0003】
液晶性ポリマーとしてp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位と4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位およびテレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルが古くから知られているが、耐熱性に優れるものの成形加工温度が高過ぎるという欠点があった。そこで成形加工温度を下げたり、他の特徴を付与するためにハイドロキノンやイソフタル酸を共重合する試みがなされている(例えば、特許文献1〜8参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭60−38425号公報(第1〜2頁)
【特許文献2】
特開昭63−39918号公報(第1頁)
【特許文献3】
特開昭63−57633号公報(第1〜2頁)
【特許文献4】
特開平3−52921号公報(第1頁)
【特許文献5】
特表平3−501749号公報(第1〜4頁)
【特許文献6】
特開平10−95839号公報(第1〜2頁)
【特許文献7】
特開2001−2766号公報(第1〜3頁)
【特許文献8】
特開2001−114876号公報(第1〜4頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら特許文献に記載の液晶性ポリエステルは溶融粘度の温度依存性が小さく、シリンダ温度を高温にしないと薄肉流動性が得られず、高温で長時間滞留すると分解ガスが発生する恐れがあった。また、薄肉成形するために金型温度を100℃以上の高温に設定した場合、溶融加工温度が高くなるために冷却に長時間を要し、成形サイクルが長くなってしまうという問題があった。また、その際に十分な冷却時間を設定しても離型時に変形したり、突き出しピンの痕が深くへこむなどの成形不良が生じ、品質に優れる成形品を安定して得ることができなかった。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、溶融加工時の薄肉流動性、滞留安定性に優れ、高温金型での離型時に変形や突き出しピンの痕が深くへこむなどの不良の起こりにくい液晶性ポリエステルおよびその組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造単位からなり特性の組成比である液晶性ポリエステルが期待した特性を有することを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は
(1)下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して60〜75モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して60〜70モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と構造単位(IV)および(V)の合計が等モルであり、25℃の貯蔵弾性率(E1)に対する100℃の貯蔵弾性率(E2)の比(E2/E1)が0.3以上であり、25℃での貯蔵弾性率(E1)に対する120℃での弾性率(E3)の比(E3/E1)が0.3以上であることを特徴とする液晶性ポリエステル、
【0009】
【化2】
【0010】
(2)構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して62〜68モル%である上記(1)記載の液晶性ポリエステル、
(3)上記(1)または(2)記載の液晶性ポリエステル100重量部に対して、充填材40〜500重量部を配合してなる液晶性ポリエステル組成物を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶性ポリエステルは、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成される液晶性ポリエステルである。
【0012】
【化3】
【0013】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位を、構造単位(III)はハイドロキノンから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸から生成した構造単位を、構造単位(V)はイソフタル酸から生成した構造単位を各々示す。
【0014】
構造単位(I)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%であり、より好ましくは68〜75モル%である。また、構造単位(II)は構造単位(II)および(III)の合計に対して60〜75モル%であり、より好ましくは65〜73モル%である。また、構造単位(IV)は構造単位(IV)および(V)の合計に対して60〜70モル%であり、より好ましくは62〜68モル%である。
【0015】
特に、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して62〜68モル%である場合には、本発明の特性である成形加工性がバランス良く発現するため好ましい。
【0016】
構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計は等モルであるが、ポリマーの末端基を調節するためにカルボン酸成分またはヒドロキシル成分を過剰に加えてもよい。すなわち「等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットとしては等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0017】
本発明の液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I)〜(V)を構成する成分以外に2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、4,4´ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,3´−ジフェニルジカルボン酸、2,2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、クロルハイドロキノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂肪族、脂環式ジオール、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、m−ヒドロキシ安息香酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸、p−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸などの芳香族アミノカルボン酸、1,4−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミノナフタレンなどの芳香族ジアミン、p−アミノフェノールなどの芳香族ヒドロキシルアミンなどを本発明の構造単位の特異的な組成比を逸脱することなく、本発明の特徴を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0018】
本発明において使用する上記液晶性ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0019】
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4´−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンとテレフタル酸、イソフタル酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸およびテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0020】
なかでもp−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法が好ましい。さらに、4,4´−ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノンの合計使用量とテレフタル酸およびイソフタル酸の合計使用量は、等モルである。無水酢酸の使用量は、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4´−ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノンのフェノール性水酸基の合計の1.10当量以下であることが好ましく、1.05当量以下であることがより好ましく、下限については1.0当量以上であることが好ましい。
【0021】
本発明の液晶性ポリエステルを脱酢酸重縮合反応により製造する際に、液晶性ポリエステルが溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合反応を完了させる溶融重合法が好ましい。例えば、所定量のp−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸、無水酢酸を攪拌翼、留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱し水酸基をアセチル化させた後、液晶性ポリエステルの溶融温度まで昇温し、減圧により重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。アセチル化させる条件は、通常130〜300℃の範囲、好ましくは135〜200℃の範囲で通常1〜6時間、好ましくは140〜180℃の範囲で2〜4時間反応させる。重縮合させる温度は、液晶性ポリエステルの溶融温度、例えば、250〜350℃の範囲であり、好ましくは液晶性ポリエステルの融点+10℃以上の温度である。重縮合させるときの減圧度は通常0.1mmHg(13.3Pa)〜20mmHg(2660Pa)であり、好ましくは10mmHg(1330Pa)以下、より好ましくは5mmHg(665Pa)以下である。なお、アセチル化と重縮合は同一の反応容器で連続して行っても良いが、アセチル化と重縮合を異なる反応容器で行っても良い。
【0022】
得られたポリマーは、それが溶融する温度で反応容器内を例えば、およそ1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出することができる。溶融重合法は均一なポリマーを製造するために有利な方法であり、ガス発生量がより少ない優れたポリマーを得ることができ、好ましい。
【0023】
本発明の液晶性ポリエステルを製造する際に、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。例えば、本発明の液晶性ポリエステルのポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕し、窒素気流下、または、減圧下、液晶性ポリエステルの融点−5℃〜融点−50℃(例えば、200〜300℃)の範囲で1〜50時間加熱し、所望の重合度まで重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。固相重合法は高重合度のポリマーを製造するための有利な方法である。
【0024】
液晶性ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0025】
本発明の液晶性ポリエステルは、数平均分子量は3,000〜25,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜20,000、より好ましくは8,000〜18,000の範囲である。
【0026】
なお、この数平均分子量は液晶性ポリエステルが可溶な溶媒を使用してGPC−LS(ゲル浸透クロマトグラフ−光散乱)法により測定することが可能である。
【0027】
また、本発明における液晶性ポリエステルの溶融粘度は1〜200Pa・sが好ましく、10〜200Pa・sがより好ましく、さらには10〜100Pa・sが特に好ましい。
【0028】
なお、この溶融粘度は液晶性ポリエステルの融点+10℃の条件で、ずり速度1,000/sの条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0029】
また、本発明の液晶性ポリエステルは、優れた溶融成形性に加えて、高温金型での高速サイクル成形を行うために、25℃での貯蔵弾性率(E1)に対する100℃の貯蔵弾性率(E2)の比(E2/E1)が0.3以上であり、好ましくは(E2/E1)が0.4以上であり、更に好ましくは(E2/E1)が0.5以上である。上限としては1以下であることが好ましい。また、より高温金型での成形をするに当たり、25℃での貯蔵弾性率(E1)に対する120℃での弾性率(E3)の比(E3/E1)が0.3以上を満たすことが必須であり、好ましくは(E3/E1)が0.4以上である。上限としては1以下であることが好ましい。液晶性ポリエステルは、一般に高温になるにつれて貯蔵弾性率が低下する傾向があり、例えば金型温度が120℃と高温になった場合には、その温度において成形品が変形や突き出しピンの痕の深いへこみを生じるなどの成形不良の原因になるが、(E2/E1)や、(E3/E1)が高いことは、100℃あるいは120℃の高温になっても貯蔵弾性率の低下が抑制されることを意味し、結果的に、上記のような成形不良が発生しにくい等の効果を得ることができるものである。
【0030】
本発明の液晶性ポリエステルは、その組成を種々検討した中で、このような100℃以上での貯蔵弾性率の保持率が高い条件を満たす組成範囲を見いだしたものである。
【0031】
液晶性ポリエステルの高温金型での高速サイクル成形においては、薄肉成形するために金型温度を100℃以上の高温に設定するが、該金型温度における弾性率が上記範囲にある場合には、短い冷却時間でも高温で弾性率を保持しているために、金型から成形品を突き出す際に、成形品の変形やスプルーちぎれなどが生じにくく、また、突き出しピンが成形品にめり込んで深くへこんだ不良品を生じることも少なくなるなど、離型不良が起こりにくく好ましい。
【0032】
特に、25℃での貯蔵弾性率に対する100℃での貯蔵弾性率の比が0.3以上を保持している本発明の液晶性ポリエステルは、突き出しピンの痕が深くへこんだり、成形品が変形するなどの成形不良の発生が極めて抑制される。。
【0033】
また、特に限定されるものではないが、本発明の液晶性ポリエステルは下式(1)を満たすことが好ましい。
【0034】
W=a・exp(−b・T) −(1)
W(Pa・s):せん断速度1000(s-1)、温度T(℃)における溶融粘度
T(℃):Tm−5(℃)〜Tm+20(℃)
Tm(℃):液晶性ポリエステルの融点
なお、本発明では、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0035】
式(1)はせん断速度1000(s-1)における溶融粘度を例えば高化式フローテスターによって液晶性ポリエステルの融点−5(℃)〜Tm+20(℃)において、数点温度を変えて測定し、横軸に温度を実数軸に、縦軸に溶融粘度を対数軸にプロットした際に求められる指数近似式であり、a、bが大きくなる程近似直線の傾きが大きくなり、温度変化に対して鋭敏であることを意味する。
【0036】
式中のaは、実数であり、好ましくは1×1010≦a≦1×1018であり、より好ましくは1×1012≦a≦1×1016である。
【0037】
また、bは実数であり、好ましくは0.05<b<0.12であり、より好ましくは0.07<b<0.11である。
【0038】
a、bが上記範囲を取る場合には、溶融加工温度の変化に対して適度に鋭敏であり、このような融点近傍での溶融粘度挙動を示す本発明の液晶性ポリエステルは、流動性が不足した場合に溶融加工温度をわずかに高くするだけで、著しく流動性が向上するために、薄肉、大面積の成形品を成形する際に有利であり、従来の液晶性ポリエステルのように、過剰な昇温を要しないためにガスなどの発生も少ない。また、a、bが上記範囲にあることにより、わずかな射出圧やシリンダ温度のぶれに対して鋭敏になりすぎず、充填位置のばらつきなども現れにくい。
【0039】
本発明においては、液晶性ポリエステルの機械強度その他の特性を付与するために、さらに充填材を配合することが可能である。充填材は特に限定されるものでないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維や液晶性ポリエステル繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウムおよび黒鉛などの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられる。本発明に使用される上記の充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0040】
これら充填材のなかで特にガラス繊維が入手性、機械的強度のバランスの点から好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものならば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランドおよびミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、これらのうち2種以上を併用して使用することもできる。本発明で使用されるガラス繊維としては、弱アルカリ性のものが機械的強度の点で優れており、好ましく使用できる。また、ガラス繊維はエポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの被覆あるいは収束剤で処理されていることが好ましく、エポキシ系が特に好ましい。またシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤が特に好ましい。
【0041】
なお、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0042】
充填材の配合量は、液晶性ポリエステル100重量部に対し、通常40〜500重量部であり、好ましくは50〜400重量部である。
【0043】
さらに、本発明の液晶性ポリエステルには、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料および顔料を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、赤燐、シリコーン系難燃剤など)、難燃助剤、および帯電防止剤などの通常の添加剤、熱可塑性樹脂以外の重合体を配合して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0044】
これらの添加剤を配合する方法は、溶融混練によることが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜350℃、より好ましくは250〜320℃の温度で溶融混練して液晶性ポリエステル組成物とすることができる。その際には、1)液晶性ポリエステル、任意成分である充填材およびその他の添加剤との一括混練法、2)まず液晶性ポリエステルにその他の添加剤を高濃度に含む液晶性ポリエステル組成物(マスターペレット)を作成し、次いで規定の濃度になるようにその他の熱可塑性樹脂、充填材およびその他の添加剤を添加する方法(マスターペレット法)、3)液晶性ポリエステルとその他の添加剤の一部を一度混練し、ついで残りの充填材およびその他の添加剤を添加する分割添加法など、どの方法を用いてもかまわない。
【0045】
かくして得られる本発明の液晶性ポリエステルおよび液晶性ポリエステル組成物は、融点近傍での溶融加工性に優れており、高温金型内でも剛性に優れるために、成形サイクルを短縮でき、かつ突き出しピンの痕の深いへこみや成形品の変形などの不良が極めて少なくなる。
【0046】
さらには本発明の液晶性ポリエステルおよび液晶性ポリエステル組成物は、薄肉流動性、強度に優れており、通常の射出成形、押出成形、プレス成形などの成形方法によって、優れた表面外観(色調)および機械的性質、耐熱性、難燃性を有する三次元成形品、シート、容器、パイプ、フィルムなどに加工することが可能である。なかでも流動性、低ガス性に優れることから射出成形により得られる電気・電子部品用途に適している。
【0047】
このようにして得られた液晶性ポリエステルおよび液晶性ポリエステル組成物は、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコン用モーターインシュレーター、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などに用いることができる。フィルムとして用いる場合は磁気記録媒体用フィルム、写真用フィルム、コンデンサー用フィルム、電気絶縁用フィルム、包装用フィルム、製図用フィルム、リボン用フィルム、シート用途としては自動車内部天井、ドアトリム、インストロメントパネルのパッド材、バンパーやサイドフレームの緩衝材、ボンネット裏等の吸音パット、座席用材、ピラー、燃料タンク、ブレーキホース、ウインドウオッシャー液用ノズル、エアコン冷媒用チューブおよびそれらの周辺部品に有用である。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明の骨子は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
実施例1
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g(6.300モル)、4,4´−ジヒドロキシビフェニル327g(1.890モル)、ハイドロキノン89g(0.810モル)、テレフタル酸292g(1.755モル)、イソフタル酸157g(0.945モル)および無水酢酸1367g(フェノール性水酸基合計の1.03当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら145℃で2時間反応させた後、320℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に90分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
【0050】
この液晶性ポリエステル(A−1)はp−オキシベンゾエート単位がp−オキシベンゾエート単位、4,4´−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して70モル%、4,4´−ジオキシビフェニル単位が4,4´−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して70モル%、テレフタレート単位がテレフタレート単位およびイソフタレート単位の合計に対して65モル%からなり、Tm(液晶性ポリエステルの融点)は314℃で、数平均分子量12,000であり、高化式フローテスターを用い、温度324℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度が25Pa・sであった。
【0051】
なお、融点(Tm)は示差熱量測定において、ポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)とした。
【0052】
また、分子量は液晶性ポリエステルが可溶な溶媒であるペンタフルオロフェノールを使用してGPC−LS(ゲル浸透クロマトグラフ−光散乱)法により測定し、数平均分子量を求めた。
【0053】
液晶性ポリエステルのペレットを熱風乾燥後、下記評価を行った。
【0054】
(1)溶融粘度の温度依存性
高化式フローテスターを用い、L/D=10mm/0.5mmのダイを用い、温度を液晶性ポリエステルの融点Tm−5(℃)〜Tm+20(℃)において、剪断速度1,000/sで溶融粘度を5℃毎に測定し、横軸に温度を実数軸に、縦軸に溶融粘度を対数軸にプロットし、指数近似式を求めた。図1に実施例1で製造した液晶性ポリエステルにおいて求めた結果を示す。図1は実施例1における溶融粘度の温度依存性を示すグラフであり、横軸に温度、縦軸に剪断速度1,000/s、融点(Tm)−5℃、±0℃、+5℃、+10℃、+15℃、+20℃のそれぞれの温度での溶融粘度を対数軸上にプロットしたものの指数近似直線式を示している。 該近似直線の傾きが大きい程、温度に対して鋭敏に溶融粘度が変化することを示している。
上記指数近似式に基づき下式(1)の係数を算出した。
W=a・exp(−b・T) −(1)
W(Pa・s):せん断速度1000(s-1)、温度T(℃)における溶融粘度
T(℃):液晶性ポリエステルの融点Tm−5(℃)〜Tm+20(℃)
なお、a、bが大きくなる程近似直線の傾きが大きくなり、温度変化に対して鋭敏であることを意味する。
【0055】
(2)貯蔵弾性率の温度依存性
動的粘弾性測定装置(バイブロン)を用い、厚み1.98mm×幅4.88mm×長さ20mmの成形片について、両持ち曲げ試験(周波数1Hz)法により25℃での貯蔵弾性率(E1)および、100℃での貯蔵弾性率(E2)、120℃での貯蔵弾性率(E3)を測定し、E2/E1およびE3/E1を算出した。
【0056】
(3)発生ガス量(滞留安定性)
約10mgのペレットを秤量し、窒素ガス雰囲気下、液晶性ポリエステルの融点+10℃の温度で30分保持した際の加熱減量率(%)を加熱重量減分析(TGA)により測定し、発生ガス量とした。
【0057】
実施例2
重合温度を325℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに85分を要した。
【0058】
実施例3
重合温度を340℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに90分を要した。
【0059】
実施例4
重合温度を335℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに70分を要した。
【0060】
参考例1
重合温度を310℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合を行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに95分を要した。
【0061】
実施例5
重合温度を340℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに87分を要した。
【0062】
実施例6
重合温度を310℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに55分を要した。
【0063】
比較例1
実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。重合温度を380℃まで昇温したが、系内に不溶部が析出し始め、それ以上重合できなかった。融点は不均一であった。
【0064】
比較例2
重合温度を290℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに35分を要した。
【0065】
比較例3
重合温度を335℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに25分を要した。
【0066】
比較例4
重合温度を335℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに30分を要した。
【0067】
比較例5
重合温度を365℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに40分を要した。
【0068】
比較例6
重合温度を300℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに35分を要した。
【0069】
比較例7
重合温度を325℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変えて仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに15分を要した。
【0070】
比較例8
重合温度を320℃とした以外は実施例1と同様の方法で、表1に示した各構造単位のモル数のみ変え、その他の共重合成分として6−ヒドロキシ1−2−ナフトエ酸を457g(2.43モル)を仕込み、重合、吐出、ペレタイズを行った。なお、トルクが15kgcmに到達するまでに10分を要した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表1、2からも明らかなように本発明の実施例の液晶性ポリエステルは溶融粘度の温度依存性が比較例2〜8に示した液晶性ポリエステルに比較して大きい。
【0074】
また、実施例の液晶性ポリエステルは比較例2〜8の液晶性ポリエステルに比較して貯蔵弾性率の温度依存性が小さく、100℃以上の高温においても、高い剛性を保持している。
【0075】
実施例7〜18、比較例9〜15
サイドフィーダを備えた日本製鋼所製TEX30型2軸押出機で、実施例および比較例で得た液晶性ポリエステル100重量部をホッパーから投入し、表2に示す配合量の充填材をサイドから投入し、樹脂温度が融点+10℃になるようにシリンダーのヒーター設定温度を調整し、スクリュー回転数100r.p.mの条件で溶融混練してペレットとした。熱風乾燥後下記評価を行った。
【0076】
(4)薄肉流動性
住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)で金型温度を90℃、シリンダー温度を融点+5℃、または融点+20℃に設定し、幅12.7mm×長さ150mm×厚み0.5mmの金型を用い、射出速度99%、射出圧力1000kgf/cm2(49MPa)で成形し、片末端に設けられたサイドゲートから流入した樹脂が成形品の長さ方向に何mmのところまで充填するか評価した。評価した充填長さ(棒流動長)は、流動成形品の幅方向に完全に充填している位置までの長さである。
【0077】
(5)ゲートシール時間
住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)で金型温度を90℃、シリンダー温度を融点+10℃に設定し、幅12.7mm×長さ127mm×厚み3.1mm、スプルー径4mm、スプルー長50mm、長方形ゲート長さ2×幅1mmの金型を用い、射出速度99%、射出圧力を下限圧+10kgf/cm2で成形し、順次保圧時間を長くしていき、成形品の重量を測定し、成形品重量が一定になった点をゲートシール時間として測定した。
【0078】
(6)成形品の変形発生率
住友ネスタール射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)で金型温度を90℃、シリンダ−温度を融点+10℃に設定し、射出圧力を下限圧+10kgf/cm2、射出速度99%、保圧時間=ゲートシール時間、冷却時間5秒で縦127mm×横12.7mm×厚み3.2mmの棒状成形品を100個成形し、離型時に反りやねじれ、スプルー折れなどの変形の生じた個数を評価した。
【0079】
(7)突き出しピン(Eピン)の痕の座ぐり深さ(へこみ)
住友ネスタール射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)で金型温度を120℃、シリンダ−温度を融点+10℃に設定し、射出圧力を下限圧+10kgf/cm2、射出速度99%、保圧時間=ゲートシール時間−0.5秒、冷却時間10秒で縦127mm×横12.7mm×厚み3.2mmの棒状成形品を50個成形し、成形品表面から突き出しピン(Eピン)の痕の底面までの座ぐり深さ(へこみ)を測定し、その平均値を評価した。
【0080】
座ぐり深さが小さい液晶性ポリエステルや液晶性ポリエステル組成物であるほど、離型性に優れているといえる。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
表3、4からも明らかなように本発明の液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステル組成物は比較例10〜15の液晶性ポリエステルおよびその組成物に比べ、融点+5℃の成形温度から融点+20℃の成形温度に昇温した場合に、薄肉流動性が大きく向上することがわかる。
【0084】
また、ゲートシール時間も短く、金型内での固化が速やかで、100℃以上の高温金型条件下での弾性率が高いために、成形品の変形やエジェクトピン痕のへこみなどの不良が起こらず、品質に優れた成形品が得られることがわかる。
【0085】
【発明の効果】
本発明の液晶性ポリエステルおよびその組成物は、溶融加工時の流動性と高温金型での離型性に優れ、低ガス性であるので、特に薄肉大面積部分を有するような電気電子部品に最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例1で製造した液晶ポリエステルの溶融粘度の温度依存性を示すグラフである。
Claims (3)
- 下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して60〜75モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して60〜70モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と構造単位(IV)および(V)の合計が等モルであり、25℃の貯蔵弾性率(E1)に対する100℃の貯蔵弾性率(E2)の比(E2/E1)が0.3以上であり、25℃での貯蔵弾性率(E1)に対する120℃での弾性率(E3)の比(E3/E1)が0.3以上であることを特徴とする液晶性ポリエステル。
- 構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して62〜68モル%である請求項1記載の液晶性ポリエステル。
- 請求項1または2記載の液晶性ポリエステル100重量部に対して、充填材40〜500重量部を配合してなる液晶性ポリエステル組成物。
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