JP2008074899A - 液晶性樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】均質なスラリーを形成することができ、コンプレックス生成とそれに伴う重合昇温過程での急激な発熱を伴うヒドロキノンの昇華を抑制し、かつ重合速度を増大することができる液晶性樹脂の重合方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ヒドロキノンおよびp−ヒドロキシ安息香酸を含むモノマー混合物を、同一系で無水酢酸と反応させ、アセチル化を行った後、さらに、重合して液晶性樹脂を製造する際に、アセチル化反応を行う前に該モノマー混合物と無水酢酸を30℃以上55℃未満の温度で混合してスラリー化する工程を含むことを特徴とする液晶性樹脂の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、均質なスラリーを形成することができ、コンプレックス生成とそれに伴う重合昇温過程での急激な発熱を伴うヒドロキノンの昇華を抑制し、かつ重合速度を増大することができる液晶性樹脂の重合方法に関するものである。
液晶性樹脂は、その優れた耐熱性、流動性、電気特性などを活かして、電気・電子用途の小型精密成形品を中心に需要が拡大している。また、近年、その熱安定性や高熱寸法精度に着目して、発熱部品の支持基材としてOA機器や携帯電話の液晶ディスプレイ支持基材やランプの構造部品などに用いる検討がなされている。
液晶性樹脂の原料としては、p−ヒドロキシ安息香酸や6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を主成分とし、共重合成分としてヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ナフタレンジオール、脂肪族ジオールなどのジオールや、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸、p−アミノ安息香酸、アミノフェノールなどのアミノ基含有モノマーが用いられる。
このうち、p−ヒドロキシ安息香酸とヒドロキノンを用いた液晶性ポリエステルが開示されている(特許文献1〜3参照)。
特開2006−089714号公報 特開2005−213418号公報 特開2000−511220号公報
これらの特許文献の記載によると、原料モノマーを系に仕込み無水酢酸と混合する際には、室温で行っているが、ヒドロキノンを用いた系では昇華物が多いことが知られており問題であった。その原因について鋭意検討した結果、これらのモノマーの中で、ヒドロキノンとp−ヒドロキシ安息香酸および無水酢酸が複合体を形成して系が不均一化し、一度形成された複合体は昇温によって不均一反応を引き起こし、重合昇温途中での激しい発熱がモノマー昇華の原因となることが明らかになった。
本発明は、均質なスラリーを形成することができ、コンプレックスの生成とそれに伴う重合昇温過程での急激な発熱によるヒドロキノンの昇華を抑制し、かつ重合速度を増大することができる液晶性樹脂の重合方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、計量混合時に系の温度を一定温度範囲とすることで安定に均質なスラリーが形成できることを見いだした。
すなわち、本発明は
(1)ヒドロキノンおよびp−ヒドロキシ安息香酸を含むモノマー混合物を、同一系で無水酢酸と反応させ、アセチル化を行い、さらに、重合して液晶性樹脂を製造する際に、アセチル化反応を行う前に該モノマー混合物と無水酢酸を30℃以上55℃未満の温度で混合してスラリー化する工程を含むことを特徴とする液晶性樹脂の製造方法、
(2)ヒドロキノン、p−ヒドロキシ安息香酸を含むモノマー混合物と、無水酢酸を混合し、均質なスラリーとした後、該スラリーを140〜150℃に加熱してアセチル化反応を行う(1)記載の液晶性樹脂の製造方法、
(3)前記スラリーがさらに、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を含む(1)または(2)記載の液晶性樹脂の製造方法、
(4)前記スラリーを35℃以上50℃以下で混合する(1)〜(3)のいずれかに記載の液晶性樹脂の製造方法、
(5)ヒドロキノンの強熱残分が0.005%未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の液晶性樹脂の製造方法、
(6)ヒドロキノンの強熱残分が0.001%未満であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶性樹脂の製造方法および、
(7)ヒドロキノンがジイソプロピルベンゼンを原料とする酸化法で製造されたものであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の液晶性樹脂の製造方法に関するものである。
本発明の液晶性樹脂の製造方法は、ヒドロキノンの昇華量を減少し、かつ重合速度を増大することができ、液晶性樹脂の連続生産性や、生産サイクルタイムを短縮することができる。
本発明の液晶性樹脂の製造方法は、少なくともヒドロキノンとp−ヒドロキシ安息香酸をモノマーとして用い、これらとその他のモノマーを加え、無水酢酸との反応によってモノマーの水酸基をアセチル化し、その後、系を昇温、減圧することで、脱酢酸重縮合もしくは条件によっては脱フェノール重縮合によって製造するものであり、ヒドロキノンとp−ヒドロキシ安息香酸を含むモノマー混合物を同一系で無水酢酸と反応させ、アセチル化を行い、さらに、重合して液晶性樹脂を製造する際に、アセチル化反応を行う前に、該モノマー混合物と無水酢酸を30℃以上55℃未満の温度で混合してスラリー化する工程を含むことを特徴とするものであり、より好ましくは、スラリー化工程の系の温度が35℃以上50℃以下であり、最も好ましくは40℃以上45℃以下である。アセチル化反応前のスラリー化工程ではこれらの温度で混合し、均質なスラリーとなっていることが好ましい。スラリーが均質になっているかどうかは、反応器に取り付けられたルッキンググラスなどから目視により確認することができる。
上記温度でスラリー化を行うことで、ヒドロキノンとp−ヒドロキシ安息香酸を含むモノマー混合物と無水酢酸が均質なスラリーを形成する。該温度域より低い温度ではヒドロキノンとp-ヒドロキシ安息香酸および無水酢酸が複合体を形成し、スラリーが固結あるいは増粘する。該温度域より高い温度では、無水酢酸の蒸散量が増加するため好ましくない。
ヒドロキノンとp−ヒドロキシ安息香酸および無水酢酸を計量する際にも、該温度範囲で行うことが重要であり、ヒドロキノンやp−ヒドロキシ安息香酸を該温度範囲とすることができない場合には、該温度範囲に保温した無水酢酸中にヒドロキノンやp−ヒドロキシ安息香酸を投入して、低下した温度分を加熱昇温して調整するか、無水酢酸とヒドロキノンまたは無水酢酸とp−ヒドロキシ安息香酸だけを室温で計量したのち、系を該温度範囲まで昇温し、残りの1成分を加えて更に該温度範囲に調整することも可能である。
ヒドロキノンとp−ヒドロキシ安息香酸以外に用いるモノマーとしては、芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が挙げられ、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などが、それぞれ挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシノール、t−ブチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、クロロヒドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどが挙げられる。アミノ基を有するモノマーとしては、p−アミノ安息香酸、p−アミノフェノールなどが挙げられる。
好ましい組み合わせとして、p−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸および/またはイソフタル酸が例示される。
また、よりスラリーでの均質性を高めるために、ヒドロキノンの強熱残分が0.01未満であることが好ましく、より好ましくは0.005未満であり、更に好ましくは0.001未満である。
強熱残分とは、ヒドロキノンが十分に昇華もしくは燃焼する温度で十分に熱処理した残分のことである。強熱残分が好ましい範囲より大きいと、スラリー形成時に複合体を生成しやすく、また重合速度が小さくなるため好ましくない。
上記強熱減量の少ないヒドロキノンは、公知の方法で作成できるが、DIPB法(ジイソプロピルベンゼンを原料とする製造法)で製造されたヒドロキノンが、アニリンの酸化法やフェノールの酸化により合成されたものと比べ、強熱減量が少ないため好ましい。
本発明の液晶性樹脂とは、異方性溶融相を形成する樹脂であり,例えば、液晶性ポリエステルや液晶性ポリエステルアミドなどエステル結合を有する液晶性樹脂が挙げられる。
液晶性ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ヒドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ヒドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ヒドロキノンから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
異方性溶融相を形成する液晶ポリエステルの好ましい例としては、下記(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の構造単位からなる液晶性ポリエステルが挙げられる。
Figure 2008074899
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位を、構造単位(III)はヒドロキノンから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸から生成した構造単位を、構造単位(V)はイソフタル酸から生成した構造単位を各々示す。
以下、この液晶性ポリエステルを例に挙げて説明する。
上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の共重合量は任意である。しかし、本発明で規定する範囲とし、その特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
すなわち、構造単位(I)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して40〜85モル%であることが好ましく、より好ましくは65〜80モル%であり、さらに好ましくは68〜75モル%である。また、構造単位(II)は構造単位(II)および(III)の合計に対して60〜90モル%であることが好ましく、より好ましくは60〜75モル%であり、さらに好ましくは65〜73モル%である。また、構造単位(IV)は構造単位(IV)および(V)の合計に対して好ましく40〜95モル%であり、より好ましくは60〜92モル%であり、更に好ましくは72〜92モル%である。
構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計は実質的に等モルである。ここでいう「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットとしては等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
上記好ましく用いられる液晶ポリエステルは、上記構造単位(I)〜(V)を構成する成分以外に、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロロハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸などを、液晶性や特性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
本発明における液晶性樹脂の溶融粘度は10〜500Pa・sが好ましく、特に12〜200Pa・sがより好ましい。なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、剪断速度1000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
本発明における液晶性樹脂の融点は特に限定されるものではないが、高耐熱用途に用いるために280℃以上となるよう共重合成分を組み合わせることが好ましく、300℃以上となるよう組み合わせることがより好ましく、310℃以上となるよう組み合わせることがさらに好ましく、325℃以上となるよう組み合わせることが最も好ましい。上限としては液晶性樹脂の分解温度−10℃以下であることが好ましく、前述したような液晶性ポリエステルの分解温度は370℃近辺であることから360℃以下となるよう組み合わせることが好ましい。
本発明の液晶性樹脂の基本的な製造方法は特に制限がないが、本発明のスラリー化のための工程を経た後、液晶性樹脂原料中のフェノール性水酸基、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオールのフェノール性水酸基を無水酢酸によりアセチル化を行う工程と、その後残りの液晶性樹脂原料(芳香族ジカルボン酸やその他のモノマー)と重縮合(好ましくは液晶性樹脂が溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合)を行う工程を含む製造方法が好ましい。
無水酢酸の使用量は、用いる液晶性樹脂原料中のフェノール性水酸基の合計の1.00〜1.20モル当量であることが好ましく、1.03〜1.10モル当量がより好ましい。アセチル化反応は140℃以上150℃以下の温度で還流しながら、芳香族ジオールのモノアセチル化物の残存量が特定範囲となるまで反応を行うこと(以下「アセチル化工程」と称することもある)が好ましい。アセチル化反応の装置としては例えば還留管や精留塔を備えた反応容器を用いることができる。アセチル化の反応時間としては大まかには1〜5時間程度であるが、芳香族ジオールのモノアセチル化物の残存量が特定範囲となるまでの時間は、用いる液晶性樹脂原料や、反応温度によっても異なる。好ましくは、1.5〜2.5時間であり、反応温度が高い程短時間でよく、無水酢酸のフェノール性水酸基末端に対するモル比が大きい程短時間でよい。
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。なお下記は、p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ヒドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸からなる液晶性ポリエステルの合成を例にとり説明したものであるが、共重合組成としてはこれらに限定されるものではなく、それぞれをその他のヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールあるいは芳香族ジカルボン酸に置き換え、下記の方法に準じて製造することができる。
例えば、所定量のp−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ヒドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸からなるモノマー混合物と無水酢酸(液晶性樹脂原料中の水酸基に対して1.03〜1.20モル当量)を30℃以上55℃未満に温調し、0.1〜3時間撹拌混合することにより、均質なスラリーとした後、攪拌翼、精留塔、留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中で、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱し、還留しながら140〜150℃で1.0〜2.5時間反応して水酸基をアセチル化させた後、留出管へと切り替えてアセチル化工程を終了し、酢酸を留出させながら液晶性樹脂の融点+5〜40℃まで2.5〜6.5時間で昇温し、0.2〜1.5時間程度加熱撹拌した後、次いで665Pa以下まで0.5〜2時間で減圧し、0.1〜3時間程度重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。
なお、スラリー化を行う工程とアセチル化反応を行う工程は同一の反応容器を用いても良いが、スラリー化とアセチル化を異なる反応容器で行ってもよく、さらにアセチル化と重縮合は同一の反応容器で連続して行っても良いが、アセチル化と重縮合を異なる反応容器で行っても良い。
重縮合の条件としては、減圧度を133Pa以下とするのがより好ましく、最終重合温度は、融点+20℃程度が好ましく、360℃以下であることが好ましい。撹拌速度は50rpm以下が好ましい。
減圧度が665Pa以下になった後、所定トルクが検出されて重合を終了するまでの重合時間は0.5〜1時間がより好ましい。
重合終了後、得られたポリマーを反応容器から取り出すには、ポリマーが溶融する温度で反応容器内を、例えばおよそ0.02〜0.5MPaに加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出し、ストランドを冷却水中で冷却して、ペレット状に切断し、樹脂ペレットを得ることができる。溶融重合法は均一なポリマーを製造するために有利な方法であり、ガス発生量がより少ない優れたポリマーを得ることができ好ましい。
本発明の液晶性樹脂を製造する際に、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。例えば、本発明の液晶性樹脂のポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕し、窒素気流下、または、減圧下、液晶性樹脂の融点−5℃〜融点−50℃の範囲で1〜50時間加熱し、所望の重合度まで重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。固相重合法は高重合度のポリマーを製造するための有利な方法である。
液晶性樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
本発明の液晶性樹脂は、数平均分子量は3,000〜25,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜20,000、より好ましくは8,000〜18,000の範囲である。
なお、この数平均分子量は液晶性樹脂が可溶な溶媒を使用してGPC−LS(ゲル浸透クロマトグラフ−光散乱)法により測定することが可能である。
本発明においては、液晶性樹脂の機械強度その他の特性を付与するために、さらに充填材を配合することが可能である。充填材は特に限定されるものでないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維や液晶性ポリエステル繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、バサルト繊維、酸化チタンウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウムおよび黒鉛などの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられる。本発明に使用される上記の充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
これら充填材のなかで特にガラス繊維が入手性、機械的強度のバランスの点から好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものならば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランドおよびミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、これらのうち2種以上を併用して使用することもできる。本発明で使用されるガラス繊維としては、弱アルカリ性のものが機械的強度の点で優れており、好ましく使用できる。また、ガラス繊維はエポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの被覆あるいは収束剤で処理されていることが好ましく、エポキシ系が特に好ましい。またシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤が特に好ましい。
なお、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
充填材の配合量は、液晶性ポリエステル100重量部に対し、通常30〜200重量部であり、好ましくは40〜150重量部である。
さらに、本発明の液晶性樹脂には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料および顔料を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、赤燐、シリコーン系難燃剤など)、難燃助剤、および帯電防止剤などの通常の添加剤、熱可塑性樹脂以外の重合体を配合して、所定の特性をさらに付与することができる。
これらの添加剤を配合する方法は、溶融混練によることが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜350℃、より好ましくは250〜320℃の温度で溶融混練して液晶性樹脂組成物とすることができる。その際には、1)液晶性樹脂、任意成分である充填材およびその他の添加剤との一括混練法、2)まず液晶性ポリエステルにその他の添加剤を高濃度に含む液晶性樹脂組成物(マスターペレット)を作成し、次いで規定の濃度になるようにその他の熱可塑性樹脂、充填材およびその他の添加剤を添加する方法(マスターペレット法)、3)液晶性樹脂とその他の添加剤の一部を一度混練し、ついで残りの充填材およびその他の添加剤を添加する分割添加法など、どの方法を用いてもかまわない。
本発明の液晶性樹脂およびそれを含む液晶性樹脂組成物は、通常の射出成形、押出成形、プレス成形などの成形方法によって、優れた表面外観(色調)および機械的性質、耐熱性、難燃性を有する三次元成形品、シート、容器、パイプ、フィルムなどに加工することが可能である。なかでも射出成形により得られる電気・電子部品用途に適している。
このようにして得られた液晶性樹脂およびそれを含む液晶性樹脂組成物は、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレイ部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコン用モーターインシュレーター、セパレーター、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などに用いることができる。フィルムとして用いる場合は磁気記録媒体用フィルム、写真用フィルム、コンデンサー用フィルム、電気絶縁用フィルム、包装用フィルム、製図用フィルム、リボン用フィルム、シート用途としては自動車内部天井、ドアトリム、インストロメントパネルのパッド材、バンパーやサイドフレームの緩衝材、ボンネット裏等の吸音パット、座席用材、ピラー、燃料タンク、ブレーキホース、ウインドウオッシャー液用ノズル、エアコン冷媒用チューブおよびそれらの周辺部品に有用である。
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明の骨子は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327g、ヒドロキノン(DIPB法で製造:強熱残分0.001未満)104g、テレフタル酸292g、イソフタル酸156gおよび45℃に温調した無水酢酸1254g(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、系の温度を40℃に保ちながら、窒素ガス雰囲気下で30分間攪拌してスラリーを均質化した。ルッキンググラスから目視により、スラリーが均質であることを確認した。その後145℃まで昇温し、2.5時間反応させアセチル化を終了した後、330℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を330℃に保持し、1時間加熱撹拌した。その後、1.0時間で133Paに減圧した。トルクが20kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。133Paに到達後から所定トルクに達するまでに要した時間は1分であった。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズし、収率は理論収量に対して99.1%であった。
吐出後、重合缶内を観察した所、気相部には昇華物が付着していなかった。
この液晶性樹脂の融点は320℃でΔS(融解エントロピー)は0.1×10―3J/g・Kであり、高化式フローテスターを用い、温度330℃、剪断速度1000/sで測定した溶融粘度が20Pa・sであった。
なお、融点(Tm)は示差熱量測定において、ポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)とした。以下の参考例についても同様である。
実施例2
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327g、ヒドロキノン(フェノールの置換基導入法で製造:強熱残分0.01%)104g、テレフタル酸292g、イソフタル酸156gおよび45℃に温調した無水酢酸1254g(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、系の温度を40℃に保ちながら、窒素ガス雰囲気下で30分間攪拌してスラリーを均質化した。ルッキンググラスから目視により、スラリが均質であることを確認した。その後145℃まで昇温し、2.5時間反応させアセチル化を終了した後、330℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を330℃に保持し、1時間加熱撹拌した。その後、1.0時間で133Paに減圧した。トルクが20kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。133Paに到達後から所定トルクに達するまでに要した時間は12分であった。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズし、収率は理論収量に対して98.3%であった。
吐出後、重合缶内を観察した所、気相部には昇華物が付着していなかった。
この液晶性樹脂の融点は316℃でΔSは0.3×10―3J/g・Kであり、高化式フローテスターを用い、温度330℃、剪断速度1000/sで測定した溶融粘度が20Pa・sであった。
比較例1
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327g、ヒドロキノン104g、テレフタル酸292g、イソフタル酸156gおよび無水酢酸1254g(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、室温(23℃)で窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら30分間、スラリー化を行った。ルッキンググラスから内部を観察すると、攪拌翼のフィン以外の部分は固化していた。その後148℃まで昇温して2.5時間反応させアセチル化を終了した後、330℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を330℃に保持し、1時間加熱撹拌した。内温が290℃に達した時点で、急激な内温の上昇が生じ、ルッキンググラスから内部を観察した所、缶上部まで内部が激しく発泡していた。発泡は10分程で収まったので、その後、1.0時間で133Paに減圧した。トルクが20kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。133Paに到達後から所定トルクに達するまでに要した時間は60分であった。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズし、収率は理論収量に対して94.5%であった。
吐出後、重合缶内を観察した所、気相部には発泡の跡の上に昇華物が付着していた。
この液晶性樹脂の融点は306℃でΔSは0.5×10―3J/g・Kであり、高化式フローテスターを用い、温度330℃、剪断速度1000/sで測定した溶融粘度が20Pa・sであった。

Claims (7)

  1. ヒドロキノンおよびp−ヒドロキシ安息香酸を含むモノマー混合物を、同一系で無水酢酸と反応させ、アセチル化を行い、さらに、重合して液晶性樹脂を製造する際に、アセチル化反応を行う前に該モノマー混合物と無水酢酸を30℃以上55℃未満の温度で混合してスラリー化する工程を含むことを特徴とする液晶性樹脂の製造方法。
  2. ヒドロキノン、p−ヒドロキシ安息香酸を含むモノマー混合物と、無水酢酸を混合し、均質なスラリーとした後、該スラリーを140〜150℃に加熱してアセチル化反応を行う請求項1記載の液晶性樹脂の製造方法。
  3. 前記スラリーがさらに、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を含む請求項1または2記載の液晶性樹脂の製造方法。
  4. 前記スラリーを35℃以上50℃以下で混合する請求項1〜3のいずれかに記載の液晶性樹脂の製造方法。
  5. ヒドロキノンの強熱残分が0.005%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶性樹脂の製造方法。
  6. ヒドロキノンの強熱残分が0.001%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶性樹脂の製造方法。
  7. ヒドロキノンがジイソプロピルベンゼンを原料とする酸化法で製造されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶性樹脂の製造方法。
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