JP2005248052A - 液晶性ポリエステル組成物 - Google Patents

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JP2005248052A JP2004061726A JP2004061726A JP2005248052A JP 2005248052 A JP2005248052 A JP 2005248052A JP 2004061726 A JP2004061726 A JP 2004061726A JP 2004061726 A JP2004061726 A JP 2004061726A JP 2005248052 A JP2005248052 A JP 2005248052A
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浩司 立川
Tomoshi Matsubara
知史 松原
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Abstract

【課題】 液晶ポリエステルの溶融加工時における流動異方性が改良され、かつ、繰り返し靱性、耐加水分解性に優れた自動車用構造部材用途に最適な液晶ポリエステルを得ることを課題とする。
【解決手段】(A)液晶性ポリエステル100重量部に対して、(B)分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物を70重量%以上含有する融点80℃以上210℃未満、沸点330℃以上でかつ0.01〜5重量部を配合してなる液晶性ポリエステル組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶性ポリエステルの流動異方性が改良され、かつ耐加水分解性や繰り返し靱性が改良された、自動車用構造部材用途などに最適な液晶性ポリエステル組成物に関するものである。
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発され市場に供されているが、中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリエステルなどの液晶性ポリマーが優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、電気・電子部品用途を中心とした射出成形品用途で需要が拡大している。
また、液晶性ポリマーは繊維やフィルムとしても、高い機械的性質や耐熱性、耐候性を生かして用いられているが、液晶性ポリマーの加工性は必ずしも細糸の紡糸や充填材の高充填系においては十分とはいえず、これらを改良するために、液晶性ポリマーに低分子量の液晶性化合物を添加し紡糸性を改良する試みが行われている(例えば、特許文献1参照)。
また、液晶ポリマーは通常充填材を配合した組成物として使用する場合が多く、充填材の配合量によっては更なる流動性が要求される場合があり、エンジニアリングプラスチックにp−ターフェニル誘導体を添加し流動特性を改良する試み(例えば特許文献2参照)や熱可塑性樹脂にm−ターフェニル、p−ターフェニル、o−ターフェニルあるいはその混合物を添加し、フィラー高充填系での溶融流動性を改良する試みがなされている(例えば、特許文献3参照)。
特開昭59−85733号公報(第1〜2頁) 特開平02−322543号公報(第1頁) 特開2003−277632号公報(第1〜2頁)
近年、液晶ポリマーの流動性に関して、その流動異方性が問題になることが多い。流動異方性は、液晶ポリマーが流動方向に対して配列するという特有の性質に由来して問題となる特性である。すなわち、溶融した液晶ポリマーがランナーや金型内を流動する際、流動方向が一方向で一定の厚みである場合には、溶融した液晶ポリマーの流動方向は概ね一定となり、その流動方向に溶融した液晶ポリマーが配向し、良好な流動性を示す。一方、複雑な形状の成形品であるために、金型内に薄肉部や屈曲部が存在する場合や、ランナーが屈曲部を有する場合には、溶融状態の液晶ポリマーがその金型やランナーの形状に応じて流動方向を変えることになるが、その際、溶融状態の液晶ポリマーがそれらの部分で再配列するため、流動方向によって、流動性が異なるのである。例えば、同一の金型内に薄肉部と厚肉部を有する場合には、厚肉部に優先的に流れてしまうために、薄肉部で未充填が発生し問題となる。また、同一の金型内に屈曲部を有するランナーと直線的なランナーが設けられている場合にも、屈曲部を有するランナーの先の金型で未充填となる場合がある。
このような、流動異方性に対して、特許文献1では液晶性の化合物を添加しているために、一方向の流動性が向上することにより紡糸性が改良されるものの、流動異方性がさらに大きくなってしまう。また、特許文献2では、エンジニアリングプラスチックにp−ターフェニル誘導体を添加することで、流動特性や、耐熱性、力学特性などが改良されているが、p−ターフェニルは直線的で剛直な分子であり、流動異方性については助長される傾向にある。また、特許文献3では、組成物は、m−ターフェニル、p−ターフェニル、o−ターフェニルあるいはその混合物を配合するものであるが、具体的に示された組成物においてはその添加量が多すぎるために、成形時にこの混合物が一部ガス化し、直線的な流動性は向上するものの、流動異方性については逆に悪化する傾向にある。
そこで、本発明は、液晶性ポリエステルの溶融加工時における流動異方性が改良され、かつ、繰り返し靱性、耐加水分解性に優れた自動車用構造部材用途に最適な液晶性ポリエステル組成物を得ることを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物を70重量%以上含有する融点80℃以上210℃未満、沸点350℃以上の有機化合物を液晶性ポリエステルに配合すると、流動異方性,すなわち溶融成形時に流動性の肉厚依存性や屈曲依存性を減じる効果があることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は
(1)(A)液晶性ポリエステル100重量部に対して、(B)分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物を70重量%以上含有する融点80℃以上210℃未満、沸点330℃以上でかつ0.01〜5重量部を配合してなる液晶性ポリエステル組成物、
(2)(B)有機化合物が極性官能基を有しないことを特徴とする請求項1記載の液晶性ポリエステル組成物、
(3)(B)有機化合物がm−ターフェニルである請求項2記載の液晶性ポリエステル組成物、
(4)(A)液晶性ポリエステルが下記構造単位(I)〜(IV)からなるものである上記(1)〜(3)のいずれか記載の液晶性ポリエステル組成物。
Figure 2005248052
(ただし式中のR1
Figure 2005248052
から選ばれた1種以上の基を示し、R2
Figure 2005248052
から選ばれた1種以上の基を示し、R3
Figure 2005248052
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか記載の液晶性ポリエステル組成物を製造する際に、(A)成分と(B)成分を溶融混練することにより製造することを特徴とする液晶性ポリエステル組成物の製造方法を提供するものである。
本発明の液晶性ポリエステル組成物は、液晶性ポリエステルの成形時の問題点の一つである流動異方性が改良され、かつ耐加水分解性や繰り返し靱性が改良されるので、これらの特性が要求される自動車用構造部材用途などに最適である。
以下、本発明について詳述する。なお本発明において「重量」とは、「質量」を意味する。
本発明は、(A)液晶性ポリエステル100重量部に対して、(B)分子内に1,3−置換ベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物を70重量%以上含有する融点80℃以上210℃未満、沸点330℃以上の有機化合物0.01〜5重量部を配合することを必須とする。
本発明で用いられる(A)液晶性ポリエステルとは、異方性溶融相を形成するポリエステルであり、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、およびエチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルが挙げられる。
上記芳香族オキシカルボニル単位の具体例としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位が、芳香族ジオキシ単位の具体例としては、例えば、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位が、芳香族ジカルボニル単位の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、および4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸などから生成した構造単位が、それぞれ挙げられる。
液晶性ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、およびp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、イソフタル酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
異方性溶融相を形成する液晶ポリエステルの好ましい例としては、下記(I)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、または、下記(I)、(II) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
なかでも下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、または、下記(I)、(II) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルなどがより好ましく挙げられる。なかでも特に下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶ポリエステルが好ましく使用される。
Figure 2005248052
(ただし式中のR1
Figure 2005248052
から選ばれた1種以上の基を示し、R2
Figure 2005248052
から選ばれた1種以上の基を示し、R3
Figure 2005248052
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位であり、上記構造単位(II)は4,4´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位であり、上記構造単位(III) はエチレングリコールから生成した構造単位であり、上記構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸および4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位である。
本発明において好ましく使用できる液晶ポリエステルは、上述のとおり構造単位(I) 、(II)、(IV)からなる共重合体および構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体であるが、構造単位(I) 、(II)、(IV)からなる共重合体の場合には、上記構造単位のうちR1
Figure 2005248052
でR2
Figure 2005248052
および
Figure 2005248052
であり、R3
Figure 2005248052
および
Figure 2005248052
であるものが特に好ましく、構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体の場合には、上記構造単位のうちR1
Figure 2005248052
でR2
Figure 2005248052
であり、R3
Figure 2005248052
であるものが特に好ましい。
本発明において好ましく使用できる液晶ポリエステルは、上述のとおり構造単位(I) 、(II)、(IV)からなる共重合体または構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体であるが、上記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
すなわち、上記構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I) および(II)の合計は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜92モル%がより好ましい。また、構造単位(III) は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜8モル%がより好ましい。また、構造単位(I) と(II)のモル比[(I) /(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III) の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
一方、上記構造単位(III) を含まない液晶ポリエステルの場合は、上記構造単位(I) は構造単位(I) および(II)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、65〜80であることがさらに好ましい。構造単位(IV)は構造単位(II)と実質的に等モルであることが好ましい。(II)として好ましく用いられる4,4’−ジヒドロキシビフェニル(II-1)とハイドロキノン(II-2)を併用する場合の割合は、(II-1)が(II-1)と(II-2)の合計に対して55〜95モル%であり、より好ましくは60〜80モル%であり、さらに好ましくは65〜75モル%である。また、(IV)として好ましく用いられるテレフタル酸(IV-1)とイソフタル酸(IV-2)を併用する場合の割合は、(IV-1)が(IV-1)と(IV-2)の合計に対して55〜95モル%であり、より好ましくは58〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜70モル%である。このような組成範囲においては、本発明の効果である流動異方性の改良効果や繰り返し靱性や耐加水分解性の改良効果が特に発揮され好ましい。
上記好ましく用いられる液晶ポリエステルは、上記構造単位(I) 〜(IV)を構成する成分以外に、3,3´−ジフェニルジカルボン酸、2,2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロロハイドロキノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−アミノフェノールなどを、液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
本発明において使用する上記液晶性ポリエステルの製造方法には特に制限がなく、公知の重縮合法に準じて製造できる。本発明の液晶性ポリエステル樹脂は、例えば脱酢酸重縮合で製造されるが、具体的には、次の3つの製造方法が用いられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、
テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により液晶ポリエステルを製造する方法。
上記、無水酢酸の使用量は、フェノール性水酸基の合計の1.15当量以下であることが好ましく、1.12当量以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1.10当量以下であり、下限については1.0当量以上であることが好ましい。
本発明の液晶性ポリエステルを脱酢酸重縮合反応により製造する際に、液晶性ポリエステルが溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合反応を完了させる溶融重合法が好ましい。例えば、構造単位(I) 、(II)、(IV)からなる共重合体の場合には、所定量のp−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸、無水酢酸を攪拌翼、留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱し水酸基をアセチル化させた後、液晶性ポリエステルの溶融温度まで昇温し、減圧により重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。アセチル化させる条件は、通常130〜300℃の範囲、好ましくは135〜200℃の範囲で通常1〜6時間、好ましくは140〜180℃の範囲で2〜4時間反応させる。重縮合させる温度は、液晶性ポリエステルの溶融温度、例えば、250〜350℃の範囲であり、好ましくは液晶性ポリエステルの融点+10℃以上の温度である。重縮合させるときの減圧度は通常0.1mmHg(13.3Pa)〜20mmHg(2660Pa)であり、好ましくは10mmHg(1330Pa)以下、より好ましくは5mmHg(665Pa)以下である。なお、アセチル化と重縮合は同一の反応容器で連続して行っても良いが、アセチル化と重縮合を異なる反応容器で行っても良い。
得られたポリマーは、それが溶融する温度で反応容器内を例えば、およそ1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出することができる。溶融重合法は均一なポリマーを製造するために有利な方法であり、ガス発生量がより少ない優れたポリマーを得ることができ、好ましい。
本発明の液晶性ポリエステルを製造する際に、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。例えば、本発明の液晶性ポリエステルのポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕し、窒素気流下、または、減圧下、液晶性ポリエステルの融点−5℃〜融点−50℃(例えば、200〜300℃)の範囲で1〜50時間加熱し、所望の重合度まで重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。固相重合法は高重合度のポリマーを製造するための有利な方法である。
上記液晶性ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
また、本発明における液晶性ポリエステルの溶融粘度は、0.5〜200Pa・sが好ましく、特に1〜100Pa・sがより好ましい。
なお、この溶融粘度は、融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を意味する。
また、本発明で用いる(B)有機化合物は、分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物を70重量%以上含有する融点80℃以上210℃未満、沸点330℃以上の有機化合物である。なお、上記融点の確認は融点顕微鏡を用いて昇温速度1℃/分で行ない、観測される融点をいう。また、沸点(昇華性のものについては昇華点)の確認は、熱重量減少測定器を用いて観測されるものをいう。
本発明で用いる(B)有機化合物は、分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物であるが、それ以外の有機化合物(以下その他の有機化合物と称する場合もある)と混合して用いることができる。その際、(B)成分全体を100重量%とした場合の、分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物の含有量は70重量%以上であるが、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上であり、さらに好ましくは95重量%以上である。上記分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物は一種以上で用いることができるが、混合後の融点および沸点が本発明で規定する範囲にあることが必要である。混合物が複数の融点、沸点を示す場合には、その全てが本発明の規定する範囲にあることが必要である。また、混合物が極類似構造を有しており、単独の融点、沸点を示す場合には、その融点、沸点が本発明の規定する範囲にあることが必要である。また、上記分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物と併用するその他の有機化合物は、用いる分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物と混合した際に単一の融点、沸点(ただしこれらの融点、沸点は本発明で規定した範囲内にあることが必要である)を示す有機化合物である。このような1,3−ジフェニルベンゼン構造を有する有機化合物と混合した際に単一の融点、沸点を示す有機化合物としては、例えば、p−ターフェニル、o−ターフェニル、ビフェニル、芳香環の数が4以上のポリフェニルなどで1,3−ジフェニルベンゼン構造を有さないポリフェニルが挙げられる。
なお、分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物と混合した場合に複数の融点、沸点を示すようなその他の有機化合物は、本発明で用いる(B)成分の一部として扱わない。ただし、(B)成分以外の成分として、本発明の液晶性ポリエステル組成物にこれらの化合物を本発明の効果を損なわない程度の任意の量で配合することはできる。
本発明で用いる(B)成分は、融点が80℃以上210℃未満であり、かつ、沸点が330℃以上である有機化合物であり、なかでも融点が85℃以上、200℃未満であり、沸点は350℃以上であることが好ましい。沸点の上限としては400℃であることが好ましく、380℃であることがより好ましい。
融点が80℃未満であると、自動車用途などにおける実使用温度において軟化してしまうために好ましくない。融点が210℃より高いと、流動性の改良効果が得られにくい。
また、沸点が330℃未満であると、加工温度においてガス化してしまい、ボイドや金型腐蝕などの問題を引き起こす可能性があるために好ましくない。
上記、主成分となる分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物としては、具体的には、下記構造単位を有する化合物が挙げられ、これら有機化合物は、一種以上を用いることができる。
Figure 2005248052
(R4〜R13はそれぞれ同一あるいはそれぞれ異なる水素、芳香環を一つ有する芳香族炭化水素基、あるいは下記構造式で示される縮合した芳香族炭化水素基またはハロゲン、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基から選択される基を示す)
Figure 2005248052
(ただし、mは1以上の整数である)
また、上記R4〜R13がそれぞれ同一あるいはそれぞれ異なる水素、芳香環を一つ有する芳香族炭化水素基、あるいは下記構造式で示される縮合した芳香族炭化水素基から選択される基であることが好ましく、なかでもR4〜R8のうち4つ以上が水素原子であり、R9〜R13のうち4つ以上が水素原子であることが特に好ましい。芳香環を一つ有する芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、ブロモフェニル基などが挙げられ、ハロゲンとしては臭素、塩素、フッ素などが挙げられるが、好ましくは臭素である。
これらの有機化合物は、具体的には、例えば1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルベンゼン、1−(3−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルベンゼン、1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニルベンゼン、1−(3−メトキシフェニル)−3−フェニルベンゼン、1−(4−ブロモフェニル)−3−フェニルベンゼンや1−(3−ブロモフェニル)−3−フェニルベンゼンなどの一置換のm−ターフェニル誘導体やm−ターフェニルや4つ以上の芳香環が縮合した下記構造式で表されるポリフェニルが挙げられる。
Figure 2005248052
(ただし、pは2以上の整数であり、それぞれの芳香環の置換部位はm位もしくはo位であり、うち少なくとも一つはm位である)
なかでも本発明で用いる分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物としては、ハロゲンやヒドロキシル基などの極性官能基を持たないものが好ましく、特にm−ターフェニルが好ましい。
また、上記したように、これらの縮合した芳香環構造を骨格に有する化合物はその融点と沸点を本発明の好ましい範囲とするために、混合して用いることができる。例えば、m−ターフェニルを主成分とするp−ターフェニルやポリフェニルの混合物の場合、m−ターフェニルに対し、p−ターフェニル等の剛直性の高い化合物を混合すると、、混合量が1%未満であれば融点、沸点が一端低下する傾向にあるが、混合量が1%以上では、混合量を増加することで、融点、沸点が上昇し、例えばm−ターフェニル92%、p−ターフェニル7%、ポリフェニル1%の混合物は融点が87℃、沸点が358℃となる。このような混合物は、ベンゼンの縮合によって得たo−ターフェニル、m−ターフェニル、p−ターフェニル、ポリフェニルの混合物から、o−ターフェニルを除去することで得られる。
本発明で用いる(B)有機化合物は、液晶性を有さないことが好ましい。ポリフェニルのいくつかは液晶性を有するが、それらは液晶転移温度を有するために、流動性は向上するが、加工安定性や高温剛性が低下する傾向があるためである。
本発明で用いる(B)有機化合物は、その1,3−ジフェニルベンゼン構造によって、溶融状態の液晶性ポリエステル分子鎖の隙間に入り込み、2本以上の分子鎖間の間で芳香環のスタッキングが生じ、その後液晶性ポリエステルが固化して擬似的な架橋構造が形成され、それにより、繰り返し靱性や耐加水分解性の顕著な向上効果が得られると推定される。
これらの効果を発現するために、本発明で用いる(B)有機化合物は、液晶性ポリエステル100重量部に対して、0.01〜5重量部であることが必要であるが、好ましくは0.1〜4重量部であり、さらに好ましくは0.5〜3重量部であり、0.5〜1重量部が最も好ましい。
上記範囲外の場合、(A)液晶性ポリエステル100重量部に対して、(B)有機化合物0.01重量部未満では、本発明の効果である流動異方性や繰り返し靱性、耐加水分解性が発揮されず、5重量部より多い場合には、溶融混練時に余分なガスが抜けきらずに残存し、金型汚れなどが発生する危険があるので、好ましくない。
本発明において液晶性ポリエステル組成物の機械強度その他の特性を付与するために充填剤を使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状など非繊維状の充填剤を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリ燐酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられる。上記充填剤中、ガラス繊維や炭素繊維が好ましく使用され、より好ましくはガラス繊維である。炭素繊維はPAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、一般に樹脂の強化用に用いられているものならば特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョプドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。
また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
上記の充填剤の添加量は液晶性樹脂100重量部に対し0.5〜300重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは15〜100重量部である。
さらに、本発明の液晶性ポリエステル組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料および顔料を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、赤燐、シリコーン系難燃剤など)、難燃助剤、および帯電防止剤などの通常の添加剤、熱可塑性樹脂以外の重合体を配合して、所定の特性をさらに付与することができる。
これらの添加剤を配合する方法は、溶融混練によることが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜350℃、より好ましくは250〜320℃の温度で溶融混練して液晶性ポリエステル組成物とすることができる。その際には、1)(A)液晶性ポリエステル、(B)有機化合物、任意成分であるその他の添加剤との一括混練法、2)まず(A)液晶性ポリエステルに(B)有機化合物を高濃度に含む液晶性ポリエステル組成物(マスターペレット)を作成し、次いで規定の濃度になるように液晶性ポリエステルおよびその他の添加剤と配合する方法(マスターペレット法)など、どの方法を用いてもかまわない。
溶融混練を行わずに、例えば(A)液晶性ポリエステルと(B)有機化合物をそれぞれ粉末状に粉砕した後、ヘンシェルミキサーなどにより混合し、打錠機によってペレット状に粉末成形したペレットを用いた場合にも、本発明の特性は発揮されるが、(A)液晶性ポリエステルの分子鎖間へ有機化合物を効率良く入れるために、溶融混練が好ましい。
かくして得られる本発明の液晶性ポリエステル組成物は、溶融加工時における流動異方性が改良されており、同一金型内に断面積の異なる流路や厚みの異なる部分を有する場合にも厚肉部分に過充填をおこしたりすることなく、安定した成形が行える。
さらには本発明の液晶性ポリエステル組成物は、通常の射出成形、押出成形、プレス成形などの成形方法によって、優れた表面外観(色調)および機械的性質、耐熱性、難燃性を有する三次元成形品、シート、容器、パイプ、フィルムなどに加工することが可能である。なかでも繰り返し靱性や耐加水分解性に優れることから自動車などの過酷な環境で用いられる構造部材用途に適している。
このようにして得られた液晶性ポリエステル組成物は、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコン用モーターインシュレーター、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプベゼル、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などに用いることができる。フィルムとして用いる場合は磁気記録媒体用フィルム、写真用フィルム、コンデンサー用フィルム、電気絶縁用フィルム、包装用フィルム、製図用フィルム、リボン用フィルム、シート用途としては自動車内部天井、ドアトリム、インストロメントパネルのパッド材、バンパーやサイドフレームの緩衝材、ボンネット裏等の吸音パット、座席用材、ピラー、燃料タンク、ブレーキホース、ウインドウオッシャー液用ノズル、エアコン冷媒用チューブおよびそれらの周辺部品に有用である。
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明の骨子は以下の実施例のみに限定されるものではない。
参考例
液晶性樹脂(A)
A−1
p−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部及び無水酢酸960重量部(フェノール性水酸基合計の1.10モル当量)を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、150℃で2時間、150℃から250℃まで3時間かけて昇温し、250℃から325℃まで2時間かけて昇温し、325℃で1.5時間反応させた後、325℃、1.5時間で0.5mmHg(66.5Pa)に減圧し、さらに10分間反応させ重縮合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位12.5モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点314℃,高化式フローテスターを用いて、温度324℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度が25Pa・sである液晶ポリエステル(A−1)を得た。
なお、融点(Tm)は示差熱量測定において、ポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)とした。
A−2
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g(6.300モル)、4,4´−ジヒドロキシビフェニル327g(1.890モル)、ハイドロキノン89g(0.810モル)、テレフタル酸292g(1.755モル)、イソフタル酸157g(0.945モル)および無水酢酸1367g(フェノール性水酸基合計の1.03当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら145℃で2時間反応させた後、320℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に30分間反応を続け重縮合を行った結果、p−オキシベンゾエート単位がp−オキシベンゾエート単位、4,4´−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して70モル%、4,4´−ジオキシビフェニル単位が4,4´−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して70モル%、テレフタレート単位がテレフタレート単位およびイソフタレート単位の合計に対して65モル%からなり、融点314℃、高化式フローテスターを用い、温度324℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度が25Pa・sである液晶性ポリエステル(A−2)を得た。
A−3
p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部及び無水酢酸946重量部(フェノール性水酸基合計の1.03モル当量)を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、A−1と同じ条件で重合を行った結果、p−オキシベンゾエート単位73モル%、6−オキシ−2−ナフトエート単位27モル%からなる融点283℃、高化式フローテスターを用い、温度294℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度が38Pa・sである液晶性ポリエステル(A−3)を得た。
有機化合物(B)
m−ターフェニル(アルドリッチ製)(B-1) 融点87℃、沸点354℃、純度99%以上
アントラセン(東京化成製)(B-2)融点218℃、沸点342℃
ターフェニルミクスチャー(新日鐵化学製;o−ターフェニル1.5%/m−ターフェニル66.3%/p−ターフェニル34.2%)(B-3)融点80℃、沸点350℃
p−ターフェニル(アルドリッチ製)(B-4)融点215℃、沸点383℃
o−ターフェニル(アルドリッチ製):m−ターフェニル(アルドリッチ製)=0.6:99.4(B-5)融点85℃、沸点352℃
なお、有機化合物の融点の確認は融点顕微鏡を用いて昇温速度1℃/分で行った。また、沸点(昇華性のものについては昇華点)の確認は、熱重量減少測定器を用いて行った。
実施例1〜9、比較例1〜8
表1に示す液晶性ポリエステル(A-1〜A-3)、有機化合物(B-1〜B-5)をそれぞれ所定量秤量し、ドライブレンドし、池貝鉄工製PCM−30型2軸押出機でニーディングを2ヶ所に設け、一ヶ所に高圧縮部を設けたスクリューを用い、シリンダー温度を320℃に設定し、スクリュー回転数150r.p.mの条件で溶融混練したのちストランドカッターによりペレットを得た。溶融混練はベント減圧度10torr、吐出量8kg/hで行った(実施例1〜8、比較例1〜7)。また、溶融混練せずに、液晶性ポリエステル(A-1)および有機化合物(B-1)を粉末状に粉砕したものを、ヘンシェルミキサーにより混合し、打錠機によってペレット状に固めた成形材料を得た(実施例9、比較例8)。
熱風乾燥後、ペレット等を住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダ−温度を320℃に設定し、金型温度90℃に設定し、1速1圧の条件で射出成形を行い、以下に示す評価を行った。
(1)流動異方性
同じ長さ、断面積のランナーでスプルーから同じ角度でつなげられた同面積のゲートをもつ(a)巾12.7mm×長さ150mm×厚み0.3mmtおよび(b)巾12.7mm×長さ150mm×厚み0.5mmtの2つの型に上記温度条件で射出圧500kgf/cm2、射出速度300mm/sで保圧をかけずに射出成形を行い、(a)と(b)の厚みの異なる成形品のゲートから流動末端までの流動距離の比((b)の流動距離/(a)の流動距離)を評価した。比の値が小さい程、流動異方性が小さいことを示す。
(2)繰り返し靱性
上記条件で巾6.0mm×長さ127mm×厚み3.1mmの引張試験片を射出成形し、ASTM D638に従い引張試験を行った。その際の伸度を(c)とした。また、上記の大きさの試験片を−40℃の恒温槽中で0.2%の伸度まで引張り,0%まで戻す操作を4000回繰り返し行い、その後80℃の恒温槽中で0.2%の伸度まで引張り,0%まで戻す操作を4000回繰り返し行った。
この繰り返し引張試験をした後、ASTM D638に従い引張試験を行った。その際の伸度を(d)とし、繰り返し引張試験後の伸度保持率(=(d)/(c)×100(%))を評価した。伸度保持率が高い程、実使用環境下での繰り返し靱性が高いことを示す。
(3)耐加水分解性
上記条件で巾12.7mm×長さ127mm×厚み3.1mmの棒状試験片を射出成形し、ASTM D790に従い曲げ試験を行った。その際の曲げ強度を(e)とした。また、上記の大きさの試験片を120℃、湿度85%の条件で240時間湿熱処理を行った。この湿熱処理をした後、ASTM D790に従い曲げ試験を行った。その際の曲げ強度を(f)とし、湿熱処理後の曲げ強度保持率(=(f)/(e)×100(%))を評価した。
(4)比重
上記条件で巾12.7mm×長さ64mm×厚み3.1mmの棒状試験片を射出成形し、VIBRA製電子はかり式比重計を用い、20℃水溶媒を用いて測定した。射出成形で成形品内部に気泡が入ってしまう場合には、320℃でプレス成形によって、上記棒状試験片と同じ大きさの試験片を作成し、測定した。
自動車用途などの軽量化の要望が高い用途では比重が小さいことが好ましい。
(5)金型汚れ
上記条件で巾12.7mm×長さ150mm×厚み0.5mmの棒状試験片を10000ショット連続成形を行った。金型の汚れを目視により判定した。○:汚れは見られない,△:洗浄をすれば成形品には影響がでない程度×:汚れが見られ、成形品にも痕がつく。
Figure 2005248052
表1からも明らかなように本発明の実施例の液晶性ポリエステル組成物は、比較例1〜3に示した液晶ポリエステルに比較して、流動異方性が小さく、耐加水分解性、繰り返し靱性が向上していることがわかる。
また、比較例4、5、8に示したように、有機化合物の配合量が本発明の範囲外の場合には、本発明の効果が得られず、配合量が多過ぎる場合には、金型汚れなどの不具合が発生することがわかる。
また、比較例6、7に示したように、本発明で好ましく用いる有機化合物と類似構造を有する有機化合物でも、融点および沸点が本発明の範囲から外れる場合には、本発明の効果が得られないことがわかる。
また、実施例3と9との比較から溶融混練により製造した方が特性が高いことがわかる。
また、本発明の液晶ポリエステル組成物は液晶ポリエステル分子鎖間に有機化合物が挿入されることで、比重が低減し、自動車用途などの軽量化が要求される用途に好適であることがわかる。

Claims (5)

  1. (A)液晶性ポリエステル100重量部に対して、(B)分子内に1,3−ジフェニルベンゼン構造を少なくとも1つ有する有機化合物を70重量%以上含有する融点80℃以上210℃未満、沸点330℃以上の有機化合物0.01〜5重量部を配合してなる液晶性ポリエステル組成物。
  2. (B)有機化合物が極性官能基を有しないことを特徴とする請求項1記載の液晶性ポリエステル組成物。
  3. (B)有機化合物がm−ターフェニルである請求項2記載の液晶性ポリエステル組成物。
  4. (A)液晶性ポリエステルが下記構造単位(I)〜(IV)からなるものである請求項1〜3のいずれか記載の液晶性ポリエステル組成物。
    Figure 2005248052
    (ただし式中のR1
    Figure 2005248052
    から選ばれた1種以上の基を示し、R2
    Figure 2005248052
    から選ばれた1種以上の基を示し、R3
    Figure 2005248052
    から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
  5. 請求項1〜4のいずれか記載の液晶性ポリエステル組成物を製造する際に、(A)成分と(B)成分を溶融混練することにより製造することを特徴とする液晶性ポリエステル組成物の製造方法。
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