JP2010070656A - ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、塩素含有量が少なく、かつ溶融流動性に優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物およびその射出成形体からなる電気電子部品の取得を課題とする。
【解決手段】ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物であって、(イ)塩素の含有量が900ppm以下であり、(ロ)スパイラルフロー長(0.5mm厚みのスパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形した流動長)が35mm以上、かつ(ハ)充填材(C)含有量が、組成物全体の45重量%以下であるポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、塩素含有量が少なく、かつ溶融流動性に優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物およびそれからなる電気電子部品などの成形品に関する。
ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下PPS樹脂と略す場合もある)は高耐熱性のスーパーエンジニアリングプラスチックに属し、機械的強度、剛性、難燃性、耐薬品性、電気特性および寸法安定性などを有していることから、射出成形用を中心として、各種電気・電子部品、家電部品、自動車部品および機械部品などの用途に幅広く使用されている。
特に電気・電子部品用途においては、優れた溶融流動性が要求され、これまでにもその改良検討がなされてきた。一方昨今、優れた耐腐食性や環境等への配慮から、塩素、臭素などのハロゲン化合物、特に塩素含有量を少なくすることが、電気電子部品なかでも特に、コネクター、コネクター構成部品、コンデンサー構成部品用途において求められている。
ポリフェニレンサルファイド樹脂は、工業的には一般にパラジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物の重縮合により製造される。そのため、ポリマー分子鎖末端の一部やオリゴマーの一部には塩素に代表されるハロゲン化合物が多くの場合存在する。このハロゲン化合物を低減させるには、分子鎖長を長くしてポリマー分子鎖末端数を減らす方法、およびオリゴマー等の低分子量化合物を減らす方法が挙げられる。しかし、これらはいずれもポリフェニレンサルファイド樹脂の溶融流動性を悪化させる問題がある。
一般にポリマーの溶融流動性を上げる方法として、可塑剤などの添加剤を添加する方法が考えられるが、ポリフェニレンサルファイド樹脂は融点が高く、溶融混連プロセス温度が高いため、可塑剤の添加は可塑剤の揮発や分解を引き起こすため、ガスの発生量が増える問題を有する。
特許文献1、2には特定のジスルフィド化合物を添加することにより、溶融流動性に優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物がえられることが開示されている。しかし、しかしながら特許文献1の実施例で用いられているポリフェニレンサルファイド樹脂の溶融粘度は250ポイズと低く、かかるポリフェニレンサルファイド樹脂は塩素含有量が多い。また、実施例のジスルフィド化合物の添加量は0.5重量部と多い。本発明者らの検討では、0.3重量部を越える多量のジスルフィド化合物添加した場合、ポリマー溶融時のガス発生量が多くなる問題があり、特に電気電子部品のような精密部品には適さない。
また特許文献2には高粘度のポリフェニレンサルファイド樹では塩素含有量を削減することが記載されているものの、その具体的数値には言及されておらず、特にポリフェニレンサルファイド樹脂として(A)クロロホルム抽出量が1.8重量%以下のポリフェニレンサルファイド樹脂を用いることの有効性については何ら記載されていない。さらに、実施例のジスルフィド化合物の添加量は0.8重量%と多い。本発明者らの検討では、0.3重量部を越える多量のジスルフィド化合物添加した場合、ポリマー溶融時のガス発生量が多くなる問題があり、特に電気電子部品のような精密部品には適さない。
特許平02−286746号公報 特開平05−239355号公報
本発明は、塩素含有量が少なく、かつ溶融流動性に優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物およびその射出成形体からなる電気電子部品を提供するものである。
本発明は下記を提供するものである。
1.ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物であって、(イ)塩素の含有量が900ppm以下であり、(ロ)スパイラルフロー長(0.5mm厚みのスパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形した流動長)が35mm以上、
かつ(ハ)充填材(C)含有量が、組成物全体の45重量%以下であるポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
2.ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を構成するポリフェニレンサルファイド樹脂として(A)クロロホルム抽出量が1.8重量%以下のポリフェニレンサルファイド樹脂を用いることを特徴とする上記1項記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
3.UL94の測定法で定義された難燃性が厚み0.8mmでV−0もしくは5Vであることを特徴とする上記1〜2項いずれか記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
4.一般式R−S−S−R(R、Rはそれぞれフェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、チオベンゾイル基あるいはその誘導体を示し、R、Rは同じでも異なっていても良い)で表わされる含硫黄化合物(B)を(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂に0.005〜0.3重量部含有せしめることを特徴とする上記1〜3項いずれか記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
5.上記1〜4のいずれか記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形品。
6.成形品が電気電子部品である上記5記載の成形品。
7.電気電子部品がコネクター、コネクター構成部品、コンデンサー構成部品のいずれかである上記6記載の成形品。
本発明によれば、塩素含有量が少なく、かつ溶融流動性に優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物およびその射出成形体からなる電気電子部品を提供できる。

(1)PPS樹脂
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
Figure 2010070656
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
Figure 2010070656
かかる構造を一部有するPPS共重合体は、融点が低くなるため、このような樹脂組成物は成形性の点で有利となる。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂はクロロホルム抽出量が1.8重量%以下であることが望ましく、さらには1.0重量%以下であることが好ましい。
PPS樹脂はクロロホルム抽出量が1.8重量%越える場合、塩素含有量が増える傾向にあり、また優れた機械的強度、特に電気電子部品でしばしば要求される優れたウェルド強度得ることが困難となる。かかるクロロホルム抽出量が1.8重量%以下のPPS樹脂を得るには、後述する後処理工程で、有機溶剤洗浄する方法が好ましく用いられる。
なお本発明におけるクロロホルム抽出量は、ソックスレー抽出器を用い、PPSサンプル量約10g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥し、得られた残さを仕込みPPSサンプル量で割り返し、100をかけてパーセンテージ表記としたものである。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂の溶融粘度に特に制限はないが、より優れた機械的強度と良流動性を両立させる観点および低塩素化を図る観点からその溶融粘度は、400〜2000Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)の範囲が好ましく、400〜1300Pa・s以下の範囲がより好ましい。また溶融粘度の異なる2種以上のポリアリーレンサルファイド樹脂を併用して用いてもよい。
なお、本発明における溶融粘度は、320℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
以下に、本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造のPPSが得られれば下記方法に限定されるものではもちろんない。
まず、製造方法において使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3.5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
本発明において、仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選択される。
[分子量調節剤]
本発明においては、生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは塩素含有量の低減、重合反応や分子量を調節するなどのために、モノクロロベンゼン等のモノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
[重合助剤]
本発明においては、重合度調節のために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。および/または水、塩化リチウムが好ましく用いられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明する。
[前工程]
本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(b)上記(a)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
本発明で用いる(A)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。本発明で用いるPPS樹脂は、公知の如何なる回収方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要もなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選択される。
[後処理工程]
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理または有機溶媒による洗浄を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、PH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のPHは4以上例えばPH4〜8程度となっても良い。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。本発明において使用するPPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
本発明の熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解は好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えたPPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。 本発明においては、上記のようにして得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を、アルカリ土類金属塩を含む水による洗浄による処理を施しても良い。
ポリフェニレンスルフィド樹脂をアルカリ土類金属塩を含む水で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。アルカリ土類金属塩の種類としては特に制限は無いが、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物が好ましい例として挙げられ、特に酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩が好ましい。水の温度は、室温〜200℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。上記水中におけるアルカリ土類金属塩の使用量は乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂1kgに対し0.1g〜50gであることが好ましく、0.5g〜30gであることがより好ましい。洗浄時間としては0.5時間以上が好ましく、1.0時間以上がより好ましい。また好ましい洗浄浴比(乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂単位重量当たりのアルカリ土類金属塩を含む温水使用重量)は洗浄時間、温度にもよるが、乾燥ポリフェニレンスルフィド1kg当たり、上記アルカリ土類金属を含む温水を5kg以上用いて洗浄することが好ましく、10kg以上用いて洗浄することがより好ましい。上限としては特に制限はなく、高くてもよいが、使用量と得られる効果の点から100kg以下であることが好ましい。かかる温水洗浄は複数回行っても良い。
本発明において用いる(A)PPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
しかしながら、高ウェルド強度と優れた溶融流動性を両立する観点からは、架橋構造の導入はあまり好ましくなく、直鎖状PPSであることが好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
かかる好適なPPS樹脂の製品例としては、東レ株式会社製、M2888、M2588、M2088、T1881、E2280、E2180、E2080、GR01などが挙げられる。 本発明においては、ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物全体の45重量%以下の範囲で充填材(C)含有させることが必須であり、10〜45重量%の範囲がより好ましく、20〜43重量%の範囲が更に好ましい。充填材(C)の量が多すぎると、溶融流動性が減退するため好ましくなく、一方充填材(C)の量が少なすぎると、耐熱性や機械的強度が低下するため好ましくない。
かかる、充填材(C)の具体例としては、繊維状充填材として、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、酸化亜鉛ウィスカ、セラミック繊維、硫酸バリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、金属繊維などが用いられ、これらは2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
また非繊維状充填材の具体例としては、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウムなどの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、炭化珪素、カーボンブラック、シリカ、黒鉛、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、ドロマイト、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、セラミックビーズ、窒化ホウ素、酸化亜鉛などが用いられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でも炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルクなどの珪酸塩、カーボンブラック、黒鉛が特に好ましい。
なお本発明においては、充填材(C)として、比重が3.5以上である充填剤をあまり多量に用いることは好ましくない。なぜなら、製品の重量が増すためである。比重が3.5以上である充填剤を用いる場合でもその使用量は、ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物全体の8重量%以下とすることが望ましい。
比重が3.5以上である充填剤として繊維状充填材として、具体的には、酸化亜鉛ウィスカ、セラミック繊維、硫酸バリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、金属繊維などが例示できる。また非繊維状充填材として、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、ドロマイト、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、セラミックビーズ、窒化ホウ素、酸化亜鉛などが例示できる。これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
本発明において、優れた溶融流動性を得る観点から、一般式R−S−S−R(R、Rはそれぞれフェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、チオベンゾイル基あるいはその誘導体を示し、R、Rは同じでも異なっていても良い)で表わされる含硫黄化合物(B)を添加することは、好ましい態様の一つである。
かかる含硫黄化合物(B)の具体例としては、ジフェニルジスルフィド、p、p’−ジトリルジスルフィド、p、p’−ジトリルテトラスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジベンジルテトラスルフィド、ジベンゾイルジスルフィドあるいはジチオベンゾイルジスルフィドなどがあげられる。
本発明における含硫黄化合物(B)の添加方法は、特に制限されるものではないが、あらかじめ、PPSにブレンドして調整してもよいし、成型加工あるいは溶融混練中に添加してもよい。
かかる含硫黄化合物(B)の添加量は、(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に0.005〜0.3重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量部の範囲がより好ましい。かかる含硫黄化合物(B)の添加量が0.3重量部を越えると、ポリフェニレンサルファイド樹脂の熱安定性が低下し、ガス発生量が増える傾向にあるため好ましくなく、0.005重量部未満では、溶融流動性向上効果が小さすぎるため好ましくない。
さらに、本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、機械的強度、靱性などの向上を目的に、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するシラン化合物を添加してもよい。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。なかでもエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基を有するアルコキシシランが優れたウェルド強度を得る上で特に好適である。
かかるシラン化合物の好適な添加量は、ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、0.05〜3重量部の範囲が選択される。
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブレンド可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロン(“アモデル”、“アーレン”、“ジェネスター”など)などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシル基やカルボン酸エステル基や酸無水物基やエポキシ基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エポキシ基含有ポリオレフィン共重合体などが挙げられる。
なお、本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。 本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物の調製方法には特に制限はないが、各原料を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280〜380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、優れた耐腐食性付与や環境等への配慮から、(イ)塩素の含有量が900ppm以下である必要があり、800ppm以下の範囲がより好ましく、300〜750ppmの範囲がより好ましい。塩素の含有量を900ppm以下とするのは、電子部品用途において、耐腐食性や環境負荷低減の観点から、塩素含有量を900ppm以下とすることがしばしば要求されるためである。
なお、ここで言う塩素、臭素の含有量は、SGSファーイーストリミテッドグリーンテスティングセンターに依頼し、BS EN14582法に従い、SGS台湾(高雄)で測定した値である。
本発明において、(ロ)スパイラルフロー長(0.5mm厚みのスパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形した流動長)が35mm以上である必要があり、37mm以上がより好ましい。ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を、例えばコネクター部品に用いる場合、その寸法は厚み0.5mm以下で、その長さが30mm程度以上の場合が多い。そのため電子部品分野に対しポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を適用する場合、スパイラルフロー長(0.5mm厚み)は35mm以上であることがしばしば求められる。なお参考までに、東レ(株)社製“トレリナ”A604のスパイラルフロー長(0.5mm厚みのスパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形した流動長)は、それぞれ33mmである。
樹脂組成物からのガス発生量の目安としては、330℃、3時間加熱時の付着性ガス成分量を測定する方法も用いることが可能である。具体的には、直径18mm、深さ75mm、肉厚1mmのガラス製サンプル管に樹脂組成物約1.5gを精秤し、かかるガラス製サンプル管を、330℃±0.1℃に調整されたアルミブロックヒーター(装置:サイニクス社製の型番AL−331。直径18.3mm、深さ70mmの円柱状の溝を12箇所有する。)に挿入後、ガラス製サンプル管の開口部に、精秤したガラス板を置く。3時間経過後、ガラス板を取り除き、デシケーター中で室温まで冷却する。このガラス板を再度精秤し、元のガラス板の重量との差からガラス板へのガス分付着量をもとめ、付着量を樹脂組成物量で割り返し、100を掛けて樹脂組成物量当たりのガス付着物量(%)を求めた。ユーザーでの樹脂組成物の成形評価結果から、この値が0.06重量%以下、好ましくは0.05重量%以下であれば、コネクター、コネクター構成部品、コンデンサー構成部品として使用可能であることが判った。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物はUL94の測定法で定義された難燃性が厚み1.0mmでV−0もしくは5Vであることが望ましく、厚み0.8mmV−0もしくは5Vであることが更に望ましく、厚み0.4mmV−0もしくは5Vであることが更に望ましい。これは、電気電子分野においてはしばしばその材料に、その用途に応じて難燃性がV−0もしくは5Vの高い難燃性が求められるためである。
このようにして得られる本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に射出成形用途に適している。
以上のように、本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、高ウェルド強度、高溶融流動性について均衡して優れている事から、例えば電気電子部品なかでも特に、コネクター、コネクター構成部品、コンデンサー構成部品に好適に用いられる。
その他本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物の適用可能な用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品など各種用途が例示できる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
[測定方法]
(1)PPS樹脂のクロロホルム抽出量
ソックスレー抽出器を用い、PPSサンプル量約10g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥し、得られた残さを仕込みPPSサンプル量で割り返し、100をかけてパセンテージ表記としたものである。
(2)PPS樹脂の溶融粘度
320℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
(3)曲げ強度 ASTM D790に準じて測定を行った。具体的には次のように測定を行った。本発明の樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度320℃に設定した住友−ネスタール社製射出成形機(SG75−HIPRO・MIII)に供給し、射出圧力=成形下限圧力+5Kgf/cmのゲージ圧にて射出成形を行い、幅12.7mm×高さ6.4mm×長さ127mmの試験片を得た。この試験片を用い、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、スパン100mm、歪み速度3mm/minの条件で測定を行った。
(4)ウェルド強度
両端にゲートを有し、試験片中央部付近にウェルドラインを有するASTM1号ダンベル片を、射出成形機を用いてシリンダー温度320℃、金型温度135℃の条件で成形し、歪速度5mm/min、支点間距離114mmの条件で引張強度測定を行なった。
(5)スパイラルフロー長
0.5mm厚みのスパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形し、流動長を測定した(使用成形機:住友重機製“SE−30D”)。この流動長の値が大きい程、溶融流動性に優れていると言える。
(6)塩素、臭素含有量
SGSファーイーストリミテッドグリーンテスティングセンターに依頼し、BS EN14582法に従い、SGS台湾(高雄)で測定した。
(7)難燃性の測定方法
射出成形機を用いて、成形温度320℃、金型温度130℃の条件で難燃性評価用試験片の射出成形を行い、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2>HBの順に低下しランク付けされる。また、試験片の厚みは0.8mmを用いた。
(8)付着性ガス成分量
直径18mm、深さ75mm、肉厚1mmのガラス製サンプル管に樹脂組成物約1.5gを精秤し、かかるガラス製サンプル管を、330℃±0.1℃に調整されたアルミブロックヒーター(装置:サイニクス社製の型番AL−331。直径18.3mm、深さ70mmの円柱状の溝を12箇所有する。)に挿入後、ガラス製サンプル管の開口部に、精秤したガラス板を置く。3時間経過後、ガラス板を取り除き、デシケーター中で室温まで冷却する。このガラス板を再度精秤し、元のガラス板の重量との差からガラス板へのガス分付着量をもとめ、付着量を樹脂組成物量で割り返し、100を掛けて樹脂組成物量当たりのガス付着物量(%)を求めた。
[使用原材料]
[参考例1]PPSの重合(PPS−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム1722.00g(21.00モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは直鎖状であり、溶融粘度が100Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量0.43%であった。
[参考例2]PPSの重合(PPS−2)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム861.00g(10.5モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは直鎖状であり、溶融粘度が50Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量0.57%であった。
[参考例3]PPSの重合(PPS−3)
東レ株式会社製M3910を熱風オーブン中210℃×15時間処理した。得られたPPSは架橋型であり、溶融粘度が100Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量2.50%であった。 [含硫黄化合物(B)]
B−1:ジフェニルジスルフィド
[充填材(C)]
ガラス繊維
C−1:ガラス繊維 旭ファイバーグラス社製 T747GH(平均繊維直径10μ) 比重 2.5
[実施例1〜3]
表1に示す各成分を表1に示す割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX30α型2軸押出機(L/D=45.5)を用い、スクリュー回転数300rpmでシリンダー出樹脂温度が330℃となるように温度を設定し、溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。120℃で一晩乾燥したペレットを用い、成形、評価に供した。
Figure 2010070656
[比較例1]
B−1を添加しないこと以外は実施例1と同様に表1に示す割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX30α型2軸押出機(L/D=45.5)を用い、スクリュー回転数300rpmでシリンダー出樹脂温度が330℃となるように温度を設定し、溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。120℃で一晩乾燥したペレットを用い、成形、評価に供した。
スパイラルフロー長が不十分な結果であった。
[比較例2]
PPS−1の替わりにPPS−3を用いたこと以外は実施例1と同様に表1に示す割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX30α型2軸押出機(L/D=45.5)を用い、スクリュー回転数300rpmでシリンダー出樹脂温度が330℃となるように温度を設定し、溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。120℃で一晩乾燥したペレットを用い、成形、評価に供した。
[比較例3]
C−1の配合量を増やしたこと以外は実施例1と同様に表1に示す割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX30α型2軸押出機(L/D=45.5)を用い、スクリュー回転数300rpmでシリンダー出樹脂温度が330℃となるように温度を設定し、溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。120℃で一晩乾燥したペレットを用い、成形、評価に供した。
スパイラルフロー長が不十分な結果であった。
[実施例4]
日精樹脂工業社製PS20E2ASE成形機を用い、一列に50個のピン穴(ピン穴間隔1.27mm)を2列有し、うちのりが68mm×5mm×高さ7mm、そとのりが70mm×7mm×高さ9.3mmの箱型形状を有し、長手方向の両端部にリブが設けられた形状を有するコネクター成形品を成形した。コネクターは1列につき50個のピン穴を2列有している。ゲートはピンゲートである。
実施例1の組成物を用い、金型温度135℃、樹脂温度320℃で成形を行ったところ、正常な成形片が得られた。
[比較例4]
比較例1の組成物を用い、金型温度135℃、樹脂温度320℃で成形を行ったところ、最大射出圧力でも樹脂は成形片を完全には充填できなかった。
本発明は、塩素含有量が少なく、かつ溶融流動性に優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物およびその射出成形体に関するものであり、電気電子部品用途に特に好適に用いられる。

Claims (7)

  1. ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物であって、(イ)塩素の含有量が900ppm以下であり、(ロ)スパイラルフロー長(0.5mm厚みのスパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形した流動長)が35mm以上、かつ(ハ)充填材(C)含有量が、組成物全体の45重量%以下であるポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
  2. ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を構成するポリフェニレンサルファイド樹脂としてクロロホルム抽出量が1.8重量%以下のポリフェニレンサルファイド樹脂(A)を用いることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
  3. UL94の測定法で定義された難燃性が厚み0.8mmでV−0もしくは5Vであることを特徴とする請求項1〜2いずれか記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
  4. 一般式R−S−S−R(R、Rはそれぞれフェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、チオベンゾイル基あるいはその誘導体を示し、R、Rは同じでも異なっていても良い)で表わされる含硫黄化合物(B)を(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対し0.005〜0.3重量部配合してなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4いずれか記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形品。
  6. 成形品が電気電子部品である請求項5記載の成形品。
  7. 電気電子部品がコネクター、コネクター構成部品、コンデンサー構成部品のいずれかである請求項6記載の成形品。
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