JP4495261B2 - 液晶ポリエステル樹脂組成物およびその製造方法、ならびに該組成物からなる成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、良好な熱安定性を有する成形体を与える液晶ポリエステル樹脂組成物、その製造法、および該組成物からなる成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の工業製品の軽薄短小化の進展に伴い、種々の機構部品用途や電子部品用途等においても、軽量化、コストダウンの要求が強まり、合成樹脂が使われることが多くなってきた。こうした用途において、耐熱性ならびに種々の特性が要求され、従来からその要求特性を満たすために種々の無機充填剤を配合したポリアミド、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂、ジアリルフタレート、エポキシ等の熱硬化性樹脂が広く使用されてきた。
ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂に無機充填剤を配合した組成物は−40℃〜170℃の温度範囲においては良好な機械特性を示すものの、高温下では、成形品の変形、機械強度の低下などを起こし使用することができなくなるという問題があった。さらに電子部品用途では、表面実装等の組立工程における高温雰囲気下において耐熱性が不足し、変形はおろか、溶融を起こして使用に耐えないという問題があった。
また、ジアリルフタレート、エポキシ等の熱硬化性樹脂を用いた組成物は、耐熱性は十分なものの、生産性が悪い、リサイクルができない等の問題があった。
【0003】
これらの耐熱性、生産性およびリサイクル性等の問題を解決するため、スーパーエンジニアリングプラスチックに無機充填剤を配合した組成物が提案されている。中でも液晶ポリエステルは、他のスーパーエンジニアリングプラスチックに比べて溶融粘度が低く、無機充填剤を高充填できるために、無機充填剤による種々の特性を有し、かつ良好な熱安定性を有する成形体を提供することができる。しかしながら、液晶ポリエステルに配合される無機充填剤の種類によっては、無機充填剤を構成する金属成分や、不純物、とりわけエステル結合の加水分解反応を促進するような金属成分によって、液晶ポリエステルが分解され、熱安定性が低下するという問題があった。
例えば、特開昭60-179430号、特開昭61-1169222号、特開平4-297007号、特開平7-331451号、特開平8-167522号公報には、液晶ポリエステルに無機充填剤としてフェライトを磁性付与の目的で配合した組成物、加工法、用途が記載されている。しかしながら、上記公報においては、フェライト中の金属成分やフェライト中のアルカリ性不純物によると考えられる液晶ポリエステルの分解、劣化のために、熱安定性が著しく低下するという問題は記載されていない。
特開昭60-179430号公報には、液晶ポリエステルに無機充填剤としてフェライトを磁性付与の目的で配合した組成物において、熱劣化を抑制し、良好な熱安定を得るために、無機充填剤をシラン系カップリング剤等で表面処理し、さらに200℃以上の温度で熱処理を施すことが記載されている。しかしながら、上記公報の技術においては、熱安定性の向上効果が不十分であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の問題点を解決して、良好な熱安定性を有する液晶ポリエステル樹脂組成物およびその製造方法、ならびに液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形体を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、予め液晶ポリエステルと非相溶の熱可塑性樹脂でコーティングされた無機充填剤と液晶ポリエステルを特定量配合することにより、無機充填剤と液晶ポリエステルを遮断し、無機充填剤を構成する金属成分や不純物を液晶ポリエステルと直接接触させないようにし、液晶ポリエステルの分解を抑制、良好な熱安定性を有する液晶ポリエステル樹脂組成物を得ることができることを見出し本発明に至った。すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)液晶ポリエステル(A)100重量部に対して、予め液晶ポリエステル(A)と非相溶のポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォンおよびポリフェニレンスルフィドからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)でコーティングされた、フェライト(C)10〜400重量部を配合してなり、かつ、(B)と(C)の重量比が式0.2≧(B)/((B)+(C))≧0.01を満足することを特徴とする液晶ポリエステル樹脂組成物。
(2)液晶ポリエステル(A)が、下式(I)で表される繰り返し構造単位を少なくとも20モル%含むことを特徴とする上記(1)記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【0006】
【化2】
(3)熱可塑性樹脂(B)が、200℃以上の融点を有する結晶性樹脂および/または150℃以上のガラス転移点を有する非晶性樹脂から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする上記(1)記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
(4)熱可塑性樹脂(B)が、ポリエーテルスルフォン又はポリフェニレンスルフィドから選ばれることを特徴とする請求項1記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
(5)以下の(1)〜(3)の工程をこの順に経ることを特徴とする上記(1)記載の液晶ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(1)液晶ポリエステル(A)とポリスルフォンおよびポリフェニレンスルフィドからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)を溶融、または溶媒に溶解させる工程。
(2)上記の工程で得られる、(B)の溶融物または溶液で、フェライト(C)をコーティングする工程。
(3)液晶ポリエステル(A)と、上記の工程で得た表面をコーティングされたフェライト(C)とを溶融混練する工程。
(6)上記(1)〜(4)記載の液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形体。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、
(1)芳香族ジカルボン酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸との組み合わせからなるもの、
(2)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸からなるもの、
(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせからなるもの、
(4)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させたもの、
等が挙げられ、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。なお、これらの芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸の代わりに、それらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。
該液晶ポリエステルの繰り返し構造単位としては下記のものを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し構造単位:
【0008】
【化3】
芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位:
【0009】
【化4】
芳香族ジオールに由来する繰り返し構造単位:
【0010】
【化5】
【0011】
【化6】
【0012】
耐熱性、機械的特性、加工性のバランスから特に好ましい液晶ポリエステルは、前記式A1で表される繰り返し構造単位を少なくとも30モル%含むものである。
具体的には繰り返し構造単位の組み合わせが下記(a)〜(f)のものが好ましい。
(a):(A1),(B1)または(B1)と(B2)の混合物,(C1)
(b):(A1),(A2)
(c):(a)の構造単位の組み合わせのものにおいて、A1の一部をA2で置き換えたもの
(d):(a)の構造単位の組み合わせのものにおいて、B1の一部をB3で置き換えたもの
(e):(a)の構造単位の組み合わせのものにおいて、C1の一部をC2および/またはC3で置き換えたもの
(f):(b)の構造単位の組み合わせたものにB1とC1の構造単位を加えたもの
これらのうちで(a)の組み合わせのものにおいて、A1/C1のモル比率が0.2〜1.0、(B1+B2)/C1のモル比率が0.9〜1.1、B1/B2のモル比率が0〜1.0のモル比率であるものがより好ましい。
基本的な構造となる(a)、(b)の液晶ポリエステルについては、それぞれ、例えば、特公昭47-47870号公報、特公昭63-3888号公報等に記載されている。
【0013】
本発明で用いられる、液晶ポリエステルと非相溶の熱可塑性樹脂の中でも、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォンおよびポリフェニレンスルフィドから選ばれる少なくとも1種から選ばれ、特に200℃以上の融点を有する結晶性樹脂、あるいは150℃以上のガラス転移点を有する非晶性樹脂が好ましい。中でも、熱可塑性樹脂としてはポリエーテルスルフォンまたはリフェニレンスルフィドが好ましい。相溶、非相溶の概念に関しては、「ポリマーアロイ 〜基礎と応用」高分子学会編、東京化学同人(1981年刊)、P.130に記載のとおり、「分子状に混合される性質の有無」を示している。すなわち、非相溶とは、少なくともミクロ相分離構造をとることを意味しており、このことは電子顕微鏡で観測できる。熱可塑性樹脂が液晶ポリエステルと相溶すると、フェライトを熱可塑性樹脂で遮蔽することができず、フェライトを構成する金属成分や不純物と液晶ポリエステルが直接接触することによって液晶ポリエステルの分解を促進、液晶ポリエステル樹脂組成物の熱安定性が損なわれるので好ましくない。
【0016】
また、本発明で用いられるフェライトの粒子の大きさは、300メッシュ以下のものが好ましい。300メッシュよりも大きい場合、成形品の外観、成形品中での均一分散性などの面から好ましくない。
【0017】
本発明において、熱可塑性樹脂で無機充填剤をコーティングする方法としては、押出し機を使用して混練する方法、熱可塑性樹脂を溶媒に溶解させ塗布する方法など、様々な方法を用いることができる。
本発明において、熱可塑性樹脂で無機充填剤をコーティングする際の両者の重量比は前記の式を満足する必要がある。すなわち、熱可塑性樹脂の濃度は、熱可塑性樹脂と無機充填剤の総量に対し、1%以上、20%以下が好ましい。熱可塑性樹脂の濃度が1%未満では、コーティングが不十分なために、無機充填剤を構成する金属成分や、不純物によって、液晶ポリエステルが分解され好ましくない。一方、熱可塑性樹脂の濃度が20%以上では、液晶ポリエステルの優れた耐熱性、成形加工性を損なうため好ましくない。
【0018】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物において、ポリスルフォンおよびポリフェニレンスルフィドからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂でコーティングされたフェライトの配合割合は、液晶ポリエステル100重量部に対し、10〜400重量部であり、さらに好ましくは20〜300重量部である。該熱可塑性樹脂でコーティングされたフェライトの配合割合が多い場合は、成形加工時の流動性が悪くなり、良好な成形品を得ることが難しくなるとともに、成形機のシリンダーや金型の摩耗が大きくなるため好ましくない。また、該熱可塑性樹脂でコーティングされたフェライトの配合割合が少ない場合も、フェライトによる特性の向上効果が不十分となり好ましくない。なお、本発明で用いられる液晶ポリエステル樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲でガラスファイバー、ガラスビーズ、カーボンファイバーなどの補強材;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。また、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有するものを1種以上添加することも可能である。本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を得るための原料成分の配合手段は特に限定されず、各成分を各々別々に溶融混合機に供給するか、またはこれらの原料成分を乳鉢、ヘンシェルミキサー、ボールミル、リボンブレンダーなどを利用して予備混合してから溶融混合機に供給することもできる。本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、良好な熱安定性と耐ハンダ性を有するため、電気・電子部品(コイルボビン、コイル、スイッチ、リレー、コネクター、ソケット等)、OA・AV機器(プリンター、複写機、ファクシミリ、ビデオデッキ、ビデオカメラ、フロッピーディスクドライブ、ハードディスクドライブ、CD−ROMドライブ、光磁気ディスクドライブ等)、その他の機構部品(スチールカメラ、電磁波を用いた加熱調理器、自動車部品等)に好適に用いられる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例中の物性は次の方法で測定した。
ハンダ耐熱性:本発明の組成物から肉厚1mm、長さ46mm、幅5mmの矩形の試験片を成形し、錫60%と鉛40%とからなるハンダHA60Aの200℃のハンダ浴に浸漬し、各温度で10秒間保持しながら該ハンダ浴を5℃ずつ昇温させるとき、同試験片が膨れまたは3mm以上の変形を生じない最高温度として求めた。例えば、250℃で初めて膨れまたは変形が生じた場合のハンダ耐熱性は245℃である。
【0020】
実施例1
熱可塑性樹脂(B)としてポリフェニレンスルフィド、無機充填剤(C)としてフェライト(酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化マンガンを主成分とする共晶体)を、(B):(C)=12:70の組成でヘンシェルミキサーにて混合後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いてシリンダー温度300℃で造粒し、ポリフェニレンスルフィドでコーティングされたフェライトのペレットを得た。
繰り返し構造単位が前記のA1、B1、B2、C1からなり、A1:B1:B2:C1のモル比が60:12:8:20である液晶ポリエステル(A)100重量部と得られたペレット455.6重量部をヘンシェルミキサーで混合後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いて、シリンダー温度300℃で造粒し、液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。
これらの液晶ポリエステル樹脂組成物を120℃で3時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型)を用いて、シリンダー温度310℃、330℃、金型温度130℃で肉厚1mm、長さ46mm、幅5mmの矩形の試験片を成形した。成形時、シリンダー内での樹脂の分解によると考えられるガスの発生、ノズルからの樹脂の吹き出しなどの現象は見られなかった。さらに、得られた試験片を用い、ハンダ耐熱性の測定を行った結果、310℃、330℃成形時ともに260℃であった。
【0021】
実施例2
実施例1のフェライトを、予め400℃の棚段式電気炉にて6時間、熱処理を施して用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を実施例1と同様の方法で成形した。成形時、シリンダー内での樹脂の分解によると考えられるガスの発生、ノズルからの樹脂の吹き出しなどの現象は見られなかった。さらに、得られた試験片を用い、ハンダ耐熱性の測定を行った結果、310℃成形時は270℃、330℃成形時は260℃であった。
【0022】
実施例3
熱可塑性樹脂(B)としてポリエーテルスルフォン、無機充填剤(C)として、予め400℃の棚段式電気炉にて6時間、熱処理を施したフェライト(酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化マンガンを主成分とする共晶体)を、(B):(C)=12:70の組成でヘンシェルミキサーにて混合後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いてシリンダー温度340℃で造粒し、ポリエーテルスルフォンでコーティングされたフェライトのペレットを得た。
繰り返し構造単位が前記のA1、B1、B2、C1からなり、A1:B1:B2:C1のモル比が60:15:5:20である液晶ポリエステル(A)100重量部と得られたペレット455.6重量部をヘンシェルミキサーで混合後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いて、シリンダー温度340℃で造粒し、液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。
これらの液晶ポリエステル樹脂組成物を120℃で3時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型)を用いて、シリンダー温度360℃、金型温度130℃で肉厚1mm、長さ46mm、幅5mmの矩形の試験片を成形した。成形時、シリンダー内での樹脂の分解によると考えられるガスの発生、ノズルからの樹脂の吹き出しなどの現象は見られなかった。さらに、得られた試験片を用い、ハンダ耐熱性の測定を行った結果、235℃であった。
【0023】
比較例1
繰り返し構造単位が前記のA1、B1、B2、C1からなり、A1:B1:B2:C1のモル比が60:12:8:20である液晶ポリエステル(A)100重量部と、無機充填剤(C)としてフェライト(酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化マンガンを主成分とする共晶体)300重量部をヘンシェルミキサーで混合後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いて、シリンダー温度330℃で造粒し、液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。
これらの液晶ポリエステル樹脂組成物を120℃で3時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型)を用いて、シリンダー温度310℃、340℃、金型温度130℃で肉厚1mm、長さ46mm、幅5mmの矩形の試験片を成形した。成形時、シリンダー内での樹脂の分解によると考えられるガスの発生、ノズルからの樹脂の吹き出しなどの現象が見られた。さらに、得られた試験片を用い、ハンダ耐熱性の測定を行った結果、310℃成形時は220℃、340℃成形時は205℃であった。
【0024】
比較例2
繰り返し構造単位が前記のA1、B1、B2、C1からなり、A1:B1:B2:C1のモル比が60:12:8:20である液晶ポリエステル(A)100重量部と、無機充填剤(C)として、予め400℃の棚段式電気炉にて6時間、熱処理を施したフェライト(酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化マンガンを主成分とする共晶体)300重量部をヘンシェルミキサーで混合後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いて、シリンダー温度330℃で造粒し、液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。
これらの液晶ポリエステル樹脂組成物を120℃で3時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型)を用いて、シリンダー温度310℃、340℃、金型温度130℃で肉厚1mm、長さ46mm、幅5mmの矩形の試験片を成形した。成形時、シリンダー内での樹脂の分解によると考えられるガスの発生、ノズルからの樹脂の吹き出しなどの現象が見られた。さらに、得られた試験片を用い、ハンダ耐熱性の測定を行った結果、310℃、340℃成形時ともに220℃であった。
【0025】
比較例3
繰り返し構造単位が前記のA1、B1、B2、C1からなり、A1:B1:B2:C1のモル比が60:15:5:20である液晶ポリエステル(A)100重量部と、無機充填剤(C)として、予めシランカップリング材で表面処理を施した後、400℃の棚段式電気炉にて6時間、熱処理を施したフェライト(酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化マンガンを主成分とする共晶体)233.3重量部をヘンシェルミキサーで混合後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いて、シリンダー温度330℃で造粒し、液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。
これらの液晶ポリエステル樹脂組成物を120℃で3時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型)を用いて、シリンダー温度360℃、380℃、金型温度130℃で肉厚1mm、長さ46mm、幅5mmの矩形の試験片を成形した。成形時、シリンダー内での樹脂の分解によると考えられるガスの発生、ノズルからの樹脂の吹き出しなどの現象が見られた。また、シリンダー温度380℃では樹脂がノズルから吹き出し、試験片を得ることができなかった。さらに、シリンダー温度360℃で成形した試験片を用い、ハンダ耐熱性の測定を行った結果、230℃であった。
【0026】
熱可塑性樹脂(ポリフェニレンスルフィド)でコーティングした無機充填剤(フェライト)と液晶ポリエステルの組成物(実施例1〜2)は、フェライトの熱処理の有無に関わらず、成形時の熱安定性が良好で、優れた耐ハンダ性を有することが分かる。
また、熱可塑性樹脂(ポリエーテルサルフォン)でコーティングした無機充填剤(フェライト)と液晶ポリエステルの組成物(実施例3)は、成形時の熱安定性が良好であることが分かる。
一方、無機充填剤への熱処理の有無(比較例1、2)、シラン処理の有無(比較例2、3)に関わらず、熱可塑性樹脂でコーティングしていない無機充填剤(フェライト)と液晶ポリエステルの組成物(比較例1〜3)は、シリンダー内での樹脂の分解によると考えられるガスの発生、ノズルからの樹脂の吹き出しなどの現象が見られ、熱安定性が劣っていることが分かる。また、耐ハンダ性についても、不十分であることが分かる。
【0027】
【発明の効果】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステルを劣化させるために使用することが不可能であった無機充填剤を使用し、良好な熱安定性と耐ハンダ性を有する成形体を得ることができる。
Claims (6)
- 液晶ポリエステル(A)100重量部に対して、予め液晶ポリエステル(A)と非相溶のポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォンおよびポリフェニレンスルフィドからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)でコーティングされた、フェライト(C)10〜400重量部を配合してなり、かつ、(B)と(C)の重量比が式0.2≧(B)/((B)+(C))≧0.01を満足することを特徴とする液晶ポリエステル樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(B)が、200℃以上の融点を有する結晶性樹脂および/または150℃以上のガラス転移点を有する非晶性樹脂から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(B)が、ポリエーテルスルフォン又はポリフェニレンスルフィドから選ばれることを特徴とする請求項1記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
- 以下の(1)〜(3)の工程をこの順に経ることを特徴とする請求項1記載の液晶ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(1)液晶ポリエステル(A)と非相溶のポリスルフォンおよびポリフェニレンスルフィドからなる群から選ばれる少なくとも1種(B)を溶融、または溶媒に溶解させる工程。
(2)上記の工程で得られる、(B)の溶融物または溶液で、フェライト(C)をコーティングする工程。
(3)液晶ポリエステル(A)と、上記の工程で得た表面をコーティングされたフェライト(C)とを溶融混練する工程。 - 請求項1、2、3または4記載の液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形体。
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