JP2016045331A - 2成分現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】画像形成装置の構成の複雑化を極力招くことなく、トナーの過帯電に起因した2次転写不良又は定着不良(例えば、静電飛散又は静電オフセット)を抑制できる2成分現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】2成分現像剤が、トナーとキャリアとを含む。トナーは、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、コアと、コアの表面に形成されたシェル層とを有する。トナー粒子に外添剤が付着していない状態でのトナーの電荷減衰定数は0.020以上0.050以下である。キャリアの体積固有抵抗値は1.0×1012Ω・cm以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、2成分現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
例えば、特許文献1に記載される画像形成装置は、現像工程と、1次転写工程と、2次転写工程とを経ることにより、転写紙上に画像を形成する。現像工程では、4つの感光体ドラムの各々に形成された静電荷像をそれぞれ、2成分現像剤を用いて現像することにより、感光体ドラムの各々にトナー像を形成する。1次転写工程では、感光体ドラムの各々に形成されたトナー像を順次、中間転写ベルトに転写することにより、中間転写ベルト上にトナー像を重ねる。2次転写工程では、中間転写ベルト上に重ねたトナー像を転写紙に一括転写する。
特許文献1に記載される画像形成装置では、トナーの帯電量を制御するために、中間転写ベルトの近傍にプレ転写チャージャーを設けている。
特開平11−305566号公報
しかしながら、特許文献1に開示される画像形成装置では、プレ転写チャージャーを設けることで、画像形成装置の構成の複雑化及び高コスト化を招くことになる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、画像形成装置の構成の複雑化を極力招くことなく、トナーの過帯電に起因した2次転写不良又は定着不良を抑制できる2成分現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法を提供することを目的とする。
本発明に係る2成分現像剤は、トナーとキャリアとを含む。前記トナーは、複数のトナー粒子を含む。前記トナー粒子は、コアと、前記コアの表面に形成されたシェル層とを有する。前記トナー粒子に外添剤が付着していない状態での前記トナーの電荷減衰定数は0.020以上0.050以下である。前記キャリアの体積固有抵抗値は1.0×1012Ω・cm以上である。
本発明に係る画像形成装置は、現像工程と、1次転写工程と、2次転写工程とを経ることにより、被転写体上に画像を形成する。前記現像工程では、複数の静電荷像担持体の各々に形成された静電荷像をそれぞれ、本発明に係る2成分現像剤を用いて現像することにより、前記静電荷像担持体の各々にトナー像を形成する。前記1次転写工程では、前記静電荷像担持体の各々に形成された前記トナー像を順次、中間転写体に転写することにより、前記中間転写体上に前記トナー像を重ねる。前記2次転写工程では、前記中間転写体上に重ねたトナー像を前記被転写体に一括転写する。
本発明に係る画像形成方法は、現像工程と、1次転写工程と、2次転写工程とを含む。現像工程では、複数の静電荷像担持体の各々に形成された静電荷像を順次、本発明に係る2成分現像剤を用いて現像することにより、前記静電荷像担持体の各々にトナー像を形成する。前記1次転写工程では、前記静電荷像担持体の各々に形成された前記トナー像を中間転写体上に重ね合わせて転写する。前記2次転写工程では、前記中間転写体上の転写されたトナー像を被転写体に転写する。
本発明によれば、画像形成装置の構成の複雑化を極力招くことなく、トナーの過帯電に起因した2次転写不良又は定着不良を抑制できる2成分現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法を提供することが可能になる。
本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る2成分現像剤は、トナーとキャリアとを含む。トナーは、多数の粒子から構成される粉体である。トナーは、複数のトナー粒子を含む。複数のトナー粒子はそれぞれ、コア(以下、トナーコアと記載する)と、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを有する。シェル層の表面に外添剤が付着していてもよい。また、トナーコアの表面に複数のシェル層が積層されてもよい。本実施形態に係る2成分現像剤に含まれるトナーは、例えば正帯電性トナーとして用いることができる。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。
本実施形態に係る2成分現像剤は、例えば画像形成装置において静電荷像の現像に用いることができる。以下、図1を参照して、タンデム方式の電子写真装置の一例(画像形成装置100)について説明する。
画像形成装置100は、現像器11a〜11dと、感光体ドラム12a〜12dと、転写ベルト13と、1次転写ローラー15a〜15dと、2次転写ローラー16と、定着器17と、クリーニングローラー18とを有する。転写ベルト13は、駆動ローラー14a、従動ローラー14b、及びテンションローラー14cに張架されている。転写ベルト13は、駆動ローラー14aにより駆動されて、図1中の矢印で示される方向に回転する。クリーニングローラー18は、転写ベルト13上に残留するトナーを除去する。画像形成装置100を用いて画像を形成する場合には、トナーを含む現像剤を、現像器11a〜11dの各々にセットする。
画像形成装置100では、現像器11a、11b、11c、11dがそれぞれ、感光体ドラム12a、12b、12c、12d(それぞれ静電荷像担持体)に形成された静電荷像を現像剤で現像する。これにより、各静電潜像に、帯電したトナーが付着する。そして、1次転写ローラー15a〜15dの各々にバイアス(電圧)をかけることにより、感光体ドラム12a〜12dの各々に付着したトナー(トナー像)を転写ベルト13(中間転写体)に転写(1次転写)する。さらに、2次転写ローラー16にバイアス(電圧)をかけることにより、転写ベルト13上のトナー像を、搬送される記録媒体P(被転写体)に転写(2次転写)する。その後、定着器17が、トナーを加熱して、記録媒体Pにトナーを定着させる。これにより、記録媒体Pに画像が形成される。
画像形成装置100は、複数の感光体ドラム12a〜12dを有する。このため、画像形成装置100は、1次転写工程において、複数の感光体ドラム12a〜12dの各々に形成されたトナー像を順次、転写ベルト13に転写することにより、転写ベルト13上に、複数種のトナー像(例えば、異なる色のトナー像)を重ねることができる。また、画像形成装置100では、2次転写工程において、転写ベルト13上に重ねたトナー像を記録媒体Pに一括転写することができる。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。記録媒体Pとしては、例えば印刷用紙を用いることができる。
画像形成装置100は、トナーの1次転写及び2次転写の各々のためにトナーに電荷を付与する装置を有する。これらの装置はそれぞれ、実質的には、転写ローラー(1次転写ローラー15a、15b、15c、15d、又は2次転写ローラー16)と、転写ローラーにバイアスをかける電源(図示せず)とから構成されている。
本実施形態に係る2成分現像剤は、次に示す構成(1)及び(2)を有するトナーと、次に示す構成(3)を有するキャリアとを含む。本実施形態に係る2成分現像剤に含まれるトナーのうち、80質量%以上のトナーが構成(1)及び(2)を有することが好ましく、90質量%以上のトナーが構成(1)及び(2)を有することがより好ましく、100質量%のトナーが構成(1)及び(2)を有することがさらに好ましい。本実施形態に係る2成分現像剤に含まれるキャリアのうち、80質量%以上のキャリアが構成(3)を有することが好ましく、90質量%以上のキャリアが構成(3)を有することがより好ましく、100質量%のキャリアが構成(3)を有することがさらに好ましい。
(1)トナー粒子が、トナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層とを有する。
(2)トナー粒子に外添剤が付着していない状態(以下、未外添状態と記載する)でのトナーの電荷減衰定数が0.020以上0.050以下である。未外添状態でのトナーの電荷減衰定数(α)は、式「V=V0exp(α√t)」に基づいて、静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−D100」)を用いて測定される値、又はその代替方法で測定される値である。上記式中、Vは表面電位、V0は初期表面電位、tは減衰時間をそれぞれ示す。なお、未外添状態でのトナーの電荷減衰定数は、トナー粒子(より厳密に言えば、トナー母粒子)に外添剤を付着させる前に測定してもよいし、トナー粒子から外添剤を除去して測定してもよい。これらの方法で測定された測定値に大きな差異は生じないと考えられる。
(3)キャリアの体積固有抵抗値が1.0×1012Ω・cm以上である。
本実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法ではそれぞれ、現像工程、1次転写工程、及び2次転写工程を経ることにより、被転写体上に画像を形成する。詳しくは、現像工程では、複数の静電荷像担持体の各々に形成された静電荷像をそれぞれ、本実施形態に係る2成分現像剤を用いて現像することにより、静電荷像担持体の各々にトナー像を形成する。1次転写工程では、静電荷像担持体の各々に形成されたトナー像を順次、中間転写体に転写することにより、中間転写体上にトナー像を重ねる。2次転写工程では、中間転写体上に重ねたトナー像を被転写体に一括転写する。
2成分現像剤の構成(1)は、トナーの耐熱保存性を向上させるために有益である。詳しくは、トナーコアがシェル層で覆われることで、トナーの耐熱保存性が向上すると考えられる。トナーの耐熱保存性を向上させるためには、シェル層が熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、シェル層が実質的に熱硬化性樹脂から構成されることがより好ましい。
2成分現像剤の構成(2)及び(3)はそれぞれ、2次転写不良又は定着不良を抑制するために有益である。
詳しくは、未外添状態でのトナーの電荷減衰定数が0.020以上である場合には、中間転写体上のトナーに関して、複数回の1次転写(静電荷像担持体ごとの1次転写)による帯電量のばらつき(トナー像内でのばらつき)が小さくなる傾向がある。また、未外添状態でのトナーの電荷減衰定数が0.020以上である場合には、トナーの帯電量の過剰な上昇を抑制し易くなり、ひいてはトナーの過帯電に起因した2次転写不良又は定着不良(例えば、静電飛散又は静電オフセット)を抑制し易くなる。
未外添状態でのトナーの電荷減衰定数が0.050以下である場合には、中間転写体上のトナーが、2次転写に必要な帯電量を確保し易くなり、ひいてはトナーの帯電量不足に起因した2次転写不良を抑制し易くなる。
キャリアの体積固有抵抗値が1.0×1012Ω・cm以上である場合には、1次転写によるトナーの帯電量の過剰な上昇を抑制し易くなり、ひいてはトナーの過帯電に起因した2次転写不良又は定着不良(例えば、静電飛散又は静電オフセット)を抑制し易くなる。また、現像剤の現像性の低下による画像濃度不良を抑制するためには、キャリアの体積固有抵抗値が1.0×1015Ω・cm以下であることが好ましい。キャリアの体積固有抵抗値は、例えば、印加電圧1000Vの条件でアドバンテス社製の「ULTRA HIGH RESISTANCE METER」を用いて測定される値、又はその代替方法で測定される値である。
本実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法ではそれぞれ、本実施形態に係る2成分現像剤を用いて静電荷像を現像する。このため、中間転写体上に複数のトナー像を重ね合わせて転写した場合におけるトナーの帯電量の過剰な上昇を抑制しつつ、高画質の画像を形成することが可能になると考えられる。
また、本実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法はそれぞれ、次に示す構成(4)を有することが好ましい。
(4)現像工程において、複数の静電荷像担持体の各々に形成された複数の静電荷像の現像に、電荷減衰定数の異なるトナーを含む複数種の2成分現像剤を用いる。そして、1次転写工程においては、より大きい電荷減衰定数を有するトナーから順にそのトナー像が1次転写される。
1次転写工程においては、1次転写ローラーにバイアス(電圧)をかけることで、トナーに電荷が付与されて、トナーがチャージアップし易い。例えば、図1に示す画像形成装置100では、現像器11a〜11dの各々における2成分現像剤に含まれるトナーのうち、1次転写の最上流に位置する(最も早く1次転写される位置にある)現像器11d内の2成分現像剤に含まれるトナーが、最もチャージアップし易いと考えられる。現像器11d内の2成分現像剤に含まれるトナーには、1次転写ローラー15a〜15dにより、計4回バイアスが印加されるからである。
構成(4)を有する画像形成装置及び画像形成方法ではそれぞれ、より大きい電荷減衰定数を有するトナーから順に1次転写されるように、各現像器に現像剤がセットされる。電荷減衰定数が大きいトナーほどトナーにチャージした電荷が抜け易い。構成(4)を有する画像形成装置及び画像形成方法ではそれぞれ、よりチャージアップし易いトナー(1次転写のより上流に位置するトナー)ほど電荷減衰定数が大きい。このため、複数の色(例えば、4色)のトナーを用いた場合に、それらトナーの帯電量のばらつきを低減できると考えられる。例えば、図1に示す画像形成装置100では、現像器11a内の2成分現像剤に含まれるトナーの電荷減衰定数を最も小さくして、現像器11aから現像器11dに向かうほど(現像器11a、11b、11c、11dの順で)、現像器内の2成分現像剤に含まれるトナーの電荷減衰定数が大きくなることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態に係る2成分現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法によれば、プレ転写チャージャーを設けずとも、トナーの過帯電に起因した2次転写不良又は定着不良(例えば、静電飛散又は静電オフセット)を抑制できる。プレ転写チャージャーを設けないため、画像形成装置の構成の簡素化及び低コスト化が図られる。
本実施形態に係る2成分現像剤に含まれるトナーにおいては、トナーコアがアニオン性を有し、シェル層を形成するための材料(以下、シェル材料と記載する)がカチオン性を有することが好ましい。こうした構成を有するトナーでは、シェル層の形成時にカチオン性のシェル材料をトナーコアの表面に引き付けることが可能になる。詳しくは、例えば水系媒体中で負に帯電するトナーコアに、水系媒体中で正に帯電するシェル材料が電気的に引き寄せられ、例えばin−situ重合によりトナーコアの表面にシェル層が形成されると考えられる。シェル材料がトナーコアに引き寄せられることで、分散剤を用いずとも、トナーコアの表面に均一なシェル層を形成し易くなると考えられる。
アニオン性又はカチオン性の大きさを示す指標としては、ゼータ電位を用いることができる。例えば、pHが4に調整された25℃の水系媒体中で測定される粒子(例えば、トナーコア又はトナー粒子)のゼータ電位が負極性(0V未満)を示す場合には、その粒子(例えば、トナーコア又はトナー粒子)はアニオン性を有する。なお、本実施形態において、pH4は、シェル層を形成する時(重合時)のトナーコア分散液(水系媒体)のpHに相当する。ゼータ電位は、例えば、電気泳動法、超音波法、又はESA(電気音響)法により好適に測定できる。
また、アニオン性又はカチオン性の大きさを示す指標として、標準キャリアとの摩擦帯電量を用いてもよい。シェル層を形成する際にトナーコアがシェル材料を引き付けるためには、トナーコアと標準キャリアとを混合した場合にトナーコアが−10μC/g以下の摩擦帯電量を有することが好ましい。
以下、トナーコア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を割愛してもよい。なお、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
[トナーコア]
トナーコアは、結着樹脂を含む。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含んでもよい。
(トナーコアの結着樹脂)
トナーコアにおいては、全成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占めることが多い。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基、アミン、又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価(OHV値)及び酸価(AV値)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
結着樹脂としては、エステル基、水酸基、エーテル基、酸基、メチル基、及びカルボキシル基からなる群より選択される1以上の基を有する樹脂が好ましく、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂がより好ましい。このような官能基を有する結着樹脂は、シェル材料(例えば、メチロールメラミン)と反応して化学的に結合し易い。こうした化学的な結合が生じると、トナーコアとシェル層との結合が強固になる。また、結着樹脂としては、活性水素を含む官能基を分子中に有する樹脂も好ましい。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、シェル材料の硬化開始温度以下であることが好ましい。こうしたTgを有する結着樹脂を用いれば、高速定着時においてもトナーの定着性が低下しにくいと考えられる。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、例えば示差走査熱量計を用いて測定できる。より具体的には、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて試料(結着樹脂)の吸熱曲線を測定することで、得られた吸熱曲線における比熱の変化点から結着樹脂のTgを求めることができる。
結着樹脂の軟化点(Tm)は100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。結着樹脂のTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)であることで、高速定着時においてもトナーの定着性が低下しにくくなる。また、結着樹脂のTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)である場合には、水系媒体中でトナーコアの表面にシェル層を形成する際に、シェル層の硬化反応中にトナーコアが部分的に軟化し易くなるため、トナーコアが表面張力により丸みを帯び易くなる。なお、異なるTmを有する複数の樹脂を組み合わせることで、結着樹脂のTmを調整することができる。
結着樹脂のTmは、例えば高化式フローテスターを用いて測定できる。より具体的には、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(結着樹脂)をセットし、所定の条件で結着樹脂を溶融流出させる。そして、結着樹脂のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を測定する。得られたS字カーブから結着樹脂のTmを読み取ることができる。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値(mm)をS1とし、低温側のベースラインのストローク値(mm)をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度(℃)が、測定試料(結着樹脂)のTmに相当する。
結着樹脂の溶解指数(SP値)は10以上30以下であることが好ましく、15以上25以下であることがより好ましい。結着樹脂のSP値が10以上30以下であると、水のSP値(23)に近いため、結着樹脂の水系媒体への濡れ性が向上する。そのため、分散剤を用いなくても、トナーコアを均一に水系媒体に分散し易くなる。
結着樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。結着樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂)、ビニル系樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレンアクリル系樹脂、又はスチレンブタジエン系樹脂のような熱可塑性樹脂を好適に使用できる。中でも、スチレンアクリル系樹脂及びポリエステル樹脂はそれぞれ、トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び記録媒体に対するトナーの定着性に優れる。なお、1つの樹脂が上記樹脂の種類(スチレン系樹脂等)の二以上に属する場合がある。例えば、ポリスチレン樹脂は、スチレン系樹脂にもビニル系樹脂にも属する。
以下、結着樹脂として用いることのできるスチレンアクリル系樹脂について説明する。なお、スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体である。
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが好ましい。
アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシプロピルが好ましい。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、水酸基を有するモノマー(例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル)を用いることで、スチレンアクリル系樹脂に水酸基を導入できる。また、水酸基を有するモノマーの使用量を調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の水酸基価を調整できる。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、(メタ)アクリル酸(モノマー)を用いることで、スチレンアクリル系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、(メタ)アクリル酸の使用量を調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の酸価を調整することができる。
結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂である場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、スチレンアクリル系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレンアクリル系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。スチレンアクリル系樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
以下、結着樹脂として用いることのできるポリエステル樹脂について説明する。なお、ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコールと2価又は3価以上のカルボン酸とを縮重合又は共縮重合することで得られる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、ジオール類又はビスフェノール類のような2価アルコールを使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールのようなジオール類を好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、又はポリオキシプロピレン化ビスフェノールAのようなビスフェノール類を好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコールを好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸)のような2価カルボン酸を好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。
上記2価又は3価以上のカルボン酸は、エステル形成性の誘導体(例えば、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル)として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1〜6のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂を調製する際に、アルコールの使用量とカルボン酸の使用量とをそれぞれ変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(トナーコアの着色剤)
トナーコアは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリルアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(トナーコアの離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えばトナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス又は酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物系ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。一種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
なお、結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(トナーコアの電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、例えばトナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。また、トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含ませることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
正帯電させたトナーを用いて現像する場合には、正帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましく、負帯電させたトナーを用いて現像する場合には、負帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましい。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、電荷制御剤を使用しなくてもよい。例えば、シェル層中に帯電機能を有する成分が含まれる場合には、トナーコアに電荷制御剤を添加しなくてもよい。
正帯電性の電荷制御剤としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、又はキノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、又はアジンディープブラック3RLのようなアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、又はニグロシン誘導体のようなニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、又はニグロシンZのようなニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド又はデシルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩が好ましい。また、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂も、正帯電性の電荷制御剤として使用できる。迅速な立ち上がり性を得るためには、ニグロシン化合物が特に好ましい。一種の電荷制御剤を単独で使用してもよいし、複数種の電荷制御剤を併用してもよい。
(トナーコアの磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉としては、例えば、鉄(より具体的には、フェライト又はマグネタイト)、強磁性金属(より具体的には、コバルト又はニッケル)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、強磁性化処理(例えば、熱処理)が施された強磁性合金、又は二酸化クロムを好適に使用できる。一種の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するため、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でトナーコアの表面にシェル層を形成する場合に、トナーコアの表面に金属イオンが溶出すると、トナーコア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナーコア同士の固着を抑制することができると考えられる。
[シェル層]
シェル層は、実質的に熱硬化性樹脂のみからなってもよいし、実質的に熱可塑性樹脂のみからなってもよいし、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との両方を含有してもよい。また、シェル層において、熱可塑性樹脂が、架橋性を有するモノマー又はプレポリマー(例えば、後述する熱硬化性樹脂の調製に用いられ得るモノマー)で架橋されてもよい。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との割合は任意である。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との割合の例としては、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、3:1、4:1、又は5:1(それぞれ質量比で、熱可塑性樹脂:熱硬化性樹脂)が挙げられる。
シェル層に含まれる熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂、アニリン樹脂、ポリイミド樹脂、又はこれら各樹脂の誘導体が好ましい。ポリイミド樹脂は、窒素元素を分子骨格に有する。このため、ポリイミド樹脂を含むシェル層は、強いカチオン性を有し易い。シェル層に含まれるポリイミド樹脂としては、マレイミド系重合体、又はビスマレイミド系重合体(より具体的には、アミノビスマレイミド重合体又はビスマレイミドトリアジン重合体)が好ましい。
シェル層に含まれる熱硬化性樹脂としては、アミノ基を含む化合物とアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)との重縮合によって生成される樹脂が特に好ましい。なお、メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂は、グリオキザールと尿素との反応生成物と、ホルムアルデヒドとの重縮合物である。シェル層がメラミン樹脂又は尿素樹脂を含む場合には、トナーを乾燥する際にトナーが凝集しにくくなると考えられる。メラミン樹脂及び尿素樹脂の各々の吸水性が低いためである。このため、トナーの保存性を向上させるためには、シェル層がメラミン樹脂又は尿素樹脂を含むことが好ましい。
シェル層に含まれる熱硬化性樹脂の調製には、メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、スピログアナミン、及びジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU)からなる群より選択される1種以上のモノマーを好適に使用できる。
熱硬化性樹脂に窒素元素を含ませることで、熱硬化性樹脂の架橋硬化機能を向上させることができる。熱硬化性樹脂の反応性を高めるためには、メラミン樹脂では40質量%以上55質量%以下に、尿素樹脂では40質量%程度に、グリオキザール樹脂では15質量%程度に、窒素元素の含有量を調整することが好ましい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の官能基(例えば、メチロール基又はアミノ基)と反応し易い官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、又はグリシジル基)を有することが好ましい。アミノ基は、カルバモイル基(−CONH2)として熱可塑性樹脂中に含まれてもよい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂としては、親水性を有する樹脂が好ましく、極性官能基を有する単位(例えば、グリコール、カルボン酸、又はマレイン酸)を含む親水性の樹脂が特に好ましい。極性官能基を有する熱可塑性樹脂は、高い反応性を有する。シェル層に含まれる親水性の熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(又はその誘導体)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、又はポリエチレンオキサイドが好ましい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂はアクリル成分を含むことが好ましく、反応性アクリレートを含むことがより好ましい。アクリル成分を含む熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂と反応し易いため、シェル層の膜質を向上させることができると考えられる。シェル層に含まれる熱可塑性樹脂は、2HEMA(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)を含むことが特に好ましい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、シリコーン−(メタ)アクリル系グラフト共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、又はエチレンビニルアルコール共重合体が好ましい。シェル層に含まれる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、又はシリコーン−(メタ)アクリル系グラフト共重合体が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂の調製には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、又は(メタ)アクリル酸n−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド付加物;(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテル(より具体的には、メチルエーテル、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、又はn−ブチルエーテル)のようなアクリル系モノマーを好適に使用できる。一種のアクリル系モノマーを単独で使用してもよいし、複数種のアクリル系モノマーを併用してもよい。
シェル層の材料は上記材料に限られず任意である。例えば、シェル層がゼラチン・アラビアゴムを含んでいてもよい。
シェル層が実質的に熱硬化性樹脂から構成される場合、シェル層の厚さは、1nm以上30nm以下であることが好ましい。また、シェル層が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有する場合、シェル層の厚さは、20nm以上45nm以下であることが好ましい。こうした厚さのシェル層を有するトナー粒子を含むトナーは、定着性及び保存性の両方に優れると考えられる。なお、シェル層の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM撮影像を解析することによって計測できる。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
外添剤としては、シリカ、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム)を好適に使用できる。一種の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
[キャリア]
本実施形態に係る2成分現像剤に含まれるキャリアは、前述の構成(3)を有する。2成分現像剤に含まれるキャリアとしては、磁性キャリアが好ましい。キャリアとしては、例えば、キャリアコアがコート層で被覆されたキャリアを好適に使用できる。
キャリアコアの材料としては、フェライト(より具体的には、強磁性フェライト)、マグネタイト、鉄、ニッケル、もしくはコバルトのような金属を好適に使用できる。また、これらの金属と、銅、亜鉛、アンチモン、アルミニウム、鉛、スズ、ビスマス、ベリリウム、マンガン、マグネシウム、セレン、タングステン、ジルコニウム、もしくはバナジウムとの合金又は混合物も、キャリアコアの材料として好適に使用できる。また、上記金属に、金属酸化物(例えば、酸化鉄、酸化チタン、又は酸化マグネシウム)、窒化物(例えば、窒化クロム又は窒化バナジウム)、又は炭化物(例えば、炭化ケイ素又は炭化タングステン)を混ぜて、得られた混合物をキャリアコアの材料として使用してもよい。これらの材料の中でも、フェライト又はマグネタイトが、キャリアコアの材料として特に好ましい。1種類の材料を単独で使用してもよいし、2種類以上の材料を併用してもよい。
2成分現像剤の現像性を向上させるためには、キャリアコアの体積中位径(D50)が30μm以上100μm以下であることが好ましい。例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−700」)を用いて、キャリアコアの体積中位径(D50)を測定できる。
キャリアコアを被覆するコート層の材料としては、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、又はクロロスルホン化ポリエチレン)、アクリル系樹脂(より具体的には、ポリメチルメタクリレート)、スチレン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、アミノ樹脂(より具体的には、尿素−ホルムアルデヒド樹脂)、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、オルガノポリシロキサンを有するシリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂(より具体的には、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、又はポリウレタンによる変成樹脂)、フッ素樹脂(より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、又はポリクロロトリフルオロエチレン)、ビニル系樹脂(より具体的には、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂を好適に使用できる。なお、1つの化合物が上記材料の種類(オレフィン系樹脂等)の二以上に属する場合がある。例えば、ポリフッ化ビニリデンは、フッ素樹脂にもビニル系樹脂にも属する。キャリアコアとコート層との質量比率は、キャリアコア100質量部に対して、コート層2質量部以上6質量部以下であることが好ましい。
コート層の電気抵抗を調整するために、コート層に導電剤を含ませてもよい。例えば、コート層に導電剤を分散させてもよい。導電剤の材料としては、カーボンブラック(より具体的には、アセチレンブラック)、炭化物(より具体的には、SiC)、磁性材料(より具体的には、マグネタイト)、SnO2、又はチタンブラックを好適に使用できる。コート層に導電剤を均一に分散させるためには、導電剤の粒子径は0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.01μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。導電剤の添加量は、コート層1000質量部に対して、4質量部以下であることが好ましい。
次に、本実施形態に係る2成分現像剤に含まれるトナーの製造方法の一例について説明する。まず、トナーコアを準備する。続けて、液中にトナーコアとシェル材料とを入れる。この際、液を攪拌するなどして、シェル材料を液に溶かすことが好ましい。続けて、液中でシェル層をトナーコアの表面に形成する(シェル層を硬化させる)。シェル層は、水系媒体(例えば、水、メタノール、又はエタノール)中で形成されることが好ましい。また、メラミン樹脂又は尿素樹脂を含むシェル層を形成するためには、メチロール化物を溶解させた溶媒(例えば、水、メタノール、又はエタノール)中にトナーコアを入れて、トナーコアの表面でメラミン樹脂又は尿素樹脂を膜化させることが好ましい。
以下、より具体的な例に基づいて、トナーの製造方法についてさらに説明する。例えば、上記液としてイオン交換水を準備する。続けて、例えば塩酸を用いて液のpHを調整する。続けて、液中に、シェル材料を添加する。これにより、液中でシェル材料が溶けて、シェル材料の溶液が得られる。シェル材料の適切な添加量は、トナーコアの比表面積に基づいて算出できる。また、シェル材料の添加量に基づいて、未外添状態でのトナーの電荷減衰定数を調整できる。
続けて、得られたシェル材料の溶液にトナーコアを添加する。トナーコアの表面に均一にシェル材料を付着させるためには、シェル材料の溶液中にトナーコアを高度に分散させることが好ましい。液中にトナーコアを高度に分散させるために、液中に分散剤を含ませてもよい。
分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリパラビニルフェノール、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、イソプレンスルホン酸、ポリエーテル、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアスパラギン酸ナトリウム、デンプン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、又はリグニンスルホン酸ナトリウムを好適に使用できる。1種の分散剤を単独で使用してもよいし、2種以上の分散剤を組み合わせて使用してもよい。分散剤の使用量は、トナーコア100質量部に対して、75質量部以下であることが好ましい。
続けて、溶液を攪拌しながら溶液の温度を所定の速度(例えば、0.1℃/分以上3℃/分以下から選ばれる速度)で所定のシェル層硬化温度(例えば、60℃以上80℃以下から選ばれる温度)まで上昇させて、溶液を攪拌しながら溶液の温度をシェル層硬化温度に所定の時間(例えば、30分間以上2時間以下から選ばれる時間)保つ。これにより、トナーコアの表面にシェル材料が付着し、付着した材料が重合反応して硬化する。その結果、トナー母粒子の分散液が得られる。
シェル層硬化温度(シェル層硬化時におけるシェル材料の溶液の温度)は、トナーコアのガラス転移点(Tg)未満であることが好ましい。シェル層硬化温度がトナーコアのガラス転移点(Tg)以上になると、トナーコアが変形し易い。また、高温でシェル材料を反応させると、シェル層が硬くなり易い。シェル層が実質的にメラミン樹脂及び/又は尿素樹脂から構成される場合には、シェル層硬化温度は、40℃以上80℃以下であることが好ましく、55℃以上70℃以下であることがより好ましい。シェル層硬化時の液温を高くすると、トナーコアの変形が促進され、トナー母粒子の形状が真球に近づく傾向がある。トナー母粒子が所望の形状になるようにシェル層硬化時の液温を調整することが望ましい。なお、シェル層硬化時の液温に基づいて、シェル層の分子量を制御することもできる。
上記のようにしてシェル層を硬化させた後、例えば水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液を中和する。続けて、液を冷却する。続けて、液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)される。続けて、得られたトナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥させる。その後、必要に応じて、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。これにより、トナー粒子を多数有するトナーが完成する。なお、上記トナーの製造方法は、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば溶媒にシェル材料を溶解させる工程よりも前に溶媒中にトナーコアを添加する工程を行うようにしてもよい。シェル層の形成方法は任意である。例えば、in−situ重合法、液中硬化被膜法、及びコアセルベーション法のいずれの方法を用いて、シェル層を形成してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。
製造されたトナーとキャリアとの混合物を攪拌することで、本実施形態に係る2成分現像剤を製造することができる。2成分現像剤に含まれるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。混合物の攪拌には、例えば、ボールミル、ホソカワミクロン株式会社製のナウターミキサー(登録商標)、又は愛知電機株式会社製のロッキングミキサー(登録商標)を用いることができる。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係る現像剤A〜G(それぞれ静電潜像現像用の2成分現像剤)を示す。
Figure 2016045331
以下、現像剤A〜Gの製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、粉体(例えば、トナーコア又はトナー)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の平均である。
[現像剤Aの製造方法]
(トナーコアの作製)
4色(イエロー、シアン、マゼンタ、及びブラック)の現像剤Aを製造するために、4色のトナーを製造した。また、4色のトナーを製造するために、以下の手順で、互いに異なる着色剤を含む4色のトナーコアを製造した。
まず、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、結着樹脂100質量部と、離型剤5質量部と、着色剤5質量部と、電荷制御剤1質量部とを混合した。
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂(三井化学株式会社製「XPE258」)を用いた。離型剤としては、ポリプロピレンワックス(三洋化成工業株式会社製「ビスコール(登録商標)660P」)を用いた。電荷制御剤としては、4級アンモニウム塩(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P−51」)を用いた。
トナーコアの色に応じて、使用する着色剤を変えた。イエローのトナーコアの製造では、着色剤としてアゾ顔料を用いた。シアンのトナーコアの製造では、着色剤としてフタロシアニン顔料を用いた。マゼンタのトナーコアの製造では、着色剤としてキナクリドン顔料を用いた。ブラックのトナーコアの製造では、着色剤としてカーボンブラックを用いた。
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を冷却した。
続けて、得られた混練物を、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル T250」)を用いて粉砕した。続けて、得られた粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)7μmのトナーコアが得られた。粒子径の測定には、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いた。
pH4におけるトナーコアのゼータ電位は−30mVであり、トナーコアの摩擦帯電量は−25μC/gであった。ゼータ電位及び摩擦帯電量の測定値から、トナーコアがアニオン性を有することは明らかであった。トナーコアのゼータ電位及び摩擦帯電量の測定方法をそれぞれ以下に示す。
<トナーコアのゼータ電位の測定方法>
トナーコア0.2gと、イオン交換水80gと、1質量%濃度のノニオン界面活性剤(日本触媒株式会社製「K−85」、ポリビニルピロリドン)20gとを、マグネットスターラーを用いて混合した。そして、液中にトナーコアを均一に分散させて分散液を得た。その後、得られた分散液に希塩酸を加えて、分散液のpHを4に調整し、pH4のトナーコアの分散液を得た。そして、得られたpH4のトナーコアの分散液を測定試料として用いて、トナーコアのゼータ電位を測定した。詳しくは、測定試料中のトナーコアのゼータ電位を、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて測定した。
<トナーコアの摩擦帯電量の測定方法>
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)100質量部と、トナーコア7質量部とを、混合装置(株式会社シンマルエンタープライゼス製「ターブラミキサー」)を用いて30分間混合した。そして、得られた混合物を測定試料として用いて、トナーコアの摩擦帯電量を測定した。詳しくは、測定試料について、トナーコアと標準キャリアとを摩擦させた場合のトナーコアの摩擦帯電量を、QMメーター(トレック社製「MODEL 210HS」)を用いて測定した。
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを準備し、フラスコをウォーターバスにセットした。そして、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に、pHが4に調整されたイオン交換水300mLと、ポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成株式会社製「ジュリマー(登録商標)AC−103」)50gと、メチロール化尿素の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベンレジンSUM−100」、固形分濃度80質量%)とを添加した。イオン交換水のpHの調整には塩酸を用いた。シェル材料(ミルベンレジンSUM−100)の添加量は、トナーの色に応じて変えた。詳しくは、シェル材料(ミルベンレジンSUM−100)の添加量は、イエローのトナーの製造では24g、シアンのトナーの製造では18g、マゼンタのトナーの製造では12g、ブラックのトナーの製造では6gとした。
イオン交換水にメチロール化尿素を溶解させた。続けて、得られた水溶液に、前述の手順で作製したトナーコア(粉体)300gを添加した。続けて、フラスコ内容物を室温で十分攪拌した。その結果、フラスコ内にトナーコアの分散液が得られた。
続けて、トナーコアの分散液を、1Lのセパラブルフラスコに移した。続けて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら昇温速度0.5℃/分でフラスコ内の温度を70℃(重合温度)まで上げて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながらフラスコ内の温度を70℃に2時間保った。その結果、トナー母粒子を含む分散液が得られた。その後、トナー母粒子の分散液を常温まで冷却し、水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液のpHを7に調整(中和)した。
(トナー母粒子の洗浄及び乾燥)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液をろ過(固液分離)して、トナー母粒子を得た。その後、得られたトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。続けて、トナー母粒子を乾燥した。
未外添状態でのトナーの電荷減衰定数(トナー母粒子の電荷減衰定数)を、下記方法に従って測定した。未外添状態でのトナーの電荷減衰定数は、イエローのトナーで0.050、シアンのトナーで0.040、マゼンタのトナーで0.030、ブラックのトナーのトナーで0.020であった。
<未外添状態でのトナーの電荷減衰定数の測定方法>
未外添状態でのトナーの電荷減衰定数α(トナー母粒子の電荷減衰定数)は、静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−D100」)を用いて、JIS C 61340−2−1に準拠した方法で測定した。以下に、未外添状態でのトナーの電荷減衰定数の測定方法を詳述する。
測定セルに試料(トナー母粒子)を入れた。測定セルは、内径10mm、深さ1mmの凹部が形成された金属製のセルであった。スライドガラスを用いて試料を上から押し込み、セルの凹部に試料を充填した。セルの表面においてスライドガラスを往復移動させることによって、セルから溢れた試料を除去した。試料の充填量は0.04g以上0.06g以下であった。
続けて、試料が充填された測定セルを、温度32.5℃、湿度80%RHの環境下で12時間放置した。続けて、接地させた測定セルを静電気拡散率測定装置内に置き、コロナ放電によって試料にイオンを供給して、試料を帯電させた。そして、コロナ放電終了後0.7秒経過した後から、試料の表面電位を連続的に測定した。測定された表面電位と、式「V=V0exp(α√t)」とに基づいて、電荷減衰定数(電荷減衰速度)αを算出した。式中、Vは表面電位[V]、V0は初期表面電位[V]、tは減衰時間[秒]をそれぞれ示す。
(外添)
上記乾燥後、トナー母粒子を外添処理した。詳しくは、トナー母粒子100質量部と、疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「RA−200H」)1質量部と、導電性酸化チタン微粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」)1質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて回転速度3500rpmで5分間混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子及び酸化チタン粒子)を付着させた。その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。これにより、多数のトナー粒子を含むトナーが製造された。
(トナーとキャリアとの混合)
上記のようにして製造されたトナーと、下記方法に従って作製された体積固有抵抗値1.0×1012Ω・cmのキャリアとを、2成分現像剤におけるトナーの濃度が10質量%となるように混合し、得られた混合物を、粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」)を用いて1時間攪拌した。その結果、4色(イエロー、シアン、マゼンタ、及びブラック)の現像剤A(2成分現像剤)が得られた。
<キャリアの作製方法>
テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)をメチルエチルケトンに分散させた液(以下、FEP分散液と記載する)を、流動コーティング装置を用いてキャリアコアにスプレーした。その結果、キャリアコアの表面が、未硬化の有機層(流動層)で覆われた。キャリアコアとしては、粒子径40μm、飽和磁化65Am2/kg(3000×103/4π・A/m印加時)のマンガン系フェライト粒子を用いた。FEP分散液の使用量は、キャリアコア100質量部に対して5質量部であった。
続けて、280℃で1時間熱処理を行って流動層を硬化させた。その結果、キャリアコアと、キャリアコアを覆う樹脂層(コート層)とを有するキャリアが得られた。キャリアの体積固有抵抗値は1.0×1012Ω・cmであった。キャリアの体積固有抵抗値は、印加電圧1000Vの条件でアドバンテス社製の「ULTRA HIGH RESISTANCE METER」を用いて測定した。
[現像剤Bの製造方法]
現像剤Bの製造方法は、キャリアの作製において、コート量(FEP分散液の量)を変えた以外は、現像剤Aの製造方法と同じである。現像剤Bにおいて、キャリアの体積固有抵抗値は1.0×1015Ω・cmであった。
[現像剤Cの製造方法]
現像剤Cの製造方法は、シェル材料(ミルベンレジンSUM−100)の添加量を、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナーの製造に関して24g、18g、12g、6gから6g、6g、6g、6gに変更した以外は、現像剤Aの製造方法と同じである。未外添状態でのトナーの電荷減衰定数は、イエローのトナーで0.020、シアンのトナーで0.020、マゼンタのトナーで0.020、ブラックのトナーで0.020であった。
[現像剤Dの製造方法]
現像剤Dの製造方法は、シェル材料(ミルベンレジンSUM−100)の添加量を、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナーの製造に関して24g、18g、12g、6gから24g、24g、24g、24gに変更した以外は、現像剤Aの製造方法と同じである。未外添状態でのトナーの電荷減衰定数は、イエローのトナーで0.050、シアンのトナーで0.050、マゼンタのトナーで0.050、ブラックのトナーで0.050であった。
[現像剤Eの製造方法]
現像剤Eの製造方法は、シェル材料(ミルベンレジンSUM−100)の添加量を、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナーの製造に関して24g、18g、12g、6gから3g、3g、3g、3gに変更した以外は、現像剤Aの製造方法と同じである。未外添状態でのトナーの電荷減衰定数は、イエローのトナーで0.015、シアンのトナーで0.015、マゼンタのトナーで0.015、ブラックのトナーで0.015であった。
[現像剤Fの製造方法]
現像剤Fの製造方法は、シェル材料(ミルベンレジンSUM−100)の添加量を、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナーの製造に関して24g、18g、12g、6gから27g、27g、27g、27gに変更した以外は、現像剤Aの製造方法と同じである。未外添状態でのトナーの電荷減衰定数は、イエローのトナーで0.055、シアンのトナーで0.055、マゼンタのトナーで0.055、ブラックのトナーで0.055であった。
[現像剤Gの製造方法]
現像剤Gの製造方法は、キャリアの作製において、コート量(FEP分散液の量)を変えた以外は、現像剤Aの製造方法と同じである。現像剤Gにおいて、キャリアの体積固有抵抗値は1.0×1010Ω・cmであった。
[評価方法]
各試料(現像剤A〜G)の評価方法は、以下の通りである。
(画像濃度、トナー散り、静電オフセット)
試料(2成分現像剤)を用いて画像を形成して、画像濃度、トナー散り、及び静電オフセットを評価した。評価機としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 500ci」)を用いた。試料(2成分現像剤)を評価機の現像器に投入し、試料(2成分現像剤)のトナーを評価機のトナーコンテナに投入した。詳しくは、評価機は、4つの現像器(第1〜第4現像器)を有していた。第1〜第4現像器は、1次転写の最上流に位置する(最も早く1次転写される位置にある)第1現像器から、1次転写の下流(1次転写のタイミングが遅くなる側)に向かって、第2現像器、第3現像器、第4現像器の順で配置されていた。第1現像器にはイエローの試料(2成分現像剤)を投入し、第2現像器にはシアンの試料(2成分現像剤)を投入し、第3現像器にはマゼンタの試料(2成分現像剤)を投入し、第4現像器にはブラックの試料(2成分現像剤)を投入した。
画像濃度、トナー散り、及び静電オフセットの評価では、上記評価機を用いて、印字率100%のソリッド部と印字率50%のハーフトーン部と文字部とを含む評価用画像を、評価用紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、90g/m2)に形成した。
以下、試料(2成分現像剤)の画像濃度の評価方法について説明する。試料(2成分現像剤)の画像濃度を評価する場合には、上記評価機を用いて、100枚連続で上記評価用紙に上記評価用画像を印刷し、印刷された各評価用画像のソリッド部及びハーフトーン部の各々の画像濃度の均一性を評価した。評価基準は下記のとおりである。
×(悪い):画像濃度の均一性が低く、画像品質が悪かった。
○(良い):画像濃度の均一性が高く、画像品質が良好であった。
◎(非常に良い):画像濃度の均一性が特に高く、画像品質が極めて良好であった。
以下、試料(2成分現像剤)のトナー散り(転写散り)の評価方法について説明する。試料(2成分現像剤)のトナー散りを評価する場合には、上記評価機を用いて、100枚連続で上記評価用紙に上記評価用画像を印刷し、印刷された各評価用画像(主に、その文字部)のトナー散りを評価した。評価基準は下記のとおりである。
×(悪い):トナー散りが顕著であり、画像品質が悪かった。
○(良い):トナー散りがわずかながら認められたが、画像品質は良好であった。
◎(非常に良い):トナー散りが認められず、画像品質は極めて良好であった。
以下、試料(2成分現像剤)の静電オフセットの評価方法について説明する。試料(2成分現像剤)の静電オフセットを評価する場合には、上記評価機を用いて、100枚連続で上記評価用紙に上記評価用画像を印刷し、印刷された各評価用画像のソリッド部の静電オフセットを、定着ローラーの周期で評価した。評価基準は下記のとおりである。
×(悪い):静電オフセットが顕著であり、画像品質が悪かった。
○(良い):静電オフセットがわずかながら認められたが、画像品質は良好であった。
◎(非常に良い):静電オフセットが認められず、画像品質は極めて良好であった。
[評価結果]
現像剤A〜Gの各々についての評価結果は以下のとおりである。
Figure 2016045331
現像剤A、B、C、及びD(実施例1〜4に係る2成分現像剤)はそれぞれ、前述の構成(1)〜(3)を有していた。詳しくは、実施例1〜4に係る2成分現像剤ではそれぞれ、トナー粒子が、トナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層とを有していた。また、表1に示されるように、トナー粒子に外添剤が付着していない状態(未外添状態)でのトナーの電荷減衰定数が0.020以上0.050以下であった。また、キャリアの体積固有抵抗値が1.0×1012Ω・cm以上であった。表2に示されるように、実施例1〜4に係る2成分現像剤に関しては、画像濃度、トナー散り、及び静電オフセットのいずれの評価においても、良好な評価結果が得られた。
また、現像剤A及びBの各々の画像濃度、トナー散り、及び静電オフセットを評価するために用いた評価機(実施例1、2に係る画像形成装置)はそれぞれ、構成(4)を有していた。詳しくは、実施例1、2に係る画像形成装置ではそれぞれ、現像工程において、複数の静電荷像担持体の各々に形成された複数の静電荷像の現像に、電荷減衰定数(表1参照)の異なるトナーを含む複数種の2成分現像剤(イエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの2成分現像剤)を用いた。また、実施例1、2に係る画像形成装置ではそれぞれ、1次転写工程において、より大きい電荷減衰定数を有するトナーから順に(第1現像器内のトナー、第2現像器内のトナー、第3現像器内のトナー、第4現像器内のトナーの順で)そのトナー像が1次転写された。実施例1、2に係る画像形成装置に関しては、画像濃度、トナー散り、及び静電オフセットのいずれの評価においても、特に良好な評価結果が得られた。
本発明に係る2成分現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法は、例えば複写機又はプリンターにおいて画像を形成するために用いることができる。
100 画像形成装置
11a〜11d 現像器
12a〜12d 感光体ドラム
13 転写ベルト
14a 駆動ローラー
14b 従動ローラー
14c テンションローラー
15a〜15d 1次転写ローラー
16 2次転写ローラー
17 定着器
18 クリーニングローラー
P 記録媒体

Claims (5)

  1. 複数のトナー粒子を含むトナーと、キャリアとを含む2成分現像剤であって、
    前記トナー粒子は、コアと、前記コアの表面に形成されたシェル層とを有し、
    前記トナー粒子に外添剤が付着していない状態での前記トナーの電荷減衰定数は0.020以上0.050以下であり、
    前記キャリアの体積固有抵抗値は1.0×1012Ω・cm以上である、2成分現像剤。
  2. 複数の静電荷像担持体の各々に形成された静電荷像をそれぞれ、請求項1に記載の2成分現像剤を用いて現像することにより、前記静電荷像担持体の各々にトナー像を形成する現像工程と、前記静電荷像担持体の各々に形成された前記トナー像を順次、中間転写体に転写することにより、前記中間転写体上に前記トナー像を重ねる1次転写工程と、前記中間転写体上に重ねたトナー像を被転写体に一括転写する2次転写工程とを経ることにより、前記被転写体上に画像を形成する、画像形成装置。
  3. 前記現像工程において、前記複数の静電荷像担持体の各々に形成された複数の静電荷像の現像には、前記電荷減衰定数の異なるトナーを含む複数種の2成分現像剤が用いられ、
    前記1次転写工程においては、より大きい前記電荷減衰定数を有するトナーから順に前記トナー像が1次転写される、請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 複数の静電荷像担持体の各々に形成された静電荷像を順次、請求項1に記載の2成分現像剤を用いて現像することにより、前記静電荷像担持体の各々にトナー像を形成する現像工程と、
    前記静電荷像担持体の各々に形成された前記トナー像を中間転写体上に重ね合わせて転写する1次転写工程と、
    前記中間転写体上の転写されたトナー像を被転写体に転写する2次転写工程と、
    を含む、画像形成方法。
  5. 前記現像工程において、前記複数の静電荷像担持体の各々に形成された複数の静電荷像の現像には、前記電荷減衰定数の異なるトナーを含む複数種の2成分現像剤が用いられ、
    前記1次転写工程においては、より大きい前記電荷減衰定数を有するトナーから順に前記トナー像が1次転写される、請求項4に記載の画像形成方法。
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