JP6248866B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、トナーに関し、特にカプセルトナーに関する。
カプセルトナーに含まれるトナー粒子は、コア(以下、トナーコアと記載する)と、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを有する。例えば特許文献1に記載のカプセルトナーでは、トナーコアに含まれる結着樹脂が熱可塑性エラストマーを含み、シェル層が、熱可塑性エラストマーを軟化する可塑剤を内包して所定の圧力で破壊される。
特開2013−7996号公報
しかしながら、特許文献1に開示される技術だけでは、低温定着性、高温定着性、及び耐熱保存性に優れるトナーを提供することは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低温定着性、高温定着性、及び耐熱保存性に優れるトナーを提供することを目的とする。
本発明に係るトナーは、複数のトナー粒子を含む。前記トナー粒子は、コアと、前記コアの表面に形成されたシェル層とを有する。前記コアは、ポリエステル樹脂と、融点50℃以上100℃以下かつ炭素数16以上の第1級アルコールとを含む。前記シェル層は熱硬化性樹脂を含む。
本発明によれば、低温定着性、高温定着性、及び耐熱保存性に優れるトナーを提供することが可能になる。
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電荷像の現像に用いることができる。本実施形態のトナーは、多数の粒子(以下、トナー粒子と記載する)から構成される粉体である。本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)で用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
電子写真装置では、トナーを含む現像剤を用いて静電荷像を現像する。これにより、感光体上に形成された静電潜像に、帯電したトナーが付着する。そして、付着したトナーを転写ベルトに転写した後、さらに転写ベルト上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して、記録媒体にトナーを定着させる。これにより、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、コア(トナーコア)と、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを有する。シェル層の表面に外添剤が付着していてもよい。また、トナーコアの表面に複数のシェル層が積層されてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(1)及び(2)を有する。
(1)トナー粒子が、トナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層とを有する。トナーコアはポリエステル樹脂を含む。シェル層は熱硬化性樹脂を含む。
(2)トナーコアが、融点50℃以上100℃以下かつ炭素数16以上の第1級アルコールを含む。
構成(1)は、トナーの耐熱保存性及び定着性の両立を図るために有益である。詳しくは、トナーコアがポリエステル樹脂を含むことで、トナーの定着性(特に、低温定着性)が向上し、トナーコアがシェル層で覆われることで、トナーの耐熱保存性が向上すると考えられる。トナーの低温定着性を向上させるためには、トナーコアに含まれる樹脂のうち、80質量%以上の樹脂がポリエステル樹脂であることが好ましく、90質量%以上の樹脂がポリエステル樹脂であることがより好ましく、100質量%の樹脂がポリエステル樹脂であることがさらに好ましい。トナーの耐熱保存性を向上させるためには、シェル層が熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、シェル層が実質的に熱硬化性樹脂から構成されることがより好ましい。トナーの耐熱保存性を向上させるためには、シェル層に含まれる樹脂のうち、80質量%以上の樹脂が熱硬化樹脂であることが好ましく、90質量%以上の樹脂が熱硬化樹脂であることがより好ましく、100質量%の樹脂が熱硬化樹脂であることがさらに好ましい。
構成(2)は、トナーの定着性を向上させるために有益である。トナーコアに第1級アルコールを含ませることで、トナーコア(特に、ポリエステル樹脂)の軟化を促進し、より低温でトナーコアを溶融させ易くなる。また、アルコールは水酸基を有するため、トナーコアに第1級アルコールを含ませることで、トナーコアのアニオン性を強めることが可能になる。
また、トナーコアに含まれる第1級アルコールの融点が50℃以上である場合には、ホットオフセットの発生が抑制される(トナーの高温定着性が向上する)とともに、トナーの耐熱保存性が向上する傾向がある(後述する表1及び表2を参照)。トナーコアに含まれる第1級アルコールの融点が100℃以下である場合には、トナーの低温定着性が向上する傾向がある(後述する表1及び表2を参照)。なお、50℃以上100℃以下の融点を有するアルコールは、少なくとも常温では固体であると考えられる。
また、トナーコアに炭素数16以上の第1級アルコールを含ませることで、ホットオフセットの発生を抑制できると考えられる。ポリエステル樹脂中にアルコールが存在すると、ポリエステル樹脂が軟化する傾向がある。しかし、ポリエステル樹脂中のアルコールの炭素数が大きい場合には、ポリエステル樹脂の軟化、ひいてはポリエステル樹脂の結着性の劣化が抑制される傾向がある。なお、ホットオフセットの発生を抑制できるトナーの製造を容易にするためには、トナーコアに炭素数16以上50以下の第1級アルコールを含ませることが好ましい。
トナーコアに含まれる第1級アルコールの炭素数の大きさによって、トナーの性質が変わると考えられる。例えば、炭素数16以上50以下の第1級アルコールにおいては、炭素数が大きくなるほどホットオフセットの発生を抑制する(トナーの最高定着温度を上昇させる)作用が強くなり、炭素数が小さくなるほど低温定着性を向上させる(トナーの最低定着温度を低くする)作用が強くなる傾向がある。炭素数の異なる複数種の第1級アルコールをトナーに含ませることで、所望の特性を有するトナーを製造し易くなる。
トナーの低温定着性、高温定着性、及び耐熱保存性を向上させるためには、トナーコアに含まれるアルコールのうち、50質量%以上のアルコールが構成(2)の第1級アルコールであることが好ましく、80質量%以上のアルコールが構成(2)の第1級アルコールであることがより好ましく、100質量%のアルコールが構成(2)の第1級アルコールであることがさらに好ましい。
本実施形態に係るトナーでは、トナーコアが、ポリエステル樹脂とアルコールとを含む。ポリエステル樹脂にアルコールを混ぜると、ポリエステル樹脂が軟化する傾向がある。トナーコアに含まれるポリエステル樹脂が軟化すると、トナーの耐熱性が悪化し易くなる。しかし、本実施形態に係るトナーでは、熱硬化性樹脂を含むシェル層でトナーコアが覆われることで、トナーの耐熱保存性を向上させることができる。本実施形態に係るトナーでは、構成(2)によりトナーの定着性を向上させるとともに、構成(1)によりトナーの耐熱保存性を向上させることが可能になる。
トナーの低温定着性、高温定着性、及び耐熱保存性を向上させるためには、トナーの110℃における貯蔵弾性率が2000Pa以上であり、トナーの110℃における損失弾性率が80000Pa以下であることが好ましい。また、低温定着性、高温定着性、及び耐熱保存性に優れるトナーの製造を容易にするためには、トナーの110℃における貯蔵弾性率が2000Pa以上60000Pa以下であり、トナーの110℃における損失弾性率が5000Pa以上80000Pa以下であることが好ましい。
本実施形態に係るトナーは、構成(1)及び(2)の全てを有するトナー粒子(以下、本実施形態のトナー粒子と記載する)を含む。本実施形態のトナー粒子を含むトナーは、低温定着性、高温定着性、及び耐熱保存性に優れる(後述する表1及び表2を参照)。なお、トナーは、80個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことが好ましく、90個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがより好ましく、100個数%の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがさらに好ましい。また、シェル層を有しないトナー粒子がトナーに含まれていてもよい。
本実施形態に係るトナーにおいて、トナーコアがアニオン性を有し、シェル層の材料(以下、シェル材料と記載する)がカチオン性を有する場合には、シェル層の形成時にカチオン性のシェル材料をトナーコアの表面に引き付けることが可能になる。詳しくは、例えば水系媒体中で負に帯電するトナーコアに、水系媒体中で正に帯電するシェル材料が電気的に引き寄せられ、例えばin−situ重合によりトナーコアの表面にシェル層が形成されると考えられる。シェル材料がトナーコアに引き寄せられることで、トナーコアが凝集しにくくなり、分散剤を用いずとも、トナーコアの表面に均一なシェル層を形成し易くなると考えられる。前述の構成(2)における第1級アルコールによってトナーコアのアニオン性が十分強くなれば、分散剤(例えば、アニオン界面活性剤のような電解質材料)を使用する必要がなくなると考えられる。
アニオン性又はカチオン性の大きさを示す指標としては、ゼータ電位を用いることができる。例えば、pHが4に調整された25℃の水系媒体中で測定される粒子(例えば、トナーコア又はトナー粒子)のゼータ電位が負極性(0V未満)を示す場合には、その粒子(例えば、トナーコア又はトナー粒子)はアニオン性を有する。なお、本実施形態において、pH4は、シェル層を形成する時(重合時)のトナーコア分散液(水系媒体)のpHに相当する。ゼータ電位は、例えば、電気泳動法、超音波法、又はESA(電気音響)法により好適に測定できる。
また、アニオン性又はカチオン性の大きさを示す指標として、標準キャリアとの摩擦帯電量を用いてもよい。シェル層を形成する際にトナーコアがシェル材料を引き付けるためには、トナーコアと標準キャリアとを混合した場合にトナーコアが−10μC/g以下の摩擦帯電量を有することが好ましい。
以下、トナーコア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を割愛してもよい。なお、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
[トナーコア]
トナーコアは、結着樹脂を含む。また、トナーコアは、融点50℃以上100℃以下かつ炭素数16以上の第1級アルコールを含む。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含んでもよい。
(トナーコアの結着樹脂)
トナーコアにおいては、全成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占めることが多い。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基、アミン、又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価(OHV値)及び酸価(AV値)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
結着樹脂としては、エステル基、水酸基、エーテル基、酸基、メチル基、及びカルボキシル基からなる群より選択される1以上の基を有する樹脂が好ましく、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂がより好ましい。このような官能基を有する結着樹脂は、シェル材料(例えば、メチロールメラミン)と反応して化学的に結合し易い。こうした化学的な結合が生じると、トナーコアとシェル層との結合が強固になる。また、結着樹脂としては、活性水素を含む官能基を分子中に有する樹脂も好ましい。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、シェル材料の硬化開始温度以下であることが好ましい。こうしたTgを有する結着樹脂を用いれば、高速定着時においてもトナーの定着性が低下しにくいと考えられる。前述の構成(2)における第1級アルコールによってトナーコアのアニオン性が十分強くなれば、結着樹脂のTgがシェル材料の硬化開始温度以下である場合でも、トナーコアの表面に均一なシェル層を形成することが可能になると考えられる。シェル層の形成時にカチオン性のシェル材料をトナーコアの表面に引き付けることが可能になるからである。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、例えば示差走査熱量計を用いて測定できる。より具体的には、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて試料(結着樹脂)の吸熱曲線を測定することで、得られた吸熱曲線における比熱の変化点から結着樹脂のTgを求めることができる。
結着樹脂の軟化点(Tm)は100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。結着樹脂のTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)であることで、高速定着時においてもトナーの定着性が低下しにくくなる。また、結着樹脂のTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)である場合には、水系媒体中でトナーコアの表面にシェル層を形成する際に、シェル層の硬化反応中にトナーコアが部分的に軟化し易くなるため、トナーコアが表面張力により丸みを帯び易くなる。なお、異なるTmを有する複数の樹脂を組み合わせることで、結着樹脂のTmを調整することができる。
結着樹脂のTmは、例えば高化式フローテスターを用いて測定できる。より具体的には、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(結着樹脂)をセットし、所定の条件で結着樹脂を溶融流出させる。そして、結着樹脂のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を測定する。得られたS字カーブから結着樹脂のTmを読み取ることができる。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値(mm)をS1とし、低温側のベースラインのストローク値(mm)をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度(℃)が、測定試料(結着樹脂)のTmに相当する。
本実施形態に係るトナーは、前述の構成(1)を有する。トナーコアは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含む。ポリエステル樹脂は熱可塑性樹脂である。以下、結着樹脂として用いることのできるポリエステル樹脂について説明する。なお、ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコールと2価又は3価以上のカルボン酸とを縮重合又は共縮重合することで得られる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、ジオール類又はビスフェノール類のような2価アルコールを使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールのようなジオール類を好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、又はポリオキシプロピレン化ビスフェノールAのようなビスフェノール類を好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコールを好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸)のような2価カルボン酸を好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。
上記2価又は3価以上のカルボン酸は、エステル形成性の誘導体(例えば、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル)として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1〜6のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂を調製する際に、アルコールの使用量とカルボン酸の使用量とをそれぞれ変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(トナーコアの第1級アルコール)
本実施形態に係るトナーは、前述の構成(2)を有する。トナーコアは、融点50℃以上100℃以下かつ炭素数16以上の第1級アルコールを含む。トナーの低温定着性、高温定着性、及び耐熱保存性を向上させるためには、セタノール(炭素数16)、ステアリルアルコール(炭素数18)、及びベヘニルアルコール(炭素数22)からなる群より選択される1種以上の第1級アルコールを、トナーコアに含ませることが好ましい。
(トナーコアの着色剤)
トナーコアは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリルアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(トナーコアの離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えばトナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス又は酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物系ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。一種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
なお、結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(トナーコアの電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、例えばトナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。また、トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含ませることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
正帯電させたトナーを用いて現像する場合には、正帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましく、負帯電させたトナーを用いて現像する場合には、負帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましい。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、電荷制御剤を使用しなくてもよい。例えば、シェル層中に帯電機能を有する成分が含まれる場合には、トナーコアに電荷制御剤を添加しなくてもよい。
(トナーコアの磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉としては、例えば、鉄(より具体的には、フェライト又はマグネタイト)、強磁性金属(より具体的には、コバルト又はニッケル)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、強磁性化処理(例えば、熱処理)が施された強磁性合金、又は二酸化クロムを好適に使用できる。一種の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するため、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でトナーコアの表面にシェル層を形成する場合に、トナーコアの表面に金属イオンが溶出すると、トナーコア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナーコア同士の固着を抑制することができると考えられる。
[シェル層]
本実施形態に係るトナーは、前述の構成(1)を有する。シェル層は熱硬化性樹脂を含む。シェル層は、実質的に熱硬化性樹脂のみからなってもよいし、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との両方を含有してもよい。また、シェル層において、熱可塑性樹脂が、架橋性を有するモノマー又はプレポリマー(例えば、後述する熱硬化性樹脂の調製に用いられ得るモノマー)で架橋されてもよい。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との割合は任意である。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との割合の例としては、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、3:1、4:1、又は5:1(それぞれ質量比で、熱可塑性樹脂:熱硬化性樹脂)が挙げられる。
シェル層に含まれる熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂、アニリン樹脂、ポリイミド樹脂、又はこれら各樹脂の誘導体が好ましい。ポリイミド樹脂は、窒素元素を分子骨格に有する。このため、ポリイミド樹脂を含むシェル層は、強いカチオン性を有し易い。シェル層に含まれるポリイミド樹脂としては、マレイミド系重合体、又はビスマレイミド系重合体(より具体的には、アミノビスマレイミド重合体又はビスマレイミドトリアジン重合体)が好ましい。
シェル層に含まれる熱硬化性樹脂としては、アミノ基を含む化合物とアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)との重縮合によって生成される樹脂が特に好ましい。なお、メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂は、グリオキザールと尿素との反応生成物と、ホルムアルデヒドとの重縮合物である。シェル層がメラミン樹脂又は尿素樹脂を含む場合には、トナーを乾燥する際にトナーが凝集しにくくなると考えられる。メラミン樹脂及び尿素樹脂の各々の吸水性が低いためである。このため、トナーの保存性を向上させるためには、シェル層がメラミン樹脂又は尿素樹脂を含むことが好ましい。
シェル層に含まれる熱硬化性樹脂の調製には、メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、スピログアナミン、及びジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU)からなる群より選択される1種以上のモノマーを好適に使用できる。
熱硬化性樹脂に窒素元素を含ませることで、熱硬化性樹脂の架橋硬化機能を向上させることができる。熱硬化性樹脂の反応性を高めるためには、メラミン樹脂では40質量%以上55質量%以下に、尿素樹脂では40質量%程度に、グリオキザール樹脂では15質量%程度に、窒素元素の含有量を調整することが好ましい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の官能基(例えば、メチロール基又はアミノ基)と反応し易い官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、又はグリシジル基)を有することが好ましい。アミノ基は、カルバモイル基(−CONH2)として熱可塑性樹脂中に含まれてもよい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂としては、親水性を有する樹脂が好ましく、極性官能基を有する単位(例えば、グリコール、カルボン酸、又はマレイン酸)を含む親水性の樹脂が特に好ましい。極性官能基を有する熱可塑性樹脂は、高い反応性を有する。シェル層に含まれる親水性の熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(又はその誘導体)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、又はポリエチレンオキサイドが好ましい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂はアクリル成分を含むことが好ましく、反応性アクリレートを含むことがより好ましい。アクリル成分を含む熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂と反応し易いため、シェル層の膜質を向上させることができると考えられる。シェル層に含まれる熱可塑性樹脂は、2HEMA(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)を含むことが特に好ましい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、シリコーン−(メタ)アクリル系グラフト共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、又はエチレンビニルアルコール共重合体が好ましい。シェル層に含まれる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、又はシリコーン−(メタ)アクリル系グラフト共重合体が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂の調製には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、又は(メタ)アクリル酸n−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド付加物;(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテル(より具体的には、メチルエーテル、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、又はn−ブチルエーテル)のようなアクリル系モノマーを好適に使用できる。一種のアクリル系モノマーを単独で使用してもよいし、複数種のアクリル系モノマーを併用してもよい。
シェル層が実質的に熱硬化性樹脂から構成される場合、シェル層の厚さは、1nm以上100nm以下であることが好ましい。こうした厚さのシェル層を有するトナー粒子を含むトナーは、定着性及び保存性の両方に優れると考えられる。なお、シェル層の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM撮影像を解析することによって計測できる。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
外添剤としては、シリカ、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム)を好適に使用できる。一種の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
本実施形態に係るトナーと現像剤用キャリアとを混合して2成分現像剤を調製してもよい。現像剤用キャリアとしては、例えば、キャリア芯材と、キャリア芯材を被覆する樹脂層とを有する磁性キャリアを好適に使用できる。磁性キャリアを作製するためには、キャリア芯材を磁性材料で形成してもよいし、樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。トナー飛散を抑制し、高品質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの含有量は、8質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法の一例について説明する。まず、トナーコアを準備する。続けて、液中にトナーコアとシェル材料とを入れる。この際、液を攪拌するなどして、シェル材料を液に溶かすことが好ましい。続けて、液中でシェル層をトナーコアの表面に形成する(シェル層を硬化させる)。シェル層は、水系媒体(例えば、水、メタノール、又はエタノール)中で形成されることが好ましい。また、メラミン樹脂又は尿素樹脂を含むシェル層を形成するためには、メチロール化物を溶解させた溶媒(例えば、水、メタノール、又はエタノール)中にトナーコアを入れて、トナーコアの表面でメラミン樹脂又は尿素樹脂を膜化させることが好ましい。
以下、より具体的な例に基づいて、トナーの製造方法についてさらに説明する。例えば、上記液としてイオン交換水を準備する。続けて、例えば塩酸を用いて液のpHを調整する。続けて、液中に、シェル材料を添加する。これにより、液中でシェル材料が溶けて、シェル材料の溶液が得られる。シェル材料の適切な添加量は、トナーコアの比表面積に基づいて算出できる。
続けて、得られたシェル材料の溶液にトナーコアを添加する。トナーコアの表面に均一にシェル材料を付着させるためには、シェル材料の溶液中にトナーコアを高度に分散させることが好ましい。液中にトナーコアを高度に分散させるために、液中に分散剤を含ませてもよい。
続けて、溶液を攪拌しながら溶液の温度を所定の速度(例えば、0.1℃/分以上3℃/分以下から選ばれる速度)で所定のシェル層硬化温度(例えば、60℃以上80℃以下から選ばれる温度)まで上昇させて、溶液を攪拌しながら溶液の温度をシェル層硬化温度に所定の時間(例えば、30分間以上2時間以下から選ばれる時間)保つ。これにより、トナーコアの表面にシェル材料が付着し、付着した材料が重合反応して硬化する。その結果、トナー母粒子の分散液が得られる。
シェル層硬化温度(シェル層硬化時におけるシェル材料の溶液の温度)は、トナーコアのガラス転移点(Tg)未満であることが好ましい。シェル層硬化温度がトナーコアのガラス転移点(Tg)以上になると、トナーコアが変形し易い。また、高温でシェル材料を反応させると、シェル層が硬くなり易い。シェル層が実質的にメラミン樹脂及び/又は尿素樹脂から構成される場合には、シェル層硬化温度は、40℃以上80℃以下であることが好ましく、55℃以上70℃以下であることがより好ましい。シェル層硬化時の液温を高くすると、トナーコアの変形が促進され、トナー母粒子の形状が真球に近づく傾向がある。トナー母粒子が所望の形状になるようにシェル層硬化時の液温を調整することが望ましい。なお、シェル層硬化時の液温に基づいて、シェル層の分子量を制御することもできる。
上記のようにしてシェル層を硬化させた後、例えば水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液を中和する。続けて、液を冷却する。続けて、液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)される。続けて、得られたトナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥させる。その後、必要に応じて、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。これにより、トナー粒子を多数有するトナーが完成する。なお、上記トナーの製造方法は、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば溶媒にシェル材料を溶解させる工程よりも前に溶媒中にトナーコアを添加する工程を行うようにしてもよい。シェル層の形成方法は任意である。例えば、in−situ重合法、液中硬化被膜法、及びコアセルベーション法のいずれの方法を用いて、シェル層を形成してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。
製造されたトナーと現像剤用キャリアとの混合物を、混合装置を用いて攪拌することで、2成分現像剤を製造することができる。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーA−1〜H−3(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。
Figure 0006248866
以下、トナーA−1〜H−3の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、粉体(例えば、トナーコア又はトナー)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の平均である。
[トナーA−1の製造方法]
(トナーコアの作製)
トナーA−1の製造方法では、以下の手順でトナーコアを作製した。まず、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、ポリエステル樹脂(花王株式会社製「CBC500」)87質量部と、離型剤(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)5質量部と、着色剤(大日精化工業株式会社製「ECR−101」)5質量部と、固体アルコール(高級アルコール工業株式会社製「セチルアルコールNX」、組成「約95質量%:C16、約5質量%:C18」、融点51℃)3質量部とを、回転速度2400rpmで180秒間混合した。以下、固体アルコール(高級アルコール工業株式会社製「セチルアルコールNX」、組成「約95質量%:C16、約5質量%:C18」、融点51℃)を、アルコールAと記載する。
続けて、得られた混合物を、材料供給速度5kg/時、軸回転速度150rpm、シリンダ温度150℃の条件で、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を冷却した。
続けて、機械式粉砕機(株式会社東亜機械製作所製「ロートプレックス16/8型」)を用いて溶融混練物を粗粉砕した。さらに、得られた粗粉砕物を、衝突板式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6.0μmのトナーコアが得られた。粒子径の測定には、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いた。
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを準備し、フラスコをウォーターバスにセットした。続けて、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れて、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の水系媒体(イオン交換水)のpHを4に調整した。
続けて、フラスコ内にメチロールメラミンの水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン607」、固形分濃度80質量%)35mLを添加し、フラスコ内容物を攪拌してメチロールメラミンを水系媒体に溶解させた。以下、メチロールメラミンの水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン607」、固形分濃度80質量%)を、シェル材料Aと記載する。
続けて、フラスコ内に、前述の手順で作製した300gのトナーコアを添加し、回転速度200rpmかつ温度40℃の条件で、フラスコ内容物を1時間攪拌した。続けて、フラスコ内にイオン交換水300mLを追加し、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら1.0℃/分の速度でフラスコ内の温度を70℃まで上げて、温度70℃かつ回転速度100rpmの条件でフラスコ内容物を2時間攪拌した。その結果、トナーコアの表面にシェル層が形成され、トナー母粒子の分散液が得られた。その後、水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液のpHを7に調整(中和)し、トナー母粒子の分散液を常温まで冷却した。
(トナー母粒子の洗浄)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を得た。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(トナー母粒子の乾燥)
続けて、得られたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、トナー母粒子の粉体が得られた。
(外添)
続けて、得られたトナー母粒子を外添処理した。詳しくは、トナー母粒子100質量部と乾式シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「REA90」)0.5質量部とを、10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子)を付着させた。その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナーA−1が得られた。
[トナーA−2の製造方法]
トナーA−2の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから0.7mLに変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
[トナーA−3の製造方法]
トナーA−3の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから0.3mLに変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
[トナーA−4の製造方法]
トナーA−4の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから40mLに変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
[トナーA−5の製造方法]
トナーA−5の製造方法は、シェル層を形成する工程において、35mLのシェル材料Aに代えて、メチル化尿素樹脂の水溶液(株式会社三和ケミカル製「ニカラック(登録商標)MX−280」、固形分濃度95質量%)35mLを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。以下、メチル化尿素樹脂の水溶液(株式会社三和ケミカル製「ニカラック(登録商標)MX−280」、固形分濃度95質量%)を、シェル材料Bと記載する。
[トナーA−6の製造方法]
トナーA−6の製造方法は、シェル層を形成する工程において、35mLのシェル材料Aに代えて、10mLのシェル材料Aと10mLのシェル材料Bとを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
[トナーA−7の製造方法]
トナーA−7の製造方法は、シェル層を形成する工程において、35mLのシェル材料Aに代えて、10mLのシェル材料Aと10mLのシェル材料Cとを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。シェル材料Cは、以下に示す方法に従って合成されたスチレンアクリル酸ブチル共重合体微粒子であった。
<スチレンアクリル酸ブチル共重合体微粒子の合成方法>
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水875mLと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムルWX」、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)75mLとを入れた。続けて、ウォーターバスを用いて、フラスコ内容物の温度を80℃に昇温させた。続けて、スチレン溶液18mL及びアクリル酸ブチル溶液2mLの混合液と、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液とを、それぞれ5時間かけてフラスコ内に滴下した。その後、フラスコ内容物の温度を80℃に2時間保って、フラスコ内で重合反応を行った。その結果、スチレンアクリル酸ブチル共重合体微粒子の分散液が得られた。得られた樹脂微粒子の分散液について、透過型電子顕微鏡を用いて樹脂微粒子を観察することで、樹脂微粒子の平均粒子径が32nmであることを確認した。また、示差走査型熱量計により測定された樹脂微粒子のTgは71℃であった。
[トナーB−1の製造方法]
トナーB−1の製造方法は、トナーコアを作製する工程において、3質量部のアルコールAに代えて、固体アルコール(花王株式会社製「カルコール4098」、ミリスチルアルコール、融点40℃)3質量部を使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。以下、固体アルコール(花王株式会社製「カルコール4098」、ミリスチルアルコール、融点40℃)を、アルコールBと記載する。
[トナーB−2の製造方法]
トナーB−2の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから0.7mLに変更した以外は、トナーB−1の製造方法と同じである。
[トナーCの製造方法]
トナーCの製造方法は、トナーコアを作製する工程において、3質量部のアルコールAに代えて、固体アルコール(花王株式会社製「カルコール8098」、ステアリルアルコール、融点56℃)3質量部を使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。以下、固体アルコール(花王株式会社製「カルコール8098」、ステアリルアルコール、融点56℃)を、アルコールCと記載する。
[トナーDの製造方法]
トナーDの製造方法は、トナーコアを作製する工程において、3質量部のアルコールAに代えて、固体アルコール(花王株式会社製「カルコール220−80」、ベヘニルアルコール、融点68℃)3質量部を使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。以下、固体アルコール(花王株式会社製「カルコール220−80」、ベヘニルアルコール、融点68℃)を、アルコールDと記載する。
[トナーEの製造方法]
トナーEの製造方法は、トナーコアを作製する工程において、3質量部のアルコールAに代えて、炭素数20〜40の第1級アルコール混合物(ベーカー・ヒューズ社製「PERFORMACOL(登録商標)350 Alcohol」、融点79℃)3質量部を使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。以下、炭素数20〜40の第1級アルコール混合物(ベーカー・ヒューズ社製「PERFORMACOL(登録商標)350 Alcohol」、融点79℃)を、アルコールEと記載する。
[トナーF−1の製造方法]
トナーF−1の製造方法は、トナーコアを作製する工程において、3質量部のアルコールAに代えて、炭素数30〜50の第1級アルコール混合物(ベーカー・ヒューズ社製「PERFORMACOL(登録商標)550 Alcohol」、融点99℃)3質量部を使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。以下、炭素数30〜50の第1級アルコール混合物(ベーカー・ヒューズ社製「PERFORMACOL(登録商標)550 Alcohol」、融点99℃)を、アルコールFと記載する。
[トナーF−2の製造方法]
トナーF−2の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから0.7mLに変更した以外は、トナーF−1の製造方法と同じである。
[トナーF−3の製造方法]
トナーF−3の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから0.3mLに変更した以外は、トナーF−1の製造方法と同じである。
[トナーF−4の製造方法]
トナーF−4の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから40mLに変更した以外は、トナーF−1の製造方法と同じである。
[トナーG−1の製造方法]
トナーG−1の製造方法は、トナーコアを作製する工程において、3質量部のアルコールAに代えて、炭素数30〜50の第1級アルコール混合物(ベーカー・ヒューズ社製「PERFORMACOL(登録商標)550 Alcohol」の高純度グレード、融点105℃)3質量部を使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。以下、炭素数30〜50の第1級アルコール混合物(ベーカー・ヒューズ社製「PERFORMACOL(登録商標)550 Alcohol」の高純度グレード、融点105℃)を、アルコールGと記載する。
[トナーG−2の製造方法]
トナーG−2の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから0.7mLに変更した以外は、トナーG−1の製造方法と同じである。
[トナーG−3の製造方法]
トナーG−3の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから0.3mLに変更した以外は、トナーG−1の製造方法と同じである。
[トナーH−1の製造方法]
トナーH−1の製造方法は、トナーコアを作製する工程において、アルコールAを使用せず、ポリエステル樹脂(花王株式会社製「CBC500」)の使用量を87質量部から90質量部に変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
[トナーH−2の製造方法]
トナーH−2の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから0.7mLに変更した以外は、トナーH−1の製造方法と同じである。
[トナーH−3の製造方法]
トナーH−3の製造方法は、シェル層を形成する工程において、シェル材料Aの使用量を35mLから0.3mLに変更した以外は、トナーH−1の製造方法と同じである。
[評価方法]
各試料(トナーA−1〜H−3)の評価方法は、以下の通りである。
(シェル層の厚さ)
試料(トナー)を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散し、40℃の雰囲気で2日間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を四酸化オスミウムを用いて染色した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて切り出し、薄片試料を得た。続けて、得られた薄片試料の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて撮影した。
画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてTEM撮影像を解析することで、シェル層の厚さを計測した。具体的には、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線上の、シェル層と交差する4箇所の長さを測定した。そして、測定された4箇所の長さの平均値を、測定対象である1個のトナー粒子のシェル層の厚さとした。試料(トナー)に含まれる10個のトナー粒子についてそれぞれシェル層の厚さを測定し、得られた10個の測定値の平均を評価値とした。
なお、シェル層の厚さが薄い場合には、TEM撮影像上でのトナーコアとシェル層との境界が不明瞭になるため、シェル層の厚さの測定が困難な場合がある。このような場合には、TEMと電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせてトナーコアとシェル層との境界を明確にすることにより、シェル層の厚さを測定した。具体的には、TEM撮影像中で、EELSを用いてシェル層に含まれる元素(例えば、窒素元素)のマッピングを行った。
(貯蔵弾性率及び損失弾性率)
試料(トナー)0.1gに常温で荷重20kNを2分間かけて、直径10mm、厚さ1mmの円盤状の評価用試料を作製した。評価機としては、レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製「ARES」)を用いた。評価機の測定プレートとしては、直径10mmの円形パラレルプレートを用いた。
評価機を用いて、次に示す条件で評価用試料の動的粘弾性(貯蔵弾性率及び損失弾性率)を測定した。詳しくは、トナーの110℃における貯蔵弾性率とトナーの110℃における損失弾性率とをそれぞれ測定した。
・測定周波数:6.28ラジアン/秒
・測定歪の設定:初期値を0.1%に設定した後、自動測定モードで測定した。
・試料の伸長補正:自動測定モードで調整した。
・測定温度:50℃から200℃まで2℃/分の速度で昇温した。
・測定間隔:15秒ごとに測定値(弾性率)を得た。
(耐熱保存性)
試料(トナー)3gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて密閉し、密閉された容器を、60℃に設定された恒温槽(ヤマト科学株式会社製「DKN302」)内に3時間静置した。その後、恒温槽から取り出したトナーを室温まで冷却して、評価用トナーを得た。
続けて、得られた評価用トナーを、質量既知の200メッシュの篩に載せた。そして、評価用トナーを含む篩の質量を測定し、篩別前のトナーの質量を求めた。続けて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)に篩をセットし、パウダーテスターのマニュアルに従い、レオスタッド目盛り4の条件で30秒間、篩を振動させ、評価用トナーを篩別した。篩別後、篩を通過したトナーの質量を測定した。そして、篩別前のトナーの質量と、篩を通過したトナーの質量とに基づいて、次の式に従ってトナー通過率(質量%)を求めた。
トナー通過率(質量%)=100×篩を通過したトナーの質量/篩別前のトナーの質量
トナー通過率が80質量%以上であれば◎(非常に良い)と評価し、トナー通過率が80質量%未満60質量%以上であれば○(良い)と評価し、トナー通過率が60質量%未満であれば×(悪い)と評価した。
(定着性)
現像剤用キャリア(FS−C5300DN用キャリア)100質量部と、試料(トナー)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
また、上述のようにして調製した2成分現像剤を用いて画像を形成して、トナーの定着性を評価した。評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器(ニップ幅8mm)を有するカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5300DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機の現像器に投入し、試料(トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
試料(トナー)の定着性を評価する場合には、上記評価機を用いて、線速200mm/秒(ニップ通過時間40m秒)、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、90g/m2の紙(A4サイズの印刷用紙)に、大きさ25mm×25mm、印字率100%のソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙を定着器に通した。定着温度の設定範囲は100℃以上200℃以下であった。詳しくは、定着器の定着温度を100℃から5℃ずつ上昇させて、トナー(ソリッド画像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)及び最高温度(最高定着温度)をそれぞれ測定した。
最低定着温度の測定においてトナーを定着させることができたか否かは、以下に示すような折擦り試験で確認した。詳しくは、画像を形成した面が内側となるように紙を半分に折り曲げ、布帛で覆った1kgの分銅を用いて、折り目上を10往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm未満となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。
最低定着温度が135℃以下であれば◎(非常に良い)と評価し、最低定着温度が135℃超140℃以下であれば○(良い)と評価し、最低定着温度が140℃超であれば×(悪い)と評価した。
また、最高定着温度の測定においてトナーを定着させることができたか否かは、各温度で定着させた画像についてホットオフセットが発生したか否かを評価した。詳しくは、定着ローラーに付着したトナーが後続の(2周目の)紙に転移した場合に、ホットオフセットが発生したと判断した。ホットオフセットが発生しない定着温度のうちの最高温度を、最高定着温度とした。
最高定着温度が165℃以上であれば◎(非常に良い)と評価し、最高定着温度が165℃未満155℃以上であれば○(良い)と評価し、最高定着温度が155℃未満であれば×(悪い)と評価した。
[評価結果]
トナーA−1〜H−3の各々についての評価結果は以下のとおりである。表2に、最低定着温度、最高定着温度、及び耐熱保存性の評価結果をそれぞれ示す。なお、シェル層の厚さ、貯蔵弾性率、及び損失弾性率の各々の評価結果は、表1に示されている。
Figure 0006248866
トナーA−1〜A−7、C、D、E、及びF−1〜F−4(実施例1〜14に係るトナー)はそれぞれ、前述の構成(1)及び(2)を有していた。詳しくは、実施例1〜14に係るトナーではそれぞれ、トナー粒子が、トナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層とを有していた。トナーコアはポリエステル樹脂を含んでいた。トナーコアは、融点50℃以上100℃以下かつ炭素数16以上の第1級アルコールを含んでいた。シェル層は熱硬化性樹脂を含んでいた。表2に示されるように、実施例1〜14に係るトナーは、低温定着性、高温定着性、及び耐熱保存性に優れていた。
表1に示されるように、実施例1〜14に係るトナーではそれぞれ、110℃における貯蔵弾性率が2000Pa以上であり、110℃における損失弾性率が80000Pa以下であった。
表1に示されるように、トナーA−1、A−2、A−5、A−6、C、D、E、F−1、及びF−2(実施例1、2、及び5〜11に係るトナー)ではそれぞれ、シェル層が実質的に熱硬化性樹脂から構成され、シェル層の厚さが1nm以上100nm以下であった。表2に示されるように、実施例1、2、及び5〜11に係るトナーはそれぞれ、低温定着性及び耐熱保存性に特に優れていた。
表1に示されるように、トナーA−7(実施例7に係るトナー)では、シェル層が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含んでいた。表2に示されるように、実施例7に係るトナーは、低温定着性及び耐熱保存性に特に優れていた。
本発明に係るトナーは、例えば複写機又はプリンターにおいて画像を形成するために用いることができる。

Claims (4)

  1. 複数のトナー粒子を含むトナーであって、
    前記トナー粒子は、コアと、前記コアの表面に形成されたシェル層とを有し、
    前記コアは、ポリエステル樹脂と、カルナバワックスと、融点50℃以上100℃以下かつ炭素数16以上50以下の第1級アルコールとを含み、
    前記シェル層は実質的に熱硬化性樹脂から構成され、
    前記熱硬化性樹脂はメラミン樹脂又は尿素樹脂であり、
    前記トナーの110℃における貯蔵弾性率が2000Pa以上54000Pa以下であり、
    前記トナーの110℃における損失弾性率が7600Pa以上80000Pa以下である、トナー。
  2. 前記シェル層の厚さは1nm以上100nm以下である、請求項1に記載のトナー。
  3. 複数のトナー粒子を含むトナーであって、
    前記トナー粒子は、コアと、前記コアの表面に形成されたシェル層とを有し、
    前記コアは、ポリエステル樹脂と、カルナバワックスと、融点50℃以上100℃以下かつ炭素数16以上50以下の第1級アルコールとを含み、
    前記シェル層は、熱可塑性樹脂に由来する単位と、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位とを含み、
    前記シェル層において、前記熱可塑性樹脂に由来する単位は前記熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位で架橋されており、
    前記熱可塑性樹脂はスチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂であり、
    前記トナーの110℃における貯蔵弾性率が2000Pa以上54000Pa以下であり、
    前記トナーの110℃における損失弾性率が7600Pa以上80000Pa以下である、トナー。
  4. 前記スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂はスチレンアクリル酸ブチル共重合体であり、
    前記スチレンアクリル酸ブチル共重合体は90体積部のスチレンと10体積部のアクリル酸ブチルとの共重合体である、請求項3に記載のトナー。
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