JP6447488B2 - 静電潜像現像用トナー及びその製造方法 - Google Patents
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トナーコアの表面に凹部(以下、下地凹部と記載する)が複数形成されている。シェル層は、トナーコアの表面領域における、下地凹部の内側領域と下地凹部の外側領域との両方に存在する。トナー粒子の表面には、下地凹部に対応する凹部(以下、表面凹部と記載する)が形成されている。なお、本実施形態では、意図せずとも自然に形成されるトナーコアの表面の微小な凹凸とは区別するため、深さ100nm以上の穴を「凹部」と称する。
トナー粒子(特に、トナーコア及びシェル層)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂を好適に使用できる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)も、トナー粒子を構成する熱可塑性樹脂として好適に使用できる。
トナー粒子(特に、シェル層)を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、スルホンアミド系樹脂、グリオキザール系樹脂、グアナミン系樹脂、アニリン系樹脂、ポリイミド樹脂(より具体的には、マレイミド重合体又はビスマレイミド重合体等)、又はキシレン系樹脂を好適に使用できる。
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価及び酸価の少なくとも一方が10mgKOH/g以上であることが好ましい。
トナーコアは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、又はニッケル等)もしくはその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理(より具体的には、熱処理等)が施された材料を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
シェル層は、粒状感のない膜であってもよいし、粒状感のある膜であってもよい。シェル層を形成するための材料として樹脂粒子を使用した場合、材料(樹脂粒子)が完全に溶けて膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、粒状感のない膜が形成されると考えられる。他方、材料(樹脂粒子)が完全に溶けずに膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、樹脂粒子が2次元的に連なった形態を有する膜(粒状感のある膜)が形成されると考えられる。
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。例えば、トナー母粒子と外添剤とを一緒に攪拌することで、物理的な力でトナー母粒子の表面に外添剤が付着(物理的結合)する。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の量が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
本実施形態に係るトナーの製造方法は、次に示す工程(準備工程、昇温工程、及び保温工程)を含む。準備工程では、トナーコアとシェル材料とを含むpH6以下の水性媒体を準備する。昇温工程では、準備された水性媒体の温度を所定の目標温度まで昇温させる。昇温終了後(水性媒体の温度が目標温度に到達した後)の保温工程では、水性媒体を目標温度に保つ。トナーコアは、目標温度以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂と、目標温度よりも高い軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。また、本実施形態に係るトナーの製造方法では、昇温工程において、昇温中、又は水性媒体の温度が目標温度に到達した直後に、水性媒体のpHを8以上に変える。なお、水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体の沸点は約100℃である。
好適なトナーコアを容易に得るためには、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを製造することが好ましい。
まず、水性媒体(例えば、イオン交換水)を準備する。シェル層形成時におけるトナーコア成分(特に、結着樹脂及び離型剤)の溶解又は溶出を抑制するためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、試料(例えば、樹脂)の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を求めた。続けて、得られた吸熱曲線から試料のTg(ガラス転移点)を読み取った。得られた吸熱曲線中の比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度が、試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTm(軟化点)を読み取った。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
(トナーコアの作製)
低粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)66質量部と、中粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=53℃、Tm=84℃)9質量部と、高粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=71℃、Tm=120℃)12質量部と、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)5質量部と、着色剤(DIC株式会社製「KET BLUE 111」、フタロシアニンブルー)8質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて回転速度2400rpmで混合した。
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットした。続けて、フラスコ内に、温度30℃のイオン交換水875gと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75gとを入れた。その後、フラスコ内容物を攪拌しながら、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた。続けて、80℃のフラスコ内容物を攪拌しながら、2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけてフラスコ内に滴下した。第1の液は、スチレン17gとアクリル酸ブチル3gとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30gに溶かした溶液であった。
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水300gを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内容物のpHを4に調整した。続けて、フラスコ内に、シェル材料(前述の手順で調製した疎水性熱可塑性樹脂粒子のサスペンション)30gを添加して、シェル材料の分散液を得た。
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)した。その結果、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られた。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
続けて、得られたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、乾燥したトナー母粒子(粉体)が得られた。
上記のようにして得たトナー母粒子100質量部と、乾式シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1.0質量部とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子)を付着させた。その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーTA−1〜TA−3、TB−1〜TB−3、TC−1〜TC−3、TF−1〜TF−2、及びTG−1〜TG−2)が得られた。
トナーTDの製造方法は、次の条件を変更した以外は、トナーTA−3の製造方法と同じであった。トナーコアの作製における各材料の添加量に関して、低粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)の66質量部を32質量部に、中粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=53℃、Tm=84℃)の9質量部を10質量部に、高粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=71℃、Tm=120℃)の12質量部を40質量部にそれぞれ変更し、これら非結晶性ポリエステル樹脂と一緒に結晶性ポリエステル樹脂(Tm=80℃)5質量部をさらに添加した。また、シェル層の形成において、シェル材料(疎水性熱可塑性樹脂粒子のサスペンション)の添加量を30gから50gに変更した。
シェル層の形成において、昇温中にpH調整を行わなかった以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。すなわち、トナーTEの製造では、フラスコ内容物のpHが酸性の値(約4)である状態で、フラスコ内容物を目標温度70℃まで昇温させて、フラスコ内容物の温度をその温度(70℃)に2時間保った。
各試料(トナーTA−1〜TG−2)のトナー母粒子(外添前のトナー)について、全体シェル被覆率を測定した。詳しくは、試料(トナー)のトナー母粒子(粉体)を、常温(25℃)の大気雰囲気下で、濃度0.5質量%RuO4水溶液2mLの蒸気中に5分間暴露することで、トナー母粒子をRu染色した。そして、染色されたトナー母粒子を、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いて倍率50000倍で観察し、トナー母粒子の反射電子像を得た。トナーコアの表面領域のうち、シェル層で被覆されている領域は、ルテニウムに染色され易かった。
全体シェル被覆率=100×面積SB1/面積SA1
凹部シェル被覆率=100×面積SB2/面積SA2
面積差=凹部シェル被覆率−全体シェル被覆率
各試料(トナーTA−1〜TG−2)の評価方法は、以下のとおりである。
試料(トナー)2gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて密閉し、密閉された容器を、60℃に設定された恒温槽内に3時間静置した。その後、恒温槽から取り出したトナーを室温(約25℃)まで冷却して、評価用トナーを得た。
トナー凝集度=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
フェライトキャリア(パウダーテック株式会社製)100質量部と、試料(トナー)8質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、評価用現像剤(2成分現像剤)を調製した。評価機として、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器(ニップ幅8mm)を備えるプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5200DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した評価用現像剤を評価機の現像器に投入し、試料(補給用トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
表2に、各試料(トナーTA−1〜TG−2)の評価結果(低温定着性:最低定着温度、耐熱保存性:凝集度)をまとめて示す。
11 トナーコア
12 シェル層
H1〜H4 下地凹部
Claims (10)
- コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
前記コアの表面には複数の第1凹部が形成され、
前記シェル層は、前記コアの表面領域における、前記第1凹部の内側領域と前記第1凹部の外側領域との両方に存在し、
前記トナー粒子の表面には、前記第1凹部に対応する第2凹部が形成されており、
前記コアは、軟化点80℃以下の非結晶性ポリエステル樹脂を含有し、
前記コアに含有される樹脂のうち、前記軟化点80℃以下の非結晶性ポリエステル樹脂が占める割合は、50質量%以上80質量%以下である、静電潜像現像用トナー。 - 前記コアの表面領域のうち、前記シェル層が覆う前記コアの面積の割合は30%以上80%以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記第1凹部の前記内側領域のうち、前記シェル層が覆う前記内側領域の面積の割合は30%以上80%以下である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記第1凹部の前記内側領域のうち前記シェル層が覆う前記内側領域の面積の割合から、前記コアの表面領域のうち前記シェル層が覆う前記コアの面積の割合を引いた面積差は、−10%以上+10%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記トナー粒子の表面に存在する前記第2凹部の数は、前記トナー粒子の表面領域の面積1μm2あたり0.1個以上0.5個以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記コアは、軟化点100℃以上の非結晶性ポリエステル樹脂をさらに含有する、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記シェル層は熱可塑性樹脂を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記シェル層の厚さは1nm以上50nm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- コアとシェル材料とを含むpH6以下の水性媒体を準備することと、
前記準備された水性媒体の温度を所定の目標温度まで昇温させることと、
前記昇温終了後、前記水性媒体を前記目標温度に保つことと、
を含み、
前記コアは、前記目標温度以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂と、前記目標温度よりも高い軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、
前記昇温中、又は前記水性媒体の温度が前記目標温度に到達した直後に、前記水性媒体のpHを8以上に変えることをさらに含む、静電潜像現像用トナーの製造方法。 - 前記昇温の速度は0.5℃/分以上2.0℃/分以下であり、前記目標温度は60℃以上100℃以下であり、
前記pHを8以上に変える時の前記水性媒体の温度は、30℃以上70℃以下である、請求項9に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
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