JP6558335B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

静電潜像現像用トナー Download PDF

Info

Publication number
JP6558335B2
JP6558335B2 JP2016190913A JP2016190913A JP6558335B2 JP 6558335 B2 JP6558335 B2 JP 6558335B2 JP 2016190913 A JP2016190913 A JP 2016190913A JP 2016190913 A JP2016190913 A JP 2016190913A JP 6558335 B2 JP6558335 B2 JP 6558335B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
toner
particles
shell layer
temperature
core
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2016190913A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018054892A (ja
Inventor
貴俊 野崎
貴俊 野崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyocera Document Solutions Inc
Original Assignee
Kyocera Document Solutions Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyocera Document Solutions Inc filed Critical Kyocera Document Solutions Inc
Priority to JP2016190913A priority Critical patent/JP6558335B2/ja
Publication of JP2018054892A publication Critical patent/JP2018054892A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6558335B2 publication Critical patent/JP6558335B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Developing Agents For Electrophotography (AREA)

Description

本発明は、静電潜像現像用トナー及びその製造方法に関する。
トナーには、低温定着性の向上が要求されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のトナーは、結着樹脂として、ポリエステル樹脂と、ポリエステル樹脂よりも熱伝導率の高い無機フィラーとを含有する。
特開2012−98386号公報
しかしながら、熱伝導率が結着樹脂の主成分よりも高い無機フィラー(以下、単に無機フィラーと記載する)の結着樹脂における含有量が多くなると、トナーの粘度が上昇する。結着樹脂における無機フィラーの含有量が多い場合に結着樹脂における無機フィラーの分散性が低ければ、トナーの粘度がさらに上昇する。
一般に、定着ローラーを用いてトナーを印刷用紙に定着させる場合、トナーは印刷用紙上で定着ローラーに押圧される。これにより、トナーは、変形し、印刷用紙へ定着される。そのため、トナーの粘度が高ければ、定着ローラーによる押圧時にはトナーと定着ローラーとの接着力が増加し、その結果、低温オフセットが発生し易くなる。このように、トナーの低温定着性の向上を目的として無機フィラーを結着樹脂に含有させると、低温オフセットが発生し易くなる。
低温オフセットが発生すると、印刷用紙上に形成されたトナー画像の一部分が取り去られ、取り去られたトナー画像に含まれるトナーが定着ローラーに付着する。トナーが付着した定着ローラーを用いて新たなトナーの定着を試みた場合、新たなトナーは、定着ローラーに付着しているトナーと印刷用紙とに挟まれた状態で、定着ローラーに押圧される。そのため、トナーが付着した定着ローラーを用いて新たなトナーを定着させる場合には、トナーが付着していない定着ローラーを用いて新たなトナーを定着させる場合に比べ、定着ローラーから新たなトナーへ付与される圧力が小さくなる。よって、トナーが付着した定着ローラーを用いて新たなトナーの定着を試みた場合、新たなトナーは、変形し難くなり、その結果、印刷用紙へ定着され難くなる。このように、低温オフセットが発生すると、トナーの現像性の低下を引き起こす。したがって、低温オフセットの発生を防止することが要求されている。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低温定着性を向上させつつ低温オフセットの発生を防止可能な静電潜像現像用トナーを提供することである。本発明の他の目的は、低温定着性を向上させつつ低温オフセットの発生を防止可能な静電潜像現像用トナーを製造する方法を提供することである。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、トナーコアと、前記トナーコアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む。前記トナーコアの表面には、複数の第1凹部が形成されている。前記シェル層は、前記トナーコアの表面領域における、前記第1凹部の内側領域と前記第1凹部の外側領域との両方に存在する。前記トナー粒子の表面には、前記第1凹部に対応する第2凹部が形成されている。前記トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの前記第2凹部の数は、0.30個/μm2以上である。前記トナーコアと前記シェル層との界面のうち前記第1凹部の内側領域には、無機材料を含有する無機粒子が複数存在する。前記無機粒子の熱伝導率が、40W/m・K以上である。前記無機粒子の個数平均1次粒子径が、100nm以下である。
本発明に係る静電潜像現像用トナーの製造方法は、トナーコアを準備する工程と、前記準備されたトナーコアとシェル材料とを含み、且つpHが3以上6以下である水性媒体を準備する工程と、前記準備された水性媒体の温度を所定の目標温度まで上昇させる昇温工程と、前記昇温工程の終了後、前記水性媒体の温度を前記目標温度に保つ工程と、を含む。前記トナーコアを準備する工程は、前記目標温度以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂と、無機材料を含有する無機粒子とを混合する第1混合工程と、前記第1混合工程において得られた混合物と、前記目標温度よりも高い軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂とを混合する第2混合工程とを含む。前記無機粒子の熱伝導率が、40W/m・K以上である。前記無機粒子の個数平均1次粒子径が、100nm以下である。前記昇温工程は、前記水性媒体の温度がpH変化温度に到達したときに、前記水性媒体のpHを8以上12以下に変える工程をさらに含む。前記pH変化温度は、前記目標温度よりも低い。
本発明の静電潜像現像用トナーによれば、低温定着性を向上させつつ、低温オフセットの発生を防止できる。
本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子の断面構造の一例を示す図である。 図1に示されるトナー粒子の表面領域の一部領域を示す平面図である。 図2中のIII−III断面図である。
本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、トナーコア、トナー粒子、トナー母粒子、又は外添剤に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。トナー母粒子は、外添剤が外添されていないトナー粒子を意味する。
また、粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。
また、酸価及び水酸基価の各々の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従って測定した値である。また、数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の各々の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。また、ガラス転移点(Tg)及び融点(Mp)は、各々、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定した値である。また、軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。
また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
[本実施形態に係る静電潜像現像用トナーの構成]
本実施形態に係る静電潜像現像用トナーは、トナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む。トナーコアの表面には、複数の第1凹部が形成されている。シェル層は、トナーコアの表面領域における、第1凹部の内側領域と第1凹部の外側領域との両方に存在する。トナー粒子の表面には、第1凹部に対応する第2凹部が形成されている。トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの第2凹部の数は、0.30個/μm2以上である。トナーコアとシェル層との界面のうち第1凹部の内側領域には、無機材料を含有する無機粒子が複数存在する。無機粒子の熱伝導率が、40W/m・K以上である。無機粒子の個数平均1次粒子径が、100nm以下である。
ここで、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの第2凹部の数は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(例えば、日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いてトナー粒子の表面全域を観察することにより、求められる。トナー粒子が外添剤を含有する場合には、外添剤が取り除かれたトナー粒子(トナー母粒子)の表面全域を観察することが好ましい。なお、本実施形態では、意図せずとも自然に形成されるトナーコアの表面の微小な凹凸と第1凹部及び第2凹部とを区別するため、深さ100nm以上の穴を「凹部」と称する。また、以下では、「第1凹部」を「下地凹部」と記載し、「第2凹部」を「表面凹部」と記載する。
また、透過電子顕微鏡(TEM、例えば株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7100FA」)を用いてトナー粒子の断面TEM写真を観察することにより、無機粒子がトナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に存在しているか否かを調べることができる。トナー粒子が外添剤を含有する場合には、外添剤が取り除かれたトナー粒子(トナー母粒子)の断面TEM写真を観察することが好ましい。
また、無機粒子の熱伝導率は、JIS A 1412−2:1999に記載の熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法(熱流計法)に準拠して、求めることができる。
また、無機粒子の個数平均1次粒子径は、顕微鏡(例えば、走査型電子顕微鏡)を用いてトナー粒子の表面を観察することにより測定された1次粒子の円相当径の個数平均値である。
本実施形態に係る静電潜像現像用トナー(以下、トナーと記載することがある)は、上記構成を有するトナー粒子を複数含む。これにより、トナーの低温定着性を向上させつつ、低温オフセットの発生を防止できる。以下では、従来のトナーが有する課題、及びその課題を解決するために本発明者が検討した事項を説明した後に、本実施形態に係るトナーを詳しく説明する。
従来、トナーの低温定着性の向上を目的として熱伝導率の高い無機材料を結着樹脂に含有させると、低温オフセットが発生し易かった。今般、本発明者は、低温定着性を向上させつつ低温オフセットの発生を防止可能なトナーを提供するために、上述の課題が引き起こされる理由について鋭意検討した。その結果、以下に示す見解が導き出された。
熱伝導率の高い無機材料がトナー粒子の内部に存在する場合には、熱伝導率の高い無機材料をトナー粒子に含有させたことによる効果(つまり、トナーの低温定着性の向上)が得られ難い。そのため、トナーの低温定着性を向上させるためには、熱伝導率の高い無機材料の含有量を多くする必要が生じる。しかし、熱伝導率の高い無機材料の含有量が多くなると、トナーの粘度上昇を招き、その結果、低温オフセットが発生し易くなる。
このような見解に基づき、本発明者は、熱伝導率の高い無機材料のトナー粒子における位置の最適化を試みた。そして、熱伝導率の高い無機材料をトナー粒子の特定の位置に配置すればトナーの低温定着性を向上させつつ低温オフセットの発生を防止できることが分かった。
詳しくは、本実施形態に係るトナーでは、熱伝導率が40W/m・K以上の無機粒子(以下、熱伝導率の高い無機粒子と記載する)は、トナーコアとシェル層との界面のうち第1凹部の内側領域に存在する。これにより、熱伝導率の高い無機粒子をトナー粒子に含有させたことによる効果を効果的に得ることができる。具体的には、トナーの低温定着性を効果的に高めることができる。なお、熱伝導率の高い無機粒子の入手可能性を考慮すれば、熱伝導率の高い無機粒子の熱伝導率は200W/m・K以下であることが好ましい。
このように、熱伝導率の高い無機粒子がトナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に存在するため、熱伝導率の高い無機粒子のトナー粒子における含有量を多くしなくてもトナーの低温定着性を効果的に高めることができる。例えば、熱伝導率の高い無機粒子のトナー粒子における含有量が100質量部のトナーコアに対し15質量部以下であれば、トナーの低温定着性を効果的に高めることができる。よって、本実施形態では、トナー粒子が熱伝導率の高い無機粒子を含有しているにも関わらず、トナーの粘度上昇を防止できる。したがって、低温オフセットの発生を防止できる。このように、熱伝導率の高い無機粒子が、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に存在することによって、トナーの低温定着性を効果的に高めつつ低温オフセットの発生を防止できる。なお、トナーの低温定着性をより一層効果的に高めるという観点では、熱伝導率の高い無機粒子のトナー粒子における含有量は、100質量部のトナーコアに対し0.5質量部以上であることが好ましい。
本実施形態に係るトナーでは、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数は0.30個/μm2以上である。ここで、表面凹部は、下地凹部に対応して、トナー粒子の表面に形成されている。そのため、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数が0.30個/μm2以上であれば、トナーコアの表面領域の単位面積あたりの下地凹部の数は0.30個/μm2以上となる。そして、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域には、熱伝導率の高い無機粒子が複数存在する。これらのことから、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数が0.30個/μm2以上であれば、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域において熱伝導率の高い無機粒子が存在する箇所を確保できる。よって、トナーの低温定着性を効果的に高めることができる。また、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域において熱伝導率の高い無機粒子が存在する箇所を確保できれば、熱伝導率の高い無機粒子がトナーコアの内部に存在することを防止できる。よって、低温オフセットの発生を防止できる。このように、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数が0.30個/μm2以上であることによっても、トナーの低温定着性を効果的に高めつつ低温オフセットの発生を防止できる。なお、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数が多くなり過ぎると、表面凹部の形成に起因してトナーの耐熱保存性が低下することがある。そのため、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数は、好ましくは1.0個/μm2以下であり、より好ましくは0.60個/μm2以下である。
本実施形態に係るトナーでは、熱伝導率の高い無機粒子の個数平均1次粒子径は100nm以下である。これにより、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域には、熱伝導率の高い無機粒子を、所定量、存在させることができる。よって、トナーの低温定着性を効果的に高めることができる。また、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域において、熱伝導率の高い無機粒子を、所定量、存在させることができれば、熱伝導率の高い無機粒子がトナーコアの内部に存在することを防止できる。よって、低温オフセットの発生を防止できる。このように、熱伝導率の高い無機粒子の個数平均1次粒子径が100nm以下であることによっても、トナーの低温定着性を効果的に高めつつ低温オフセットの発生を防止できる。なお、無機粒子の入手可能性を考慮すれば、無機粒子の個数平均1次粒子径は20nm以上であることが好ましい。
好ましくは、熱伝導率の高い無機粒子に含有される無機材料は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、及び炭化珪素のうちの少なくとも1つである。これにより、熱伝導率が40W/m・K以上である無機粒子を提供できる。例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、及び炭化珪素のうちの少なくとも1つを80質量%以上含有する無機粒子は、40W/m・K以上の熱伝導率を有し易くなる。より好ましくは、熱伝導率の高い無機粒子として、窒化アルミニウムからなる粒子、窒化ホウ素からなる粒子、酸化アルミニウムからなる粒子、及び炭化珪素からなる粒子のうちの少なくとも1つを使用することである。
好ましくは、熱伝導率の高い無機粒子の体積固有抵抗値は1.0×1014Ω・cm以上である。これにより、トナーの電気抵抗の低下を防止できるため、トナーの帯電量の低下を防止できる。よって、トナーの帯電安定性を高めることができる。なお、帯電安定性に優れるトナーとは、トナーの帯電量分布がシャープである特性、トナーを用いて画像を形成し始める際にトナーの帯電量を所望の帯電量に維持できる特性、及びトナーを用いて連続して画像を形成した場合にトナーの帯電量を所望の帯電量に維持できる特性を有するトナーを意味する。
熱伝導率の高い無機粒子の体積固有抵抗値は、次に示す方法に従って求めることができる。まず、電気抵抗計(例えば株式会社アドバンテスト製「R6561」)の測定セルに、熱伝導率の高い無機粒子を入れる。次に、測定セル内の無機粒子(熱伝導率の高い無機粒子)に1kgの荷重を1分間かける。続けて、測定セル内の無機粒子に直流電圧10Vを印加して、無機粒子の電気抵抗を測定する。測定された電気抵抗の値と、電気抵抗測定時における無機粒子の厚みとから、無機粒子の体積固有抵抗値を算出する。
入手可能性を考慮すれば、熱伝導率の高い無機粒子の体積固有抵抗値は1.0×1017Ω・cm以下であることが好ましい。なお、熱伝導率の高い無機粒子の体積固有抵抗値が1.0×1017Ω・cm以下であれば、トナーの電気抵抗の過剰な上昇を防止できる。そのため、トナーが過剰に帯電することを防止でき、よって、トナーの帯電安定性をさらに高めることができる。
より好ましくは、熱伝導率の高い無機粒子に含有される無機材料は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及び酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つである。これにより、熱伝導率が40W/m・K以上であり、且つ体積固有抵抗値が1.0×1014Ω・cm以上である無機粒子を提供できる。例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及び酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つを80質量%以上含有する無機粒子は、40W/m・K以上の熱伝導率を有し易くなるとともに、1.0×1014Ω・cm以上の体積固有抵抗値を有し易くなる。より好ましくは、熱伝導率の高い無機粒子として、窒化アルミニウムからなる粒子、窒化ホウ素からなる粒子、及び酸化アルミニウムからなる粒子のうちの少なくとも1つを使用することである。
「トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域には、熱伝導率の高い無機粒子が複数存在している」場合の熱伝導率の高い無機粒子の具体例としては、下記第1例〜第3例が挙げられる。トナー粒子は、各々、第1例〜第3例における熱伝導率の高い無機粒子のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。例えば、1個のトナー粒子は、第1例における熱伝導率の高い無機粒子と、第2例における熱伝導率の高い無機粒子とを含むことができる。また、トナーは、第1例における熱伝導率の高い無機粒子と第2例における熱伝導率の高い無機粒子とを含むトナー粒子と、第2例における熱伝導率の高い無機粒子と第3例における熱伝導率の高い無機粒子とを含むトナー粒子とを有することができる。
第1例:熱伝導率の高い無機粒子は、トナーコア内に存在し、トナーコアとシェル層との界面に接する。
第2例:熱伝導率の高い無機粒子は、シェル層内に存在する。このとき、熱伝導率の高い無機粒子は、トナーコアとシェル層との界面に接しても良いし、シェル層内であってトナーコアとシェル層との界面よりもトナー粒子の径方向外側に存在しても良い。また、熱伝導率の高い無機粒子のうち、トナー粒子の径方向外側に位置する部分が、シェル層から露出しても良い。
第3例:熱伝導率の高い無機粒子のうち、トナー粒子の径方向内側に位置する部分は、トナーコア内に存在し、トナー粒子の径方向外側に位置する部分は、シェル層内に存在する。
本実施形態では、シェル層の厚さは、1nm以上50nm以下であることが好ましい。ここで、下地凹部の深さは100nm以上である。そのため、シェル層の厚さが1nm以上50nm以下であれば、シェル層の厚さは下地凹部の深さよりも十分小さくなる。よって、表面凹部が形成され易くなる。
シェル層の厚さが下地凹部の深さよりも十分小さければ、表面凹部の深さは下地凹部の深さと概ね同じになると考えられる。そのため、下地凹部の深さが100nm以上であり、シェル層の厚さが1nm以上50nm以下である場合には、表面凹部の深さは100nm以上となる。また、表面凹部の十分な形成容易性を確保するためには、下地凹部の深さは3μm以下であることが好ましい。
なお、シェル層の厚さは、トナー粒子の径方向におけるシェル層の寸法を意味し、例えば実施例に記載の方法に従って測定される。
本実施形態では、トナーコアの表面領域のうち、シェル層が覆うトナーコアの面積の割合(以下、全体シェル被覆率と記載する)は、30%以上80%以下であることが好ましい。ここで、シェル層は、トナーコアよりも耐熱性に優れる。そのため、画像形成時にトナーに熱が加えられても、トナーコアの表面領域におけるシェル層の溶融を防止できる。
本実施形態では、下地凹部の内側領域のうち、シェル層が覆う内側領域の面積の割合(以下、凹部シェル被覆率と記載する)は、30%以上80%以下であることが好ましい。ここで、シェル層は、トナーコアよりも耐熱性に優れる。そのため、画像形成時にトナーに熱が加えられても、下地凹部の内側領域におけるシェル層の溶融を防止できる。
全体シェル被覆率(単位:%)は、式「全体シェル被覆率=100×シェル層が覆うトナーコアの表面領域の面積/トナーコアの表面全域の面積」で表される。全体シェル被覆率が100%であることは、トナーコアの表面全域がシェル層で覆われていることを意味する。
また、凹部シェル被覆率(単位:%)は、式「凹部シェル被覆率=100×シェル層が覆う下地凹部の内側領域の面積/下地凹部の内側領域全体の面積」で表される。凹部シェル被覆率が100%であることは、下地凹部の内側領域全域がシェル層で覆われていることを意味する。
全体シェル被覆率及び凹部シェル被覆率は、各々、以下に示す方法に従って求めることができる。まず、外添処理が施されていないトナー粒子(例えばトナー母粒子)をRu染色する。トナーコアの表面領域のうち、シェル層で被覆されている領域は、シェル層で被覆されていない領域に比べ、ルテニウムに染色され易い。染色されたトナー粒子を、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(例えば日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いて倍率50000倍で観察し、トナー粒子の反射電子像を得る。
画像解析ソフトウェア(例えば三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用い、得られた反射電子像に対し2値化処理を行う。そして、トナー粒子の反射電子像全体の面積SA1と、反射電子像において相対的に明るい領域の面積SB1とを求め、下記式に従って全体シェル被覆率(単位:%)を算出する。
全体シェル被覆率=100×面積SB1/面積SA1
観察倍率を50000倍から100000倍に変更することを除いては上記全体シェル被覆率の測定方法と同様にして、下地凹部の内側領域の面積SA2と、下地凹部の内側領域において相対的に明るい領域の面積SB2とを求める。そして、下記式に従って凹部シェル被覆率(単位:%)を算出する。
凹部シェル被覆率=100×面積SB2/面積SA2
以下、図1〜図3を参照しながら、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の構成の一例を説明する。図1は、トナー粒子に含まれるトナー母粒子10の断面構造の一例を示す図である。図2は、図1に示されるトナー母粒子10の表面領域の一部領域を示す平面図である。図3は、図2中のIII−III断面図である。
トナー母粒子10は、図1に示すように、トナーコア11と、トナーコア11の表面を覆うシェル層12とを備える。シェル層12は、トナーコア11の表面を部分的に覆っている。
図2及び図3に示すように、トナーコア11の表面には、下地凹部H11〜H14が形成されている。シェル層12は、トナーコア11の表面領域において、下地凹部H11〜H14の外側領域、下地凹部H12の内側領域、及び下地凹部H13の内側領域に存在している。しかし、シェル層12は、下地凹部H11の内側領域及び下地凹部H14の内側領域には存在していない。そのため、トナー母粒子10の表面には、下地凹部H11、下地凹部H12に対応する表面凹部H22、下地凹部H13に対応する表面凹部H23、及び下地凹部H14が形成されている。そして、トナー母粒子10の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数は、0.30個/μm2以上である。
図3を用いてトナー母粒子10をさらに説明する前に、図3について説明する。図3には、シェル層12として、シェル層12に含まれる樹脂粒子同士がつながって膜化された状態を記載している。しかし、シェル層12の一部分では、シェル層12に含まれる樹脂粒子が球形状のまま残っていても良い。また、シェル層12に含まれる樹脂粒子同士がつながって膜化される際に、その樹脂粒子が扁平状になることもある。シェル層12には、このような扁平状の樹脂粒子が含まれていても良い。
また、下地凹部H11に関して、範囲R1が下地凹部H11の内側領域の範囲を示し、深さD1が下地凹部H11の深さを示す。また、下地凹部H13に関して、範囲R3が下地凹部H13の内側領域の範囲を示し、深さD3が下地凹部H13に対応する表面凹部H23の深さを示す。
図3を用いてトナー母粒子10をさらに説明する。トナー母粒子10は、図3に示すように、熱伝導率の高い無機粒子15a〜15dをさらに含む。熱伝導率の高い無機粒子15a〜15dは、何れも、トナーコア11とシェル層12との界面13のうち下地凹部H12及び下地凹部H13の各々の内側領域に、存在する。
熱伝導率の高い無機粒子15aは、上記第1例における熱伝導率の高い無機粒子に相当する。具体的には、熱伝導率の高い無機粒子15aは、トナーコア11内に存在し、トナーコア11とシェル層12との界面13に接する。
熱伝導率の高い無機粒子15bは、上記第2例における熱伝導率の高い無機粒子に相当する。具体的には、熱伝導率の高い無機粒子15bは、シェル層12内に存在し、トナーコア11とシェル層12との界面13に接する。なお、熱伝導率の高い無機粒子15bは、トナーコア11とシェル層12との界面13に接しておらず、シェル層12内であってトナーコア11とシェル層12との界面13よりもトナー母粒子10の径方向外側X1に存在していても良い。また、熱伝導率の高い無機粒子15bでは、トナー母粒子10の径方向外側X1に位置する部分が、シェル層12から露出していても良い。
熱伝導率の高い無機粒子15c及び15dは、各々、上記第3例における熱伝導率の高い無機粒子に相当する。具体的には、熱伝導率の高い無機粒子15c及び15dの各々のうち、トナー母粒子10の径方向内側X2に位置する部分は、トナーコア11内に存在し、トナー母粒子10の径方向外側X1に位置する部分は、シェル層12内に存在する。熱伝導率の高い無機粒子15cは、シェル層12の表面12Aに接する。熱伝導率の高い無機粒子15dは、シェル層12の表面12Aに接しておらず、シェル層12の表面12Aよりもトナー母粒子10の径方向内側X2に存在する。以上、図1〜図3を用いて、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の構成の一例を説明した。
以上、本実施形態に係るトナーの構成、及び本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の構成の一例を説明した。なお、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添処理後のトナー粒子であっても良いし、トナー母粒子であっても良い。また、本実施形態に係るトナーは、外添処理後のトナー粒子とトナー母粒子との両方を含んでいても良い。
[本実施形態に係るトナーの製造]
本実施形態に係るトナーの製造方法としては下記第1〜第3の方法が考えられるが、後述する第3の方法に従って本実施形態に係るトナーを製造することが好ましい。以下、第1〜第3の方法を順に説明する。
(第1の方法)
第1の方法では、まず、トナーコアの表面に下地凹部を形成する。次に、下地凹部の内側領域に熱伝導率の高い無機粒子を固定する。続けて、下地凹部の内側領域及び下地凹部の外側領域にシェル層を形成する。
しかし、第1の方法では、本実施形態に係るトナーの製造は難しい。詳しくは、シェル層が下地凹部の内側領域に形成され難い。また、下地凹部の内側領域とシェル層との間に十分な接着強度を確保するためにシェル層の厚さを大きくすると、シェル層の形成後におけるトナー粒子の表面に凹部が形成され難い。つまり、表面凹部が形成され難い。
それだけでなく、下地凹部の内側領域(特に下地凹部の側壁)は傾斜しているため、熱伝導率の高い無機粒子を下地凹部の内側領域に固定することは難しい。そして、熱伝導率の高い無機粒子が下地凹部の内側領域に十分に固定されなければ、シェル層の形成中に熱伝導率の高い無機粒子が移動することがある。そのため、製造されたトナー粒子では、熱伝導率の高い無機粒子がトナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に存在しないことがある。
(第2の方法)
第2の方法では、まず、トナーコアの表面領域の一部分に、熱伝導率の高い無機粒子を固定する。次に、トナーコアの表面に、シェル層を形成する。続けて、トナーコアの表面領域のうち熱伝導率の高い無機粒子が固定された部分に、下地凹部を形成する。
しかし、第2の方法であっても、本実施形態に係るトナーの製造は難しい。詳しくは、シェル層を形成した後に下地凹部を形成するため、下地凹部の形成時にシェル層が剥離することがある。また、トナーコアは球体であるため、トナーコアの表面領域の一部分に熱伝導率の高い無機粒子を固定することは難しい。そして、熱伝導率の高い無機粒子がトナーコアの表面領域の一部分に十分に固定されなければ、シェル層の形成中又は下地凹部の形成中に熱伝導率の高い無機粒子が移動することがある。そのため、製造されたトナー粒子では、熱伝導率の高い無機粒子がトナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に存在しないことがある。
発明者は、本実施形態に係るトナーを容易に製造可能な方法について鋭意検討した。そして、以下に示す第3の方法に従ってトナーを製造すれば、トナーコアに対する下地凹部の形成と、熱伝導率の高い無機粒子の所定位置への配置と、シェル層の形成とが同時に進行するという結論に至った。
(第3の方法:本実施形態に係る静電潜像現像用トナーの製造方法)
つまり、本実施形態に係る静電潜像現像用トナーの製造方法は、トナーコアを準備する工程と、準備されたトナーコアとシェル材料とを含み、且つpHが3以上6以下である水性媒体を準備する工程と、準備された水性媒体の温度を所定の目標温度まで上昇させる昇温工程と、昇温工程の終了後、水性媒体の温度を目標温度に保つ工程と、を含む。トナーコアを準備する工程は、目標温度以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂と、無機材料を含有する無機粒子とを混合する第1混合工程と、第1混合工程において得られた混合物と、目標温度よりも高い軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂とを混合する第2混合工程とを含む。無機粒子の熱伝導率が、40W/m・K以上である。無機粒子の個数平均1次粒子径が、100nm以下である。昇温工程は、水性媒体の温度がpH変化温度に到達したときに、水性媒体のpHを8以上12以下に変える工程をさらに含む。pH変化温度は、目標温度よりも低い。
本実施形態に係るトナーの製造方法では、ポリエステル樹脂の加水分解に因る下地凹部の形成とシェル層の形成とが同時に進行する。そのため、下地凹部の外側領域だけでなく、下地凹部の内側領域にもシェル層が形成される。
また、本実施形態に係るトナーの製造方法では、軟化点の低い非結晶性ポリエステル樹脂と熱伝導率の高い無機粒子とを混合する。そのため、熱伝導率の高い無機粒子は、軟化点の低い非結晶性ポリエステル樹脂に分散される。ここで、軟化点の低い非結晶性ポリエステル樹脂は、軟化点の高い非結晶性ポリエステル樹脂に比べ、低温下で加水分解され易い。そのため、下地凹部は、軟化点の高い非結晶性ポリエステル樹脂よりも、軟化点の低い非結晶性ポリエステル樹脂に、形成され易い。また、非結晶性ポリエステル樹脂が加水分解される際、熱伝導率の高い無機粒子は加水分解及び溶解などされずに残存する。これらのことから、軟化点の低い非結晶性ポリエステル樹脂が加水分解されたために下地凹部が形成されると、軟化点の低い非結晶性ポリエステル樹脂に分散していた熱伝導率の高い無機粒子のうち、トナーコアの表面近傍に存在していた熱伝導率の高い無機粒子が、その下地凹部の内側領域において露出する。よって、製造されたトナーでは、熱伝導率の高い無機粒子は、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に、存在することとなる。以下、本実施形態に係るトナーの製造方法をより具体的に説明する。
(本実施形態に係るトナーの好ましい製造方法)
本実施形態に係るトナーの好ましい製造方法は、トナーコアの準備工程とシェル層の形成工程とを含む。本実施形態に係るトナーの好ましい製造方法は、ろ過工程、乾燥工程、及び外添工程のうちの少なくとも1つをさらに含んでも良い。
(トナーコアの準備)
トナーコアの準備工程は、第1混合工程と、第2混合工程とを含む。ここで、粉砕法又は凝集法によりトナーコアを製造すれば、トナーコアを容易に得ることができる。そのため、以下では、粉砕法によりトナーコアを製造する場合と、凝集法によりトナーコアを製造する場合とに分けて、トナーコアの準備工程を説明する。
(粉砕法によるトナーの製造)
(第1混合)
第1温度(後述の目標温度に相当する)以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂(以下、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂と記載する)と、熱伝導率の高い無機粒子とを混合する。このようにして得られた混合物(以下、第1混合物と記載する)では、熱伝導率の高い無機粒子がLTm−非結晶性ポリエステル樹脂に均一に分散している。LTm−非結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば軟化点80℃以下の非結晶性ポリエステル樹脂を使用でき、好ましくは軟化点70℃以下の非結晶性ポリエステル樹脂を使用できる。
(第2混合)
第1混合物と、第1温度よりも高い軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂(以下、HTm−非結晶性ポリエステル樹脂と記載する)とを混合する。このとき、第1混合物とHTm−非結晶性ポリエステル樹脂とを含む混合物に対し、内添剤をさらに混合しても良い。内添剤としては、例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉のうちの少なくとも1つを使用できる。HTm−非結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば軟化点100℃以上の非結晶性ポリエステル樹脂を使用できる。
(溶融混練、粉砕、分級)
得られた混合物(以下、第2混合物と記載する)を溶融混練した後、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。なお、次に示す方法に従ってトナーコアを製造しても良い。第1混合物を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕する。このようにして得られた粉砕物とHTm−非結晶性ポリエステル樹脂とを混合して、第2混合物を作製する。
(凝集法によるトナーコアの製造)
(第1混合、第2混合)
LTm−非結晶性ポリエステル樹脂と熱伝導率の高い無機粒子とを混合して、第1混合物を得る。得られた第1混合物とHTm−非結晶性ポリエステル樹脂とを混合して、第2混合物を得る。
(凝集)
得られた第2混合物、離型剤、及び着色剤の各々の微粒子を含む水性媒体中で、これらの粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、第2混合物、離型剤、及び着色剤を含む凝集粒子が形成される。得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナーコアの分散液が得られる。その後、トナーコアの分散液から、不要な物質を除去する。不要な物質としては界面活性剤が挙げられる。このようにして、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
(トナーコアの準備:材料の含有量)
トナーコアの製造方法に依らず、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂、及びHTm−非結晶性ポリエステル樹脂の各々の含有量は、次に示す含有量であることが好ましい。
トナーコアに含有される樹脂のうち、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂が占める割合は、20質量%以上であることが好ましい。これにより、第1混合物では、熱伝導率の高い無機粒子の含有量よりも、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂の含有量の方が、多くなり易い。なぜならば、熱伝導率の高い無機粒子は、100質量部のトナーコアに対し15質量部以下含有されていることが好ましいためである。そして、第1混合物において、熱伝導率の高い無機粒子の含有量よりもLTm−非結晶性ポリエステル樹脂の含有量の方が多ければ、熱伝導率の高い無機粒子は、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂に均一に分散し易くなる。より好ましくは、トナーコアに含有される樹脂のうち、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂が占める割合は、50質量%以上である。
さらに好ましくは、トナーコアに含有される樹脂のうち、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂が占める割合は、95質量%以下である。これにより、トナーコアに含有される樹脂がLTm−非結晶性ポリエステル樹脂とHTm−非結晶性ポリエステル樹脂とで構成される場合には、トナーコアに含有される樹脂のうち、HTm−非結晶性ポリエステル樹脂が占める割合は、5質量%以上となる。ここで、HTm−非結晶性ポリエステル樹脂は、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂に比べ、耐熱性に優れる。そのため、トナーコアに含有される樹脂のうち、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂が占める割合が、95質量%以下であれば、トナー粒子の耐熱保存性を高めることができる。例えば、複数のトナー粒子を高温保存した場合であっても、トナーコアの溶融を防止できるため、複数のトナー粒子の凝集を防止できる。
以上より、トナーコアに含有される樹脂のうち、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂が占める割合は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上95質量%以下である。そのため、トナーコアに含有される樹脂がLTm−非結晶性ポリエステル樹脂とHTm−非結晶性ポリエステル樹脂とで構成される場合には、トナーコアに含有される樹脂のうち、HTm−非結晶性ポリエステル樹脂が占める割合は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上80質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上50質量%以下である。
なお、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂に加えて、結晶性ポリエステル樹脂を使用しても良い。ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂よりも加水分解され易い。そのため、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂に加えて結晶性ポリエステル樹脂を使用すれば、トナーコアに含有される樹脂の加水分解がさらに促進する。よって、下地凹部の形成がさらに促進する。
(シェル層の形成)
シェル層の形成工程は、水性媒体の準備工程と、昇温工程と、保温工程とを含む。昇温工程は、pH変化工程を含む。
(シェル層の形成:水性媒体の準備)
水性媒体の準備工程では、まず、水性媒体を準備する。
水性媒体は、水を主成分とする媒体であり、例えば、純水、又は水と極性媒体との混合液である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては例えばアルコールを使用でき、アルコールとしては例えばメタノール又はエタノールを使用できる。水性媒体の沸点は約100℃であることが好ましい。より好ましくは、水性媒体としてイオン交換水を準備する。
続けて、酸性物質を用いて水性媒体のpHを所定のpHに調整する。例えば、塩酸を用いて水性媒体のpHを3以上6以下に調整する。続けて、pHが3以上6以下に調整された水性媒体に、上記の方法に従って得られたトナーコアと、シェル材料とを添加する。シェル材料の添加量を多くするほど、形成されるシェル層の厚さが厚くなる傾向がある。
トナーコア及びシェル材料を水性媒体に添加すると、水性媒体中で、トナーコアの表面にシェル材料の粒子が付着すると考えられる。シェル材料として非水溶性の熱可塑性樹脂からなる粒子を含むサスペンションを使用した場合、トナーコアの表面には、非水溶性の熱可塑性樹脂からなる粒子が付着すると考えられる。
また、水性媒体中でシェル層を形成することにより、シェル層形成時におけるトナーコア成分の溶解又は溶出を抑制できる。具体的には、水性媒体中でシェル層を形成することにより、シェル層形成時における結着樹脂及び離型剤の溶解又は溶出を抑制できる。
トナーコアの表面に均一にシェル材料を付着させるためには、シェル材料を含む液中にトナーコアを高度に分散させることが好ましい。液中にトナーコアを高度に分散させるために、液中に界面活性剤を含ませてもよいし、強力な攪拌装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスディスパーミックス」)を用いて液を攪拌してもよい。トナーコアがアニオン性を有する場合には、同一極性を有するアニオン界面活性剤を使用することで、トナーコアの凝集を抑制できる。アニオン界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、又は石鹸を使用できる。このようにして、トナーコアとシェル材料とを含み且つpHが3以上6以下である水性媒体が、準備される。
(シェル層の形成:昇温)
昇温工程では、上記の方法に従って準備された水性媒体の温度を所定の目標温度まで上昇させる。詳しくは、準備された水性媒体を攪拌しながら、その水性媒体の温度を所定の速度で所定の目標温度まで上昇させる。昇温開始時の水性媒体の温度は、例えば20℃以上35℃以下から選ばれる温度である。昇温開始時の水性媒体のpHは、例えば3以上6以下から選ばれるpHである。昇温の速度は、例えば0.1℃/分以上3.0℃/分以下から選ばれる速度であり、好ましくは0.1℃/分以上1.0℃/分以下から選ばれる速度である。昇温の目標温度は、昇温を止める温度であり、例えば60℃以上70℃以下から選ばれる温度である。
(昇温工程:pH変化)
上記昇温中であって水性媒体の温度がpH変化温度に到達すると、pH変化工程を行う。pH変化工程では、水性媒体の温度がpH変化温度に到達したときに、水性媒体のpHを8以上12以下に変える。例えば、塩基性物質を水性媒体に添加することにより、水性媒体のpHを酸性の値からアルカリ性の値に変えることができる。塩基性物質としては、例えば水酸化ナトリウムを使用できる。また、水性媒体のpHを短時間で変化させることが好ましく、例えば水性媒体のpHを10秒以内で変化させることが好ましい。
水性媒体の昇温中にpH変化工程を行うことにより下地凹部が形成されると考えられる。詳しくは、水性媒体の昇温中にpH変化工程を行うと、水性媒体の温度がある程度上昇した後に、その水性媒体のpHが酸性の値からアルカリ性の値に変化することとなる。これにより、トナーコアに含有されているLTm−非結晶性ポリエステル樹脂の加水分解が進行すると考えられ、よって、下地凹部が形成されると考えられる。
さらに、水性媒体の温度がLTm−非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点に近づくと、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂が軟化する。ここで、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点は、昇温の目標温度以下である。また、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂は、軟化によっても、加水分解され易いと考えられる。これらのことから、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂は、昇温中における水性媒体のpHの変化(具体的には、昇温中に、水性媒体のpHが酸性の値からアルカリ性の値に変化すること)だけでなく、昇温による軟化によっても、加水分解され易くなる。よって、下地凹部の形成が促進する。
LTm−非結晶性ポリエステル樹脂が加水分解されても、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂に分散されている熱伝導率の高い無機粒子は、加水分解及び溶解などされずに残存する。そのため、下地凹部が形成されると、トナーコアの表面近傍に存在していた熱伝導率の高い無機粒子が、その下地凹部の内側領域において露出する。その結果、熱伝導率の高い無機粒子は、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に、存在することとなる。
このように、本実施形態に係るトナーの製造方法では、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂の加水分解により、下地凹部の形成と、シェル層の形成と、熱伝導率の高い無機粒子の所定位置への配置とが同時に進行する。そのため、本実施形態に係るトナーを比較的容易に製造することができる。
上述したように、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂の加水分解により、下地凹部が形成される。よって、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂が加水分解される条件を制御すれば、トナーコアの表面領域の単位面積あたりの下地凹部の数を制御できる。ここで、表面凹部は、下地凹部に対応して、形成される。そのため、トナーコアの表面領域の単位面積あたりの下地凹部の数を0.30個/μm2以上とすることができれば、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数を0.30個/μm2以上とすることができる、と考えられる。
例えば、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂の材料、pH変化温度、及びpH変化工程を行った後の水性媒体のpH(以下、変化後のpHと記載する)のうちの少なくとも1つを制御することにより、トナーコアの表面領域の単位面積あたりの下地凹部の数を0.30個/μm2以上とすることができる。よって、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数を0.30個/μm2以上とすることができる。以下、pH変化温度及び変化後のpHをさらに説明する。
(pH変化工程:pH変化温度)
pH変化温度は、昇温開始時の水性媒体の温度よりも高いことが好ましい。これにより、トナーコアに含有される樹脂は、軟化し易くなるため、加水分解され易くなる。よって、下地凹部の形成が促進する。また、下地凹部の形成に伴って、トナーコアの表面近傍に存在していた熱伝導率の高い無機粒子が、その下地凹部の内側領域において露出する。
pH変化温度は、例えば30℃以上60℃以下から選ばれる温度であり、好ましくは(LTm−非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点)±10℃であり、より好ましくは30℃以上40℃以下から選ばれる温度である。これにより、トナーコアの表面領域の単位面積あたりの下地凹部の数が0.30個/μm2以上となり易いため、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数を0.30個/μm2以上とすることができる。また、LTm−非結晶性ポリエステル樹脂として、軟化点が下記関係式を満たすLTm−非結晶性ポリエステル樹脂を使用した場合にも、同様の効果が得られる。
pH変化温度=(LTm−非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点)±10℃
(pH変化工程:変化後のpH)
変化後のpHは8以上12以下である。変化後のpHが8以上であれば、トナーコアに含有される樹脂の加水分解が進行する。これにより、下地凹部が形成される。また、下地凹部の形成に伴って、トナーコアの表面近傍に存在していた熱伝導率の高い無機粒子が、その下地凹部の内側領域において露出する。変化後のpHが12超であれば、トナーコアに含有される樹脂の加水分解が過剰に進行する。そのため、下地凹部が過剰に形成されることとなり、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数が多くなり過ぎることがある。その結果、製造されたトナーでは、耐熱保存性の低下を引き起こすことがある。以上より、変化後のpHが8以上12以下であれば、トナーコアの表面領域の単位面積あたりの下地凹部の数が0.30個/μm2以上となり易く、よって、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数を0.30個/μm2以上とすることができる。好ましくは、変化後のpHは8以上11以下である。
(昇温工程:pH変化工程後)
pH変化工程が終了した後も水性媒体の昇温を止めず、水性媒体の温度を所定の目標温度まで上昇させる。これにより、下地凹部が形成されたトナーコアの表面がシェル材料で覆われることとなる。そのため、pH変化工程後の昇温時間を最適化することにより、トナーコアの表面におけるシェル材料の付着量が最適化され、よって、シェル層の厚さが最適化される。このことを踏まえて、pH変化工程後の昇温時間を設定することが好ましい。昇温の速度、pH変化温度、及び昇温の目標温度のうちの少なくとも1つを変更することにより、pH変化工程後の昇温時間が変更される。例えば、pH変化温度は昇温の目標温度よりも低いことが好ましい。pH変化温度と昇温の目標温度との差は、より好ましくは10℃以上であり、さらに好ましくは30℃以上である。
以上説明したように、シェル層の形成工程では、水性媒体の昇温中にpH変化工程を行い、pH変化工程後においても水性媒体の昇温を継続する。これにより、下地凹部を形成しつつ、下地凹部の内側領域を含むトナーコアの表面にシェル層が形成される。また、下地凹部が形成されることにより、トナーコアの表面近傍に存在していた熱伝導率の高い無機粒子が、下地凹部の内側領域において露出する。これにより、熱伝導率の高い無機粒子が、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に存在することとなる。
例えば、シェル材料としてスチレン−アクリル酸系樹脂からなる粒子を含むサスペンションを使用し、昇温工程における昇温開始時の水性媒体の温度を30℃とし、昇温工程における昇温の速度を1℃/分とした場合を例に挙げる。この場合、水性媒体の温度が40℃になる頃には、トナーコアの表面領域がシェル材料で十分に覆われると考えられる。また、水性媒体の温度が60℃になる頃には、シェル材料がトナーコアの表面に固定化され始めると考えられる。
(保温)
保温工程では、昇温工程が終了した後に、水性媒体の温度を昇温の目標温度に所定の時間、保つ。所定の時間は、例えば、30分間以上4時間以下から選ばれる時間である。水性媒体の温度を昇温の目標温度に保つことにより、トナーコアの表面に付着しているシェル材料とトナーコアとの間で反応が進行すると考えられる。シェル材料がトナーコアと結合することで、シェル層が形成される。詳しくは、トナーコアの表面でシェル材料の粒子が2次元的に連なることにより、粒状感のある膜(シェル層)が形成されると考えられる。このようにして、トナー母粒子の分散液が得られる。
(ろ過)
まず、得られたトナー母粒子の分散液に冷水を入れて、フラスコ内容物を常温(約25℃)まで冷却する。続けて、例えばブフナー漏斗を用いて、トナー母粒子の分散液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離され、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られる。
(洗浄、乾燥)
得られたウェットケーキ状のトナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥する。
(外添)
乾燥されたトナー母粒子と外添剤とを、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて混合する。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤が物理的結合する。こうして、トナー粒子を多数含むトナーが得られる。
なお、洗浄されたトナー母粒子を、スプレードライヤーを用いて乾燥させる場合には、外添剤の分散液をトナー母粒子に噴霧することが好ましい。これにより、洗浄されたトナー母粒子の乾燥と外添処理とを同時に行うことができる。
また、上記トナーの製造方法の内容及び順序は、各々、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更できる。例えば、シェル材料は、一度に水性媒体に添加されてもよいし、複数回に分けて水性媒体に添加されてもよい。外添工程の後で、トナーを篩別してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品をそのまま材料として用いることができる場合には、市販品を用いることで、その材料を調製する工程を割愛できる。
また、トナーコアの材料とシェル材料とは、各々、下記[トナーコア、シェル層、及び外添剤の各々の材料の例示]に記載の材料に限定されない。例えば、下記[トナーコア、シェル層、及び外添剤の各々の材料の例示]に記載の材料の誘導体をトナーコアの材料又はシェル材料として使用してもよい。モノマーに代えてプレポリマーを使用してもよい。また、下記[トナーコア、シェル層、及び外添剤の各々の材料の例示]に記載の材料を得るために、原料として、その化合物の塩、エステル、水和物、又は無水物を使用してもよい。
また、効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
[トナーコア、シェル層、及び外添剤の各々の材料の例示]
以下、トナーコア、シェル層、及び外添剤の各々の材料の具体例について、順に説明する。
(トナーコア)
トナーコアは、結着樹脂を含有する。トナーコアは、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉のうちの少なくとも1つをさらに含有しても良い。
(トナーコア:結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。
また、結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(具体的には、水酸基価、酸価、ガラス転移点、又は軟化点)を調整できる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなる。また、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の酸価及び水酸基価の少なくとも一方が10mgKOH/g以上であることが好ましい。
(結着樹脂:ポリエスエル樹脂)
トナーコアは、以下に示すポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
ポリエステル樹脂は、1種以上のアルコールと1種以上のカルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示す2価アルコール又は3価以上のアルコールを好適に使用できる。2価アルコールとしては、例えば、ジオール類又はビスフェノール類を使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示す2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。アルコール及びカルボン酸のうちの少なくとも1つが分子内に芳香環を有する場合には、合成されたポリエステル樹脂は結晶性を示し易くなる。一方、アルコール及びカルボン酸の何れもが分子内に芳香環を有さない場合には、合成されたポリエステル樹脂は非結晶性を示し易くなる。また、合成されたポリエステル樹脂の結晶性が低ければ、そのポリエステル樹脂の軟化点が低くなる傾向にある。
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸等)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
トナーコアが非結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合、非結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は1000以上2000以下であることが好ましい。これにより、トナーコアの強度及びトナーの定着性が向上する。また、非結晶性ポリエステル樹脂の分子量分布は9以上21以下であることが好ましい。ここで、非結晶性ポリエステル樹脂の分子量分布とは、数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率(Mw/Mn)を意味する。
トナーコアが非結晶性ポリエステル樹脂に加えて結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合、トナーコアは、結晶性指数が0.98以上1.20以下である結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。これにより、トナーコアに含有されるポリエステル樹脂の加水分解がさらに促進する。よって、下地凹部の形成がより一層促進する。ここで、結晶性指数は、融点(Mp)に対する軟化点(Tm)の比率(=Tm/Mp)に相当する。ポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂を合成するための材料の種類又は量を変更することで、調整できる。例えば、アルコール及びカルボン酸のうちの少なくとも1つの種類又は量を変更することにより、ポリエステル樹脂の結晶性指数を調整できる。なお、非結晶性ポリエステル樹脂については、明確なMpを測定できないことが多い。
(結着樹脂:熱可塑性樹脂)
トナーコアは、ポリエスエル樹脂に加え、以下に示す熱可塑性樹脂をさらに含有しても良い。
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂を好適に使用できる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体も、トナー粒子を構成する熱可塑性樹脂として好適に使用できる。例えば、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂も、トナーコアを構成する熱可塑性樹脂として好適に使用できる。
アクリル酸系樹脂としては、例えば、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体を使用できる。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を使用できる。ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂を使用できる。
スチレン−アクリル酸系樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためには、例えば以下に示すスチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。アクリル酸系モノマーを用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、水酸基を有するモノマーを用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂に水酸基を導入できる。水酸基を有するモノマーとしては、例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを使用できる。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、アルキルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、又はp−クロロスチレンが挙げられる。アルキルスチレンとしては、例えば、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレンが挙げられる。
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
(トナーコア:着色剤)
着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(トナーコア:離型剤)
離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(トナーコア:電荷制御剤)
電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
(トナーコア:磁性粉)
磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属もしくはその合金、強磁性金属酸化物、又は強磁性化処理が施された材料を好適に使用できる。強磁性金属としては、例えば、鉄、コバルト、又はニッケルを使用できる。強磁性金属酸化物としては、例えば、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロムを使用できる。強磁性化処理としては、例えば、熱処理が挙げられる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するためには、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でトナーコアの表面にシェル層を形成する場合に、トナーコアの表面に金属イオンが溶出すると、トナーコア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナーコア同士の固着を抑制できると考えられる。
(シェル層)
シェル層は、粒状感のない膜であってもよいし、粒状感のある膜であってもよい。シェル層を形成するための材料として樹脂粒子を使用した場合、樹脂粒子が完全に溶けて膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、粒状感のない膜が形成されると考えられる。他方、樹脂粒子が完全に溶けずに膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、樹脂粒子が2次元的に連なった形態を有する膜(粒状感のある膜)が形成されると考えられる。
(シェル層:熱可塑性樹脂)
シェル層は、上記(結着樹脂:ポリエスエル樹脂)に記載のポリエステル樹脂、及び上記(結着樹脂:熱可塑性樹脂)に記載の熱可塑性樹脂のうちの少なくとも1つを含有することが好ましい。
シェル層は、熱硬化性樹脂をさらに含有しても良い。シェル層が含有する熱硬化性樹脂としては、例えば、以下に示す熱硬化性樹脂を使用できる。
熱硬化性樹脂の好適な例としては、アミノアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、又はキシレン系樹脂が挙げられる。アミノアルデヒド樹脂は、アミノ基を有する化合物とアルデヒドとの縮重合により生成する樹脂である。ここで、アルデヒドとしては例えばホルムアルデヒドを使用できる。アミノアルデヒド樹脂の例としては、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、スルホンアミド系樹脂、グリオキザール系樹脂、グアナミン系樹脂、又はアニリン系樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂としては、例えば、マレイミド重合体又はビスマレイミド重合体を使用できる。
シェル層の膜質を向上させるために、シェル層に含有される樹脂に、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、又はメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルに由来する1種以上のアルコール性水酸基を導入してもよい。
トナーの帯電安定性を向上させるためには、シェル層が、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体を含有することが特に好ましい。スチレン系モノマーとしては、例えばスチレンを使用できる。アクリル酸系モノマーとしては、例えばアクリル酸エステルを使用できる。
シェル層に電荷制御剤を含有させることにより、トナーの帯電安定性を向上させても良い。シェル層に電荷制御剤を含有させるためには、シェル層を構成する樹脂中に電荷制御剤(例えば、4級アンモニウム塩)に由来する繰返し単位を組み込んでもよいし、シェル層を構成する樹脂中に帯電粒子を分散させてもよい。トナー粒子を正帯電させるためには、シェル層が、正帯電性を有する樹脂粒子を含むことが好ましい。
(外添剤)
外添剤は、例えばトナー粒子の流動性又はトナーの取扱性を向上させるために使用される。例えば、外添剤の量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、外添剤の粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
外添剤としては、シリカ粒子、又は金属酸化物の粒子を好適に使用できる。金属酸化物は、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウムであることが好ましい。1種類の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
[本実施形態に係るトナーの用途の例示]
本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態のトナーは、1成分現像剤として使用してもよいし、2成分現像剤に含まれるトナーとして使用してもよい。
(本実施形態に係るトナーの用途の例示:2成分現像剤)
本実施形態のトナーが2成分現像剤に含まれるトナーとして使用される場合には、混合装置を用いてトナーとキャリアとを混合することにより2成分現像剤を調製できる。混合装置としては、例えばボールミルを使用できる。
キャリアとしてはフェライトキャリアを使用することが好ましい。これにより、高画質の画像を形成できる。キャリアとしては、キャリアコアと、キャリアコアを被覆する樹脂層とを備える磁性キャリア粒子を使用することがより好ましい。これにより、長期にわたって高画質の画像を形成できる。キャリア粒子に磁性を付与するためには、磁性材料でキャリア粒子を形成してもよいし、磁性粒子を分散させた樹脂でキャリア粒子を形成してもよい。また、キャリアコアを被覆する樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。なお、2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により正に帯電する。
実施例では、トナーT−1〜T−11を製造し、製造されたトナーT−1〜T−11を評価した。表1には、トナーT−1〜T−11の各々のトナー粒子に含有される無機粒子の物性を記す。複数の無機粒子で構成された粉体は、表1に示す「粒子径」±1nmの粒子径(円相当径)を有する無機粒子を、85個数%以上の割合で含んでいた。また、表2には、トナーT−1〜T−11の各々の製造条件、具体的にはシェル層を形成する際の昇温条件を記す。なお、表1において、「粒子径」は、無機粒子の個数平均1次粒子径を意味する。また、「含有量」とは、100質量部のトナーコアに対する無機粒子の含有量を意味する。表2において、トナーT−11の目標pHにおける「−」は、シェル層を形成する際の昇温工程においてフラスコ内容物のpHを変化させなかったことを意味する。
Figure 0006558335
Figure 0006558335
以下では、まず、トナーT−1〜T−11の製造方法を説明する。次に、トナーT−1〜T−11の各々に含まれるトナー粒子の物性値の測定方法を説明する。続いて、トナーT−1〜T−11の評価方法、及びその評価結果を説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて測定された1次粒子の円相当径の個数平均値である。また、Tg(ガラス転移点)及びTm(軟化点)は、各々、次に示す方法で測定した。
<Tgの測定方法>
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、試料(例えば、樹脂)の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を求めた。続けて、得られた吸熱曲線から試料のTg(ガラス転移点)を読み取った。得られた吸熱曲線中の比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度が、試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTm(軟化点)を読み取った。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
[トナーT−1の製造]
(トナーコアの作製)
92.5質量部の低粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)と、7.5質量部の窒化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1360HK」)とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて回転速度2400rpmで混合した。このようにして得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度160rpm、設定温度範囲(シリンダー温度範囲)を40℃以上80℃以下の条件で、溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却し、冷却された溶融混練物を粉砕機(旧東亜機械製作所製「ロートプレックス16/8型」)を用いて粗粉砕した。このようにして、窒化アルミニウム粒子を含む粗粉砕物を得た。
66質量部の粗粉砕物(窒化アルミニウム粒子を含む粗粉砕物)と、9質量部の中粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=53℃、Tm=84℃)と、12質量部の高粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=71℃、Tm=120℃)と、5質量部のカルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)と、8質量部の着色剤(DIC株式会社製「KET BLUE 111」、フタロシアニンブルー)とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて回転速度2400rpmで混合した。得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度160rpm、設定温度範囲(シリンダー温度範囲)80℃以上130℃以下の条件で、溶融混練した。続けて、得られた溶融混練物を冷却し、冷却された溶融混練物を粉砕機(旧東亜機械製作所製「ロートプレックス16/8型」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6μmのトナーコアが得られた。得られたトナーコアは、100質量部のトナーコアに対し、5質量部の窒化アルミニウム粒子を含んでいた。
(シェル材料の調製)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットした。続けて、フラスコ内に、875gのイオン交換水(温度:30℃)と、75gのアニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)とを入れた。その後、フラスコ内容物を攪拌しながら、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に上昇させた。続けて、80℃のフラスコ内容物を攪拌しながら、2種類の液(第1の液及び第2の液)を各々5時間かけてフラスコ内に滴下した。第1の液は、17gのスチレンと3gのアクリル酸ブチルとの混合液であった。第2の液は、0.5gの過硫酸カリウムを30gのイオン交換水に溶かした溶液であった。
続けて、フラスコ内の温度を80℃に保ちつつ、フラスコ内容物をさらに2時間攪拌して、フラスコ内容物の重合反応を十分に進行させた。その結果、疎水性の熱可塑性樹脂からなる粒子を含むサスペンション(固形分濃度3.6質量%)が得られた。得られたサスペンションに含まれる樹脂粒子に関して、個数平均粒子径は32nmであり、Tgは71℃であった。
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内に300gのイオン交換水を入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内容物のpHを4に調整した。続けて、フラスコ内に、30gのシェル材料(前述の手順で調製した疎水性熱可塑性樹脂粒子のサスペンション)を添加して、シェル材料の分散液を得た。
(シェル層の形成:昇温)
続けて、得られたシェル材料の分散液に、300gのトナーコア(前述の手順で作製したトナーコア)を添加し、フラスコ内容物を回転速度200rpmで1時間攪拌した。その後、フラスコ内に300gのイオン交換水をさらに添加した。続けて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら、フラスコ内容物を昇温させた。昇温開始時において、フラスコ内容物の温度(表2には初期の温度と記載)は30℃、フラスコ内容物のpH(表2には初期のpHと記載)は4であった。また、昇温条件に関して、目標温度は70℃、昇温速度は1.0℃/分であった。
上記昇温中に、フラスコ内容物の温度が35℃に到達した時点で、フラスコ内に水酸化ナトリウム水溶液を加えてフラスコ内容物のpHを9に変えた。つまり、トナーT−1の製造時にはpH変化温度を35℃とした。pH変化時もpH変化後も上記昇温は止めずに、目標温度(70℃)まで昇温を続けた。
上記昇温によりフラスコ内容物の温度が70℃に到達したら、フラスコ内容物の温度をその温度(70℃)に保ち、温度70℃かつ回転速度100rpmの条件で、フラスコ内容物をさらに1時間攪拌した。その後、フラスコ内に冷水を入れて、フラスコ内容物を常温(約25℃)まで急冷した。その結果、トナー母粒子を含む分散液が得られた。
(洗浄)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)した。その結果、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られた。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(乾燥)
続けて、得られたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、乾燥したトナー母粒子(粉体)が得られた。
(外添)
100質量部のトナー母粒子(上記のようにして得たトナー母粒子)と、1.8質量部の疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200H」、内容:トリメチルシリル基とアミノ基とで表面修飾した乾式シリカ粒子、BET比表面積:約150m2/g、個数平均1次粒子径:約12nm)とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子)を付着させた。その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーT−1)が得られた。トナーT−1に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナーT−2の製造]
以下に示す点を除いてはトナーT−1の製造方法に従って、トナーT−2を製造した。詳しくは、上記(トナーコアの作製)では、92.5質量部の低粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)と7.5質量部の窒化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1360HK」)とを混合する代わりに、85質量部の低粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)と15質量部の窒化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1360HK」)とを混合した。そのため、得られたトナーコアは、100質量部のトナーコアに対し、10質量部の窒化アルミニウム粒子を含んでいた。また、トナーT−2に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナーT−3の製造]
以下に示す点を除いてはトナーT−1の製造方法に従って、トナーT−3を製造した。詳しくは、上記(トナーコアの作製)では、92.5質量部の低粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)と7.5質量部の窒化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1360HK」)とを混合する代わりに、99.25質量部の低粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)と0.75質量部の窒化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1360HK」)とを混合した。そのため、得られたトナーコアは、100質量部のトナーコアに対し、0.5質量部の窒化アルミニウム粒子を含んでいた。また、トナーT−3に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナーT−4の製造]
窒化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1360HK」)の代わりに窒化ホウ素粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1522DX」)を用いたことを除いてはトナーT−1の製造方法に従って、トナーT−4を製造した。トナーT−4に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナーT−5の製造]
窒化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1360HK」)の代わりに酸化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1319NH」)を用いたことを除いてはトナーT−1の製造方法に従って、トナーT−5を製造した。トナーT−5に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナーT−6の製造]
以下に示す点を除いてはトナーT−1の製造方法に従って、トナーT−6を製造した。詳しくは、上記(シェル層の形成:昇温)では、昇温の目標温度を65℃とし、昇温速度を0.5℃/分とした。また、フラスコ内容物の温度が35℃に到達した時点で、フラスコ内に水酸化ナトリウム水溶液を加えてフラスコ内容物のpHを11に変えた。製造されたトナーT−6に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナーT−7の製造]
窒化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1360HK」)の代わりに炭化珪素粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「6820HK」)を用いたことを除いてはトナーT−1の製造方法に従って、トナーT−7を製造した。トナーT−7に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナーT−8の製造]
窒化アルミニウム粒子を添加することなくトナーコアを作製したことを除いてはトナーT−1の製造方法に従って、トナーT−8を製造した。トナーT−8に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナーT−9の製造]
窒化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1360HK」)の代わりにシリカ粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「6808NM」)を用いたことを除いてはトナーT−1の製造方法に従って、トナーT−9を製造した。トナーT−9に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナーT−10の製造]
窒化アルミニウム粒子(SkySpring Nanomaterials, Inc.製「1360HK」)の代わりに窒化アルミニウム粒子(Sigma Aldrich, Inc.製「593044」)を用いたことを除いてはトナーT−1の製造方法に従って、トナーT−10を製造した。トナーT−10に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナーT−11の製造]
上記(シェル層の形成:昇温)において水酸化ナトリウム水溶液をフラスコに添加しなかったことを除いてはトナーT−1の製造方法に従って、トナーT−11を製造した。トナーT−11に含まれるトナー粒子では、厚さが20nmのシェル層がトナーコアの表面領域に形成されていた。
[トナー粒子の物性値の測定方法]
(トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数の測定)
上記のようにして得られたトナーT−1〜T−11に関して、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数を測定した。測定対象は、トナーT−1〜T−11の各々に含まれているトナー母粒子とした。つまり、トナー母粒子に対して外添処理を行う前に、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数を求めた。詳しくは、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いてトナー母粒子の表面全域を観察した。1つの試料につき、20個のトナー母粒子を観察した。そして、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数(個数平均値)を求めた。結果を表3に示す。
(無機粒子の位置の評価)
上記のようにして得られたトナーT−1〜T−11に関して、無機粒子が、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に存在するか否かを調べた。測定対象は、トナーT−1〜T−11の各々に含まれているトナー母粒子とした。詳しくは、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いてトナー母粒子の表面全域を観察した。そして、無機粒子が所定の箇所に存在するか否かを調べた。結果を表3に示す。
なお、本発明者は、トナーT−1〜T−7では、各々、トナー粒子が下記無機粒子IP−1〜IP−3のうちの少なくとも1つを含むことを確認している。
無機粒子IP−1は、トナーコア内に存在し、トナーコアとシェル層との界面に接していた。
無機粒子IP−2は、シェル層内に存在していた。詳しくは、無機粒子IP−2は、トナーコアとシェル層との界面に接している場合もあれば、トナーコアとシェル層との界面よりもトナー粒子の径方向外側に存在している場合もあった。さらには、無機粒子IP−2のうち、トナー粒子の径方向外側に位置する部分が、シェル層から露出している場合もあった。
無機粒子IP−3では、トナー粒子の径方向内側に位置する部分がトナーコア内に存在し、トナー粒子の径方向外側に位置する部分がシェル層内に存在していた。
(シェル層の厚さの測定)
上記のようにして得られたトナーT−1〜T−11に関して、シェル層の厚さを測定した。測定対象は、トナーT−1〜T−11の各々に含まれているトナー母粒子とした。詳しくは、まず、透過電子顕微鏡(TEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7100FA」)を用いて、トナー母粒子の断面TEM写真を撮影した。次に、得られたトナー母粒子の断面TEM写真を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析した。詳しくは、トナー母粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引いた。その2本の直線の各々において、トナーコアとシェル層との界面(トナーコアの表面に相当)からシェル層の表面までの長さを測定した。このようにして測定された4箇所の長さの平均値を、1個のトナー母粒子が備えるシェル層の厚さとした。このようなシェル層の厚さの測定を複数のトナー母粒子に対して行い、複数のトナー母粒子(測定対象)が備えるシェル層の厚さの平均値を求めた。このようにして求められたシェル層の厚さの平均値を「シェル層の厚さ」とした。
トナー母粒子の断面TEM写真においてトナーコアとシェル層との境界が不明瞭である場合には、トナー母粒子の断面TEM写真を、電子エネルギー損失分光法(EELS)検出器(ガタン社製「GIF TRIDIEM(登録商標)」)と画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)とを用いて解析した。これにより、トナー母粒子の断面TEM写真においてトナーコアとシェル層との境界が明瞭となった。
[トナーの評価方法]
(最低定着温度の測定)
最低定着温度とは、低温オフセットが発生しなかったと判断された場合の定着温度のうちの最低温度を意味する。最低定着温度が130℃以下であれば、低温オフセットの発生が防止され、且つトナーの低温定着性に優れる、と言える。
本評価では、評価機として、プリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)の改造機を使用した。使用した評価機では、記録用紙へのトナーの載せ量と、記録用紙に載せられたトナーを記録用紙に定着させる際の温度(以下、定着温度と記載する)とを調節できた。
測定対象としては、上記のようにして得られたトナーT−1〜T−11の各々を含む2成分現像剤を使用した。2成分現像剤としては、次に示す方法に従って調製されたものを使用した。トナー濃度が10質量%となるように、上記のようにして得られたトナーT−1〜T−11の各々とフェライトキャリア(パウダーテック社製「F−150」)とを混合した。
(最低定着温度の測定:予備試験)
最低定着温度の測定では、予備試験を行った後、評価試験を行った。予備試験では、最低定着温度が含まれる温度範囲を特定した。詳しくは、まず、2成分現像剤を評価機の現像装置にセットした。記録用紙へのトナーの載せ量が0.4mg/cm2となるように、評価機のバイアスを調整した。線速200mm/秒で印刷用紙(90g/m2の印刷用紙)を搬送しながら、印刷用紙に未定着のソリッド画像を形成した。
未定着のソリッド画像が形成された印刷用紙を評価機の定着装置に通した。このとき、評価機の定着装置の温度(具体的には、評価機の定着装置に含まれる定着ローラーの温度)を90℃から5℃ずつ上昇させることにより、定着温度を90℃以上200℃以下の温度範囲で5℃ずつ上昇させた。このようにして、各定着温度で定着されたソリッド画像(23種類)を得た。
得られたソリッド画像の各々を用いて折擦り試験を行うことにより、低温オフセットが発生しているか否かを判断した。詳しくは、ソリッド画像が定着された記録用紙を、ソリッド画像を定着した面が内側となるように、半分に折り曲げた。布帛で被覆した1kgの分銅を用いて、記録用紙の折り目の上を5往復摩擦した。その後、記録用紙を広げ、記録用紙の折り曲げ部のうちソリッド画像が定着された部分におけるトナーの剥がれの長さ(以下、剥がれ幅と記載する)を測定した。剥がれ幅が1.0mm未満であった場合には低温オフセットが発生しなかったと判断し、剥がれ幅が1.0mm以上であった場合には低温オフセットが発生したと判断した。そして、最低定着温度は、低温オフセットが発生したと判断された場合の定着温度のうちの最高温度から、低温オフセットが発生しなかったと判断された場合の定着温度のうちの最低温度までの範囲内に、存在する、と判断した。
(最低定着温度の測定:評価試験)
評価試験では、低温オフセットが発生した場合の定着温度を特定した。詳しくは、評価機の定着装置の温度を1℃ずつ上昇させることにより、定着温度を、低温オフセットが発生したと判断された場合の定着温度のうちの最高温度から、低温オフセットが発生しなかったと判断された場合の定着温度のうちの最低温度まで変化させた。このようにして、各定着温度で定着されたソリッド画像(6種類)を得た。得られたソリッド画像の各々を用いて上述の折擦り試験を行うことにより、低温オフセットが発生しているか否かを判断した。このようにして、最低定着温度を求めた。
結果を表3に示す。最低定着温度が130℃以下であれば、良いと評価した。
(彩度の変動値の測定)
評価機としては、プリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)を使用した。使用した評価機では、記録用紙へのトナーの載せ量が0.4mg/cm2となるように、バイアスが調整されていた。
測定対象としては、上記のようにして得られたトナーT−1〜T−11の各々を含む2成分現像剤を使用した。2成分現像剤としては、次に示す方法に従って調製されたものを使用した。トナー濃度が10質量%となるように、上記のようにして得られたトナーT−1〜T−11の各々とフェライトキャリア(パウダーテック社製「F−150」)とを混合した。
まず、2成分現像剤を評価機の現像装置にセットした。そして、線速200mm/秒で印刷用紙(90g/m2の印刷用紙)を搬送しながら、印刷用紙に未定着のソリッド画像を形成した。未定着のソリッド画像が形成された印刷用紙を評価機の定着装置に通し、定着温度140℃で未定着のソリッド画像を印刷用紙に定着させた。このようにして、140℃で定着されたソリッド画像を得た。
得られたソリッド画像について、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて、彩度を測定した。詳しくは、得られたソリッド画像の任意の10箇所において彩度を測定した。そして、測定された彩度のうち、最小彩度と最大彩度とを下記式に代入し、彩度の変動値を算出した。
彩度の変動値=100×最小彩度/最大彩度
結果を表3に示す。彩度の変動値が95%以上であれば、良いと評価した。詳しくは、彩度の変動値が95%以上であれば、トナーは帯電安定性に優れると考えられる。その理由は次に示す通りである。トナーが帯電安定性に優れる場合には、トナーの帯電量は画像形成中においても適正な範囲内に維持される。そのため、帯電安定性に優れたトナーを用いて画像形成を行えば、画像形成後においてもトナーが画像形成装置の構成部材の表面に付着したままとなることを防止できる。よって、印刷用紙には、設計時のトナー量を有する画像が形成されることとなる。したがって、彩度の変動値が高くなる。例えば、彩度の変動値が95%以上となる。
(耐熱保存性の評価)
上記のようにして得られたトナーT−1〜T−11に関して、耐熱保存性を評価した。詳しくは、トナー2gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて密閉し、密閉された容器を、60℃に設定された恒温槽内に3時間静置した。その後、恒温槽から取り出したトナーを室温(約25℃)まで冷却して、評価用トナーを得た。
続けて、得られた評価用トナーを、質量既知の100メッシュ(目開き150μm)の篩に載せた。そして、評価用トナーを含む篩の質量を測定し、篩別前のトナーの質量を求めた。続けて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)に上記篩をセットし、パウダーテスターのマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5の条件で30秒間、篩を振動させ、評価用トナーを篩別した。篩別後、篩を通過しなかったトナーの質量を測定した。そして、篩別前のトナーの質量と、篩別後のトナーの質量とに基づいて、次の式に従ってトナー凝集度(単位:質量%)を求めた。なお、下記式における「篩別後のトナーの質量」は、篩を通過しなかったトナーの質量であり、篩別後に篩上に残留したトナーの質量である。
トナー凝集度=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
結果を表3に示す。トナー凝集度が50質量%以下であれば、普通と評価した。トナー凝集度が40質量%以下であれば、良いと評価した。
Figure 0006558335
表3において、「開口数」には、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数を記している。「無機粒子」では、無機粒子が、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に存在した場合には、「有」と記している。一方、無機粒子が、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域に存在しなかった場合には、「無」と記している。
また、「定着温度」には、最低定着温度を記している。「彩度」には、彩度の変動値(単位:%)を記している。「凝集度」には、トナー凝集度を記している。
トナーT−1〜T−7(実施例1〜7に係るトナー)は、各々、前述の基本構成を有していた。詳しくは、実施例1〜7に係るトナーは、各々、トナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含んでいた。トナーコアの表面には、複数の第1凹部が形成されていた。シェル層は、トナーコアの表面領域における、第1凹部の内側領域と第1凹部の外側領域との両方に存在していた。トナー粒子の表面には、第1凹部に対応する第2凹部が形成されていた。トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの第2凹部の数は、0.30個/μm2以上であった。トナーコアとシェル層との界面のうち第1凹部の内側領域には、無機材料を含有する無機粒子が複数存在していた。無機粒子の熱伝導率が、40W/m・K以上であった。無機粒子の個数平均1次粒子径が、100nm以下であった。
表3に示されるように、トナーT−1〜T−7では、各々、低温定着性に優れるとともに、低温オフセットの発生が防止された。それだけでなく、トナーは帯電安定性に優れ、また、トナー凝集度が低く抑えられた。
トナーT−8(比較例1に係るトナー)では、トナーT−1〜T−7と比較して、最低定着温度が高かった。このような結果が得られた理由としては、次に示すことが考えられる。トナーT−8では、窒化アルミニウム粒子、窒化ホウ素粒子、酸化アルミニウム粒子、及び炭化珪素粒子の何れを使用することなくトナーコアを製造した。そのため、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域には、窒化アルミニウム粒子、窒化ホウ素粒子、酸化アルミニウム粒子、及び炭化珪素粒子の何れも存在しなかった(表3参照)。
トナーT−9(比較例2に係るトナー)では、トナーT−1〜T−7と比較して、最低定着温度が高かった。このような結果が得られた理由としては、次に示すことが考えられる。トナーT−9で使用された無機粒子の熱伝導率は、トナーT−1〜T−7で使用された無機粒子の熱伝導率に比べ、非常に小さかった。
トナーT−10(比較例3に係るトナー)では、トナーT−1〜T−7と比較して、最低定着温度が高かった。このような結果が得られた理由としては、次に示すことが考えられる。トナーT−10で使用された窒化アルミニウム粒子の個数平均1次粒子径は、トナーT−1〜T−7で使用された無機粒子の個数平均1次粒子径に比べ、大きかった。そのため、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域における窒化アルミニウム粒子の存在量の確保が難しかった。その上、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数は、トナーT−10の方が、トナーT−1〜T−7よりも、少なかった(表3参照)。ここで、表面凹部は、下地凹部に対応して、トナー粒子の表面に形成されている。そのため、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数が少なければ、トナーコアの表面領域の単位面積あたりの下地凹部の数は少なくなる。このことによっても、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域における窒化アルミニウム粒子の存在量の確保が難しかった。
トナーT−11(比較例4に係るトナー)では、トナーT−1〜T−7と比較して、最低定着温度が高かった。このような結果が得られた理由としては、次に示すことが考えられる。トナーT−11では、シェル層を形成する際の昇温工程において、水酸化ナトリウム水溶液をフラスコに添加しなかった。そのため、トナーコアの表面には下地凹部が形成され難かった。よって、トナーコアとシェル層との界面のうち下地凹部の内側領域には、窒化アルミニウム粒子は存在しなかった(表3参照)。また、表面凹部が形成され難かった(表3参照)。
また、トナーT−1〜T−6(実施例1〜6に係るトナー)では、トナーT−7(実施例7に係るトナー)と比較して、彩度の変動値がさらに高かった。このような結果が得られた理由としては、次に示すことが考えられる。トナーT−1〜T−6の各々で使用された無機粒子の体積固有抵抗値は1.0×1014Ω・cm以上であったのに対し、トナーT−7で使用された無機粒子の体積固有抵抗値は1.0×108Ω・cmであった。これにより、トナーT−1〜T−6では、トナーT−7に比べ、トナーの電気抵抗の低下をさらに防止できるため、トナーの帯電量の低下をさらに防止でき、よって、帯電安定性により一層優れた。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、例えば、複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
10 トナー母粒子
11 トナーコア
12 シェル層
12A 表面
13 界面
15a〜15d 無機粒子
H11〜H14 下地凹部
H22、H23 表面凹部

Claims (3)

  1. トナーコアと、前記トナーコアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記トナーコアの表面には、複数の第1凹部が形成され、
    前記シェル層は、前記トナーコアの表面領域における、前記第1凹部の内側領域と前記第1凹部の外側領域との両方に存在し、
    前記トナー粒子の表面には、前記第1凹部に対応する第2凹部が形成されており、
    前記第1凹部の深さ及び前記第2凹部の深さは、いずれも100nm以上であり、
    前記トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの前記第2凹部の数は、0.30個/μm2以上1.0個/μm 2 以下であり、
    前記トナーコアと前記シェル層との界面のうち前記第1凹部の内側領域には、無機材料を含有する無機粒子が複数存在し、
    前記無機粒子の熱伝導率が、40W/m・K以上であり、
    前記無機粒子の個数平均1次粒子径が、100nm以下であり、
    前記無機粒子の前記トナー粒子における含有量は、100質量部の前記トナーコアに対し0.5質量部以上15質量部以下である、静電潜像現像用トナー。
  2. 前記無機粒子の体積固有抵抗値が、1.0×1014Ω・cm以上である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記無機材料は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及び酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つである、請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
JP2016190913A 2016-09-29 2016-09-29 静電潜像現像用トナー Expired - Fee Related JP6558335B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016190913A JP6558335B2 (ja) 2016-09-29 2016-09-29 静電潜像現像用トナー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016190913A JP6558335B2 (ja) 2016-09-29 2016-09-29 静電潜像現像用トナー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018054892A JP2018054892A (ja) 2018-04-05
JP6558335B2 true JP6558335B2 (ja) 2019-08-14

Family

ID=61835753

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016190913A Expired - Fee Related JP6558335B2 (ja) 2016-09-29 2016-09-29 静電潜像現像用トナー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6558335B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7338396B2 (ja) * 2019-10-18 2023-09-05 株式会社リコー トナー、トナーの製造方法、現像剤、トナー収容ユニット、画像形成装置並びに画像形成方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3631659B2 (ja) * 2000-04-28 2005-03-23 株式会社巴川製紙所 電子写真用トナーおよびその製造方法
JP2008040465A (ja) * 2006-07-12 2008-02-21 Ricoh Co Ltd トナー
JP2010014945A (ja) * 2008-07-03 2010-01-21 Konica Minolta Business Technologies Inc トナー
JP5217705B2 (ja) * 2008-07-08 2013-06-19 コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 静電潜像現像用トナーと画像形成方法
JP2012098386A (ja) * 2010-10-29 2012-05-24 Sanyo Chem Ind Ltd トナーバインダーおよびトナー
JP2012103535A (ja) * 2010-11-11 2012-05-31 Fuji Xerox Co Ltd 静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置
JP6252385B2 (ja) * 2013-07-11 2017-12-27 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 静電潜像現像用トナー
JP5949812B2 (ja) * 2014-03-04 2016-07-13 コニカミノルタ株式会社 画像形成方法及び画像形成装置
JP6142856B2 (ja) * 2014-09-19 2017-06-07 富士ゼロックス株式会社 静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018054892A (ja) 2018-04-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6038108B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6447488B2 (ja) 静電潜像現像用トナー及びその製造方法
JP6493301B2 (ja) 静電潜像現像用トナー及びその製造方法
US9804517B2 (en) Electrostatic latent image developing toner
JP2017215376A (ja) 静電潜像現像用トナー
JP2016177264A (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6424788B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6531584B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6398882B2 (ja) 静電潜像現像用トナー及びその製造方法
JP6504132B2 (ja) 静電潜像現像用トナー及びその製造方法
JP6558335B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6406270B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
US10025211B2 (en) Electrostatic latent image developing toner
JP6337839B2 (ja) 静電潜像現像用トナー及びその製造方法
JP6409763B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6237677B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
WO2016148013A1 (ja) トナー及びその製造方法
JP2018072453A (ja) 静電潜像現像用トナー及びその製造方法
JP2017151255A (ja) 正帯電性トナー
JP6493031B2 (ja) 正帯電性トナー
JP6489086B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6489077B2 (ja) 静電潜像現像用トナー及びその製造方法
JP2016224107A (ja) 静電潜像現像用トナー及びその製造方法
JP6330696B2 (ja) トナーの製造方法
JP2019020645A (ja) トナー及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180731

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190418

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190507

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190607

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190618

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190701

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6558335

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees