JP6398882B2 - 静電潜像現像用トナー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
(トナーの基本構成)
静電潜像現像用トナーが、結着樹脂を含有するトナー粒子を、複数含む。トナー粒子は、結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性ポリエステル樹脂中に分散した粒子状の結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。結晶性ポリエステル樹脂の分散径は40nm以上150nm以下である。走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードで、トナー粒子の断面における走査型プローブ顕微鏡の探針の位相遅れを測定した場合に、非結晶性ポリエステル樹脂上での探針の位相遅れAと結晶性ポリエステル樹脂上での探針の位相遅れBとが、関係式「−22°≦B−A≦−13°」を満たす。なお、結晶性ポリエステル樹脂の分散径は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法で測定される投影像における粒子の長軸径である。
文献A:M.M.Collman、外2名(ペンシルベニア州立大学)、「Specific Interactions and the Miscibility of Polymer Blends」、(米国)、テクノミック・パブリッシング(Technomic Publishing)、1991年
トナー粒子(特に、トナーコア又はシェル層)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、もしくはウレタン樹脂のような単独重合体、又はこれら単独重合体のいずれかの繰返し単位と同一のモノマーに由来する繰返し単位を1種以上有する共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)を好適に使用できる。
トナー粒子(特に、シェル層)を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、スルホンアミド系樹脂、グリオキザール系樹脂、グアナミン系樹脂、アニリン系樹脂、ポリイミド樹脂(より具体的には、マレイミド重合体又はビスマレイミド重合体等)、又はキシレン系樹脂を好適に使用できる。
トナーコアは、結着樹脂を含有する。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含有してもよい。
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価(測定方法:JIS(日本工業規格)K0070−1992)及び酸価(測定方法:JIS(日本工業規格)K0070−1992)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
トナーコアは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の使用量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、離型剤を含有してもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、電荷制御剤を含有してもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアは、磁性粉を含有してもよい。磁性粉としては、例えば、鉄(より具体的には、フェライト又はマグネタイト等)、強磁性金属(より具体的には、コバルト又はニッケル等)、鉄及び/又は強磁性金属を含有する合金、強磁性化処理(より具体的には、熱処理等)が施された強磁性合金、又は二酸化クロムを好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
シェル層は、粒状感のない膜であってもよいし、粒状感のある膜であってもよい。シェル層を形成するための材料として樹脂粒子を使用した場合、材料(樹脂粒子)が完全に溶けて膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、粒状感のない膜が形成されると考えられる。他方、材料(樹脂粒子)が完全に溶けずに膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、樹脂粒子が2次元的に連なった形態を有する膜(粒状感のある膜)が形成されると考えられる。
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
以下、上記構成を有するトナーを製造する方法の一例について説明する。
(好適な製造工程)
トナーコア材料(トナーコアを形成するための材料)の溶融混練では、少なくとも非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーコア材料を溶融混練して、分散径が40nm以上150nm以下の範囲内にない結晶性ポリエステル樹脂を含有する混練物を得る。混練物の粉砕では、混練物を粉砕してトナーコアを得る。材料の添加では、水性媒体に、トナーコアと、シェル材料(シェル層の材料)とを入れる。シェル層の形成では、水性媒体中でシェル材料を重合反応させることにより、トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径を40nm以上150nm以下にするとともに、トナーコアの表面にシェル層を形成する。
前述の基本構成を有するトナーを容易に得るためには、粉砕法によりトナーコアを製造することが特に好ましい。
水性媒体として、例えばイオン交換水を準備する。続けて、例えば塩酸を用いて水性媒体のpHを所定のpH(以下、シェル材料重合pHと記載する)に調整する。シェル層の形成を促進するためには、シェル材料重合pHは、3以上5以下(弱酸性)であることが好ましい。
測定装置として、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。測定装置を用いて試料(例えば、ポリエステル樹脂)の吸熱曲線を測定することにより、試料のTg及びMpを求めた。具体的には、試料(例えば、ポリエステル樹脂)15mgをアルミ皿に入れて、そのアルミ皿を測定装置の測定部にセットした。また、リファレンスとして空のアルミ皿を使用した。吸熱曲線の測定では、測定部の温度を、測定開始温度10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN1)。その後、測定部の温度を150℃から10℃まで10℃/分の速度で降温させた。続けて、測定部の温度を再び10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN2)。RUN2により、試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を得た。得られた吸熱曲線から、試料のMp及びTgを読み取った。吸熱曲線中、融解熱による最大ピーク温度が試料のMp(融点)に相当する。また、吸熱曲線中、比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度(オンセット温度)が試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、ポリエステル樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTmを読み取った。S字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
試料(トナー)を、スパッタリングにより金でコーティングした後、可視光硬化性樹脂で包埋して、硬化物を得た。その後、超薄切片作製用ナイフ(住友電気工業株式会社製「スミナイフ(登録商標)」:刃幅2mm、刃先角度45°のダイヤモンドナイフ)及びウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて、切削速度0.3mm/秒で硬化物を切削することで、150nmの薄片を作製した。続けて、得られた薄片を、走査型プローブ顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製「多機能型ユニットAFM5200S」)を備えたSPMプローブステーション(株式会社日立ハイテクサイエンス製「NanoNaviReal」)にセットし、次の条件で位相信号及び位相像を測定した。
(SPM測定条件)
・測定探針:低バネ定数シリコンカンチレバー(オリンパス株式会社製「OMCL−AC240TS−C3」、バネ定数:2N/m、共振周波数:70kHz、背面反射コート材:アルミニウム)
・測定モード:SIS−DFM(SIS:サンプリング・インテリジェント・スキャン、DFM:ダイナミック・フォース・モード)
・測定範囲:500nm×500nm
・解像度(Xデータ/Yデータ):512/512
(結晶性ポリエステル樹脂Aの合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、エチレングリコール2231gと、スベリン酸5869gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)40gと、没食子酸3gとを入れた。続けて、窒素雰囲気かつ温度180℃の条件で、フラスコ内容物を4時間反応させた。続けて、フラスコ内容物を昇温させて、温度210℃で10時間反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を1時間反応させた。その結果、Tm88℃、Mp84℃、結晶性指数1.05、SP値11.8J/cm3の結晶性ポリエステル樹脂Aが得られた。
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル370gと、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル3059gと、テレフタル酸1194gと、フマル酸286gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)10gと、没食子酸2gとを入れた。続けて、窒素雰囲気かつ温度230℃の条件で、反応率が90質量%以上になるまで、フラスコ内容物を反応させた。反応率は、式「反応率=100×実際の反応生成水量/理論生成水量」に従って計算した。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)で、反応生成物(樹脂)のTmが所定の温度(89℃)になるまで、フラスコ内容物を反応させた。その結果、Tm89℃、Tg50℃、SP値11.2J/cm3の非結晶性ポリエステル樹脂Aが得られた。
非結晶性ポリエステル樹脂Bの合成方法は、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル370g、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル3059g、テレフタル酸1194g、及びフマル酸286gに代えて、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル1286g、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル2218g、及びテレフタル酸1603gを使用した以外は、非結晶性ポリエステル樹脂Aの合成方法と同じであった。非結晶性ポリエステル樹脂Bに関しては、Tmが111℃、Tgが69℃、SP値が10.4J/cm3であった。
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル4907gと、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル1942gと、フマル酸757gと、ドデシルコハク酸無水物2078gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)30gと、没食子酸2gとを入れた。続けて、窒素雰囲気かつ温度230℃の条件で、前述の式で表される反応率が90質量%以上になるまで、フラスコ内容物を反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)で、フラスコ内容物を1時間反応させた。続けて、無水トリメット酸548gをフラスコ内に加えて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度220℃の条件で、反応生成物(樹脂)のTmが所定の温度(127℃)になるまで、フラスコ内容物を反応させた。その結果、Tm127℃、Tg75℃、SP値10.7J/cm3の非結晶性ポリエステル樹脂Cが得られた。
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、第1結着樹脂(前述の手順で合成した結晶性ポリエステル樹脂A)100gと、第2結着樹脂(前述の手順で合成した非結晶性ポリエステル樹脂A)300gと、第3結着樹脂(前述の手順で合成した非結晶性ポリエステル樹脂B)100gと、第4結着樹脂(前述の手順で合成した非結晶性ポリエステル樹脂C)600gと、着色剤(山陽色素株式会社製「カラ−テックス(登録商標)ブルーB1021」、成分:フタロシアニンブルー)144gと、第1離型剤(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」、成分:カルナバワックス)12gと、第2離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」、成分:エステルワックス)48gとを、回転速度2400rpmで混合した。トナーA−1において、非結晶性ポリエステル樹脂のSP値(SPA)は10.8J/cm3(=11.2J/cm3×0.3+10.4J/cm3×0.1+10.7J/cm3×0.6)、結晶性ポリエステル樹脂のSP値(SPB)は11.8J/cm3であった。
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水875mLとアニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた後、その温度(80℃)に保った。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけてフラスコ内に滴下した。第1の液は、スチレン12mLと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)4mLと、アクリル酸ブチル4mLと、ジビニルベンゼン0.5mLとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃にさらに2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、樹脂微粒子(疎水性樹脂)のサスペンション(以下、サスペンションAと記載する)が得られた。得られたサスペンションAに含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均粒子径は39nmであり、ガラス転移点(Tg)は73℃であった。
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内容物のpH(シェル材料重合pH)を4に調整した。続けて、フラスコ内に、シェル材料(前述の手順で調製したサスペンションA)15mLを加えて、シェル材料の水溶液を得た。続けて、フラスコ内にトナーコア(前述の手順で作製したトナーコア)300gを添加して、フラスコ内容物を回転速度200rpmで1時間攪拌した。続けて、フラスコ内にイオン交換水300mLを添加した。
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を得た。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
続けて、得られたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、トナー母粒子の粉体が得られた。乾燥したトナー母粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果、シェル層に粒状感が見られたが、シェル層を構成する粒子同士は分離していなかった。
容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、トナー母粒子100質量部と、乾式シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1質量部と、導電性酸化チタン微粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」)0.5質量部とを、5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤が付着した。その後、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、多数のトナー粒子を含むトナーA−1が得られた。得られたトナーA−1に関して、トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径は44nm、結晶性−非結晶性の位相差は−13°、結晶性−非結晶性のSP値差は1.0であった(表1参照)。
トナーA−2の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Aに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Bを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Bの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Bの合成方法は、エチレングリコール2231g及びスベリン酸5869gの代わりに、1,2−プロパンジオール2735g及びアジピン酸4922gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Aの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Bに関して、Tmは90℃、Mpは84℃、結晶性指数は1.07、SP値は11.5J/cm3であった。
トナーA−3の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Aに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Cを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Cの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Cの合成方法は、エチレングリコール2231gの代わりに1,5−ペンタンジオール3744gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Aの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Cに関して、Tmは86℃、Mpは79℃、結晶性指数は1.09、SP値は11.9J/cm3であった。
トナーA−4の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Aに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Dを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Dの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Dの合成方法は、スベリン酸5869gの代わりにコハク酸3978gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Aの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Dに関して、Tmは104℃、Mpは102℃、結晶性指数は1.02、SP値は11.1J/cm3であった。
トナーA−5の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Aに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Eを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Eの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Eの合成方法は、エチレングリコール2231g及びスベリン酸5869gの代わりに、エチレングリコール2008g、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル1136g、及びコハク酸3978gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Aの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Eに関して、Tmは87℃、Mpは92℃、結晶性指数は0.94、SP値は10.9J/cm3であった。
トナーA−6の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Aに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Fを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Fの合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、エチレングリコール2232gと、スベリン酸5515gとを入れた。続けて、フラスコ内容物を温度160℃に加熱して、添加した材料を溶解させた。続けて、滴下漏斗を用いて、スチレン等の混合液(スチレン488gとアクリル酸52gとジクミルパーオキサイド29gとの混合液)を1時間かけてフラスコ内に滴下した。続けて、フラスコ内容物を攪拌しながら温度170℃で1時間反応させて、フラスコ内のスチレン及びアクリル酸を重合させた。その後、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)に1時間保って、フラスコ内の未反応のスチレン及びアクリル酸を除去した。続けて、2−エチルヘキサン酸錫(II)40gと、没食子酸3gとを、フラスコ内に加えた。続けて、フラスコ内容物を昇温させて、温度210℃で8時間反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を1時間反応させた。その結果、Tm90℃、Mp83℃、結晶性指数1.09、SP値10.6J/cm3の結晶性ポリエステル樹脂Fが得られた。
トナーA−7の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Fに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Gを使用した以外は、トナーA−6の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Gの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Gの合成方法は、各材料の添加量に関して、エチレングリコールの2232gを1984gに、スベリン酸の5515gを4345gに、スチレンの488gを1831gに、アクリル酸の52gを161gに、ジクミルパーオキサイドの29gを110gに、それぞれ変更した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Fの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Gに関して、Tmは90℃、Mpは83℃、結晶性指数は1.09、SP値は10.3J/cm3であった。
トナーA−8の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Fに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Hを使用した以外は、トナーA−6の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Hの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Hの合成方法は、エチレングリコール2232g及びスベリン酸5515gの代わりに、1,6−ヘキサンジオール2974g、1,4−ブタンジオール972g、及びコハク酸3739gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Fの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Hに関して、Tmは92℃、Mpは91℃、結晶性指数は1.01、SP値は10.4J/cm3であった。
トナーA−9の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Fに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Iを使用した以外は、トナーA−6の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Iの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Iの合成方法は、エチレングリコール1984g及びスベリン酸4345gの代わりに、1,6−ヘキサンジオール2643g、1,4−ブタンジオール864g、及びコハク酸2945gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Gの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Iに関して、Tmは92℃、Mpは96℃、結晶性指数は0.95、SP値は10.0J/cm3であった。
トナーB−1の製造方法は、溶融混練の温度(シリンダー温度)を100℃から120℃に変更した以外は、トナーA−8の製造方法と同じであった。
トナーB−2の製造方法は、溶融混練の温度(シリンダー温度)を100℃から120℃に変更した以外は、トナーA−9の製造方法と同じであった。
トナーC−1の製造方法は、シェル材料重合温度を70℃から60℃に変更した以外は、トナーA−2の製造方法と同じであった。
トナーC−2の製造方法は、シェル材料重合温度を70℃から60℃に変更した以外は、トナーA−3の製造方法と同じであった。
トナーD−1の製造方法は、第1結着樹脂(結晶性ポリエステル樹脂A)の使用量を100gから150gに変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
トナーD−2の製造方法は、第1結着樹脂(結晶性ポリエステル樹脂A)の使用量を100gから150gに変更した以外は、トナーA−6の製造方法と同じであった。
トナーD−3の製造方法は、第1結着樹脂(結晶性ポリエステル樹脂A)の使用量を100gから150gに変更した以外は、トナーA−7の製造方法と同じであった。
各試料(トナーA−1〜D−3)の評価方法は、以下のとおりである。
現像剤用キャリア(FS−C5250DN用キャリア)100質量部と、試料(トナー)5質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
試料(トナー)2gを容量20mLのポリ容器に入れて、その容器を、58℃に設定された恒温器内に3時間静置した。その後、恒温槽から取り出したトナーを室温まで冷却して、評価用トナーを得た。
凝集度(質量%)=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
試料(トナー)の電荷減衰定数(電荷減衰速度)を評価した。評価機としては、静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−D100」)を用いた。評価方法は、JIS(日本工業規格)C 61340−2−1−2006に準拠した方法であった。以下、電荷減衰定数の評価方法について詳述する。
各試料(トナーA−1〜D−3)についての評価結果を、表2に示す。表2には、最低定着温度、耐熱保存性、及び電荷減衰定数の各々の評価結果を示す。
Claims (6)
- コアと、前記コアの表面に形成されたシェル層とを備え、前記コアに結着樹脂を含有するトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー粒子は、前記結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と、前記非結晶性ポリエステル樹脂中に分散した粒子状の結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、ジオール類としてのエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,4−ブタンジオールのうちの少なくとも1つに由来する繰り返し単位を含み、2価カルボン酸としてのスベリン酸及びコハク酸、並びにアジピン酸のうちの少なくとも1つに由来する繰り返し単位を含み、更にスチレン系モノマーとしてのスチレンに由来する繰り返し単位を含み、アクリル酸系モノマーとしてのアクリル酸に由来する繰り返し単位を含み、
前記非結晶性ポリエステル樹脂は、ビスフェノール類としてのポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル及びポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルに由来する繰り返し単位を含み、2価カルボン酸としてのテレフタル酸又は、フマル酸及びドデシルコハク酸無水物の何れかに由来する繰り返し単位を含み、
前記結晶性ポリエステル樹脂の分散径は40nm以上150nm以下であり、
走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードで、前記トナー粒子の断面における前記走査型プローブ顕微鏡の探針の位相遅れを測定した場合に、前記非結晶性ポリエステル樹脂上での前記探針の位相遅れAと前記結晶性ポリエステル樹脂上での前記探針の位相遅れBとが、関係式「−22°≦B−A≦−13°」を満たす、静電潜像現像用トナー。 - 前記シェル層が、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとが架橋剤により架橋された樹脂を含有する、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記架橋された樹脂が、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、又はメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルに由来するアルコール性水酸基を有する、請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記シェル層を構成する前記樹脂のガラス転移点は73℃である、請求項2又は3に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記非結晶性ポリエステル樹脂は、軟化点の異なる3種類の非結晶性ポリエステル樹脂を含み、前記軟化点は、それぞれ、89℃、111℃、127℃である、請求項1〜4の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 請求項2又は3に記載の静電潜像現像用トナーを製造する方法であって、
少なくとも前記非結晶性ポリエステル樹脂及び前記結晶性ポリエステル樹脂を含む前記コアの材料を溶融混練して、前記結晶性ポリエステル樹脂を含有する混練物を得ることと、
前記混練物を粉砕して前記コアを得ることと、
水性媒体に、前記コアと、前記シェル層の材料とを入れることと、
前記水性媒体中で前記シェル層の材料を重合反応させることにより、前記コア中の前記結晶性ポリエステル樹脂の分散径を40nm以上150nm以下にするとともに、前記コアの表面に前記シェル層を形成することと、
を含む、静電潜像現像用トナーの製造方法。
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