本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、粉体(より具体的には、トナーコア、トナー母粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から平均的な粒子を相当数選び取って、それら平均的な粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、摩擦帯電し易さに相当する。例えばトナーは、日本画像学会から提供される標準キャリア(アニオン性:N−01、カチオン性:P−01)と混ぜて攪拌することで、摩擦帯電させることができる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えばKFM(ケルビンプローブフォース顕微鏡)でトナー粒子の表面電位を測定し、摩擦帯電の前後での電位の変化が大きい部位ほど帯電性が強いことになる。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを包括的に「(メタ)アクリロニトリル」と総称する場合がある。また、イオン化して塩を形成し得る官能基及びその塩を包括的に「親水性官能基」と総称する場合がある。親水性官能基の例としては、酸基(より具体的には、カルボキシル基又はスルホ基等)、水酸基、又はこれらの塩(より具体的には、−COONa、−SO3Na、又は−ONa等)が挙げられる。各化学式中の繰返し単位の添え字「n」は、各々独立して、その繰返し単位の繰返し数(モル数)を示している。何ら規定していなければ、n(繰返し数)は任意である。
本実施形態に係るトナーは、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含む粉体である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤を調製してもよい。高画質の画像を形成するためには、キャリアとしてフェライトキャリアを使用することが好ましい。また、長期にわたって高画質の画像を形成するためには、キャリアコアと、キャリアコアを被覆する樹脂層とを有する磁性キャリア粒子を使用することが好ましい。キャリア粒子に磁性を付与するためには、磁性材料(例えば、フェライト)でキャリアコアを形成してもよいし、磁性粒子を分散させた樹脂でキャリアコアを形成してもよい。また、キャリアコアを被覆する樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、8質量部以上12質量部以下であることがより好ましい。なお、2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により正に帯電する。また、2成分現像剤に含まれる負帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により負に帯電する。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、コア(以下、トナーコアと記載する)と、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを有する。シェル層の表面(又は、シェル層で覆われていないトナーコアの表面領域)に外添剤が付着していてもよい。また、トナーコアの表面に複数のシェル層が積層されてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。また、トナーコアを形成するための材料を、トナーコア材料と記載する。また、シェル層を形成するための材料を、シェル材料と記載する。
本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
まず、画像データに基づいて感光体に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像する。現像工程では、感光体の近傍に配置された現像スリーブ(例えば、現像装置内の現像ローラーの表層部)上のトナー(例えば、キャリア又はブレードとの摩擦により帯電したトナー)を静電潜像に付着させて、感光体上にトナー像を形成する。そして、続く転写工程では、感光体上のトナー像を中間転写体(例えば、転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(以下、基本構成と記載する)を有する静電潜像現像用トナーである。
(トナーの基本構成)
トナーが、トナーコアとシェル層とを有するトナー粒子を複数含む。シェル層は、実質的に樹脂から構成される。また、シェル層は、その表面に、複数の点状領域と、点状領域よりも強い疎水性を有する面状領域とを有する。複数の点状領域はそれぞれ、面状領域よりも強い帯電性を有する。
以下、図1、図2、及び図3(a)〜図3(c)を参照して、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子(詳しくは、トナー母粒子)の構成の一例について説明する。なお、図1は、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の断面構造の一例を示す図である。図2は、図1に示されるトナー母粒子の表面を拡大して示す図である。図3(a)〜図3(c)はそれぞれ、図1中のトナーコア11とシェル層12との境界部を拡大して示す図に相当する。
図1に示されるトナー母粒子10は、トナーコア11と、トナーコア11の表面に形成されたシェル層12とを有する。シェル層12は、実質的に樹脂から構成される。シェル層12は、トナーコア11の表面を覆っている。シェル層12は、トナーコア11の表面全体を覆っていてもよいし、トナーコア11の表面を部分的に覆っていてもよい。
また、シェル層12は、図2に示すように、その表面に、複数の点状領域R1と、面状領域R2とを有する。複数の点状領域R1はそれぞれ、面状領域R2よりも強い帯電性を有する。面状領域R2は、点状領域R1よりも強い疎水性を有する。面状領域R2の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。図2の例では、点状領域R1がシェル層12の表面に散在している。また、点状領域R1及び面状領域R2が、海島状(海:面状領域R2、島:点状領域R1)に形成されている。点状領域R1は、面状領域R2に囲まれている。
トナーが前述の基本構成を有するためには、シェル層12が樹脂膜を有することが好ましく、その樹脂膜のうちシェル層12の表面に露出する部分が面状領域R2に相当するように樹脂膜が形成されていることがより好ましい。詳しくは、樹脂膜が実質的に疎水性樹脂から構成されることで、面状領域R2が疎水性を有するようになる。図3(a)〜図3(c)の各々において、ハッチングで示される領域が樹脂膜に相当する。
トナーが前述の基本構成を有するためには、シェル層12が複数の樹脂粒子を有することが好ましく、その樹脂粒子のうちシェル層12の表面に露出する部分が点状領域R1に相当するように樹脂粒子が形成されていることがより好ましい。詳しくは、それら樹脂粒子をそれぞれ、電荷制御剤を含む樹脂(例えば、電荷制御剤に由来する繰返し単位を含む熱可塑性樹脂)で形成することで、点状領域R1に帯電性を付与することができる。樹脂粒子は、樹脂膜よりも摩擦帯電し易い性質を有する。
図3(a)及び図3(b)に示すように、樹脂粒子が樹脂膜の表面から突出していてもよい。図3(a)及び図3(b)の例では、樹脂粒子のうち樹脂膜の表面から突出する部分が点状領域R1に相当する。樹脂粒子を樹脂膜の表面から突出させるためには、樹脂粒子の粒子径に対して樹脂膜の厚さを相対的に小さくすることが好ましい。図3(a)に示すように、樹脂粒子がトナーコア11に接触していてもよい。また、図3(b)に示すように、樹脂粒子がトナーコア11に接触していなくてもよい。図3(a)及び図3(b)の例では、樹脂膜が、接着剤(詳しくは、反応型接着剤)として機能し、硬化によりトナーコア11と樹脂粒子とを接着させている。
図3(c)に示すように、樹脂粒子が樹脂膜中に分散していてもよい。図3(c)の例では、樹脂膜の表面に位置する樹脂粒子のうち、樹脂膜から露出する部分が、点状領域R1に相当する。
図3(a)〜図3(c)のいずれの例でも、複数の樹脂粒子はそれぞれ、樹脂膜に接している。樹脂膜は、図3(a)に示すような粒状感のある膜であってもよいし、図3(b)又は図3(c)に示すような粒状感のない膜であってもよい。樹脂膜を形成するための材料として樹脂粒子を使用した場合、材料(樹脂粒子)が完全に溶けて膜状の形態で硬化すれば、樹脂膜として、粒状感のない膜が形成されると考えられる。他方、材料(樹脂粒子)が完全に溶けずに膜状の形態で硬化すれば、樹脂膜として、樹脂粒子が2次元的に連なった形態を有する膜(粒状感のある膜)が形成されると考えられる。シェル層に含まれる樹脂粒子の形状は、球形状であってもよいし、楕円状(又は、扁平状)であってもよい。シェル層中の樹脂膜全部が一体的に形成されるとは限らない。シェル層中の樹脂膜は、単一の膜であってもよいし、互いに離間して存在する複数の膜(島)の集合体であってもよい。
前述の基本構成を有するトナーは、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも、十分な帯電性を有すると考えられる。また、前述の基本構成を有するトナーは、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも、高画質の画像(例えば、かぶり濃度の低い画像)を形成することができると考えられる。詳しくは、前述の基本構成を有するトナーでは、シェル層の表面に、比較的帯電性の強い点状領域が複数存在することで、トナーに十分な帯電性を付与することが可能になる。また、前述の基本構成を有するトナーでは、シェル層の表面に、点状領域よりも強い疎水性を有する面状領域が存在することで、高温高湿環境下でのトナー粒子の表面に対する水分子の吸着を抑制することが可能になる。トナー粒子の表面に水分子が吸着しにくくなることで、高温高湿環境下でのトナー粒子の帯電量の減衰が抑制されると考えられる。十分な帯電性を有するトナーを用いて画像を形成することで、高画質の画像(例えば、かぶり濃度の低い画像)を形成することが可能になる。
常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な帯電性を有するためには、点状領域が面状領域に囲まれていることが好ましい。疎水性の弱い(比較的親水性の強い)点状領域の周囲に、疎水性の強い面状領域が存在することで、水分子の吸着を効果的に抑制することが可能になる。
常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な帯電性を有するためには、点状領域がシェル層の表面に散在していることが好ましい。点状領域が一箇所に集中せずに散在していることで、トナー粒子の表面の帯電性を全体的に向上させることが可能になる。
本実施形態に係るトナーは、前述の基本構成で規定されるトナー粒子(以下、本実施形態のトナー粒子と記載する)を複数含む。本実施形態のトナー粒子を複数含むトナーは、帯電安定性に優れると考えられる(後述する表1及び表2を参照)。なお、トナーの帯電安定性を向上させるためには、トナーが、80個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことが好ましく、90個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがより好ましく、100個数%の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがさらに好ましい。
常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な帯電性を有するためには、シェル層の表面において、全ての面状領域の合計面積SAに対する、全ての点状領域の合計面積SBの比率(=SB/SA)が、0.01以上0.20以下であることが好ましく、0.05以上0.15以下であることがより好ましい。
トナーの体積中位径(D50)が3μm以上10μm以下である場合、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な帯電性を有するためには、点状領域の半数以上(より好ましくは、80個数%以上)が、20nm以上150nm以下の円相当径(点状領域と同じ面積を有する円の直径)を有することが好ましい。
常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な帯電性を有するためには、前述の基本構成を有するトナーが、次に示す構成(以下、好適なシェル構成と記載する)をさらに有することがより好ましい。
(好適なシェル構成)
シェル層が、樹脂膜と複数の樹脂粒子とを有する。樹脂膜は、第1樹脂から実質的に構成される。複数の樹脂粒子はそれぞれ、第2樹脂から実質的に構成される。第1樹脂は、第2樹脂よりも強い疎水性を有する。第2樹脂は、第1樹脂よりも強い帯電性を有する。樹脂膜のうちシェル層の表面に露出する部分が、面状領域に相当する。樹脂粒子のうち樹脂膜から露出する部分が、点状領域に相当する。
好適なシェル構成を有するトナーに関して、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な帯電性を有するためには、全ての樹脂膜を構成する樹脂の合計質量MAに対する、全ての樹脂粒子を構成する樹脂の合計質量MBの割合(=100×MB/MA)が、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
十分な正帯電性を有する樹脂粒子を容易に形成するためには、その樹脂粒子を構成する樹脂(第2樹脂)が、窒素を含有しない1種以上のビニル化合物と、1種以上の窒素含有ビニル化合物とを含む単量体の重合体であることが好ましい。ビニル化合物は、ビニル基(CH2=CH−)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物(より具体的には、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、又はスチレン等)である。ビニル化合物は、上記ビニル基等に含まれる炭素二重結合「C=C」により付加重合して、高分子(樹脂)になり得る。
正帯電性トナーにおいてシェル層中の樹脂粒子が十分な正帯電性を有するためには、その樹脂粒子を構成する樹脂(第2樹脂)が、例えば、窒素含有ビニル化合物(より具体的には、4級アンモニウム化合物等)に由来する繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(1)で表される繰返し単位又はその塩を含むことが特に好ましい。
式(1)中、R11及びR12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。また、R21、R22、及びR23は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表す。また、R2は、置換基を有してもよいアルキレン基を表す。R11及びR12としては、各々独立して、水素原子又はメチル基が好ましく、R11が水素原子を表し、かつ、R12が水素原子又はメチル基を表す組合せが特に好ましい。また、R21、R22、及びR23としては、各々独立して、炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、又はiso−ブチル基が特に好ましい。R2としては、炭素数1以上6以下のアルキレン基が好ましく、メチレン基又はエチレン基が特に好ましい。なお、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドに由来する繰返し単位では、R11が水素原子を、R12がメチル基を、R2がエチレン基を、R21〜R23の各々がメチル基を、それぞれ表し、4級アンモニウムカチオン(N+)が塩素(Cl)とイオン結合して塩を形成している。
負帯電性トナーにおいてシェル層中の樹脂粒子が十分な負帯電性を有するためには、その樹脂粒子を構成する樹脂(第2樹脂)が、スルホ基(−SO3H)及び/又はその塩を有する繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(2)で表される繰返し単位を含むことが特に好ましい。
式(2)中、R31〜R37のうち、少なくとも1つが、スルホ基又はその塩を表し、それ以外は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルコキシアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。なお、p−スチレンスルホン酸ナトリウムに由来する繰返し単位では、R33がスルホ基のナトリウム塩(−SO3Na)を表し、それ以外(R31、R32、及びR34〜R37)はそれぞれ、水素原子を表す。
シェル層中の樹脂粒子が十分強い帯電性と適度な強度とを有するためには、その樹脂粒子を構成する樹脂(第2樹脂)が、上記窒素含有ビニル化合物に由来する繰返し単位、又は上記スルホ基(−SO3H)もしくはその塩を有する繰返し単位に加えて、(メタ)アクリル酸エステル(より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、又は(メタ)アクリル酸ブチル等)に由来する繰返し単位を含むことが好ましい。
シェル層中の樹脂粒子を構成する樹脂(第2樹脂)は、酸基、水酸基、及びこれらの塩の少なくとも1つを有する繰返し単位を含んでもよい。こうした繰返し単位を含む樹脂は、比較的強い親水性を有し易い。トナーが前述の「好適なシェル構成」を有する場合、シェル層中の樹脂粒子が比較的強い親水性を有していても、トナーの電荷減衰を十分抑制することができる。樹脂膜(面状領域)が、樹脂粒子(点状領域)よりも強い疎水性を有するからである。
シェル層中の樹脂膜を構成する樹脂(第1樹脂)は、例えば、スチレン系モノマーに由来する繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(3)で表される繰返し単位を含むことが特に好ましい。
式(3)中、R41〜R45は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルコキシアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。また、R46及びR47は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。R41〜R45としては、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は炭素数(詳しくは、アルコキシとアルキルとの合計炭素数)2以上6以下のアルコキシアルキル基が好ましい。R46及びR47としては、各々独立して、水素原子又はメチル基が好ましく、R47が水素原子を表し、かつ、R46が水素原子又はメチル基を表す組合せが特に好ましい。なお、スチレンに由来する繰返し単位では、R41〜R47の各々が水素原子を表す。
シェル層中の樹脂膜が十分強い疎水性と適度な強度とを有するためには、その樹脂膜を構成する樹脂(第1樹脂)が、1種以上のスチレン系モノマー(より好ましくは、式(3)で表される1種以上の繰返し単位)と1種以上のアクリル酸系モノマー(より具体的には、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等)との共重合体であることが好ましい。
シェル層中の樹脂膜が十分強い疎水性と適度な強度とを有するためには、その樹脂膜を構成する樹脂(第1樹脂)に含まれる繰返し単位のうち最も高いモル分率を有する繰返し単位が、スチレン系モノマーに由来する繰返し単位(より好ましくは、式(3)で表される繰返し単位)であることが好ましい。
空気中の水分が樹脂膜の表面に吸着することを十分抑制するためには、その樹脂膜を構成する樹脂(第1樹脂)に含まれる全ての繰返し単位のうち、親水性官能基を有する繰返し単位の割合が、10質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、樹脂膜の厚さは1nm以上30nm以下であることが好ましい。樹脂膜の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM撮影像を解析することによって計測できる。なお、1つのトナー粒子において樹脂膜の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線が樹脂膜と交差する4箇所)の各々で樹脂膜の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのトナー粒子の評価値(樹脂膜の厚さ)とする。
好適なシェル構成を有するトナーに関して、トナーの帯電安定性及び耐熱保存性の両立を図るためには、シェル層がさらに熱硬化性樹脂を含むことがより好ましい。シェル層が、樹脂膜及び樹脂粒子に加えて、さらに熱硬化性樹脂(例えば、親水性熱硬化性樹脂)を含むことで、シェル層の強度を向上させることが可能になる。トナーの帯電安定性及び耐熱保存性の両立を図るためには、シェル層に含まれる樹脂のうち、0.01質量%以上50質量%以下の樹脂が熱硬化性樹脂であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下の樹脂が熱硬化性樹脂であることがより好ましい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、シェル層が、トナーコアの表面領域のうち、50%以上99%以下の面積を覆っていることが好ましく、70%以上95%以下の面積を覆っていることがより好ましい。
次に、トナーコア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。トナーの用途に応じて必要のない成分を割愛してもよい。
<好適な熱可塑性樹脂>
トナー粒子(特に、トナーコア及びシェル層)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂が好ましい。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)も好適に使用できる。
熱可塑性樹脂は、1種以上の熱可塑性モノマーを、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性モノマーは、単独重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(より具体的には、アクリル酸系モノマー又はスチレン系モノマー等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になるアルコール及びカルボン酸)である。
スチレン−アクリル酸系樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためには、例えば以下に示すような、スチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。カルボキシル基を有するアクリル酸系モノマーを用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、水酸基を有するモノマー(より具体的には、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等)を用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂に水酸基を導入できる。アクリル酸系モノマーの使用量を調整することで、得られるスチレン−アクリル酸系樹脂の酸価を調整できる。また、水酸基を有するモノマーの使用量を調整することで、得られるスチレン−アクリル酸系樹脂の水酸基価を調整できる。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
ポリエステル樹脂は、1種以上のアルコールと1種以上のカルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、ジオール類又はビスフェノール類等)又は3価以上のアルコールを好適に使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。また、ポリエステル樹脂を合成する際に、アルコールの使用量とカルボン酸の使用量とをそれぞれ変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸等)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
なお、上記2価又は3価以上のカルボン酸は、エステル形成性の誘導体(より具体的には、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル等)に変形して用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素数1以上6以下のアルキル基を意味する。
<好適な熱硬化性樹脂>
トナー粒子(特に、シェル層)を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、スルホンアミド系樹脂、グリオキザール系樹脂、グアナミン系樹脂、アニリン系樹脂、ポリイミド樹脂(より具体的には、マレイミド重合体又はビスマレイミド重合体等)、又はキシレン系樹脂を好適に使用できる。
熱硬化性樹脂は、1種以上の熱硬化性モノマーを架橋反応(重合)させることで得られる。また、架橋剤を用いることで、熱可塑性モノマーにより熱硬化性樹脂を合成することもできる。なお、熱硬化性モノマーは、架橋性を有するモノマーである。例えば、同種のモノマー同士が「−CH2−」を介して3次元的につながって熱硬化性樹脂になる場合、そのモノマーは「熱硬化性モノマー」に相当する。
熱硬化性モノマーの好適な例としては、メチロールメラミン、メラミン、メチロール化尿素(より具体的には、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等)、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、又はスピログアナミンが挙げられる。
[トナーコア]
トナーコアは、結着樹脂を含む。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含んでもよい。
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価(測定方法:JIS(日本工業規格)K0070−1992)及び酸価(測定方法:JIS(日本工業規格)K0070−1992)の少なくとも一方が、10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
結着樹脂としては、エステル基、水酸基、エーテル基、酸基、及びメチル基からなる群より選択される1種以上の基を有する樹脂が好ましく、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂がより好ましい。このような官能基を有する結着樹脂は、シェル材料と反応して化学的に結合し易い。こうした化学的な結合が生じると、トナーコアとシェル層との結合が強固になる。また、結着樹脂としては、活性水素を含む官能基を分子中に有する樹脂も好ましい。
高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂のガラス転移点(Tg)が、20℃以上55℃以下であることが好ましい。ガラス転移点(Tg)の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂の軟化点(Tm)が、100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。また、結着樹脂のTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)である場合には、水性媒体中でトナーコアの表面にシェル層を形成する際に、シェル層の硬化反応中にトナーコアが部分的に軟化し易くなるため、トナーコアが表面張力により丸みを帯び易くなる。なお、軟化点(Tm)の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。異なるTmを有する複数種の樹脂を組み合わせることで、結着樹脂のTmを調整することができる。
トナーコアの結着樹脂としては、熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の各種樹脂等)が好ましい。トナーコア中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂としてスチレン−アクリル酸系樹脂又はポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。
トナーコアの結着樹脂としてスチレン−アクリル酸系樹脂を使用する場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、スチレン−アクリル酸系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
トナーコアの結着樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含んでいてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含んでいてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含ませることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含ませることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含ませる必要はない。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、又はニッケル等)もしくはその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理(より具体的には、熱処理等)が施された材料を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するため、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でトナーコアの表面にシェル層を形成する場合に、トナーコアの表面に金属イオンが溶出すると、トナーコア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナーコア同士の固着を抑制することができると考えられる。
[シェル層]
前述の「好適なシェル構成」では、シェル層が、樹脂膜と複数の樹脂粒子とを有する。また、シェル層は、樹脂膜及び樹脂粒子に加えて、さらに熱硬化性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱硬化性樹脂」等)を含んでもよい。トナーの帯電安定性及び耐熱保存性の両立を図るためには、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、及びグリオキザール系樹脂からなる群より選択される1種以上の熱硬化性樹脂をシェル層に含ませることが好ましい。
(樹脂膜)
前述の「好適なシェル構成」において、樹脂膜を実質的に構成する樹脂(第1樹脂)としては、熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱可塑性樹脂」等)が好ましく、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体が特に好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂は、ポリエステル樹脂と比べて、疎水性が強く、正帯電し易い傾向がある。樹脂膜を構成する樹脂(第1樹脂)の好適な例としては、スチレンと(メタ)アクリル酸ブチルとの共重合体;スチレンと(メタ)アクリル酸ブチルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとの共重合体;スチレンと(メタ)アクリル酸ブチルとアクリロニトリルとの共重合体が挙げられる。
(樹脂粒子)
前述の「好適なシェル構成」において、樹脂粒子を実質的に構成する樹脂(第2樹脂)としては、電荷制御剤に由来する繰返し単位(以下、帯電性単位と記載する)が導入された熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱可塑性樹脂」等)が好ましい。樹脂中に帯電性単位を導入するための電荷制御剤は、ラジカル重合性単量体であることが好ましい。
帯電性単位が導入される熱可塑性樹脂の好適な例としては、アクリル酸系樹脂(より具体的には、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの共重合体等)、又はスチレン−アクリル酸系樹脂(より具体的には、スチレンとメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの共重合体等)が挙げられる。
樹脂中に帯電性単位を導入するための電荷制御剤の好適な例を以下に示す。なお、必要に応じて、以下に示される各化合物の誘導体を使用してもよい。
正帯電性の電荷制御剤としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、又は4級アンモニウム基を有する化合物を好適に使用できる。
負帯電性の電荷制御剤としては、例えば、スルホン酸化合物、リン酸化合物、又はカルボン酸化合物を好適に使用できる。
樹脂中に帯電性単位を導入するための電荷制御剤としては、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸2−アシッドホスホオキシプロピル、メタクリル酸2−アシッドホスホオキシエチル、メタクリル酸3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、イタコン酸、アミノスチレン、メタクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、アクリル酸ジエチルアミノプロピル、γ−N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)アミノプロピルメタクリレート、又はトリメチルアンモニウムプロピルメタクリレートが特に好ましい。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。例えば、トナー母粒子と外添剤とを一緒に攪拌することで、物理的な力でトナー母粒子の表面に外添剤が付着(物理的結合)する。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
外添剤としては、無機粒子が好ましく、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子が特に好ましい。ただし、外添剤として、樹脂粒子を使用してもよい。1種類の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
[トナーの製造方法]
以下、上記構成を有する本実施形態に係るトナーを製造する方法の一例について説明する。液に、トナーコアと、シェル材料とを入れる。続けて、液中で、トナーコアの表面に付着したシェル材料を反応させることにより、トナーコアの表面に、実質的に樹脂から構成されるシェル層を形成する。
均質なシェル層を形成するためには、シェル材料を含む液を攪拌するなどして、シェル材料を液に溶解又は分散させることが好ましい。また、シェル層形成時におけるトナーコア成分(特に、結着樹脂及び離型剤)の溶解又は溶出を抑制するためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。
以下、より具体的な例に基づいて、本実施形態に係るトナーの製造方法についてさらに説明する。
(トナーコアの準備)
好適なトナーコアを容易に得るためには、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを製造することが好ましく、粉砕法によりトナーコアを製造することがより好ましい。
以下、粉砕法の一例について説明する。まず、結着樹脂と、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)とを混合する。続けて、得られた混合物を溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
以下、凝集法の一例について説明する。まず、結着樹脂、離型剤、及び着色剤の各々の微粒子を水性媒体中で凝集させて、結着樹脂、離型剤、及び着色剤を含む凝集粒子を得る。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナーコアの分散液が得られる。その後、トナーコアの分散液から、不要な物質(分散剤等)を除去することで、トナーコアが得られる。
(シェル層の形成)
トナーコアとシェル材料とが入れられる上記液として、例えばイオン交換水を準備する。続けて、例えば塩酸を用いて液のpHを所定のpHに調整する。シェル層の形成を促進するためには、pHを3以上5以下(弱酸性)に調整することが好ましい。
続けて、pHが調整された液(例えば、酸性の水性媒体)に、トナーコアと、第1樹脂粒子のサスペンション(シェル層を構成する樹脂膜の材料)と、第2樹脂粒子のサスペンション(シェル層を構成する樹脂粒子の材料)とを添加する。第2樹脂粒子は第1樹脂粒子よりも強い帯電性を有する。また、第1樹脂粒子の疎水性は、第2樹脂粒子の疎水性よりも強い。前述の基本構成における点状領域を形成するためには、第2樹脂粒子の添加量を適量に制御することが好ましい。水分子を吸着し易い第2樹脂粒子の添加量が多過ぎると、高温高湿環境下でのトナーの電荷保持性が弱くなり、トナーの帯電性が不十分になり易くなる。強い帯電性を有する点状領域がシェル層の表面に形成されないことがある。トナーが前述の基本構成を有するためには、第2樹脂粒子のガラス転移点(Tg)が、第1樹脂粒子のガラス転移点(Tg)よりも5℃以上高いことが好ましい。なお、ガラス転移点(Tg)の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。また、必要に応じて、熱硬化性樹脂を合成するための材料(例えば、熱硬化性モノマー)も、液中に添加してもよい。
上記シェル材料等は、室温の液に添加してもよい。ただし、液の温度を管理することでシェル層の分子量をコントロールすることができる。シェル材料の適切な添加量は、トナーコアの比表面積に基づいて算出できる。また、上記シェル材料等に加えて、重合促進剤を液中に添加してもよい。
図4に示すように、第2樹脂粒子12aと第1樹脂粒子12bとは、液中でトナーコア11の表面に付着する。トナーコアの表面に均一にシェル材料を付着させるためには、シェル材料を含む液中にトナーコアを高度に分散させることが好ましい。液中にトナーコアを高度に分散させるために、液中に分散剤を含ませてもよいし、強力な攪拌装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスディスパーミックス」)を用いて液を攪拌してもよい。
続けて、上記シェル材料等を含む液を攪拌しながら液の温度を所定の速度(例えば、0.1℃/分以上3℃/分以下から選ばれる速度)で所定の保持温度(例えば、50℃以上85℃以下から選ばれる温度)まで上昇させる。さらに、液を攪拌しながら液の温度を上記保持温度に所定の時間(例えば、30分間以上4時間以下から選ばれる時間)保つ。液の温度を高温に保っている間に、トナーコアとシェル材料との間で反応(シェル層の固定化)が進行すると考えられる。シェル材料がトナーコアと結合することで、シェル層が形成される。第2樹脂粒子は粒子状のままトナーコアの表面で固定化されると考えられる。第1樹脂粒子は、液中で溶けて、膜状の形態で硬化すると考えられる。シェル層を構成する樹脂膜の硬化により、トナーコアとシェル層(樹脂膜及び樹脂粒子)とが一体化する。トナーコアの表面に形成されたシェル層は、樹脂膜(海状領域)と、樹脂膜(海状領域)に対して島状に分布する樹脂粒子(島状領域)とを含む。液中でトナーコアの表面にシェル層が形成されることで、トナー母粒子の分散液が得られる。
上記のように、液中でトナーコアの表面に第1樹脂粒子を付着させて、液を加熱することで、第1樹脂粒子を溶かして膜化することができる。ただし、乾燥工程で加熱されて、又は外添工程で物理的な衝撃力を受けて、第1樹脂粒子の膜化が進行してもよい。
トナーコア成分の溶出又はトナーコアの変形を抑制するためには、上記保持温度は、トナーコアのガラス転移点(Tg)未満であることが好ましい。しかし、上記保持温度をトナーコアのガラス転移点(Tg)以上にして、あえてトナーコアを変形させてもよい。上記保持温度を高くすると、トナーコアの変形が促進され、トナー母粒子の形状が真球に近づく傾向がある。トナー母粒子が所望の形状になるように上記保持温度を調整することが望ましい。また、高温でシェル材料を反応させると、シェル層が硬くなり易い。上記保持温度に基づいて、シェル層の分子量を制御することもできる。
上記のようにしてシェル層を形成した後、例えば水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液を中和する。続けて、トナー母粒子の分散液を、例えば常温(約25℃)まで冷却する。続けて、例えばブフナー漏斗を用いて、トナー母粒子の分散液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)され、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られる。続けて、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥する。その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いてトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、乾燥工程でスプレードライヤーを用いる場合には、外添剤(例えば、シリカ粒子)の分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥工程と外添工程とを同時に行うことができる。こうして、トナー粒子を多数有するトナーが製造される。
なお、上記トナーの製造方法の内容及び順序はそれぞれ、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば、液(例えば、水性媒体)のpHを調整するタイミングは、前述のシェル材料等(シェル材料及びトナーコア)を液に添加する前でも後でもよい。シェル材料等は、まとめて同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、液にシェル材料等を添加する工程よりも前に、液を上記保持温度まで加熱する工程を行うようにしてもよい。また、液中で材料(例えば、シェル材料)を反応させる場合、液に材料を添加した後、所定の時間、液中で材料を反応させてもよいし、長時間かけて液に材料を添加して、液に材料を添加しながら液中で材料を反応させてもよい。また、シェル材料は、一度に液に添加されてもよいし、複数回に分けて液に添加されてもよい。シェル層の形成方法は任意である。例えば、in−situ重合法、液中硬化被膜法、及びコアセルベーション法のいずれの方法を用いて、シェル層を形成してもよい。また、外添工程の後で、トナーを篩別してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。トナーコア材料とシェル材料とはそれぞれ、前述の化合物(樹脂を合成するためのモノマー等)に限られない。例えば、必要に応じて、前述の化合物の誘導体をトナーコア材料又はシェル材料として使用してもよいし、モノマーに代えてプレポリマーを使用してもよい。各種材料は、固体状態で使用してもよいし、液体状態で使用してもよい。例えば、固体状態の材料の粉末を使用してもよいし、材料の溶液(溶剤に溶かした液体状態の材料)を使用してもよいし、材料の分散液(固体状態の材料が分散した液体)を使用してもよい。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーA〜I(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。
以下、実施例又は比較例に係るトナーA〜I(それぞれ静電潜像現像用トナー)の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、個数平均粒子径の測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた。また、Tg(ガラス転移点)及びTm(軟化点)の測定方法はそれぞれ、何ら規定していなければ、次に示すとおりである。
<Tgの測定方法>
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、試料(例えば、樹脂)の吸熱曲線を求めた。続けて、得られた吸熱曲線から試料のTg(ガラス転移点)を読み取った。得られた吸熱曲線中の比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度が、試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTm(軟化点)を読み取った。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
[トナーAの製造方法]
(トナーコアの作製)
低粘度ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)750gと、中粘度ポリエステル樹脂(Tg=53℃、Tm=84℃)100gと、高粘度ポリエステル樹脂(Tg=71℃、Tm=120℃)150gと、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)55gと、着色剤(DIC株式会社製「KET BLUE 111」、フタロシアニンブルー)40gとを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて回転速度2400rpmで混合した。
続けて、得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度160rpm、設定温度範囲(シリンダー温度)100℃以上130℃以下の条件で、溶融混練した。続けて、得られた溶融混練物を冷却し、冷却された溶融混練物を粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6μmのトナーコアが得られた。
(第1シェル材料の調製)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水875mLとアニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた後、その温度(80℃)に保った。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけて滴下した。第1の液は、スチレン18gと、アクリル酸ブチル2gとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃にさらに2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、樹脂微粒子(疎水性樹脂)のサスペンション(以下、サスペンションA−1と記載する)が得られた。得られたサスペンションA−1に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均粒子径は32nmであり、Tgは71℃であった。
(第2シェル材料の調製)
温度計、冷却管、窒素導入管、及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコ内に、イソブタノール90mLと、メタクリル酸メチル100gと、アクリル酸ブチル35gと、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(Alfa Aesar社製)30gと、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製「VA−086」)6mLとを入れた。続けて、窒素雰囲気、温度80℃の条件で、フラスコ内容物を3時間反応させた。その後、フラスコ内に2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製「VA−086」)3mLを加えて、窒素雰囲気、温度80℃の条件で、フラスコ内容物をさらに3時間反応させて、重合体を含む液を得た。続けて、得られた重合体を含む液を、減圧雰囲気、温度150℃の条件で乾燥した。続けて、乾燥した重合体を解砕し、正帯電性樹脂を得た。
続けて、混合装置(プライミクス株式会社製「ハイビスミックス2P−1型」)の容器に、上記のようにして得られた正帯電性樹脂200gと、酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製「酢酸エチル特級」)184mLとを入れた。続けて、回転速度20rpmで容器内容物を1時間攪拌して、高粘度の溶液を得た。その後、得られた高粘度の溶液に、酢酸エチル等の水溶液(詳しくは、1N−塩酸18mLとアニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール0」、成分:ラウリル硫酸ナトリウム)20gと酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製「酢酸エチル特級」)16gとをイオン交換水562mLに溶かした水溶液)を加えた。その結果、正帯電性樹脂微粒子(電荷制御剤含有樹脂)のサスペンション(以下、サスペンションB−1と記載する)が得られた。得られたサスペンションB−1に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均粒子径は35nmであり、Tgは80℃であった。
(シェル層形成工程)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水100mLを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内容物のpHを4に調整した。続けて、フラスコ内に、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度:80質量%)0.35gと、サスペンションA−1(固形分濃度:2質量%)220gと、サスペンションB−1(固形分濃度:20質量%)1.2gとを添加した。
続けて、フラスコ内に、前述の手順で作製した300gのトナーコアを添加し、回転速度200rpmでフラスコ内容物を1時間攪拌した。その後、フラスコ内に、イオン交換水300mLを添加した。続けて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら、フラスコ内の温度を1℃/分の速度で70℃まで上げた。続けて、温度70℃、回転速度100rpmの条件でフラスコ内容物を2時間攪拌した。
続けて、フラスコ内に水酸化ナトリウムを加えて、フラスコ内容物のpHを7に調整した。続けて、フラスコ内容物をその温度が常温(約25℃)になるまで冷却して、トナー母粒子を含む分散液を得た。
(洗浄工程)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を得た。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(乾燥工程)
続けて、得られたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、トナー母粒子の粉体が得られた。乾燥したトナー母粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果、シェル層に粒状感が見られたが、シェル層を構成する粒子同士は分離していなかった。
(外添工程)
続けて、得られたトナー母粒子を外添処理した。詳しくは、トナー母粒子100質量部と、乾式シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1.0質量部とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子)を付着させた。その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナーAが得られた。
[トナーBの製造方法]
トナーBの製造方法は、シェル層形成工程において、サスペンションB−1の使用量を1.2gから0.4gに変更した以外は、トナーAの製造方法と同じであった。
[トナーCの製造方法]
トナーCの製造方法は、シェル層形成工程において、サスペンションB−1の使用量を1.2gから2.0gに変更した以外は、トナーAの製造方法と同じであった。
[トナーDの製造方法]
トナーDの製造方法は、シェル層形成工程において、1.2gのサスペンションB−1の代わりに1.2gのサスペンションB−2(固形分濃度:20質量%)を使用した以外は、トナーAの製造方法と同じであった。サスペンションB−2の調製方法は、酢酸エチル等の水溶液として、1N−塩酸18gとアニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール0」、成分:ラウリル硫酸ナトリウム)20gと酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製「酢酸エチル特級」)16gとをイオン交換水562gに溶かした水溶液の代わりに、1N−塩酸6gとアニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール0」、成分:ラウリル硫酸ナトリウム)20gと酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製「酢酸エチル特級」)16gとをイオン交換水574gに溶かした水溶液を使用した以外は、サスペンションB−1の調製方法と同じであった。得られたサスペンションB−2に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均粒子径は46nmであり、Tgは81℃であった。
[トナーEの製造方法]
トナーEの製造方法は、シェル層形成工程において、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(ミルベンレジンSM−607)を使用しなかった以外は、トナーAの製造方法と同じであった。
[トナーFの製造方法]
トナーFの製造方法は、シェル層形成工程において、220gのサスペンションA−1の代わりに220gのサスペンションA−2(固形分濃度:2質量%)を使用し、サスペンションB−1を使用しなかった以外は、トナーAの製造方法と同じであった。サスペンションA−2の調製方法は、第1の液として、スチレン18gと、アクリル酸ブチル2gとの混合液の代わりに、スチレン18gと、アクリル酸ブチル2gと、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(Alfa Aesar社製)0.2gとの混合液を使用した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。得られたサスペンションA−2に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均粒子径は30nmであり、Tgは68℃であった。
[トナーGの製造方法]
トナーGの製造方法は、サスペンションB−1を使用しなかった以外は、トナーAの製造方法と同じであった。
[トナーHの製造方法]
トナーHの製造方法は、シェル層形成工程において、サスペンションB−1の使用量を1.2gから4.0gに変更した以外は、トナーAの製造方法と同じであった。
[トナーIの製造方法]
トナーIの製造方法は、次に示す点を変更した以外は、トナーEの製造方法と同じであった。
シェル層形成工程において、1.2gのサスペンションB−1の代わりに1.2gのサスペンションB−3を使用した。サスペンションB−3の調製方法は、メタクリル酸メチル100gとアクリル酸ブチル35gと2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド30gとの代わりに、スチレン60gとメタクリル酸メチル60gとアクリル酸ブチル15gとp−スチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製「スピノマーNaSS(登録商標)」)0.2mLとを使用して、正帯電性樹脂の代わりに負帯電性樹脂を得た以外は、サスペンションB−1の調製方法と同じであった。得られたサスペンションB−3に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均粒子径は37nmであり、Tgは75℃であった。
外添工程において、乾式シリカ微粒子(AEROSIL REA90)1.0質量部の代わりに、シリカ粒子(ポリジメチルシロキサンで表面処理されたフュームドシリカ粒子:キャボット社製「CAB−O−SIL(登録商標)TS−720」)1.0質量部を使用した。
[評価方法]
各試料(トナーA〜I)の評価方法は、以下の通りである。
(電荷減衰特性)
試料(トナー)の電荷減衰定数αは、静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−D100」)を用いて、JIS(日本工業規格)C 61340−2−1−2006に準拠した方法で測定した。以下、トナーの電荷減衰定数の測定方法について詳述する。
測定セルに試料を入れた。測定セルは、内径10mm、深さ1mmの凹部が形成された金属製のセルであった。スライドガラスを用いて試料を上から押し込み、セルの凹部に試料を充填した。セルの表面においてスライドガラスを往復移動させることによって、セルから溢れた試料を除去した。試料の充填量は0.04g以上0.06g以下であった。
続けて、試料が充填された測定セルを、温度32℃、湿度80%RHの環境下で12時間静置した。続けて、接地させた測定セルを静電気拡散率測定装置内に置き、コロナ放電によって試料にイオンを供給して、試料を帯電させた。帯電時間は0.5秒間であった。そして、コロナ放電終了後0.7秒経過した後から、試料の表面電位を連続的に測定した。測定された表面電位と、式「V=V0exp(−α√t)」とに基づいて、電荷減衰定数(電荷減衰速度)αを算出した。式中、Vは表面電位[V]、V0は初期表面電位[V]、tは減衰時間[秒]をそれぞれ示す。
電荷減衰定数が0.020以下であれば◎(非常に良い)と評価し、電荷減衰定数が0.020超0.025以下であれば○(良い)と評価し、電荷減衰定数が0.025を超えれば×(悪い)と評価した。
(帯電量)
現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa5550ci」用キャリア)と、試料(トナー)とを、ボールミルを用いて30分間混合し、評価用現像剤(2成分現像剤)を調製した。評価用現像剤における試料(トナー)の割合は12質量%であった。ただし、トナーIの評価では、現像剤用キャリアとして、負帯電性トナー用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「Anesis6016」用キャリア)を使用した。
続けて、常温常湿環境(N/N環境:温度23℃、湿度50%RH)下で24時間静置した評価用現像剤と、高温高湿環境(H/H環境:温度32.5℃、湿度80%RH)下で24時間静置した評価用現像剤とについて、それぞれ現像剤中のトナーの帯電量を測定した。現像剤中のトナーの帯電量は、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−1」)を用いて次に示す条件で測定した。
<現像剤中のトナーの帯電量の測定方法>
Q/mメーターの測定セルに現像剤を投入し、投入された現像剤のうちトナーのみを篩を介して10秒間吸引した。そして、式「吸引されたトナーの総電気量(単位:μC)/吸引されたトナーの質量(単位:g)」に基づいて、現像剤中のトナーの帯電量(単位:μC/g)を算出した。
N/N環境下に静置した評価用現像剤の帯電量が、+30μC/g以上又は−30μC/g以下であれば「○(良い)」と評価し、−30μC/g超+30μC/g未満であれば「×(良くない)」と評価した。
H/H環境下に静置した評価用現像剤の帯電量が、+10μC/g以上又は−10μC/g以下であれば「○(良い)」と評価し、−10μC/g超+10μC/g未満であれば「×(良くない)」と評価した。
(FD:かぶり濃度)
帯電量の評価と同様の手法により、評価用現像剤(2成分現像剤)を調製した。高温高湿環境(H/H環境:温度32.5℃、湿度80%RH)下で12時間静置した評価用現像剤(以下、H/H静置後現像剤と記載する)を用いて形成された画像のかぶり濃度を測定した。
評価機としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)を用いた。H/H静置後現像剤を評価機の現像装置に投入し、評価機のトナーコンテナに試料(補給用トナー)を投入した。また、初期の画像濃度(測定装置:X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)が1.0以上1.2以下になるように、評価機の現像スリーブとマグネットロールとの間の電圧を200V以上300V以下の範囲で調整した。ただし、トナーIの評価では、評価機として、アナログ式複写機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「Anesis6016」)を用いた。また、トナーIの評価では、評価機の感光体の表面電位を+700Vに、現像スリーブとマグネットロールとの間の電圧を+150Vに、それぞれ調整した。
続けて、上記評価機を用いて、ソリッド部と空白部とを含むサンプル画像を記録媒体(評価用紙)に印刷し、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye」)を用いて、印刷された記録媒体におけるサンプル画像の空白部と、印刷していないベースペーパー(未印刷紙)との各々について、反射濃度を測定した。そして、次の式に基づいて、かぶり濃度(FD)を算出した。
FD=(空白部の反射濃度)−(未印刷紙の反射濃度)
かぶり濃度(FD)が0.005以下であれば○(良い)と評価し、かぶり濃度(FD)が0.005よりも高ければ×(良くない)と評価した。
[評価結果]
表2に、トナーA〜Iの各々の評価結果を示す。トナーA〜Iの各々について、電荷減衰特性(電荷減衰定数)、N/N帯電量(常温常湿環境下に静置したトナーの帯電量)、H/H帯電量(高温高湿環境下に静置したトナーの帯電量)、及びかぶり濃度を評価した結果を、表2に示している。
トナーA〜E及びI(実施例1〜6に係るトナー)はそれぞれ、前述の「基本構成」及び「好適なシェル構成」を有していた。詳しくは、実施例1〜6に係るトナーではそれぞれ、シェル層が、樹脂膜と、複数の樹脂粒子とを有していた。また、実施例1〜6に係るトナーはそれぞれ、概ね図3(a)に示されるような形態を有していた。各トナーに含まれるトナー粒子のシェル層は、その表面に、複数の点状領域と、点状領域よりも強い疎水性を有する面状領域とを有していた。複数の点状領域はそれぞれ、面状領域よりも強い帯電性を有していた。
トナーA〜E及びIの各々に関して、SEM撮影像の画像解析により確認したところ、シェル層の表面において、全ての面状領域の合計面積SAに対する、全ての点状領域の合計面積SBの比率(=SB/SA)は、0.01以上0.20以下であった。また、点状領域の半数以上が20nm以上150nm以下の円相当径を有していた。また、シェル層は、トナーコアの表面全域のうち50%以上95%以下の面積を覆っていた。また、TEM撮影像の画像解析により確認したところ、樹脂膜の厚さは、1nm以上30nm以下であった。
表2に示されるように、実施例1〜6に係るトナーはそれぞれ、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも、十分な正帯電性を有していた。また、実施例1〜6に係るトナーはそれぞれ、高温高湿環境下でも、かぶり濃度の低い画像を形成することができた。
トナーF(比較例1に係るトナー)は、シェル層の表面全域に、帯電性を有する領域が形成された。この理由は、トナーFでは、シェル層が、疎水性樹脂と帯電性樹脂とを別々の樹脂として含まなかったためであると推察される。
トナーG(比較例2に係るトナー)は、前述の基本構成を有していなかった。トナーGでは、帯電性及び親水性を有する官能基がトナー粒子の表面に均一に分布することで、高温高湿環境下でトナー粒子の表面全体に水分子が吸着したと推察される。
トナーH(比較例3に係るトナー)では、シェル層の表面における、帯電性を有する領域が、広くなった。トナーHでは、トナー粒子の疎水性が弱いため、高温高湿環境下でトナーが帯電不良を起こして、形成された画像にかぶりが発生したと推察される。
表2に示されるように、トナーF〜H(比較例1〜3に係るトナー)はそれぞれ、トナーA〜E及びI(実施例1〜6に係るトナー)と比較して、高温高湿環境下での帯電性に劣っていた。また、トナーF〜H(比較例1〜3に係るトナー)はそれぞれ、高温高湿環境下において、かぶり濃度の低い画像を形成することができなかった。