JP5858957B2 - 静電潜像現像用磁性トナー - Google Patents
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Description
前記トナーコア粒子の表面を被覆するシェル層とからなるトナー粒子を含む、静電潜像現像用磁性トナーである。前記シェル層が、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位と、熱可塑性樹脂に由来する単位と、を含む樹脂からなる。前記熱硬化性樹脂が、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂である。
以下の工程(1)〜(4):
(1)pHを4に調整された濃度2質量%のベンゾヒドロキサム酸の水溶液50mL中で、前記トナーコア粒子の試料2gを、懸濁状態で60℃、6時間保持する工程、
(2)前記トナーコア粒子を含む懸濁液をろ過して、ろ液を得る工程、
(3)ろ液の波長440nmの光線に対する吸光度を測定する工程、及び
(4)工程(3)で測定された吸光度と、水溶液中でのベンゾヒドロキサム酸−鉄錯体の濃度と、ベンゾヒドロキサム酸−鉄錯体の水溶液の波長440nmの光線に対する吸光度とに関する検量線から、前記トナーコア粒子からの鉄の溶出量をろ液中の鉄濃度(mg/L)として測定する工程、
からなる方法で測定される、前記トナーコア粒子からの鉄の溶出量が10mg/L以下である、静電潜像現像用磁性トナーに関する。
結着樹脂としては、従来からトナー用の結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に制限されない。後述するように、本発明のトナーでは、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂のモノマーとの反応により生成する樹脂からなるシェル層で、トナーコア粒子が被覆されている。このため、結着樹脂としては、分子中に水酸基、カルボキシル基、アミノ基のような官能基を持つ樹脂が好ましく、分子中に水酸基及び/又はカルボキシル基を持つ樹脂がより好ましい。このような樹脂が有する水酸基のような官能基は、メチロールメラミンのような熱硬化性樹脂のモノマーと反応して化学的に結合する。従って、このような結着樹脂を用いてトナーを製造すると、シェル層がトナーコア粒子に強固に結合しているトナーを調製できる。
<式(1)>
バイオマス由来の炭素の比率(%)=(X/107.5)×100 (1)
高架式フローテスター(例えば、CFT−500D(株式会社島津製作所製))を用いて結着樹脂の軟化点(Tmr)の測定を行う。測定試料を高架式フローテスターにセットし、ダイス細孔経1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて軟化点(Tmr)を測定する。高架式フローテスターの測定により得られる、温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブから、結着樹脂の軟化点(Tmr)を読み取る。
トナーコア粒子は磁性粉を含む。このようにして製造される磁性粉を含むトナーコア粒子を用いて製造されたトナー粒子を含むトナーは、磁性1成分現像剤として使用できる。好適な磁性粉としては、フェライト、及びマグネタイトのような鉄;コバルト、及びニッケルのような強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
(1)pHを4に調整された濃度2質量%のベンゾヒドロキサム酸の水溶液50mL中で、トナーコア粒子の試料2gを、懸濁状態で60℃、6時間保持する工程、
(2)トナーコア粒子を含む懸濁液をろ過して、ろ液を得る工程、
(3)ろ液の波長440nmの光線に対する吸光度を測定する工程、及び
(4)工程(3)で測定された吸光度と、水溶液中でのベンゾヒドロキサム酸−鉄錯体の濃度と、ベンゾヒドロキサム酸−鉄錯体の水溶液の波長440nmの光線に対する吸光度とに関する検量線から、トナーコア粒子からの鉄の溶出量をろ液中の鉄濃度(mg/L)として測定する工程、
からなる方法で測定される、トナーコア粒子からの鉄の溶出量が10mg/L以下である、トナーコア粒子を用いて製造される。
a)トナーの磁性トナーとしての性能が阻害されない範囲内で、粒子径の大きな磁性粉を用いる方法、
b)トナーの磁性トナーとしての性能が阻害されない範囲内で、磁性粉の使用量を低減する方法、
c)トナーを用いて画像を形成する場合に悪影響が出ない範囲で、粒子径の大きなトナーコア粒子を用いる方法、及び
d)表面処理された磁性粉を用いる方法、
の方法が挙げられる。
本発明のトナーは、磁性粉を必須の成分としてトナーコア粒子に含むため、通常黒色である。このため、トナーは、トナーを用いて形成した形成画像をより好ましい黒色の色相に調整する目的で、着色剤として、公知の染料又は顔料を含んでいてもよい。具体的には、顔料としてはカーボンブラックのような顔料が挙げられ、染料としてはアシッドバイオレットのような染料が挙げられる。
トナーコア粒子は必要に応じて、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、通常、トナーの定着性や耐オフセット性を向上させる目的で使用される。
電荷制御剤は、帯電レベルや、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。シェル層中に帯電機能を有する成分が含まれる場合、トナーコア粒子に電荷制御剤を使用しなくてもよい。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
シェル層を構成する樹脂は、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位と、熱可塑性樹脂に由来する単位と、を含む。なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲において、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位とは、メラミンのようなモノマーにホルムアルデヒドに由来するメチレン基(−CH2−)が導入された単位を意味する。
熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位を樹脂に導入するために用いられるモノマーは、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の熱硬化性樹脂の形成に使用されるモノマー及び初期縮合物である。
樹脂に熱可塑性樹脂に由来する単位を導入するために用いられる熱可塑性樹脂は、メチロール基やアミノ基のような上述の熱硬化性樹脂のモノマーが有する官能基との反応性を有する官能基を持つ熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。メチロール基やアミノ基のような上述の熱硬化性樹脂モノマーが有する官能基との反応性を有する官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基のような活性水素原子を含む官能基が挙げられる。アミノ基は、カルバモイル基(−CONH2)として熱可塑性樹脂中に含まれてもよい。シェル層の形成が容易であることから、熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリルアミドに由来する単位を含む樹脂や、カルボジイミド基、オキサゾリン基、及びグリシジル基のような官能基を有するモノマーに由来する単位を含む樹脂が好ましい。
シェル層の厚さ=(熱硬化性樹脂のモノマーの量+熱可塑性樹脂の量)/トナーコア粒子の比表面積
本発明のトナーに含まれるトナー粒子は、必要に応じてその表面に外添剤を付着させてもよい。なお、本出願の明細書、及び特許請求の範囲では、外添剤により処理される前の粒子を、トナー母粒子と記載する場合がある。
トナーの製造方法は、前述の方法で測定される鉄の溶出量が所定の範囲内であるトナーコア粒子を、前述の所定の材質からなるシェル層で被覆できる方法であれば特に限定されない。以下、トナーの好適な製造方法に関して、トナーコア粒子の製造方法と、シェル層の形成方法とについて順に説明する。
トナーコア粒子の製造方法としては、結着樹脂中に、磁性粉と、必要に応じて着色剤、電荷制御剤、及び離型剤のような成分を良好に分散させることができれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択できる。トナーコア粒子の製造方法としては、凝集法と、溶融混錬法とが挙げられる。
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、トナーコア粒子とを、ターブラミキサーを用いて30分間混合する。この時、トナーコア粒子の使用量は、標準キャリアの質量に対して7質量%である。混合後、トナーコア粒子の摩擦帯電量を、QMメーター(MODEL 210HS−2A(TREK社製))を用いて測定する。このようにして測定されるトナーコア粒子の摩擦帯電量は、トナーコア粒子が正負何れの極性に帯電されやすいかと、トナーコア粒子の帯電されやすさの指標となる。
溶融混練法は、必須成分である結着樹脂及び磁性粉と、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤のような任意成分とを混合した後、混合物を溶融混練して得られる溶融混練物を、粉砕、分級して、所望の粒子径のトナーコア粒子を得る方法である。溶融混練法は、後述の凝集法と比較して、トナーコア粒子の調製が容易である利点を有する。一方で、溶融混練法は、粉砕工程を経てトナーコア粒子を得るがゆえに、球形度の高いトナーコア粒子を得にくい点で、凝集法よりも不利である。しかし、本発明のトナーを製造する際、後述するシェル層の形成工程では、シェル層の硬化反応が進行する際にトナーコア粒子が表面張力によって収縮することで、やや軟化したトナーコア粒子が球形化される。従って、本発明のトナーを製造する場合、トナーコア粒子の球形度が幾分低くても大きなデメリットとはならない。以上より、本発明のトナーの製造に用いるトナーコア粒子の製造方法としては、溶融混練法が特に好ましい。
凝集法では、結着樹脂、磁性粉、離型剤、及び着色剤のようなトナーに含まれる成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて凝集粒子を得た後、凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させてトナーコア粒子を含む水性分散液を得る。水性分散液から分散剤のような成分を除去し、洗浄したトナーコア粒子を用いて、後述の方法でトナーコア粒子にシェル層を形成する。このような手順により、粉砕法でトナーコア粒子を製造した場合と同様のトナー粒子(トナー母粒子)を得られる。
トナーコア粒子を被覆するシェル層は、メラミン、尿素、及びグリオキザールと尿素との反応物や、これらとホルムアルデヒドとの付加反応によって生成される前駆体(メチロール化物)と、熱可塑性樹脂とを反応させて形成される。また、シェル層を形成する際には、シェル層の形成に用いる溶媒に対する、結着樹脂の溶解や、トナーコア粒子に含まれる離型剤のような成分の溶出を防ぐ必要がある。このため、シェル層の形成は、水のような溶媒中で行われるのが好ましい。
トナー粒子(トナー母粒子)は、必要に応じて、水を用いて洗浄される。好適な洗浄方法としては、トナー粒子(トナー母粒子)を含む水性分散液から、遠心分離法及びフイルタープレス法によって脱水と洗浄を行い固液分離しトナー粒子(トナー母粒子)をウエットケーキとして回収する方法が一般的である。
トナー粒子(トナー母粒子)は、必要に応じて乾燥されてもよい。トナー粒子(トナー母粒子)を乾燥させる好適な方法としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、及び減圧乾燥機のような乾燥機を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー粒子(トナー母粒子)の凝集を抑制しやすいことからスプレードライヤーを用いる方法がより好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー母粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
トナー粒子(トナー母粒子)は、必要に応じてその表面に外添剤が付着したものであってもよい。上記方法により得られるトナー母粒子の表面に外添剤を付着させる好適な方法としては、外添剤がトナー母粒子表面に埋没しないように条件を調整して、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーのような混合機を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
〔ポリエステル樹脂の製造〕
以下の方法に従って、ガラス転移点53.8℃、軟化点100.5℃、数平均分子量(Mn)1460、分子量分布(Mw/Mn)12.7、酸価16.8mgKOH/g、及び水酸基価22.8mgKOH/gであるポリエステル樹脂を製造した。
〔磁性粉a〜gの製造〕
以下、磁性粉a〜gは、同一のマグネタイト粒子を用いて調製した。
(磁性粉a)
マグネタイト粒子(平均粒子径:0.18μm、形状:8面体、PMT−92(戸田工業株式会社製)と、マグネタイト粒子の質量に対して2質量%のエチルシリケートとを、ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、回転速度3000rpmで混合した(以下、ホモミキサーを用いる混合は全て同じ回転速度で行った)。得られた混合物を、イオン交換水で洗浄した後、フイルタープレスを用いて脱水した。洗浄及び脱水工程の後、混合物を、恒温器を用いて200℃、3時間の条件で熱処理し、表面処理されたマグネタイト粒子である磁性粉aを得た。
磁性粉(マグネタイト粒子)の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(JSM−7600(日本電子株式会社製))を用いて倍率1万倍で撮影した画像をさらに4倍に拡大した画像を用いて測定した。具体的には、電子顕微鏡画像上の任意の300個の磁性粉についてマーチン径(円相当径)を測定し、300個の磁性粉のマーチン径の平均値を算出することで、磁性粉の平均粒子径を求めた。
マグネタイト粒子と、マグネタイト粒子の質量に対して300質量%のイオン交換水とを、ホモミキサー用いて混合し、マグネタイト粒子を含む水性分散液を得た。その後、塩酸を用いて、水性分散液のpHを4に調整した。pHを4に調整した後、水性分散液に、マグネタイト粒子の質量に対して2質量%のメトキシシランカップリング剤(Z−6030(東レ・ダウコーニング株式会社製))を添加し、ホモミキサーを用いて混合することでカップリング反応を行った。その後、水性分散液から固形分をろ過及び乾燥させることで、表面処理されたマグネタイト粒子である磁性粉bを得た。
マグネタイト粒子と、マグネタイト粒子の質量に対して2質量%のケイ酸ナトリウム(JIS 3号)とを、ホモミキサーを用いて混合した。得られた混合物を、イオン交換水を用いて洗浄した後、フイルタープレスを用いて脱水した。このような洗浄及び脱水の工程を2回繰り返し、混合物からナトリウム成分を除去した。洗浄水中のイオン導電度が10ジーメンス未満となったことを確認することで、ナトリウム成分が除去されたことを確認した。洗浄及び脱水工程の後、混合物を、恒温器を用いて200℃、3時間の条件で熱処理し、表面処理されたマグネタイト粒子である磁性粉cを得た。
マグネタイト粒子と、マグネタイト粒子の質量に対して2質量%の硫酸バンド(日本軽金属株式会社製、硫酸アルミニウムを主成分として含む)を含む、水溶液(濃度8質量%)とをホモミキサーを用いて混合した。得られた混合物を、イオン交換水で洗浄した後、フイルタープレスを用いて脱水した。洗浄及び脱水工程の後、混合物を、恒温器を用いて200℃、3時間の条件で熱処理した。熱処理された固形物を水で洗浄した後、乾燥させることで、表面処理されたマグネタイト粒子である磁性粉dを得た。
マグネタイト粒子と、マグネタイト粒子の質量に対して300質量%のイオン交換水とを、ホモミキサーを用いて混合し、マグネタイト粒子を含む水性分散液を得た。その後、水酸化ナトリウムを用いて、水性分散液のpHを9に調整した。pHを9に調整した後、水性分散液に、マグネタイト粒子の質量に対して2質量%のアミノシシランカップリング剤(Z−6011(東レ・ダウコーニング株式会社製))を添加し、ホモミキサーを用いて混合することでカップリング反応を行った。その後、水性分散液から固形分をろ過及び乾燥させることで、表面処理されたマグネタイト粒子である磁性粉eを得た。
表面処理されていないマグネタイト粒子を磁性粉fとして用いた。
エチルシリケートの使用量を、マグネタイト粒子の質量に対して0.5質量%に変える他は、磁性粉aと同様にして磁性粉gを得た。
〔トナーコア粒子の製造〕
ポリエステル樹脂100質量部と、表1及び2に記載の種類の磁性粉100質量部と、離型剤(エステルワックス、WEP−3(日油株式会社製))5質量部とを、混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて混合し、混合物を得た。次いで、混合物を、2軸押出機(PCM−30(株式会社池貝製))を用いて溶融混練して混練物を得た。混練物を、機械式粉砕機(ターボミル(ターボ工業株式会社製))を用いて粉砕し、粉砕物を得た。粉砕物を、分級機(エルボージェット(日鉄鉱業株式会社製))を用いて分級し、体積平均粒子径(D50)が6.0μmのトナーコア粒子を得た。トナーコア粒子の体積平均粒子径は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して7質量%のトナーコア粒子とを、ターブラミキサーを用いて30分間混合した。得られた混合物を測定試料として、標準キャリアと摩擦させた場合のトナーコア粒子の摩擦帯電量を、QMメーター(MODEL 210HS−2A(TREK社製))を用いて測定した。
pH4に調整されたベンゾヒドロキサム酸の水溶液中での鉄の溶出量を、以下の工程(1)〜(4)からなる方法で測定した。
工程(1):pHを4に調整された濃度2質量%のベンゾヒドロキサム酸の水溶液50mL中で、トナーコア粒子の試料2gを、懸濁状態で60℃、6時間保持した。
工程(2):トナーコア粒子を含む懸濁液をろ過して、ろ液を得た。
工程(3):ろ液の波長440nmの光線に対する吸光度を測定した。
工程(4):工程(3)で測定された吸光度と、水溶液中でのベンゾヒドロキサム酸−鉄錯体の濃度と、ベンゾヒドロキサム酸−鉄錯体の水溶液の波長440nmの光線に対する吸光度とに関する検量線から、トナーコア粒子からの鉄の溶出量をろ液中の鉄濃度(mg/L)として測定した。
温度計及び撹拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水300mLを入れた後、ウォーターバスを用いてフラスコ内温を30℃に保持した。次いで、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。pH調整後、フラスコ内に、シェル層の原料として、メチロールメラミン水溶液(ミルベン607(昭和電工株式会社製)、固形分濃度80質量%)2mLと、熱可塑性樹脂の水溶液(固形分濃度11質量%の水溶性ポリアクリルアミド水溶液)2mLとを添加した。次いで、フラスコの内容物を撹拌し、シェル層の原料を水性媒体に溶解させ、シェル層の原料の水溶液(A)を得た。
ブフナーロートを用いて、トナー母粒子を含む分散液からトナー母粒子のウエットケーキを得た。トナー母粒子のウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナー母粒子を洗浄した。トナー母粒子のイオン交換水による同様の洗浄を5回繰り返した。
トナー母粒子のウエットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(コートマイザー(フロイント産業株式会社製))に供給することにより、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させて、トナー母粒子を得た。コートマイザーを用いる乾燥条件は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分であった。
乾燥工程で得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ(REA90(日本アエロジル株式会社製))0.5質量部とを、10Lヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、5分間混合して外添剤を付着させた。その後、200メッシュ(目開き75μm)の篩によりトナーを篩別した。
実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーについて、pH4に調整されたベンゾヒドロキサム酸の水溶液中でのトナー粒子からの鉄の溶出量(以下、単にトナーからの鉄の溶出量ともいう)と、トナー粒子が備えるシェル層の厚さと、トナーの平均円形度とを測定した。測定結果を、表1及び2に記す。
試料をトナー粒子に変える他は、上述の磁性粉からの鉄の溶出量の測定方法と同様の方法でトナーからの鉄の溶出量を測定した。
トナー粒子の断面のTEM写真を、以下の方法に従って撮影した。トナー粒子の断面のTEM写真から、以下の方法に従って、シェル層の厚さを測定した。
まず、トナーを常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、40℃の雰囲気に2日間静置し、硬化物を得た。得られた硬化物を、四酸化オスミウムを用いて染色した。その後、得られた硬化物から、ミクロトーム(EM UC6(ライカ株式会社製))を用いて、厚さ200nmのトナー粒子の断面観察用の薄片試料を切り出した。得られた薄片試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、JSM−6700F(日本電子株式会社製))を用いて倍率3000倍及び10000倍で観察し、トナー粒子の断面のTEM写真を撮影した。
シェル層の厚さは、トナー粒子の断面のTEM撮影像を画像解析ソフトウェア(WinROOF(三谷商事株式会社製))を用いて解析することで計測した。具体的には、トナー粒子の断面の略中心点で直交する2本の直線を引き、当該2本の直線上の、シェル層と交差する4箇所の長さを測定した。このようにして測定される4箇所の長さの平均値を、測定対象の1個のトナー粒子が備えるシェル層の厚さとした。このようなシェル層の厚さの測定を、10個のトナー粒子に対して行い、測定対象の複数のトナー粒子それぞれが備えるシェル層の膜厚の平均値を求めた。求められた平均値を、トナー粒子が備えるシェル層の膜厚とした。
フロー式粒子像分析装置(FPIA−3000(シスメックス株式会社製))を用いてトナーに含まれる粒子径3μm以上10μm以下のトナー粒子の平均円形度を測定した。23℃、60%RHの環境下で、円相当径0.60μm以上400μm以下の範囲のトナー粒子について、トナー粒子像と同じ投影面積を持つ円の円周の長さ(L0)と、トナー粒子投影像の外周の長さ(L)とを測定し、下式に従って円形度を求めた。円相当径3μm以上10μm以下の測定したトナー粒子の円形度の総和を、円相当径3μm以上10μm以下の測定したトナー粒子数で除した値を平均円形度とした。
(円形度算出式)
円形度a=L0/L
実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーについて、以下の方法に従って、耐熱保存性、及び所定環境下でのトナーの帯電量を評価した。実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーの耐熱保存性、及び所定環境下でのトナーの帯電量の評価結果を、表1及び2に記す。
トナー2gを、容量20mLのポリ容器に秤量し、60℃に設定された恒温器内に3時間静置することで、耐熱保存性評価用のトナーを得た。その後、耐熱保存性評価用のトナーを、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、パウダーテスターに設置した100メッシュ(目開き150μm)の篩を用いて篩別した。篩別後に、篩上に残留したトナーの質量を測定した。篩別前のトナーの質量と、篩別後に篩上に残留したトナーの質量とから、下式に従って凝集度(%)を求めた。算出された凝集度から、下記基準に従って耐熱保存性を評価した。○評価を合格とした。
(凝集度算出式)
凝集度(%)=(篩上に残留したトナー質量/篩別前のトナーの質量)×100
○:凝集度が20%以下。
×:凝集度が20%超。
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して5質量%のトナーとを、常温常湿(25℃、50〜60%RH)、及び高温低湿(32℃、83〜88%RH)のそれぞれの環境下で混合した。標準キャリアとトナーとの混合は、ターブラミキサーを用いて10分間行った。得られた混合物を測定試料として、標準キャリアと摩擦させた場合のトナーの帯電量を、QMメーター(MODEL 210HS−2A(TREK社製))を用いて測定した。常温常湿、及び高温低湿のそれぞれの環境下で得られた測定試料について、測定された帯電量から、下記基準に従ってトナーの帯電量を評価した。○評価を合格とした。
○:帯電量が10μC/g以上40μC/g以下。
×:帯電量が10μC/g未満、40μC/g超。
実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーを用いて、以下の方法に従って、低温定着性、及び感光体研磨量を評価した。実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーの低温定着性、及び感光体研磨量の評価結果を、表1及び2に記す。
評価機として、定着温度を調節できるように改造したプリンター(LS−6960DN(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製))を用いた。評価機は、線速を300mm/秒、及びトナー載り量を1.0mg/cm2に設定して、被記録媒体に未定着のベタ画像を形成した。定着温度を100℃以上200℃以下の範囲で、評価機の定着装置の定着温度を100℃から5℃ずつ上昇させて、未定着のベタ画像を定着させた。ベタ画像を定着させた被記録媒体を、画像を形成した面が内側となるように半分に折り曲げ、布帛で覆った1kgの分銅を用いて、折り目上を5往復摩擦した。次いで、被記録媒体を広げ、折り曲げ部のトナーの剥がれが1mm以下の場合を合格と判定し、1mm超の場合を不合格と判定した。トナーの剥がれが合格と判定される最低の定着温度を、最低定着温度とした。低温定着性を、下記基準により評価した。
○:最低定着温度が160℃以下。
×:最低定着温度が160℃超。
評価機として、感光体に有機感光体(OPC)を備えたプリンター(FS−1370DN(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製)、35枚/分)を用いた。まず、OPCの厚さを測定し(32μm)、続いて、評価機を用いてISO/IEC19752標準原稿にパターン画像を10万枚連続して形成する連続画像形成試験を行った。連続画像形成試験後に、連続画像形成試験前に厚さを測定した箇所と同じ箇所のOPCの厚さを測定し、連続画像形成試験前後のOPCの厚さの減少量を測定した。OPCの厚さの測定には光干渉分光器(Solid Lambda Thickness(カールツァイス株式会社製))を用いて測定した。感光体研磨量を、下記基準に従って評価した。
○:OPCの厚さの減少量が10μm以下。
×:OPCの厚さの減少量が10μm超。
・結着樹脂及び磁性粉を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子の表面を被覆するシェル層と、からなるトナー粒子を含むトナーであって、
・シェル層が、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位と、熱可塑性樹脂に由来する単位と、を含む樹脂からなり、
・熱硬化性樹脂が、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂であり、
・所定の方法で測定されるトナーコア粒子からの鉄の溶出量が10mg/L以下である
トナーは、耐熱保存性に優れ、高温高湿環境下でも、所望する帯電量に帯電され、画像を形成する際に感光体の表面を摩耗させにくく、トナーの製造時にトナー粒子の凝集体を生じにくいことが分かる。
Claims (3)
- 結着樹脂及び磁性粉を含むトナーコア粒子と、
前記トナーコア粒子の表面を被覆するシェル層とからなるトナー粒子を含む、静電潜像現像用磁性トナーであって、
前記トナーコア粒子が、下式[I]:
で示される単位を少なくとも5モル%含む界面活性重合体を含有せず、
前記シェル層が、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位と、熱可塑性樹脂に由来する単位と、を含む樹脂からなり、
前記熱硬化性樹脂が、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂であり、
以下の工程(1)〜(4):
(1)pHを4に調整された濃度2質量%のベンゾヒドロキサム酸の水溶液50mL中で、前記トナーコア粒子の試料2gを、懸濁状態で60℃、6時間保持する工程、
(2)前記トナーコア粒子を含む懸濁液をろ過して、ろ液を得る工程、
(3)ろ液の波長440nmの光線に対する吸光度を測定する工程、及び
(4)工程(3)で測定された吸光度と、水溶液中でのベンゾヒドロキサム酸−鉄錯体の濃度と、ベンゾヒドロキサム酸−鉄錯体の水溶液の波長440nmの光線に対する吸光度とに関する検量線から、前記トナーコア粒子からの鉄の溶出量をろ液中の鉄濃度(mg/L)として測定する工程、
からなる方法で測定される、前記トナーコア粒子からの鉄の溶出量が10mg/L以下である、静電潜像現像用磁性トナー。 - 標準キャリアと、前記標準キャリアの質量に対して7質量%の前記トナーコア粒子とを、ターブラミキサーを用いて30分間混合する場合の、前記トナーコア粒子の摩擦帯電量が、−20μC/g以上−5μC/g以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用磁性トナー。
- 前記シェル層の厚さが1nm以上20nm以下である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用磁性トナー。
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