JP6387917B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

静電潜像現像用トナー Download PDF

Info

Publication number
JP6387917B2
JP6387917B2 JP2015142070A JP2015142070A JP6387917B2 JP 6387917 B2 JP6387917 B2 JP 6387917B2 JP 2015142070 A JP2015142070 A JP 2015142070A JP 2015142070 A JP2015142070 A JP 2015142070A JP 6387917 B2 JP6387917 B2 JP 6387917B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
toner
polyester resin
resin
shell layer
particles
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2015142070A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017026669A (ja
Inventor
雅史 山下
雅史 山下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyocera Document Solutions Inc
Original Assignee
Kyocera Document Solutions Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyocera Document Solutions Inc filed Critical Kyocera Document Solutions Inc
Priority to JP2015142070A priority Critical patent/JP6387917B2/ja
Publication of JP2017026669A publication Critical patent/JP2017026669A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6387917B2 publication Critical patent/JP6387917B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Developing Agents For Electrophotography (AREA)

Description

本発明は、静電潜像現像用トナー(以下、トナーと記載する場合がある)に関する。
画像形成装置の省エネルギー化と小型化との観点から、低温定着性に優れるトナーが望まれている。低温定着性に優れるトナーを用いることにより、定着ローラーを極力加熱することなく、トナーを記録媒体に定着できる傾向にある。しかし、低温定着性に優れるトナーには、融点又はガラス転移点の低い結着樹脂、及び融点の低い離型剤が含有されることが多い。このようなトナーを高温で保存すると、トナーに含まれるトナー粒子が凝集し易くなる。トナー粒子が凝集すると、凝集しているトナー粒子の帯電量が、他の凝集していないトナー粒子の帯電量と比較して低下し易い。
そこで、コア−シェル構造のトナー粒子を含むトナーが検討されている。コア−シェル構造のトナー粒子は、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを備える。シェル層に含有される樹脂のガラス転移点は、例えば、トナーコアに含有される結着樹脂のガラス転移点よりも高い。これにより、トナーの低温定着性を維持しつつ、トナーの耐熱保存性、及び耐ブロッキング性を向上させることが検討されている。
特許文献1に記載のトナーでは、トナーコアの表面が薄膜(シェル層)により実質的に連続して被覆されている。薄膜(シェル層)は熱硬化性樹脂を含む。特許文献2に記載のトナーは、コア層(トナーコア)が結晶性ポリエステル樹脂を含む。結晶性ポリエステル樹脂の融点は、50℃以上100℃以下である。
特開2004−138985号公報 特開2005−234046号公報
しかし、特許文献1に記載のトナーは、熱硬化性樹脂のみから形成されるシェル層を有する。また、特許文献2に記載のトナーでは、トナーコアが、50℃以上100℃以下の融点を有する結晶性ポリエステル樹脂を含有する。そのため、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることは困難であった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、耐熱保存性及び低温定着性の両立が可能なトナーを提供することを目的とする。
本発明の静電潜像現像用トナーは、トナー粒子を複数含む。前記トナー粒子は、結着樹脂と着色剤とを少なくとも含有するトナーコアと、前記トナーコアの表面に備えられた複数の無機酸化物粒子と、前記無機酸化物粒子が備えられた前記トナーコアを被覆するシェル層とを有する。前記シェル層は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有する。前記シェル層の厚さは、5nm以上20nm以下である。前記結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。前記結晶性ポリエステル樹脂の融点は、20℃以上50℃未満である。前記無機酸化物粒子による前記トナーコアの被覆率は、30%以上80%以下である。
本発明によれば、耐熱保存性及び低温定着性の両立が可能なトナーを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下、アクリルとメタクリルとを包括して「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。更に、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、平均値は、何ら規定していなければ、個数平均値を意味する。また、粉体(例えば後述する、トナー、トナー粒子、トナー母粒子、無機酸化物粒子)に関する評価値(形状又は物性などを示す値)も、何ら規定していなければ、個数平均値を意味する。個数平均値は、相当数の測定対象について測定した値の和を、測定した個数で除算した値である。更に、粉体の粒子径は、何ら規定していなければ、電子顕微鏡により測定された一次粒子の円相当径である。円相当径は、粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径である。体積中位径D50は、コールターカウンター法により体積基準で算出されたメディアン径を意味する。
本実施形態はトナーに関する。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、トナーコアと、無機酸化物粒子と、シェル層とを有する。トナーは、実質的にトナー粒子のみを含んでもよいし、トナー粒子に加えてトナー粒子以外の成分を含んでもよい。また、本実施形態に係るトナーは、実質的にコア−シェル構造のトナー粒子を含有するが、コア−シェル構造以外のトナー粒子を含有してもよい。
<1.トナーコア>
トナーコアは、結着樹脂と着色剤とを少なくとも含有する。トナーコアは、必要に応じて、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉のうちの1種以上を更に含有してもよい。ただし、トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を割愛してもよい。
<1−1.結着樹脂>
結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。トナーコアが非結晶性ポリエステル樹脂に加えて、結晶性ポリエステル樹脂を含有することにより、トナーの低温定着性が向上する傾向にある。
ポリエステル樹脂が結晶性であるか又は非結晶性であるかは、ポリエステル樹脂の結晶性指数に基づいて判断される。結晶性指数が0.900以上1.100未満であるポリエステル樹脂を、結晶性ポリエステル樹脂とする。結晶性指数が0.900未満、又は1.100以上であるポリエステル樹脂を、非結晶性ポリエステル樹脂とする。トナーの低温定着性を向上させるためには、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数が0.940以上1.050以下であることが好ましく、0.970以上1.050以下であることがより好ましく、0.980以上1.050以下であることが特に好ましい。
ポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)とポリエステル樹脂の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mp)との比率(Tm/Mp)から求められる。ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)と融点(Mp)とは、例えば、以下のように測定される。
(融点の測定方法)
ポリエステル樹脂の融点(Mp)は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定される。アルミ皿に10mg以上15mg以下の測定試料(ポリエステル樹脂)を入れる。続いてDSCの測定部にアルミ皿をセットする。リファレンスには空のアルミ皿を用いる。続けて、下記のRUN1、2及び3の温度プログラムを実行する。RUN3の温度プログラムを実行した際に測定されたデータを用いる。詳しくは、10℃を測定開始温度とし、10℃/分の速度で150℃まで昇温させた際に観測される融解熱の最大ピーク温度を、測定試料の融点(Mp)とする。
RUN1:10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温
RUN2:150℃から10℃まで10℃/分の速度で降温
RUN3:10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温
(軟化点の測定方法)
ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)は、高化式フローテスター(例えば、株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定される。測定試料(ポリエステル樹脂)を高化式フローテスターにセットする。ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の測定試料を溶融し流出させる。これにより、軟化点(Tm)を測定する。高化式フローテスターの測定により得られる、温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブから、測定試料の軟化点(Tm)を読み取る。具体的には、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とする。S字カーブ中の、ストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を、測定試料の軟化点(Tm)とする。なお、測定試料の軟化点(Tm)は、測定試料の1/2流出温度(T1/2)に相当する。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、20℃以上50℃未満である。結晶性ポリエステル樹脂の融点は、25℃以上50℃未満であることが好ましく、25℃以上47℃以下であることがより好ましい。トナーコアに含有される結晶性ポリエステル樹脂の融点が20℃以上であると、トナーの耐熱保存性を向上させ易い。また、トナーを記録媒体に高温で定着させる場合に、形成される画像にオフセットが発生し難くなる。トナーコアに含有される結晶性ポリエステル樹脂の融点が50℃未満であると、トナーの低温定着性を向上させ易い。
次に、結晶性ポリエステル樹脂、及び非結晶性ポリエステル樹脂として使用されるポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂は、トナー用の結着樹脂として使用されるポリエステル樹脂から適宜選択される。ポリエステル樹脂は、例えばアルコールとカルボン酸とを縮重合又は共縮重合させることにより得られる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールとしては、例えば、2価アルコール、又は3価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールの例としては、ジオール類、又はビスフェノール類が挙げられる。
ジオール類の例としては、炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、又はジプロピレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸としては、例えば、2価カルボン酸、又は3価以上のカルボン酸が挙げられる。
2価カルボン酸の例としては、炭素原子数2以上16以下の脂肪族2価カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、又はテレフタル酸が挙げられる。炭素原子数2以上16以下の脂肪族2価カルボン酸の例としては、炭素原子数2以上16以下のアルカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、又はアルケニルコハク酸が挙げられる。アルキルコハク酸の具体例としては、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸の具体例としては、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
上記アルコール、及びカルボン酸は、各々1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、上記カルボン酸を、エステル形成性の誘導体に誘導体化して使用してもよい。エステル形成性の誘導体は、例えば、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステルである。ここで「低級アルキル」とは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を意味する。
結晶性ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールのなかでは、ポリエステル樹脂の結晶化を促進し易いことから、炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオールがより好ましい。なかでも、ポリエステル樹脂の結晶化をより促進し易いことから炭素原子数2以上8以下のα,ω−アルカンジオールが更に好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオールの含有量が、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールのモル数に対して、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールに最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸の中では、ポリエステル樹脂の結晶化を促進し易いことから、炭素原子数2以上16以下の脂肪族2価カルボン酸(ジカルボン酸)が好ましく、炭素原子数2以上16以下のα,ω−アルカンジカルボン酸(例えば、1,10−デカンジカルボン酸)がより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、炭素原子数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸の含有量が、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸のモル数に対して、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、カルボン酸に最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
ポリエステル樹脂の結晶性指数は、モノマーであるアルコールの種類、及び使用量、並びにカルボン酸の種類、及び使用量を適宜変更することにより調整される。結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂は、各々、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリエステル樹脂中の、非結晶性ポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル樹脂を除く樹脂)の質量(Wa)に対する結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wc)の比率(Wc/Wa)は、1/100以上100/100以下であることが好ましく、3/100以上100/100以下であることがより好ましく、5/100以上45/100以下であることが一層好ましく、15/100以上35/100以下であることが特に好ましい。トナーコアに含有される非結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wa)に対する結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wc)の比率(Wc/Wa)がこのような範囲内であると、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を両立させ易くなる。
非結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。非結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、15mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、2mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。
非結晶性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は、例えば、非結晶性ポリエステル樹脂を製造する際の、アルコールの使用量とカルボン酸の使用量とを、それぞれ適宜変更することによって調整される。また、非結晶性ポリエステル樹脂の分子量を上げると、非結晶性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。結晶性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は、非結晶性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価の調整と同様の方法で調整される。
以下、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂に共通する性質を説明する。
ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、30℃以上60℃以下であることが好ましく、35℃以上55℃以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、例えば以下のように測定される。
(ガラス転移点の測定方法)
ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、ポリエステル樹脂の比熱の変化点から求められる。より具体的には、測定装置として示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いる。測定試料(ポリエステル樹脂)10mgを測定装置のアルミパン中に入れる。リファレンスとして空のアルミパンを使用する。測定温度範囲25℃以上200℃以下、及び昇温速度10℃/分の条件で測定することにより、測定試料の吸熱曲線を得る。得られた測定試料の吸熱曲線から、測定試料のガラス転移点(Tg)を求める。
ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)は、60℃以上150℃以下であることが好ましく、70℃以上140℃以下であることがより好ましい。また、異なる軟化点を有する複数種のポリエステル樹脂を、ポリエステル樹脂の軟化点がこのような範囲内の値となるように組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)は、10,000以上50,000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、8以上50以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である。
トナーコアに含有されるポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)が10,000以上であると、トナーの耐熱保存性を向上させ易い。また、トナーを記録媒体に高温で定着させる場合に、形成される画像にオフセットが発生し難くなる。トナーコアに含有されるポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)が50,000以下であると、低温環境下であってもトナーを記録媒体に良好に定着させ易い。
トナーコアに含有されるポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が8以上であると、トナーの耐熱保存性を向上させ易い。また、トナーを記録媒体に高温で定着させる場合に、形成される画像にオフセットが発生し難くなる。トナーコアに含有されるポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が50以下であると、低温環境下であってもトナーを記録媒体に良好に定着させ易くなる。
ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。以下、GPCを用いる質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との測定方法の一例を説明する。
(GPCを用いる分子量の測定方法)
測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いる。測定試料(ポリエステル樹脂)を、3.0mg/mLの濃度となるようにTHFに投入し、1時間静置させてTHF中に溶解させる。得られるTHF溶液を前処理用フィルター(例えば、倉敷紡績株式会社製「クロマトディスク 25N」、非水系、膜孔径0.45μm)で濾過して、測定試料の溶液を得る。GPCの測定は、以下のような装置及び条件で行われる。具体的には、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させる。続けて、40℃になったカラムに、流速1mL/分でTHFを流し、50μL以上200μL以下の測定試料の溶液をカラムに導入する。そして、カラムに導入された測定試料の分子量分布を測定する。
測定試料の分子量分布は、検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出される。検量線は、数種類の単分散ポリスチレン標準試料を使用して作製される。単分散ポリスチレン標準試料の例としては、東ソー株式会社製の標準ポリスチレン(分子量3.84×106、1.09×106、3.55×105、1.02×105、4.39×104、9.10×103、及び2.98×103)が挙げられる。検出器としては、測定試料の組成によらず検出が可能である点でRI検出器が好ましい。カラムとしては、例えば、複数の標準的なポリスチレンジェルカラムが組み合わせて使用される。GPC測定条件の例としては、以下のような測定条件が挙げられる。
(GPC測定条件)
装置:HLC−8220(東ソー株式会社製)
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel GMHXL(東ソー株式会社製)
カラム本数:2本
検出器:RI
溶出液流速:1mL/分
試料溶液濃度:3.0mg/mL
カラム温度:40℃
試料溶液量:100μL
検量線:標準ポリスチレンを用いて作製された検量線
トナーコアは、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂以外に更に別の結着樹脂を含有してもよい。別の結着樹脂は、トナー用結着樹脂として使用される公知の樹脂から適宜選択される。
結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有率(結晶性ポリエステル樹脂、及び非結晶性ポリエステル樹脂の合計含有率)は、結着樹脂の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
トナーコア中のポリエステル樹脂の種類及び組成、並びに後述する離型剤の種類及び組成を変更することにより、トナーのガラス転移点及び軟化点が調整される。トナーのガラス転移点は、30℃以上50℃以下であることが好ましい。トナーの軟化点は、70℃以上100℃以下であることが好ましい。トナーのガラス転移点及び軟化点がこのような範囲内であると、トナーの耐熱保存性及び低温定着性を両立させ易くなる。また、トナーを記録媒体に高温で定着させる場合に、形成される画像にオフセットが発生し難くなる。
トナーのガラス転移点及び軟化点は、トナーを測定試料として用いて、ポリエステル樹脂のガラス転移点及び軟化点と同様の方法で測定される。トナーのガラス転移点の測定において、ガラス転移点が多段階で観測される場合は、最も低温で観測される点をガラス転移点とする。
<1−2.着色剤>
着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料が用いられる。着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有してもよい。黒色着色剤としては、例えば黒色顔料、又は黒色染料が挙げられる。黒色顔料の具体例としては、カーボンブラックが挙げられる。後述するイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された黒色着色剤を使用してもよい。
トナーコアは、カラー着色剤を含有してもよい。カラー着色剤の例としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤の例としては、イエロー顔料、又はイエロー染料が挙げられ、より具体的には、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリールアミド化合物が挙げられる。イエロー着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤の例としては、マゼンタ顔料、又はマゼンタ染料が挙げられ、より具体的には、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物が挙げられる。マゼンタ着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が挙げられる。
シアン着色剤の例としては、シアン顔料、又はシアン染料が挙げられ、より具体的には、銅フタロシアニン、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物が挙げられる。シアン着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが挙げられる。
<1−3.離型剤>
トナーコアは離型剤を含有してもよい。トナーコアが離型剤を含有することにより、トナーの定着性及び耐オフセット性が向上すると考えられる。トナーの定着性及び耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、3質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤としてはワックスが好ましい。ワックスの例としては、エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、又はモンタンワックスが挙げられる。トナーの定着性及び耐オフセット性を向上させるためには、エステルワックスが好ましい。エステルワックスとしては、天然エステルワックス(具体的には、カルナウバワックス、又はライスワックス)、又は合成エステルワックスが挙げられる。これらの離型剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エステルワックスの中では、合成エステルワックスが好ましい。合成エステルワックスの原料を適宜選択することにより、示差走査熱量計を用いて測定される離型剤の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mp)を、後述する好適な範囲内に調整し易いためである。
合成エステルワックスを製造する方法は、化学合成法である限り特に限定されない。例えば、合成エステルワックスは、酸触媒の存在下でアルコールとカルボン酸とを反応させることにより合成される。別の例では、合成エステルワックスは、カルボン酸ハライドとアルコールとを反応させることにより合成される。なお、合成エステルワックスの原料は、例えば、天然油脂から製造される長鎖脂肪酸のように天然物に由来する原料でもよい。また、合成エステルワックスとしては、合成品として市販されているエステルワックスを用いてもよい。
離型剤の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度)は、50℃以上100℃以下であることが好ましい。トナーコアに含有される離型剤の融点がこのような範囲内であると、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性とを両立させ易い。離型剤の融点は、例えば、示差走査熱量計を用いて測定される。
<1−4.電荷制御剤>
電荷制御剤は、例えば、帯電レベル、及び帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。また、耐久性及び安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルに帯電可能か否かの指標である。
正帯電させたトナーを用いて現像する場合には、正帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましい。一方、負帯電させたトナーを用いて現像する場合には、負帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましい。ただし、トナーにおいて十分な帯電量が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させなくてもよい。
電荷制御剤としては、トナーに使用される電荷制御剤から適宜選択される。正帯電性の電荷制御剤の例としては、アジン化合物、アジン化合物からなる直接染料、ニグロシン化合物、ニグロシン化合物からなる酸性染料、ナフテン酸の金属塩類、高級脂肪酸の金属塩類、アルコキシル化アミン、アルキルアミド、又は4級アンモニウム塩が挙げられる。
アジン化合物の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2−オキサジン、1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2−チアジン、1,3−チアジン、1,4−チアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、又はキノキサリンが挙げられる。
アジン化合物からなる直接染料の例としては、アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、又はアジンディープブラック3RLが挙げられる。
ニグロシン化合物の例としては、ニグロシン、ニグロシン塩、又はニグロシン誘導体が挙げられる。
ニグロシン化合物からなる酸性染料の例としては、ニグロシンBK、ニグロシンNB、又はニグロシンZが挙げられる。
4級アンモニウム塩の例としては、ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウム、又はデシルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂を、正帯電性の電荷制御剤として使用してもよい。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル酸系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル酸系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル酸系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル酸系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル酸系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル酸系樹脂、又はカルボキシル基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
負帯電性の電荷制御剤の例としては、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の例としては、アルミニウムアセチルアセトナート又は鉄(II)アセチルアセトナートのようなアセチルアセトン金属錯体;又は3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロムのようなサリチル酸系金属錯体が挙げられる。有機金属塩の例としては、サリチル酸系金属塩が挙げられる。なかでも、サリチル酸系金属錯体、及びサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、トナー100.0質量部に対して、0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上15.0質量部以下であることがより好ましい。
<1−5.磁性粉>
磁性粉の例としては、鉄、強磁性金属、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、強磁性化処理を施された強磁性合金、あるいは二酸化クロムが挙げられる。鉄の例としては、フェライト、又はマグネタイトが挙げられる。強磁性金属の例としては、コバルト、又はニッケルが挙げられる。強磁性化処理の例としては、熱処理が挙げられる。
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。このような範囲内の粒子径を有する磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させ易い。
磁性粉を含有するトナーコアを用いて製造されたトナー粒子を含むトナーは、例えば、磁性1成分現像剤として使用される。トナーを磁性1成分現像剤として使用する場合、磁性粉の含有量は、トナー100質量部に対して、35質量部以上60質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。
磁性粉を含有するトナーコアを用いて製造されたトナー粒子を含むトナーを、キャリアと混合して、磁性2成分現像剤において使用してもよい。トナーを磁性2成分現像剤において使用する場合、磁性粉の含有量は、トナー100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
<2.無機酸化物粒子>
トナーコアの表面には、複数の無機酸化物粒子が備えられる。トナーコアの表面に無機酸化物粒子が備えられることにより、以下のような利点があると推測される。
既に述べたように、トナーコアに結晶性ポリエステル樹脂を含有させると、トナーの低温定着性を向上させ易い。しかし、結晶性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は、非結晶性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価と比較して低い傾向にある。そのため、トナーコアをシェル層で被覆する際に、トナーコアの表面に露出している結晶性ポリエステル樹脂と、後述する熱硬化性樹脂の原料との結合反応が進行し難くいことがある。特に、結晶性ポリエステル樹脂の融点が低い(例えば、20℃以上50℃未満である)場合には、トナーコアをシェル層で被覆する際に、結晶性ポリエステル樹脂の溶融又はブリードが引き起こされ易い傾向にある。そのため、シェル層の原料の重合反応が安定的に進行しないことがある。その結果、シェル層が十分に形成されず、得られるトナーの耐熱保存性が低下し易くなる。
しかし、本実施形態のトナーでは、トナーコアの表面に複数の無機酸化物粒子が備えられる。これにより、無機酸化物粒子が、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナーコアとシェル層との間のスペーサーとして働くと考えられる。その結果、トナーコアをシェル層で被覆する際に、結晶性ポリエステル樹脂の溶融及び染み出し(ブリード)が引き起こされ難くなる。また、無機酸化物微粒子が水酸基を有する場合には、無機酸化物微粒子の水酸基と、シェル層を形成するための熱硬化性樹脂の原料の官能基とが結合し易くなる。その結果、シェル層の原料の重合反応が安定的に進行すると考えられる。
無機酸化物微粒子の例としては、シリカ、又は金属酸化物が挙げられる。金属酸化物としては、アルミナ、酸化チタン(例えば、チタニア)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウムが挙げられる。
無機酸化物粒子によるトナーコアの被覆率は、30%以上80%以下である。被覆率が30%未満であると、トナーコアの表面に露出している結晶性ポリエステル樹脂が無機酸化物粒子によって十分に被覆されないため、シェル層の原料の重合反応が安定的に進行し難い。一方、被覆率が80%超であると、無機酸化物粒子を備えるトナーコアの比表面積が増大するため、薄いシェル層(例えば、5nm以上20nm以下の厚さのシェル層)を形成し難い。その結果、被覆率が30%未満又は80%超である場合には、シェル層が十分に形成されず、得られるトナーの耐熱保存性が低下する傾向にある。
被覆率の測定方法の一例を説明する。まず、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いて観察し、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアのTEM撮影像を得る。エネルギー分散X線分光分析(EDX)により、TEM撮影像中に、無機酸化物粒子に特徴的な構成元素(例えば、Si、又はTi)をマッピングする。TEM撮影像を解析することにより、トナーコアの表面の総面積Ftと、トナーコアの表面のうちの無機酸化物粒子が備えられた領域の面積(マッピングされた領域の面積)Fiとを算出する。算出したFiとFtとから、数式(1)に従って被覆率を算出する。数式(1)中、Fiはトナーコアの表面のうちの無機酸化物粒子が備えられた領域の面積を示す。Ftはトナーコアの表面の総面積を示す。
被覆率F=100×Fi/Ft・・・(1)
被覆率の測定方法の別の例を説明する。被覆率は、例えば、数式(2)を用いても求められる。数式(2)中、Fは無機微粒子の被覆率[%]を示す。Dtは無機酸化物粒子の体積中位径D50[μm]を示す。体積中位径D50は無機酸化物粒子の粒度分布を測定することにより求められる。diは無機酸化物粒子の平均粒子径[μm]を示す。無機酸化物粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により10個の無機酸化物粒子を観察し、得られたSEM撮影画像より、各無機酸化物粒子の長さを測定し、測定された長さの個数平均値を算出することにより求められる。ρtはトナー粒子の真比重を示す。ρiは無機酸化物粒子の真比重を示す。Cはトナー粒子の質量に対する無機酸化物粒子の質量の比率(無機酸化物粒子の質量/トナー粒子の質量)を示す。
Figure 0006387917
トナーコアの表面にトナーコアを好適に付着させ、シェル層の原料の重合反応を安定的に進行させるためには、無機酸化物微粒子の平均粒子径は、5nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることが更に好ましい。
(平均粒子径の測定方法)
無機酸化物粒子の平均粒子径は、例えば、以下のように測定される。具体的には、無機酸化物粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察倍率10000倍で観察する。測定対象として、100個の無機酸化物粒子を無作為に選択する。選択された100個の無機酸化物粒子の各々について、一次粒子の円相当径を測定する。測定された100個の無機酸化物粒子の一次粒子の円相当径の和を、測定対象の個数(100個)で除算する。これにより、無機酸化物粒子の平均粒子径が算出される。
<3.シェル層>
シェル層は、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを被覆する。本実施形態のトナー粒子では、トナーコアの表面に複数の無機酸化物粒子が付着する、これにより、トナーコアを被覆する無機酸化物粒子の層が形成されると考えられる。そして、形成された無機酸化物粒子の層を更に被覆するように、シェル層が形成される。
シェル層は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有する。シェル層が熱可塑性樹脂のみを含有すると、トナーを高温で保存する際に、トナーに含まれるトナー粒子が互いに融着し易くなる。一方、シェル層が熱硬化性樹脂のみを含有すると、トナーを定着時に加熱する際に、トナーに含まれるトナー粒子が破壊され難く、トナーの低温定着性が低下し易い。そのため、シェル層に熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有させることにより、トナーの低温定着性と耐熱保存性との両立を図ることができると考えられる。
シェル層は、熱硬化性樹脂の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー、又はプレポリマー)と、熱可塑性樹脂の原料(例えば、熱可塑性樹脂)とを、混合、又は反応させることにより形成される。シェル層中で、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とが混ざり合って固化し、熱硬化性樹脂で形成される領域と、熱可塑性樹脂で形成される領域とが、シェル層中に混在していてもよい。また、シェル層には、熱硬化性樹脂の原料(例えば、重合されていない又は縮重合されていない、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマー)が含有されていてもよい。更に、シェル層中で、熱硬化性樹脂が有する置換基の少なくとも一部と、熱可塑性樹脂が有する置換基の少なくとも一部とが、化学的に結合(架橋)していてもよい。
シェル層中で熱硬化性樹脂が有する置換基と熱可塑性樹脂が有する置換基とが化学的に結合(架橋)している場合、シェル層は、熱可塑性樹脂に起因する適度な柔軟性を有する。更に、適度な柔軟性と共に、熱硬化性樹脂が形成する三次元の架橋構造に起因して、シェル層は適度な機械的強度も有する。このようなシェル層を備えるトナー粒子は、保管時及び輸送時に破壊され難い。一方で、このようなトナー粒子は、定着時に温度及び圧力が印加されると、容易に破壊される傾向にある。その結果、シェル層が薄い(例えば、5nm以上20nm以下である)場合であっても、トナーの耐熱保存性及び低温定着性を両立させ易くなる。以下、シェル層に含有される熱硬化性樹脂、及び熱可塑性樹脂を説明する。
<3−1.熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂のモノマーの1種以上を重縮合させることにより形成される。熱硬化性樹脂のモノマーは、トナーコア中のポリエステル樹脂が有する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)と反応し得る官能基を有することが好ましい。また、熱硬化性樹脂のモノマーは、無機酸化物粒子が有する官能基(例えば、水酸基)と反応し得る官能基を有することが好ましい。無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの表面には、ポリエステル樹脂が有する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)、及び無機酸化物粒子が有する官能基(例えば、水酸基)が露出している。そのため、トナーコアの表面にシェル層を形成する際に、熱硬化性樹脂のモノマー(例えば、メチロールメラミン)と、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの表面に露出する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)とが反応し易くなる。これにより、トナーコアとシェル層との間、及び無機酸化物粒子とシェル層との間に、共有結合が形成され易くなる。その結果、シェル層と無機酸化物粒子を備えたトナーコアとが強固に結合し易くなる。
シェル層に含有される熱硬化性樹脂は、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂であることが好ましい。シェル層に含有される熱硬化性樹脂の原料としては、メラミン樹脂のモノマー、尿素樹脂のモノマー、又はグリオキザール樹脂のモノマーが挙げられる。
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。メラミン樹脂の形成に使用されるモノマーはメラミンである。尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂の形成に使用されるモノマーは尿素である。グリオキザール樹脂は、グリオキサールと尿素との反応生成物と、ホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂の形成に使用されるモノマーは、グリオキサールと尿素との反応生成物である。
メラミン、尿素、及びグリオキサールと反応させる尿素は、公知の変性を受けていてもよい。例えば、熱硬化性樹脂のモノマーを、熱可塑性樹脂と反応させる前に、ホルムアルデヒドによりメチロール化することにより、誘導体としてもよい。
メラミン、尿素、及びグリオキサールと尿素との反応生成物は、プレポリマー(以下、初期重合体と記載する場合がある)の形態で使用されてもよい。ここで、プレポリマーとは、モノマーの重合反応、又は重縮合反応を、その重合度がポリマーの重合度に到達する前の段階で停止することにより得られる中間生成物を意味する。
熱硬化性樹脂としてメラミン樹脂、尿素樹脂、又はグリオキザール樹脂を使用する場合、シェル層には窒素原子が含有される。具体的には、メラミン樹脂のモノマーであるメラミンに由来する窒素原子、尿素樹脂のモノマーである尿素に由来する窒素原子、及び/又はグリオキザール樹脂のモノマーであるグリオキサールと尿素との反応生成物に由来する窒素原子が含有される。窒素原子を含むシェル層を備えるトナーは、正帯電され易い。よって、本実施形態のトナーを正帯電させて画像を形成する場合、トナーに含まれるトナー粒子を所望の帯電量に正帯電させ易い。トナーに含まれるトナー粒子を所望する帯電量に正帯電させ易い点で、シェル層中の窒素原子の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。
<3−2.熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー及びプレポリマーの一方又は両方)が有する官能基(例えば、メチロール基、及びアミノ基)と反応性を有する官能基を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂の原料が有する官能基(例えば、メチロール基、及びアミノ基)と反応性を有する官能基としては、活性水素原子を含む官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基)が挙げられる。アミノ基は、カルバモイル基(−CONH2)として熱可塑性樹脂中に含まれてもよい。
シェル層の形成が容易であることから、熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリルアミドに由来する単位を含む樹脂が好ましい。また同様の理由から、熱可塑性樹脂としては、カルボジイミド基、オキサゾリン基、若しくはグリシジル基のような官能基を有するモノマーに由来する単位を含む樹脂も好ましい。
シェル層の形成に使用される熱可塑性樹脂の具体例としては、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸系共重合体、シリコーン−(メタ)アクリルグラフト共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、又はエチレンビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらの樹脂は、カルボジイミド基、オキサゾリン基、若しくはグリシジル基のような官能基を有するモノマーに由来する単位を含んでいてもよい。これらの中でも、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸系共重合体、又はシリコーン−(メタ)アクリルグラフト共重合体が好ましく、アクリル酸系樹脂がより好ましい。アクリル酸系樹脂としては、(メタ)アクリルアミド重合体、及び(メタ)アクリルアミド−アクリル酸系共重合体が好ましい。
アクリル酸系樹脂は、アクリル酸系モノマーを重合させることにより形成される。アクリル酸系モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド付加物、又は(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、又は(メタ)アクリル酸n−ブチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルの例としては、(メタ)アクリル酸フェニルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテルの例としては、(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物の、メチルエーテル、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、又はn−ブチルエーテルが挙げられる。
アクリル酸系モノマーのなかでも、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテルが好ましい。
アクリル酸系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
結着樹脂の溶解及び、トナーコアに含有される離型剤の溶出が生じにくいことから、シェル層の形成は水性媒体中で行われることが好ましい。このため、シェル層の形成に用いられる熱可塑性樹脂は水溶性であることが好ましい。特に、シェル層の形成には、熱可塑性樹脂を水溶液として用いることが好ましい。
シェル層中の、熱可塑性樹脂の質量(Wp)に対する熱硬化性樹脂の質量(Ws)の比率(Ws/Wp)は、1.0以上20.0以下であることが好ましく、1.8以上17.0以下であることがより好ましく、2.7以上16.0以下であることが特に好ましい。
シェル層における、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との合計含有量は、シェル層の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
シェル層の厚さは、5nm以上20nm以下である。シェル層の厚さは、5nm以上15nm以下であることが好ましい。トナー粒子が有するシェル層の厚さが20nm超であると、トナーを記録媒体へ定着させる際にトナー粒子に圧力が印加されても、トナー粒子のシェル層が破壊され難い。そのため、トナーコアに含有される結着樹脂の軟化及び溶融、並びに離型剤の軟化及び溶融が進行し難く、低温域でトナーを記録媒体に定着させ難くなる。一方、トナー粒子が有するシェル層の厚さが5nm未満であると、シェル層の強度が低くなり易い。シェル層の強度が低いと、輸送時にトナー粒子に与えられる衝撃によって、トナー粒子のシェル層が破壊され易くなる。また、高温でトナーを保存する場合に、シェル層の少なくとも一部が破壊されたトナー粒子は凝集し易い。そのため、高温条件下で、シェル層の破壊された箇所を通じて、離型剤のような成分がトナー粒子の表面に染み出し易くなる。
(シェル層の厚さの測定方法)
シェル層の厚さは、例えば以下の方法で測定される。トナー粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率30000倍及び100000倍で観察する。これにより、トナー粒子の断面のTEM写真を撮影し、TEM撮影像を得る。続けて、トナー粒子の断面のTEM撮影像を、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析する。トナー粒子の断面の略中心点で直交する2本の直線を引き、2本の直線上のシェル層と交差する4箇所の長さを測定する。このようにして測定される4箇所の長さの平均値を、測定対象の1個のトナー粒子が備えるシェル層の厚さとする。このようなシェル層の厚さの測定を、10個のトナー粒子に対して行う。測定対象の10個のトナー粒子それぞれが備えるシェル層の厚さの平均値を求める。求められた平均値の和を測定対象の個数(10個)で除算する。得られた値を、トナーが備えるシェル層の厚さとする。
シェル層が薄過ぎる(例えば、5nm未満である)場合、TEM画像上でシェル層とトナーコアとの界面が不明瞭であるため、シェル層の厚さの測定が困難な場合がある。このような場合は、TEM撮影と、電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせて、TEM画像中に、シェル層の材質に特徴的な元素(例えば、窒素)のマッピングを行い、シェル層とトナーコアとの界面を明確化して、シェル層の厚さを計測してもよい。
シェル層の厚さは、シェル層を形成するために使用されるシェル層の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー、熱硬化性樹脂のプレポリマー、又は熱可塑性樹脂)の使用量を適宜変更することによって調整される。シェル層の厚さは、例えば、トナーコアの比表面積と、熱硬化性樹脂の量と、熱可塑性樹脂の量とから、数式(3)に従って算出される。
シェル層の厚さ=(熱硬化性樹脂の量+熱可塑性樹脂の量)/トナーコアの比表面積・・・(3)
<4.外添剤>
シェル層で被覆されたトナーコアの表面には、必要に応じて外添剤を付着させてもよい。なお、外添剤を付着させる前の粒子(シェル層で被覆されたトナーコア)を、トナー母粒子と記載する場合がある。
外添剤としては、シリカ、又は金属酸化物が挙げられる。金属酸化物としては、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウムが挙げられる。
外添剤の粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
<5.キャリア>
トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いることが好ましい。
キャリアの一例として、樹脂で被覆されたキャリアコアが挙げられる。キャリアコアは磁性粒子によって形成される。キャリアの別の例として、樹脂中に磁性粒子を分散させた樹脂キャリアが挙げられる。
磁性粒子の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、若しくはコバルトの粒子;これらの材料とマンガン、亜鉛、及びアルミニウムのような金属との合金の粒子;鉄−ニッケル合金の粒子;鉄−コバルト合金の粒子;セラミックスの粒子;又は高誘電率物質の粒子が挙げられる。セラミックスの粒子として使用されるセラミックスとしては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、又はニオブ酸リチウムが挙げられる。高誘電率物質の粒子として使用される高誘電率物質としては、例えば、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、又はロッシェル塩が挙げられる。
キャリアコアを被覆する樹脂、及び樹脂キャリアに含有される樹脂の例としては、アクリル酸系重合体、スチレン系重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、オレフィン重合体(例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、及びポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、又はアミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
キャリアの粒子径は、20μm以上120μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。キャリアの粒子径は、例えば、電子顕微鏡により測定される。
トナーを2成分現像剤において用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
<6.トナーの製造方法>
トナーの製造方法は、トナーコアをシェル層で被覆できる方法である限り、特に限定されない。以下、トナーの製造方法の一例を説明する。
<6−1.トナーコアの形成工程>
トナーコアの形成工程では、結着樹脂中に、着色剤、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)を分散させることにより、トナーコアを形成する。トナーコアの製造方法は、結着樹脂中に、着色剤、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)を良好に分散させることができる限り特に限定されない。トナーコアの製造方法は、公知の方法から適宜選択される。トナーコアの製造方法としては、例えば、粉砕法、又は凝集法が挙げられる。
(粉砕法)
粉砕法では、まず、結着樹脂、着色剤、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)を混合する。得られた混合物を、溶融し混練する。得られた溶融混練物を、粉砕した後、分級して、所望の粒子径のトナーコアを得る。粉砕法は、後述の凝集法と比較して、トナーコアの調製が容易であるという利点を有する。一方、粉砕法は、粉砕工程を経てトナーコアを得るため、平均円形度の高いトナーコアが得られ難い。しかし、後述するシェル層の形成工程で、シェル層の原料を加熱することによりシェル層の硬化反応が進行する。その際に、やや軟化したトナーコアが表面張力によって収縮することで、トナーコアが球形化される傾向にある。従って、トナーコアを粉砕法で製造する場合であっても、トナー粒子の平均円形度を向上させ易い。そのため、トナーコアの製造方法としては粉砕法が好ましい。
(凝集法)
凝集法では、まず、結着樹脂の微粒子、着色剤の微粒子、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)の微粒子を、水性媒体中で凝集させて凝集粒子を得る。得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナーコアを含む水性分散液が得られる。得られた水性分散液から分散剤等を除去して洗浄する。その結果、トナーコアが得られる。
<6−2.無機酸化物粒子の付着工程>
無機酸化物粒子の付着工程では、トナーコアの表面に無機酸化物微粒子を付着させる。トナーコアの表面に無機酸化物微粒子を付着させる方法としては、混合機(例えば、FMミキサー、及びナウターミキサー(登録商標))を用いて、トナーコアと無機酸化物微粒子とを混合する方法が挙げられる。トナーコアと無機酸化物微粒子との混合においては、無機酸化物微粒子がトナーコアの表面に完全に埋没しないように、混合条件(例えば、混合機の回転数、及び混合時間)を設定することが好ましい。また、後述のシェル層の形成工程において無機酸化物粒子がトナーコアから脱離しないように、混合条件(例えば、混合機の回転数、及び混合時間)を設定することが好ましい。
無機酸化物粒子が備えられたトナーコアのゼータ電位は、pH4に調整された水性媒体中で負極性(0mV未満)であることが好ましく、−10mV以下であることがより好ましい。pH4に調整された水性媒体中での無機酸化物粒子が備えられたトナーコアのゼータ電位は、例えば、以下の方法で測定することができる。
(ゼータ電位の測定方法)
測定試料(無機酸化物粒子が備えられたトナーコア)0.2g、イオン交換水80mL、及びノニオン界面活性剤(例えば、株式会社日本触媒製「ポリビニルピロリドンK−85」、水分濃度5質量%、固形分濃度95%)20gを、マグネットスターラーを用いて混合する。これにより、測定試料をイオン交換水に均一に分散させて分散液を得る。得られた測定試料の分散液に希塩酸を加えて、測定試料の分散液のpHを4に調整する。これにより、pH4の測定試料の分散液を得る。pH4の測定試料の分散液について、分散液中の測定試料のゼータ電位を測定する。ゼータ電位は、ゼータ電位・粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて測定される。
標準キャリアと、標準キャリアの質量に対して7質量%の無機酸化物粒子が備えられたトナーコアとを、混合装置を用いて30分間混合する。この場合の無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの摩擦帯電量は、負極性(0μC/g未満)であることが好ましく、−10μC/g以下であることがより好ましい。無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの摩擦帯電量は、例えば、以下の方法により測定される。
(摩擦帯電量の測定方法)
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して7質量%の測定試料(無機酸化物粒子が備えられたトナーコア)とを、混合装置(例えば、WAB社製「ターブラ(登録商標)ミキサー」)を用いて30分間混合する。得られた混合物中の測定試料の摩擦帯電量をQ/mメーター(例えば、トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定する。このようにして測定される測定試料の摩擦帯電量は、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの帯電され易さの指標となる。また、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアが、正負何れの極性に帯電され易いかの指標となる。
通常、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアに均一なシェル層を形成するためには、分散剤を含む水性媒体中で無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを高度に分散させておくことが多い。しかし、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの摩擦帯電量が負極性(0μC/g未満)である場合、水性媒体中で、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアに、シェル層の原料(例えば、水性媒体中で正に帯電する熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマー)が、電気的に引き寄せられる。そして、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの表面で、トナーコア及び無機酸化物粒子と、熱硬化性樹脂の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマー)との反応が良好に進行する。このため、水性媒体中で負帯電する無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを用いてシェル層を形成すると、分散剤を用いて水性媒体中に無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを高度に分散させない場合であっても、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの表面に均一なシェル層を形成できる傾向にある。無機酸化物粒子が備えられたトナーコアのpH4の水性媒体中でのゼータ電位が、負極性(0mV未満)である場合にも同様の利点が得られる傾向にある。
標準キャリアとの摩擦帯電量、及びpH4の水性媒体中でのゼータ電位のうちの少なくとも一方が負極性を示す場合、このような無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを用いてトナー粒子を製造すると、以下のような利点があると考えられる。例えば、分散剤を用いない場合であっても、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアが均一なシェル層で被覆され易くなる。また、例えば、排水を希釈しない場合であっても、トナー粒子を製造する際に排出される排水の全有機炭素濃度を、低いレベル(例えば、15mg/L以下)にできる傾向にある。
<6−3.シェル層の形成工程>
シェル層の形成工程では、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアをシェル層で被覆することにより、シェル層を形成する。これにより、トナー母粒子が得られる。
シェル層を形成するための原料として、メラミン、尿素、グリオキサールと尿素との反応生成物、及びこれらとホルムアルデヒドとの付加反応によって生成される前駆体(メチロール化物)のうちの1種以上が用いられる。シェル層を形成するための原料として、更に熱可塑性樹脂が用いられる。
シェル層を形成する際には、シェル層の形成に用いる溶媒に対する、結着樹脂の溶解、及びトナーコアに含有される成分(例えば離型剤)の溶出を防ぐことが好ましい。このため、シェル層の形成は、水のような溶媒中で行われることが好ましい。
シェル層を形成する際に、熱可塑性樹脂の水溶液(例えば、固形分濃度11質量%)と熱硬化性樹脂の原料の水溶液(例えば、固形分濃度80質量%)を使用する場合、熱可塑性樹脂の水溶液の使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の水溶液の使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)は、2/8以上8/2以下であることが好ましく、3/7以上8/2以下であることがより好ましく、4/6以上7/3以下であることが特に好ましい。
シェル層の形成は、例えば、シェル層を形成するための原料の水溶液(原料を含む水性媒体)に、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを添加することにより行われる。水性媒体中に無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを添加した後、水性媒体中で無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを分散させる。
分散方法としては、分散液を強力に攪拌できる装置を用いて、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを水性媒体中で機械的に分散させる方法が挙げられる。分散液を強力に攪拌できる装置としては、例えば、混合装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスミックス」)が用いられる。
シェル層を形成するための原料の水溶液に無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを添加する前に、水溶液のpHを、酸性物質を用いて4程度に調整することが好ましい。水溶液のpHを酸性側に調整することで、シェル層を形成するための原料の重縮合反応が促進され易くなる。
必要に応じて水溶液のpHを調整した後、水性媒体中で、シェル層を形成するための原料と、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアとを混合する。これにより、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの水性分散液を得る。得られた水性分散液中で、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの表面と、シェル層を形成するための原料との反応を進行させる。
シェル層を形成する際の水性媒体の温度は、40℃以上95℃以下であることが好ましく、50℃以上80℃以下であることがより好ましい。このような範囲内の温度でシェル層を形成すると、シェル層の形成を進行させ易い。
シェル層が、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを被覆するように形成されることにより、トナー母粒子を含む水性分散液が得られる。トナー母粒子を含む水性分散液を常温まで冷却する。その後、必要に応じて、後述するトナー母粒子の洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程から選択される1つ以上の工程を行う。その結果、トナー粒子を含むトナーが得られる。
<6−4.洗浄工程>
トナー母粒子は、必要に応じて、水を用いて洗浄される。洗浄方法の例としては、トナー母粒子を含む水性分散液から、固液分離によりトナー母粒子のウェットケーキを回収し、得られるウェットケーキを、水を用いて洗浄する方法が挙げられる。洗浄方法の別の例としては、分散液中のトナー母粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー母粒子を水に再分散させる方法が挙げられる。
<6−5.乾燥工程>
トナー母粒子は、必要に応じて乾燥されてもよい。トナー母粒子を乾燥させる方法としては、乾燥機を用いる方法が挙げられる。乾燥機の例としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、又は減圧乾燥機が挙げられる。乾燥中のトナー母粒子の凝集を抑制するためには、スプレードライヤーを用いる方法が好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー母粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー母粒子の乾燥と同時に、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。
<6−6.外添工程>
トナー母粒子の表面には、必要に応じて外添剤を付着させてもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる方法としては、例えば、外添剤がトナー母粒子表面に埋没しないように条件で、混合機(例えば、FMミキサー及びナウターミキサー(登録商標))を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
トナーの製造方法は、要求されるトナーの特性に応じて任意に変更される。また、必要のない操作、及び工程は割愛してもよい。なお、外添工程を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
以上、本実施形態のトナーを説明した。本実施形態のトナーによれば、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の両立が可能となる。更に、本実施形態のトナーによれば、トナーを記録媒体に高温で定着させる場合に、形成される画像におけるオフセットの発生が抑制されると考えられる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
実施例、及び比較例における各物性は、以下の方法で測定した。
(ガラス転移点、軟化点、及び融点)
ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)、軟化点(Tm)、融点(Mp)は、実施形態で述べたガラス転移点の測定方法、軟化点の測定方法、融点の測定方法と同様の方法で測定した。熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)は、測定試料をポリエステル樹脂から熱可塑性樹脂に変更した以外は、実施形態で述べたガラス転移点の測定方法と同様の方法で測定した。
(結晶性指数)
ポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)と、ポリエステル樹脂の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mp)との比率(Tm/Mp)から求めた。
(体積中位径)
トナーコア、及びトナー母粒子の体積中位径D50は、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて測定した。
(質量平均分子量)
熱可塑性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、測定試料をポリエステル樹脂から熱可塑性樹脂に変更した以外は、実施形態で述べたGPCを用いる分子量の測定方法と同様の方法で測定した。
(被覆率)
無機酸化物微粒子によるトナーコアの被覆率は以下のように測定した。まず、無機酸化物粒子を備えたトナーコアを、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いて観察し、無機酸化物粒子を備えたトナーコアのTEM撮影像を得た。エネルギー分散X線分光分析(EDX)により、TEM撮影像中に、無機酸化物に特徴的な構成元素(Si、又はTiの何れか)をマッピングした。TEM撮影像を解析することにより、トナーコアの表面の総面積Ftと、トナーコアの表面のうちの無機酸化物粒子が備えられた領域の面積(マッピングされた領域の面積)Fiとを算出した。算出したFiとFtとから、数式(1)に従って被覆率を算出した。
被覆率F=100×Fi/Ft・・・(1)
(シェル層の厚さ)
シェル層の厚さは、以下のように測定した。まず、測定試料を調製した。トナーを常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、40℃の雰囲気に2日間静置し、硬化物を得た。得られた硬化物を、四酸化オスミウムを用いて染色した。その後、ダイヤモンドナイフをセットしたミクロトーム(ライカ株式会社製「EM UC6」)を用いて、得られた硬化物から、厚さ200nmのトナー粒子の断面観察用の薄片試料を切り出した。得られた薄片試料を、測定試料とした。測定試料を用いて、シェル層の厚さを、実施形態で述べたシェル層の厚さの測定方法と同様の方法で測定した。
<1.トナーを調製するための原料>
次に、実施例及び比較例のトナーを調製するために用いた原料を説明する。
<1−1.非結晶性ポリエステル樹脂>
トナーコアに含有させる結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂AP−1を準備した。詳しくは、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1575g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物163g、フマル酸377g、及び触媒(酸化ジブチル錫)4gを反応容器に仕込んだ。反応容器内の空気を窒素雰囲気で置換した。反応容器の内容物を攪拌しながら反応容器内部の温度を220℃まで上昇させた。反応容器の内容物を220℃で8時間反応させた後、反応容器内を60mmHgに減圧した。続けて、反応容器の内容物を更に1時間反応させた。その後、反応容器内の内容物を210℃に冷却した。反応容器内の内容物に、トリメリット酸無水物336gを添加した。反応終了後、反応容器の内容物を取り出して冷却した。これにより、非結晶性ポリエステル樹脂AP−1を得た。表1に、非結晶性ポリエステル樹脂AP−1のガラス転移点(Tg)、軟化点(Tm)、及び結晶性指数を示す。
Figure 0006387917
<1−2.結晶性ポリエステル樹脂>
トナーコアに含有させる結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂CP−A〜CP−Eを準備した。詳しくは、1,6−ヘキサンジオール132g、1,10−デカンジカルボン酸230g、触媒としての酸化ジブチル錫1g、及びハイドロキノン0.3gを反応容器に仕込んだ。次に、反応容器内の空気を窒素雰囲気で置換した。反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器内部の温度を200℃まで上昇させた。反応容器内部の温度を200℃に保持し、副生水を留去しながら、反応容器の内容物を5時間重合させた。次いで、反応容器内を5mmHg以上20mmHg以下に減圧した。減圧下200℃で、反応容器の内容物が表2に示す物性になるまで重合反応を継続した。重合反応が終了した後、反応容器の内容物を取り出して冷却した。これにより結晶性ポリエステル樹脂CP−A〜CP−Eが各々得られた。表2に、得られた結晶性ポリエステル樹脂CP−A〜CP−Eの各々の融点(Mp)、及び結晶性指数を示す。
Figure 0006387917
<1−3.無機酸化物粒子>
トナーコアの表面に付着させる無機酸化物粒子として、以下の無機酸化物粒子α、β及びγを準備した。
無機酸化物粒子α:親水性フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)130」)
無機酸化物粒子β:酸化チタン粒子(テイカ株式会社製「MT−150A」、親水処理されていない湿式酸化チタン微粒子)
無機酸化物粒子γ:酸化チタン粒子(テイカ株式会社製「MT−100WP」、親水処理された湿式酸化チタン微粒子)
<1−4.熱硬化性樹脂>
シェル層に含有させる熱硬化性樹脂の原料として、以下の熱硬化性樹脂の原料R−A及びR−Bを準備した。
熱硬化性樹脂の原料R−A:ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度80質量%)
熱硬化性樹脂の原料R−B:メチロール化尿素の水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)J−300S」、固形分濃度70質量%)
<1−5.熱可塑性樹脂>
シェル層に含有させる熱可塑性樹脂として、以下の熱可塑性樹脂R−a及びR−bを準備した。
熱可塑性樹脂R−a:アクリルアミド樹脂の水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)A−1」、固形分濃度11質量%)
熱可塑性樹脂R−b:アクリルアミド系共重合体の水溶液(モノマー組成:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/アクリルアミド/メタクリル酸−メトキシポリエチレングリコール=30/50/20(モル比率)、固形分濃度5質量%、ガラス転移点(Tg)110℃、質量平均分子量(Mw)55,000)
<2.トナー1の調製>
以下のようにしてトナー1を調製した。
<2−1.トナーコアの形成工程>
非結晶性ポリエステル樹脂AP−1の100質量部、結晶性ポリエステル樹脂CP−Aの25質量部、フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)の5質量部、離型剤(エステルワックス、日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」)の5質量部を、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、2400rpmの速度で混合した。これにより、混合物を得た。
次いで、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料投入速度5kg/時、軸回転数160rpm、及び設定温度範囲80℃以上130℃以下の条件で、溶融し混練した。これにより、混練物を得た。得られた混練物を冷却した。冷却した混練物を、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル T250」)を用いて粉砕し、粉砕物を得た。粉砕物を、分級機(エルボージェット、日鉄工業株式会社製「EJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、トナーコアが得られた。得られたトナーコアの体積中位径D50は6.0μmであった。
<2−2.無機酸化物粒子の付着工程>
トナーコア(100質量部)と、無機酸化物粒子α(1質量部)とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、3200rpmの速度で10分間混合した。これにより、トナーコアの表面に無機酸化物粒子を付着させた。その結果、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアが得られた。
無機酸化物粒子が備えられたトナーコアについて、以下の方法で、標準キャリアとの摩擦帯電量、及びpH4の分散液中でのゼータ電位を測定した。無機酸化物粒子が備えられたトナーコアについて、標準キャリアとの摩擦帯電量は−20μC/gであった。無機酸化物粒子が備えられたトナーコアについて、pH4の分散液中でのゼータ電位は−30mVであった。
(標準キャリアとの摩擦帯電量の測定方法)
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して7質量%の測定試料(無機酸化物粒子が備えられたトナーコア)とを、混合装置(WAB社製「ターブラ(登録商標)ミキサー」)を用いて30分間混合した。得られた混合物を標準キャリアと摩擦させ、混合物中の測定試料の摩擦帯電量を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定した。
(pH4の分散液中でのゼータ電位の測定方法)
測定試料(無機酸化物粒子が備えられたトナーコア)0.2gと、イオン交換水80mLと、ノニオン界面活性剤(株式会社日本触媒製「ポリビニルピロリドンK−85」、水分濃度5質量%、固形分濃度95質量%)20gとを、マグネットスターラーを用いて混合した。これにより、測定試料をイオン交換水に均一に分散させて、測定試料の分散液を得た。その後、測定試料の分散液に希塩酸を加えて、測定試料の分散液のpHを4に調整した。pH4の測定試料の分散液について、分散液中の測定試料のゼータ電位を、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて測定した。
<2−3.シェル層の形成工程>
温度計、及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水300mLを入れた。ウォーターバスを用いてフラスコの内温を30℃に保持した。次いで、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の液のpHを4に調整した。pH調整後、フラスコ内に、シェル層の原料を添加した。詳しくは、フラスコ内に、熱硬化性樹脂の原料R−A(ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液、昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度80質量%)2mLと、熱可塑性樹脂R−a(アクリルアミド樹脂の水溶液、DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)A−1」、固形分濃度11質量%)2mLとを添加した。次いで、フラスコの内容物を攪拌し、シェル層の原料をイオン交換水に溶解させた。これにより、シェル層の原料の水溶液を得た。
シェル層の原料の水溶液に、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの300gを添加した。フラスコの内容物を、200rpmの速度で1時間攪拌した。次いで、フラスコ内に、イオン交換水の300mLを追加した。その後、フラスコの内容物を100rpmの速度で攪拌しながら、フラスコ内温を1℃/分の速度で70℃まで上げた。昇温後、フラスコ内温70℃、速度100rpmの条件でフラスコの内容物を2時間攪拌した。その後、フラスコ内に、水酸化ナトリウムを加えて、フラスコの内容物のpHを7に調整した。次いで、フラスコの内容物を、常温まで冷却した。その結果、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを被覆するようにシェル層が形成された。これにより、トナー母粒子の分散液が得られた。
<2−4.洗浄工程>
得られたトナー母粒子の分散液をブフナー漏斗で濾過し、トナー母粒子のウェットケーキを得た。次いで、トナー母粒子のウェットケーキをイオン交換水に分散させて、分散液に含まれるトナー母粒子を濾過した。これにより、トナー母粒子を洗浄した。トナー母粒子のイオン交換水による洗浄操作を、同様の方法で5回繰り返した。これにより、洗浄後のトナー母粒子のウェットケーキを得た。
洗浄工程において、トナー母粒子の分散液をブフナー漏斗で濾過した際に生じた濾液(初期濾液)を、排水として回収した。また、5回のトナー母粒子のイオン交換水による洗浄操作によって生じた濾液(洗浄により生じた濾液)も、排水として回収した。排水の量(回収された初期濾液、及び洗浄により生じた濾液の総量)は、後述する乾燥工程後に得られたトナー100質量部に対して、97質量部であった。回収された排水(回収された初期濾液、及び洗浄により生じた濾液)に含まれる全有機炭素(TOC)の濃度は8mg/Lであった。排水中の全有機炭素の濃度は、オンラインTOC計(株式会社島津製作所製「TOC−4200」)を用いて測定した。
<2−5.乾燥工程>
洗浄後のトナー母粒子のウェットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)に供給することにより、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。コートマイザー(登録商標)による乾燥は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分の条件で行った。
<2−6.シェル層の形成性の評価>
乾燥工程後、外添工程前のトナー母粒子に対して、シェル層の形成性を評価した。詳しくは、トナー母粒子0.1gと、界面活性剤(花王株式会社製「エマルゲン(登録商標)120」)0.4gと、イオン交換水40mLとを混合して、トナー母粒子の分散液を得た。得られたトナー母粒子の分散液を、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて測定した。これにより、トナー母粒子の体積中位径D50を求めた。求めたトナー母粒子の体積中位径D50から、下記基準に基づき、シェル層の形成性を評価した。なお、シェル層を形成する際に、トナーコア同士の凝集、及びトナー母粒子同士の凝集が引き起こされ難く、シェル層の形成が安定的に進行すると、体積中位径D50が6.2μm以下であるトナー母粒子が得られる傾向にある。
(シェル層の形成性の評価基準)
○(良好):トナー母粒子の体積中位径D50が6.2μm以下であった。
×(不良):トナー母粒子の体積中位径D50が6.2μm超であった。
なお、後述するトナー2〜24についても、トナー1のシェル層の形成性の評価方法と同様の方法で、シェル層の形成性を評価した。トナー1〜24のシェル層の形成性の評価結果を、表5に示す。
<2−7.外添工程>
乾燥工程で得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ(乾式シリカ微粒子、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」、容量10L)を用いて5分間混合した。これにより、トナー母粒子に外添剤を付着させた。外添剤を付着させたトナー母粒子を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。これにより、複数のトナー粒子を含むトナー1を得た。
<3.トナー1以外のトナーの調製>
以下の方法で、トナー2〜24を調製した。
(トナー2、3、4、及び5)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー2、3、4、及び5を得た。トナーコアに含有させる結晶性ポリエステル樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂CP−Aの代わりに、表3及び表4に示す種類の結晶性ポリエステル樹脂を使用した。
(トナー6、及び7)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー6、及び7を得た。非結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wa)に対する結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wc)の比率(Wc/Wa)を、25/100から、表3に示す比率に変更した。なお、結着樹脂の質量(非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との合計質量)は、トナー1の調製における125質量部から変更せず、結着樹脂中の比率(Wc/Wa)のみ変更した。
(トナー9)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー9を得た。無機酸化物粒子αの代わりに、無機酸化物粒子βを使用した。
(トナー10)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー10を得た。無機酸化物粒子αの代わりに、無機酸化物粒子γを使用した。また、熱可塑性樹脂R−aと熱硬化性樹脂の原料R−Aとの合計使用量をトナー1の調製における4mLから変更することにより、シェル層の厚さを9nmから10nmに変更した。なお、熱可塑性樹脂R−aの使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料R−Aの使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)は、トナー1の調製における5.0/5.0から変更しなかった。
(トナー11、12、13、及び14)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー11、12、13、及び14を得た。トナーコアの質量に対する無機酸化物粒子の質量を変更することにより、無機酸化物粒子によるトナーコアの被覆率を、51%から、表3及び表4に示す被覆率に変更した。
(トナー15)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー15を得た。シェル層を形成するための熱硬化性樹脂の原料として、熱硬化性樹脂の原料R−Aの代わりに、熱硬化性樹脂の原料R−Bを使用した。また、熱硬化性樹脂の原料R−Bを添加する際に、有機アミン触媒の水溶液(DIC株式会社製「キャタリスト 376」)0.2質量部も添加した。更に、熱可塑性樹脂の使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)を、5.0/5.0から、6.7/3.3に変更した。なお、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の原料との合計使用量は、トナー1の調製における4mLから3.8mLに変更した。
(トナー16)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー16を得た。シェル層を形成するための熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂R−aの代わりに、熱可塑性樹脂R−bを使用した。
(トナー17、18、及び20)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー17、18、及び20を得た。熱可塑性樹脂の使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)を、5.0/5.0から、表3に示す比率に変更した。なお、トナー17、18、及び20の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の原料との合計使用量は、トナー1の調製における4mLから、3.6mL、4.4mL、及び4.6mLにそれぞれ変更した。
(トナー21、22、及び23)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー21、22、及び23を得た。熱可塑性樹脂R−aと熱硬化性樹脂の原料R−Aとの合計使用量をトナー1の調製における4mLから変更することにより、シェル層の厚さを9nmから表3及び表4に示す厚さに変更した。なお、熱可塑性樹脂R−aの使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料R−Aの使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)は、トナー1の調製における5.0/5.0から変更しなかった。
(トナー24)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー24を得た。トナー24の調製では、シェル層の形成工程を行わなかった。無機酸化物粒子の付着工程で得られた無機酸化物粒子を備えたトナーコアを、トナー母粒子として用いて、外添工程を行った。
(トナー19)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー19を得た。トナー19の調製では、無機酸化物粒子を使用しなかった。つまり、無機酸化物粒子の付着工程を行わなかった。トナーコアの形成工程で得られたトナーコアに対して、シェル層の形成工程、及び外添工程を行った。
(トナー8)
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー8を得た。トナー8の調製では、熱可塑性樹脂を使用しなかった。つまり、熱可塑性樹脂の使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)を、5.0/5.0から、10.0/0.0に変更した。また、熱硬化性樹脂の原料R−Aの使用量を、トナー1の調製における2mLから4mLに変更した。
<4.評価>
得られたトナー1〜24の各々について、低温定着性、耐高温オフセット性、及び耐熱保存性を評価した。
<4−1.低温定着性>
現像剤用キャリア(FS−C5250DN用キャリア)100質量部と、トナー5質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
調製した2成分現像剤を用いて、評価機により用紙に画像を形成した。評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器を有するカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。用紙として、90g/m2の紙(富士ゼロックス株式会社製「C290」、A4サイズ、90g/m2の普通紙評価用紙)を用いた。調製した2成分現像剤を評価機のシアン用現像器に投入し、補充用トナーを評価機のシアン用トナーコンテナに投入した。
評価機を用いて、用紙の後端から10mmまでの部分に、線速200mm/秒、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mmのソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された用紙を評価機の定着器に通した。定着器のニップ幅を8mm、ニップ通過時間を40m秒に設定した。
最低定着温度の評価では、定着温度を100℃以上200℃以下の範囲に設定した。詳しくは、定着器の定着温度を100℃から1℃ずつ上昇させて、ソリッド画像(トナー像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。トナーを定着させることができたか否かは、以下の折擦り試験で確認した。詳しくは、定着器に通した用紙を、画像を形成した面が内側となるように半分に折り曲げた。折り曲げた用紙を、布帛で被覆した1kgの分銅を用いて、折り目上を10往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm未満となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。なお、最低定着温度が150℃以下であるトナーを、トナーの低温定着性が良好であると評価した。
<4−2.耐高温オフセット性>
調製した2成分現像剤により、低温定着性の評価と同様の評価機及び用紙を用い、用紙に未定着のソリッド画像を形成した。耐高温オフセット性の評価では、定着温度を180℃以上230℃以下の範囲に設定した。定着温度以外の条件は、低温定着性の評価における条件と同様に設定した。定着器のヒートローラーの2周目において、トナーが用紙に転移した温度を、オフセット発生温度とした。なお、オフセット発生温度が200℃以上であるトナーを、トナーの耐高温オフセット性が良好であると評価した。
<4−3.耐熱保存性>
トナー3gを、容量20mLのポリ容器に秤量し、60℃に設定された恒温器内に3時間静置した。これにより、耐熱保存性評価用のトナーが得られた。その後、耐熱保存性評価用のトナーを、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製「TYPE PT−E 84810」)を用いて篩別した。具体的には、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、200メッシュの篩を用いて、耐熱保存性評価用のトナーを篩別した。篩別後に、篩上に残留したトナーの質量を測定した。篩別前のトナーの質量と、篩別後に篩上に残留したトナーの質量とから、下記数式(4)に従って凝集度[質量%]を求めた。なお、凝集度が30質量%以下であるトナーを、トナーの耐熱保存性が良好であると評価した。
凝集度[質量%]=100×篩上に残留したトナーの質量/篩別前のトナーの質量・・・(4)
トナー1〜24の各々について、トナーに含まれるトナー粒子の組成を、表3及び表4に示す。また、各トナーのシェル層の形成性の評価結果を、表5に示す。各トナーの最低定着温度、オフセット発生温度、及び凝集度の測定結果を、表5に示す。表3及び表4中、Wc/Waは、非結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wa)に対する結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wc)の比率を示す。Vs/Vpは、熱可塑性樹脂の使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の使用量(Vs、単位:mL)の比率を示す。
Figure 0006387917
Figure 0006387917
Figure 0006387917
表5に示すように、トナー1、2、3、6、7、9、10、11、12、15、16、17、18、20、21、及び22では、トナーの低温定着性及び耐熱保存性が両立されていた。また、これらのトナーでは、シェル層の形成性及びトナーの耐高温オフセット性も良好であった。
トナー4では、トナーコアに含有される結晶性ポリエステル樹脂の融点が20℃未満であった。そのため、シェル層の形成工程において、トナーコアに含有される結晶性ポリエステル樹脂が溶融し易く、トナーコアからの結晶性ポリエステル樹脂の染み出しが引き起こされ易かったと考えられる。そのため、シェル層の形成が安定的に進行し難く、シェル層の形成性に劣ったと考えられる。その結果、トナー4の耐熱保存性も劣ったと考えられる。
トナー5は、トナーコアに含有される結晶性ポリエステル樹脂の融点が50℃以上であった。そのため、トナー5は低温定着性に劣ったと考えられる。
トナー13は、無機酸化物粒子によるトナーコアの被覆率が80%超であった。そのため、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの比表面積が増大したと考えられる。そのため、トナー13では、シェル層の形成が安定的に進行し難く、シェル層の形成性に劣ったと考えられる。その結果、トナー13の耐熱保存性及び耐高温オフセット性が劣ったと考えられる。
トナー14は、無機酸化物粒子によるトナーコアの被覆率が30%未満であった。トナーコアの表面に露出している結晶性ポリエステル樹脂が無機酸化物粒子によって十分に被覆されていないために、シェル層の原料の重合反応が安定的に進行し難かったと考えられる。そのため、トナー14では、シェル層の形成性に劣ったと考えられる。その結果、トナーコアからの結晶性ポリエステル樹脂の染み出しが引き起こされ、トナー粒子同士の凝集が引き起こされ易かったと考えられる。そのため、トナー14は耐熱保存性に劣ったと考えられる。
トナー23は、シェル層の厚さが20nm超であった。そのため、定着時に温度及び圧力がトナー粒子に印加された際に、トナー粒子のシェル層が破壊され難かったと考えられる。その結果、トナー23は低温定着性に劣ったと考えられる。
トナー24は、トナー粒子がシェル層を有していなかった。そのため、耐熱保存性及び耐高温オフセット性に劣ったと考えられる。
トナー19は、トナー粒子が無機酸化物粒子を有していなかった。トナーコアをシェル層で被覆する際に、結晶性ポリエステル樹脂の溶融及び染み出し(ブリード)が引き起こされ易かったと考えられる。そのため、シェル層の原料の重合反応が安定的に進行し難かったと考えられる。その結果、トナー19は、シェル層の形成性及び耐熱保存性に劣ったと考えられる。
トナー8は、シェル層に熱可塑性樹脂が含有されていなかった。そのため、定着時に温度及び圧力がトナー粒子に印加された場合に、トナー粒子のシェル層が破壊され難かったと考えられる。その結果、トナー8は低温定着性に劣ったと考えられる。
本発明に係るトナーは、例えば複写機又はプリンターにおいて画像を形成するために用いることができる。

Claims (4)

  1. トナー粒子を複数含む、静電潜像現像用トナーであって、
    前記トナー粒子は、
    結着樹脂と着色剤とを少なくとも含有するトナーコアと、
    前記トナーコアの表面に備えられた複数の無機酸化物粒子と、
    前記無機酸化物粒子が備えられた前記トナーコアを被覆するシェル層と
    を有し、
    前記シェル層は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有し、
    前記シェル層の厚さは、5nm以上20nm以下であり、
    前記結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、
    前記結晶性ポリエステル樹脂の融点は、20℃以上50℃未満であり、
    前記無機酸化物粒子による前記トナーコアの被覆率は、30%以上80%以下であり、
    前記結晶性ポリエステル樹脂は、モノマー成分としての1,6−ヘキサンジオール及び1,10−デカンジカルボン酸の重合物であり、融点が23℃、結晶性指数が0.944の結晶性ポリエステル樹脂、融点が43℃、結晶性指数が0.998の結晶性ポリエステル樹脂、又は融点が48℃、結晶性指数が0.971の結晶性ポリエステル樹脂の何れかである、静電潜像現像用トナー。
  2. 前記無機酸化物粒子による前記トナーコアの前記被覆率は、下記数式(1)で示される、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
    被覆率F=100×Fi/Ft・・・(1)
    (前記数式(1)中、Fiは前記トナーコアの前記表面のうちの前記無機酸化物粒子が備えられた領域の面積を示し、Ftは前記トナーコアの前記表面の総面積を示す。)
  3. 前記非結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wa)に対する前記結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wc)の比率(Wc/Wa)は、1/100以上100/100以下である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点は45.6℃である、請求項1〜3の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
JP2015142070A 2015-07-16 2015-07-16 静電潜像現像用トナー Expired - Fee Related JP6387917B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015142070A JP6387917B2 (ja) 2015-07-16 2015-07-16 静電潜像現像用トナー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015142070A JP6387917B2 (ja) 2015-07-16 2015-07-16 静電潜像現像用トナー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017026669A JP2017026669A (ja) 2017-02-02
JP6387917B2 true JP6387917B2 (ja) 2018-09-12

Family

ID=57950542

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015142070A Expired - Fee Related JP6387917B2 (ja) 2015-07-16 2015-07-16 静電潜像現像用トナー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6387917B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6601435B2 (ja) * 2017-02-15 2019-11-06 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 静電潜像現像用トナー及びその製造方法
JP2019040024A (ja) * 2017-08-24 2019-03-14 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 トナー及びその製造方法
JP7196697B2 (ja) * 2019-03-11 2022-12-27 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 トナー

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010277000A (ja) * 2009-05-29 2010-12-09 Sharp Corp カプセルトナーおよびその製造方法
JP2012163634A (ja) * 2011-02-03 2012-08-30 Kyocera Document Solutions Inc 静電荷像現像用トナー
JP5800864B2 (ja) * 2013-06-27 2015-10-28 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 静電潜像現像用トナー
JP5972237B2 (ja) * 2013-08-30 2016-08-17 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 静電潜像現像用トナー
JP2015049321A (ja) * 2013-08-30 2015-03-16 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 静電潜像現像用トナー
JP2015087597A (ja) * 2013-10-31 2015-05-07 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 静電潜像現像用トナー

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017026669A (ja) 2017-02-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5800864B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP5858954B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6252387B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP5979642B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6252385B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP5836332B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6500739B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6387917B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP5858957B2 (ja) 静電潜像現像用磁性トナー
JP6528724B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP2006091564A (ja) 電子写真用トナー、電子写真用トナーの製造方法、電子写真用現像剤及び画像形成方法
JP6043330B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP5972237B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP2015049321A (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6100711B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP2015049250A (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6217625B2 (ja) 静電潜像現像用トナー、及び画像形成方法
JP6114211B2 (ja) 静電潜像現像用トナー及びその製造方法
JP6192748B2 (ja) トナー
JP2015175880A (ja) 静電荷像現像用カプセルトナーの製造方法
JP7318482B2 (ja) トナー
JP6237555B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6387951B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6459929B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP6330687B2 (ja) 静電潜像現像用トナー

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170425

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180116

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180307

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180717

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180730

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6387917

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees