以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、その目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
<第一実施形態:静電潜像現像用トナー>
第一実施形態は、静電潜像現像用トナー(以下、「トナー」と記載する場合がある)に関する。
本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを含む。シェル層は、トナーコアを被覆するように、トナーコアの表面に形成されている(位置している)。トナーは、実質的にトナー粒子のみを含んでもよいし、トナー粒子に加えてトナー粒子以外の成分を含んでもよい。
シェル層で被覆されたトナーコアには、必要に応じて、外添剤を付着させてもよい。以下、外添剤を付着させる前のシェル層で被覆されたトナーコアを、トナー母粒子と記載する場合がある。
また、トナーは、所望のキャリアと混合して二成分現像剤として使用することもできる。
以下、トナー粒子に含まれるトナーコア、及びシェル層を説明する。また、任意成分である外添剤、トナーを二成分現像剤において使用する場合に用いられるキャリア、及びトナーの製造方法を説明する。
<1.トナーコア>
トナーコアは、結着樹脂と着色剤とを含む。トナーコアは、必要に応じて、更に、離型剤、電荷制御剤、及び/又は磁性粉を含んでいてもよい。以下、トナーコアに含まれる結着樹脂、及び着色剤を説明する。また、トナーコアに必要に応じて含まれてもよい、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉を説明する。
<1−1.結着樹脂>
トナーコアは、結着樹脂として、結晶性樹脂、及び非結晶性樹脂を含む。トナーコアが非結晶性樹脂に加えて、結晶性樹脂を含有することにより、得られるトナーの初期帯電量、及び連続印刷後のトナーの帯電量の低下が抑制される傾向にある。換言すると、このようなトナーは帯電安定性(帯電における耐久安定性)に優れる傾向にある。その結果、トナーを用いて形成される画像の画像濃度が好適な値となる傾向がある。また、連続印刷した場合であっても形成される画像の画像濃度の低下が抑制される傾向にある。換言すると、このようなトナーは、画像濃度の安定性(画像濃度における耐久安定性)に優れる傾向にある。更に、画像形成時のトナーの記録媒体へのかぶりの発生が抑制される傾向にある。また、結晶性樹脂を含むトナーコアを用いて調製されたトナー粒子を含むトナーは、低温定着性に優れ、高温でトナーを記録媒体に定着させる際のオフセットの発生を特に抑制できる傾向にある。
結晶性樹脂には、例えば、結晶化指数が0.90以上1.10未満である樹脂を使用することができる。帯電安定性、及び画像濃度の安定性を向上させるためには、結晶性指数が0.98以上1.05以下である結晶性樹脂を使用することが好ましい。非結晶性樹脂には、例えば、結晶化指数が0.90未満、又は1.10以上である樹脂を使用することができる。トナーの帯電安定性、及び形成される画像の画像濃度の安定性を向上させるためには、結晶性指数が0.98未満、又は1.05超である非結晶性樹脂を使用することが好ましい。なお、結晶性樹脂、及び非結晶性樹脂として使用することができる樹脂の種類については後述する。
結晶性樹脂、及び非結晶性樹脂として使用される樹脂の結晶性指数は、樹脂の軟化点(Tm)と、樹脂の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mp)との比率(Tm/Mp)から求めることができる。樹脂の軟化点(Tm)、及び樹脂の融点(Mp)は、非結晶性樹脂の軟化点(Tma)、及び後述の結晶性樹脂の融点(Mpc)と同様の方法で測定することができる。
結晶性樹脂の融点(Mpc)は、50℃以上100℃以下である。融点(Mpc)がこのような範囲内である結晶性樹脂を含むトナーコアを用いて調製されたトナー粒子を含むトナーは、耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、高温で定着を行う際のオフセットの発生を特に抑制できると考えられる。結晶性樹脂の融点(Mpc)は、例えば、示差走査熱量計を用いて測定される。以下に、結晶性樹脂の融点(Mpc)の測定方法の一例を説明する。
(融点の測定方法)
結着樹脂としての結晶性樹脂の融点(Mpc)は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定される。アルミ皿に10mg以上20mg以下の結晶性樹脂の試料を入れた後、DSCの測定部にアルミ皿をセットする。リファレンスには空のアルミ皿を用いる。30℃を測定開始温度とし、10℃/分の速度で170℃まで昇温を行う。昇温の際に観測される融解熱の最大ピーク温度を、結晶性樹脂の融点(Mpc)とする。
(ガラス転移点の測定方法)
結着樹脂としての非結晶性樹脂のガラス転移点(Tga)は、30℃以上60℃以下であることが好ましく、35℃以上55℃以下であることがより好ましい。非結晶性樹脂のガラス転移点(Tga)は、以下の方法に従って測定できる。
非結晶性樹脂のガラス転移点(Tga)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、非結晶性樹脂の比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置として示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。非結晶性樹脂の吸熱曲線を測定することで非結晶性樹脂のガラス転移点(Tga)を求めることができる。試料(非結晶性樹脂)10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用する。測定温度範囲25℃以上200℃以下、及び昇温速度10℃/分の条件で測定して得られた非結晶性樹脂の吸熱曲線より、非結晶性樹脂のガラス転移点(Tga)を求めることができる。
結着樹脂としての非結晶性樹脂の軟化点(Tma)は、60℃以上150℃以下であることが好ましく、70℃以上140℃以下であることがより好ましい。また、異なる軟化点(Tma)を有する複数の種類の非結晶性樹脂を、結着樹脂全体の軟化点がこのような範囲の値となるように組み合わせて用いることもできる。非結晶性樹脂の軟化点(Tma)は、以下の方法に従って測定できる。
(軟化点の測定方法)
非結晶性樹脂の軟化点(Tma)は、高化式フローテスター(例えば、株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定される。試料(非結晶性樹脂)を高化式フローテスターにセットする。ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融し流出させる。これにより、軟化点(Tma)を測定する。高化式フローテスターの測定により得られる、温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブから、非結晶性樹脂の軟化点(Tma)を読み取る。具体的には、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とする。S字カーブ中の、ストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を、試料の軟化点(Tma)とする。なお、試料の軟化点(Tma)は、非結晶性樹脂の1/2流出温度(T1/2)に相当する。
結着樹脂中の、結晶性樹脂の質量(P)と、結晶性樹脂を除く樹脂(非結晶性樹脂)の質量(Q)との比率(P/Q)は、1以下であることが好ましく、1/99以上50/50以下であることがより好ましく、5/95以上30/70以下であることが更に好ましく、10/90以上20/80以下であることが特に好ましい。
結着樹脂中の結晶性樹脂と非結晶性樹脂との合計含有量は、結着樹脂の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
結着樹脂の質量平均分子量(Mw)は、10000以上50000以下であることが好ましい。結着樹脂の質量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)との比率で表される、結着樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、8以上50以下であることが好ましい。トナーコアがこのような範囲の質量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を有する結着樹脂を含む場合、このようなトナーコアを用いて調製されたトナー粒子を含むトナーは、耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、高温でトナーを定着させる場合であってもトナーのオフセットの発生が抑制される傾向にある。
トナーコアが質量平均分子量(Mw)の低過ぎる結着樹脂を含む場合、このようなトナーコアを備えるトナー粒子を含むトナーを用いて画像を形成すると、高温でトナーが定着される際にトナーのオフセットが生じることがある。トナーコアが質量平均分子量(Mw)の高過ぎる結着樹脂を含む場合、このようなトナーコアを備えるトナー粒子を含むトナーを用いて画像を形成すると、低温でトナーが定着される際に、トナーが良好に定着されないことがある。
トナーコアが分子量分布(Mw/Mn)の小さ過ぎる結着樹脂を含む場合、このようなトナーコアを備えるトナー粒子を含むトナーを用いて画像を形成すると、高温でトナーが定着される際にトナーのオフセットが生じることがある。トナーコアが分子量分布(Mw/Mn)の大き過ぎる結着樹脂を含む場合、このようなトナーコアを備えるトナー粒子を含むトナーを用いて画像を形成すると、低温でトナーが定着される際に、トナーが良好に定着されないことがある。
結着樹脂の質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。以下、GPCを用いる分子量の測定方法の一例を説明する。
(GPCを用いる分子量の測定方法)
溶媒として、テトラヒドロフラン(THF)を用いる。試料(結着樹脂)の濃度が3.0mg/mLになるように、THF中に試料を投入する。続いて、得られた混合液を1時間静置して、試料をTHFに溶解させる。得られるTHF溶液を、サンプル前処理用フィルター(倉敷紡績株式会社製「クロマトディスク 25N」、非水系、膜孔径0.45μm)を用いて濾過し、フィルターを通過した液体を試料溶液とする。GPCの測定は、例えば、後述の装置、及び条件で行われる。具体的には、所定の温度(例えば、40℃)のヒートチャンバ内でカラムを安定させる。続けて、所定の温度(例えば、40℃)になったカラムに、溶媒としてのTHFを流し(例えば、流速1mL/分)、GPC用試料(例えば、50μL以上200μL以下)をカラムに導入する。そして、カラムに導入されたGPC用試料の分子量分布を測定する。
分子量分布は、単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出される。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、分子量が1×103以上1×107以下程度の試料が用いられる。検量線作成用の標準ポリスチレン試料の市販品としては、例えば、東ソー株式会社製の試料(分子量:3.84×106、1.09×106、3.55×105、1.02×105、4.39×104、9.10×103、及び2.98×103)が挙げられる。そして、ポリエステル樹脂の分子量分布測定においては、数種類(例えば、少なくとも7点程度)の標準ポリスチレン試料が用いられる。検出器としては、例えばRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては1×103以上2×106以下の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数本組み合わせて用いることが好ましい。
(GPC測定条件)
装置:HLC−8220(東ソー株式会社製)
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel GMHXL(東ソー株式会社製)
カラム本数:2本
検出器:RI
溶出液流速:1mL/分
試料溶液濃度:3.0mg/mL
カラム温度:40℃
試料溶液量:100μL
検量線:標準ポリスチレンを用いて作製
結晶性樹脂、及び非結晶性樹脂に使用される樹脂の種類は、トナーの調製に用いられる結着樹脂である限り、特に限定されない。結晶性樹脂、及び非結晶性樹脂に使用される樹脂の種類としては、トナーの定着性を向上させるという観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、及びポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。トナーコア中の着色剤の分散性、トナー粒子の帯電性、及び記録媒体(例えば、紙)に対するトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
トナーコアがポリエステル樹脂を含む場合、シェル層とトナーコアとが強固に結合したトナー粒子を含むトナーが得られる傾向にある。その理由は以下のように推測される。トナーに含まれるトナー粒子は、後述するように、シェル層の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマー、及び熱可塑性樹脂)を硬化させて、トナーコアの表面をシェル層で被覆することによって調製される。トナーコアがポリエステル樹脂を含む場合、トナーコアの表面には、ポリエステル樹脂が有する、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーと反応し得る官能基(例えば、水酸基、又はカルボキシル基)が露出している。このため、トナーコアをシェル層で被覆する際に、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマー(例えば、メチロールメラミン)と、トナーコアの表面に露出する官能基(例えば、水酸基、又はカルボキシル基)とが反応して、トナーコアとシェル層との間に共有結合が形成されると考えられる。その結果、シェル層とトナーコアとが強固に結合したトナー粒子を含むトナーが得られる傾向にある。
以下、結晶性樹脂、及び非結晶性樹脂としてポリエステル樹脂が使用される場合のポリエステル樹脂について説明する。
ポリエステル樹脂は、トナー用の結着樹脂として使用されるポリエステル樹脂から適宜選択できる。ポリエステル樹脂は、例えばアルコールとカルボン酸とを縮重合又は共縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる成分としては、例えば、以下のアルコール及びカルボン酸が好ましい。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールとしては、例えば、2価アルコール、及び3価以上のアルコールが挙げられる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる2価アルコールの具体例としては、ジオール類、及びビスフェノール類が挙げられる。ジオール類としては、例えば、炭素原子数2以上10以下の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、及びポリオキシプロピレン化ビスフェノールAが挙げられる。炭素原子数2以上10以下の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びジプロピレングリコールが挙げられる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる3価以上のアルコールの具体例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸としては、例えば、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる2価カルボン酸の具体例としては、炭素原子数2以上16以下の脂肪族2価カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられる。炭素原子数2以上16以下の脂肪族2価カルボン酸としては、例えば、炭素原子数2以上16以下のアルカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸が挙げられる。アルキルコハク酸としてより具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、及びイソドデシルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸として、より具体的にはn−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、及びイソドデセニルコハク酸が挙げられる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる3価以上のカルボン酸の具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
上述のアルコール、及びカルボン酸は、各々1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、上述の2価又は3価以上のカルボン酸を、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステルのようなエステル形成性の誘導体に誘導体化して使用してもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂の結晶性指数は、単量体であるアルコールの種類、及び使用量、並びにカルボン酸の種類、及び使用量を適宜調整することで調整できる。結晶性ポリエステルは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールのなかでは、ポリエステル樹脂の結晶化を促進し易いことから、炭素原子数2以上10以下の脂肪族ジオールが好ましく、炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオールがより好ましい。なかでも、ポリエステル樹脂の結晶化をより促進し易いことから炭素原子数2以上8以下のα,ω−アルカンジオールが更に好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、炭素原子数2以上10以下の脂肪族ジオールの含有量が、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールのモル数に対して、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールに最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸の中では、ポリエステル樹脂の結晶化を促進し易いことから、炭素原子数2以上16以下の脂肪族2価カルボン酸(ジカルボン酸)が好ましく、炭素原子数2以上16以下のα,ω−アルカンジカルボン酸(例えば、1,10−デカンジカルボン酸)がより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、炭素原子数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸の含有量が、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸のモル数に対して、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、カルボン酸に最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の水酸基価は、15mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であることが好ましい。
ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は、ポリエステル樹脂を製造する際の、2価又は3価以上のアルコールの使用量と、2価又は3価以上のカルボン酸の使用量とを、それぞれ適宜変更することで調整できる。また、ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
結着樹脂としてポリエステルが使用される場合、トナーコアは、結着樹脂としてポリエステル樹脂以外に更に別の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。更に含まれてもよい別の熱可塑性樹脂は、従来からトナー用の結着樹脂として使用される熱可塑性樹脂から適宜選択される。
結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂、及び非結晶性ポリエステル樹脂が使用される場合、結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量(結晶性ポリエステル樹脂、及び非結晶性ポリエステル樹脂の合計含有量)は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
<1−2.着色剤>
トナーコアは、着色剤として、黒色着色剤、及び色域調整剤を含む。トナーコアが黒色着色剤、及び色域調整剤を含むことにより、このようなトナーコアを備えるトナー粒子を含むトナーを用いて形成された画像は、発色性(例えば、L*値、a*値、及びb*値)に優れる傾向がある。
黒色着色剤としては、例えば、黒色顔料、及び黒色染料が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。黒色着色剤としては、公知のイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のうちの1種以上を用いて黒色に調色された着色剤も使用できる。黒色着色剤としては、黒色顔料が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
トナーコアが色域調整剤を含むことにより、形成される画像の色域(例えば、L*値、a*値、及びb*値の範囲)を所望の範囲に調整し易くなる。色域調整剤として好ましくは、シアン着色剤(具体的には、シアン顔料、及びシアン染料)が挙げられる。シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物が挙げられる。シアン着色剤として、具体的には、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、C.I.アシッドブルー、及び「VioletBL」(株式会社日本化学工業所製)が挙げられる。なかでも好ましくは、C.I.ピグメントブルー(15:2、又は15:3)、又は「VioletBL」(株式会社日本化学工業所製)である。
ここで、本実施形態のトナーの記録媒体への載せ量が0.4mg/cm2である場合に、トナーを記録媒体上に定着することにより形成される画像のa*値が−4以上1以下であり、b*値が−4以上1以下であり、L*値が22以下であることが好ましい。L*値、a*値、及びb*値は、CIE1976(L*、a*、b*)色空間における値である。L*値、a*値、及びb*値は、例えば、マクベス反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「SpectroEye」)を用いて測定することができる。また、トナーの記録媒体上への定着は、例えば、カラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5300DN」)を用いて行うことができる。なお、画像形成方法は第二実施形態で詳述する。
色域調整剤の含有量は、黒色着色剤の質量に対して、10.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上30.0質量%以下であることがより好ましい。色域調整剤の含有量がこのような範囲であると、形成される画像の発色性を向上できる傾向にある。
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナーコアは、着色剤として、黒色着色剤、及び色域調整剤以外に、更に別の着色剤を含んでいてもよい。別の着色剤は、公知の着色剤から適宜選択できる。
黒色着色剤、及び色域調整剤の合計含有量は、着色剤の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、100%であることが特に好ましい。
<1−3.離型剤>
トナーコアは必要に応じて、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、通常、トナーの定着性、及び耐オフセット性を向上させる目的で使用される。
離型剤としてはワックスが好ましい。ワックスの例としては、エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、及びモンタンワックスが挙げられる。なかでも、エステルワックスがより好ましい。エステルワックスとしては、天然エステルワックス(具体的には、合成エステルワックス、カルナウバワックス、又はライスワックス)、及び合成エステルワックスが挙げられる。これらの離形剤は2種以上を組み合わせて使用できる。
エステルワックスの中では、合成エステルワックスが好ましい。合成原料を適宜選択することで、示差走査熱量計を用いて測定される離型剤の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mpr)を、後述する好適な範囲に調整し易いためである。
合成エステルワックスを製造する方法は、化学合成法である限り特に限定されない。例えば、合成エステルワックスは、酸触媒の存在下でアルコールとカルボン酸とを反応させることにより合成することができる。別の例としては、合成エステルワックスは、カルボン酸ハライドとアルコールとを反応させるような公知の方法を用いて合成することができる。なお、合成エステルワックスの原料は、例えば、天然油脂から製造される長鎖脂肪酸のように天然物に由来する原料でもよい。また、合成エステルワックスとしては、合成品として市販されているエステルワックスを用いてもよい。
離型剤の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mpr)は、50℃以上100℃以下であることが好ましい。離型剤の融点(Mpr)は、例えば、結晶性樹脂の融点(Mpc)の測定と同様の方法で、示差走査熱量計を用いて測定することができる。離型剤の融点(Mpr)がこのような範囲内であると、このような離型剤を含むトナーコアを備えるトナー粒子を含むトナーは、低温定着性に優れ、高温でトナーを定着させる場合であってもオフセットの発生が抑制される傾向にある。
離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
<1−4.電荷制御剤>
トナーコアには、必要に応じて電荷制御剤が含有されてもよい。電荷制御剤は、トナーの帯電レベル、及びトナーの帯電立ち上がり特性を向上させる目的、並びに耐久性、及び安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標となる。シェル層中に帯電機能を有する成分が含まれる場合、トナーコアには電荷制御剤を使用しなくてもよい。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤を使用することができる。一方、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤を使用することができる。
電荷制御剤は、公知の電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、アジン化合物(例えば、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、及びキノキサリン);アジン化合物を含む直接染料(例えば、アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディープブラック3RL);ニグロシン化合物(例えば、ニグロシン、ニグロシン塩、及びニグロシン誘導体);ニグロシン化合物を含む酸性染料(例えば、ニグロシンBK、ニグロシンNB、及びニグロシンZ);ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;及び4級アンモニウム塩(例えば、ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウム、及びデシルトリメチルアンモニウムクロライド)が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、トナーの好適な帯電立ち上がり特性を得易い点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
官能基として、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレンアクリル系樹脂、及びカルボキシル基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、有機金属錯体、及びキレート化合物が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アセチルアセトン金属錯体(例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、及び鉄(II)アセチルアセトナート)、及びサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩(例えば、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム)が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電製の電荷制御剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、トナー全量を100質量部とする場合に、0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上15.0質量部以下であることがより好ましい。
<1−5.磁性分>
トナーコアには、必要に応じて、結着樹脂中に磁性粉を含有させてもよい。磁性粉を含むトナーコアを用いて製造されたトナーは、磁性1成分現像剤として使用される。好適な磁性粉としては、フェライト、又はマグネタイトのような鉄;コバルト、又はニッケルのような強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。このような範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
磁性粉の使用量は、トナーを1成分現像剤として使用する場合に、トナー全量100質量部に対して、35質量部以上60質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。
<2.シェル層>
本実施形態のトナーに含まれるトナー粒子は、シェル層を含む。シェル層は、トナーコアを被覆するように備えられている。シェル層は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む。
シェル層が、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有することにより、トナーの耐熱保存性が向上する傾向にある。シェル層が熱可塑性樹脂のみを含有する場合、トナーを高温で保存する際に、トナーに含まれるトナー粒子が互いに融着し易くなる。一方、シェル層が熱硬化性樹脂のみを含有する場合、トナーを定着時に加熱する際に、トナーに含まれるトナー粒子が破壊されにくく、トナーの低温定着性が劣る傾向にある。
シェル層は、熱硬化性樹脂の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー、又はプレポリマー)と、熱可塑性樹脂の原料(例えば、熱可塑性樹脂)とを、混合、又は反応させることにより形成される。シェル層中で、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とが混ざり合って固化し、熱硬化性樹脂で形成される領域と、熱可塑性樹脂で形成される領域とが、シェル層中に混在していてもよい。また、シェル層には、熱硬化性樹脂の原料(例えば、重合されていない又は縮重合されていない、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマー)が含有されていてもよい。更に、シェル層中で、熱硬化性樹脂が有する置換基の少なくとも一部と、熱可塑性樹脂が有する置換基の少なくとも一部とが、化学的に結合(架橋)していてもよい。
シェル層中で熱硬化性樹脂が有する置換基と熱可塑性樹脂が有する置換基とが化学的に結合(架橋)している場合、シェル層は、熱可塑性樹脂に起因する適度な柔軟性を有する。更に、適度な柔軟性と共に、熱硬化性樹脂が形成する三次元の架橋構造に起因して、シェル層は適度な機械的強度も有する。このようなシェル層を備えるトナー粒子は、保管時及び輸送時に容易に破壊されない傾向にある。一方で、このようなトナー粒子は、定着時に温度及び圧力が印加されると、容易に破壊される傾向にある。その結果、本実施形態のトナーは、シェル層が薄膜である場合でも、耐熱保存性、及び低温定着性に優れる傾向にある。
以下、シェル層に含有される熱硬化性樹脂、及び熱可塑性樹脂を説明する。
<2−1.熱硬化性樹脂>
シェル層に含有される熱硬化性樹脂は、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂である。シェル層に含有される熱硬化性樹脂の原料としては、メラミン樹脂のモノマー、尿素樹脂のモノマー、及びグリオキザール樹脂のモノマーが挙げられる。
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。メラミン樹脂の形成に使用されるモノマーはメラミンである。尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂の形成に使用されるモノマーは尿素である。グリオキザール樹脂は、グリオキサールと尿素との反応生成物と、ホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂の形成に使用されるモノマーは、グリオキサールと尿素との反応生成物である。
メラミン、尿素、及びグリオキサールと反応させる尿素は、公知の変性を受けていてもよい。例えば、熱硬化性樹脂のモノマーは、熱可塑性樹脂と反応させる前に、ホルムアルデヒドによりメチロール化された誘導体として使用できる。
メラミン、尿素、及びグリオキサールと尿素との反応生成物は、プレポリマー(以下、初期重合体と記載する場合がある)の形態で使用されてもよい。ここで、プレポリマーとは、モノマーの重合反応、又は重縮合反応を、その重合度がポリマーの重合度に到達する前の段階で停止することにより得られる中間生成物を意味する。
シェル層には、メラミン樹脂のモノマーであるメラミンに由来する窒素原子、尿素樹脂のモノマーである尿素に由来する窒素原子、及び/又はグリオキザール樹脂のモノマーであるグリオキサールと尿素との反応生成物に由来する窒素原子が含有される。窒素原子を含むシェル層を備えるトナーは、正帯電され易い。よって、本実施形態のトナーを正帯電させて画像を形成する場合、トナーに含まれるトナー粒子を所望の帯電量に正帯電させ易い。トナーに含まれるトナー粒子を所望する帯電量に正帯電させ易い点で、シェル層中の窒素原子の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。
<2−2.熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー、及び/又はプレポリマー)が有する官能基(例えば、メチロール基、及びアミノ基)と反応性を有する官能基を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂の原料が有する官能基(例えば、メチロール基、及びアミノ基)と反応性を有する官能基としては、活性水素原子を含む官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、及びアミノ基)が挙げられる。アミノ基は、カルバモイル基(−CONH2)として熱可塑性樹脂中に含まれてもよい。シェル層の形成が容易であることから、熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリルアミドに由来する単位を含む樹脂、又はカルボジイミド基、オキサゾリン基、若しくはグリシジル基のような官能基を有するモノマーに由来する単位を含む樹脂が好ましい。
シェル層の形成に使用される熱可塑性樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、シリコーン−(メタ)アクリルグラフト共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、及びエチレンビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらの樹脂は、カルボジイミド基、オキサゾリン基、及びグリシジル基のような官能基を有するモノマーに由来する単位を含んでいてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、又はシリコーン−(メタ)アクリルグラフト共重合体が好ましく、(メタ)アクリル系樹脂がより好ましい。(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリルアミド系樹脂が好ましい。
なお、アクリルとメタクリルとを包括して「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
(メタ)アクリル系樹脂の調製に用いることができる(メタ)アクリル系のモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、及び(メタ)アクリル酸n−ブチル);(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル);(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル);(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド付加物;及び(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、及びn−ブチルエーテル)が挙げられる。なかでも好ましくは、(メタ)アクリルアミドである。
結着樹脂の溶解、及びトナーコアに含まれる離型剤の溶出が生じにくいことから、シェル層の形成は水性媒体中で行われることが好ましい。このため、シェル層の形成に用いられる熱可塑性樹脂は水溶性であることが好ましい。特に、シェル層の形成には、熱可塑性樹脂を水溶液として用いることが好ましい。
シェル層において、熱硬化性樹脂の質量(Ws)と熱可塑性樹脂の質量(Wp)との比率(Ws/Wp)は1/40以上1/2以下であることが好ましく、1/8以上3/8以下であることがより好ましい。
シェル層における、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との合計含有量は、シェル層の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
シェル層の厚さは、5nm以上50nm以下である。シェル層の厚さは、5nm以上20nm以下であることがより好ましい。厚過ぎるシェル層を備えるトナー粒子を含むトナーを用いて画像を形成する場合、トナーを記録媒体へ定着させる際にトナー粒子に圧力が印加されても、シェル層が破壊されにくい。そのため、トナーコアに含まれる結着樹脂の軟化又は溶融、及び離型剤の軟化又は溶融が速やかに進行せず、低温域でトナーを記録媒体上に定着させにくい。一方、薄過ぎるシェル層は、強度が低い傾向にある。シェル層の強度が低いと、輸送時にトナーに与えられる衝撃によって、シェル層が破壊され易くなる。また、高温でトナーを保存する場合、シェル層の少なくとも一部が破壊されたトナー粒子は凝集し易い。高温条件下では、シェル層が破壊された箇所を通じて、離型剤のような成分がトナー粒子の表面に染み出し易いためである。
シェル層の厚さは、トナー粒子の断面のTEM撮影像を、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析することで計測することができる。具体的には、トナー粒子の断面の略中心点で直交する2本の直線を引き、2本の直線上のシェル層と交差する4箇所の長さを測定する。このようにして測定される4箇所の長さの平均値を、測定対象の1個のトナー粒子が備えるシェル層の厚さとする。このようなシェル層の厚さの測定を、10個のトナー粒子に対して行い、測定対象の10個のトナー粒子それぞれが備えるシェル層の厚さの平均値を求める。求められた平均値を、トナーが備えるシェル層の厚さとする。
シェル層が薄過ぎる場合(例えば、シェル層が5nmを下回る場合)には、TEM撮影像上でシェル層とトナーコアとの界面が不明瞭であるため、シェル層の厚さの測定が困難な場合がある。このような場合は、TEM撮影と電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせて、TEM撮影像中に、シェル層に特徴的な元素(例えば、窒素)のマッピングを行い、シェル層とトナーコアとの界面を明確化して、シェル層の厚さを計測すればよい。
シェル層の厚さは、シェル層を形成するために使用されるシェル層の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー、熱硬化性樹脂のプレポリマー、又は熱可塑性樹脂)の使用量を適宜変更することによって調整できる。シェル層の厚さは、トナーコアの比表面積に対する、熱硬化性樹脂の量と、熱可塑性樹脂の量とから、下記式を用いて求めることもできる。
シェル層の厚さ=(熱硬化性樹脂の量+熱可塑性樹脂の量)/トナーコアの比表面積
<3.外添剤>
シェル層で被覆されたトナーコアの表面には、必要に応じて外添剤を付着させてもよい。
外添剤としては、シリカ、及び金属酸化物が挙げられる。金属酸化物としては、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、及びチタン酸バリウムが挙げられる。
外添剤の粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
<4.キャリア>
トナーを所望のキャリアと混合して、二成分現像剤として使用してもよい。二成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いることが好ましい。
好適なキャリアとしては、キャリアコアが樹脂で被覆されたキャリアが挙げられる。キャリアコアの具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、又はコバルトの粒子;これらの材料とマンガン、亜鉛、及びアルミニウムのような金属との合金の粒子;鉄−ニッケル合金の粒子;鉄−コバルト合金の粒子;セラミックスの粒子;及び高誘電率物質の粒子が挙げられる。キャリアとしては、樹脂中に上述の磁性粒子を分散させた樹脂キャリアも使用することができる。セラミックスの粒子として使用されるセラミックスとしては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、及びニオブ酸リチウムが挙げられる。高誘電率物質の粒子として使用される高誘電率物質としては、例えば、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、及びロッシェル塩が挙げられる。
キャリアコアを被覆する樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、及びポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、及びアミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
キャリアの粒子径は、20μm以上120μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。キャリアの粒子径は、例えば、電子顕微鏡により測定することができる。
トナーを二成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、二成分現像剤の質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
トナーのガラス転移点(Tgt)は、30℃以上50℃以下であることが好ましい。トナーの軟化点(Tmt)は、70℃以上100℃以下であることが好ましい。トナーのガラス転移点(Tgt)、及び軟化点(Tmt)がこのような範囲であると、トナーの耐熱保存性、及び低温定着性を向上させることができ、高温でトナーを定着させる際のオフセットの発生が抑制できる傾向にある。
トナーのガラス転移点(Tgt)、及び軟化点(Tmt)は、トナーを試料として用い、上述の非結晶性樹脂のガラス転移点(Tga)、及び非結晶性樹脂の軟化点(Tma)と同様の方法で測定することができる。トナーのガラス転移点(Tgt)の測定において、ガラス転移点が多段階で観測される場合、最も低温で観測される点をトナーのガラス転移点(Tgt)とする。トナーのガラス転移点(Tgt)、及び軟化点(Tmt)は、トナーコア中の結着樹脂の種類及び組成、並びに離型剤の種類及び組成を調整することにより、調整することができる。
<5.トナーの製造方法>
トナーの製造方法は、トナーコアをシェル層で被覆できる方法である限り、特に限定されない。以下、トナーの好適な製造方法に関して、トナーコアの製造方法と、シェル層の形成方法とを説明する。
<5−1.トナーコアの製造方法>
トナーコアの製造方法としては、結着樹脂中に、着色剤、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び/又は磁性粉)を良好に分散させることができる限り特に限定されない。トナーコアの製造方法は、公知の方法から適宜選択できる。トナーコアの製造方法としては、例えば、以下の粉砕法、及び凝集法が挙げられる。
(粉砕法)
粉砕法では、まず、結着樹脂、着色剤、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び/又は磁性粉)を混合する。得られた混合物を、溶融し混練する。得られる溶融混練物を、粉砕、及び分級して、所望の粒子径のトナーコアを得る。粉砕法は、後述の凝集法と比較して、トナーコアの調製が容易であるという利点を有する。一方、粉砕法は、粉砕工程を経てトナーコアを得るため、平均円形度の高いトナーコアが得られ難い点で、凝集法よりも不利である。しかし、後述するシェル層の形成工程で、シェル層の原料を加熱することによりシェル層の硬化反応が進行する。その際に、やや軟化したトナーコアが表面張力によって収縮することで、トナーコアが球形化される傾向にある。従って、トナーコアを粉砕法で製造する場合、トナーコアの平均円形度が幾分低くても、大きなデメリットにはならないと考えられる。そのため、トナーコアの製造方法としては粉砕法が好ましい。
(凝集法)
凝集法では、まず、結着樹脂、着色剤、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び/又は磁性粉)を含む微粒子を、水性媒体中で凝集させて凝集粒子を得る。得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。合一化により、トナーコアを含む水性分散液が得られる。得られた水性分散液から分散剤等を除去し、トナーコアを洗浄する。その結果、トナーコアが得られる。
トナーコアの製造において、pH4に調整された水性媒体中で測定されるトナーコアのゼータ電位は、負極性(0mV未満)であることが好ましく、−10mV以下であることがより好ましい。pH4に調整された水性媒体中でのトナーコアのゼータ電位は、例えば、以下の方法で測定することができる。
(pH4の水性媒体中でのトナーコアのゼータ電位の測定方法)
トナーコア0.2g、イオン交換水80mL、及びノニオン界面活性剤(例えば、株式会社日本触媒製「ポリビニルピロリドンK−85」、水分濃度5質量%、固形分濃度95%)20gを、マグネットスターラーを用いて混合する。これにより、トナーコアを溶媒(例えば、イオン交換水)に均一に分散させて分散液を得る。得られた分散液に希塩酸を加えて、分散液のpHを4に調整する。これにより、pH4のトナーコアの分散液を得る。pH4のトナーコアの分散液を試料として用いて、分散液中のトナーコアのゼータ電位を測定する。ゼータ電位は、ゼータ電位・粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて測定する。
標準キャリアと、標準キャリアの質量に対して7質量%のトナーコアとを混合装置(例えば、WAB社製「ターブラ(登録商標)ミキサー」)を用いて30分間混合する場合、トナーコアの摩擦帯電量は、負極性(0μC/g未満)であることが好ましく、−10μC/g以下であることがより好ましい。摩擦帯電量は、例えば、以下の方法によって測定することができる。
(摩擦帯電量の測定方法)
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して7質量%のトナーコアとを、混合装置(例えば、WAB社製「ターブラ(登録商標)ミキサー」)を用いて30分間混合する。得られた混合物を試料として、トナーコアの摩擦帯電量をQ/mメーター(例えば、トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定する。このようにして測定される摩擦帯電量は、トナーコアが正負何れの極性に帯電され易いか、及びトナーコアの帯電され易さの指標となる。
通常、トナーコアに均一なシェル層を形成するために、分散剤を含む水性媒体中でトナーコアを高度に分散させておく場合が多い。しかし、標準キャリアとのトナーコアの摩擦帯電量が負極性(0μC/g未満)である場合、水性媒体中で、トナーコアに、シェル層の原料(例えば、含窒素化合物であって水性媒体中で正に帯電する熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマー)が、電気的に引き寄せられる。そして、トナーコアの表面で、トナーコアに吸着された熱硬化性樹脂の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマー)と、熱可塑性樹脂との反応が良好に進行する。このため、水性媒体中で負帯電するトナーコアを用いてトナーコアの表面にシェル層を形成すると、分散剤を用いて水性媒体中にトナーコアを高度に分散させない場合でも、トナーコアの表面に均一なシェル層を形成できる傾向にある。
トナーコアのpH4の水性媒体中でのゼータ電位が、負極性(0mV未満)である場合にも、水性媒体中でトナーコアの表面にシェル層を形成する際、同様の効果が得られる傾向にある。
標準キャリアとの摩擦帯電量、及びpH4の水性媒体中でのゼータ電位のうちの少なくとも一方が、負極性を示すトナーコアを用いてトナー粒子を製造すると、分散剤を用いない場合でも、トナーコアが均一なシェル層で被覆されたトナー粒子を得易い傾向にある。そのため、排水負荷の非常に高い分散剤を用いず排水を希釈することなく、トナー粒子を製造する際に排出される排水の全有機炭素濃度を、低いレベル(例えば、15mg/L以下)にすることが可能となる。
<5−2.シェル層形成方法>
得られたトナーコアをシェル層で被覆することにより、トナー母粒子が得られる。以下、シェル層形成方法を説明する。
シェル層を形成するための原料として、メラミン、尿素、グリオキサールと尿素との反応生成物、及びこれらとホルムアルデヒドとの付加反応によって生成される前駆体(メチロール化物)のうちの1種以上が用いられる。シェル層を形成するための原料として、更に熱可塑性樹脂が用いられる。
シェル層を形成する際には、シェル層の形成に用いる溶媒に対する、結着樹脂の溶解、及びトナーコアに含まれる離型剤のような成分の溶出を防ぐことが好ましい。このため、シェル層の形成は、水のような溶媒中で好適に行うことができる。
シェル層の形成は、シェル層を形成するための原料の水溶液(原料を含む水性媒体)に、トナーコアを添加することにより行われることが好ましい。水性媒体中にトナーコアを添加した後、水性媒体中でトナーコアを良好に分散させる方法としては、分散液を強力に攪拌できる装置を用いて、トナーコアを水性媒体中で機械的に分散させる方法が挙げられる。
分散液を強力に攪拌できる装置としては、例えば、混合装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスミックス」)を用いることができる。
シェル層を形成するための原料の水溶液にトナーコアを添加する前に、水溶液のpHを酸性物質を用いて4程度に調整することが好ましい。水溶液のpHを酸性側に調整することで、シェル層を形成するための原料の重縮合反応が促進される傾向にある。
必要に応じて、シェル層を形成するための原料の水溶液(原料を含む水性媒体)のpHを調整した後、水性媒体中で、シェル層を形成するための原料とトナーコアとを混合する。その後、水性分散液中で、トナーコアの表面とシェル層を形成するための原料との反応を進行させる。
シェル層を形成する際の温度は、40℃以上95℃以下であることが好ましく、50℃以上80℃以下であることがより好ましい。このような範囲の温度でシェル層を形成すると、シェル層の形成が良好に進行する傾向にある。
その結果、トナーコアを被覆するシェル層が形成され、トナー母粒子を含む水性分散液が得られる。トナー母粒子を含む水性分散液を常温まで冷却する。その後、必要に応じて、トナー母粒子の洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程から選択される1つ以上の工程を行う。その結果、トナーが得られる。以下、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を説明する。
<5−3.洗浄工程>
トナー母粒子は、必要に応じて、水を用いて洗浄される。洗浄方法としては、トナー母粒子を含む水性分散液から、固液分離によりトナー母粒子をウエットケーキとして回収し、得られるウエットケーキを、水を用いて洗浄する方法が挙げられる。別の洗浄方法としては、トナー母粒子の分散液中のトナー母粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー母粒子を水に再分散させる方法が挙げられる。
<5−4.乾燥工程>
トナー母粒子は、必要に応じて乾燥されてもよい。トナー母粒子を乾燥させる方法としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、及び減圧乾燥機のような乾燥機を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー母粒子の凝集を抑制し易いことから、スプレードライヤーを用いる方法がより好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー母粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、乾燥と同時にトナー母粒子の表面に外添剤を付着させることもできる。
<5−5.外添工程>
トナー母粒子の表面には、必要に応じて外添剤が付着されてもよい。得られるトナー母粒子の表面に外添剤を付着させる方法としては、外添剤がトナー母粒子の表面に埋没しないように条件を調整して、FMミキサー、又はナウターミキサー(登録商標)のような混合機を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
以上、本実施形態のトナーを説明した。本実施形態のトナーは、発色性、耐熱保存性、帯電安定性、及び画像濃度の安定性に優れている。このため、本実施形態のトナーは、種々の画像形成装置で好適に使用することができる。
<第二実施形態:画像形成方法>
第二実施形態は、画像形成方法に関する。本実施形態の画像形成方法は、第一実施形態のトナーを用いて画像を形成する方法である。画像形成方法は、転写工程と、定着工程とを包含する。
以下、図1を参照して、本実施形態の画像形成方法を説明する。図1は、本実施形態の画像形成方法に用いられる画像形成装置6の構成を示す概略図である。
画像形成装置6は、像担持体(感光体に相当)1と、帯電部(帯電装置に相当)27と、露光部(露光装置に相当)28と、現像部29と、転写部とを備える。帯電部27は、像担持体1の表面を帯電する。露光部28は、帯電された像担持体1の表面を露光して、像担持体1の表面に静電潜像を形成する。現像部29は、静電潜像をトナー像として現像する。転写部は、トナー像を像担持体1から被転写体(中間転写ベルトに相当)20へ転写する。
画像形成装置6は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置6は、例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。異なる色のトナーによる各色のトナー像を形成するために、本実施形態の画像形成装置6は、タンデム方式のカラー画像形成装置であってもよい。
以下、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に挙げて、画像形成装置6を説明する。画像形成装置6は、所定方向に並設された複数の感光体1と、複数の現像部29とを備える。複数の現像部29は、各々、感光体1に対向して配置される。複数の現像部29は、現像部29の表面にトナーを担持して搬送する。複数の現像部29は、各々、現像ローラーを備える。現像ローラーは、搬送されたトナーを、対応する感光体1の表面に供給する。使用されるトナーは、第一実施形態のトナーである。
図1に示すように、画像形成装置6は、箱型の機器筺体7を有している。機器筺体7内には、給紙部8、画像形成部9、及び定着部10が設けられる。給紙部8は、用紙Pを給紙する。画像形成部9は、給紙部8から給紙された用紙Pを搬送しながら、用紙Pに画像データに基づくトナー像を転写する。定着部10は、画像形成部9で用紙P上に転写された未定着のトナー像を、用紙Pに定着させる。更に、機器筺体7の上面には、排紙部11が設けられる。排紙部11は、定着部10で定着処理された用紙Pを排紙する。
給紙部8には、給紙カセット12、第一ピックアップローラー13、給紙ローラー14、15、及び16、並びにレジストローラー対17が備えられる。給紙カセット12は、機器筺体7から挿脱可能に設けられる。給紙カセット12には、各種サイズの用紙Pが貯留される。第一ピックアップローラー13は、給紙カセット12の左上方位置に設けられる。第一ピックアップローラー13は、給紙カセット12に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー14、15、及び16は、第一ピックアップローラー13によって取り出された用紙Pを搬送する。レジストローラー対17は、給紙ローラー14、15、及び16によって搬送された用紙Pを、一時待機させた後に、所定のタイミングで画像形成部9に供給する。
また、給紙部8は、手差しトレイ(不図示)と、第二ピックアップローラー18とを更に備えている。手差しトレイは、機器筺体7の左側面に取り付けられる。第二ピックアップローラー18は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。第二ピックアップローラー18によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー14、15及び16によって搬送され、レジストローラー対17によって、所定のタイミングで画像形成部9に供給される。
画像形成部9には、画像形成ユニット19、中間転写ベルト20、及び二次転写ローラー21が備えられる。中間転写ベルト20には、画像形成ユニット19によって、中間転写ベルト20の表面(一次転写ローラー33との接触面)に、トナー像が一次転写される。なお、一次転写されるトナー像は、コンピューターのような上位装置から伝送された画像データに基づいて形成される。二次転写ローラー21は、中間転写ベルト20上のトナー像を、給紙カセット12から送り込まれた用紙Pに二次転写する。
画像形成ユニット19には、中間転写ベルト20の回転方向における従動ローラー31の上流側(図1では右側)から下流側に向けて、イエロートナー供給用ユニット25、マゼンタトナー供給用ユニット24、シアントナー供給用ユニット23、及びブラックトナー供給用ユニット22が順次配設されている。ユニット22、23、24、及び25には、各ユニットの中央位置に、感光体1が配設されている。感光体1は、矢符(時計回り)方向に回転可能に配設されている。
そして、各感光体1の周囲には、帯電部27、露光部28、及び現像部29が、各感光体1の回転方向における各感光体1と中間転写ベルト20との当接部の上流側から順に配置されている。また、各感光体1の回転方向における各感光体1と中間転写ベルト20との当接部の下流側にクリーニング装置(不図示)が配置されている。
帯電部27は、感光体1の表面を帯電する。具体的には、帯電部27は、矢符方向に回転されている感光体1の周面を均一に帯電する。帯電部27は、感光体1の周面を均一に帯電できる限り特に限定されない。帯電部27は、非接触方式の帯電装置であってもよいし、接触方式の帯電装置であってもよい。帯電部27としては、例えば、コロナ帯電装置、帯電ローラー、及び帯電ブラシが挙げられる。帯電部27としては、接触方式の帯電装置(具体的には、帯電ローラー、帯電ブラシ)が好ましく、帯電ローラーがより好ましい。接触方式の帯電部27を使用することにより、帯電部27から発生するガス(例えば、オゾンのような酸化性物質のガス、又はNOXのような窒素酸化物のガス)の排出を抑制し易くなる。その結果、ガスによる感光層の劣化が抑制されると共に、オフィス環境に配慮した設計が達成できると考えられる。
帯電部27が接触方式の帯電ローラーを備える場合、帯電ローラーは、感光体1と接触したまま、感光体1の周面(表面)を帯電する。このような帯電ローラーとしては、例えば、感光体1と接触したまま、感光体1の回転に従属して回転する帯電ローラーが挙げられる。また、帯電ローラーとしては、例えば、少なくとも表面部が樹脂で構成された帯電ローラーが挙げられる。具体的な帯電ローラーは、例えば、回転可能に軸支された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加部とを備える。このような帯電ローラーを備えた帯電部27は、電圧印加部が芯金に電圧を印加することによって、樹脂層を介して接触する感光体1の表面を帯電させることができる。
帯電部27が印加する電圧は、特に限定されない。しかし、好適な画像が形成されることから、帯電部27が交流電圧を印加する場合よりも、又は帯電部27が直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を印加する場合よりも、帯電部27が直流電圧のみを印加することが好ましい。
帯電ローラーの樹脂層を構成する樹脂は、感光体1の周面を良好に帯電させることができる限り特に限定されない。樹脂層を構成する樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン変性樹脂が挙げられる。樹脂層には、無機充填材を含有させてもよい。
感光体1の回転方向における帯電部27の上流側には、除電器(不図示)が設けられてもよい。除電器は、中間転写ベルト20へのトナー像の一次転写が終了した後、感光体1の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清掃及び除電された感光体1の周面は、帯電部27へ送られ、新たに帯電処理される。
露光部28は、いわゆるレーザー走査ユニットである。露光部28は、帯電された感光体1の表面を露光して、感光体1の表面に静電潜像を形成する。具体的には、露光部28は、帯電部27によって均一に帯電された感光体1の周面(表面)に、パーソナルコンピューターのような上位装置から入力された画像データに基づくレーザー光を照射する。これにより、感光体1の周面(表面)に、画像データに基づく静電潜像が形成される。
現像部29は、静電潜像をトナー像として現像する。具体的には、現像部29は、静電潜像が形成された感光体1の周面にトナーを供給し、画像データに基づくトナー像を形成する。そして、形成されたトナー像が中間転写ベルト20に一次転写される。クリーニング装置は、中間転写ベルト20へのトナー像の一次転写が終了した後、感光体1の周面に残留しているトナーを清掃する。
中間転写ベルト20は、無端状のベルト回転体である。中間転写ベルト20は、駆動ローラー30、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33に架け渡されている。複数の感光体1の周面が、各々、中間転写ベルト20の表面(接触面)に当接するように、中間転写ベルト20は配置されている。
また、中間転写ベルト20は、各感光体1に対向して配置される一次転写ローラー33によって、感光体1に押圧される。押圧された状態で、中間転写ベルト20は、複数の一次転写ローラー33によって矢符(反時計回り)方向に無端回転する。駆動ローラー30は、ステッピングモーターなどの駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト20を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33は、回転自在に設けられる。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び一次転写ローラー33は、駆動ローラー30による中間転写ベルト20の無端回転に伴って、従動回転する。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び一次転写ローラー33は、駆動ローラー30の主動回転に応じて中間転写ベルト20を介して従動回転すると共に、中間転写ベルト20を支持する。
転写部は、トナー像を像担持体1から中間転写ベルト20へ転写する。具体的には、一次転写ローラー33は、一次転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性を有するバイアス)を中間転写ベルト20に印加する。その結果、各感光体1上に形成されたトナー像は、各感光体1と一次転写ローラー33との間で、中間転写ベルト20に対して順次転写(一次転写)される。
二次転写ローラー21は、二次転写バイアス(具体的には、トナー像と逆極性を有するバイアス)を記録媒体(例えば、用紙P)に印加する。その結果、中間転写ベルト20上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー21とバックアップローラー32との間で用紙Pに転写される。これにより、未定着のトナー像が用紙Pに転写される。
ここで、本実施形態の画像形成方法は、転写工程を包含する。転写工程では、記録媒体に転写バイアスが印加される。これは、上述の二次転写ローラー21による用紙Pへの二次転写バイアスの印加操作に対応する。転写工程では、トナーの用紙Pへの載せ量が0.4mg/cm2になるように、用紙Pに二次転写バイアスが印加されることが好ましい。用紙Pが搬送される線速は、200mm/秒以上220mm/秒以下であることが好ましい。
定着部10は、画像形成部9で用紙Pに転写された未定着トナー像を定着させる。定着部10は、加熱ローラー34と、加圧ローラー35とを備えている。加熱ローラー34は、通電発熱体により加熱される。加圧ローラー35は、加熱ローラー34に対向配置され、加圧ローラー35の周面が加熱ローラー34の周面に押圧される。
画像形成部9で二次転写ローラー21により用紙Pに転写された転写画像は、用紙Pが加熱ローラー34と加圧ローラー35との間を通過する際の加熱による定着処理により用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部11へ排紙される。また、定着部10と排紙部11との間の適所に、複数の搬送ローラー36が配設されている。
ここで、本実施形態の画像形成方法は、定着工程を包含する。定着工程では、トナーを記録媒体上に定着する。これは、上述の定着部10による用紙Pへの定着操作に対応する。所望の発色性を有する画像を形成するために、加熱ローラー34による定着温度は、150℃以上170℃以下であることが好ましい。加圧ローラー35による定着圧力は、210N以上230N以下であることが好ましい。加熱ローラー34と加圧ローラー35との間の距離(ニップ幅)は、6.0mm以上6.5mm以下であることが好ましい。
排紙部11は、機器筺体7の頂部が凹没されることによって形成される。凹没した凹部の底部に、排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ37が設けられる。
上述の方法によって用紙Pに形成された画像は、所望の発色性を有することが好ましい。具体的には、画像のa*値が−4以上1以下であり、b*値が−4以上1以下であり、L*値が22以下であることが好ましい。
以上、図1を参照して、本実施形態の画像形成方法を説明した。本実施形態の画像形成方法によれば、第一実施形態のトナーを使用することにより、好適な発色性、及び画像濃度を有する画像を形成することができる。更に本実施形態の画像形成方法によれば、形成される画像におけるかぶりの発生を抑制することもできる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
実施例、及び比較例における各物性は、以下の方法で測定した。
(ガラス転移点)
非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tga)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、非結晶性ポリエステル樹脂の比熱の変化点から求めた。より具体的には、測定装置として示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。非結晶性ポリエステル樹脂の吸熱曲線を測定することで非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tga)を求めた。試料(非結晶性ポリエステル樹脂)10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用した。測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分の条件で測定することにより、非結晶性ポリエステル樹脂の吸熱曲線を得た。得られた吸熱極性から、非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tga)を求めた。
(軟化点)
非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点(Tma)は、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した。試料(非結晶性ポリエステル樹脂)を高化式フローテスターにセットした。ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融し流出させた。これにより、軟化点(Tma)を測定した。高化式フローテスターの測定により得られる、温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブから、非結晶性樹脂の軟化点(Tma)を読み取った。具体的には、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とした。S字カーブ中の、ストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を、試料の軟化点(Tma)とした。
(融点)
結晶性ポリエステル樹脂の融点(Mpc)は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定した。アルミ皿に10mg以上15mg以下の試料(結晶性ポリエステル樹脂)を入れた。続いてDSCの測定部にアルミ皿をセットした。リファレンスには空のアルミ皿を用いた。30℃を測定開始温度とし、10℃/分の速度で170℃まで昇温させた。昇温の際に観測される融解熱の最大ピーク温度を、結晶性ポリエステル樹脂の融点(Mpc)とした。
(結晶性指数)
結晶性樹脂、及び非結晶性樹脂として使用される樹脂の結晶性指数は、樹脂の軟化点(Tm)と、樹脂の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mp)との比率(Tm/Mp)から求めた。樹脂の軟化点(Tm)、及び融点(Mp)は、上述の軟化点(Tma)、及び融点(Mpc)の測定方法と同様にして測定した。
(体積中位径)
トナーコアの体積中位径(D50)は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマン・コールター株式会社製)を用いて測定した。
<1.トナーを調製するための原料>
次に、実施例1〜12、及び比較例1〜6のトナーを調製するために用いた原料を説明する。
<1−1.非結晶性ポリエステル樹脂の調製>
トナーに含まれるトナーコアの結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂を使用した。非結晶性ポリエステル樹脂を、以下の方法で調製した。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1575g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物163g、フマル酸377g、及び触媒としての酸化ジブチル錫4gを、反応容器に仕込んだ。反応容器内の空気を窒素雰囲気で置換した。続いて、反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器内部の温度を220℃まで上昇させた。反応容器の内容物を220℃で8時間反応させた。続いて、反応容器内の圧力を60mmHgまで減少させて、反応容器の内容物を更に1時間反応させた。その後、反応容器の内容物を210℃に冷却し、トリメリット酸無水物336gを反応容器に添加した。反応終了後、反応容器の内容物を取り出して冷却した。その結果、非結晶性ポリエステル樹脂AP1が得られた。
得られた非結晶性ポリエステル樹脂AP1に関し、ガラス転移点(Tga)は55℃、軟化点(Tma)は64℃、結晶性指数は1.80であった。
<1−2.結晶性ポリエステル樹脂の調製>
トナーに含まれるトナーコアの結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂に加えて、結晶性ポリエステル樹脂も使用した。結晶性ポリエステル樹脂を、以下の方法で調製した。1,6−ヘキサンジオール132g、1,10−デカンジカルボン酸230g、触媒としての酸化ジブチル錫1g、及びハイドロキノン0.3gを、反応容器に仕込んだ。次に、反応容器内の空気を窒素雰囲気で置換した。続いて、反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器内部の温度を200℃まで上昇させた。反応容器の内容物を、副生水を留去しながら、200℃で5時間重合反応させた。次いで、反応容器内の圧力を5mmHg以上20mmHg以下に減圧して、重合反応を継続した。反応混合物の各物性(融点Mpc、及び結晶性指数)が表1に記載に物性になるまで、反応混合物を200℃で反応させた。その結果、表1に記載の各物性を有する、結晶性ポリエステル樹脂CP1、CP2、CP3、CP4、及びCP5が得られた。
表1に、得られた結晶性ポリエステル樹脂CP1、CP2、CP3、CP4、及びCP5の融点(Mpc)、及び結晶性指数を示す。
<1−3.黒色着色剤>
トナーに含まれるトナーコアの調製には、以下の黒色着色剤を使用した。
黒色着色剤B−A:カーボンブラック、キャボット社製「REGAL(登録商標)400」
黒色着色剤B−B:カーボンブラック、キャボット株式会社製「MOGUL L」
<1−4.色域調整剤>
トナーに含まれるトナーコアの調製には、以下の色域調整剤を使用した。
色域調整剤P−A:C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン)
色域調整剤P−B:C.I.ピグメントブルー15:2
色域調整剤D−A:株式会社日本化学工業所製「VioletBL」
以下、色域調整剤P−A、色域調整剤P−B、及び色域調整剤D−Aを、各々、顔料P−A、顔料P−B、及び染料D−Aと記載する場合がある。
<1−5.シェル層の原料>
トナーに含まれるシェル層の原料として、以下の原料S1、S2、S3、及びS4を使用した。原料S1、S2、及びS3は、熱硬化性樹脂の原料である。原料S4は、熱可塑性樹脂の原料である。
(熱硬化性樹脂の原料)
原料S1:メチロールメラミン水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液、固形分濃度80質量%)
原料S2:グリオキサール系モノマーの水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)NS−11」、固形分濃度40質量%)
原料S3:メチロール化尿素の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSU−100」、固形分濃度80質量%)
(熱可塑性樹脂の原料)
原料S4:水溶性ポリアクリルアミド水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)A−1」、アクリルアミド樹脂の水溶液、固形分濃度11質量%)
<2.トナーの調製>
上述の原料を用いて、以下の方法によって、実施例1〜12、及び比較例1〜6のトナーを調製した。
[実施例1]
以下に示す方法によって、実施例1のトナーを調製した。まず、トナーコアを調製した。得られたトナーコアに対して、シェル層形成工程、洗浄工程、外添工程、及び乾燥工程を行うことにより、実施例1のトナーを得た。以下、トナーコアの調製、シェル層形成工程、洗浄工程、外添工程、及び乾燥工程を説明する。
<2−1.トナーコアの調製>
非結晶性ポリエステル樹脂AP1の85質量部、結晶性ポリエステル樹脂CP1の15質量部、黒色着色剤B−Aの5質量部、顔料P−A(C.I.ピグメントブルー15:3、銅フタロシアニン)の1質量部、及び離型剤(エステルワックス、日油株式会社製「WEP−3」)の5質量部を、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、2400rpmの速度で混合した。
次いで、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料投入速度5kg/時、軸回転数160rpm、及び設定温度範囲80℃以上130℃以下の条件で、溶融し、混練した。得られた溶融混練物を冷却した。冷却された溶融混錬物を、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル T250」)を用いて粉砕した。得られた粉砕品をエルボージェット(日鉄工業株式会社製「EJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、トナーコアが得られた。
得られたトナーコアの体積中位径(D50)は6.0μmであった。次に、得られたトナーコアの一部を取り出した。取り出されたトナーコアを、以下の標準キャリアとの摩擦帯電量の測定、及び以下のpH4の分散液中のゼータ電位の測定に用いた。
(標準キャリアとの摩擦帯電量の測定)
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して7質量%のトナーコアとを、混合装置(WAB社製「ターブラ(登録商標)ミキサー」)を用いて30分間混合した。得られた混合物を試料として、トナーコアの摩擦帯電量をQ/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定した。
(pH4の分散液中のゼータ電位の測定)
トナーコア0.2g、イオン交換水80mL、及びノニオン界面活性剤(株式会社日本触媒製「ポリビニルピロリドンK−85」、水分濃度5質量%、固形分濃度95質量%)20gを、マグネットスターラーを用いて混合した。これにより、トナーコアを溶媒(イオン交換水)に均一に分散させて分散液を得た。得られた分散液に希塩酸を加えて、分散液のpHを4に調整した。これにより、pH4のトナーコアの分散液を得た。pH4のトナーコアの分散液を試料として用いて、分散液中のトナーコアのゼータ電位を測定した。ゼータ電位は、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて測定した。
得られたトナーコアに関し、上述の方法で標準キャリアとの摩擦帯電量を測定した。トナーコアの摩擦帯電量は−20μC/gであった。得られたトナーコアに関し、上述の方法でpH4の分散液中のゼータ電位を測定した。トナーコアのpH4の分散液中のゼータ電位は−30mVであった。
<2−2.シェル層形成工程>
次に、得られたトナーコアとシェル層の原料とを用いて、トナーコアの表面にシェル層を形成した(シェル層形成工程)。
シェル層形成工程は、以下の方法で行った。温度計、及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水300mLを入れた。ウォーターバスを用いてフラスコの内温を30℃に保持した。次いで、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。pH4に調整した後、メチロールメラミン水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液、固形分濃度80質量%)2mLと、水溶性ポリアクリルアミド水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)A−1」、アクリルアミド樹脂の水溶液、固形分濃度11質量%)4mLとを、シェル層の原料としてフラスコ内に添加した。次いで、フラスコの内容物を攪拌し、シェル層の原料を水性媒体に溶解させた。その結果、シェル層の原料の水溶液(A)が得られた。
フラスコ内の得られた水溶液(A)に、上述のトナーコアの調製で得られたトナーコア300gを添加した。フラスコの内容物を、200rpmの速度で1時間攪拌した。次いで、フラスコ内に、イオン交換水(水性媒体)300mLを追加した。その後、フラスコの内容物を100rpmで攪拌しながら、1℃/分の速度で、フラスコ内温を70℃まで上げた。昇温後、温度70℃、及び速度100rpmの条件で、フラスコの内容物を2時間攪拌し続けた。その後、フラスコ内に水酸化ナトリウムを加えて、フラスコの内容物のpHを7に調整した。次いで、フラスコの内容物を常温まで冷却した。その結果、トナーコアがシェル層で被覆されたトナー母粒子の分散液(B)が得られた。
<2−3.洗浄工程>
得られたトナー母粒子の分散液(B)をブフナー漏斗で濾過し、トナー母粒子のウエットケーキを得た。次いで、トナー母粒子のウエットケーキをイオン交換水に分散させて、分散液に含まれるトナー母粒子を濾過することにより、トナー母粒子を洗浄した。トナー母粒子のイオン交換水による洗浄操作を、同様の方法で5回繰り返した。
洗浄工程において、トナー母粒子の分散液(B)をブフナー漏斗で濾過した際に生じた濾液(初期濾液)を、排水として回収した。また、5回のトナー母粒子のイオン交換水による洗浄操作によって生じた濾液(洗浄により生じた濾液)も、排水として回収した。排水の量(回収された初期濾液、及び洗浄により生じた濾液の総量)は、後述の乾燥工程後に得られたトナー100質量部に対して、97質量部であった。回収された排水(回収された初期濾液、及び洗浄により生じた濾液)に含まれる全有機炭素(TOC)の濃度は8mg/Lであった。排水中の全有機炭素の濃度は、オンラインTOC計(株式会社島津製作所製「TOC−4200」)を用いて測定した。
<2−4.乾燥工程>
洗浄工程で得られたトナー母粒子のウエットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)に供給することにより、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。コートマイザー(登録商標)による乾燥は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分の条件で行った。
<2−5.外添工程>
乾燥工程で乾燥させたトナー母粒子100質量部と、外添剤としての乾式シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1.0質量部とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて5分間混合した。これにより、トナー母粒子に外添剤を付着させた。その後、200メッシュ(目開き75μm)の篩によりトナーを篩別した。その結果、実施例1のトナーが得られた。
以上、実施例1のトナーの調製方法を説明した。次に、以下に示す方法によって、実施例2〜12、及び比較例1〜6のトナーを調製した。
[実施例2]
結晶性ポリエステル樹脂CP1に代えて結晶性ポリエステル樹脂CP2を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のトナーを得た。
[実施例3]
結晶性ポリエステル樹脂CP1に代えて結晶性ポリエステル樹脂CP3を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のトナーを得た。
[実施例4]
以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のトナーを得た。結晶性ポリエステル樹脂CP1に代えて、結晶性ポリエステル樹脂CP2を使用した。シェル層の原料S1(ミルベン(登録商標)レジンSM−607)、及び原料S4(BECKAMINE(登録商標)A−1)の添加量を変更することにより、シェル層の厚さを20nmから5nmに変更した。なお、シェル層の原料S1(ミルベン(登録商標)レジンSM−607)の添加量に対する、シェル層の原料S4(BECKAMINE(登録商標)A−1)の添加量の比率は、実施例1と同じ比率とした。
[実施例5]
以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5のトナーを得た。結晶性ポリエステル樹脂CP1に代えて、結晶性ポリエステル樹脂CP3を使用した。シェル層の原料S1(ミルベン(登録商標)レジンSM−607)、及び原料S4(BECKAMINE(登録商標)A−1)の添加量を変更することにより、シェル層の厚さを20nmから50nmに変更した。なお、シェル層の原料S1(ミルベン(登録商標)レジンSM−607)の添加量に対するシェル層の原料S4(BECKAMINE(登録商標)A−1)の添加量の比率は、実施例1と同じ比率とした。
[実施例6]
顔料P−Aに代えて顔料P−B(C.I.ピグメントブルー15:2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例6のトナーを得た。
[実施例7]
黒色着色剤B−Aに代えて黒色着色剤B−Bを使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例7のトナーを得た。
[実施例8]
以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8のトナーを得た。黒色着色剤B−Aの添加量を5.0質量部から8.0質量部に変更した。顔料P−Aの添加量を1.0質量部から3.0質量部に変更した。
[実施例9]
以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例9のトナーを得た。黒色着色剤B−Aの添加量を5.0質量部から4.0質量部に変更した。顔料P−Aの添加量を1.0質量部から0.5質量部に変更した。
[実施例10]
シェル層の原料S1に代えてシェル層の原料S2を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例10のトナーを得た。
[実施例11]
シェル層の原料S1に代えてシェル層の原料S3を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例11のトナーを得た。
[実施例12]
顔料P−Aに代えて染料D−Aを使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例12のトナーを得た。
[比較例1]
色域調整剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のトナーを得た。
[比較例2]
結晶性ポリエステル樹脂CP1に代えて結晶性ポリエステル樹脂CP4を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のトナーを得た。比較例2のトナーでは、シェル層形成工程でトナー粒子の凝集が発生し易く、シェル層を形成することが困難であった。そのため、比較例2のトナーについては、後述の評価を行わなかった。
[比較例3]
結晶性ポリエステル樹脂CP1に代えて結晶性ポリエステル樹脂CP5を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のトナーを得た。
[比較例4]
以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4のトナーを得た。シェル層の原料S1(ミルベン(登録商標)レジンSM−607)、及び原料S4(BECKAMINE(登録商標)A−1)の添加量を変更することにより、シェル層の厚さを20nmから3nmに変更した。なお、シェル層の原料S1(ミルベン(登録商標)レジンSM−607)の添加量に対する、シェル層の原料S4(BECKAMINE(登録商標)A−1)の添加量の比率は、実施例1と同じ比率とした。
[比較例5]
以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例5のトナーを得た。シェル層の原料S1(ミルベン(登録商標)レジンSM−607)、及び原料S4(BECKAMINE(登録商標)A−1)の添加量を変更することにより、シェル層の厚さを20nmから55nmに変更した。なお、シェル層の原料S1(ミルベン(登録商標)レジンSM−607)の添加量に対する、シェル層の原料S4(BECKAMINE(登録商標)A−1)の添加量の比率は、実施例1と同じ比率とした。
[比較例6]
実施例1と同様にして、トナーコアを得た。その後、シェル層形成工程を行わなかった。得られたトナーコアをトナー母粒子として用いた。トナー母粒子(トナーコア)に、実施例1と同様の方法で、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を行った。その結果、比較例6のトナーが得られた。
<3.評価>
得られた各実施例、及び各比較例のトナーについて、以下の方法で、シェル層の厚さ、耐熱保存性、発色性、画像濃度、かぶり濃度、及び帯電量を評価した。
<3−1.シェル層の厚さ>
トナーに含まれるトナー粒子のシェル層の厚さを以下のように測定した。なお、比較例6のトナーに含まれるトナー粒子にはシェル層が形成されていない。そのため、比較例6のトナーについては、シェル層の厚さを測定しなかった。
(トナー粒子の断面のTEM写真の撮影方法)
まず、トナーを常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、40℃の雰囲気に2日間静置し、硬化物を得た。得られた硬化物を、四酸化オスミウムを用いて染色した。その後、ダイヤモンドナイフをセットしたミクロトーム(ライカ株式会社製「EM UC6」)を用いて、得られた硬化物から、厚さ200nmのトナー粒子の断面観察用の薄片試料を切り出した。得られた薄片試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて倍率3000倍及び10000倍で観察し、トナー粒子の断面のTEM写真を撮影した。
(シェル層の厚さの測定方法)
シェル層の厚さは、トナー粒子の断面のTEM撮影像を画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析することで計測した。具体的には、トナー粒子の断面の略中心点で直交する2本の直線を引き、2本の直線上のシェル層と交差する4箇所の長さを測定した。このようにして測定される4箇所の長さの平均値を、測定対象の1個のトナー粒子が備えるシェル層の厚さとした。このようなシェル層の厚さの測定を、10個のトナー粒子に対して行い、測定対象の10個のトナー粒子それぞれが備えるシェル層の厚さの平均値を求めた。求められた平均値を、トナーが備えるシェル層の厚さとした。
シェル層が5nmを下回る場合には、TEM撮影像上でシェル層とトナーコアとの界面が不明瞭であるため、シェル層の厚さの測定が困難であった。そのため、TEM撮影と電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせて、TEM撮影像中に、シェル層に特徴的な元素(窒素)のマッピングを行い、シェル層とトナーコアとの界面を明確化して、シェル層の厚さを計測した。
各実施例、及び各比較例のトナーに含まれるトナー粒子について、測定されたシェル層の厚さを表2に示す。
<3−2.耐熱保存性>
トナー3gを、容量20mLのポリ容器に秤量し、60℃に設定された恒温器内に3時間静置した。これにより、耐熱保存性評価用のトナーが得られた。その後、耐熱保存性評価用のトナーを、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製「TYPE PT−E 84810」)を用いて篩別した。具体的には、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、200メッシュの篩を用いて、耐熱保存性評価用のトナーを篩別した。篩別後に、篩上に残留したトナーの質量を測定した。篩別前のトナーの質量と、篩別後に篩上に残留したトナーの質量とから、下式に従って凝集度(質量%)を求めた。凝集度が10質量%以下であるトナーを合格とした。
(凝集度算出式)
凝集度(質量%)=100×篩上に残留したトナーの質量/篩別前のトナーの質量
<3−3.二成分現像剤の調製>
トナー10質量部と、フェライトキャリア100質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、二成分現像剤を得た。得られた二成分現像剤を、以下の発色性、帯電量、画像濃度(ID)、及びかぶり濃度(FD)の評価に用いた。
<3−4.発色性>
得られた二成分現像剤について、以下の方法で発色性を評価した。まず、以下の方法で、評価に使用する画像を形成した。評価機として、カラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5300DN」)を用いた。調製した二成分現像剤を評価機のブラック色用現像部に投入し、補充用のトナーを評価機のブラック色用トナーコンテナに投入した。続いて、下記の条件で、評価パターンを記録媒体に印刷した。これにより、評価に使用する画像を得た。
(画像形成条件)
常温常湿環境(20℃、65%RH)
線速:170mm/秒
トナーの載せ量:0.4mg/cm2
定着温度:160℃
定着圧力:220N
定着器のニップ幅:6.2mm
評価パターン:30mm×30mmのソリッド画像
記録媒体:カラー/モノクロ兼用紙(富士ゼロックス株式会社製「C2」、70g/m2)
得られた画像のL*値、a*値、及びb*値を、マクベス反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「SpectroEye」)を用いて測定した。
<3−5.画像濃度(初期)>
発色性の評価と同様の方法で、評価に使用する画像を得た。得られた画像の画像濃度(ID)を、マクベス反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「SpectroEye」)を用いて測定した。初期の画像濃度(ID)が1.30以上である画像が形成されたトナーを合格とした。
<3−6.かぶり濃度(初期)>
評価パターン(30mm×30mmのソリッド画像)を記録媒体に印刷する代わりに白紙印刷した以外は、上述の発色性の評価と同様の方法で、評価に使用する白紙画像を得た。得られた白紙画像の画像濃度(ID)を、マクベス反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「SpectroEye」)を用いて測定した。得られた白紙画像の画像濃度(ID)からベースペーパーの画像濃度(ID)を引いた値を、初期のかぶり濃度(FD)とした。初期のかぶり濃度(FD)が0.010以下である画像が形成されたトナーを合格とした。
<3−7.帯電量(初期)>
得られた二成分現像剤の帯電量を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定した。初期の帯電量が15μC/g以上35μC/g以下であるトナーを合格とした。
<3−8.画像濃度(1万枚印刷後)>
評価パターン(30mm×30mmのソリッド画像)を、所定の評価パターン(印字率5%)に変更した以外は、上述の発色性の評価と同様の方法で、所定の評価パターン(印字率5%)を1万枚の記録媒体に印刷した。1万枚印刷後に、上述の発色性の評価と同様の方法で、評価パターン(30mm×30mmのソリッド画像)を記録媒体に印刷し、評価に使用する画像を得た。得られた画像の画像濃度(ID)を、マクベス反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「SpectroEye」)を用いて測定した。1万枚印刷後の画像濃度(ID)が1.30以上である画像が形成されたトナーを合格とした。
<3−9.かぶり濃度(1万枚印刷後)>
評価パターン(30mm×30mmのソリッド画像)を、所定の評価パターン(印字率5%)に変更した以外は、上述の発色性の評価と同様の方法で、所定の評価パターン(印字率5%)を1万枚の記録媒体に印刷した。1万枚印刷後に、評価パターン(30mm×30mmのソリッド画像)を記録媒体に印刷する代わりに、白紙印刷した以外は、上述の発色性の評価と同様の方法で、評価に使用する白紙画像を得た。得られた白紙画像の画像濃度(ID)を、マクベス反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「SpectroEye」)を用いて測定した。得られた白紙画像の画像濃度(ID)からベースペーパーの画像濃度(ID)を引いた値を、1万枚印刷後のかぶり濃度(FD)とした。1万枚印刷後のかぶり濃度(FD)が0.010以下である画像が形成されたトナーを合格とした。
<3−10.帯電量(1万枚印刷後)>
評価パターン(30mm×30mmのソリッド画像)を、所定の評価パターン(印字率5%)に変更した以外は、上述の発色性の評価と同様の方法で、所定の評価パターン(印字率5%)を1万枚の記録媒体に印刷した。1万枚印刷後に、評価機のブラック色用現像部から、二成分現像剤を取り出した。取り出された二成分現像剤の帯電量を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定した。1万枚印刷後の帯電量が15μC/g以上35μC/g以下であるトナーを合格とした。
表2、及び表3に、各実施例、及び各比較例のトナーに対する上述の評価結果を示す。具体的には、シェル層の厚さ、発色性、耐熱保存性、初期の帯電量、初期の画像濃度、初期のかぶり濃度、1万枚印刷後の帯電量、1万枚印刷後の画像濃度、及び1万枚印刷後のかぶり濃度の評価結果を示す。表3中、発色性に関するL*値、a*値、及びb*値、初期の画像濃度、初期のかぶり濃度、1万枚印刷後の画像濃度、並びに1万枚印刷後のかぶり濃度は、各々、測定画像の5箇所(測定画像の中央部、及び四隅)の測定値の算術平均値を示す。
なお、表2、及び表3中、「Mpc」は結晶性ポリエステル樹脂の融点を、「ID」は画像濃度を、「FD」はかぶり濃度を示す。また、「色域調整剤の含有量」は、黒色着色剤の添加量(質量部)に対する、色域調整剤の添加量(質量部)を示す。「第一原料」は、熱硬化性樹脂の原料を示す。「第二原料」は、熱可塑性樹脂の原料を示す。
表2、及び表3に示されるように、実施例1〜12のトナーは、形成される画像の発色性、耐熱保存性、帯電量、及び形成される画像の画像濃度に優れていた。また、1万枚印刷後であっても、実施例1〜12のトナーは、帯電量、及び形成される画像の画像濃度に優れていた。更に、実施例1〜12のトナーを用いて形成される画像は、かぶりの発生も抑制されていた。
一方、比較例1のトナーでは、トナー粒子が色域調整顔剤を含んでいなかった。そのため、形成される画像について、所望の発色性、及び画像濃度が得られなかった。
比較例2のトナーでは、トナー粒子が融点の低い結晶性ポリエステル樹脂を含有していた。そのため、シェル層形成工程でトナー粒子の凝集が発生し易くなり、シェル層の形成が困難であった。
比較例3のトナーでは、トナー粒子が融点の高い結晶性ポリエステル樹脂を含有していた。そのため、シェル層が形成され易く、比較例4のトナーは、トナーの耐熱保存性が比較的良好であった。しかし、比較例4のトナーで形成される画像について、所望の画像濃度が得られなかった。これは、トナー粒子に含まれる融点の高い結晶性ポリエステル樹脂の影響で、トナーの定着性が劣ったためと考えられる。
比較例4のトナーでは、トナー粒子のシェル層が薄かった。そのため、比較例4のトナーは、トナーの耐熱保存性に劣る傾向があった。
比較例5のトナーは、トナー粒子のシェル層が厚かった。そのため、比較例6のトナーで形成される画像について、所望の発色性、及び画像濃度が得られ難かった。これは、トナー粒子のシェル層が厚く、トナーの定着性が劣ったためと考えられる。
比較例6のトナーでは、トナー粒子がシェル層を備えていなかった。そのため、比較例6のトナーでは、トナーの耐熱保存性、並びに初期、及び1万枚印刷後のトナーの帯電量が劣っていた。また、初期、及び1万枚印刷後に形成される画像にかぶりも発生した。