以下、本発明の好ましい実施形態の画像形成装置を挙げて、本発明の画像形成装置と画像形成方法を併せて説明する。
[装置構成]
図1は、本発明の例示的一態様である画像形成装置の一例を示す概略構成図である。本実施形態では、転写手段として、中間転写部材を介して転写する中間転写方式の物が例示されており、現像されたトナー像を中間転写部材に一次転写する一次転写手段と、中間転写部材に転写されたトナー像を記録材に二次転写する二次転写手段と、を有する。さらに、本実施形態にかかる画像形成装置は、一次転写手段による転写後の静電潜像保持体表面に残存したトナーを除去するクリーニング手段を含む。
本実施形態にかかる画像形成装置200は、静電潜像保持体201、帯電手段である帯電器202、静電潜像形成手段である像書込装置203、複数の現像像形成器(現像器)を備えたロータリー現像装置204、一次転写手段(転写手段)である一次転写ロール205、クリーニングブレードによるクリーニング手段であるクリーニング装置206、記録用紙(記録媒体)Pに対して複数色のトナー像が積層され、一括して転写させる中間転写部材である中間転写体207、一次転写ロール205とともに中間転写体207を張架支持する3つの支持ロール208,209,210、二次転写手段(転写手段)である二次転写ロール211、二次転写後の記録用紙Pを搬送する搬送ベルト212、搬送ベルト212により搬送されてきた記録用紙Pを2つの加熱ロール213及び加圧ロール214で挟み込み、熱と圧力でトナー像を定着する定着装置(定着手段)215等を備えて構成されている。
静電潜像保持体201は、全体としてドラム状に形成されたもので、その外周面(ドラム表面)に感光層を有している。この静電潜像保持体201は図1の矢印C方向に回転可能に設けられている。帯電器202は、静電潜像保持体201の表面を一様に帯電するものである。像書込装置203は、帯電器202によって一様に帯電された静電潜像保持体201に像様の光Xを照射することにより、静電潜像を形成するものである。
ロータリー現像装置204は、それぞれイエロー用、マゼンタ用、シアン用、第1のブラック用、第2のブラック用のトナーを収容する5つ現像器(現像像形成器)204Y,204M,204C,204KA,204KBを有するものである。本装置では、現像器204Yにはイエロートナー、現像器204Mにはマゼンタトナー、現像器204Cにはシアントナー、現像器204KAには第1のブラックトナー、現像器204KBには第1のブラックトナーとは異なる第2のブラックトナーがそれぞれ収容される。本実施形態では、現像器204KAに収容される第1のブラックトナーと、現像器204KB収容される第2のブラックトナーとが、本発明に規定される特徴的な関係を有するが、当該関係については後述する。
このロータリー現像装置204は、上記5つの現像器204Y,204M,204C,204KA,204KBが順に静電潜像保持体201と近接、対向するように回転駆動することにより、それぞれの色に対応する静電潜像にトナーを転移してトナー像を形成するものである。
ここで、必要とする画像に応じて、ロータリー現像装置204内の現像器204KA及び204KB以外の現像器を部分的に除去してもよい。例えば、現像器204Y、現像器204M、現像器204KA、現像器204KBといった4つの現像器からなるロータリー現像装置であってもよい。また、これら現像器をブルー、グリーン等の所望する色の現像剤を収容した現像器に変換して使用してもよい。
一次転写ロール205は、静電潜像保持体201との間で中間転写体207を挟持しつつ、静電潜像保持体201表面に形成されたトナー像をエンドレスベルト状の中間転写体207の外周面に転写(一次転写)するものである。クリーニング装置206は、転写後に静電潜像保持体201表面に残ったトナー等をクリーニング(除去)するものである。中間転写体207は、その内周面が複数の支持ロール208,209,210及び一次転写ロール205によって張架され、矢印D方向及びその逆方向に周回可能に支持されている。二次転写ロール211は、図示しない用紙搬送手段によって矢印E方向に搬送される記録用紙(記録媒体)Pを支持ロール210との間で挟持しつつ、中間転写体207外周面に転写されたトナー像を記録用紙Pに転写(二次転写)するものである。
画像形成装置200は、順次、静電潜像保持体201表面にトナー像を形成して中間転写体207外周面に重ねて転写するものであり、次のように動作する。すなわち、まず、静電潜像保持体201が回転駆動され、帯電器202によって静電潜像保持体201の表面が一様に帯電された(帯電工程)後、その静電潜像保持体201に像書込装置203による像光が照射されて静電潜像が形成される(潜像形成工程)。
この静電潜像は例えばイエロー用の現像器204Yによって現像された(現像工程)後、そのトナー像が一次転写ロール205によって中間転写体207外周面に転写される(一次転写工程)。このとき中間転写体207に転写されずに静電潜像保持体201表面に残ったトナー等は、クリーニング装置206によりクリーニングされる。
また、イエロー色のトナー像が外周面に形成された中間転写体207は、該外周面にイエロー色のトナー像を保持したまま矢印D方向に一回転(この時、静電潜像保持体201と中間転写体207及びクリーニング装置206とが離間するように構成されている。)し、次の例えばマゼンタ色のトナー像が、イエロー色のトナー像の上に積層されて転写される位置に備えられる。
以降、マゼンタ、シアン、第1のブラック、第2のブラックの各トナーについても、上記同様に帯電器202による帯電、像書込装置203による像光の照射、各現像器204M,204C,204KA,204KBによるトナー像の形成、中間転写体207外周面へのトナー像の転写が順次、繰り返される。
本実施形態では、例えばレッドの画像を形成する場合、現像工程と一次転写工程とを経て中間転写体207上に形成されたイエロートナー像上に、現像器204Mによって静電潜像保持体201上に形成されたマゼンタトナー像が、一次転写工程において配置されるように転写される。
なお、後述するように、第1のブラックトナーは低光沢で文字画像の形成を担い、第2のブラックトナーは高光沢で写真画像、高精細画像、フルカラー画像の形成を担う。したがって、第1のブラックトナーは他のトナーと積層されることは無く、また、第1及び第2のブラックトナーが同一領域に形成されることも無い。したがって、1つの画像情報に対して、第1のブラックトナーのみが用いられる場合と、第1のブラックトナー以外のトナーが適宜組み合わされて用いられる場合と、第1のブラックトナーとそれ以外のトナーが画像形成領域を異にして、後者は適宜組み合わされて用いられる場合がある。
こうして中間転写体207外周面に必要な色のトナー像の転写が終了すると、このトナー像は二次転写ロール211により一括して記録用紙Pに転写される(二次転写工程)。これにより、記録用紙Pの画像形成面には、フルカラー画像領域の場合、画像形成面から順に第2のブラックトナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、イエロートナー像が適宜積層された記録画像が得られる。一方、文字画像領域の場合には、第1のブラックトナー像による記録画像が得られる。二次転写ロール211によってトナー像が記録用紙P表面に転写された後に、転写されたトナー像が定着装置215によって加熱定着される(定着工程)。
1つのブラック画像情報に対して、第1のブラックトナー及び第2のブラックトナーのいずれを用いるかは、例えば、パーソナルコンピュータからの画像情報から、文字画像と写真画像とを自動的に識別して選択するようにしてもよいし、パーソナルコンピュータからの画像情報自体に選択するトナーの情報を含めるように構成しても構わない。また、例えば通常のコピー機の場合などであれば、プリントする際に用紙や画像情報ごとに、あるいはさらに画像の中の領域を指定して、装置の使用者が使用するトナーを直接装置に入力するようにしても構わない。
以下、図1の画像形成装置200における帯電手段、静電潜像保持体、静電潜像形成手段、現像像形成器、転写手段、中間転写部材、クリーニング手段、定着手段及び記録媒体について説明する。
(帯電手段)
帯電手段である帯電器202としては、例えば、コロトロンなどの帯電器が用いられるが、導電性または半導電性の帯電ロールを用いてもよい。導電性または半導電性の帯電ロールを用いた接触型帯電器は、静電潜像保持体201に対し、直流電流を印加するか、交流電流を重畳させて印加してもよい。例えばこのような帯電器202により、静電潜像保持体201との接触部近傍の微小空間で放電を発生させることにより静電潜像保持体201表面を帯電させる。
帯電手段によって静電潜像保持体201の表面は、通常、−300V以上−1000V以下に帯電される。また、前記の導電性または半導電性の帯電ロールは単層構造あるいは多重構造でもよい。さらに、帯電ロールの表面をクリーニングする機構を設けてもよい。
(静電潜像保持体)
静電潜像保持体201は、少なくとも潜像(静電荷像)が形成される機能を有する。静電潜像保持体としては、電子写真感光体が好適なものとして挙げられる。静電潜像保持体201は、円筒状の導電性の基体外周面に有機感光層等を含む感光層が形成されてなる。この感光層は一般的に、基体表面に必要に応じて下引き層が形成され、さらに電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とがこの順序で形成されたものである。電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆であってもよい。
これらは、電荷発生物質と電荷輸送物質とを別個の層(電荷発生層、電荷輸送層)に含有させて積層した積層型感光体であるが、電荷発生物質及び電荷輸送物質の両方を同一の層に含む単層型感光体であってもよく、好ましくは積層型感光体である。また、下引き層と感光層との間に中間層を有していてもよい。また、有機感光層に限らずアモルファスシリコン感光膜等他の種類の感光層を使用してもよい。
(静電潜像形成手段)
静電潜像形成手段である像書込装置203としては、特に制限はなく、例えば、静電潜像保持体表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッター光等の光源を、所望の像様に露光する光学系機器等が挙げられる。
(現像像形成器)
現像像形成器は、静電潜像保持体上に形成された潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する機能を有するものであり、一般的には現像器と称される。そのような現像像形成器としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば、静電荷像現像用のトナーをブラシ、ローラ等を用いて静電潜像保持体201に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。現像の際、静電潜像保持体201には、通常直流電圧が使用されるが、さらに交流電圧を重畳させて使用してもよい。
(転写手段)
転写手段(本実施形態においては、一次転写手段及び二次転写手段の双方を指す。)としては、例えば、記録媒体の裏側からトナー像のトナーとは逆極性の電荷を与え、静電気力によりトナー像を記録媒体表面に転写するもの、あるいは記録媒体の裏面に直接接触して転写する導電性または半導電性のロール等を用いた転写ロール及び転写ロール押圧装置を用いればよい。
転写ロールには、静電潜像保持体に付与する転写電流として、直流電流を印加してもよいし、交流電流を重畳させて印加してもよい。転写ロールは、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等に応じて、各種条件乃至諸元を適宜設定すればよい。また、低コスト化のため、転写ロールとして単層の発泡ロール等が好適に用いられる。
(中間転写部材)
中間転写部材としては、公知の中間転写部材を用いればよい。中間転写部材に用いられる材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンテレフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフロロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料等が挙げられるが、機械的強度の観点から熱硬化ポリイミド樹脂を用いた中間転写ベルトが好ましい。
(クリーニング手段)
クリーニング手段については、静電潜像保持体上の残留トナーを清掃するものであれば、ブレードクリーニング方式、ブラシクリーニング方式、ロールクリーニング方式を採用したもの等、適宜選定して差し支えない。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。中でも、耐摩耗性に優れていることから、特にポリウレタン弾性体を用いることが好ましい。
なお、転写効率の高いトナーを使用する場合には、クリーニング手段を使用しない態様であっても構わない。
(定着手段)
定着手段(定着装置)としては、記録媒体に転写されたトナー像を加熱、加圧あるいは加熱加圧等より定着するものである。本実施形態のような2ロール方式の他、加熱側または加圧側がベルト状で他方がロール状のベルト−ロールニップ方式、加熱側及び加圧側の双方ともベルト状の2ベルト方式等が挙げられる。ベルトについては、複数のロールでベルトを張架する方式の他、ベルトを張架せずに用いるフリーベルト方式も挙げられる。本発明においては、いずれの方式の定着装置であっても構わない。
(記録媒体)
トナー像を転写されて最終的な記録画像が形成される記録媒体(記録用紙)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録媒体の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用される。
記録媒体として、特殊な使用条件下、例えば、坪量80g/m2以上で、かつ、装置のプロセススピードを変えないで定着できる厚みの上限として一般的な120g/m2以下程度の厚紙を用いた場合、定着温度が高い低グロストナーの定着強度が低下する懸念がある。本発明によれば、そのような厚紙を記録媒体として用いた場合にも、高光沢画像と低光沢画像との定着強度の差が少ない。したがって、本実施形態の画像形成装置においては、一般的な薄紙を用いることも勿論可能であるが、上記のような厚紙を記録媒体として好適に用いることができる。
[第1のブラックトナー及び第2のブラックトナー]
本発明に特徴的な第1のブラックトナー及び第2のブラックトナーについて説明する。なお、ブラックトナー以外の1種類のみの各色のトナー(本実施形態においては、イエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナーの3種)については、本発明にかかる特徴は無く、従来公知の各種トナーを使用することができるため、その説明は割愛する。
本実施形態において、第1のブラックトナーは所謂高粘度トナーであり、定着後に形成されるトナー画像の光沢は低く(低グロス)、文字や図表などの画像の形成に適していて、それを担う役割を有する。一方、第2のブラックトナーは所謂低粘度トナーであり、定着後に形成されるトナー画像は高光沢(高グロス)であって、写真画像、高精細画像、フルカラー画像の形成に適していて、それを担う役割を有する。第1のブラックトナーは本発明におけるトナーAに相当し、第2のブラックトナーは本発明におけるトナーBに相当する。
第1のブラックトナーと第2のブラックトナーは、勿論同系色である。なお、本実施形態においては、ブラック系の同系色のトナーを用いているが、本発明においてはこれに限定されず、他の色相で同系色のトナーであってもよい。
ここで言う「同系色」とは、一般的に同じ色の分類とされる色相同士を言い、例えば、カラーイオンデックスにおいて同一の色に分類されている色材により発色されるものは相互に同系色と言い得る。
前記ブラックトナー(以下、単に「ブラックトナー」という場合には、「第1のブラックトナー」及び「第2のブラックトナー」の双方を含む概念としてのブラックトナーを言う。)は、結着樹脂と着色剤とを含み、その他必要に応じて、離型剤やその他の成分を含み、さらに必要に応じて外添剤が添加されてなる。
前記ブラックトナーについて、まず、外添剤を除くいわゆるトナー粒子の成分ごとに詳細に説明し、その製造方法、さらに外添剤を添加したトナー(以下、単に「外添トナー」という場合がある。)、及びトナー粒子乃至外添トナーの物性について言及する。
<結着樹脂>
前記ブラックトナーは、含まれる結着樹脂として、アモルファス状の非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含む。
(結晶性ポリエステル樹脂)
結着樹脂として用いられる前記結晶性ポリエステル樹脂は、後述するポリエステル樹脂であって結晶性を示すものである。
本実施形態において、「結晶性樹脂」の「結晶性」とは、樹脂の示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、昇温段階において明確な吸熱ピークを有すると共に、降温段階において明確な発熱ピークを有することを指す。具体的には、島津製作所社製の示差走査熱量計(装置名:DSC−60型)を用いた示差走査熱量測定(DSC)において、0℃から150℃まで10℃/minで昇温し、150℃で5分間保持したのち、0℃まで−10℃/minで降温し、0℃で5分間保持した後、再度150℃まで10℃/minで昇温したときの、2度目の昇温スペクトルにおいて、オンセット点から吸熱ピークのピークトップまでの温度が15℃以内であるときに「明確な」吸熱ピークであるとする。一方、降温した時のオンセット点から発熱ピークのピークトップまでの温度が15℃以内であり、発熱量が25J/g以上であるときに「明確な」発熱ピークであるとする。
また、シャープメルト性の観点から、前記オンセット点から吸熱ピークのピークトップまでの温度は、15℃以内であることが好ましく、10℃以内であることがより好ましい。DSC曲線におけるベースラインの平坦部の任意の点、及び、ベースラインから立ち下がりピークトップまでのスペクトル曲線を微分した値が最大になる点(スペクトルの傾きが一番立っている点)の両点間における接線の交点を「オンセット点」とする。また、吸熱ピークは、トナーとしたときに、40℃以上50℃以下の幅を有するピークを示す場合がある。
前記結晶性ポリエステル樹脂は、後に詳述する非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg+10)℃以上(Tg+30)℃以下の間に融解温度を持つものである。この融解温度は、(Tg+13)℃以上(Tg+25)℃以下の間であることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂のみの場合には、温度を上げて行くと、ガラス転移温度から弾性率が下がり始め、ガラス転移温度よりも約30℃高い温度で、定着可能な弾性率まで下がる。前記ブラックトナーでは、非晶性ポリエステル樹脂がこの弾性率になる温度まで達する前に結晶性ポリエステル樹脂が融解温度に達するため、トナーが溶融し、低温定着を実現することができる。
前記結晶性ポリエステル樹脂の具体的な融解温度としては、50℃以上120℃以下の範囲が望ましく、より好適には60℃以上90℃以下の範囲である。さらに、後述する通り、トナーに炭化水素系ワックスを添加する場合には、該炭化水素系ワックスの融解温度よりも低いことが望ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC法による分子量測定で、質量平均分子量(Mw)が5000以上100000以下の範囲であることが望ましく、より好適には10000以上50000以下の範囲であり、数平均分子量(Mn)は2000以上30000以下の範囲であることが望ましく、より好適には5000以上15000以下の範囲である。分子量分布Mw/Mnは1.5以上20以下の範囲であることが望ましく、さらに好適には2以上5以下の範囲である。分子量を測定する際、結晶性樹脂はTHFへの溶解性を高めるため、70℃の湯浴中で加熱溶解することが好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂は、その酸価が4mgKOH/g以上20mgKOH/g以下の範囲であることが望ましく、6mgKOH/g以上15mgKOH/g以下の範囲であることがより望ましい。また、水酸基価は3mgKOH/g以上30mgKOH/g以下の範囲であることが望ましく、5mgKOH/g以上15mgKOH/g以下の範囲であることがより望ましい。
前記ブラックトナーにおいて、当該結晶性ポリエステル樹脂の配合割合としては、全結着樹脂中、1質量%以上20質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲がより好ましく、2質量%以上8質量%以下の範囲がより好ましい。結晶性樹脂の含有量が少な過ぎると、定着時の結晶性樹脂による吸熱が不十分となり結晶性樹脂を用いた効果が得られない場合があり、20質量%を超えるとトナー中の結晶性樹脂のドメインが大きくなり、また、ドメインの数が増えるため、形成した画像の透明性が悪化する場合がある。
トナーの結着樹脂中の結晶性樹脂の含有量は、以下のような方法で算出する。
まず、トナーを50℃の乾燥機中で72時間放置した後、メチルエチルケトン(MEK)に常温(20℃以上25℃以下)で溶解させる。これは、トナー中に結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂とが含まれる場合、常温ではMEK中にほとんど非晶性樹脂のみが溶解するからである。したがって、MEK可溶分中には非晶性樹脂が含まれることとなるため、前記溶解後、遠心分離により分離した上澄み液から非晶性樹脂が得られ、一方遠心分離後の固形分を65℃で60分間加熱してMEKに溶解しこれを60℃でガラスろ過器でろ過することにより、ろ過分から結晶性ポリエステル樹脂が得られる。この操作でろ過中に温度が下がると結晶性樹脂が析出してしまうため温度が下がらないように手早く、かつ、保温した状態で操作する。こうして得られた結晶性ポリエステル樹脂の量を測定することにより結晶性ポリエステル樹脂の含有量が求められる。
(非晶性ポリエステル樹脂)
結着樹脂として用いられる前記非晶性ポリエステル樹脂は、アルキル側鎖を有する共重合単位を構成単位として含むポリエステル樹脂である。かかる非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂との相溶性が良く、低温定着性が向上すると共に、結晶性樹脂の遊離によるブロッキング性の低下を抑制することができる。
前記アルキル側鎖の炭素数としては、5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。炭素数が5未満であると、結晶性樹脂との相溶性が低下し、定着性が劣る懸念がある。一方、前記アルキル側鎖の炭素数の上限としては、特に制限は無いが、20以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましい。炭素数が多過ぎると、重合時の反応性が低下し、所望の分子量の物を得ることが困難になる懸念がある。
アルキル側鎖を有する共重合単位を形成し得るモノマー(共重合単位の前駆体)としては、直鎖ジオールのイソ体、例えば、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオールなどや、デセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸などのコハク酸誘導体などが挙げられる。この中で、ドデセニルコハク酸が、樹脂のガラス転移温度と結晶性樹脂との相溶性の観点で好ましい。
ドデセニルコハク酸をモノマーとして前記非晶性ポリエステル樹脂を形成した場合、アルキル側鎖を有する共重合単位は、ドデセニルコハク酸構造になる。
ここで「ドデセニルコハク酸構造」とは、ドデセニルコハク酸における2個のカルボキシル基の水素が取れた状態の構成単位であり、下記構造式で示されるものである。
C12H23で表される官能基がドデセニル基であり、炭素数12の直鎖構造中に、炭素−炭素間二重結合を1つ含む。当該二重結合の位置は特定されず、いずれの位置でも構わない。
ドデセニルコハク酸構造は、後述するポリエステル樹脂の骨格中に組み込まれる状態で共重合単位として存在する。共重合割合としては、ポリエステル樹脂のアルコール由来構成単位に対して3mol%〜30mol%範囲であることが好ましく、5mol%〜25mol%範囲であることがより好ましく、7mol%〜20mol%範囲であることがさらに好ましい。ドデセニルコハク酸構造の割合が少な過ぎると着色剤の分散性が悪化する点で好ましくなく、多過ぎると樹脂が茶褐色に着色する点で好ましくない。ドデセニルコハク酸構造以外の「アルキル側鎖を有する共重合単位」の場合にも、当該好ましい共重合割合に準ずる。
ドデセニルコハク酸構造は、ポリエステル樹脂の合成の際にポリエステル樹脂の合成原料とともにドデセニルコハク酸またはその無水物を存在させておくことで共重合させて、ポリエステル樹脂の骨格中に組み込めばよい。なお、ドデセニルコハク酸構造以外の構造単位を共重合単位に用いる場合には、上記説明したドデセニルコハク酸構造の場合と同様に適宜対応するモノマーを用いて、ポリエステル樹脂の骨格中に組み込めばよい。
当該非晶性ポリエステル樹脂における「非晶性」とは、前記の結晶性樹脂に該当しない樹脂を指す。具体的には、島津製作所社製の示差走査熱量計(装置名:DSC−60型)を用いた示差走査熱量測定(DSC)において、10℃/minの昇温速度で昇温したときのオンセット点から吸熱ピークのピークトップまでの温度が15℃を超えるとき、明確な吸熱ピークが認められないとき、あるいは降温時に明確な発熱ピークが認められないときに「非晶性」であるとする。また、DSC曲線における「オンセット点」の求め方は、上記「結晶性樹脂」の場合と同様である。
当該非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度としては、45℃以上70℃以下にすることが好ましく、50℃以上65℃以下にすることがより好ましい。ガラス転移温度が低過ぎるとトナーの保管性が低下する傾向があり、逆に高過ぎると定着性が低下する傾向がある。
当該非晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC法による分子量測定で、質量平均分子量(Mw)が15000以上250000以下の範囲であることが望ましく、より好適には20000以上150000以下の範囲であり、数平均分子量(Mn)は3000以上30000以下の範囲であることが望ましく、より好適には5000以上10000以下の範囲である。
前記ブラックトナーにおいて、当該非晶性ポリエステル樹脂の配合割合としては、全結着樹脂中、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。当該非晶性ポリエステル樹脂の割合が少な過ぎると当該非晶性ポリエステル樹脂特有の性質を十分に享受し得ない可能性がある。非晶性樹脂の内の全てが、当該非晶性ポリエステル樹脂であることが望ましい。
(ポリエステル樹脂)
前記非晶性ポリエステル樹脂及び前記結晶性ポリエステル樹脂は、共にポリエステル樹脂である点が共通する。ポリエステル樹脂は、2価の酸(ジカルボン酸)成分と2価のアルコール(ジオール)成分とから合成されるものである。また、ポリエステル樹脂の主鎖に対して他成分(アルキル側鎖を有する共重合単位の前駆体となるモノマーを含む。)を共重合したポリマーの場合、他成分が20質量%以下の場合、この共重合体もポリエステル樹脂と呼ぶ。
前記ポリエステル樹脂において、酸由来構成単位となる為の酸としては、種々のジカルボン酸が挙げられるが、前記酸由来構成単位としてのジカルボン酸は、1種に限定されず、2種以上のジカルボン酸由来構成単位を含んでもよい。また、前記ジカルボン酸は、乳化凝集法における乳化性を良好にする為、スルホン酸基を含ませることがある。
なお、前記「酸由来構成単位」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、後述する「アルコール由来構成単位」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
結晶性ポリエステル樹脂の製造において、前記ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が好適である。直鎖型のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、など、あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられる。
中でも、炭素数6以上10以下のものが好ましい。前記結晶性ポリエステル樹脂の場合、結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジカルボン酸を、酸由来構成単位の95構成モル%以上用いることが好ましく、98構成モル%以上用いることがより好ましい。なお、「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における各構成単位(酸由来構成単位、アルコール由来構成単位)をそれぞれ1単位(モル)としたときの百分率を指す。
前記酸由来構成単位としては、前記の脂肪族ジカルボン酸由来構成単位のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成単位等の構成成分を含むこともできる。
一方、非晶性ポリエステル樹脂の製造において、前記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、フマル酸、トリメリット酸などを好適なものとして挙げることができる。
前記結晶性ポリエステル樹脂において、アルコール由来構成単位となる為のアルコールとしては、脂肪族ジアルコールが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられる。中でも炭素数2以上10以下のものが好ましい。前記結晶性ポリエステル樹脂の場合、結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジアルコールを、アルコール由来構成単位の95モル%以上用いることが好ましく、98モル%以上用いることがより好ましい。
その他の2価のジアルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールのエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
一方、非晶性ポリエステル樹脂の製造において、アルコール由来構成単位となる為のアルコールとしては、ビスフェノールのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールのプロピレンオキサイド付加物などを好適なものとして挙げることができる。
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコール、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど3価のアルコールも併用することができる。
その他のモノマー(アルキル側鎖を有する共重合単位の前駆体となるモノマーを除く。)としては、特に限定は無く、従来公知の2価のカルボン酸と、2価のアルコールがある。これらのモノマー成分の具体例としては、2価のカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリエステル樹脂は、上記のモノマー成分の中から任意の組み合わせで、前記非晶性ポリエステル樹脂の場合にはさらにアルキル側鎖を有する共重合単位の前駆体となるモノマーの存在下、従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、または組み合わせて用いることができる。
具体的には、重合温度140℃以上270℃以下で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助溶剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させるとよい。
前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、直接重縮合の場合、通常0.9/1.0乃至1.0/0.9である。エステル交換反応の場合は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなど真空下で脱留可能なモノマーを過剰に用いる場合がある。
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒は、酢酸チタン、プロピオン酸チタン、ヘキサン酸チタン、オクタン酸チタンなどの脂肪族モノカルボン酸チタン、シュウ酸チタン、コハク酸チタン、マレイン酸チタン、アジピン酸チタン、セバシン酸チタンなどの脂肪族ジカルボン酸チタン、ヘキサントリカルボン酸チタン、イソオクタントリカルボン酸などの脂肪族トリカルボン酸チタン、オクタンテトラカルボン酸チタン、デカンテトラカルボン酸チタンなどの脂肪族ポリカルボン酸チタン、などの脂肪族カルボン酸チタン類、安息香酸チタンなどの芳香族モノカルボン酸チタン、フタル酸チタン、テレフタル酸チタン、イソフタル酸チタン、ナフタレンジカルボン酸チタン、ビフェニルジカルボン酸チタン、アントラセンジカルボン酸チタンなどの芳香族ジカルボン酸チタン;トリメリット酸チタン、ナフタレントリカルボン酸チタンなどの芳香族トリカルボン酸チタン;ベンゼンテトラカルボン酸チタン、ナフタレンテトラカルボン酸チタンなどの芳香族テトラカルボン酸チタン;などの芳香族カルボン酸チタン類、脂肪族カルボン酸チタン類や芳香族カルボン酸チタン類のチタニル化合物類及びそのアルカリ金属塩類、ジクロロチタン、トリクロロチタン、テトラクロロチタン、テトラブロモチタンなどのハロゲン化チタン類、テトラブトキシチタン(チタンテトラブドキサイド)、テトラオクトキシチタン、テトラステアリロキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類、チタンアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドビスアセチルアセトナート、チタントリエタノールアミネート、などのチタン含有触媒である。
ただし、結晶性ポリエステル樹脂の製造に適した触媒としてはチタン含有触媒及び/または無機スズ系触媒を主として用い、その他の触媒を混合して用いることが好ましい。前記触媒を混合して用いる場合、全触媒中のチタン含有触媒及び/または無機スズ系触媒の割合は70質量%以上とすることが望ましく、全てチタン含有触媒及び/または無機スズ系触媒であることがより望ましく、全てチタン含有触媒であることがさらに望ましい。
上記触媒は、重合の際に前記モノマー成分(前記非晶性ポリエステル樹脂の場合には、アルキル側鎖を有する共重合単位の前駆体となるモノマーを除く。)100質量部に対して0.02質量部以上1.0質量部以下の範囲で加えることが望ましい。
(その他の樹脂)
結着樹脂としては、以上説明したポリエステル樹脂のみで構成することが好ましいが、その他の樹脂を併用することもできる。ポリエステル樹脂以外に使用可能な樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等の単独重合体またはそれらの共重合体等の非晶性樹脂が挙げられる。これらの中でも特に代表的な結着樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン等を挙げることができる。
また、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂以外の結晶性樹脂を含むことができる。かかる結晶性樹脂としては、具体的には、結晶性ビニル系樹脂等が挙げられる。
結晶性ビニル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の長鎖アルキル、アルケニルの(メタ)アクリル酸エステルを用いたビニル系樹脂等が挙げられる。なお、本明細書において、”(メタ)アクリル”なる記述は、”アクリル”及び”メタクリル”のいずれをも含むことを意味するものである。
(着色剤)
前記ブラックトナーにおいては、着色剤として黒系の顔料乃至染料が用いられ、黒色を示す物であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、カーボンブラック、アニリンブラック、ペリレン、ニグロシン、イカスミ等を例示することができる。これらの中でも、入手が容易で低コストであり、黒色度が比較的高いカーボンブラックが最も好適である。
好適なカーボンブラックとしては、ファーネスブラックが、大量生産に向いており、尚且つ吸油量、粒子径やストラクチャーを制御し易いので、好ましい。具体的には、♯5・10・25(三菱化学社製)、トーカブラック♯7400・#7550SB/F・#7360SB(東海カーボン社製)、NIPex35・60・70・90・170IQ(エボニック・デグサジャパン社製)等を用いることができる。上記カーボンブラックは、一例であり、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
なお、本実施形態では、本発明における「同系色の2種のトナーA及びトナーB」として黒系のトナーを例に挙げて説明しているが、他の色の場合においても同様に、着色剤として公知のものを用いることができる。具体的には例えば、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイボンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メリレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの各種顔料や、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、リオインジコ系、フタロシアニン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、リアジン系、リアゾール系、キサンテン系などの各種染料などを1種または2種以上を合わせて使用することができる。
後述する乳化凝集法によりトナー母粒子を製造する際に用いる着色剤粒子分散液は、水中に上記着色剤を、イオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質と共に分散して調製することが好ましい。着色剤の分散には、公知の分散方法が利用でき、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル、アルティマイザーなどの一般的な分散手段を採用することができ、なんら制限されるものではない。
着色剤粒子分散液に分散させた着色剤粒子の体積平均粒径としては、1μm以下であることが好ましく、50〜250nmの範囲であれば、凝集性が良好で、且つトナー母粒子中の着色剤の分散が良好であるためより好ましい。
前記トナー母粒子における、前記着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1〜30質量部の範囲が好ましい。また、必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用したりすることも有効である。
(離型剤)
前記ブラックトナーには、離型剤を含有させることが好ましい。用いられる離型剤としては、ASTMD3418−8に準拠して測定されたDSC曲線における主体極大吸熱ピークが60℃以上120℃以下にあり、かつ140℃において1mPas以上50mPas以下の溶融粘度を有する物質であることが望ましい。
前記離型剤は示差走査熱量計により測定されるDSC曲線で吸熱開始温度は40℃以上であることが望ましく、より好適には50℃以上である。吸熱開始温度は、ワックス(離型剤)を構成する分子の分子量分布のうち低分子量のものや、その構造のもつ極性基の種類、量で変動する。
一般に高分子量化すれば融解温度とともに吸熱開始温度も上昇するが、このやり方ではワックス本来の低溶融温度と、低粘度を損なってしまう。よってワックスの分子量分布のうち、これら低分子量のものだけを選別して除くことが有効であるが、その方法として、分子蒸留、溶剤分別、ガスクロマトグラフ分別等の方法が挙げられる。
DSCの測定については前述の通りである。
前記離型剤の溶融粘度は、E型粘度計によって測定される。測定に際しては、オイル循環型恒温槽の備えられたE型粘度計(東京計器製)を用いる。測定には、コーン角1.34度を有したコーンプレート/カップの組み合わせのプレートを用いる。カップ内に試料を投入し、循環装置の温度を140℃にセットし、空の測定カップとコーンを測定装置にセットし、オイルを循環させながら恒温に保つ。温度が安定したところで測定カップ内に資料を1g入れ、コーンを静止状態で10分間静置させる。安定後、コーンを回転させ測定を行う。コーンの回転速度は60rpmとする。測定は3回行い、その平均値を溶融粘度ηとする。
前記離型剤の具体例としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス、パラフィンワックス等の炭化水素系ワックス、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウ等の動物系ワックス、脂肪酸エステル、モンタン酸エステルなどのエステル系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物系・石油系ワックス、及びそれらの変性物などを挙げることができる。
本発明においては、融解温度が60℃以上100℃未満の炭化水素系ワックスを用いることが好ましい。かかる炭化水素系ワックスを用いると、前記結着樹脂として用いる結晶性ポリエステル樹脂と着色剤との相溶性が向上し、着色剤の凝集をさらに抑制することができる。このとき、前記結晶性ポリエステル樹脂の融解温度より前記炭化水素系ワックスの融解温度が高ければ、定着時に前記結晶性ポリエステル樹脂が先に融解して、非晶性ポリエステル樹脂と相溶し、溶解パラメーターが低下したところへ炭化水素系ワックスが融解するため、炭化水素系ワックスのドメインの形成を抑制することができ、同時に着色剤のドメイン形成をも抑制することができるため、発色性をより向上させることができる。
離型剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下が好ましく、3質量部以上10質量部以下がより好ましい。離型剤の添加量が少な過ぎると離型剤添加の効果が発揮されないことがあり、一方、多過ぎると、極端に流動性が悪化すると共に帯電分布が非常に広くなることがある。
(その他の成分)
前記ブラックトナーには、必要に応じて無機若しくは有機の粒子を添加することができる。
添加可能な無機粒子としては、シリカ、疎水化処理シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、コロイダルシリカ、アルミナ処理コロイダルシリカ、カチオン表面処理コロイダルシリカ、アニオン表面処理コロイダルシリカなどが挙げられ、これらを単独で用いること若しくは併用することができ、中でもコロイダルシリカを用いることが望ましい。その粒径は、5nm以上100nm以下であることが好適である。また、粒径の異なる粒子を併用することも可能である。前記粒子はトナー製造の際、直接添加することもできるが、あらかじめ超音波分散機などを用いて水など水溶性媒体へ分散されたものを用いることが好ましい。分散においては、イオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基などを用いて分散性を向上させることもできる。
その他、前記ブラックトナーには帯電制御剤などの公知の材料を添加してもよい。その際に添加される材料の個数平均粒径としては、1μm以下であることが望ましく、0.01μm以上1μm以下であるのがより好適である。かかる個数平均粒径は、例えばマイクロトラックなどを用いて測定することができる。
<トナー粒子の製造>
前記ブラックトナーの製造方法は、一般に使用されている混練粉砕法や湿式造粒法等を利用すればよい。中でも、結晶性樹脂をトナーに内包する観点では、湿式造粒法が好ましい。ここで、湿式造粒法としては、公知の溶融懸濁法、乳化凝集法、溶解懸濁法等の方法が好適に挙げられる。以下、乳化凝集法を例に説明する。
乳化凝集法は、樹脂粒子を分散させた分散液(以下、「乳化液」と称する場合がある)中で凝集粒子を形成し凝集粒子分散液を調製する工程(凝集工程)と、前記凝集粒子分散液を加熱して、凝集粒子を融合する工程(融合工程)を含む製造方法である。また、凝集工程の前に、凝集粒子を分散する(分散工程)や、凝集工程及び融合工程間に、凝集粒子分散液中に、粒子を分散させた粒子分散液を添加混合して前記凝集粒子に粒子を付着させて付着粒子を形成する工程(付着工程)を設けたものであってもよい。前記付着工程では、前記凝集工程で調製された凝集粒子分散液中に、前記粒子分散液を添加混合して、前記凝集粒子に前記粒子を付着させて付着粒子を形成するが、添加される粒子は、凝集粒子に凝集粒子から見て新たに追加される粒子に該当するので、「追加粒子」と称する場合がある。
前記追加粒子としては、前記樹脂粒子の他に離型剤粒子、着色剤粒子等を単独若しくは複数組み合わせたものであってもよい。前記粒子分散液を追加混合する方法としては、特に制限はなく、例えば徐々に連続的に行ってもよいし、複数回に分割して段階的に行ってもよい。前記付着工程を設けることにより、擬似的なシェル構造を形成することができる。
上記トナーにおいては、前記追加粒子を添加する操作によって、コアシェル構造を形成することが望ましい。前記追記粒子の主成分となる結着樹脂が、シェル層用樹脂である。この方法を用いれば、融合工程において、温度、攪拌数、pHなどの調整により、トナー形状制御を簡単に行うことができる。
前記乳化凝集法においては、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂、並びに必要に応じてその他の樹脂を用いる。なお、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂、並びに必要に応じてその他の樹脂をそれぞれ別々にまたは混合して乳化し乳化粒子(液滴)を形成する乳化工程を含むことがより好ましい。
前記乳化工程においては、これらの樹脂の乳化粒子(液滴)は、水系媒体と、各樹脂及び必要に応じて着色剤を含む混合液(樹脂溶液)と、を混合した溶液に、剪断力を与えることにより形成される。その際、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上、結晶性ポリエステル樹脂の融解温度以上(以下、ガラス転移温度及び融解温度を総称して「軟化温度」と表記する。)、あるいはその他の樹脂の軟化温度以上の温度に加熱することで、ポリマー液の粘性を下げて乳化粒子を形成することができる。また、分散剤を使用することもできる。以下、かかる乳化粒子の分散液のことをそれぞれ、「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」「結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」「その他の樹脂分散液」と、また、これらを総称して単に「樹脂分散液」という場合がある。
前記乳化粒子を形成する際に用いる乳化機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。前記ポリエステル樹脂の乳化粒子(液滴)の大きさとしては、その平均粒子径(体積平均粒径)で0.010μm以上0.5μm以下が望ましく、0.05μm以上0.3μm以下がより望ましい。なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、ドップラー散乱型粒度分布測定装置(日機装社製、マイクロトラックUPA9340)で測定した。
また、乳化時の樹脂の溶融粘度が高いと所望の粒径まで小さくならないため、大気圧以上に加圧可能な乳化装置を用いて温度を上げ、樹脂粘度を下げた状態で乳化することで、所望の粒径の非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を得ることができる。
前記乳化工程においては、樹脂の粘度を下げる目的で、あらかじめ樹脂に溶剤を添加しておいても構わない。使用される溶剤としては、ポリエステル樹脂を溶解させるものであれば特に限定はないが、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのベンゼン系溶剤などを用いることができ、酢酸エチルやメチルエチルケトンなどのエステル系及びケトン系溶剤を用いることが好ましい。
また、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤を、水若しくは樹脂に直接添加してもよい。また、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩や、アンモニアなどを添加してもよい。この中ではアンモニアが好ましく用いられる。
さらに、分散剤を添加してもよい。前記分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤;ラウリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機化合物等が挙げられる。これらの中では、アニオン性界面活性剤が好適に用いられる。
前記分散剤の使用量としては、前記結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましい。しかし、分散剤は帯電性に影響を与える場合が多いため、ポリエステル樹脂主鎖の親水性、末端の酸価、水酸基価の量などにより、乳化性が確保できるときには、できる限り添加しない方がよい。
なお、前記乳化工程において、前記非晶性及び/または前記結晶性ポリエステル樹脂に、スルホン酸基を有するジカルボン酸を共重合させて(即ち、酸由来構成単位中に、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成単位が好適量含まれる。)おいてもよい。添加量は酸由来構成単位中10モル%以下であることが好ましいが、ポリエステル樹脂主鎖の親水性、末端の酸価、水酸基価の量などにより、乳化性が確保できるときには、できる限り添加しない方がよい。
また、前記乳化粒子の形成に転相乳化法を用いてもよい。転相乳化法は、樹脂を溶剤に溶解させ、必要に応じて中和剤や分散安定剤を添加して、攪拌下にて、水系媒体を滴下して、乳化粒子を得た後、樹脂分散液中の溶媒を除去して、乳化液を得る方法である。このとき、中和剤や分散安定剤の投入順は変更してもよい。
樹脂を溶解させる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の複素環置換体類、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭素類などを単独であるいは2種以上組み合わせて用いることが可能である。中でも、低沸点溶媒の酢酸エステル類やメチルケトン類、エーテル類が通常好ましく用いられ、特に、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましい。これら溶剤は、樹脂粒子中に残存しないよう揮発性の比較的高いものを用いることが望ましい。これら溶剤の使用量は、樹脂量に対して20質量%以上200質量%以下、より好適には30質量%以上100質量%以下が選択される。
前記水系媒体としては、基本的にはイオン交換水が用いられるが、油滴を破壊しない程度に水溶性溶剤を含んでも構わない。水溶性溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の短炭素鎖アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エーテル類、ジオール類、THF、アセトン等が挙げられ、エタノール、2−プロパノールが好ましく用いられる。
これらの水溶性溶剤の使用量は、樹脂量に対して0質量%以上100質量%以下、より好適には5質量%以上60質量%以下が選択される。また、水溶性溶剤は添加されるイオン交換水に混合するだけでなく、樹脂溶解液中に添加して使用しても構わない。
また、必要に応じて樹脂溶液及び水性成分に分散剤を添加してもよい。前記分散剤としては、水性成分中で親水性コロイドを形成するもので、特にヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルローズ等のセルローズ誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩等の合成高分子類、ゼラチン、アラビアゴム、寒天等の分散安定化剤が挙げられる。
また、シリカ、酸化チタン、アルミナ、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム等の固体微粉末も用いることができる。本発明においては、トナー中にアルミニウム分を含むことから、分散剤として適量のアルミナを用いて最終的に得られるトナー中に残存させることが好ましい。ただし、残存するアルミニウムの量を制御する必要があることから、不足分は他の分散剤で補うか、制御の態様としてアルミナを用いないこととしても勿論構わない。これらの分散安定化剤は通常、水性成分中の濃度が0質量%以上20質量%以下、望ましくは0質量%以上10質量%以下となるよう添加される。
前記分散剤としては、界面活性剤も用いられる。前記界面活性剤の例としては、後述する着色剤分散液に用いられるものに準じたものを使用することができる。例えば、サポニンなどの天然界面活性成分の他に、アルキルアミン塩酸・酢酸塩類、4級アンモニウム塩類、グリセリン類等のカチオン系界面活性剤、脂肪酸石けん類、硫酸エステル類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、スルホン酸塩類、リン酸、リン酸エステル、スルホコハク酸塩類等のアニオン系界面活性剤などが挙げられ、アニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。前記乳化液のpHを調整するために、中和剤を添加してもよい。前記中和剤としては、硝酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなど一般の酸、アルカリを用いることができる。
前記乳化液から溶剤を除去する方法としては、乳化液を15℃以上70℃以下で溶剤を揮発させる方法、これに減圧を組み合わせる方法が好ましく用いられる。
本発明においては、粒度分布や粒径制御性の観点から、転相乳化法により乳化した後、加熱下で減圧して溶剤を除去する方法を用いることが好ましい。また、トナーに用いる場合は、帯電性への影響の観点から、分散剤や界面活性剤はできるだけ用いずに、ポリエステル樹脂主鎖の親水性、末端の酸価、水酸基価の量などにより、乳化性を制御することが好ましい。
前記着色剤や離型剤の分散方法としては、例えば、高圧式ホモジナイザー、回転せん断型ホモジナイザー、超音波分散機、高圧衝撃式分散機や、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。
必要に応じて、界面活性剤を使用してこれら着色剤の水分散液を調製したり、分散剤を使用してこれら着色剤の有機溶剤分散液を調製したりすることもできる。以下、かかる着色剤、離型剤の分散液のことを、「着色剤分散液」「離型剤分散液」という場合がある。
着色剤分散液や離型剤分散液に用いられる分散剤は、一般的には界面活性剤である。界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、石けん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が好適に挙げられる。これらの中でもイオン性界面活性剤が好ましく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤がより好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤またはカチオン界面活性剤と併用してもよい。また、離型剤分散液など、他の分散液に用いられる分散剤と同極性であることが好ましい。
用いられる分散剤の添加量は、着色剤や離型剤に対して、2質量%以上10質量%以下であることが望ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好適である。
用いられる水系分散媒は、蒸留水、イオン交換水など、金属イオンなどの不純物が少ないものであることが好ましく、さらにアルコールなどを添加することもできる。また、ポリビニルアルコールやセルローズ系ポリマーなどを添加することもできるが、トナー中に残留しないように、でき得る限り使用しない方がよい。
また、前記種々の添加剤の分散液を作製する手段としては、特に制限はないが、例えば、回転剪断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなど、その他、着色剤分散液や離型剤分散液の作製に用いたものに準じた装置など、それ自体公知の分散装置が挙げられ、最適なものを選択して用いることができる。
前記凝集工程においては、凝集粒子を形成させるために、凝集剤を用いることが好ましい。用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤や、一般の無機金属化合物(無機金属塩)またはその重合体が挙げられる。無機金属塩を構成する金属元素は周期律表(長周期律表)における2A、3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2B、3B族に属する2価以上の電荷を有するものであり、樹脂粒子の凝集系においてイオンの形で溶解するものであればよい。
使用可能な無機金属塩としては、具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等を挙げることができ、その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上で、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方がより適している。
本発明においては、トナー中にアルミニウム分を含むことから、凝集剤としてアルミニウムを含む物を適量用いて最終的に得られるトナー中に残存させることが好ましい。ただし、残存するアルミニウムの量を制御する必要があることから、不足分は他の凝集剤で補うか、制御の態様としてアルミニウムを含まない凝集剤のみを用いることとしても勿論構わない。
これら凝集剤の添加量は、凝集剤の種類や価数によって変動するが、概ね、0.05質量%以上0.1質量%以下の範囲である。前記凝集剤は、トナー化の工程中に、水系媒体中に流出したり、粗粉を形成するなどにより、添加したもの全てがトナー中に残留するわけではない。特にトナー化の工程で、樹脂中の溶剤量が多い場合には、溶剤と凝集剤とが相互作用して、水系媒体中に流出しやすいため、残溶剤量に合わせて調節する必要がある。
前記融合工程においては、凝集工程に準じた攪拌下で、凝集体の懸濁液のpHを5以上10以下の範囲にすることにより、凝集の進行を止め、樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度あるいは結晶性樹脂の融解温度以上の温度(すなわち軟化温度)で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させ合一させる。また、加熱の時間としては、所望の合一が為される程度行えばよく、0.2時間以上10時間以下行えばよい。その後、樹脂の軟化温度以下まで降温して、粒子を固化する際、降温速度によって粒子形状及び表面性が変化する。0.5℃/分以上の速度で、より好適には1.0℃/分以上の速度で樹脂の軟化温度以下まで降温するのが好ましい。
また、樹脂の軟化温度以上の温度で熱しながら、凝集工程に準じてpHや凝集剤の添加により粒子を成長させ、所望の粒径になったところで融合工程の場合に準じて、0.5℃/分の速度で樹脂の軟化温度以下まで降温して、固化と同時に粒子成長を停止させれば、凝集工程と融合工程とを同時に行うことができるため、工程の簡略化の面では好ましいが、前述のコアシェル構造を作ることが難しくなる場合がある。
融合工程を終了した後は、粒子を洗浄し乾燥してトナー粒子を得る。なお、イオン交換水で置換洗浄を施すことが好ましく、洗浄度合いはろ液の電気伝導度でモニターするのが一般的であり、最終的に、電気伝導度が25μS/cm以下となるようにすることが好ましい。洗浄の際、酸やアルカリでイオンを中和する工程を含んでもよく、酸による処理はpHを6.0以下に、アルカリによる処理はpHを8.0以上にすることが好ましい。
また、洗浄後の固液分離は、特に制限はないが、生産性の点から吸引ろ過、フィルタープレスなどの加圧ろ過等が好ましく用いられる。さらに、乾燥も、特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられ、最終的なトナーの水分率は1質量%以下になるように乾燥することが好ましく、0.7質量%以下になるように乾燥することがより好ましい。
<外添トナー>
上記のようにして得られたトナー粒子には、流動性助剤、クリーニング助剤、研磨剤等として、無機粒子及び有機粒子を外添剤として外添混合することができる。
外添可能な無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、酸化セリウム等の通常トナー表面の外添剤として使用される総ての粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、その表面が疎水化されたものであることが好ましい。
外添可能な有機粒子としては、例えば、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体、エチレン系重合体などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等の通常トナー表面の外添剤として使用される総ての粒子が挙げられる。
外添可能な無機粒子を疎水化処理する疎水化剤としては公知の材料が挙げられ、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等のカップリング剤、シリコーンオイルやポリマーコーティング処理などが挙げられる。
前記外添剤は、V型ブレンダー、サンプルミルあるいはヘンシェルミキサーなどで機械的衝撃力を加えられてトナー表面に付着または固着させられる。
<トナーの形状>
前記ブラックトナーは、形状係数SF1が110以上145以下の範囲の球形状であることが好ましい。形状がこの範囲の球形状であることにより、転写効率、画像の緻密性が向上し、高画質な画像形成を行うことができる。
上記形状係数SF1は110以上140以下の範囲であることがより好ましい。
ここで上記形状係数SF1は、下記式(II)により求められる。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100 ・・・式(II)
上記式(II)中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
形状係数SF1は、顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を、画像解析装置で解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出することができる。すなわち、スライドガラス表面に散布したトナー粒子の光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個以上のトナー粒子について、その最大長と投影面積を求め、上記式(II)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
トナーの形状係数SF1が110より小さい、または140を超えると、長期にわたって、優れた帯電性、クリーニング性、転写性が得られないことがある。
最近では、簡便に測定が可能であることから、シスメックス株式会社製のFPIA−3000を用いて形状係数を測定する場合が多い。FPIA−3000は、4000個程度の粒子像を光学的に測定し、粒子1個ずつの投影画像を画像解析する。具体的には、まず、粒子1個の投影画像から周囲長を算出する(粒子像の周囲長)。次に、その投影画像の面積を算出し、その面積と同面積を持つ円を仮定し、その円の円周を算出する(円相当径から求めた円の円周長)。円形度は、円形度=円相当径から求めた円の円周長/粒子像の周囲長、として算出され、数値が1.0に近いほど球形を表す。この円形度が、0.945以上0.990以下であることが好ましく、0.950以上0.975以下であることがより好ましい。円形度が0.950以下であると転写効率が低下し、0.975以上であるとクリーニング性が低下することがある。
なお、装置間誤差があるものの、形状係数SF1の110は、概ねFPIA−3000の円形度0.990に相当する。また、形状係数SF1の140は、概ねFPIA−3000の円形度0.945に相当する。
<両ブラックトナー間の関係>
本実施形態に用いた第1のブラックトナー(本発明におけるトナーAに相当)及び第2のブラックトナー(本発明におけるトナーBに相当)は、本発明に必須の関係(0)、(1)及び(2)と、本発明に好ましい関係(x)及び(3)とを兼ね備えている。これら本発明におけるトナーAとトナーBとの関係について述べる。
なお、以下の特に物性の関係において論じられるのは、外添剤を含まないトナー粒子についてであるが、物性測定において外添剤の存在は無視できる程度の影響しかないので、物性測定に際しては外添トナーであってもトナー粒子のみであっても構わない。
(本発明に必須の関係)
(0)結着樹脂の90質量%以上が同一の樹脂である関係。
既述の通り、トナーAは所謂高粘度トナーであり、定着後に形成されるトナー画像の光沢は低い(低グロス)。一方、トナーBは所謂低粘度トナーであり、定着後に形成されるトナー画像は高光沢(高グロス)である。これらトナーの粘度調整は、結着樹脂の組成や分子量を変えることにより粘度を調整することで制御するのが一般的であるが、その場合、定着温度の変動をもたらしてしまう。その結果、高粘度のトナーAは定着温度が高く、低粘度のトナーBは定着温度が低くなってしまう。
これら2種のトナーを併用した場合、通常の使用ではそれほど問題にならないものの、厚紙など定着熱量を多く必要とする用紙に画像形成する際には、高粘度のトナーAの定着強度が不足してしまうという問題が生ずる場合がある。一方、高粘度のトナーAの定着温度を下げるために、結着樹脂の組成や分子量を変えることによりガラス転移温度を下げると、トナーの熱保管性が悪化してしまう。
そこで、本発明においては、トナーA及びトナーBにおける結着樹脂の90質量%以上を同一の樹脂で構成することにして、トナーA及びトナーBの定着特性を近似させている。トナーA及びトナーBにおける結着樹脂は、その全てを同一の樹脂で構成することが最も好ましい。なお、両トナーの粘度(≒光沢度)の制御は、後述する関係(2)において行っている。
また、「同一の樹脂」とは、樹脂を構成する重合性単量体のうち90モル%以上が同じであることを言う。例えばスチレン100部、メタクリル酸メチル100部からなる共重合体Aとスチレン100部、メタクリル酸メチル95部、メタクリル酸5部からなる共重合体Bとの場合、共重合体Aはスチレン49.0モル%、メタクリル酸メチル51.0モル%、共重合体Bはスチレン48.8モル%、メタクリル酸メチル48.2モル%、メタクリル酸2.9モル%であることから、共重合体Aと共重合体Bを構成する重合性単量体のうち100−2.9=97.1モル%が同じ重合性単量体からなっているため、この共重合体Aと共重合体Bは同一の樹脂であるとみなされる。
(1)フローテスター1/2降下温度について、トナーAをTa、トナーBをTbとしたとき、Ta>Tbとなる関係。
フローテスター1/2降下温度とは、フローテスター(島津製作所社製:CFT−500C)を用いて、サンプル量:1.05g、サンプル直径:1mm、予熱:65℃で300sec、荷重:10kg、ダイサイズ:直径0.5mm、昇温速度:1.0℃/minの条件下で測定され、プランジャーの降下量をプロットした時、試料の半分が流出した時の温度を、1/2降下温度と定義する。
当該フローテスター1/2降下温度が大きい値であれば、その物質は高粘度であること、小さい値であれば低粘度であることと同義である。したがって、当該物性(1)の関係は、大まかに言えば、トナーAに比してトナーBが低粘度で、高光沢な画像を形成し得ることを示すものである。
両トナーの役割分担の実効性を確保するためには、Ta>Tb×1.05となる関係であることが好ましく、Ta>Tb×1.10となる関係であることがより好ましい。
フローテスター1/2降下温度の具体的な値としては、Taが115℃〜145℃の範囲内であることが好ましく、120℃〜140℃の範囲内であることがより好ましい。同様に、Tbは95℃〜115℃の範囲内であることが好ましく、100℃〜110℃の範囲内であることがより好ましい。
(2)蛍光X線で測定されるトナー中のアルミニウム量(ネット強度基準)について、トナーAをAa、トナーBをAbとしたとき、Aa>Abとなる関係。
本発明では、フローテスター1/2降下温度の値を制御するのに、既述の如く、結着樹脂の組成や分子量を調整することを避け、トナー中のアルミニウム量を調整することにより行う。すなわち、本発明では、トナー中にアルミニウムが存在することによって、アルミニウムとポリエステル樹脂との間にイオン架橋が生じて弾性が向上する性質を利用することで、フローテスター1/2降下温度の値を制御する。
アルミニウムの原子半径と配位数が、定着のための粘度調整において好ましい。アルミニウム以外の金属、例えば、鉄や銅では原子半径が大き過ぎ、カルシウムやカリウムでは配位数が不足する。アルミニウムを適量存在させることにより、定着に求められる100Pa〜10000Pa程度の弾性率を定着時に発現するトナーを得ることができる。
両トナー中のアルミニウム量(ネット強度基準)は、フローテスター1/2降下温度が上記好ましい範囲となるように調整すればよい。
アルミニウム量は、トナーの蛍光X線分析の全元素分析から算出される組成比によって求めることができる。なお、当該蛍光X線分析は、例えば、測定装置としてXRF−1500(島津製作所社製)を使用し、測定条件は管電圧40kV、管電流70mA、測定時間15分、測定面積は直径10mm(試料量0.3gを直径10mmの円筒状に成型したもの)で定量分析することによりアルミニウム量のNet強度を求めることができる。後述するナトリウム量も同様にして測定することができる。
トナー中のアルミニウム量は、既述の通りトナーの製造時にアルミニウムを含む凝集剤を適量用いることで制御することができる。また、既述の分散剤としてアルミナを用いることによってもアルミニウムを追加することができる。勿論、アルミニウム分のみを追加する目的でトナー調製時に分散媒等にアルミニウム塩を別途添加しても構わない。
(本発明に好ましい物性)
(x)体積平均粒径について、トナーAをDa、トナーBをDbとしたとき、Da>Dbとなる関係。
一般に定着後の画像には、トナーサイズの凹凸が残る。この時、トナー粒子が小さいと、凹凸のサイズが小さく、画像表面の光散乱が多くなり、結果、黒色度が低下して見える。この光散乱を低減させるために、低光沢(低グロス)のトナーAは、トナーの粒子径を大きくすることが好ましい。
一方、写真画像、高精細画像、フルカラー画像の形成を担う高光沢(高グロス)のトナーBについては、細線再現性の観点からトナーの粒子径を小さくすることが好ましい。
以上より、体積平均粒径について、トナーAをDa、トナーBをDbとしたとき、Da>Dbとなる関係が望ましい。両者の体積平均粒径の適切な隔たりとしては、Da>Db×1.05となる関係であることがより好ましく、Da>Db×1.10となる関係であることがさらに好ましい。
トナーAの体積平均粒径としては、具体的には、4.0μm以上10.0μm以下が好ましく、5.0μm以上8.0μm以下がより好ましい。一方、トナーBの体積平均粒径としては、具体的には、3.0μm以上7.0μm以下が好ましく、3.5μm以上6.5μm以下がより好ましい。
上記体積平均粒径の測定は、マルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用いて、100μmのアパーチャー径で行うことができる。この際、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ(濃度:1質量%)、界面活性剤(商品名:コンタミノン)を添加し、超音波分散器により300秒以上分散させた後に行った。
(3)蛍光X線で測定されるトナー中のナトリウム量について、トナーAをNaa、トナーBをNabとしたとき、Naa>Nabとなる関係。
上記関係(x)により、トナーAについてその粒径を大きくすると、画像を均一に埋めるためのトナー量が多くなる。トナー量が増えれば、必然的に定着時に必要な熱量も多くなり、結果、定着温度が上がってしまう。
これに対し、トナー中のナトリウム量(Na量)を制御して、カルボン酸とナトリウムの相互作用による可塑化効果を利用することで、粒径の異なるトナーの定着温度を近づけることができる。これにより、厚みが異なる等種々の用紙を用いたときに、粒径の異なるトナーで形成したトナー画像の定着性を近似させることができる。
トナー中にナトリウムを含有させることで、ポリエステル樹脂のカルボン酸と相互作用し、ポリエステル樹脂が可塑化する。したがって、粒径が大きく定着温度を下げたいトナーAのナトリウム量を、粒径の小さいトナーBよりも多くする本関係(3)が好ましい。
この時、ナトリウム量が多過ぎると可塑化が進みすぎ、樹脂全体の強度が低下するため、耐ブロッキング性が悪化する。一方、少な過ぎると、可塑化が充分でなく、定着温度を低下させることができない。したがって、必要な可塑化の程度を睨みながら、ナトリウム量を適切に制御することが望ましい。
ナトリウムによる可塑化は、既述の通りポリエステル樹脂のカルボン酸との相互作用によるが、ポリエステル樹脂のカルボン酸のほとんどは、ポリエステル樹脂の末端基にあるため、ポリエステル主鎖にはほとんど影響せず、結果、ポリエステル樹脂自体のガラス転移温度や強度が維持され、耐ブロッキング性とも両立させることができる。なお、可塑剤を用いた場合には、可塑効果は期待できるものの、ポリエステル主鎖と相互作用するため、ガラス転移温度が低下してしまうなどの問題が生ずる懸念がある。
トナー中のナトリウム量を制御する方法としては、樹脂分散液を調製する段階で添加する方法、トナー製造中に添加する方法、トナー作製後に添加処理する方法などがあるが、トナー製造時の添加量で制御することが好ましい。しかし、ナトリウム量が少な過ぎるとトナーの粒径制御性が悪化する場合があり、トナー製造時のナトリウム添加量を多くし、トナー製造後に硝酸や塩酸などの酸でpHを調整することで、ナトリウム量を制御することができる。使用する材料は、水酸化ナトリウム、Na中和された界面活性剤などがあるが、水酸化ナトリウムであることが好ましい。
トナー中のナトリウム量は、既述の通り、アルミニウム量の場合と同様蛍光X線にて測定した。
[二成分現像剤]
以上説明した本実施形態のブラックトナーは、そのまま一成分現像剤として、あるいはキャリアと混合されて二成分現像剤として用いられる。
使用可能なキャリアとしては、特に制限は無いが、樹脂で被膜されたキャリア(一般に、「コートキャリア」「樹脂被膜キャリア」等と称される。)であることが望ましく、窒素含有樹脂で被膜されたキャリアであることがさらに好適である。被覆に適した窒素含有樹脂としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル等を含むアクリル系樹脂、ウレア、ウレタン、メラミン、グアナミン、アニリン等を含むアミノ樹脂、またアミド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、これらの共重合樹脂でも構わない。これらの中でも、特にウレア樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂が好ましい。
キャリアの被膜樹脂としては、前記窒素含有樹脂の中から2種以上を組み合わせて使用してもよいし、前記窒素含有樹脂と窒素を含有しない樹脂とを組み合わせて使用してもよい。また、前記窒素含有樹脂を粒子状にし、窒素を含有しない樹脂中に分散して使用してもよい。
一般に、キャリアには、適度な電気抵抗値を有することが機能上求められ、具体的には109Ωcm以上1014Ωcm以下の電気抵抗値であることが望ましい。例えば、鉄粉キャリアのように電気抵抗値が106Ωcmと低い場合には、絶縁性(体積抵抗率が1014Ωcm以上)の樹脂を被覆し、樹脂被覆層中に導電性粉末を分散させることが望ましい。
導電性粉末の具体例としては、金、銀、銅等の金属;カーボンブラック;酸化チタン、酸化亜鉛等の半導電性酸化物;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズやカーボンブラック、金属で覆ったもの;等が挙げられる。この中でもカーボンブラックが好ましい。
上記樹脂被膜層を、キャリア芯材の表面に形成する方法としては、例えば、キャリア芯材の粉末を被膜層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被膜層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被膜層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被膜層形成用溶液とを混合し溶剤を除去するニーダーコーター法、被膜樹脂を粒子化し被膜樹脂の融点以上でキャリア芯材とニーダーコーター中で混合し冷却して被覆させるパウダーコート法等が挙げられるが、ニーダーコーター法及びパウダーコート法が特に好ましい。
キャリアの製造には、加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなどを使用すればよく、前記被膜樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどを使用してもよい。
上記方法により形成される樹脂被膜層の平均膜厚は、通常0.1μm以上10μm以下、より好適には0.2μm以上5μm以下の範囲である。
キャリアに用いられる芯材(キャリア芯材)としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、特に磁気ブラシ法を用いる場合には、磁性金属が望ましい。キャリア芯材の個数平均粒径としては、一般的には10μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上80μm以下がより好ましい。
前記二成分現像剤における前記ブラックトナーと上記キャリアとの混合比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、質量比でトナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲が好ましく、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明の画像形成装置及び画像形成方法を詳細に説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、本発明に言うトナーA及びトナーBとして2種類のブラックトナーを現像器(現像像形成器)に収容する例を挙げているが、色相はブラックに限定されるものでは無く、同系色のシアン、マゼンタ、イエロー等他の色の2種類のトナーの組み合わせであっても構わない。
また、上記実施形態では色数分の現像器を有するロータリー現像装置204によって、1つの静電潜像保持体201に各色の潜像を形成して、その都度中間転写体207に転写する構成の装置を例示しているが、色数分の静電潜像保持体、帯電手段、現像像形成器、クリーニング手段等を有する各色ユニットを中間転写媒体に対向させて並列に配置(物理的に直線状でなくても構わない。)して、それぞれのユニットで形成された各色のトナー像を中間転写媒体に一次転写して順次積層し、一括して記録媒体に二次転写する、一般的にタンデム方式と呼ばれる画像形成装置を用いてもよい。
さらに、本発明の画像形成装置及び画像形成方法は、上記実施形態で説明した各構成要素に加えて、その他従来公知の、あるいは公知ではない各種構成を付加することができ、その付加によってもなお本発明の画像形成装置または画像形成方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。例えば、クリーニング手段の後工程として、除電手段を設けることもできる。
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の画像形成装置及び画像形成方法を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の画像形成装置または画像形成方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、単に「部」「%」とあるのは全て質量基準である。
[各種測定条件・測定方法]
<酸価の測定>
酸価AVは、JIS K0070に従って、中和滴定法により測定した。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(アセトン/トルエン等量混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が完全に溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いた時を終点とした。
酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクターとした時、A=(B×f×5.611)/Sとして算出した。
<ガラス転移温度及び融解温度の測定方法>
ガラス転移温度及び融解温度は、ASTMD3418−8に準拠した示差走査熱量測定により行った。この測定は、以下のように行った。
すなわち、まず自動接線処理システムを備えた島津製作所社製の示差走査熱量計(装置名:DSC−50型)に測定対象となる物質をセットし、冷却媒体として液体窒素をセットし、10℃/分の昇温速度で20℃から150℃まで加熱して(1回目の昇温過程)温度(℃)と熱量(mW)との関係を求め、次に、−10℃/分の降温速度で0℃まで冷却し、再度これを10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して(2回目の昇温過程)データを採取した。なお、0℃および150℃にてそれぞれ5分間ずつホールドした。2回目の昇温過程での吸熱ピーク温度を融解温度とみなした。なお、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、最大のピークをもって融解温度とみなした。
測定装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との混合物の融解温度を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いた。試料はアルミニウム製パンに入れ、サンプルの入ったアルミニウム製パンと対照用の空のアルミニウム製パンとをセットした。
<質量平均分子量(Mw)の測定>
ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)(ポリスチレン換算)は、GPC装置として、東ソー(株)製HLC−8120GPC、SC−8020装置を用い、カラムはTSKgei,SuperHM−H(6.0mmID×15cm×2)を用い、溶離液として和光純薬社製クロマトグラフ用THF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、検量線はA−500、F−1、F−10、F−80、F−380、A−2500、F−4、F−40、F−128、F−700の10サンプルから作製した。また試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
<円形度の算出>
トナーの形状係数の測定は、FPIA−3000(シスメックス株式会社製)を用いて行った。測定のためのトナー分散液は以下のようにして作製した。まず100mlビーカーにイオン交換水を30ml入れ、これに分散剤として界面活性剤(和光純薬社製:コンタミノン)の10質量%濃度溶液を2滴滴下した。この液中にトナーを20mg入れ、超音波分散により3分間分散して分散液を調製した。
得られたトナー分散液について、FPIA3000を用い、測定個数4500個を測定して、円形度を算出した。
<トナー体積平均粒子径の測定方法>
コールターマルチサイザー−II型(ベックマンーコールター社製)測定装置を用いて、トナー粒子の体積平均粒子径を測定した。電解液としては、ISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
<フローテスター1/2降下温度の測定>
既述の方法により、フローテスター1/2降下温度を測定した。
[トナーの組成成分の調製]
<着色剤分散液(PK1)の調製>
・カーボンブラック(キャボット社製、R330): 200質量部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC): 33質量部(有効成分60質量%。着色剤に対して10質量%)
・イオン交換水: 750質量部
上記成分を全て投入した際に液面の高さが容器の高さの1/3程度になる大きさのステンレス容器に、上記イオン交換水のうち280質量部と上記アニオン系界面活性剤を入れ、温度40℃に加温して充分に界面活性剤を溶解させた後25℃に冷却し、上記カーボンブラック顔料全てを投入し、攪拌器を用いて濡れていない顔料がなくなるまで攪拌するとともに、充分に脱泡させた。
脱泡後に残りのイオン交換水を加え、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000回転で10分間分散した後、攪拌器で一昼夜攪拌させて脱泡した。脱泡後、再度ホモジナイザーを用いて、6000回転で10分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡した。続けて、分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。分散は、トータル仕込み量と装置の処理能力とから換算して25パス相当行った。
得られた分散液を72時間放置して沈殿物を除去し、イオン交換水を加えて、固形分濃度を15質量%になるように調整した。得られた着色剤分散液中の粒子の体積平均粒径D50Vは125nmであり、250nm以上の粗粉は観測されなかった。なお、該体積平均粒径D50Vはマイクロトラックにて5回測定した内の、最大値と最小値を除いた3回の測定値の平均値を用いた。この着色剤分散液を(PK1)とする。
<離型剤分散液(W1)の調製>
・炭化水素系ワックス(日本精鑞社製、商品名:FNP0090、融解温度Tw=90.2℃): 270質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンRK、有効成分量:60質量%): 13.5質量部(有効成分として、離型剤に対して3.0質量%)
・イオン交換水: 21.6質量部
上記成分を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、離型剤分散液(W1)を得た。この離型剤分散液中の粒子の体積平均粒径D50vは225nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20.0質量%になるように調整した。
<非晶性ポリエステル樹脂(A1)の合成>
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(三洋化成工業(株)社製、ニューポールBP−2P): 80モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(三洋化成工業(株)社製、ニューポールBPE−20): 20モル部
・テレフタル酸: 55モル部
・フマル酸: 32モル部
・ドデセニルコハク酸無水物: 15モル部
・トリメリット酸無水物: 1モル部
攪拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、上記モノマー成分のうちフマル酸及びトリメリット酸無水物以外と、ジオクタン酸スズを上記モノマー成分の合計100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、235℃で6時間反応させた後、200℃に降温して、上記フマル酸を投入し1時間反応させた。さらにトリメリット酸無水物を投入し1時間反応させた後、温度をさらに220℃まで4時間かけて昇温し、10kPaの圧力下で所望の分子量になるまで重合させ、淡黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂(A1)を得た。
得られた非晶性ポリエステル樹脂(A1)は、DSCによるガラス転移温度Tgが59℃、GPCによる質量平均分子量Mwが21000、数平均分子量Mnが7100、フローテスターによる軟化温度が107℃、酸価AVが11mgKOH/gであった。
<非晶性ポリエステル樹脂(A2)の合成>
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(三洋化成工業(株)社製、ニューポールBP−2P): 30モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(三洋化成工業(株)社製、ニューポールBPE−20): 70モル部
・テレフタル酸: 68モル部
・ドデセニルコハク酸無水物: 25モル部
・トリメリット酸無水物: 7モル部
上記成分を非晶性ポリエステル樹脂(A1)の合成と同様の操作にて、淡黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂(A2)を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、DSCによるガラス転移温度Tgが56℃、GPCによる質量平均分子量Mwが85000、数平均分子量Mnが9000、フローテスターによる軟化温度が125℃、酸価AVが13mgKOH/gであった。
<非晶性ポリエステル樹脂(B1)の合成>
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(三洋化成工業(株)社製、ニューポールBP−2P): 80モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(三洋化成工業(株)社製、ニューポールBPE−20): 20モル部
・テレフタル酸(試薬): 70モル部
・シクロヘキサンジカルボン酸(試薬): 30モル部
攪拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に上記成分を入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、ジオクタン酸スズを前記モノマー成分の合計100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、約180℃で約6時間撹拌反応させた後、温度をさらに約220℃まで1時間かけて昇温し、約7.0時間撹拌反応させ、さらに、温度を235℃に上げて、反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、減圧下で約2.0時間攪拌反応させて、無色透明な非晶性ポリエステル樹脂(B1)を得た。
得られた非晶性ポリエステル樹脂(B1)は、DSCによるガラス転移温度Tgが52.5℃、GPCによる質量平均分子量Mwが18000、数平均分子量Mnが6300、酸価AVが9.3KOHmg/gであった。
<非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合成>
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(三洋化成工業(株)社製、ニューポールBP−2P): 40モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(三洋化成工業(株)社製、ニューポールBPE−20): 60モル部
・テレフタル酸: 68モル部
・フマル酸: 25モル部
・トリメリット酸無水物: 7モル部
上記成分を非晶性ポリエステル樹脂(A1)の合成と同様の操作にて、淡黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂(B2)を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、DSCによるガラス転移温度Tgが57℃、GPCによる質量平均分子量Mwが95000、数平均分子量Mnが8500、フローテスターによる軟化温度が127℃、酸価AVが14mgKOH/gであった。
<結晶性ポリエステル樹脂(C1)の合成>
・1,10−ドデカン二酸: 50モル%
・1,9−ノナンジオール: 50モル%
攪拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に上記モノマー成分を入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、チタンテトラブトキサイド(試薬)を前記モノマー成分100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間攪拌反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間攪拌反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(C1)を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂(C1)は、DSCによる融解温度Tcが73.6℃、GPCによる質量平均分子量Mwが25000、数平均分子量Mnが10500、酸価AVが10.1mgKOH/gであった。
<非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1)の調製>
・非晶性ポリエステル樹脂(A1): 3000部
・イオン交換水: 10000部
・界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム): 90部
以上の成分を高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010、スリット:0.4mm)の乳化タンクに投入し、130℃に加熱溶融後、110℃で流量3リットル/mにて10,000回転/分で30分間分散させ、冷却タンクを通過させて非晶性樹脂粒子分散液を回収し、105μm目開きの金網を通過させて、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1)を得た。
この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径D50vは260nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%になるように調整し、これを非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1)とした。
<非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2)の調製>
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械株式会社製:BJ−30N)を水循環式恒温槽にて40℃に維持しながら、該反応槽に酢酸エチル160質量部とイソプロピルアルコール100質量部との混合溶剤を投入し、これに上記非晶性ポリエステル樹脂(A2)を300質量部投入して、スリーワンモーターを用い120rpmで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に10質量%アンモニア水溶液を18質量部滴下し、10分間混合した後、さらにイオン交換水900質量部を毎分5質量部の速度で滴下して転相させて、乳化液を得た。
すぐに、得られた乳化液800質量部とイオン交換水1000質量部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械株式会社)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1400質量部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。得られた分散液に溶剤臭は無かった。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径D50vは140nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%になるように調整し、これを非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2)とした。
<結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PC1)の調製>
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1)の調製において、非晶性ポリエステル樹脂(A1)を結晶性ポリエステル樹脂(C1)に代えたことを除いては非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1)と同様にして、固形分濃度調整前の分散液を得た。
この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径D50vは220nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%になるように調整し、これを結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PC1)とした。
<硫酸アルミニウム水溶液(SA)の調製>
・硫酸アルミニウム粉末(浅田化学工業株式会社製:17%硫酸アルミニウム): 35質量部
・イオン交換水: 1965質量部
上記成分を2リットル容器へ投入し、30℃にて、沈殿物が消失するまで攪拌混合して硫酸アルミニウム水溶液を調製した。
<追加用非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2A)の調製>
上記非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2)を350質量部、500mlビーカーに入れ、マグネチックスターラーにて、泡をかみ込まない速さで攪拌しながら、硝酸を用いてpHが3.0になるように調整し、追加用結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2A)を得た。
[実施例1]
<黒トナー(TK1L)の調製>
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1): 200質量部
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2): 450質量部
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PC1): 55質量部
・着色剤分散液(PK1): 90質量部
・離型剤分散液(W1): 130質量部
・イオン交換水: 250質量部
上記成分を、温度計、pH計、攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、硝酸を加えてpHを3.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて5000rpmで分散しながら、調製した硫酸アルミニウム水溶液(SA)を130質量部添加して6分間分散した。
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.0μmになったところで温度を保持し、さらに追加用非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2A)の全てを60分間かけて投入した。
続いて、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、5℃ごとにpHが9.0になるように同様にして調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で保持した。15分ごとに光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて粒子形状及び表面性を観察し、円形度を測定したところ、2.0時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水にて容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去した後、メッシュを通過したトナースラリーを、アスピレータで減圧ろ過した。続けて、30℃のイオン交換水で通水ろ過し、ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナーを洗浄した。
洗浄されたトナーを湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、35℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)1.0質量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製、T805)0.8質量部とを加え、サンプルミルを用いて13000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩で篩分して、高光沢画像用の黒トナー(TK1L)を得た。
得られた黒トナー(TK1L)は、体積平均粒径D50vが6.0μm、円形度が0.965(シスメックス株式会社製、FPIA−3000)であった。なお、トナーのSEM画像を観察したところ、滑らかな表面を持ち、離型剤の突き出しや表面層の剥がれなどの不具合は見られなかった。
さらに、得られた黒トナー(TK1L)について、フローテスター1/2降下温度、蛍光X線によるアルミニウム量測定及びナトリウム量測定を既述の方法により実施した。
以上の測定結果を後記表1にまとめて示す。
<樹脂被覆キャリア(C)の調製>
・Mn−Mg−Sr系フェライト粒子(平均粒径40μm): 100質量部
・トルエン: 14質量部
・シクロヘキシルメタアクリレート/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体(共重合質量比99:1、Mw8万): 2.0質量部
・カーボンブラック(VXC72:キャボット製): 0.12質量部
フェライト粒子を除く上記成分及びガラスビーズ(φ1mm、トルエンと同量)を、関西ペイント社製サンドミルを用いて1200ppmで30分間攪拌し、樹脂被覆層形成用溶液を得た。さらに、この樹脂被覆層形成用溶液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、減圧し、トルエンを留去して乾燥することにより、樹脂被覆キャリア(C)を調製した。
<黒現像剤(DK1L)の調製>
上記樹脂被覆キャリア(C)500質量部に対して、前記黒トナー(TK1L)40質量部を加え、V型ブレンダーで20分間ブレンドした後、目開き212μmの振動篩により凝集体を除去して、黒現像剤(DK1L)を調製した。
<補給用黒現像剤(SDK1L)の調製>
上記樹脂被覆キャリア(C)20質量部に対して、前記黒トナー(TK1L)100質量部を加え、V型ブレンダーで20分間ブレンドした後、目開き212μmの振動篩により凝集体を除去して、補給用オレンジ現像剤(SDK1L)を得た。
<黒トナー(TK1H)の調製>
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1): 200質量部
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2): 450質量部
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PC1): 55質量部
・着色剤分散液(PK1): 90質量部
・離型剤分散液(W1): 130質量部
・イオン交換水: 250質量部
上記成分を、温度計、pH計、攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、硝酸を加えてpHを3.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて5000rpmで分散しながら、調製した硫酸アルミニウム水溶液(SA)を140質量部添加して6分間分散した。
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.0μmになったところで温度を保持し、さらに追加用非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2A)の全てを60分間かけて投入した。
続いて水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、昇温速度1℃/分で97℃まで昇温し、97℃で保持した。15分ごとに光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE−SEM)、及び円形度測定器(シスメックス株式会社製、FPIA−3000)にて粒子形状及び表面性を観察し、円形度が所望の値に達したところで、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にして5分間放置した後、冷却水にて容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去した後、メッシュを通過したトナースラリーを、アスピレータで減圧ろ過した。続けて、30℃のイオン交換水で通水ろ過し、ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナーを洗浄した。
洗浄されたトナーを湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、35℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)1.0質量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製、T805)0.8質量部とを加え、サンプルミルを用いて13000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩で篩分して、高光沢画像用の黒トナー(TK1H)を得た。
得られた黒トナー(TK1H)は、体積平均粒径D50vが6.1μm、円形度が0.960(シスメックス株式会社製、FPIA−3000)であった。なお、トナーのSEM画像を観察したところ、滑らかな表面を持ち、離型剤の突き出しや表面層の剥がれなどの不具合は見られなかった。
さらに、得られた黒トナー(TK1H)について、フローテスター1/2降下温度、蛍光X線によるアルミニウム量測定及びナトリウム量測定を既述の方法により実施した。
以上の測定結果を後記表1にまとめて示す。
<黒現像剤(DK1H)の調製>
前記<黒現像剤(DK1L)の調製>において、黒トナー(TK1L)に代えて黒トナー(TK1H)を用いたこと以外は前記<黒現像剤(DK1L)の調製>と同様にして、黒現像剤(DK1H)を調製した。
<補給用黒現像剤(SDK1H)の調製>
前記<補給用黒現像剤(SDK1L)の調製>において、黒トナー(TK1L)に代えて黒トナー(TK1H)を用いたこと以外は前記<補給用黒現像剤(SDK1L)の調製>と同様にして、補給用黒現像剤(SDK1H)を調製した。
[実施例2]
実施例2において高光沢画像用には、実施例1と同じ黒トナー(TK1L)、黒現像剤(DK1L)、補給用黒現像剤(SDK1L)を用いた。以下、低光沢画像用の黒トナー(TK2H)、黒現像剤(DK2H)、補給用黒現像剤(SDK2H)について説明する。
<黒トナー(TK2H)の調製>
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1): 200質量部
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2): 450質量部
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PC1): 55質量部
・着色剤分散液(PK1): 90質量部
・離型剤分散液(W1): 130質量部
・イオン交換水: 250質量部
上記成分を、温度計、pH計、攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、硝酸を加えてpHを3.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて5000rpmで分散しながら、調製した硫酸アルミニウム水溶液(SA)を140質量部添加して6分間分散した。
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.5μmになったところで温度を保持し、さらに追加用非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2A)の全てを60分間かけて投入した。
続いて水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.2にした。その後、昇温速度1℃/分で97℃まで昇温し、97℃で保持した。15分ごとに光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE−SEM)、及び円形度測定器(シスメックス株式会社製、FPIA−3000)にて粒子形状及び表面性を観察し、円形度が所望の値に達したところで、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にして5分間放置した後、冷却水にて容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去した後、メッシュを通過したトナースラリーを、アスピレータで減圧ろ過した。続けて、30℃のイオン交換水で通水ろ過し、ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナーを洗浄した。
洗浄されたトナーを湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、35℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)1.0質量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製、T805)0.8質量部とを加え、サンプルミルを用いて13000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩で篩分して、低光沢画像用の黒トナー(TK2H)を得た。
得られた黒トナー(TK2H)は、体積平均粒径D50vが6.4μm、円形度が0.959(シスメックス株式会社製、FPIA−3000)であった。なお、トナーのSEM画像を観察したところ、滑らかな表面を持ち、離型剤の突き出しや表面層の剥がれなどの不具合は見られなかった。得られた黒トナー(TK2H)についての各種測定結果を、後記表1にまとめて示す。
<黒現像剤(DK2H)の調製>
前記<黒現像剤(DK1L)の調製>において、黒トナー(TK1L)に代えて黒トナー(TK2H)を用いたこと以外は前記<黒現像剤(DK1L)の調製>と同様にして、黒現像剤(DK2H)を調製した。
<補給用黒現像剤(SDK2H)の調製>
前記<補給用黒現像剤(SDK1L)の調製>において、黒トナー(TK1L)に代えて黒トナー(TK2H)を用いたこと以外は前記<補給用黒現像剤(SDK1L)の調製>と同様にして、補給用黒現像剤(SDK2H)を調製した。
[実施例3]
実施例3において高光沢画像用には、実施例1と同じ黒トナー(TK1L)、黒現像剤(DK1L)、補給用黒現像剤(SDK1L)を用いた。以下、低光沢画像用の黒トナー(TK3H)、黒現像剤(DK3H)、補給用黒現像剤(SDK3H)について説明する。
<黒トナー(TK3H)の調製>
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1): 200質量部
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2): 450質量部
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PC1): 55質量部
・着色剤分散液(PK1): 90質量部
・離型剤分散液(W1): 130質量部
・イオン交換水: 250質量部
上記成分を、温度計、pH計、攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、硝酸を加えてpHを3.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて5000rpmで分散しながら、調製した硫酸アルミニウム水溶液(SA)を140質量部添加して6分間分散した。
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.5μmになったところで温度を保持し、さらに追加用非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA2A)の全てを60分間かけて投入した。
続いて水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.5にした。その後、昇温速度1℃/分で97℃まで昇温し、97℃で保持した。15分ごとに光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE−SEM)、及び円形度測定器(シスメックス株式会社製、FPIA−3000)にて粒子形状及び表面性を観察し、円形度が所望の値に達したところで、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にして5分間放置した後、冷却水にて容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去した後、メッシュを通過したトナースラリーを、アスピレータで減圧ろ過した。続けて、30℃のイオン交換水で通水ろ過し、ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナーを洗浄した。
洗浄されたトナーを湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、35℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)1.0質量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製、T805)0.8質量部とを加え、サンプルミルを用いて13000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩で篩分して、低光沢画像用の黒トナー(TK3H)を得た。
得られた黒トナー(TK3H)は、体積平均粒径D50vが6.4μm、円形度が0.961(シスメックス株式会社製、FPIA−3000)であった。なお、トナーのSEM画像を観察したところ、滑らかな表面を持ち、離型剤の突き出しや表面層の剥がれなどの不具合は見られなかった。得られた黒トナー(TK3H)についての各種測定結果を、後記表1にまとめて示す。
<黒現像剤(DK3H)の調製>
前記<黒現像剤(DK1H)の調製>において、黒トナー(TK1H)に代えて黒トナー(TK3H)を用いたこと以外は前記<黒現像剤(DK1H)の調製>と同様にして、黒現像剤(DK3H)を調製した。
<補給用黒現像剤(SDK3H)の調製>
前記<補給用黒現像剤(SDK1H)の調製>において、黒トナー(TK1H)に代えて黒トナー(TK3H)を用いたこと以外は前記<補給用黒現像剤(SDK1H)の調製>と同様にして、補給用黒現像剤(SDK3H)を調製した。
[比較例1]
<黒トナー(TK10L)の調製>
・非晶性ポリエステル樹脂(B1): 121質量部
・結晶性ポリエステル樹脂(C1): 75質量部
・カーボンブラック(キャボット社製、R330): 45質量部
・炭化水素系ワックス(日本精鑞社製、商品名:FNP0090、融解温度Tw=90.2℃): 45質量部
・方向族系炭化水素樹脂(三井化学社製、FMR): 45質量部
上記成分をBR型バンバリー型混練機(神戸製鋼社製)で、回転数120rpmで約8分間溶融混練した後、精製カルナバワックス(日星産業社)80部を加え、さらに約7分間溶融混練した。混練物を圧延ロールで厚さ1cm程度の板状に成形し、フィッツミル型粉砕機で数ミリ程度まで粗粉砕し、IDS型粉砕機で微粉砕を、エルボー型分級機で分級を順次行い、黒トナー(TK10L)を得た。得られた黒トナー(TK10L)についての各種測定結果を、後記表1にまとめて示す。
<黒現像剤(DK10L)の調製>
前記<黒現像剤(DK1L)の調製>において、黒トナー(TK1L)に代えて黒トナー(TK10L)を用いたこと以外は前記<黒現像剤(DK1L)の調製>と同様にして、黒現像剤(DK10L)を調製した。
<補給用黒現像剤(SDK10L)の調製>
前記<補給用黒現像剤(SDK1L)の調製>において、黒トナー(TK1L)に代えて黒トナー(TK10L)を用いたこと以外は前記<補給用黒現像剤(SDK1L)の調製>と同様にして、補給用黒現像剤(SDK10L)を調製した。
<黒トナー(TK10H)の調製>
黒トナー(TK10L)の調製において、非晶性ポリエステル樹脂(B1)を非晶性ポリエステル樹脂(B2)へ変更した以外は同様の操作にて、黒トナー(TK10H)を得た。得られた黒トナー(TK10H)についての各種測定結果を、後記表1にまとめて示す。
<黒現像剤(DK10L)の調製>
前記<黒現像剤(DK1L)の調製>において、黒トナー(TK1L)に代えて黒トナー(TK10L)を用いたこと以外は前記<黒現像剤(DK1L)の調製>と同様にして、黒現像剤(DK10L)を調製した。
<補給用黒現像剤(SDK10L)の調製>
前記<補給用黒現像剤(SDK1L)の調製>において、黒トナー(TK1L)に代えて黒トナー(TK10L)を用いたこと以外は前記<補給用黒現像剤(SDK1L)の調製>と同様にして、補給用黒現像剤(SDK10L)を調製した。
[評価試験]
得られた実施例1〜3及び比較例1、2の各黒トナー、黒現像剤及び補給用黒現像剤について、それぞれ以下に示す定着評価試験を行った。
富士ゼロックス社製画像形成装置DocuCentre Color 400 CPから定着器を取り外した改造機を準備した。次に、この改造機を、温度25℃、湿度60%の環境室内に設置した。
この改造機から、シアン現像器及びシアントナーカートリッジについて、標準でセットされていた現像剤及びトナーを除去して充分に清掃した後、各実施例及び比較例ごとに下記表1に示す高光沢画像用の黒現像剤をシアン現像器に、同様に高光沢画像用の補給用黒現像剤をシアントナーカートリッジに投入した。
続いて、マゼンタ現像器及びマゼンタカートリッジについて、標準でセットされていた現像剤及びトナーを除去して充分に清掃した後、各実施例及び比較例ごとに下記表2に示す低光沢画像用の黒現像剤をマゼンタ現像器に、同様に低光沢画像用の補給用黒現像剤をマゼンタトナーカートリッジに投入した。
なお、現像剤及び補給用現像剤の投入前に、装置本体を十分に清掃しておいた。
そして、A3用紙(富士ゼロックス社製:シーツー。以下同様。)20枚を、何も現像せずに通紙させ、この状態で48時間放置した。次に、A3用紙10枚を、何も現像せずに通紙させた後、OKプリンス127GSM(g/m2)用紙(富士ゼロックス社製)上に、5cm×5cmの大きさで、現像トナー量7.0g/m2の単色ベタ画像をそれぞれのトナーについて作製した。定着器が取り外されているため、この画像は未定着の状態である。
先にDocuCentre Color 400 CPから取り外した定着器を用い、プロセススピード100mm/秒で、定着温度を100℃から200℃まで、5℃ずつ変化させて、それぞれの条件で前記未定着画像を通紙し、定着した。
得られた各定着画像の画像面を谷折りにし、折れ目部の画像の剥がれ度合いを観察し、画像がほとんど剥がれない最低の定着温度を評価した。2つのトナーの定着温度差が0℃ならば○、5℃ならば△、10℃以上であれば×とした。○及び△ならば実使用上許容できる範囲である。結果を下記表2にまとめて示す。
[結果の考察]
本発明の条件を満たす実施例1〜3のトナーの組み合わせは、定着温度差が小さく、用紙汎用性が広い。これは、アルミニウムによるイオン架橋が、最低定着温度に相当する温度よりも高い温度範囲だけトナー粘弾性を変化させているためであると推測される。
一方、比較例の低画像光沢トナーは、アルミニウムによるイオン架橋ではなく、樹脂分子量を高くしたものである。粘弾性的な緩和時間の分布が、イオン架橋よりも樹脂のほうが大きいため、最低定着温度に相当する温度よりも低い温度からトナーの粘弾性が高くなったことにより、定着温度が上昇したものと推測される。